説明

超音波診断装置

【課題】被検者への当接面の温度の上限値を超えてしまって使用を中断する、あるいは、超音波を送受信する素子の特性が劣化する等の問題のない、使い勝手の良い超音波診断装置を提供すること。
【解決手段】超音波を送受信する送受信素子と送受信回路とを有する超音波プローブと、画像生成部、制御部、操作部および表示部を有する本体ユニットと、本体ユニットから超音波プローブに電源を供給する電源線とを有し、電源線への通電を遮断することで超音波プローブへの電源の供給を遮断するプローブ用電源制御部を有することによって、超音波プローブでの発熱を大幅に抑制することができ、被検者への当接面の温度の上限値を超えてしまって使用を中断する、あるいは、超音波を送受信する素子の特性が劣化する等の問題のない、使い勝手の良い超音波診断装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に発熱による使用の中断のない超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波パルス反射法により、体表から被検体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線等の被爆がなく安全性が高い、ドップラー効果を応用して血流イメージングが可能等、多くの特長を有する。そのため、循環器系(心臓の冠動脈)、消化器系(胃腸)、内科系(肝臓、膵臓、脾臓)、泌尿器科系(腎臓、膀胱)、および産婦人科系等で広く利用されている。
【0003】
このような医療用超音波診断装置に使用される超音波プローブは、高感度、高解像度の超音波の送受信を行うために、圧電素子の圧電効果が一般的に利用される。
【0004】
さらに、近年、超音波画像を用いた診断の精度向上のために、従来のような超音波の基本波ではなく、高調波信号を用いたハーモニックイメージング(HI)診断が行われている。HI診断は、従来のBモード診断では得られない鮮明な診断像が得られることから、標準的な診断モダリティとなりつつある。
【0005】
HI診断は、基本波に比較して、サイドローブレベルが小さいことでS/Nが良くコントラスト分解能が良くなること、周波数が高くなることでビーム幅が細くなり横方向分解能が良くなること等の利点を有する。さらに、近距離では音圧が小さく、さらに音圧の変動が少ないので多重反射が起こらないこと、焦点以遠の減衰は基本波並みであり、高調波の超音波は基本波の超音波に比べ深速度を大きく取れること、等の多くの利点を有している。
【0006】
しかし、高調波の超音波を発生させるためには、従来の基本波を用いる場合よりも、より高強度の超音波の送信が必須となり、送信素子に多くの電力を投入する必要がある。その結果、送信素子の発熱が大きくなり、超音波プローブ内の温度が上昇し、被検者への当接面の温度の上限値を超えてしまって使用を中断せざるを得なくなる、あるいは、超音波の送受信素子の特性が劣化する、等の発熱問題が発生する。
【0007】
一方、送信素子と受信素子とを兼ねる送受信用の超音波振動子を複数列に2次元配置されている場合に、例えば縦横48×48の配列で2000素子を超える超音波振動子を備える場合、超音波プローブ内の発熱が問題となる。
【0008】
そこで、超音波プローブが被検体に接触していない状態(放置状態)を検知し、超音波送信を止める技術や、被検体に接触していても超音波プローブが不使用状態であることを判定して送受信の消費電力を抑制する技術が提案されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、超音波の送信や受信部のアンプおよびサブアレービームフォーマの動作を停止させることで、消費電力を抑制し、発熱を低減する方法が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−148424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の方法では、超音波プローブを測定条件で連続使用している場合の温度上昇に対する効果は全くなく、且つ、放置状態や未使用状態の発熱防止の点からも不十分であり、発熱を低減させる技術としては更なる改善が求められている。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、被検者への当接面の温度の上限値を超えてしまって使用を中断する、あるいは、超音波を送受信する素子の特性が劣化する等の問題のない、使い勝手の良い超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0014】
1.超音波を送信し、送信された超音波の反射波を受信する送受信素子と、前記送受信素子に超音波を送受信させ、受信された超音波の反射波から受信信号を生成する送受信回路とを有する超音波プローブと、
前記受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像生成部と、制御部、操作部および前記超音波画像を表示する表示部とを有する本体ユニットと、
前記本体ユニットから前記超音波プローブに電源を供給する電源線とを有し、
前記本体ユニットは、前記電源線への通電を遮断することで前記超音波プローブへの電源の供給を遮断するプローブ用電源制御部を有することを特徴とする超音波診断装置。
【0015】
2.前記画像生成部は、前記反射波の高調波成分を抽出して、高調波による超音波画像を生成し、
前記表示部は、前記高調波による超音波画像を表示することを特徴とする前記1に記載の超音波診断装置。
【0016】
3.前記プローブ用電源制御部によって前記超音波プローブへの電源の供給が遮断される直前に、前記画像生成部によって生成された超音波画像を記憶する記憶部を有し、
前記表示部は、前記超音波プローブへの電源の供給が遮断された後も、前記記憶部に記憶された電源の供給が遮断される直前に生成された超音波画像の表示を継続することを特徴とする前記1または2に記載の超音波診断装置。
【0017】
