説明

超音波霧化装置

【課題】カルシウムなどの凝結や腐食による超音波振動子の劣化促進を抑制し、超音波振動子の高寿命化を図る。
【解決手段】貯水容器1と超音波振動子4との間に吸水材6が介在され、その吸水材6を通じて貯水容器1から超音波振動子4に供給される水を霧化する超音波霧化装置である。貯水容器1と超音波振動子4との間には吸水材6を保持するスリーブ7が設けられる。そのスリーブ7は、吸水材6の一端部が超音波振動子4に接触又は近接して吸水材6から超音波振動子4への給水が可能となる第1位置と、吸水材6の一端部が超音波振動子4から離間して吸水材6から超音波振動子4への給水が不能となる第2位置と、の間で往復移動可能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子の振動により水を霧化する超音波霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動子を用いる霧化装置は、超音波振動子の表面に付着せしめた水を超音波振動子の振動エネルギーを利用して霧化するものであるが、超音波振動子に霧化水を供給する方法として、超音波振動子を貯水部内の霧化水に直付けする方式のほか、貯水部内に所定の長さを有する吸水材の一端部を垂らし込め、その吸水材を通じて超音波振動子に霧化水を導く方式が知られている。
【0003】
吸水材は、綿など繊維を線状あるいは帯状にした吸水性に富む部材であり、その一端部を貯水部内に垂らし込めて霧化水に浸すことにより、他の一端部まで霧化水を吸い上げることができる。
【0004】
尚、その種の吸水材を用いる超音波霧化装置では、超音波振動子に向けて延ばされる吸水材の一端部を超音波振動子に接触させる場合(特許文献1)と、当該吸水材の一端部を微小なギャップをあけて超音波振動子に近接させる場合とがあるが、超音波振動子に吸水材を近接させる態様でも、吸水材に含まれた霧化水をその表面張力により吸水材の一端部から超音波振動子に供給することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−181347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一端部が超音波振動子に接触又は近接される吸水材を通じて超音波振動子に給水する方式では、装置の使用運転すなわち霧化水を霧化すべく超音波振動子を駆動するか否かに拘わらず、超音波振動子に対して吸水材から給水が行われ、超音波振動子の表面に霧化水が常に付着した状態にあるので、水中に溶存するカルシウムや水中浮遊物質が超音波振動子の表面に凝結してしまったり、超音波振動子の腐食が早期に進行してしまったりするという問題があった。
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的はカルシウムなどの凝結や腐食による超音波振動子の劣化促進を抑制し、超音波振動子の高寿命化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の目的を達成するため、
貯水部と超音波振動子との間に吸水材を介在させ、その吸水材を通じて前記貯水部から前記超音波振動子に供給される水を霧化する超音波霧化装置において、
前記貯水部と前記超音波振動子との間で前記吸水材を保持する保持手段を有し、
前記保持手段は、前記吸水材の一端部が前記超音波振動子に接触又は近接して前記吸水材から前記超音波振動子への給水が可能となる第1位置と、前記吸水材の一端部が前記超音波振動子から離間して前記吸水材から前記超音波振動子への給水が不能となる第2位置と、の間で往復移動可能とされていることを特徴とする。
【0009】
加えて、前記保持手段には、当該保持手段を前記第1位置と前記第2位置との間で往復移動させる駆動手段が連結されることを特徴とする。
【0010】
又、前記駆動手段は、その駆動制御を行う制御手段に接続され、
前記制御手段は、駆動中の超音波振動子を停止させる前に、前記保持手段が前記第1位置から前記第2位置に移動するよう前記駆動手段を駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、貯水部と超音波振動子との間に吸水材を介在させ、その吸水材を通じて貯水部から超音波振動子に供給される水を霧化する超音波霧化装置において、貯水部と超音波振動子との間で吸水材を保持する保持手段を有し、その保持手段は、吸水材の一端部が超音波振動子に接触又は近接して吸水材から超音波振動子への給水が可能となる第1位置と、吸水材の一端部が超音波振動子から離間して吸水材から超音波振動子への給水が不能となる第2位置との間で往復移動可能とされていることから、保持手段を第2位置に移動して超音波振動子への給水を断ち、超音波振動子の表面に常時水が付着する状態を無くすることができる。このため、超音波振動子の表面に水中溶存物が凝結したり超音波振動子の表面が腐食したりすることによる劣化促進を抑制し、超音波振動子の高寿命化を図ることができる。
【0012】
加えて、保持手段には、これを第1位置と第2位置との間で往復移動させる駆動手段が連結されることから、保持手段の移動を自動的に行うことが可能になる。
