説明

距離測定装置、および距離測定プログラム

【課題】自身から射出された光波を反射した物体までの距離を測定する距離測定装置において、受光部に高感度な受光素子を用いても外乱光の入射を抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】レーダ制御部は、発光部による光波の射出後、所定の測定領域内での反射波を検出可能な時間範囲内だけ受光部に光波を入射させるよう制御する(S220,S230,S250,S260)。そして、レーダ制御部は、受光部による出力に基づいて光波を反射した物体までの距離を演算する(S240)。このようなレーダ装置によれば、所定の測定領域内での反射波を検出可能な時間範囲以外では、受光部が光波を入射させないようにすることができる。よって、反射光の光量を抑制することなく外乱光の入射を抑制することができ、良好に物体までの距離を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身から射出された光波を反射した物体までの距離を測定する距離測定装置および距離測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記距離測定装置として、受光手段に入射させる光波を、一定割合に制限するシャッタを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この距離測定装置では、受光手段に入射される外乱光の影響(光量)を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−182600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記距離測定装置では、ある方位における全ての距離測定の対象範囲において外乱光が入射されるため、高感度な受光素子を用いると外乱光の抑制が足らず飽和してしまい距離測定が不能となる虞があった。
【0005】
そこで、このような問題点を鑑み、自身から射出された光波を反射した物体までの距離を測定する距離測定装置において、受光部に高感度な受光素子を用いても外乱光の入射を抑制することができる技術を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために成された第1の構成の距離測定装置において、入射遮断部は、外部指令に従って受光部に光波を入射させるか遮断するかを切り替え可能に構成されている。そして、入射制御手段は、発光部による光波の射出後、距離測定装置との距離の下限値および上限値で規定される所定の測定領域内での反射波を検出可能な時間範囲内だけ受光部に光波を入射させるよう入射遮断部を制御する。また、距離演算手段は、受光部による出力に基づいて光波を反射した物体までの距離を演算する。
【0007】
このような距離測定装置によれば、所定の測定領域内での反射波を検出可能な時間範囲以外では、受光部が光波を入射させないようにすることができる。よって、反射光の光量を抑制することなく外乱光の入射を抑制することができ、良好に物体までの距離を測定することができる。
【0008】
なお、入射遮断部の構成としては、物理的に受光部への光波の入射を遮断する構成、および物理的には受光部への光波の入射を許容するが実質的に受光部が光波を検出できない状態とする構成、が含まれる。
【0009】
ところで、上記距離測定装置において、1つの測定領域内での反射波だけを検出する構成では、この測定領域内に物体があることが過去における測定結果等から推定できる場合に有効である。一方で、物体の位置が変化している可能性がある場合等には、第2の構成の距離測定装置のように、発光部に対して間欠的に繰り返し光波を射出させる発光制御手段、を備え、入射制御手段は、発光制御手段が発光部に対して光波を射出させる度に、予め設定された異なる複数の測定領域のうちの1つを選択し、この選択した測定領域内での反射波を検出可能な時間範囲内だけ受光部に光波を入射させるよう入射遮断部を制御してもよい。
【0010】
このような距離測定装置によれば、複数の測定領域内に存在する物体までの距離を測定することができる。よって、外乱光の影響を受けることなく物体を検出することができる領域を拡大することができる。
【0011】
なお、第2の構成の距離測定装置では、測定領域を変更する度に発光部に対して光波を射出させているが、例えば、発光部は複数の測定領域に対して1回の光波の射出を行い、受光部をマルチチャンネルに構成してもよい。すなわち、複数の受光部と、受光部毎に設けられた入射遮断部と、を備えておき、入射制御手段は、受光部が異なる測定領域における反射波を入射できるように各入射遮断部を制御するようにすればよい(以下、「変形例の構成の距離測定装置」という)。
