説明

距離測定センサ及びこれを用いた距離測定方法

【課題】CW信号を継続的に送受信するCWモードと、所定時間の間のみにCW信号を送受信するパルスモードで動作できる距離測定センサ及びこれを用いた高精密度の距離測定方法を提供する。
【解決手段】電力増幅器を制御する第1スイッチと;基準信号と受信信号を自身の入力信号として受け入れ、二つの信号の位相差を通して高周波信号の電力で表現される距離情報を生成する6ポート回路と;周波数固定発振器と前記6ポート回路との間に設置されて前記基準信号を制御する第2スイッチと;前記6ポート回路から発生する前記高周波信号の電力をDC電圧に変換して演算処理可能なデータに変換し、距離データとして計算する中央演算処理装置と;を備えて距離測定センサを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定センサ及びこれを用いた距離測定方法に関するもので、より詳しくは、高周波信号を用いて遠隔で距離を測定するセンサ及びこれを用いた距離測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダーセンサを用いた距離測定方法は、送受信する信号の類型によって、CW(Continuous Wave)信号を用いる方法、パルスを用いる方法、UWB(Ultra Wideband)によって代表されるインパルス(Impulse)を用いる方法に区分される。CW信号を用いる距離測定センサは、連続的な高周波信号を送受信し、二つの高周波信号の位相差を通して距離を測定する方式を適用する。また、この距離測定方式によると、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方法、FSCW(Frequency Stepped Continuous Wave)方法などを用いて非常に小さい測定誤差を有する距離測定センサを製作可能になる。しかし、この距離測定方式では、CW信号を用いて高周波信号の送受信が行われるので、送信信号と受信信号が常に同時に伝達される。送信と受信が一つのアンテナを通して行われる場合、二つの信号を分離するためのアイソレーターやサーキュレーターなどが必要である。図1は、単一アンテナを用いる従来のレーダー送受信端を示す概略構成図である。図1に示すように、レーダー送受信端は、送信部103、アンテナ105、受信部104及び信号分離素子101を備えている。送信部103は、高周波信号を送信するためのもので、電力増幅器1031、カプラー1032及び周波数生成器1033を含む。信号分離素子101は、送信信号と受信信号を分離するためのもので、信号分離素子101としては、サーキュレーターまたはアイソレーターなどの素子が用いられる。信号分離素子101の特性によって送信信号の一部が受信信号に漏れて伝達されるが、参照番号102は、漏れる受信信号を示す。受信部104は、高周波信号を受信するためのもので、低雑音増幅器1041、基準信号との比較のためのミキサー1042及び高周波信号除去のための低域通過フィルター1043を含む。基準信号としては、送信部103に含まれたカプラー1032の出力信号を用いる。しかしながら、一般的に、アイソレーターとサーキュレーターは、その大きなサイズによって集積が不可能であり、分離特性も非常に低いという問題点を有する。
一方、送受信端に一つのアンテナの代りにそれぞれ異なるアンテナを用いる場合、送受信端から直接的に発生する漏洩信号の連結を防止することで、漏洩信号の影響を大幅に減少させることができる。図2は、送受信端に二つのアンテナをそれぞれ用いる従来のレーダー構造を示す概略構成図である。図2に示すように、レーダー送受信端は、送信部201及び受信部202を備えている。送信部201は、高周波信号を送信するためのもので、周波数生成器2014、カプラー2013、電力増幅器2012及び送信部用アンテナ2011を含む。受信部202は、高周波信号を受信するためのもので、低雑音増幅器2022、基準信号との比較のためのミキサー2023、高周波信号除去のための低域通過フィルター2044及び受信部用アンテナ6021を含む。
