説明

路面切削用のドラム組立体及び路面切削装置

【課題】路面上に形成した溝内に路面表示を効率的にかつ連続的に形成する。
【解決手段】金属により円筒状に形成されたドラムと、ドラムの中心軸Lに対して平行な直線状の先端稜を形成するチップを有しかつドラムの外周面に固定された複数の刃体とを備え、一度組立てれば、ドラム組立体を組立状態で保管し、運搬しかつ路面切削装置に取り付けられる。ドラムの幅方向に隣り合う刃体を周方向に互いに離間させ、十分な固定面積を与えて各刃体をドラムの外周面に固定することができる。隣り合う刃体に設けられるチップの幅方向の端部を互いに重複させかつ各チップの先端稜を同一の半径上に配置し、帯状溝の底面に削り残し又は凹凸部が発生せずに、ドラムに固定した刃体の全幅で均一な深さを有する帯状溝を路面に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白線等の表示構造体を路面に埋設する帯状溝を路面上に形成する路面切削用のドラム組立体並びに路面切削用ドラム組立体を装着する路面切削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通事故を防止するため、中央分離帯、通行区分帯、横断帯、導流帯等の種々の道路標示が路面に設けられるが、これらの道路標示は、ペイントや道路鋲等により路面に表示される。路面上の積雪をブルドーザにより除雪する際に、ブルドーザのショベルによって路面を削り、除雪と同時に道路標示も除去されるため、除雪後に再度道路標示を設けなければならず、多大の費用、労力と時間とを必要とする。そこで、下記特許文献1には、路面に形成した溝内に分厚いベルト状の白線又は黄色等の表示部材を嵌め込んで、表示部材をローラにより圧着する路面区画線の施工方法が開示されている。特許文献1に示される路面区画線は、路面に形成した溝内に表示部材を埋設して施工するため、ブルドーザによる研磨量、車両タイヤによる摩滅量が少なく、表示部材の耐久性が増大する利点がある。しかしながら、特許文献1では、路面に帯状溝を形成する方法又は装置は開示されていない。また、下記特許文献2及び3は、薄い複数の切削ブレード又は刃体を積層したブレード組立体を回転しながら路面に押し付けて、路面に帯状溝を形成する装置を示す。
【0003】
【特許文献1】実開昭63−136006号公報(第2図)
【特許文献2】特許第3,579,401号(図1)
【特許文献3】特開昭51−124025号公報(第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2及び3に示される複数の切削ブレード又は刃体を組み合わせて形成したブレード組立体により路面を切削すると、切削ブレード又は刃体により切削する路面が谷状に切削され、隣り合う切削ブレード又は刃体の間は山状に切削されるため、切削面が谷状と山状が交互に連続する凹凸面となる。従って、例えば、2〜3mmで均一の深さで一定の幅の帯状溝を路面に形成するときに、従来のブレード組立体を使用すると、帯状溝の底面に凹凸が形成されるため、形成した帯状溝内に路面表示体を形成すると、部分的に路面表示体の厚さが異なり、十分な接着強度で路面表示体が路面に付着しない欠点がある。
【0005】
また、従来のブレード組立体は、キーを設けた単一軸上にスペーサを介して又は介さずに多数枚のブレードを重ねて装着した後、細長いシャフトを各ブレードの貫通孔に挿入してナットにより固定するため、着脱に長時間を必要とする欠点がある。
【0006】
そこで、本発明は、一定の深さを有する帯状溝を路面に効率的にかつ連続的に形成する路面切削用ドラム組立体及び路面切削装置を提供することを目的とする。更に、本発明は、容易に保管、運搬及び着脱を行える路面切削用ドラム組立体及び路面切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による路面切削用のドラム組立体(1)は、金属製のディスク(31)と、ディスク(31)の外周部に固着されたチップ(6)とをそれぞれ有する複数の切削ブレード(30)を備える。複数の切削ブレード(30)は、チップ(6)により形成される同一の外径を有し、隣接するディスク(31)のチップ(6)の側面を互いに直接接触させる状態で駆動軸(50)上にディスク(31)を配列しかつ各切削ブレード(30)に同軸上に形成された貫通孔(34)に連結ロッド(35)を挿入して、路面切削用のドラム組立体(1)を構成する。連結ロッド(35)の両端からドラム組立体に締め付け力を加えることにより、互いに直接接触するチップ(6)間の離間を防止することができる。ドラム組立体(1)のチップ(6)を路面(70)に接触させて、ドラム組立体(1)を回転しながら、路面切削装置を走行させると、一定の幅でかつ一定の深さで路面(70)を連続的に切削することができる。
