説明

超高圧水銀ランプ

【課題】発光管のリフレクタの開口部側の電極の温度が、リフレクタのネック部側の電極の温度より上昇し、発光管の電極間に温度差が生じても、電極損耗の少ない超高圧水銀ランプを提供することを目的とする。
【解決手段】この発明に係る超高圧水銀ランプ10は、リフレクタ5の開口部20側に位置する第1の電極3aと、リフレクタ5のネック部5a側に位置する第2の電極3bとを有し、内部に水銀を封入した発光管1を備え、交流点灯方式の超高圧水銀ランプ10において、交流ランプ電流を超高圧水銀ランプ10に供給して点灯する際に、交流ランプ電流の極性と同一の電流パルスを交流ランプ電流に重畳し、第1の電極3aへの電流パルスのパルス幅を、第2の電極3bへの電流パルスのパルス幅よりも大きくしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロジェクタ装置に使用される超高圧水銀ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
超高圧水銀ランプ(以下、ランプとも呼ぶ)は、発光管の電極損耗により、電極形状が変化しアークスポットのずれが発生する。一般的に、交流点灯方式の場合、サイクル毎のスポットずれがちらつきとなって感じられる。
【0003】
この対策として、サイクル毎の電流波形に重畳パルスを加えて、電極先端の温度を高め、ハロゲンサイクルの最適化を図る方法がとられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表平10−501919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超高圧水銀ランプは、リフレクタとの組合せの場合、プロジェクタ装置の光学系からの反射光により、発光管のリフレクタの開口部側の電極の温度が、リフレクタのネック部側の電極の温度より上昇し、両電極間に温度差が発生して正常なハロゲンサイクルが機能しなくなる。ハロゲンサイクルとは、電極から蒸発した電極材料であるタングステンが、例えばサイクル毎の電流波形に重畳パルスを加えて電極先端を適切な温度を高めることにより、電極先端に戻り電極形状を維持することを言う。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、発光管のリフレクタの開口部側の電極の温度が、リフレクタのネック部側の電極の温度より上昇し、発光管の電極間に温度差が生じても、電極損耗の少ない超高圧水銀ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る超高圧水銀ランプは、リフレクタの開口部側に位置する第1の電極と、リフレクタのネック部側に位置する第2の電極とを有し、内部に水銀を封入した発光管を備え、交流点灯方式の超高圧水銀ランプにおいて、交流ランプ電流を超高圧水銀ランプに供給して点灯する際に、交流ランプ電流の極性と同一の電流パルスを交流ランプ電流に重畳し、第1の電極への電流パルスのパルス幅を、第2の電極への電流パルスのパルス幅よりも大きくしたことを特徴とする。
【0007】
また、この発明に係る超高圧水銀ランプは、第1の電極への電流パルスのパルス幅の、第2の電極への電流パルスのパルス幅に対する比を、1.9〜3.0としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る超高圧水銀ランプは、上記構成により、電極損耗の少ない超高圧水銀ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1乃至図4は実施の形態1を示す図で、図1はプロジェクタ装置100の一例を示す図、図2は超高圧水銀ランプ10の一部を破断した側面図、図3は発光管1の断面図、図4は超高圧水銀ランプ10に供給する交流ランプ電流の波形を示す図である。
【0010】
図1に示すプロジェクタ装置100は、一例で、単板式DLP(Digital Light Processing)プロジェクタである。角度制御できる微細な鏡であるDMD(Digital Micromirror Device)を利用した画像表示方式(DLP)のプロジェクタである。角度制御できる微細な鏡であるDMD15を配置し、その鏡を毎秒数千回の高速で動かすことにより画像を描くもので、光を鏡によって反射させるため光の減衰が少ない。1枚しかDMD15を使用しない単板式DLPプロジェクタでは、カラーホイル12を高速で回転させ、赤・緑・青の光を順番にDMD15に当て、それぞれの色に対応した画像を連続して表示する。
【0011】
プロジェクタ装置100は、光源となる超高圧水銀ランプ10、コンデンサーレンズ11、カラーホイル12、レンズ13、全反射ミラー14、DMD15、投写レンズ16を備える。
【0012】
図2に示すように、超高圧水銀ランプ10は、前方に光を出射するための開口部20を有するリフレクタ5(凹面反射鏡)のネック部5aに光軸が一致するように発光管1が固定されている。リフレクタ5の外周面には、発光管1の電極からのリード線4bが接続する端子6a、端子6bが配置さている。発光管1には、発光管1を始動させるためのトリガーコイル7が設けられる。発光管1の内部には、一対の電極が設けられるが、リフレクタ5の開口部20側の電極を第1の電極3a、リフレクタ5のネック部5a側の電極を第2の電極3bとする。
【0013】