【0012】
このような変形例の構成の距離測定装置によれば、第2の構成の距離測定装置と同様の効果を享受することができる。なお、変形例の構成の距離測定装置に対しては、後述する発光回数設定手段を除く各手段を付加することができる。
【0013】
さらに、上記距離測定装置においては、第3の構成の距離測定装置のように、距離測定装置において物体の距離を測定しようとする設定領域を、予め設定された分割数で距離が変化する方向において分割して得られる各領域を、各測定領域に設定する測定領域設定手段と、分割数を発光制御手段による発光部の発光回数に設定する発光回数設定手段、を備えていてもよい。
【0014】
このような距離測定装置によれば、物体の位置が全く分かっていない場合等であっても、物体の距離を測定しようとする設定領域の全域に対して物体までの距離を測定するので、確実に物体までの距離を測定することができる。
【0015】
ところで、物体の距離を測定しようとする設定領域の分割数を少なくなくする(測定領域を少なくする)と、物体の距離を測定する際の処理負荷や処理時間は少なくなるが、外乱光の悪影響を受けやすくなる。また、設定領域の分割数を多くする(測定領域を多くする)と、外光量の影響は少なくなるが、処理負荷や処理時間が増大する。
【0016】
そこで、上記距離測定装置においては、第4の構成の距離測定装置のように、距離測定装置の周囲の明るさである外光量を取得する外光量取得手段と、取得された外光量が多くなるにつれて分割数を多く設定する分割数設定手段と、を備えてもよい。
【0017】
このような距離測定装置によれば、物体の距離を測定する際の処理負荷や処理時間を過度に増加させることなく、外光量に応じて外光量の悪影響を受けない程度の最適な設定領域の分割数に設定することができる。
【0018】
また、上記距離測定装置においては、第5の構成の距離測定装置のように、外光量取得手段は、物体までの距離を測定する前に受光部に光波を入射させるよう入射遮断部を制御する測定前制御手段と、受光部の出力の変動幅を検出することによって、外光量を検出する外光量検出手段と、を備えていてもよい。
【0019】
このような距離測定装置によれば、照度計等を別途設ける必要がなく、距離を測定するためのハードウェアのみを利用して外光量(外乱光の量)を検出することができる。
次に、上記目的を達成するために成された第6の構成としての距離測定プログラムは、コンピュータを上記何れかに記載の距離測定装置を構成する各手段として機能させるためのプログラムであることを特徴とする。
【0020】
このような距離測定プログラムによれば、少なくとも請求項1に記載の距離測定装置と同様の効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】運転支援システム1の概略構成を示す説明図(a)、および受光制御部16の構成図(b)である。
【図2】レーザ光を照射する領域を示す模式図(a)、および物体の測定領域を示す平面図(b)である。
【図3】レーダ処理を示すフローチャートである。
【図4】受光部15の構成を示す回路図である。
【図5】外光量と設定領域の分割数との関係を示すグラフである。
【図6】実施形態における、外光量と設定領域の分割数との関係を示す平面図である。
【図7】測距処理を示すフローチャートである。
【図8】受光部15によって得られる受光信号のレベルと時間との関係の一例を示すグラフである。
【図9】合成後の受光信号のレベルと時間との関係の一例を示すグラフである。
【図10】変形例における、外光量と設定領域の分割数との関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[本実施形態の構成]
図1(a)は本実施形態の運転支援システム1の概略構成を示す説明図、図1(b)は受光制御部16の構成図、図2(a)はレーザ光を照射する領域を示す模式図、図2(b)は物体の測定領域を示す鳥瞰図である。運転支援システム1は、例えば乗用車等の車両に搭載されており、図1(a)に示すように、レーダ装置10(距離測定装置)と車両制御部30とを備えている。
【0023】
レーダ装置10は、レーダ制御部11と、走査駆動部12と、光学ユニット13と、受光制御部16と、を備えている。
レーダ制御部11は、CPU,ROM,RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとして構成されており、ROM等に記憶されたプログラム(距離測定プログラム等)に従って、後述するレーダ処理等の各種処理を実施する。なお、レーダ制御部11は、回路等によるハードウェアで構成してもよい。
【0024】