【0013】
特に、駆動手段はその駆動制御を行う制御手段に接続され、その制御手段は、駆動中の超音波振動子を停止させる前に、保持手段が第1位置から第2位置に移動するよう駆動手段を駆動するので、吸水材から超音波振動子への給水が遮断された状態のまま、超音波振動子が暫時駆動され続けることにより、吸水材から供給された水を残さず霧化することができる。従って、超音波振動子が停止された状態では、その表面に水が付着した状態にあらず、このため装置の不使用期間中に超音波振動子の劣化が進行してしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係る超音波霧化装置の構成例を示した縦断面図である。図1において、1は所定の容積を有する貯水容器(貯水部)であり、その上面には注水口1Aが形成され、その注水口1Aから内部に水を補給可能とされている。
【0015】
一方、2は貯水容器1の上部に載置される装置本体、3はその筐体であり、筐体3の上面には噴霧口3Aが穿設されている。尚、貯水容器1と装置本体2は相互に着脱可能とであり、その両者を脱離したときに注水口1Aが外部に露出する構成とされている。
【0016】
又、4は噴霧口3Aの位置で筐体3の上面底部に取り付けた薄板状の超音波振動子で、その中央部には噴霧口3Aに対応して貫通孔4Aが形成されている。係る超音波振動子4は例えば圧電振動子で、当該超音波振動子4には図示せぬ電源から筐体3内に設けられる制御部5(制御手段)を介して駆動電流が供給される。
【0017】
又、6は貯水容器1と超音波振動子4との間に介在される吸水材であり、この吸水材6により貯水容器1内の水が超音波振動子4に供給されるようにしてある。尚、本発明に係る吸水材6としては、綿などの繊維や発泡樹脂といった吸水性に富む部材が用いられ、係る吸水材6はその保持手段を構成する円筒状のスリーブ7内に詰め込まれて保持されている。
【0018】
ここに、スリーブ7は金属や合成樹脂から成る硬質のパイプで、その外周には後述する駆動手段に連結するためのラック7Aが形成されている。そして、係るスリーブ7は、その内部に吸水材6を保持したまま、注水口1Aを通じて貯水容器1内に挿入される。これにより、吸水材6の一端部が貯水容器1内の水に浸漬し、その吸水材6を通じて貯水容器1内から超音波振動子4への給水が可能とされている。
【0019】
特に、吸水材6を保持したスリーブ7は、超音波振動子4と貯水容器1との間で昇降可能とされている。8は筐体3内に設けた仕切板であり、その仕切板8には超音波振動子4に対向する位置でスリーブ7を昇降案内する筒状部8Aが形成されている。そして、スリーブ7はその一端部(上端部)を筒状部8A内に挿入して昇降可能に支持されている。
【0020】
又、図1のように、スリーブ7の外周には突片7Bが形成され、筐体3内にはその突片7Bを挟んでスリーブ7の移動範囲を規制する上下一対の位置検出器11,12が設けられている。位置検出器11,12は、例えばリミットスイッチで、そのいずれか一方が突片7Bにより押圧されたとき、スリーブ7の昇降移動が停止されるようになっている。
【0021】
尚、図1はスリーブ7が突片7Bにて上部の位置検出器11を押圧して上限位置(第1位置)に停止された状態であり、この位置ではスリーブ7内に充填された吸水材6の一端部(上端面)が超音波振動子4の底面に微小なギャップ(0.05〜1mm程度)をあけて近接し、その一端部まで吸い上げられた水が表面張力により超音波振動子4に供給可能とされる。
【0022】
従って、スリーブ7を上記第1位置に移動させた状態で超音波振動子4を駆動すると、吸水材6から供給される水が超音波振動子4の振動エネルギーを受けて霧化され、これが貫通孔4Aから噴霧口3Aを通じて外部に拡散されることになる。
【0023】
又、図2はスリーブ7が突片7Bにて下部の位置検出器12を押圧して下限位置(第2位置)に停止された状態であり、この位置ではスリーブ7内に充填された吸水材6の一端部(上端面)が超音波振動子4から離間(約1mmより大きければよいが、本例において10mm程度)して超音波振動子4への給水が不能される。
【0024】
次に、図3は図1におけるX−X線断面を示す。図3において、13は上記した駆動手段を構成する正逆回転可能な駆動モータであり、その駆動軸にはピニオン14が固定され、そのピニオン14がスリーブ7の外周部に形成したラック7Aに噛み合わされている。従って、駆動モータ13を正逆駆動することにより、スリーブ7及び該スリーブに保持された吸水材6を上記第1位置と第2位置との間で往復移動させることができる。
【0025】
次に、図4は本願装置に係る制御系のブロック図を示す。図4から明らかなように、制御部5には、超音波振動子4、駆動モータ13、位置検出器11,12、及び操作スイッチ15が導電接続される。
【0026】
