説明

路上等の水深測定器

【課題】 真上以外の位置や離れた位置からの識別を可能とする。
【解決手段】 基体10に脚部2を設けた本体部3に、前記脚部2の底面当接位置により定まる仮想路上面Xからの下端高さHを違える複数本の電極軸4と、該電極軸4の下端よりも下方に延在し、かつ前記電極軸4との間が路上面GL上の水Wにより導通する1本以上の導電軸5と、各電極軸4に接続されるパイロットランプ6と、前記導通する電極軸4に接続するパイロットランプ6のみを発光させる制御手段7とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路上面等に堆積する水の深さを便宜に測定する水深測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような水深測定器aとして、例えば図4に示すように、例えばアクリル樹脂などの合成樹脂からなる透明な複数本の測定軸bを、その下端の基準面Xからの高さ(下端高さ)hを、等間隔で順次違えて取り付けたものが知られている。この水深測定器aでは、測定軸bを上端側から覗たとき、この測定軸bの下端が路上面の水Wで濡れた場合と濡れない場合とで、見え方が相違することを利用し、見え方が変化した測定軸bにおける下端高さhを、水深として測定しうる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−174504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような構造の水深測定器aは、前記測定軸bを上端側から覗かなければ、見え方の違いが識別できないため、真上以外の位置や離れた位置からの識別が困難であり、無理な測定姿勢が強いられるという問題がある。又下端がいったん濡れてしまうと、水位が下がって水面が測定軸bの下端から離間した場合にも、見え方がもとに戻らない。従って、測定中に波や振動などによって下端が一旦濡れてしまうと、その後静止状態にもとった場合にも、見え方が変わらず測定が正確に行えないという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、真上以外の位置や離れた位置からも容易に測定でき、又波等でいったん濡れてしまった場合にも、正確にかつ繰り返し測定を行いうる路上等の水深測定器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、路上面等に堆積する水の水深を測定する水深測定器であって、
基体と、この基体から下方にのびる脚部とを有する本体部を具え、かつ前記脚部は、路上面に該脚部の底面当接位置で当接して前記基体を保持するとともに、
前記本体部に、前記脚部の前記底面当接位置により定まる仮想の平面からなる仮想路上面からの下端高さHを違える複数本の電極軸と、該電極軸の下端よりも下方に延在し、かつ前記電極軸との間が前記水により導通する1本以上の導電軸と、各電極軸に接続されるパイロットランプと、前記導通する電極軸に接続するパイロットランプのみを発光させる制御手段とを設け、
前記発光するパイロットランプが接続される電極軸の下端高さHによって前記水深を測定することを特徴としている。
【0007】
又請求項2の発明では、前記電極軸は、少なくとも下端部分を導通部とし、かつ前記脚部、導電軸、および他の電極軸とは水滴を保持しない間隔を隔てて配されることを特徴としている。
【0008】
又請求項3の発明では、前記導電軸は、前記脚部に設けたアース線であることを特徴としている。
【0009】
又請求項4の発明では、前記制御手段は、電池とともに前記本体部に一体に組み込まれたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は叙上の如く構成しているため、下端高さを違えた複数の電極軸と、例えば路上面までのびる導電軸との間の水による導通の有無を検知し、導通する電極軸に接続するパイロットランプのみを発光させている。従って、真上以外の位置や離れた位置からも、パイロットランプの発光の有無を容易に識別でき、測定を容易に行うことができる。又電気的な導通を利用しているため、波等でいったん濡れてしまった場合にも、正確にかつ繰り返し測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は本発明の路上等の水深測定器を概念的に示す側面図、図2はその制御手段の一例を示す回路図である。
【0012】
図1において、本実施形態の水深測定器1は、脚部2を有して路上面GLに設置される本体部3を具えるとともに、この本体部3に、複数本の電極軸4と、1本以上の導電軸5と、各電極軸4に接続されるパイロットランプ6と、前記導通する電極軸4に接続するパイロットランプ6のみを発光させる制御手段7とを設けている。
【0013】
前記本体部3は、基体10と、この基体10から下方にのびる複数本の脚部2とを具え、この本体部3は、前記脚部2の底面当接位置2Sが前記路上面GLと当接することで、前記路上面GLに設置される。なお前記「底面当接位置2S」とは、前記脚部2の底面における最下点の位置を意味する。
【0014】
次に、前記電極軸4は、その少なくとも下端部分が電気的導通部であり、かつその上端部分は前記基体10に固定される。このとき各電極軸4は、その下端の、前記底面当接位置2Sによって定まる仮想の平面からなる仮想路上面Xからの高さである下端高さHを、互いに相違させている。前記下端高さHは等間隔Gで順次相違させるのが好ましく、本例では、前記下端高さHを0.2mmの間隔Gで順次違えて、すなわち下端高さHを、0.2mm、0.4mm、0.6mm・・・として例えば24本の電極軸4を取り付けている。
【0015】
なお下端高さHの前記間隔Gは、要求する測定精度に応じて設定するもので特に規制されないが、タイヤのウエット走行テストに使用する場合、0.1〜0.5mmの範囲、特に0.1〜0.2mmの範囲が好ましい。又電極軸4の本数も、前記間隔Gに鑑みて、想定する水の最大深さに応じて設定される。この前記電極軸4では、腐食による測定精度の低下を抑えるため、例えば金、ステンレスなどの耐腐食性金属で形成するのが好ましい。又同目的で、導通部である下端部分を残して他の部分を保護層にて被覆保護することも好ましい。
【0016】