4.前記超音波プローブへの電源の供給の遮断が、下記a〜fのいずれかにより実施される場合には、前記表示部にa〜fのいずれによる電源遮断であるかを表示する機能を有することを特徴とする前記1または2に記載の超音波診断装置。ここに、a〜fは、
a.前記表示部に表示する超音波画像の調整を行う調整モード
b.超音波画像を測定するための条件設定を行う設定モード
c.前記超音波プローブが被検体の表面に当接されていない不使用状態
d.所定時間以上、前記超音波画像に変化がなく、不使用状態と見なされる場合
e.超音波画像を保存するためのフリーズモード
f.測定中の超音波画像以外の画像を前記表示部に表示している場合
である。
【0018】
5.超音波画像の測定モードの中に、送受信中に前記超音波プローブへの電源の供給を遮断することで発熱を抑えた低発熱の測定モードを有することを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、超音波を送信し、送信された超音波の反射波を受信する送受信素子と、送受信素子に超音波を送受信させ、受信された超音波の反射波から受信信号を生成する送受信回路とを有する超音波プローブと、受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像生成部と、制御部、操作部および表示部とを有する本体ユニットと、本体ユニットから超音波プローブに電源を供給する電源線とを有し、電源線への通電を遮断することで、超音波プローブでの発熱を大幅に抑制することができ、被検者への当接面の温度の上限値を超えてしまって使用を中断する、あるいは、超音波を送受信する素子の特性が劣化する等の問題のない、使い勝手の良い超音波診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における超音波診断装置の外観構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態における超音波診断装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるプローブ用電源制御部の構成の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態の動作を示すメインルーチンのフローチャートである。
【図5】図4のサブルーチンのフローチャートである。
【図6】超音波診断装置の調整モードを説明するための模式図である。
【図7】本発明の実施の形態における送受信素子の一例を示す断面模式図である。
【図8】本発明の実施の形態における超音波プローブの構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限らない。なお、図中、同一あるいは同等の部分には同一の番号を付与し、重複する説明は省略することがある。
【0022】
最初に、本発明の実施の形態における超音波診断装置の構成について、図1から図3を用いて説明する、図1は、本発明の実施の形態における超音波診断装置の外観構成を示す模式図である。
【0023】
図1において、超音波診断装置Sは、本体ユニット1、超音波プローブ2およびケーブル3等で構成される。
【0024】
本体ユニット1は、操作部11および表示部15等を備えている。操作部11は、例えば検査開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータを入力するためのキーボード等である。表示部15は、操作部11で入力された各種情報や、超音波プローブ2で受信した受信信号に基づいて生成された被検体内の内部状態の画像(超音波画像)等を表示する液晶ディスプレイ等である。
【0025】
超音波プローブ2は、図示しない人体等の被検体に対して超音波(超音波信号)を送信するとともに、被検体内で反射した超音波の反射波(エコー、超音波信号)を受信し、受信信号を生成する。
【0026】
ケーブル3は、本体ユニット1と超音波プローブ2とを接続し、本体ユニット1からの送信信号を超音波プローブ2へ伝達するとともに、超音波プローブ2で生成された受信信号を本体ユニット1に伝達する。さらに、ケーブル3は、本体ユニット1から、超音波プローブ2を駆動するための電源を供給する。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態における超音波診断装置の内部構成を示すブロック図である。
【0028】
図2において、上述したように、超音波診断装置Sは、本体ユニット1、超音波プローブ2およびケーブル3等で構成される。本体ユニット1は、電源スイッチMS、送信部12、受信部13、画像生成部14、制御部16、記憶部17、プローブ用電源制御部18、および上述した操作部11、表示部15等で構成される。超音波プローブ2は、送受信素子21および送受信回路22等で構成される。
【0029】
電源スイッチMSは、超音波診断装置Sを操作する操作者によってオンオフされ、本体ユニット1の電源を投入するためのスイッチである。
【0030】
操作部11は、上述したように、検査の開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータを入力したり、後述する超音波画像の調整モードや設定モードの指示、超音波画像の表示の指示、およびフリーズモードの設定等を行う。
【0031】
送信部12は、ケーブル3の信号線3aを介して、超音波プローブ2の送受信回路22の送信回路221へ送信信号12aを供給することで、送受信素子21に超音波を発生させるように駆動する。受信部13は、ケーブル3の信号線3bを介して、超音波プローブ2の送受信素子21で受信した超音波の反射波の基本波および高調波の信号21aに基づいて送受信回路22で生成された受信信号22aを受信し、超音波信号13aを画像生成部14に供給する。
【0032】
画像生成部14は、受信部13から供給された超音波信号13aに基づいて、被検体の内部状態の画像、即ち超音波画像を生成する。表示部15は、上述した操作部11で入力された各種情報や、画像生成部14で生成された被検体内の超音波画像を表示する。記憶部17は、上述した操作部11で入力された各種情報や、画像生成部14で生成された被検体内の超音波画像を記憶する。