以上説明した従来のレーダーセンサでは、送信信号と受信信号をそれぞれ分離するために高価の分離装備を使用し、スーパーコンピュータで処理されるアルゴリズム、優れた方向性を有する大型のアンテナを用いて高い送信電力を送受信するので、送信端と受信端の分離特性を大いに考慮しなくても、センサ動作に無理はなかった。しかしながら、既存のレーダー方法は、超小型化レーダーを製作して多様な応用分野に用いるときに役立つ方法ではない。特に、周波数によって大きさが決定される二つのアンテナを用いる場合、センサ全体の大きさが大きくなり、よって、超小型化センサの製作が困難になる。また、二つのアンテナは、集積されたセンサに連結されることで、互いに近くに位置するようになる。その結果、二つのアンテナのカップリング効果によって送信信号の漏洩効果が発生し、この漏洩効果が受信端に悪影響を与える。この漏洩信号は、測定しようとする距離が遠くなる場合、実際に受信される信号より大きいときに問題となる。小さい信号を増幅するために受信端の利得を増加させると、送信端から受信された漏洩信号も増幅され、信号処理端を飽和させることで信号受信が不可能になる。したがって、センサの仕様によって決定される最大に測定可能な距離より実際に測定可能な距離が制限されるので、測定可能な距離においても誤差が増加する。このようにCWを用いる超小型レーダーセンサでは、送信漏洩信号による悪影響を避けられない。特に、情報が直流(DC)信号に存在する直接変換方式レーダーセンサでは、送信漏洩信号によって発生するDCオフセットによって情報が歪曲されるので、より大きな問題が発生する。既存のレーダーセンサでは、受信信号に複雑なアルゴリズムを導入し、高性能の中央処理装置を通して漏洩問題を減少させるか、追加的に構成した別途の回路を通して上述した問題の悪影響を最小化している。しかしながら、具現原理の限界のために、上述した問題を完全に解決することは困難である。
送信漏洩信号の影響は、CWを用いるセンサに比べて、送信と受信が時間的に分離されたパルス信号やインパルス信号を用いるセンサでは大きな問題にならない。パルス信号やインパルス信号を用いるセンサは、送信信号が受信されるまでの時間を測定して距離を得るもので、受信時間の間に送信端が信号を送信しないので、送信信号による送信漏洩がない。しかしながら、時間差に基づいて距離を認識するセンサでは、送信信号と受信信号のオーバーラップ区間が存在すると、距離を認識することができない。すなわち、測定しようとする距離が短くて送信信号と受信信号が同時に受信される場合、距離情報自体を得られないので、最小測定可能な距離に制限が存在する。一般的に、パルスを用いて時間を測定するセンサでは、20cm以下の距離を測定することが困難である。また、測定の精密性を高めるためには、短いパルス幅(広い帯域幅)を有する信号を送受信に用いるべきであり、センサの全体構成が非常に複雑になって回路設計が困難になる。パルス幅の減少にも限界があるので、測定精密性は、CW信号を用いたセンサに比べて低い。
一方、6個のポートを用いた6-ポート構造は、1970年代に、反射係数を精密に測定するVNA(Vector Network Analyzer)の代りとして提案された構造である。受動素子で示された6ポート回路の構成を図3に示した。図3に示すように、6ポート回路は、2個の入力ポートa1,a2と、4個の出力ポートb1,b2,b3,b4とからなる。4個の出力ポートは、2個の入力ポートから受信される1個の基準信号LOと他の1個の任意信号RFとの線形関係で表示される。4個の出力ポートb1,b2,b3,b4の高周波信号は、電力検出器(図6を参照)及び低域通過フィルターを経て電圧に変換されるが、この4個の出力電圧を用いた数学的な計算過程を通して、任意信号RFの反射係数を知ることができる。図3において、参照番号301は、位相を90°及び180°に変化させるための方向性カプラーを示し、参照番号302は、基準信号LOに対して両方向に同一の位相信号を送信するための90°遅延伝送線を示し、参照番号303は、高周波信号を除去するための抵抗を示す。上記のような6ポート回路の構成及びこれを用いる方法は、特許文献1に開示されているので、それに対する詳細な説明は省略する。
上記のような6-ポート構造を用いた従来の距離測定センサでは、高周波信号が二つの入力ポートに同時に印加されるべきであるので、CW信号を用いた距離測定方法のみが使用可能である。さらに、このような距離測定センサを発展させ、CW信号を通した測定方法の長所をそのまま維持しながら、短所を克服するためにパルスモード動作を適用した遠隔距離測定センサと測定方法の開発が要求される。
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,104,583号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、CW信号を継続的に送受信するCWモードと、所定時間の間のみにCW信号を送受信するパルスモードで動作できる距離測定センサ及びこれを用いた高精密度の距離測定方法を提供することにある。