【0008】
本発明の他の実施の形態では、金属により円筒状に形成されたドラム(2)と、ドラム(2)の中心軸(L)に対して平行な直線状の先端稜(11)を形成するチップ(6)を有しかつドラム(2)の外周面(12)に固定された複数の刃体(3)とを備えているので、一度組み立てれば、ドラム組立体(1)を組立状態で保管し、運搬しかつ路面切削装置に取り付けることができる。ドラム(2)の幅方向に隣り合う刃体(3)を周方向に互いに離間させるので、十分な固定面積を与えて各刃体(3)をドラム(2)の外周面(12)に固定することができる。隣り合う刃体(3)に設けられるチップ(6)の幅方向の端部を互いに重複させかつ各チップ(6)の先端稜(11)を同一の半径上に配置するので、帯状溝(71)の底面に削り残し又は凹凸部が発生せずに、ドラム(2)に固定した刃体(3)の全幅で均一な深さを有する帯状溝(71)を路面(70)に形成することができる。
【0009】
本発明の路面切削装置(60)は、シャーシ(61)と、シャーシ(61)に固定された動力装置(64)と、シャーシ(61)に回転可能に取り付けられかつ動力装置(64)に駆動連結された車輪(63)と、駆動フランジ(55)を有しかつ動力装置(64)に駆動連結された駆動軸(50)と、駆動軸(50)の駆動フランジ(55)に固定されたドラム組立体(1)とを備え、駆動軸(50)の駆動フランジ(55)に固定したドラム組立体(1)を路面切削装置(60)に容易に取り付けることができる。ドラム組立体(1)に設けたチップ(6)の先端稜(11)を路面切削装置(60)の車輪(63)より低い位置に配置し、ドラム組立体(1)を回転しながら、路面切削装置(60)を走行させると、路面(70)を一定の幅でかつ一定の深さで連続的に切削することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の路面切削用ドラム組立体及び路面切削装置を使用することにより、一定の深さを有する帯状溝を路面に効率的にかつ連続的に形成することができる。また、本発明の路面切削用ドラム組立体は、容易に保管し、運搬し又は路面切削装置に容易に着脱することができる。
【0011】
また、所定幅の帯状溝(71)内に供給される表示材料は、帯状溝(71)の外部に流出せずに、所定幅に形成される。また、表示材料は、形成された帯状溝(71)の底面の凹凸と一対の側面の凹凸部とに係合して、帯状溝(71)内に強固に固着される。更に、路面(70)とほぼ面一に表示材料の上面を形成するので、除雪の際に切削されずに、帯状溝(71)内に残留するので、除雪後に再度路面表示を形成する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による路面切削用ドラム組立体及び路面切削装置の実施の形態を図1〜図11について説明する。
【0013】
本発明による路面切削用のドラム組立体(1)は、ドラム(2)と、ドラム(2)の外周面(12)に固定された複数の刃体(3)とを備えている。ドラム(2)は、ステンレス、軟鋼等の鉄又は鉄基合金により内部空洞(7)を有する円筒状に形成され、内部空洞(7)には、内側フランジ(8)が設けられる。内側フランジ(8)の外周部は、円筒状のドラム(2)の内周面に固着され、中心部に貫通孔(9)が形成される。貫通孔(9)の周囲には同心円上に中心を有する複数の開口部(10)が形成される。ドラム(2)の直径は、200〜600mm、幅は150〜1000mm等必要に応じて種々の寸法で作成できる。ドラム(2)の直径が小さいと、大きい切削トルクが発生して、深い帯状溝(71)を形成できるが、全領域の切削に長い施工時間を要する。ドラム(2)の直径が大きいと、切削速度を増加できる反面、切削トルクが低下する難点があるので、施工現場の状況に応じてドラム(2)の形状を決定するとよい。
【0014】