【0033】
プローブ用電源制御部18は、制御部16の制御下で、ケーブル3の電源線3cを介して、超音波プローブ2を駆動するための電源の供給を制御する。その構成については、図3で詳述する。
【0034】
制御部16は、操作部11、送信部12、受信部13、画像生成部14、表示部15、記憶部17およびプローブ用電源制御部18を各機能に応じて制御することによって、超音波診断装置Sの全体制御を行う。
【0035】
送受信素子21としては、有機圧電素子や、無機圧電素子を用いることができる。また、上述したHI診断に適した送受信素子として、送信素子と受信素子とを分けて、送信素子として無機圧電素子を用い、受信素子として有機圧電素子を用いる方法もある。送受信素子21の被検体の表面に当接される面を送受信面214aとする。詳細は図7で後述する。
【0036】
送受信回路22は、超音波を送信するための送信回路221と、送信された超音波の反射波の基本波および高調波を受信して増幅し受信信号22aを生成するための受信回路222等とで構成される。
【0037】
尚、図2では、3a、3bの信号線を有線として有する場合を説明したが、ケーブル3が太くて操作性が劣る原因である3a、3bの信号線を無線化し、信号を通信で送受する方式とすることも出来る。本体ユニット1と超音波プローブ2とを接続するケーブル3は電源線3cのみとなり、ケーブル3が細くて超音波プローブ2の操作性が良好となる。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態におけるプローブ用電源制御部の構成の一例を示す模式図で、図3(a)はプローブ用電源制御部の構成の一例を示し、図3(b)は電源遮断部の内部構成の一例を示す。
【0039】
図3(a)において、プローブ用電源制御部18は、電源部181と電源遮断部182等とで構成され、超音波プローブ2を駆動するための電源の供給を制御する。
【0040】
電源部181では、超音波プローブ2で超音波を送信するために用いられる高電圧電源Vh1とVh2、および、超音波プローブ2の回路を駆動するための電源VccとVssの各電圧が生成される。
【0041】
各電圧の例としては、Vh1=+120VでVh2=+20V、あるいは、Vh1=−120VでVh2=−20V等が考えられる。消費電流は100μA程度である。また、一般的には、Vcc=+5VでVss=0(ゼロ)Vである。消費電流は100mA程度である。
【0042】
電源遮断部182では、電源部181で生成されたVh1、Vh2、Vccの各電源を、制御部16からの電源制御信号16bに従って、超音波プローブ2に供給し、あるいは供給を遮断する。
【0043】
図3(b)に、電源遮断部182の内部構成の一例を示す。Vh1、Vh2、Vccの各電源の供給を制御する回路として、出力トランジスタとしてPNPトランジスタQ1、Q3、Q5を用い、出力トランジスタQ1、Q3、Q5の制御トランジスタとしてNチャンネルMOS−FETQ2、Q4、Q6を用いた例を示す。
【0044】
制御部16から電源制御信号16bとして高電位(H)が出力されると、制御トランジスタQ2、Q4、Q6がオンし、出力トランジスタQ1、Q3、Q5がオンされて、超音波プローブ2にVh1、Vh2、Vccの各電源が供給される。
【0045】
制御部16から電源制御信号16bとして低電位(L)が出力されると、制御トランジスタQ2、Q4、Q6がオフし、出力トランジスタQ1、Q3、Q5がオフされて、超音波プローブ2へのVh1、Vh2、Vccの各電源の供給が遮断される。
【0046】
なお、図3(b)の例では、Vss=0Vとして、Vssの供給については特に制御していないが、例えばVss=−5V等の電圧を使用する場合には、Vssについても同様に電源制御信号16bによる制御を行えばよい。
【0047】
次に、本発明の実施の形態の動作について、図4および図5を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態の動作を示すメインルーチンのフローチャートである。
【0048】
図4において、ステップS1で、電源スイッチMSが操作者によってオンされると、本体ユニット1の電源が投入される。ステップS2で、操作者によって操作部11が操作されて、超音波検査の開始が指示されると、ステップS3で、制御部16から電源制御信号16bとして高電位(H)が出力され、超音波プローブ2に電源が供給される。
【0049】
ステップS4で、超音波プローブ2から超音波が送信され、送信された超音波の反射波が受信される。受信された超音波の反射波に基づいて、受信信号22aが生成される。
【0050】
特に、反射波の高調波に基づいて受信信号22aを生成する場合、高調波は、基本波に比べて例えば−6dB〜−20dB程度弱い信号強度となるので、その分、超音波の送信強度を強くする必要があり、電力消費が大きくなるので、発熱も大きくなる。
【0051】
ステップS5で、画像生成部14によって、ステップS4で生成された受信信号22aに基づいて、超音波画像が生成される。ステップS6で、画像生成部14によって生成された超音波画像が記憶部17に記憶される。ステップS7で、画像生成部14によって生成された超音波画像が表示部15に表示される。
【0052】
続いて、ステップS8「プローブ電源遮断サブルーチン」が実行される。詳細は図5で説明するが、所定の条件に当てはまる場合は、超音波プローブ2への電源の供給が遮断される。所定の条件に当てはまらない場合はステップS9に進む。
【0053】
ステップS9で、例えば操作部11を用いて、操作者によって検査の終了が入力されたか否かが確認される。入力されていない場合(ステップS9;No)、ステップS4に戻り、上述した動作が繰り返される。これによって、リアルタイムに超音波画像が撮像されて表示される。
【0054】
検査の終了が入力された場合(ステップS9;Yes)、ステップS10で、超音波プローブ2の電源がオフされ、上述した一連の動作が終了される。
【0055】