次に前記導電軸5は、前記電極軸4のうちで最も下端高さHが小な電極軸4Aの下端よりも下方に延在し、前記路上面GL上の水Wによって、前記導電軸5と電極軸4との間で電気的に導通しうる。本例では、前記導電軸5が、前記脚部2に設けたアース線11として形成した好まし場合を例示している。具体的には、導電軸5は、前記脚部2の内部或いはその側面に沿って下方にのびる主部5Aの下端に、前記底面当接位置2Sで露出して路上面GLと接地する接点部5Bを具える。この接点部5Bは、前記電極軸4と同様、例えば金、ステンレスなどの耐腐食性金属で形成される。なお前記導電軸5は、1本形成すれば充分であるが、断線や接触不良等を考慮して、異なる脚部2にさらに1本形成するのも好ましい。
【0017】
次に前記パイロットランプ6は、各前記電極軸4に接続されるとともに、本例では、前記基体10の上面に設けた表示部12に、発光部を上方に向けて取付られる。このパイロットランプ6としては、LEDランプなど低電圧、低電流のものが好適に採用しうる。又前記表示部12は、図2に示すように、前記下端高さHを示す目盛り12Aを、例えばマトリックス状に具え、各目盛位置に、前記パイロットランプ6を取り付けている。この場合、例えば水深が0.6mm以上かつ0.8mm未満の時には、前記目盛りが0.6mm以下の3つのパイロットランプ6が発光することとなる。しかし、目盛り表示を設けることなくパイロットランプ6を配置しても良く、斯かる場合には、前記間隔Gと発光するパイロットランプ6の個数とから、水深を算出しうる。
【0018】
次に、前記制御手段7は、電池30とともに前記本体部3に一体に組み込まれることが、携帯性、取扱い性等の観点から好ましい。図3に、前記制御手段7の一例を示す。本例では、トランジスタのスイッチング回路を用いて、各パイロットランプ6を発光させる場合を例示している。具体的には、本例の制御手段7では、電源(電池)30に、メインスイッチ31を介して、トランジスタ32と抵抗33とパイロットランプ6とを有する複数の本流回路部34が並列に接続され、各パイロットランプ6は、本流回路部34を流れる電源30からの主電流によって発光する。又各トランジスタ32には、このトランジスタ32を入切りするベース回路部35が接続される。このベース回路部35では、前記トランジスタ32に例えば抵抗36を介して前記電極軸4が接続されるとともに、前記本流回路部34の下流側に前記導電軸5が接続される。そして前記電極軸4と導電軸5とが水によって導通してベース回路部35に微弱なベース電流が流れた時、トランジスタ32がONして前記主電流を流すことができ、パイロットランプ6を発光しうる。
【0019】
なお制御手段7としては、本例に限定されることなく、種々の回路のものが適宜選択できる。
【0020】
ここで、前記電極軸4は、前記脚部2、導電軸5、および隣り合う他の電極軸4とは水滴を保持しない間隔Dを隔てて配されることが好ましい。これは、前記水滴が保持された場合、この水滴と接触する電極軸4が、路上面GL上の水Wと接触しない場合にも、通電して誤動作を生じされる恐れがあるからである、従って、前記間隔Dは少なくとも3mm以上確保するのが好ましい。又水滴が保持されないように、各電極軸4の周囲を、例えばフッ素樹脂などの撥水性樹脂材にて下端部分を残して被覆処理するのも好ましい。
【0021】
このように、本発明の水深測定器1は、路上面GL上の水による電気的導通を利用してパイロットランプ6を発光させるものであるため、真上以外の位置や離れた位置からでも、パイロットランプの発光の有無を容易に識別でき、測定作業を容易に行うことができる。又測定中に波や振動などによって電極軸4が一旦濡れてしまった場合にも、誤動作することがなく、正確に水深を測定することができる。又水位が時間的に変化する路面においても、この変化に追従して、各時点での水深を測定することも可能となる。
【0022】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の水深測定器を概念的に示す側面図である。
【図2】表示部の一例をパイロットランプとともに示す平面図である。
【図3】制御手段の一例を示す回路図である。
【図4】従来の水深測定器を示す側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 水深測定器
2 脚部
2S 底面当接位置
3 本体部
4 電極軸
5 導電軸
6 パイロットランプ
7 制御手段
10 基体
11 アース線
30 電池
GL 路上面
S 仮想路上面
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路上面等に堆積する水の水深を測定する水深測定器であって、
基体と、この基体から下方にのびる脚部とを有する本体部を具え、かつ前記脚部は、路上面に該脚部の底面当接位置で当接して前記基体を保持するとともに、
前記本体部に、前記脚部の前記底面当接位置により定まる仮想の平面からなる仮想路上面からの下端高さHを違える複数本の電極軸と、該電極軸の下端よりも下方に延在し、かつ前記電極軸との間が前記水により導通する1本以上の導電軸と、各電極軸に接続されるパイロットランプと、前記導通する電極軸に接続するパイロットランプのみを発光させる制御手段とを設け、
前記発光するパイロットランプが接続される電極軸の下端高さHによって前記水深を測定することを特徴とする路上等の水深測定器。
【請求項2】
前記電極軸は、少なくとも下端部分を導通部とし、かつ前記脚部、導電軸、および他の電極軸とは水滴を保持しない間隔を隔てて配されることを特徴とする請求項1記載の路上等の水深測定器。
【請求項3】
前記導電軸は、前記脚部に設けたアース線であることを特徴とする請求項1又は2路上等の水深測定器。
【請求項4】
前記制御手段は、電池とともに前記本体部に一体に組み込まれたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の路上等の水深測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−157632(P2008−157632A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343251(P2006−343251)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】