説明

跳ね上げ式手摺り

【課題】良好に使用することができる跳ね上げ式手摺りを提供する。
【解決手段】跳ね上げ式手摺りは、手摺り部10を備えており、手摺り部10が、壁面から略水平方向に延びた使用状態Bと、壁面に沿って略垂直方向に延びた退避状態Aとの間を回動自在に壁面に取り付けられる。手摺り部10が使用状態Bから退避状態Aに回動する方向に弾性力を付与するコイル状のねじりバネ53を有するバネユニット21を有しており、手摺り部10の端部を連結して回動軸を構成する回動軸部20とを備えており、バネユニット21は、ねじりバネ53の一端部を連結する固定部材51と、固定部材51に対して回転自在に取り付け、ねじりバネ53の他端部を連結した回転部材52とを有し、ねじりバネ53は、他端部がねじりバネ53の中心軸から外れており、この他端部が連結している回転部材52は、ねじりバネ53の他端部の内面を案内するガイド部59を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は跳ね上げ式手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の跳ね上げ式手摺りが開示されている。この跳ね上げ式手摺りは、手摺り部を備えており、壁面に取り付けることができる。手摺り部は、壁面から略水平方向に延びた使用状態と、壁面に沿って略垂直方向に延びた退避状態との間を回動自在に設けられている。また、この跳ね上げ式手摺りは、手摺り部を連結した回動軸部と、壁面に固定し、回動軸部を保持するベース部とを備えている。回動軸部は、ねじりバネと、手摺り部に連結して回転する回転部材と、これらを収納する外殻部とを有している。ねじりバネはコイル状である。ねじりバネは、コイルの径方向であり、且つコイルの外側に向かって両端部が延びている。このねじりバネの一端部は回転部材に設けられた係止ピンに係止し、他端部は外殻部材に設けられた係止ピンに係止している。このねじりバネは手摺り部が使用状態から退避状態に回動する方向に弾性力を付与することができる。
【0003】
この跳ね上げ式手摺りは、手摺り部を退避状態から使用状態に下ろす際、ねじりバネの弾性力が手摺り部に付与されるため、手摺り部が急激に下りることを防止することができる。また、この跳ね上げ式手摺りは、手摺り部を使用状態から退避状態に跳ね上げる際、ねじりバネの弾性力に助けられて、手摺り部を軽い力で跳ね上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−282014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の跳ね上げ式手摺りでは、係止ピンに係止するコイル状のねじりバネの両端部がコイルの外側に向かって延びている。コイル状のねじりバネの弾性力はコイルの中心軸を中心とした回転力として発揮されるため、コイルの外側に向かって延びたねじりバネの両端部に回転力(弾性力)が加わると、ねじりバネのコイル形状が不規則に変形してしまうおそれがある。つまり、コイル状のねじりバネの中心軸がよじれてしまうおそれがある。ねじりバネのコイル形状が不規則に変形してしまう(コイル状のねじりバネの中心軸がよじれてしまう)と、ねじりバネが他の部品に摺動し、手摺り部がスムーズに回動しなくなったり、摩耗や、異音の発生の原因になったりするおそれがある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、良好に使用することができる跳ね上げ式手摺りを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の跳ね上げ式手摺りは、手摺り部を備えており、この手摺り部が、壁面から略水平方向に延びた使用状態と、この壁面に沿って略垂直方向に延びた退避状態との間を回動自在に壁面に取り付けられる跳ね上げ式手摺りであって、
前記手摺り部が前記使用状態から前記退避状態に回動する方向に弾性力を付与するコイル状のねじりバネを有するバネユニット、及びこのバネユニットを収納した筒状の外殻部を有しており、前記手摺り部の端部を連結して回動軸を構成する回動軸部と、