各刃体(3)は、ドラム(2)の外周面(12)に固定されたホルダ(4)と、ホルダ(4)に取り付けられかつチップ(6)が固着されたシャンク(5)とを備えている。ホルダ(4)は、円筒状のドラム(2)の湾曲する外周面(12)に適合する湾曲する底面(20)が形成された連結部材(13)を備え、連結部材(13)は、ドラム(2)の外周面(12)に溶接により固着される。別法として、ドラム(2)に貫通孔を形成して、ホルダ(4)に固着したスタッドボルトをドラム(2)の貫通孔に挿入してナットでホルダ(4)をドラム(2)に固定することもできる。連結部材(13)は、ホルダ(4)と一体に形成してもよく、別体で形成した後にホルダ(4)に固定してもよい。
【0015】
図2に示すように、シャンク(5)は、頭部(15)と、頭部(15)より断面が小さくかつホルダ(4)に形成された支持孔(14)内に嵌合される軸部(16)とを有する。高速度鋼、焼結金属等の硬質金属により形成されたチップ(6)が溶接により頭部(15)に固定され、チップ(6)とは反対側に頭部(15)から軸部(16)が延伸する。ホルダ(4)には側孔(17)が形成され、着脱自在に側孔(17)に嵌合されるスプリングピン(18)が軸部(16)の図示しない切欠部に係合して、軸部(16)の側孔(17)からの脱落を防止する。スプリングピン(18)は、弾性のある板を円筒状に丸め、その半径方向のばね作用を利用し、側孔(17)に打ち込んでシャンク(5)の軸部(16)の切欠部をホルダ(4)に固定するピンである(JISB2808)。スプリングピン(18)は、拡張する自身の弾力による摩擦力により側孔(17)内に保持されるため、側孔(17)内に取り付けられたスプリングピン(18)を一端から押圧すると、側孔(17)から他端が突出し、側孔(17)からスプリングピン(18)を取り出すことができる。従って、ホルダ(4)に対するシャンク(5)の着脱及び交換を極めて容易に行うと共に、スプリングピン(18)によりホルダ(4)に対して回転不能にかつ着脱自在に各シャンク(5)を取り付けることができる。
【0016】
シャンク(5)の先端に固定されるチップ(6)は、ドラム(2)の中心軸(L)に対して平行な直線状の先端稜(11)を有する。図3に示すように、チップ(6)は、正面視で矩形に形成され、チップ(6)の前面(21)は、先端稜(11)とドラム(2)の中心軸(L)に対して0度乃至15度のすくい角θを持つすくい面を形成する。チップ(6)の裏面(23)及び内側面(25)は、銅系等の金属製ろう材によりシャンク(5)のほぼ直角な当接面(26)に強固に溶接される。例えば、チップ(6)の横幅(W)は、10〜100mmの範囲内、縦幅(H)は、7〜80mmの範囲内、厚さ(t)は、1〜10mmの範囲内である。チップ(6)の外側面(24)は、シャンク(5)の上面(22)とほぼ同一面に形成されるが、チップ(6)の先端稜(11)を含む外側面は、先端稜(11)の回転方向接線に対して0度乃至15度の逃げ角(φ)を形成する。このように、ドラム(2)と、ドラム(2)の外周面(12)に固定された複数の刃体(3)とを備えるドラム組立体(1)を一度組み立てれば、ドラム組立体(1)を組立状態で保管し、運搬しかつ路面切削装置に取り付けることができる。
【0017】
図6に示すように、周方向に互いに離間しかつ刃体(3)に設けられるチップ(6)の幅方向の端部を重複領域(D)だけ互いに重複させてドラム(2)上に幅方向に隣り合う刃体(3)が固定されると共に、各チップ(6)の先端稜(11)は、同一の半径上に配置される。ドラム(2)の幅方向に隣り合う刃体(3)を周方向に互いに離間させるので、十分な固定面積を与えて各刃体(3)をドラム(2)の外周面(12)に固定することができる。隣り合う刃体(3)に設けられるチップ(6)の幅方向の端部を互いに一定の重なり幅(D)だけ重複させかつ各チップ(6)の先端稜(11)を同一の半径上に配置するので、帯状溝(71)の底面に削り残し又は凹凸部が発生せずに、均一な深さの帯状溝(71)を路面(70)に形成できる。幅方向に隣り合う全ての刃体(3)のチップ(6)について一定の重なり幅(D)を付与することもできるが、厳密に同一の重なり幅(D)であることを要せず、重なり幅(D)は、不均一な幅でもよいが、同一の半径上に先端稜(11)を配置するチップ(6)の径方向突出量は厳密に制御しなければならない。本実施の形態では、少なくとも幅方向に隣り合う刃体(3)のチップ(6)は、周方向にずれて、即ち角度上互いに離間してドラム(2)の外周面(12)上に固定されるが、全ての刃体(3)のチップ(6)を周方向にずれてドラム(2)の外周面(12)上に固定してもよい。