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、送信漏洩信号の影響を除去すると同時に、最小限の電力を消耗しながらCW信号を送受信し、測定距離の範囲を決定し、該当距離に存在する物体の情報のみを獲得し、測定する対象が多数個である場合、それぞれの情報を区分して検出できる距離測定センサ及びこれを用いた距離測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するための本発明に係る距離測定センサは、基準信号と距離測定対象物体に送信される送信信号を生成する周波数固定発振器と;前記送信信号及び前記測定対象物体から反射される受信信号の送受信に用いられるアンテナと;前記送信信号を増幅するための電力増幅器と;前記受信信号を増幅するための低雑音増幅器と;前記電力増幅器を制御する第1スイッチと;前記基準信号と前記受信信号を自身の入力信号として受け入れ、二つの信号の位相差を通して高周波信号の電力で表現される距離情報を生成する6ポート回路と;前記周波数固定発振器と前記6ポート回路との間に設置されて前記基準信号を制御する第2スイッチと;前記6ポート回路から発生する前記高周波信号の電力をDC電圧に変換するための高周波電力検出器と;前記高周波電力検出器から発生したDC電圧を演算処理可能なデータに変換するADCと;前記周波数固定発振器で生成する信号の周波数、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの動作をそれぞれ制御するとともに、前記ADCの出力データを予め自身に入力されたアルゴリズムを通して距離データとして計算し、前記距離データを表示する中央演算処理装置と;を備えることを特徴とする。
また、前記アンテナは、前記送信信号及び前記受信信号の送受信に共通的に用いられるもので、前記アンテナの入力端子には、前記送信信号及び受信信号を互いに分離して受信するための方向性カプラーがさらに設置されることが好ましい。
そして、前記高周波電力検出器は、2個のトランジスタを用いた差動回路形態で構成されており、DCオフセット電圧を除去することが好ましい。
一方、上記の技術的課題を解決するための本発明に係る距離測定方法の一例は、CW信号を特定時間の間にそれぞれ送受信し、送受信信号の位相比較を通して距離を測定するパルスモードを具現することを特徴とする。
一方、上記の技術的課題を解決するための本発明に係る距離測定方法の他の例は、前記第1スイッチを用いて前記電力増幅器の供給電力を制御し、前記第2スイッチを用いて前記6ポート回路の前記基準信号端に印加される基準信号を制御することでパルスモードを具現することを特徴とする。
このとき、測定距離によって前記距離測定センサの動作モードが異なることが好ましく、前記センサは、“t(511) − t(506) < 0”を満足する近い距離では、CW信号を継続的に送受信するCWモードで動作し、“t(511) − t(506) > 0”を満足する遠い距離では、CW信号を制御して特定時間の間のみに送受信するパルスモードで動作することが一層好ましい。
ただし、上記の式において、 t(511)は、測定対象から反射されてセンサに受信される信号から測定対象までの距離による遅延時間を示し、t(506)は、前記第1スイッチがオン(ON)状態になって前記電力増幅器を動作させる時間を示す。
また、前記基準信号が前記6ポート回路の入力端子に印加されるように、前記第2スイッチがオン(ON)状態にある時間を制御することで、測定しようとする対象の距離範囲を限定して信号を検出する。
【0006】
さらに、前記送受信信号を制御し、多様な測定対象を実時間で区分して各信号を検出することもできる。
以下、本発明に係る距離測定センサを要約する。これは、基本的に距離測定6-ポート位相周波数分別器を用いた遠隔レーダーセンサと同様に送信と受信の二つのCW周波数の位相を比較する。さらに、距離測定センサは、高周波信号を制御してパルスモードで動作可能な構造をさらに含み、遠隔レーダーセンサより優れている。また、測定しようとする距離が近い場合、距離測定センサは、CW信号を連続的に送受信して距離測定をし、測定しようとする距離が遠い場合、CW信号を所定時間の間のみに送受信するパルス動作を通して距離測定をする。
以下、本発明に係る距離測定方法の具体的な例を要約する。