図3に示すように、発光管1は、石英ガラス製のバルブ8と、このバルブ8の両側に延びて形成される封止部2を有する。バルブ8の内部には、水銀が封入され、第1の電極3a、第2の電極3bの一部は封止部2で封止されている。封止部2からは、リード線4a、リード線4bが引き出されている。
【0014】
超高圧水銀ランプ10は、プロジェクタ装置100内で点灯中に、プロジェクタ装置100の光学系の反射光を受ける。そのため、リフレクタ5の開口部20側の第1の電極3aの温度は、リフレクタ5のネック部5a側の電極を第2の電極3bの温度より高くなる。
【0015】
この第1の電極3aの温度と、第2の電極3bの温度の一例を、以下に示す。プロジェクタ装置100内で点灯中の、発光管1の第1の電極3a及び第2の電極3bの温度は、約3000℃程度であるが、例えば、250Wの超高圧水銀ランプ10では、第1の電極3aの温度が、第2の電極3bの温度よりも、約80℃高い。また、300Wの超高圧水銀ランプ10では、第1の電極3aの温度が、第2の電極3bの温度よりも、約140℃高い。
【0016】
そのため、点灯後直ちに、第1の電極3aの電極損耗が発生するという課題がある。
【0017】
そこで、交流点灯方式の超高圧水銀ランプ10において、交流ランプ電流を超高圧水銀ランプ10に供給して点灯する際に、交流ランプ電流の極性と同一の電流パルスを半周期の後の部分で交流ランプ電流に重畳し、第1の電極3aへの電流パルスのパルス幅を、第2の電極3bへの電流パルスのパルス幅よりも大きくして、第1の電極3aの電極損耗を、ハロゲンサイクルを促進させて抑制する。但し、交流ランプ電流に重畳する電流パルスは、半周期の後の部分でなくてもよく、どのタイミングでもよい。
【0018】
第1の電極3aへの電流パルスのパルス幅を、第2の電極3bへの電流パルスのパルス幅よりもどの程度大きくするか、一例を図4に示す。図4は、縦軸が電流、横軸が時間であり、第2の電極3b(ネック部5a側電極)の電流に重畳するパルスの幅をA(μs)する。
【0019】
例えば、第1の電極3aへの電流パルスのパルス幅を750μs、第2の電極3bへの電流パルスのパルス幅Aを250〜400μsにすると、第1の電極3aの電極損耗が抑制される。この場合、第1の電極3aへの電流パルスのパルス幅の、第2の電極3bへの電流パルスのパルス幅に対する比は1.9〜3.0である。
【0020】
このように、第1の電極3aへの電流パルスのパルス幅の、第2の電極3bへの電流パルスのパルス幅に対する比を1.9〜3.0にすると、第1の電極3aの損耗を抑制できる。これは、このパルスモードにより、第1の電極3aの先端の温度が上がり、ハロゲンサイクルが促進されて、電極の損耗が抑制されると考えられる。
【0021】
リフレクタ5の開口部20側の第1の電極3aの損耗を抑制するには、第1の電極3aへの電流パルスのパルス幅の、第2の電極3bへの電流パルスのパルス幅に対する比を1.9〜3.0にするのが好ましいが、第1の電極3aへの電流パルスのパルス幅を、第2の電極3bへの電流パルスのパルス幅より大きくすれば、効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1を示す図で、プロジェクタ装置100の一例を示す図である。
【図2】実施の形態1を示す図で、超高圧水銀ランプ10の一部を破断した側面図である。
【図3】実施の形態1を示す図で、発光管1の断面図である。
【図4】実施の形態1を示す図で、超高圧水銀ランプ10に供給する交流ランプ電流の波形を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 発光管、2 封止部、3a 第1の電極、3b 第2の電極、4a リード線、4b リード線、5 リフレクタ、5a ネック部、6a 端子、6b 端子、7 トリガーコイル、8 バルブ、8a バルブセンター、10 超高圧水銀ランプ、11 コンデンサーレンズ、12 カラーホイル、13 レンズ、14 全反射ミラー、15 DMD、16 投写レンズ、20 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフレクタの開口部側に位置する第1の電極と、リフレクタのネック部側に位置する第2の電極とを有し、内部に水銀を封入した発光管を備え、交流点灯方式の超高圧水銀ランプにおいて、
交流ランプ電流を当該超高圧水銀ランプに供給して点灯する際に、前記交流ランプ電流の極性と同一の電流パルスを前記交流ランプ電流に重畳し、
前記第1の電極への前記電流パルスのパルス幅を、前記第2の電極への前記電流パルスのパルス幅よりも大きくしたことを特徴とする超高圧水銀ランプ。
【請求項2】
前記第1の電極への前記電流パルスのパルス幅の、前記第2の電極への前記電流パルスのパルス幅に対する比を、1.9〜3.0としたことを特徴とする請求項1記載の超高圧水銀ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−27699(P2008−27699A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198053(P2006−198053)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(591015625)オスラム・メルコ株式会社 (123)
【Fターム(参考)】