前記壁面に固定し、この回動軸部を保持するベース部とを備えており、
前記バネユニットは、前記ベース部に固定し、前記コイル状のねじりバネの一端部を連結する固定部材と、この固定部材に対して回転自在に取り付け、前記コイル状のねじりバネの他端部を連結した回転部材とを有し、
前記コイル状のねじりバネは、一端部及び/又は他端部がこのコイル状のねじりバネの中心軸から外れており、
このコイル状のねじりバネの中心軸から外れた一端部及び/又は他端部が連結している前記固定部材及び/又は前記回転部材は、前記ねじりバネの中心軸から外れた端部の内面を案内するガイド部を有していることを特徴とする。
【0008】
この跳ね上げ式手摺りは、コイル状のねじりバネの中心軸から外れた位置にねじりバネの一端部及び/又は他端部があり、ねじりバネの中心軸から外れた位置で固定部材、又は回転部材に連結されている。コイル状のねじりバネの弾性力はコイルの中心軸を中心とした回転力として発揮されるため、中心軸から外れた位置のねじりバネの一端部及び/又は他端部に回転力(弾性力)が加わると、ねじりバネのコイル形状が不規則に変形してしまう(コイル状のねじりバネの中心軸がよじれてしまう)おそれがある。しかし、この跳ね上げ式手摺りは、ねじりバネの中心軸から外れた端部の内面を案内するガイド部によって、ねじりバネのコイル形状の不規則な変形を防止することができる。このため、ねじりバネが他の部品に摺動し、手摺り部がスムーズに回動しなくなったり、摩耗や、異音の発生の原因になったりすることを防止することができる。
【0009】
したがって、本発明の跳ね上げ式手摺りは良好に使用することができる。
【0010】
前記固定部材は、前記ベース部に固定する基部と、この基部から前記手摺り部の回動軸線上に延び、前記コイル状のねじりバネが周囲を覆う軸部とを有し、
前記回転部材は、前記固定部材の軸部の先端面に回転可能に取り付けられており、
前記基部及び/又は前記回転部材は、前記コイル状のねじりバネの中心軸から外れた位置で前記コイルバネの一端部又は他端部を連結し得る。
【0011】
この場合、コイル状のねじりバネは、コイルの中心軸から外れた位置で、固定部材の基部及び/又は回転部材に連結されているが、ガイド部によって、ねじりバネのコイル形状の不規則な変形を防止することができるため、ねじりバネが軸部等の他の部品に摺動しない。このため、固定部材に対して回転部材が良好に回転することができるため、手摺り部がスムーズに回動し、摩耗や、異音の発生を防止することができる。
【0012】
前記バネユニットは前記手摺り部が前記退避状態で前記コイル状のねじりバネをねじられた状態に保持し得る。この場合、手摺り部が退避状態である際にも、ねじりバネの弾性力を手摺り部に付与することができる。このため、手摺り部が退避状態から意図せずに下方に回動することを防止することができる。
【0013】
前記固定部材及び/又は前記回転部材は、前記コイル状のねじりバネの中心軸に直交し、このコイル状のねじりバネの端部を挿通する挿通孔を有し得る。この場合、コイル状のねじりバネの弾性力はコイルの中心軸を中心とした回転力として発揮される。このため、ねじりバネの中心軸に直交する挿通孔にねじりバネの端部を挿通することによって、ねじりバネは、よじれることなく、回転力(弾性力)を良好に発揮することができる。また、ねじりバネは、その端部をねじりバネの中心軸に直交する挿通孔に挿通することによって固定部材に連結することができる。このため、ねじりバネと固定部材との連結構造がねじりバネの長さ方向に伸びず、バネユニットの長さをコンパクトにすることができる。
【0014】
前記コイル状のねじりバネの前記一端部及び/又は前記他端部は、中心軸から外れた位置で中心軸に平行な方向に延びており、
前記コイル状のねじりバネの中心軸から外れた位置で中心軸に平行な方向に延びた前記コイル状のねじりバネの前記一端部及び/又は前記他端部が連結している前記固定部材及び/又は回転部材は、前記一端部又は前記他端部を係止し、前記回転部材の回転方向に直交する係止面を有し得る。
【0015】
この場合、ねじりバネの一端部及び/又は他端部が回転方向に直交する係止面に係止するため、ねじりバネの弾性力(回転方向に働く力)を回転部材が回転する方向に確実に付与することができる。