6-ポート位相周波数分別器を用いた遠隔距離測定システムは、6ポート回路の入力端子で二つの高周波信号を受信し、二つの高周波信号の位相差を通して距離を測定するシステムである。この遠隔距離測定システムを活性化するためには、基準信号と対象から反射された受信信号が6ポート回路の入力端子に受信されるべきであり、一般的にCWで動作する。しかしながら、CWで動作する場合、送信のために大きく増幅された送信電力が受信端に流れる送受信漏洩信号によってDCオフセット問題が発生し、最大に測定可能な距離が制限されるか、受信される小さい信号を増幅するために増幅端の利得を増加させる場合、漏洩信号による受信信号増幅端の飽和問題が発生することで、システム性能が低下する。上記のような問題を解決するために、送受信漏洩信号による影響の小さい近距離を測定する場合はCWでそのまま動作するが、測定しようとする距離が遠くなると、パルスで動作させる新しい構造を提案した。このような動作のために、2個のスイッチを使用する。一つのスイッチは、電力増幅器の電源部に連結して送信信号を制御し、他の一つは、基準信号が受信される伝送線に位置して基準信号が6ポート回路に入力されることを制御し、位相周波数分別器の動作を調節する。所定時間の間のみに電力増幅器の電源部を連結して高周波信号を送信し、基準信号に印加される信号を防いで漏洩信号による出力問題を除去する。対象から高周波信号が反射されて受信端に戻る場合、基準信号に連結されたスイッチを動作させ、基準信号と受信信号が6ポート位相周波数分別器の入力端子に印加される。その結果、距離測定システムは、二つの信号の位相差を通して距離及び速度情報を認識するようになる。距離測定システムをパルスで動作させる場合、送受信漏洩信号の問題を除去するのみならず、多様な対象を同時に測定することができ、特定の距離に位置した物体の情報のみを得られるなど、CW方式では不可能な探知が可能になる。さらに、センサにおいて電力消耗が最も大きい電力増幅器の電源制御を通して全体センサの電力消耗を減少させることができ、ユビキタスレーダーセンサシステムへの応用が可能であり、応用分野が一層多様に拡大すると期待される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、CW方式の距離測定センサをパルスモードで動作することで、より遠い距離でも正確な距離情報を得られる。また、センサにおいて最も電力消耗の多い素子である電力増幅器を必要によって制御することで、センサで要求される電力消耗量が大幅に減少し、携帯用システムやユビキタスシステムへと応用分野を拡大させることができる。そして、距離測定センサがパルスモードで動作するとき、受信信号が対象によって時間的な差をおいて検出されることで、測定しようとする多様な対象を分離して各信号を検出することができる。これと同様に、特定距離に位置した物体のみを認識しようとする場合も、時間範囲を設定し、設定された時間範囲によって距離を測定することができる。これをレーダーイメージセンサに導入する場合、特定距離に位置した対象のイメージ情報を確認することができ、より多くの応用分野への拡張が可能である。
一般的なパルスを用いる距離測定レーダーセンサは、送信信号の送信時間を確認し、受信信号の受信時間を測定し、その時間差を通して距離を確認する。この場合、距離が非常に近い場合は時間差が発生しないか、センサの応答速度以内に信号が検出されるので、二つの対象間の距離測定が不可能である。しかしながら、本発明は、CW方式に基づいているので、二つの対象の距離が近い場合も、非常に高い精密性を維持しながら距離を測定することができる。本発明に係る距離認識方法は、モードと関係なしにCW方式の位相比較に基づいているので、時間差を測定する方式に比べて非常に高い精密性を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。下記の実施例は、本発明の内容を理解するために提示されたものに過ぎなく、当分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内で多様に変形可能であろう。よって、本発明の権利範囲は、このような実施例に限定されるものと解析されてはならない。また、本発明の名称及び全般的な説明は、距離測定に基づいているが、本発明の技術的思想をそのまま適用し、距離測定の他に速度測定を行うこともできる。