図5は、図4のステップS8「プローブ電源遮断サブルーチン」のフローチャートである。このサブルーチンでは、超音波診断装置Sが、超音波プローブ2への電源の供給を遮断しても差し支えない状態にあると判断された場合に、電源の供給を遮断することで超音波プローブ2の内部での発熱を防止する。
【0056】
図5において、ステップS81で、超音波診断装置Sが調整モードであるか否かが確認される。調整モードは、表示部15に表示する超音波画像の調整を行うモードである。詳細は図6で後述する。
【0057】
調整モードに設定されると、受信信号22aが記憶部17に記憶され、超音波プローブ2からの新たな受信信号22aの取り込みを必要とせずに、記憶部17に記憶された受信信号22aを用いて画像生成部14によって超音波画像が生成される。そして、生成された超音波画像を解析して、表示部に表示するに適した超音波画像を生成することのできる受信信号が得られるように、送受信回路22の設定が調整される。
【0058】
調整モードである場合(ステップS81;Yes)、ステップS87に進む。調整モードでない場合(ステップS81;No)、ステップS82で、超音波診断装置Sが設定モードであるか否かが確認される。設定モードは、超音波画像を測定するための条件、即ち、超音波の周波数、送信強度、被検体の被検部の深さ(超音波が焦点を結ぶ距離)等の設定を行うモードである。
【0059】
設定モードである場合(ステップS82;Yes)、ステップS87に進む。設定モードでない場合(ステップS82;No)、ステップS83で、超音波プローブ2の送受信面214aが被検体の表面に当接されているか否かが確認される。
【0060】
送受信面214aが被検体の表面に当接されているか否かは、図4のステップS5で生成された超音波画像を解析することで判断できる。送受信面214aが被検体の表面に当接されていない状態等で取得された画像は、超音波プローブ2が正常に調整されているにも関わらず、全面が白あるいは黒の画像となることが多く、このような画像を異常画像として記憶しておくことで、送受信面214aが被検体の表面に当接されているか否かが判断できる。送受信面214aが被検体の表面に当接されていない、つまり超音波プローブ2が不使用状態である場合(ステップS83;Yes)、ステップS87に進む。
【0061】
送受信面214aが被検体の表面に当接されている場合(ステップS83;No)、ステップS84で、画像生成部14で生成される超音波画像に所定時間、例えば数秒以上、変化がないか否かが確認される。超音波画像に所定時間以上変化がない場合(ステップS84;Yes)、超音波画像が固定されたままで、新規の超音波画像の測定をしていない、つまり超音波プローブが不使用状態にあると見なして、ステップS87に進む。
【0062】
超音波画像に所定時間以内に変化があった場合(ステップS84;No)、ステップS85で、超音波診断装置Sがフリーズモードであるか否かが確認される。フリーズモードは、測定された超音波画像を記憶部17に記憶するために、超音波画像を確認する作業を行うモードである。
【0063】
フリーズモードである場合(ステップS85;Yes)、ステップS87に進む。フリーズモードでない場合(ステップS85;No)、ステップS86で、表示部15に、超音波プローブ2で現在測定している被検体の超音波画像以外を表示しているか否かが確認される。現在測定している被検体の超音波画像以外とは、記憶部17に記憶された診断画像や過去の診断画像、他の検査結果等のことで、例えば医師が被検体である患者に診断結果を表示して説明をしている場合等の状態を意味する。
【0064】
現在測定中の被検体の超音波画像以外を表示している場合(ステップS86;Yes)、ステップS87に進む。ステップS87で、上述したステップS81からS86の各ステップからステップS87に進んだ場合は、超音波プローブ2は使用されていないと見なされるので、超音波プローブ2への電源の供給を遮断しても差し支えないと判断されて、超音波プローブ2への電源の供給が遮断される。
【0065】
ステップS88で、表示部15に、超音波プローブ2への電源の供給を遮断した理由が表示される。例えばステップS81で調整モードであるとみなされたために電源の供給が遮断された場合には、「調整モードのために、超音波プローブへの電源の供給を遮断しました」といった表示が行われる。
【0066】
この時に、例えば電源の供給を遮断した理由が、送受信面214aが被検体の表面に当接されていない(ステップS83;Yes)、あるいは超音波画像に所定時間以上変化がない(ステップS84;Yes)といった超音波プローブが不使用状態である場合には、記憶部17に記憶された超音波プローブへの電源の供給が遮断される直前の超音波画像を、表示部15に表示することが好ましい。その他の理由の場合にも、必要に応じて電源の供給が遮断される直前の超音波画像を表示してもよい。
【0067】
続いて、ステップS89で、所定の時間、例えば1秒間の時間待ちが行われた後、ステップS90で超音波プローブ2への電源の供給が再開され、図4のステップS8に戻る。
【0068】
現在測定中の被検体の超音波画像を表示している場合(ステップS86;No)、上述した各ステップの何れにも該当しない、即ち、超音波プローブ2への電源の供給を遮断しても差し支えない状態にないと判断して、図4のステップS8に戻る。
【0069】
以上に述べたように、超音波プローブ2が使用されておらず、超音波プローブ2への電源の供給を遮断しても差し支えない場合に、電源の供給を遮断することで、超音波プローブ2の内部での電力消費を無くし、発熱を防止することができる。
【0070】
特に、反射波の高調波に基づいて超音波画像を生成する場合、高調波は、基本波に比べて信号が微弱であるので、超音波の送信強度を強くする必要があり、電力消費が大きくなるので、発熱も大きくなる。従って、超音波プローブ2への電源の供給を遮断しても差し支えない場合に、電源の供給を遮断することで発熱を防止する効果は極めて大きい。
【0071】
次に、上述した超音波診断装置の調整モードについて、図6を用いて説明する。図6は、超音波診断装置の調整モードを説明するための模式図で、図6(a)は超音波画像を生成する回路のブロック図、図6(b)は超音波画像の輝度分布図である。
【0072】