【0016】
前記固定部材は前記回転部材の回転を規制する規制部を有し、前記回転部材はこの規制部に当接する当接部を有し得る。この場合、固定部材に対して回転部材がねじりバネの弾性力によって回転することを制限することができる。つまり、バネユニットにおいて、コイル状のねじりバネを固定部材と回転部材との間にねじった状態に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例の跳ね上げ式手摺りを示す斜視図である。
【図2】実施例の跳ね上げ式手摺りの分解図である。
【図3】実施例の回動軸部の分解図である。
【図4】実施例のバネユニットの断面図である。
【図5】実施例のバネユニットの要部を示す斜視図である。
【図6】実施例のバネユニットの要部を示す部分断面図である。
【図7】実施例の回動軸部を示す斜視図である。
【図8】実施例の跳ね上げ式手摺りにおいて、手摺り部が退避状態にあるときの要部を示す断面図である。
【図9】実施例の跳ね上げ式手摺りにおいて、手摺り部が使用状態にあるときの回動軸部を示す断面図である。
【図10】実施例の跳ね上げ式手摺りにおいて、手摺り部が使用状態にあるときの要部を示す断面図である。
【図11】他の実施例の跳ね上げ式手摺りを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の跳ね上げ式手摺りを具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
<実施例>
実施例の跳ね上げ式手摺りは、図1及び図2に示すように、手摺り部10と、回動軸部20と、ベース部30とを備えている。ベース部30は、縦長矩形の平板状に形成された基板部31と、基板部31の左右両辺の中間部から前方へ延びる一対の平板状の保持片32とを有している。基板部31の裏面を壁面に接するようにして、壁面から突出したボルト33Aを基板部31の取付孔31Aに挿通し、ナット33Bを締め付けることによって、ベース部30は壁面に固定されている。
【0020】
基板部31は前面上部に取り付けた合成ゴム製の円柱形状の当たり止め部34を有している。当たり止め部34は、手摺り部10が壁面に沿って略垂直方向に延びた退避状態Aになると、手摺り部10が当接するように設けられている。このため、手摺り部10は、退避状態Aにおいて、壁面に接触しないように設けられている。
【0021】
回動軸部20は外形が円柱状である。回動軸部20はベース部30の保持片32の間に軸方向が水平になるように左右両端が保持されている。手摺り部10は、回動軸部20の左右中央の側面から直線状に延びた第1直線部11、この第1直線部11と平行に設けられた第2直線部12、第1直線部11と第2直線部12とを連結し、手摺り部10の先端部を形成する円弧状の曲線部13、及び回動軸部20に近い位置で第1直線部11と第2直線部12とを連結する連結部14を有している。第1直線部11、第2直線部12、曲線部13及び連結部14はステンレスの円管によって形成されている。
【0022】
また、手摺り部10は、手摺り部10を壁面から略水平方向に延びた使用状態Bにロックするロック機構40を第1直線部11内に収納している。ロック機構40は、手摺り部10の先端側の第1直線部11から第2直線部12に向かって延びる円筒形状の操作レバー41を有している。操作レバー41は、第1直線部11に沿って往復移動することができ、ロック機構40が手摺り部10を使用状態にロックしている状態を解除することができる。
【0023】
第2直線部12は、第1直線部11よりベース部30側へ長く形成されており、端部にエンドキャップ15が取り付けられている。手摺り部10が使用状態Bになると、エンドキャップ15の後端面がベース部30の基板部31の前面下部に当接する。このため、手摺り部10は使用状態Bより下方に下がらないように設けられている。
【0024】