そして、係る制御部5は、操作スイッチ15から運転指令信号が入力されると、超音波振動子4に対し駆動電流を供給して当該超音波振動子4を励振駆動するほか、スリーブ7が上記第1位置に向かうよう駆動モータ13を駆動する。尚、スリーブ7が第1位置に達すると、位置検出器11による検知信号に基づいて駆動モータ13が停止され、スリーブ7が第1位置に維持されたまま超音波振動子4が駆動される。このため、貯水容器1内に吸水材6の一端部を浸漬するだけの水が貯留されていることを条件に、その水が吸水材6により吸い上げられて超音波振動子4に供給されつつ霧化される。
【0027】
一方、上記のような運転状態において、制御部5に操作スイッチ15から停止指令信号が入力されると、制御部5は駆動中の超音波振動子4を停止させる前に、スリーブ7が上記第1位置から第2位置に移動するよう駆動モータ13を駆動し、その後で超音波振動子4を停止させる。尚、スリーブ7が第1位置から第2位置に達すると、位置検出器12による検知信号に基づいて駆動モータ13が停止されるが、制御部5は図示せぬ内蔵タイマを有して位置検出器12から検知信号が入力されてから一定時間(約10秒)経過後に、超音波振動子4への通電を遮断するような制御回路を構成している。
【0028】
このように、超音波振動子4の停止動作に先行してスリーブ7が第2位置に移動されるものでは、吸水材6から超音波振動子4への給水が遮断された状態のまま、超音波振動子4が暫時駆動され続けることにより、吸水材6から供給された水を残さず霧化することができる。従って、超音波振動子4が停止された状態では、その表面に水が付着した状態にあらず、このため超音波振動子4の表面上における水中溶存物質の凝結、ならびに超音波振動子4の表面腐食を抑制し、超音波振動子4の寿命を延ばすことができる。
【0029】
以上、本発明に係る超音波霧化装置の構成例を説明したが、本願装置は上記のような構成に限らず、例えば駆動手段として、図5に示すような電磁ソレノイド23を利用し、その駆動によりスリーブ7が第1位置と第2位置との間で往復移動するようにしてもよい。尚、上記第1位置は、吸水材6の一端部が超音波振動子4に接触する位置でもよい。
【0030】
又、駆動モータ13や電磁ソレノイド23といった駆動手段を用いず、保持手段としてのスリーブ7を手動で移動させる構成としてもよい。
【0031】
更に、吸水材6として紐状のものを用い、その一端部が貯水容器1内においてスリーブ7から突出するようにしてもよく、これによればスリーブ7を第1位置に移動させた場合でも、吸水材6の一端を貯水容器1の底部に位置させて水を吸い上げることができるので、貯水容器1の有効容積を実質的に大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る超音波霧化装置の使用時の状態を示す縦断面図
【図2】同装置の不使用時の状態を示す縦断面図
【図3】図1におけるX−X線断面図
【図4】本願装置に係る制御系のブロック図
【図5】本発明に係る超音波霧化装置の変更例を示す概略図
【符号の説明】
【0033】
1 貯水容器(貯水部)
4 超音波振動子
4A 貫通孔
5 制御部(制御手段)
6 吸水材
7 スリーブ(保持手段)
7A ラック
11,12 位置検出器
13 駆動モータ(駆動手段)
14 ピニオン
23 電磁ソレノイド(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水部と超音波振動子との間に吸水材を介在させ、その吸水材を通じて前記貯水部から前記超音波振動子に供給される水を霧化する超音波霧化装置において、
前記貯水部と前記超音波振動子との間で前記吸水材を保持する保持手段を有し、
前記保持手段は、前記吸水材の一端部が前記超音波振動子に接触又は近接して前記吸水材から前記超音波振動子への給水が可能となる第1位置と、前記吸水材の一端部が前記超音波振動子から離間して前記吸水材から前記超音波振動子への給水が不能となる第2位置と、の間で往復移動可能とされていることを特徴とする超音波霧化装置。
【請求項2】
前記保持手段には、当該保持手段を前記第1位置と前記第2位置との間で往復移動させる駆動手段が連結されることを特徴とする請求項1記載の超音波霧化装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、その駆動制御を行う制御手段に接続され、
前記制御手段は、駆動中の超音波振動子を停止させる前に、前記保持手段が前記第1位置から前記第2位置に移動するよう前記駆動手段を駆動することを特徴とする請求項2記載の超音波霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−6258(P2009−6258A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169846(P2007−169846)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(391043815)サンヨー・オートメディア・センディリアン・バハド (36)
【住所又は居所原語表記】Plot 10,Phase 4,Prai Industrial Estate,13600 Prai,Penag.Malasya
【Fターム(参考)】