図6(a)において、送信部12は、超音波プローブ2の送受信回路22の送信回路221へ送信信号12aを供給する。送信回路221は、送受信素子21に送信電力を供給して、超音波を送信する。超音波の送信は、通常、所望の位置に超音波ビームの焦点を結ばせるために、各送受信素子毎に遅延をかけて送信される。
【0073】
送信された超音波の反射波の基本波と高調波とは、送受信素子21で受信されて(信号21a)、受信回路222で増幅され、受信信号22aとして受信部13に入力される。
【0074】
受信部13に入力されたアナログ信号である受信信号22aは、A/D変換器131でデジタル信号に変換され、整相加算部132で、送信時にかけられた遅延分だけ逆方向に遅延された後に加算され、超音波信号13aとして画像生成部14に供給される。
【0075】
画像生成部14では、フィルタリング部141で、超音波信号13aにフィルタリングが施されて、反射波の基本波あるいは高調波が抽出されて、所望の次数の反射波が取り出された後に、輝度変換部142で輝度変換が行われ、画像化部143で超音波画像が生成される。生成された超音波画像は、受信信号22aとともに、記憶部17に記憶される。
【0076】
画像生成部14で生成された超音波画像は、通常は、図6(b)に実線Nで示したような、明から暗までに分布した輝度分布を示す。しかし、例えば、被検体の被検部の超音波反射率が低い場合等には、生成された超音波画像の輝度分布が、図6(b)に破線Bで示したように、暗部に偏った所謂黒抜けと言われる状態になる。逆に、被検体の被検部の超音波反射率が高い場合等には、生成された超音波画像の輝度分布が、図6(b)に一点鎖線で示したように、明部に偏った所謂白抜けと言われる状態になる。
【0077】
生成された超音波画像が、このような黒抜けや白抜けの画像の場合には、記憶部17に記憶された受信信号22aに基づいて、例えば受信回路222の増幅率を増減させたり、送信回路221が送受信素子21に供給する送信電力を増減させたりして、輝度分布が図6(b)の実線Nのような分布となるような調整条件が、自動的に、あるいは操作者によって手動で演算される。
【0078】
調整条件の演算中は、超音波プローブ2を用いた超音波の送受信を行う必要がないので、この間の超音波プローブ2への電源の供給を遮断することで、超音波プローブ2の内部での発熱を防止することができる。
【0079】
また、超音波プローブ2の送受信面214aが被検体の表面に当接されているか否かの確認についても、上述したと同様に、生成された超音波画像を解析することで判断できる。送受信面214aが被検体の表面に当接されていない状態等で取得された画像は、上述した黒抜けや白抜けの画像となることが多く、このような画像を異常画像として記憶しておくことで、送受信面214aが被検体の表面に当接されているか否かを判断することができる。
【0080】
上述したように、本発明の実施の形態によれば、超音波を送信し、送信された超音波の反射波を受信する送受信素子と、送受信素子に超音波を送受信させ、受信された超音波の反射波から受信信号を生成する送受信回路とを有する超音波プローブと、受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像生成部と、制御部、操作部および超音波画像の表示部とを有する本体ユニットと、本体ユニットから超音波プローブに電源を供給する電源線とを有し、本体ユニットは、電源線への通電を遮断することで超音波プローブへの電源の供給を遮断するプローブ用電源制御部を有することによって、超音波プローブでの発熱を大幅に抑制することができ、被検者への当接面の温度の上限値を超えてしまって使用を中断する、あるいは、超音波を送受信する素子の特性が劣化する等の問題のない、使い勝手の良い超音波診断装置を提供することができる。
【0081】
また、超音波画像の測定モードの中に、送受信中に超音波プローブへの電源供給遮断を実行することで発熱を抑えた低発熱の測定モードを有することが非常に好ましい。特に、超音波プローブの温度が上昇して使用中断が予測される場合に好ましい。
【0082】
この場合、超音波プローブ内に温度を検出する温度センサーを設け、所定の温度になった場合、例えば38℃以上では、上述した低発熱の測定モードの使用を操作者に対してアナウンスすることが好ましい。
【0083】
低発熱の測定モードの具体例としては、多段フォーカス制御であって、検体の深さに対しての送信を分割する制御であり、浅い領域をスキャンしている時に、深い領域に相当するタイミングでは電源遮断し、深い領域をスキャンしている時には浅い領域では電源遮断を行なう。多段の段数としては、高画質のため、3〜10段が好ましく、特に3〜6段が好ましい。
【0084】
ここで、送受信素子21の一例を図7に示す。図7は、本発明の実施の形態における送受信素子の一例を示す断面模式図である。
【0085】
図7において、送受信素子21は、バッキング層211、バッキング層211上に設けられた電極および圧電体を有する圧電部212、圧電部212上に設けられた音響整合層213および音響整合層213上に設けられた音響レンズ214等で構成される。
【0086】
圧電部212は、送信素子212a、送信素子212a上に配された中間層212b、および中間層212b上に配された受信素子212c等で構成される。送信素子212aは、送信用圧電素子218に電極217が付されたものがフレキシブル基板(以下、FPCと言う)215上に載置されて構成される。受信素子212cも同様に、受信用圧電素子219に電極217が付されたものがFPC216上に載置されて構成される。
【0087】
(バッキング層211)
バッキング層211は、圧電部212を支持し、不要な超音波を吸収し得る超音波吸収体である。バッキング層211に用いられるバッキング材としては、天然ゴム、フェライトゴム、エポキシ樹脂に酸化タングステンや酸化チタン、フェライト等の粉末を入れてプレス成形した材料、塩化ビニル、ポリビニルブチラール(PVB)、ABS樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、フッ素樹脂(PTFE)ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0088】