走査駆動部12は、例えばモータ等のアクチュエータとして構成されており、レーダ制御部11からの指令を受けて、光学ユニット13を水平方向および鉛直方向の任意の方向に向けることができるよう構成されている。なお、走査駆動部12は、レーダ制御部11からの走査開始信号を受ける度に1周期分の走査ができるように光学ユニット13を駆動する。
【0025】
光学ユニット13は、レーダ制御部11からの指令に応じてレーザ光を射出する発光部14と、発光部14からのレーザ光(図1(a)では実線の矢印で示す)が物体50に反射したときの反射波(図1(a)では破線の矢印で示す)を受光する受光部15と、を備えている。
【0026】
なお、走査駆動部12は、結果として発光部14によるレーザ光の射出方向が受光部15により反射光を受光可能な方向と同じ方向となるよう変化させられる構成であればよい。例えば、走査駆動部12は、光学ユニット13に換えて、レーザ光および反射光を任意の方向に反射させるミラーを駆動するよう構成されていてもよい。
【0027】
この場合には、複数の反射面を有するミラーを走査駆動部12で回転させることによって水平方向にレーザ光を走査し、反射面の角度をそれぞれ異なる角度に設定することによって、鉛直方向にもレーザ光を振りつつ走査する構成を採用すればよい。また、1つの反射面を有するミラーを任意の方向に向ける機構を採用してもよい。
【0028】
ただし、本実施形態においては、ある同じ方向に複数回のレーザ光を照射するため、レーザ光を照射する方向毎に、走査駆動部12を停止可能な構成であることを要する。なお、走査駆動部12は、受光部15のみの方向を変化させる構成でもよい。この場合、発光部14は、発光部14の方向を変化させることなく、受光部15が走査される領域の一部または全体にレーザ光を照射可能な構成にされていてもよい。
【0029】
上述のようにレーダ装置10は、自車両周囲の任意の方向(本実施形態では自車両の進行方向である前方)の所定領域に対して、走査しつつ間欠的にレーザ光を照射し、その反射波(反射光)をそれぞれ受信することによって、自車両前方の物標を各検出点として検出するレーザレーダとして構成されている。
【0030】
受光制御部16は、レーダ制御部11からの指令に従って実質的に受光部15に光波を入射させるか遮断するかを切り替え可能に構成されている。詳細には図1(b)に示すように、受光制御部16は、受光部15に電力を供給する受光部電源18と、受光部電源18からの電力を受光部15に供給するか否かを切り替えるためのスイッチ19とを備えている。
【0031】
ここで受光部15は、例えば、高感度な受光素子であるPPD(Pixelated Photon Detecter)を備えて構成されており、受光部15に電力が供給されているときに、入射光の光量に応じた出力を行い、受光部15に電力が供給されていないときには、ほとんど出力を行わない。つまり受光制御部16は、スイッチ19の開閉によって実質的に受光部15に光波を入射させるか遮断するかを切り替える構成とされている。
【0032】
本実施形態において、受光部15に高感度な受光素子を備えているのは、例えば、革製のジャンパーやコート等の、金属等よりも光波の反射率が低い物体を検出できるようにするためである。ただし、高感度な受光素子は、出力が飽和し易いため、本実施形態では出力の飽和を防止するために、後述するレーザ処理を実施する。
【0033】
次に、本実施形態のレーダ装置10においてレーダ制御部11は、前述のように走査駆動部12を利用して、光学ユニット13から照射されるレーザ光を所定の領域内において走査させるが、詳細には図2(a)に示すように、この領域の左上隅から右上隅に水平方向右側にレーザ光を照射させる範囲を変化させつつ間欠的に等間隔(等角度)でレーザ光を照射させ、レーザ光が右上隅に到達すると、左上隅よりも所定角度だけ下方の領域から水平方向右側にレーザ光を照射させる範囲を変化させつつ再びレーザ光を照射させる。
【0034】
この作動を繰り返すことによってレーダ装置10は、所定領域の全域に順次レーザ光を照射させることになる。そしてレーダ装置10は、反射波を検出したタイミングとレーザ光を照射した方向とに基づいて、レーザ光を照射する度に物標(検出点)の位置を検出する。
【0035】
なお、レーダ装置10が向けられた方向については、レーザ光を照射する全領域をレーザ光が照射される領域毎にマトリクス状に区切り、各領域に番号を付すことによって特定できるようにしておく。例えば、図2(a)に示すように、水平方向については左から順に番号を付し、この番号を方位番号と呼ぶ。また、鉛直方向については上から順に番号を付し、この番号をレイヤ番号と呼ぶ。
【0036】
また、特に本実施形態においては、図2(b)に示すように、方位番号およびレイヤ番号で特定される1つの方向毎に、物体の距離を測定しようとする設定領域(例えば、自車両から300m程度までの放射状の領域)を、自車両からの距離毎に後述する処理で設定される分割数(N)で分割して得られる、複数の測定領域の1つ1つに対して、レーザ光を照射する処理と反射光を受光する処理とを繰り返す。