図4は、本発明の実施例に係る距離測定センサを示すブロック図である。本発明の実施例に係る距離測定センサは、CW信号のみを用いる既存の6ポート回路による距離測定センサに、パルス動作のための構造を適用したものである。図4に示すように、周波数固定発振器405は、安定した高周波信号を生成し、所望の周波数で高周波信号を制御して送信する役割をする。このような周波数の制御は、中央演算処理装置407によって行われるが、中央演算処理装置407は、周波数を制御する以外にも、パルス動作のための回路である第1スイッチ401及び第2スイッチ406のスイッチ動作も制御する。第1スイッチ401は、高周波信号を増幅して伝送する電力増幅器402への電源供給を制御するためのスイッチであり、第2スイッチ406は、カプラー413から発生して6ポート回路408の二つの入力ポートのうちLO端に送信される基準信号LOを制御するためのスイッチである。高周波送受信信号は、アンテナ404を通して送受信されるが、この送受信信号を互いに分離して受けるために、電力増幅器402とアンテナ404との間に方向性カプラー403が設置される。アンテナ404によって受信された受信信号RFは、方向性カプラー403で分離された後、低雑音増幅器409によって増幅されて6ポート回路408のRFユニットに入力される。6ポート回路408は、図3に示した従来技術と同一のものを用いる。6ポート回路408によって分けられた4個の高周波信号の電力は、高周波電力検出器410によってDC電圧に変換される。変換された電圧の大きさは、低雑音増幅と非線型増幅などを通して信号処理部411によって効果的に得られる。信号処理部411を通過した増幅信号は、ADC(Analog―to―Digital Converter)412によってデジタル信号に変換される。ADC412から送信される距離及び速度情報は、中央演算処理装置407に予め入力されたアルゴリズムを通して実時間で計算され、その計算結果が実時間で表示される。以上の説明において、6ポート回路408は、基準信号LOと受信信号RFとの位相差を通して距離(及び/または速度)を認識する役割をするので、6-ポート位相/周波数分別器とも称される。
第1スイッチ401及び第2スイッチ406は、パルス動作のための回路であり、二つのスイッチ401,406が全てオン(ON)状態である場合、本発明の実施例に係る距離測定センサは、従来の6-ポートを用いた距離測定センサと同様に、CW信号を送受信して距離情報を獲得する。上記のような動作は、測定しようとする距離が近い場合に行われる。測定しようとする距離が遠くなると、受信信号の大きさが減少するので、この受信信号の大きさを検出するためには、受信信号を増幅して認識可能な信号レベルにすべきである。送信信号の一部は、送受信分離器を通して常に受信端に受信されるが、測定しようとする距離が遠くなるほど受信信号が小さくなり、受信信号が送信漏洩信号より非常に小さくなる。この場合、小さい受信信号を得るために高い利得で増幅すると、送信漏洩信号も高い利得で増幅されることで、受信端の信号検出端が飽和状態になる。したがって、測定しようとする距離が遠くなるほど、送受信端間の漏洩信号の影響が増加するので、既存のCW方式では測定可能な距離が非常に制限的である。
送信漏洩信号が発生する理由は、送受信端を分離する分離器の特性が良好でないためである。移動通信システムを初めとする無線通信で多く用いられるサーキュレーターとアイソレーターは、その特性が−20dB程度である。この場合、送信漏洩信号除去回路は、カプラーの位相を用いてサーキュレーターとアイソレーターの良好でない特性を除去できるが、これも−40dB以上の分離特性を得ることができない。したがって、回路構成を通した分離特性の向上は、センサの全体大きさを大きくするが、その特性には限界がある。送信漏洩信号の発生は、送信信号が電力増幅器を通過して伝送される場合に発生する。したがって、送信漏洩信号が発生する時間にセンサを動作させないことで、送信漏洩信号の影響を大幅に減少させることができる。CW方式で動作する6ポート回路構造を用いた距離測定センサは、二つの高周波信号、すなわち、基準信号LOと受信信号RFが同時に存在する場合のみに距離情報を得られるので、基準信号の制御によってセンサの動作を制御することができる。高周波が対象から反射されて戻る時間の間に時間的な差が存在するので、送信期間には、基準信号に伝達される信号をオフにし、送信漏洩信号による結果が表れないように具現し、受信期間には、基準信号は伝達し、電力増幅器をオフにして距離情報を獲得する。