【0018】
ドラム組立体(1)を組立てる際に、チップ(6)を溶接したシャンク(5)の軸部(16)をホルダ(4)の支持孔(14)内に嵌合し、スプリングピン(18)を側孔(17)内に装着してシャンク(5)をホルダに固定する。その後、ドラム(2)の中心軸(L)から同一の半径上に各チップ(6)の先端稜(11)を配置して刃体(3)のホルダ(4)をドラム(2)の外周面(12)上に固定し、ドラム組立体(1)の組立が完了する。ホルダ(4)をドラム(2)上に固定する場合に、チップ(6)の幅方向の端部を互いにある重なり幅(D)だけ重複させかつ各チップ(6)の先端稜(11)を同一の半径上に配置することが必要である。
【0019】
図9〜図11は、本発明による路面切削用のドラム組立体(1)の他の実施の形態を示す。図9〜図11に示すドラム組立体(1)は、金属製のディスク(31)と、ディスク(31)の外周部に固着されたチップ(6)とを有する複数の切削ブレード(30)を備えている。複数の切削ブレード(30)の各々は、チップ(6)により形成される同一の外径を有し、貫通孔(34)が同軸上に形成される。チップ(6)の外周面から径方向内側に延伸する複数のスリット(72)が各切削ブレード(30)に形成され、同一の切削ブレード(30)では、各スリット(72)は、所定の角度間隔離間して配置される。切削ブレード(30)は、中心孔(32)と、中心孔(32)と共に形成される切欠部(29)とを有し、切削ブレード(30)の中心孔(32)に駆動軸(50)を挿入すると、駆動軸(50)に固定されたキー(25)が切削ブレード(30)の切欠部(29)に嵌合して、切削ブレード(30)は、駆動軸(50)と一体に回転する。
【0020】
その後、図7に示す駆動軸(50)の駆動フランジ(55)にドラム組立体(1)を着脱自在に固定するが、図7は、図8に示す自走式車両の路面切削装置(60)から取り外した駆動軸(50)の斜視図を示す。駆動軸(50)には動力伝達用のプーリ(53)が固定され、プーリ(53)にはベルト(54)が捲回され、ベルト(54)は、路面切削装置(60)の動力装置(64)又は付加的な動力装置に駆動接続される。図8の路面切削装置(60)に駆動軸(50)を取外し可能にかつ駆動回転可能に取り付けることができる。図1に示す実施の形態では、ドラム(2)に固定した内側フランジ(8)の貫通孔(9)を駆動軸(50)に嵌合した後に、内側フランジ(8)の開口部(10)と駆動軸(50)の駆動フランジ(55)に形成された開口部(56)とを同軸上に整合させて、ボルト及びナット等の公知の固定手段により内側フランジ(8)と駆動フランジ(55)とを固定することにより、ドラム組立体(1)を路面切削装置(60)に取り付けることができる。
【0021】
図11に示す実施の形態では、隣り合う切削ブレード(30)のディスク(31)間にはスペーサ(36)が配置され、スペーサ(36)にも貫通孔(37)が形成される。各切削ブレード(30)の貫通孔(34)、スペーサ(36)の貫通孔(37)及び駆動フランジ(55)の開口部(56)内にボルト状の連結ロッド(35)を挿入し、連結ロッド(35)の頭部(38)とナット(39)とを締付けることにより、駆動フランジ(55)にドラム組立体(1)が取り付けられる。スペーサ(36)の厚さは、隣り合うディスク(31)間の距離より僅かに薄いため、連結ロッド(35)の両端からドラム組立体(1)に締め付け力を加えることにより、隣接するチップ(6)の側面(33)が互いに直接接触する状態で駆動軸(50)上に配列された切削ブレード(30)に十分な軸方向の押圧力を加えて、互いに直接接触するチップ(6)間の離間を防止すると共に、駆動軸(50)に固定されたフランジ(55)に連結ロッド(35)を固定することができる。
【0022】