【0037】
つまり、レーダ制御部11は、各測定領域内での反射波を検出可能な時間範囲内だけ受光部15に光波を入射させるよう受光制御部16を制御することになる。
次に、車両制御部30においては、CPU,ROM,RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとして構成されており、ROM等に記憶されたプログラムに従って、自車両の挙動を制御する処理や、運転者に対する報知を行う等の各種処理を実施する。例えば、車両制御部30は、レーダ装置10から物体の位置に関する情報(出力)を受け、この情報に基づいて、自車両と検出された物体との衝突を避けるための運転支援を行う。このとき、運転支援の内容に応じて、表示装置、音声出力装置、制動装置、操舵装置等の何れかに作動信号を出力するようにすればよい。
【0038】
[本実施形態の処理]
このような運転支援システム1では、例えば、以下の処理が実施される。図3はレーダ装置10のレーダ制御部11が実行するレーダ処理を示すフローチャート、図7はレーダ処理のうちの測距処理を示すフローチャートである。
【0039】
レーダ処理は、例えばレーダ装置10の電源が投入されると開始され、その後、所定の周期(例えば100ms毎)で実施される処理である。詳細には、図3に示すように、まず、物体までの距離および輝度を検出する方向(方位番号およびレイヤ番号)を設定する(S110)。つまり、この方向の物体を検出できるように発光部14および受光部15向きを変更する。
【0040】
そして、この方向における外光量を検出する(S120)。
この処理では、受光部15に光波を入射させるよう受光制御部16を制御し、受光部15の出力の変動幅を検出することによって外光量を検出する。詳細については図4を用いて説明する。図4は受光部15の構成を示す回路図である。
【0041】
受光部15は、図4(a)、図4(b)に示すように、電源に接続されたフォトダイオード21がグランドに接続された抵抗22と直列に接続され、フォトダイオード21と抵抗22とを接続する端子の電位を検出可能な構成とされている。この構成では、フォトダイオード21から電流値が出力されるが、この電流値を抵抗22によって電圧値に変換している。
【0042】
なお、受光部15は、フォトダイオード21に換えて、フォトトランジスタや光電子倍増管等の、光量に応じて電気的な物理量を出力する光電変換手段(PPD、或いは、ガイガーモードのAPD(avalanche photodiode)、MPPC(Multi-Pixel Photon Counter)、SPAD(single photon avalanche diode)等)を採用してもよい。また、抵抗22に換えて、トランスインピーダンスアンプ等の、電流に応じた電圧を出力する電流電圧変換手段を採用してもよい。
【0043】
ここで、受光部15は、受光する光量が増加するにつれて出力(電流・電圧)が大きくなるよう設定されており、出力が大きくなると出力の変動幅Vs(ショット雑音)も増加するよう構成されている。そこで、輝度算出処理においては、この出力の変動幅Vsを検出することによって、外光量を演算する。なお、ショット雑音は図4(c)に示す式によって求めることができる。
【0044】
本実施形態のレーダ装置10においては、このショット雑音の値と外光量とが対応付けられた対応関係データを備えており、ショット雑音の値が検出できれば外光量の値が一意に特定できるように構成されている。
【0045】
なお、本実施形態においては、1周期の走査の際に1度だけ外光量を検出するため、外光量を検出する方向は、例えば走査する領域の中央等、任意の方向であってもよい。ただし、外光量を検出する処理の終了後にS110にて設定された方向に発光部14および受光部15向きを戻す必要がある。
【0046】
続いて、外光量に応じて測定領域を設定する(S130)。この処理では、例えば、図5に示すような外光量を選択すれば物体の距離を測定しようとする設定領域を分割する際の分割数(N)が一義的に特定されるマップや関数を用いて設定される。なお、図5に示す例では、外光量が増加するにつれて二次関数的に分割数(N)が増加するよう設定されている。
【0047】
この処理では、分割数(N)によって、各設定領域の距離範囲(自車両からの距離の下限値および上限値)も同時に特定され、これらの距離範囲における反射光を受光するために必要な受光部15の開口時間を設定される。また、この処理では、分割数(N)をレーダ制御部11による発光部14の発光回数に設定する。
【0048】