好ましいバッキング材としては、ゴム系複合材料およびまたはエポキシ樹脂複合材からなるものであり、その形状は送受信素子21や送受信素子21を含む超音波プローブ2の形状に応じて、適宜選択することができる。
【0089】
ゴム系複合材としては、ゴム成分および充填剤を含有する物が好ましく、JIS K6253に準拠したスプリング硬さ試験機(デュロメータ硬さ)におけるタイプAデュロメータでA70からタイプDデュロメータでD70までの硬さを有するものであり、さらに、必要に応じて各種の他の配合剤を添加することもできる。
【0090】
ゴム成分としては、たとえば、エチレンプロピレンゴム(EPDMまたはEPM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、EPDMとHNBRのブレンドゴム、EPDMとニトリルゴム(NBR)のブレンドゴム、NBRおよび/またはHNBRと高スチレンゴム(HSR)のブレンドゴム、EPDMとHSRブレンドゴム等が好ましい。
【0091】
より好ましくは、エチレンプロピレンゴム(EPDMまたはEPM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、EPDMとHNBRのブレンドゴム、EPDMとニトリルゴム(NBR)のブレンドゴム、NBRおよび/またはHNBRと高スチレンゴム(HSR)のブレンドゴム、EPDMとHSRブレンドゴム等が挙げられる。本実施の形態のゴム成分は、加硫ゴムおよび熱可塑性エラストマー等のゴム成分の1種を単独で使用してもよいが、ブレンドゴムのように2種以上のゴム成分をブレンドしたブレンドゴムを用いてもよい。
【0092】
ゴム成分に添加される充填剤としては、通常使用されているものから比重の大きいものに至るまでその配合量と共に様々な形で選ぶことができる。たとえば、亜鉛華、チタン白、ベンガラ、フェライト、アルミナ、三酸化タングステン、酸化イットリビウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム、ハードクレイ、ケイソウ土等のクレイ類、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属塩類、ガラス粉末等やタングステン、モリブデン等の各種の金属系微粉末類、ガラスバルーン、ポリマーバルーン等の各種バルーン類が挙げられる。
【0093】
これらの充填剤は、種々の比率で添加することができるが、好ましくはゴム成分100質量部に対して50〜3000質量部、より好ましくは100〜2000質量部、または300〜1500質量部程度が好ましい。また、これらの充填剤は1種または2種以上を組み合わせて添加してもよい。
【0094】
ゴム系複合材料には、さらに他の配合剤を必要に応じて添加することができ、このような配合剤としては、加硫剤、架橋剤、硬化剤、それらの助剤類、劣化防止剤、酸化防止剤、着色剤等が挙げられる。たとえば、カーボンブラック、二酸化ケイ素、プロセスオイル、イオウ(加硫剤)、ジクミルパーオキサイド(Dicup、架橋剤)、ステアリン酸等を配合することができる。これらの配合剤は必要に応じて使用されるものであるが、その使用量は、一般にゴム成分100質量部に対しそれぞれ1〜100質量部程度であるが全体的バランスや特性によって適宜変更することもできる。
【0095】
エポキシ樹脂複合剤としては、エポキシ樹脂成分および充填剤を含有するのが好ましく、さらに必要に応じて各種の配合剤を添加することもできる。エポキシ樹脂成分としては、たとえばビスフェノールAタイプ、ビスフェノールFタイプ、レゾールノボラックタイプ、フェノール変性ノボラックタイプ等のノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン構造含有タイプ、アントラセン構造含有タイプ、フルオレン構造含有タイプ等の多環芳香族型エポキシ樹脂、水添脂環型エポキシ樹脂、液晶性エポキシ樹脂等が挙げられる。本発明のエポキシ樹脂成分は単独で用いてもよいが、ブレンド樹脂のように2種類以上のエポキシ樹脂成分を混合して用いてもよい。
【0096】
エポキシ成分に添加される充填剤としては、上記ゴム成分に混合する充填剤と同様のものから、上記ゴム系複合剤を粉砕しさく作製した複合粒子までいずれも好ましく使用することができる。複合粒子としては、たとえばシリコーンゴム中にフェライトを充填したものを、粉砕器にて粉砕し200μm程度の粒径にしたものが挙げることができる。
【0097】
エポキシ樹脂複合剤を使用する際にはさらに架橋剤を添加する必要があり、たとえばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン等の環状脂肪族ポリアミン、m−キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族アミン、ポリアミド樹脂、ピペリジン、N,N′−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール等の2級および3級アミン等、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート等のイミダゾール類、液状ポリメルカプタン、ポリスルフィド、無水フタル酸、無視トリメリット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の酸無水物を挙げることができる。
【0098】
バッキング材の厚さは、概ね1〜10mmが好ましく、特に1〜5mmであることが好ましい。
【0099】
(送信素子212aおよび受信素子212c)
本実施の形態における送信素子212aおよび受信素子212cは、電極および圧電素子を有し、電気信号を機械的な振動に、また機械的な振動を電気信号に変換可能で超音波の送受信が可能な素子である。圧電素子は、電気信号を機械的な振動に、また機械的な振動を電気信号に変換可能な圧電材料を含有する電気機械変換素子である。
【0100】