図8に示すように、路面切削装置(60)は、シャーシ(61)と、シャーシ(61)に固定された動力装置(64)と、シャーシ(61)に回転可能に取り付けられかつ動力装置(64)の動力伝達装置(66)に駆動連結された車輪(63)と、駆動フランジ(55)を有しかつ動力装置(64)に駆動連結された駆動軸(50)と、駆動軸(50)の駆動フランジ(55)に固定されたドラム組立体(1)とを備えている。ドラム組立体(1)に設けたチップ(6)の先端稜(11)を車輪(63)より低い位置に配置し、ドラム組立体(1)を回転して、路面(70)を一定の幅でかつ一定の深さで切削する。ドラム組立体(1)を駆動軸(50)の駆動フランジ(55)に固定するので、ドラム組立体(1)を路面切削装置(60)に容易に取り付けて路面切削装置を構成することができる。ドラム組立体(1)に設けたチップ(6)の先端稜(11)を路面切削装置の車輪より低い位置に配置し、ドラム組立体(1)のチップ(6)を路面(70)に接触させて、ドラム組立体(1)を回転しながら、路面切削装置を走行させると、一定の幅でかつ一定の深さで路面(70)を連続的に切削することができる。
【0023】
駆動軸(50)の両端は、路面切削装置(60)に固定する図示しない軸受によって回転可能に支持されると共に、路面切削装置(60)に対して垂直方向に移動可能に支持される。単一の動力装置(64)を作動することにより、車輪(63)を回転して、路面切削装置(60)を自走させると同時に、駆動軸(50)を回転して車輪(63)の回転方向とは逆方向にドラム組立体(1)を回転して、路面(70)の切削を行うことができる。
【0024】
図1又は図9に示すチップ(6)が路面(70)に食い込む状態でドラム組立体(1)を回転させながら、路面(70)上で路面切削装置(60)を移動すると、ドラム組立体(1)の幅に等しい所定幅の帯状溝(71)が路面(70)に形成される。例えば、路面(70)は、アスファルト又はコンクリートにより形成され、1〜5mm、好ましくは2〜3mmの深さで100〜1000mmの幅の帯状溝(71)を形成できるが、帯状溝(71)の深さは、路面切削装置(60)に対する垂直方向の位置を設定することにより決められ、帯状溝(71)の幅は、ドラム(2)に取り付ける複数の刃体(3)の全幅によって施工の際に適宜決定することができる。このように、本実施の形態では、ドラム組立体(1)は、容易に保管し、運搬し又は路面切削装置(60)に容易に着脱することができる。また、路面切削装置(60)を使用して、所定幅で一定深さの帯状溝(71)を路面(70)に効率よく連続的に形成することができる。路面切削装置(60)を利用して、路面(70)に一定の深さで一定の幅の帯状溝(71)を連続的に形成するので、良好な作業性が得られる。
【0025】
所定幅の帯状溝(71)を路面(70)に形成した後に、表示材料を帯状溝(71)内に供給する。表示用塗料は、粘結剤と、顔料と、流動化剤と、ガラスビーズと、硬質骨材とを含み、帯状溝(71)の深さは、ガラスビーズ又は硬質骨材の直径より大きい。表示用塗料の顔料は、白色に限定されず、緑色、青色、赤色等必要に応じて種々の色の顔料を使用することができる。表示材料を帯状溝(71)内に供給する際に、流動化した表示用塗料を帯状溝(71)内に注入し、自身の流動性により帯状溝(71)内に均一に充填する。流動性を有する表示用塗料の供給速度を適宜選択すれば、表示用塗料は、自重により帯状溝(71)内に均一にかつ路面(70)とほぼ面一の表面を形成するので、路面表示の施工が容易である。粘結剤及び顔料を含む流動化した表示材料を硬化させることにより、帯状溝(71)の底面及び両側面を含む壁面に表示材料を固着することができる。この場合に、路面切削装置を移動させながら、連続的に路面(70)を一定の深さに切削すると同時に、塗料供給装置を路面切削装置に後続して移動させて、塗料供給装置から帯状溝(71)内に表示用塗料を注入してもよい。
【0026】
先に移動させる路面切削装置(60)に追従させて、塗料供給装置を移動させると、路面(70)の帯状溝(71)形成と路面表示の形成を連続的にかつ同時に行うことができ、施工時間を短縮できる。路面切削装置(60)の下部に設けられた駆動軸(50)の垂直方向位置を変更することにより、刃体(3)又は回転ブレード(30)による帯状溝(71)の深さを調節できる。路面(70)の場所又は施工条件により、帯状溝(71)の深さを変更する場合があるが、刃体(3)の突出量の調整により帯状溝(71)の深さを容易に調整することができる。塗料供給装置に後続して加熱装置を移動させて、表示用塗料を連続的に加熱硬化させてもよい。