上記のような動作は、図5に示した時間による信号の変化を確認することで容易に知ることができる。図5は、図4のセンサがパルスモードで動作する場合、使用するクロック信号とこれによる各送受信信号の時間に対する変化を示すグラフである。参照番号501は、電力増幅器402の動作を制御するように第1スイッチ401に供給される第1クロック信号である。第1クロック信号501において、参照番号506は、第1スイッチ401がオン(ON)状態になって電力増幅器402を動作させる時間であり、参照番号507は、第1スイッチ401がオフ(OFF)状態になって電力増幅器402を動作させない時間であり、この時間の間にはセンサの電力消耗を減少させることができる。参照番号502は、図4のアンテナ404を通して送信する高周波信号の時間による変化を示すグラフである。図5は、本実施例のセンサにおいて、互いに異なる周波数の高周波信号を送受信して位相差を比較する方法で距離測定を行う場合を示したもので、参照番号508は、電力増幅器402で増幅されてアンテナ404を通して送信する第1高周波信号を示し、参照番号509は、次の周期に周波数固定発振器405で生成された他の周波数の第2高周波信号を示す。互いに異なる二つの周波数による位相差をそれぞれ比較することで、本実施例のセンサで距離測定が行われる。一方、参照番号503は、測定対象から反射されて戻る受信信号を検出するために基準信号LOを制御する第2スイッチ406に印加する第2クロック信号を示す。第2クロック信号503によって6ポート回路408の基準信号として受信される高周波信号504において、参照番号510は、受信信号が受信される前まで基準信号を連結しない時間を示す。このときに発生する送信漏洩信号は、センサの出力に影響を与えない。参照番号505は、測定対象から反射されてセンサに受信される信号を示すもので、測定対象までの距離によって遅延時間511が発生することが分かる。距離測定を行うためには、受信信号505と基準信号LOとのオーバーラップ時間515が必ず存在すべきである。一方、多様な対象を測定しようとする場合、第2スイッチ406を作動させるための信号は、第2クロック信号503の代りに第3クロック信号512のように信号がオン(ON)になるクロック信号として追加することもできる。
以上、図5の参照番号に対して説明してきたので、以下では、これら信号と関連した本発明のセンサを用いた測定方法を、図4及び図5に基づいて説明する。図4のセンサをパルスモードで動作させるためには、第1及び第2スイッチ401,406をそれぞれ図5に示した第1及び第2クロック信号501,503と一緒に動作させるべきである。センサがパルスモードで動作する場合、第1スイッチ401には第1クロック信号501が伝達される。第1クロック信号501がオン(ON)になる時間の間に電力増幅器402が動作するので、高周波信号は、電力増幅器402で増幅されてアンテナ404を通して測定対象に送られる。この時間の間、第2スイッチ406が第2クロック信号503を受信してオフ(OFF)状態を維持し、6ポート回路408の入力信号として送信される基準信号LOが存在しないことが理想的である。したがって、送信漏洩信号が受信端に印加される場合も、基準信号が存在せず、6ポート回路408の出力信号が発生しないか、無用になるので、送信漏洩信号による影響が除去される。物体から反射されて戻る受信信号が参照番号511の遅延時間を有する場合、参照番号505の信号が6ポート回路408のRFユニットに受信される。このとき、第2スイッチ406を通して基準信号を供給し、参照番号504の波形信号が6ポート回路408のLO端に入力されると、基準信号と受信信号との間の位相差が6ポート回路408によって認識されるので、使用者は所望の距離情報を得ることができる。距離測定センサが上述した情報を受信する場合は、二つの高周波信号が同時に6ポート回路408の入力端子に入力されるべきであり、第2スイッチ406の動作に要される遅延時間510と、第1スイッチ401の駆動に要される時間506と、受信信号の受信に要される遅延時間511は、数学式1のような関係を有する。さらに、基準信号と受信信号が同時に6ポート回路の入力端子に入力される時間515も、必ず存在すべきである。
【0009】
(数学式1)
0 < t(511) < t(510) < t(506)
上記の数学式1において、t(511)は、測定対象から反射されてセンサに受信される信号から測定対象までの距離による遅延時間を示し、t(510)は、第2スイッチ406の動作に要される遅延時間を示し、t(506)は、前記第1スイッチがオン(ON)状態になって前記電力増幅器を動作させる時間を示す。
近い距離範囲では、送信信号が迅速にセンサに受信されるので、この方法は、既存のCW方式と同一の方法になる。したがって、センサの動作は、次の数学式2のように時間的に区分される。
【0010】
(数学式2)
(511) − t(506) > 0 [パルスモード]
(511) − t(506) < 0 [CWモード]