このようなS130の処理を実施すると、外光量が多い場合には、図6(a)に示すように、分割数(N)が大きくなり、設定領域は狭くなる。また、外光量が少ない場合には、図6(b)に示すように、分割数(N)が少なくなり、設定領域が広くなる。
【0049】
続いて、測距処理を実施する(S140)。測距処理では、図7に示すように、まず、測定距離の1つを選択する(S200)。この処理では、通常、最も自車両から近い領域を選択する。
【0050】
そして、設定した方向に発光部14からレーザ光を射出させる(S210)。このとき、発光部14は例えば100nsだけ発光し、S210の処理が繰り返し実施されることでレーザ光は間欠的に射出される。
【0051】
次いで、設定された測定領域からの反射光の受光を開始するタイミングになったか否かを判定する(S220)。受光を開始するタイミングでなければ(S220:NO)、S220の処理を繰り返す。
【0052】
また、受光を開始するタイミングであれば(S220:YES)、受光部15を開口させる(S230)。つまり、受光制御部16にスイッチ19の接点を閉じさせる。
そして、反射波の有無を検出し、反射波が検出できれば距離を算出し、この距離をRAM等のメモリに記録する(S240)。ここで、受光部15は、図4(a)、図4(b)に示すように、常時、外光(背景光)Lbの光量に応じて電圧Vdcを出力しており、レーザ光の反射光Lpを受けると、図4(a)に示すように、外光Lbに応じた電圧Vdcに、反射光Lpの光量に応じた電圧Vpが加算された出力が、レーザ光の照射時間に応じた時間だけ出力される。
【0053】
したがってS240の処理では、受光部15によりレーザ光の反射光Lpに応じた電圧Vpが検出されたことを認識し、発光部14がレーザ光を射出してから電圧Vpが検出されるまでの時間に基づいて距離を演算する。また、この処理においては、外光Lbに応じた電圧Vdcを基準として所定の閾値以上の電圧差が検出できたときに、レーザ光の反射光Lpに応じた電圧Vpが検出されたものとして処理を行う。
【0054】
なお、外光Lbに応じた電圧Vdcは、ある時間範囲における受光部15からの出力の平均値から得ることができる。
続いて、受光部15の閉口タイミングであるか否かを判定する(S250)。閉口タイミングでなければ(S250:NO)、S240の処理に戻る。また、閉口タイミングであれば(S250:YES)、受光部15を閉口させる(S260)。つまり、受光制御部16にスイッチ19の接点を開けさせる。
【0055】
そして、1〜N番目までの全ての測定領域についての距離の測定が終了したか否かを判定する(S270)。何れかの測定領域についての距離を測定が終了していなければ(S270:NO)、次の測定領域を選択し(S280)、S210の処理に戻る。
【0056】
ただし、N番目の測定領域についての反射光が受光されるまでに要する時間だけS280の処理で待機する。次回反射波を受光したときに、今回照射されたレーザ光と次回照射されたレーザ光とが混同することを防止するためである。
【0057】
続いて、全ての測定領域についての距離の測定が終了していれば(S270:YES)、測距処理を終了する。このような測距処理が終了すると、図3に戻り、走査を終了するか否かを判定する(S150)。
【0058】
走査を終了するか否かについては、距離を検出する最終の方位番号かつレイヤ番号を有する方向(例えば、方位番号およびレイヤ番号が最大値を採る方向)に受光部15(発光部14)が向けられたか否かによって判定する。
【0059】
走査を終了しない場合には(S150:NO)、次に距離を測定する方向を設定し(S160)、S140以下の処理を繰り返す。また、走査を終了する場合には(S150:YES)、各方向(ピクセル)のデータを合成し、1つのデータを示すフレームとして出力する(S170)。
【0060】
S170の詳細について、図8および図9を用いて説明する。図8は、受光部15によって得られる受光信号のレベルと時間との関係の一例を示すグラフ、図9は合成後の受光信号のレベルと時間との関係の一例を示すグラフである。
【0061】
測距処理では、図8に示すように、各測定領域に対応したタイミングのみでの受光信号(受光部15からの出力)が得られる。例えば、受光信号1は、最も近い測定領域についての受光信号であり、受光信号2は2番目に近い測定領域についての受光信号である。同様に、受光信号NはN番目に近い(最も遠い)測定領域についての受光信号である。
【0062】
受光信号は、受光部15に光波が入射されるタイミングのみで得られ、他のタイミングでは得られないことが分かる。そして、物体がある場合には、発光部14から照射されたレーザ光に応じた反射波が検出され、反射波に応じた距離がRAM等のメモリに記録されている。
【0063】