加熱装置を追従して移動させて、帯状溝(71)の形成、表示用塗料の供給及び硬化を一連の過程により連続的かつ迅速に行うことができる。帯状溝(71)内の表示材料の上面を路面(70)とほぼ面一に形成して、表示材料を硬化させる。帯状溝(71)内の表示材料の上面を路面(70)から僅かに突出させて表示材料を硬化させてもよい。帯状溝(71)内の表示材料の上面を路面(70)から僅かに突出させることにより、表示材料が路面(70)より高くなり、表示材料に付着する雨水が表示材料から流出するので、運転者又は歩行者による表示材料の視認性を向上させることができる。所定幅の帯状溝(71)内に供給される表示材料は、帯状溝(71)の外部に流出せずに、所定幅に形成される。
【0027】
また、表示材料は、帯状溝(71)を形成する底面と一対の側面の表面内部に浸透して係合し、帯状溝(71)内に強固に固着される。特に、表示材料は、形成された帯状溝(71)の底面の凹凸と一対の側面の凹凸部とに係合して、帯状溝(71)内に強固に固着される。更に、路面(70)とほぼ面一に表示材料の上面を形成するので、除雪の際に切削されずに、帯状溝(71)内に残留する。また、表示用塗料内に配合されるガラスビーズ及び硬質骨材も帯状溝(71)内に配置されるので、除雪の際に殆ど破壊されず、除雪後に路面表示の再施工を行う必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の路面切削用のドラム組立体及び路面切削装置は、車道、空港、トラック、埠頭等の種々の路面に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による路面切削用ドラム組立体の側面図
【図2】ドラムに固定した刃体の側面図
【図3】ドラムに固定した刃体の正面図
【図4】刃体の平面図
【図5】刃体の背面図
【図6】本発明による路面切削用ドラム組立体の部分正面図
【図7】路面切削用ドラム組立体を装着する路面切削装置の駆動軸を示す斜視図
【図8】路面切削装置の側面図
【図9】本発明の他の実施の形態による路面切削用ドラム組立体の斜視図
【図10】図9に示す路面切削用ドラム組立体に使用する切削ブレードの側面図
【図11】本発明の他の実施の形態による路面切削用ドラム組立体の断面図
【符号の説明】
【0030】
(1)・・路面切削用のドラム組立体、 (2)・・ドラム、 (3)・・刃体、 (4)・・ホルダ、 (5)・・シャンク、 (6)・・チップ、 (8)・・内側フランジ、 (11)・・先端稜、 (12)・・外周面、 (14)・・支持孔、 (15)・・頭部、 (16)・・軸部、 (18)・・スプリングピン、 (L)・・中心軸、 (22)・・前面、 (23)・・裏面、 (25)・・内側面、 (30)・・切削ブレード、 (31)・・ディスク、 (33)・・側面、 (35)・・連結ロッド、 (36)・・スペーサ、 (50)・・駆動軸、 (54)・・駆動装置、 (55)・・駆動フランジ、 (60)・・路面切削装置、 (63)・・車輪、 (70)・・路面、 (71)・・帯状溝、(72)・・スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のディスクと、ディスクの外周部に固着されたチップとをそれぞれ有する複数の切削ブレードを備え、
複数の切削ブレードは、チップにより形成される同一の外径を有し、
隣接するディスクのチップの側面を互いに直接接触させる状態で駆動軸上にディスクを配列しかつ各切削ブレードに同軸上に形成された貫通孔に連結ロッドを挿入して、路面切削用のドラム組立体を構成し、
連結ロッドの両端からドラム組立体に締め付け力を加えることにより、互いに直接接触するチップ間の離間を防止することを特徴とする路面切削用のドラム組立体。
【請求項2】
駆動軸に固定される駆動フランジに連結ロッドを固定した請求項1に記載のドラム組立体。
【請求項3】
駆動軸の駆動フランジにドラム組立体を着脱自在に固定した請求項1又は2に記載のドラム組立体。
【請求項4】
複数の切削ブレード間に配置されたスペーサを備え、
複数の切削ブレードの各貫通孔、スペーサの貫通孔及び駆動フランジの開口部内に連結ロッドを挿入し、連結ロッドとナットとにより隣接するチップの側面が互いに直接接触する状態でドラム組立体を駆動フランジに取り付けた請求項2又は3に記載のドラム組立体。
【請求項5】