送信漏洩信号は、センサ構造によって発生する代表的なDCオフセットの原因となる。センサ構造で発生するDCオフセットの他に、回路自体で起こるDCオフセットも存在するが、これを最小化するために、高周波電力検出器410を、従来のダイオードを用いた構造でない2個のトランジスタ602,603を用いた差動回路形態で図6のように構成した。この電力検出器は、一側のダイオード整合を通して電力を検出するという面で既存の電力検出器と同一の動作をする。しかしながら、高周波信号をDC電圧に変換する過程で一側のトランジスタに発生するDCオフセット電圧は、電力検出と関係しない他側のトランジスタにも同一に発生するので、これら二つの差のみを検出すれば、高周波電力検出器から発生するDCオフセット電圧を理想的に除去することができる。
一方、本発明に係る6ポート回路を用いた距離測定センサは、パルスモードを具現することで、測定する距離範囲を決定するか、多様な測定対象に対する情報を確認することができる。測定する距離情報は、信号が対象から反射されて戻る時間によって決定される。したがって、測定する距離範囲は、この時間の範囲設定を通して決定される。図5に示した参照番号503の信号を基準信号に印加する場合、出力信号を通して得られる距離は、次の数学式3を満足する遅延時間を有する物体から得られる。
【0011】
(数学式3)
(510) < t(511) < t(510) + t(516)
距離範囲は、時間t(516)によって決定されるので、この時間によって所望の距離範囲が決定される。例えば、3mと5mにそれぞれ2個の物体がある場合、発生する遅延時間は、3mの距離に位置した物体では20ns、5mの距離に位置した物体では33nsである。5mの距離に位置した物体のみの正確な距離情報を得るために、センサは、時間t(510)とt(516)をそれぞれ30nsと5nsに設定することができる。この場合、センサによって得られる情報は、30ns以上35ns以下の遅延時間を発生する物体に対する情報であるので、3mの距離に位置した物体の距離情報は表れない。このように二つの物体が近くに存在する場合、距離範囲を決定する時間t(516)を一層小さい値に設定すると、二つの物体をそれぞれ区分することができる。しかしながら、既存のパルス方式の場合、距離範囲を決定する時間によって距離正確度を決定するが、本発明に係るセンサの時間t(516)は、単純に距離範囲を設定するもので、実際の距離測定は送受信周波数の位相差によって得られる。したがって、本発明に係る距離測定の正確度は、既存のパルス方式を通して具現したものより非常に優れている。
図5において参照番号512のクロック信号を第2スイッチ406に印加すると、基準信号が二回オン(ON)状態になる時間513,514が存在するので、距離情報はそれぞれ二回得られる。したがって、この得られた距離情報に基づいて二つの物体を区分することができ、それぞれの距離情報も非常に高い正確性を有して得られる。これは、多様な物体を含む実際の応用で非常に有用に用いられる原理であり、一層高い距離正確性を期待できるという側面で他の距離測定センサより優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】単一アンテナを用いる従来のレーダー送受信端を示す概略構成図である。
【図2】二つのアンテナを送受信端にそれぞれ用いる従来のレーダー構造を示す概略構成図である。
【図3】受動素子で示された6-ポート構造を示す回路図である。
【図4】本発明の実施例に係る距離測定センサを示すブロック図である。
【図5】図4のセンサがパルスモードで動作するときに用いるクロック信号と、これによる各送受信信号の時間に対する変化を示すグラフである。
【図6】図4のセンサで用いられる高周波電力検出器を差動形態で構成した例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0013】
101 送信信号と受信信号を分離するための信号分離素子
102 漏洩される受信信号
103,201 送信部
104,202 受信部
301 方向性カプラー
302 遅延伝送線
303 高周波信号除去用抵抗
401 電力増幅器電源供給制御用第1スイッチ
402 電力増幅器
403 送・受信信号分離のための方向性カプラー
404 アンテナ
405 周波数固定発振器
406 基準信号制御用第2スイッチ
407 中央演算処理装置
408 6ポート回路
409 低雑音増幅器
410 高周波電力検出器
411 信号処理部
412 ADC
413 基準信号を発生させるためのカプラー
501 電力増幅器動作制御用第1クロック信号
502 送信高周波信号
503 第2スイッチに印加される第2クロック信号
504 第2クロック信号によって6ポート回路の基準信号として入力される高周波信号
505 測定対象から反射されてセンサに受信される信号