ここで、S170の処理では、RAM等のメモリに記録された距離の情報を合成するが、この処理では、図9に示すように、各受光信号1〜Nの信号部分を足し合わせ、あたかもレーザ光の照射1回で1つの方位の全領域の物体を検出する処理を行ったかのような(分割数が1の状態で物体を検出した場合と同様の)検出結果を得ることができる。このように距離の検出結果を合成し、出力する処理が終了すると、レーダ処理を終了する。
【0064】
[本実施形態による効果]
以上のように詳述した運転支援システム1においてレーダ装置10の受光制御部16は、外部指令に従って受光部15に光波を入射させるか遮断するかを切り替え可能に構成されている。そして、レーダ制御部11は、発光部14による光波の射出後、レーダ装置10との距離の下限値および上限値で規定される所定の測定領域内での反射波を検出可能な時間範囲内だけ受光部15に光波を入射させるよう受光制御部16を制御する。また、レーダ制御部11は、受光部15による出力に基づいて光波を反射した物体までの距離を演算する。特に、レーダ制御部11は、受光部15が反射光を検出していない状態から検出している状態に変化したこと検出することによって物体の有無を判定する。
【0065】
このようなレーダ装置10によれば、所定の測定領域内での反射波を検出可能な時間範囲以外では、受光部15が光波を入射させないようにすることができる。よって、反射光の光量を抑制することなく外乱光の入射を抑制することができ、良好に物体までの距離を測定することができる。
【0066】
また、レーダ装置10においてレーダ制御部11は、発光部14に対して間欠的に繰り返し光波を射出させ、発光部14に対して光波を射出させる度に、予め設定された異なる複数の測定領域のうちの1つを選択し、この選択した測定領域内での反射波を検出可能な時間範囲内だけ受光部15に光波を入射させるよう受光制御部16を制御する。
【0067】
このようなレーダ装置10によれば、複数の測定領域内に存在する物体までの距離を測定することができる。よって、外乱光の影響を受けることなく物体を検出することができる領域を拡大することができる。
【0068】
また、レーダ装置10においてレーダ制御部11は、レーダ装置10において物体の距離を測定しようとする設定領域を、予め設定された分割数で距離が変化する方向において分割して得られる各領域を、各測定領域に設定し、分割数をレーダ制御部11による発光部14の発光回数に設定する。
【0069】
このようなレーダ装置10によれば、物体の位置が全く分かっていない場合等であっても、物体の距離を測定しようとする設定領域の全域に対して物体までの距離を測定するので、確実に物体までの距離を測定することができる。
【0070】
さらに、レーダ装置10においてレーダ制御部11は、レーダ装置10の周囲の明るさである外光量を取得し、取得した外光量が多くなるにつれて分割数を多く設定する。
このようなレーダ装置10によれば、物体の距離を測定する際の処理負荷や処理時間を過度に増加させることなく、外光量に応じて外光量の悪影響を受けない程度の最適な設定領域の分割数に設定することができる。
【0071】
また、レーダ装置10においてレーダ制御部11は、物体までの距離を測定する前に受光部15に光波を入射させるよう受光制御部16を制御し、受光部15の出力の変動幅Vsまたは基準電圧Vdcの変動を検出することによって、外光量を検出する。
【0072】
このようなレーダ装置10によれば、照度計等を別途設ける必要がなく、距離を測定するためのハードウェアのみを利用して外光量(外乱光の量)を検出することができる。
[その他の実施形態]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0073】
例えば、上記実施形態において、受光制御部16は、受光部15への電力を供給するか否かによって受光部15へ光を入射させるか否かを制御したが、電子シャッタ等の周知の構成を利用してもよい。
【0074】
また、本実施形態の測距処理では、自車両に近い測定領域から順に選択したが、自車両から遠い測定領域から順に選択してもよい。この場合、選択した測定領域についての受光信号を得た直後に、次のレーザ光を照射してもよい。ただし、前回以前に照射したレーザ光による反射光を今回照射したレーザ光の検出タイミングにおいて受光することがないようにする必要がある。
【0075】
例えば、各測定領域における受光信号を得る度に反射光の有無を記録しておき、今回照射するレーザ光の反射波を検出するタイミングにおいて前回以前に照射したレーザ光の反射光を検出する虞がある場合、前回以前に照射したレーザ光の反射光を検出する虞がなくなる程度にレーザ光を射出するタイミングを遅らせればよい。
【0076】