圧電材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミクス、PbTiO3系セラミック等の無機圧電セラミクス、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の有機高分子圧電材料、水晶、ロッシェル塩等を用いることができる。圧電材料の厚さとしては、概ね100μm〜500μmの範囲で用いられる。圧電材料は、その両面に電極が付された状態で、圧電素子として用いられる。
【0101】
(電極217)
圧電材料に付される電極217に用いられる材料としては、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)等が挙げられる。
【0102】
圧電材料に電極217を付す方法としては、たとえば、チタン(Ti)やクロム(Cr)等の下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成した後、上記金属元素を主体とする金属およびそれらの合金からなる金属材料、さらには必要に応じ一部絶縁材料をスパッタ法、その他の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成する方法が挙げられる。
【0103】
電極形成はスパッタ法以外でも、微粉末の金属粉末と低融点ガラスとを混合した導電ペーストをスクリーン印刷やディッピング法、溶射法で形成することもできる。電極は、圧電材料上に、送受信素子21の形状に応じて、圧電体面の全面あるいは圧電体面の一部に、設けられる。
【0104】
圧電部212とバッキング層211とは、接着層を介して積層されていることが好ましい態様である。接着層を形成するための接着剤としては、エポキシ系の接着剤を用いることができる。
【0105】
圧電部212の、バッキング層211側の表面の一部と、音響整合層213側の表面の一部には電極が接触されており、バッキング層211と電極217とが接着層を介して積層されている部分を含む場合もある。
【0106】
(音響整合層213)
本実施の形態における音響整合層213は、圧電部212と被検体との間の音響インピーダンスを整合させるもので、圧電部212と被検体との中間の音響インピーダンスを有する材料で構成される。
【0107】
音響整合層213に用いられる材料としては、アルミ、アルミ合金(たとえばAL−Mg合金)、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、コッパーグラファイト、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ABC樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ナイロン(PA6、PA6−6)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PPS(ポリフェニレンスルフィド:ガラス繊維入りも可)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PAI(ポリアミドイミド)、PETP(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。
【0108】
好ましくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に充填剤として亜鉛華、酸化チタン、シリカやアルミナ、ベンガラ、フェライト、酸化タングステン、酸化イットリビウム、硫酸バリウム、タングステン、モリブデン等を入れて成形したものを用いることができる。
【0109】
音響整合層213は、単層でもよいし複数層から構成されてもよいが、好ましくは2層以上である。音響整合層213の層厚は、超音波の波長をλとすると、λ/4となるように定める必要がある。これを満たさない場合、本来の共振周波数とは異なる周波数ポイントに複数の不要スプリアスが出現し、基本音響特性が大きく変動してしまう。結果、残響時間の増加、反射エコーの波形歪みによる感度やS/Nの低下を引き起こしてしまい好ましくない。このような音響整合層213の厚さとしては、概ね30μm〜500μmの範囲で用いられる。
【0110】
(音響レンズ214)
音響レンズ214は、送受信素子21の最先端にあり、超音波ビームを集束させるためのものである。音響レンズ214の音響インピーダンスは生体組織とほぼ同じであり、音響レンズ214の形状を凸形にすることで、スネルの法則に従って超音波ビームを集束させることができる。音響レンズ214の凸面は、被検体の表面に当接されて超音波の送受信を行う送受信面214aである。
【0111】
上述した送受信素子21では、送信素子212aと受信素子212cとを別々に備える構成について説明した。送信素子212aと受信素子212cとの配列は、各々を上下に配置する配列、および並列に配置する配列のどちらでもよいが、上下に配置して積層する構造が好ましい。積層する場合の送信素子212aおよび受信素子212cの厚さとしては、40〜150μmであることが好ましい。
【0112】
なお、送受信素子21は、送信素子212aと受信素子212cとを別々に備える構成に限るものではなく、例えば図7において、受信素子212c(受信用圧電素子219と電極217)とFPC216とを無くして、送信素子212aを送受信兼用の送受信素子としてもよい。
【0113】
次に、本発明の実施の形態における超音波プローブの構成の一例を、図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態における超音波プローブの構成の一例を示す模式図で、図8(a)は超音波プローブの外観模式図、図8(b)は超音波プローブの内部構成図である。
【0114】
図8(a)において、超音波プローブ2の外観は、筐体29、筐体29の先端に配置された送受信素子21の音響レンズ214の送受信面214a、および筐体29の後端に接続されたケーブル3等で構成される。
【0115】