506 電力増幅器を動作させる時間
507 電力増幅器を動作させない時間
508 アンテナを通して送信する第1高周波信号
509 二つの周波数を用いて測定する場合、次の周期に周波数固定発振器で生成された他の周波数の第2高周波信号
510 受信信号が入力される前まで基準信号を連結しない時間
511 対象までの距離によって遅延された時間
512 測定対象が2個である場合、これを検出するために第2スイッチを作動させる第3クロック信号
513 近く存在する対象1を検出しようとする基準信号
514 対象1より遠く存在する対象2を検出しようとする基準信号
515 基準信号と受信信号が同時に6ポート回路の入力端子に印加される時間
516 基準信号が6ポート回路の入力端子に印加されるように第2スイッチがオン(ON)状態にある時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号と距離測定対象物体に送信される送信信号を生成する周波数固定発振器と;
前記送信信号及び前記測定対象物体から反射される受信信号の送受信に用いられるアンテナと;
前記送信信号を増幅するための電力増幅器と;
前記受信信号を増幅するための低雑音増幅器と;
前記電力増幅器を制御する第1スイッチと;
前記基準信号と前記受信信号を自身の入力信号として受け入れ、二つの信号の位相差を通して高周波信号の電力で表現される距離情報を生成する6ポート回路と;
前記周波数固定発振器と前記6ポート回路との間に設置されて前記基準信号を制御する第2スイッチと;
前記6ポート回路から発生する前記高周波信号の電力をDC電圧に変換するための高周波電力検出器と;
前記高周波電力検出器から発生したDC電圧を演算処理可能なデータに変換するADCと;
前記周波数固定発振器で生成する信号の周波数、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの動作をそれぞれ制御するとともに、前記ADCの出力データを予め自身に入力されたアルゴリズムを通して距離データとして計算し、前記距離データを表示する中央演算処理装置と;を備える距離測定センサ。
【請求項2】
前記アンテナは、前記送信信号及び前記受信信号の送受信に共通的に用いられるもので、前記アンテナの入力端子には、前記送信信号及び受信信号を互いに分離して受信するための方向性カプラーがさらに設置されることを特徴とする請求項1に記載の距離測定センサ。
【請求項3】
前記高周波電力検出器は、2個のトランジスタを用いた差動回路形態で構成されており、DCオフセット電圧を除去することを特徴とする請求項1に記載の距離測定センサ。
【請求項4】
請求項1による距離測定センサを用いて距離を測定する方法において、CW信号を特定時間の間にそれぞれ送受信し、送受信信号の位相比較を通して距離を測定するパルスモードを具現することを特徴とする距離測定方法。
【請求項5】
請求項1による距離測定センサを用いて距離を測定する方法において、前記第1スイッチを用いて前記電力増幅器の供給電力を制御し、前記第2スイッチを用いて前記6ポート回路の前記基準信号端に印加される基準信号を制御することで、パルスモードを具現することを特徴とする距離測定方法。
【請求項6】
測定距離によって前記距離測定センサの動作モードが異なることを特徴とする請求項5に記載の距離測定方法。
【請求項7】
前記センサは、
“t(511) − t(506) < 0”を満足する近い距離では、CW信号を継続的に送受信するCWモードで動作し、
“t(511) − t(506) > 0”を満足する遠い距離では、CW信号を制御し、特定時間の間のみに送受信するパルスモードで動作することを特徴とする請求項6に記載の距離測定方法。
(上記の式において、 t(511)は、測定対象から反射されてセンサに受信される信号から測定対象までの距離による遅延時間を示し、t(506)は、前記第1スイッチがオン(ON)状態になって前記電力増幅器を動作させる時間を示す。)
【請求項8】
前記基準信号が前記6ポート回路の入力端子に印加されるように、前記第2スイッチがオン(ON)状態にある時間を制御することで、測定対象の距離範囲を限定して信号を検出することを特徴とする請求項5に記載の距離測定方法。
【請求項9】
前記送受信信号を制御し、多様な測定対象を実時間で区分して各信号を検出することを特徴とする請求項5に記載の距離測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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