連結ロッドの両端から連結ロッドとナットとによりドラム組立体に締め付け力を加えることにより、隣接するチップの側面が互いに直接接触する状態で駆動軸上に配列された切削ブレードに軸方向の押圧力を加えて、互いに直接接触するチップ間の離間を防止する請求項1乃至4の何れか1項に記載のドラム組立体。
【請求項6】
スペーサの厚さは、隣り合うディスク間の距離より僅かに薄い請求項4又は5に記載のドラム組立体。
【請求項7】
金属により円筒状に形成されたドラムと、ドラムの中心軸に対して平行な直線状の先端稜を形成するチップを有しかつドラムの外周面に固定された複数の刃体とを備え、
ドラムの幅方向に隣り合う刃体を周方向に互いに離間させ、隣り合う刃体に設けられるチップの幅方向の端部を互いに重複させかつ各チップの先端稜を同一の半径上に配置したことを特徴とする路面切削用のドラム組立体。
【請求項8】
各刃体は、ドラムの外周面に固定されたホルダと、ホルダに取り付けられかつチップが固着されたシャンクとを備えた請求項7に記載のドラム組立体。
【請求項9】
各シャンクは、ホルダに対して回転不能にかつ着脱自在に取り付けられた請求項8に記載のドラム組立体。
【請求項10】
チップは、正面視で矩形に形成され、前面は、先端稜とドラムの中心軸に対して0度乃至15度のすくい角を持つすくい面を形成し、裏面及び内側面は、シャンクに固着された請求項8又は9に記載のドラム組立体。
【請求項11】
シャンクは、チップを固定する頭部と、チップとは反対側に頭部から延伸する軸部とを有し、
軸部は、頭部より断面が小さくかつホルダに形成された支持孔内に嵌合されて、スプリングピンによりホルダに着脱自在に固定される請求項9又は10に記載のドラム組立体。
【請求項12】
チップの横幅は、10〜100mmの範囲内、縦幅は、7〜80mmの範囲内、厚さは、1〜10mmの範囲内である請求項7乃至11の何れか1項に記載のドラム組立体。
【請求項13】
チップの先端稜を含む外側面は、先端稜の回転方向接線に対して0度乃至15度の逃げ角を形成する請求項7乃至12の何れか1項に記載のドラム組立体。
【請求項14】
ホルダは、円筒状のドラムの湾曲する外周面に適合する湾曲する底面が形成された連結部材を備えた請求項8乃至13の何れか1項に記載のドラム組立体。
【請求項15】
ドラムに回転力を伝達する内側フランジをドラムの内周面に固定した請求項7乃至14の何れか1項に記載のドラム組立体。
【請求項16】
少なくとも幅方向に隣り合う刃体のチップは、周方向にずれてドラムの外周面上に固定される請求項7乃至15の何れか1項に記載のドラム組立体。
【請求項17】
刃体のチップは、周方向にずれてドラムの外周面上に固定される請求項7乃至16の何れか1項に記載のドラム組立体。
【請求項18】
シャーシと、シャーシに固定された動力装置と、シャーシに回転可能に取り付けられかつ動力装置に駆動連結された車輪と、駆動フランジを有しかつ動力装置に駆動連結された駆動軸と、駆動軸の駆動フランジに固定された請求項1乃至17の何れか1項に記載のドラム組立体とを備え、
路面切削装置に駆動回転可能に取り付けられたドラム組立体に設けたチップの先端稜を車輪より低い位置に配置し、
ドラム組立体を回転して、路面を一定の幅でかつ一定の深さで切削することを特徴とする路面切削装置。
【請求項19】
単一の動力装置を作動することにより、車輪を回転して、路面切削装置を自走させると同時に、駆動軸を回転して車輪の回転方向とは逆方向にドラム組立体を回転して、路面の切削を行う請求項18に記載の路面切削装置。
【請求項20】
路面切削装置に駆動軸を駆動回転可能にかつ取外し可能に取り付けた請求項18又は19に記載の路面切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−57825(P2009−57825A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320051(P2008−320051)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【分割の表示】特願2005−287623(P2005−287623)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(500053171)東成建設株式会社 (5)
【Fターム(参考)】