また、上記実施形態のレーダ装置10では、測定領域を変更する度に発光部14に対して光波を射出させているが、例えば、発光部14は複数の測定領域に対して1回の光波の射出を行い、受光部15をマルチチャンネルに構成してもよい。すなわち、複数の受光部15と、受光部15毎に設けられた受光制御部16と、を備えておき、レーダ制御部11は、受光部15が異なる測定領域における反射波を入射できるように各受光制御部16を制御するようにすればよい。
【0077】
このような変形例の構成のレーダ装置10によれば、上記レーダ装置10と同様の効果を享受することができる。
さらに、上記実施形態においては、処理開始時にある方位の外光量を検出し、この外光量を物体を検出しようとする領域(設定領域)全体の外光量として、全ての測定領域の大きさや設定領域の分割数を設定するようにしたが、レーザ光を照射する方向を変更する度に、外光量を検出し、測定領域を設定するようにしてもよい。つまり、図3の破線にて示すように、S160の処理後にS120の処理に移行するようにすればよい。
【0078】
このようにすれば、図10に示すように、レーザ光を照射する方向毎に、その方向に適応した測定領域(分割数)を設定することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…運転支援システム、10…レーダ装置、11…レーダ制御部、12…走査駆動部、13…光学ユニット、14…発光部、15…受光部、16…受光制御部、18…受光部電源、19…スイッチ、21…フォトダイオード、22…抵抗、30…車両制御部、50…物体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光波を射出する発光部と、
前記発光部からの光波が物体に反射されることにより得られる反射光を受光し、この光量に応じた出力をする受光部と、
前記受光部による出力に基づいて光波を反射した物体までの距離を演算する距離演算手段と、
を備えた距離測定装置であって、
外部指令に従って前記受光部に光波を入射させるか遮断するかを切り替え可能な入射遮断部と、
前記発光部による光波の射出後、当該距離測定装置との距離の下限値および上限値で規定される所定の測定領域内での反射波を検出可能な時間範囲内だけ前記受光部に光波を入射させるよう前記入射遮断部を制御する入射制御手段と、
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の距離測定装置において、
前記発光部に対して間欠的に繰り返し光波を射出させる発光制御手段、を備え、
前記入射制御手段は、前記発光制御手段が発光部に対して光波を射出させる度に、予め設定された異なる複数の測定領域のうちの1つを選択し、該選択した測定領域内での反射波を検出可能な時間範囲内だけ前記受光部に光波を入射させるよう前記入射遮断部を制御すること
を特徴とする距離測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の距離測定装置において、
当該距離測定装置において物体の距離を測定しようとする設定領域を、予め設定された分割数で距離が変化する方向において分割して得られる各領域を、前記各測定領域に設定する測定領域設定手段と、
前記分割数を前記発光制御手段による発光部の発光回数に設定する発光回数設定手段、
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の距離測定装置において、
当該距離測定装置の周囲の明るさである外光量を取得する外光量取得手段と、
取得された外光量が多くなるにつれて前記分割数を多く設定する分割数設定手段と、
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の距離測定装置において、
前記外光量取得手段は、
物体までの距離を測定する前に前記受光部に光波を入射させるよう前記入射遮断部を制御する測定前制御手段と、
前記受光部の出力の変動幅を検出することによって、前記外光量を検出する外光量検出手段と、
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項6】
コンピュータを請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の距離測定装置を構成する各手段として機能させるための距離測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−107984(P2012−107984A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256980(P2010−256980)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】