図8(b)において、超音波プローブ2の筐体29の内部には、音響レンズ214を含む送受信素子21、基板25、コネクタ26およびケーブル3等が配置されている。
【0116】
送受信素子21には、FPC24が接続され、FPC24と基板25とは接続部24aで接続されている。基板25上には複数の回路素子で構成される送受信回路22が実装されている。基板25とケーブル3の各々の配線3xとは、コネクタ26で接続されている。ここに、配線3xには、送信信号12aを供給する信号線3a、受信信号22aを伝達する信号線3bおよび超音波プローブ2を駆動するための電源を供給する電源線3c等が含まれる。
【0117】
なお、基板25と配線3xとは、基板25に直接ハンダ付け等で接続されてもよい。あるいは、配線3xを、ハンダ付けあるいは同軸ケーブル用コネクタを用いて別基板に接続し、別基板に設けた基板用コネクタと基板25に設けたコネクタとで基板25と配線3xとを接続する構成でもよい。
【0118】
また、上記の図面による超音波プローブは、複数個の送受信素子を一列に配置した例であるのに対して、図示しないが、例えば縦横48×48の配列で2000素子を超える送受信素子を平面配置している2次元プローブでは、発生した熱が逃げ難い問題があり、本発明がより有効に適用できる。
【0119】
以上に述べたように、本発明によれば、超音波を送信し、送信された超音波の反射波を受信する送受信素子と、送受信素子に超音波を送受信させ、受信された超音波の反射波から受信信号を生成する送受信回路とを有する超音波プローブと、受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像生成部と、制御部、操作部および表示部とを有する本体ユニットと、本体ユニットから超音波プローブに電源を供給する電源線とを有し、電源線への通電を遮断することで、超音波プローブでの発熱を大幅に抑制することができ、被検者への当接面の温度の上限値を超えてしまって使用を中断する、あるいは、超音波を送受信する素子の特性が劣化する等の問題のない、使い勝手の良い超音波診断装置を提供することができる。
【0120】
なお、本発明に係る超音波診断装置を構成する各構成の細部構成および細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0121】
S 超音波診断装置
1 本体ユニット
2 超音波プローブ
3 ケーブル
3a 信号線
3b 信号線
3c 電源線
3x 配線
11 操作部
12 送信部
12a 送信信号
13 受信部
13a 超音波信号
14 画像生成部
15 表示部
16 制御部
17 記憶部
18 プローブ用電源制御部
21 送受信素子
211 バッキング層
212 圧電部
212a 送信素子
212b 中間層
212c 受信素子
213 音響整合層
214 音響レンズ
214a 送受信面
215 フレキシブル基板(FPC)
216 フレキシブル基板(FPC)
217 電極
218 送信用圧電素子
219 受信用圧電素子
22 送受信回路
221 送信回路
222 受信回路
22a 受信信号
24 フレキシブル基板(FPC)
24a 接続部
25 基板
26 コネクタ
29 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信し、送信された超音波の反射波を受信する送受信素子と、前記送受信素子に超音波を送受信させ、受信された超音波の反射波から受信信号を生成する送受信回路とを有する超音波プローブと、
前記受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像生成部と、制御部、操作部および前記超音波画像を表示する表示部とを有する本体ユニットと、
前記本体ユニットから前記超音波プローブに電源を供給する電源線とを有し、
前記本体ユニットは、前記電源線への通電を遮断することで前記超音波プローブへの電源の供給を遮断するプローブ用電源制御部を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記画像生成部は、前記反射波の高調波成分を抽出して、高調波による超音波画像を生成し、
前記表示部は、前記高調波による超音波画像を表示することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記プローブ用電源制御部によって前記超音波プローブへの電源の供給が遮断される直前に、前記画像生成部によって生成された超音波画像を記憶する記憶部を有し、
前記表示部は、前記超音波プローブへの電源の供給が遮断された後も、前記記憶部に記憶された電源の供給が遮断される直前に生成された超音波画像の表示を継続することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記超音波プローブへの電源の供給の遮断が、下記a〜fのいずれかにより実施される場合には、前記表示部にa〜fのいずれによる電源遮断であるかを表示する機能を有することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波診断装置。ここに、a〜fは、
a.前記表示部に表示する超音波画像の調整を行う調整モード
b.超音波画像を測定するための条件設定を行う設定モード
c.前記超音波プローブが被検体の表面に当接されていない不使用状態
d.所定時間以上、前記超音波画像に変化がなく、不使用状態と見なされる場合
e.超音波画像を保存するためのフリーズモード
f.測定中の超音波画像以外の画像を前記表示部に表示している場合
である。
【請求項5】
超音波画像の測定モードの中に、送受信中に前記超音波プローブへの電源の供給を遮断することで発熱を抑えた低発熱の測定モードを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−90662(P2012−90662A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238282(P2010−238282)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】