回動軸部20は、図2及び図3に示すように、バネユニット21と、ロータリーダンパー22と、外殻部23とを有している。外殻部23は、円筒形状であり、両端が開口している。また、外殻部23は、中央部の側面から第1直線部11の回動軸部20側を構成する第1管部11Aと、この第1管部11Aの側面に一端を連結した連結部14と、この連結部14の他端に連結し、第2直線部12のエンドキャップ15が設けられた端部側を構成する第2管部12Aとを一体に形成している。さらに、外殻部23は、第1管部11Aの内側に位置する側面に、ロック機構40の後述するストッパー軸42が挿通する第1貫通孔23Aと、バネユニット21の後述する回転部材52に外殻部23を固定するためのボルトを挿通する2個の第2貫通孔23Bとを有している。
【0025】
第1管部11Aは、ロック機構40のスプリング部43と、ストッパー軸42と、ストッパー軸42に連通するジョイント軸44の一部とを収納している。スプリング部43はストッパー軸42が回動軸部20の方向に移動するようにストッパー軸42に弾性力を付与している。
【0026】
手摺り部10は、図2に示すように、第1直線部11の手摺り部10の先端側の直線部11Bと、曲線部13と、第2直線部12の手摺り部10の先端側の直線部12Bとを構成する第3管部材16を有している。第3管部材16はステンレス製の円管をU字状に曲げることによって形成されている。第3管部材16は、一端部を第1管部11A内に挿入し、他端部を第2管部12A内に挿入する。つまり、手摺り部10の第1直線部11は、第1管部11Aと、それに連続する第3管部材16の直線部11Bとによって構成しており、手摺り部10の第2直線部12は、第2管部12Aと、それに連続する第3管部材16の直線部12Bとによって構成している。
【0027】
第1管部11Aに連続する第3管部材16の直線部11B内には、ロック機構40のジョイント軸44が収納されている。ジョイント軸44は先端部に操作レバー41の取付部45が設けられている。第3管部材16はこの取付部45に対応する位置に第3管部材16に沿ったスリット17が貫設されている。このスリット17を挿通する取付棒46を介して操作レバー41が取り付けられている。操作レバー41は第1直線部11に沿って往復移動することができる。このため、操作レバー41をスプリング部43の弾性力に抗して手摺り部10の先端側に移動させることができ、ロック機構40のストッパー軸42の先端をバネユニット21の後述する固定部51に設けられた凹部55Dから引き出すことができる。このようにして、ロック機構40が手摺り部10を使用状態Bにロックしている状態を解除することができる。
【0028】
バネユニット21は、図2及び図3に示すように、ベース部30の右側(図2において右側)の保持片32に固定する固定部材51と、この固定部材51に対して回転自在に取り付けられた回転部材52と、固定部材51と回転部材52との間にねじった状態に保持したコイル状のねじりバネ53とを有し、これらを組み付けた状態で一体化している。
【0029】
コイル状のねじりバネ53は、図2〜図4に示すように、一端部である右側(図3において右側)の端部53Aをコイルの円周部からコイルの中心軸方向に折り曲げ、コイルの中心軸に直交するように形成している。また、コイル状のねじりバネ53は、図2、図3、図5、及び図6に示すように、他端部である左側(図3において左側)の端部53Bをコイル状の円周部からコイルの中心軸と平行になるように折り曲げている。つまり、ねじりバネ53の左側の端部53Bはコイルの中心軸から外れて、中心軸に平行な方向に延びている。
【0030】
固定部材51は、図2〜図4に示すように、基部54と、手摺り部10の回動軸線上に延び、コイル状のねじりバネ53が周囲を覆う軸部55と、ねじりバネの右側の端部を挿入する挿通孔56とを有している。基部54はベース部30の右側の保持片32にボルト32Aによって固定される。この基部54は、外殻部23の外周面よりわずかに小さい外周径を有した円盤状の第1円盤部54Aと、この第1円盤部54Aの左側(図3において左側)の側面に連続して形成され、第1円盤部54Aよりも径の小さい第2円盤部54Bとを有している。また、この基部54は第2円盤部54Bの外周面に嵌合したベアリング部材54Cを有している。このベアリング部材54Cは、内周面が第2円盤部54Bの外周面に接しており、外周面が外殻部23の右側(図3において右側)の開口部23Cの内周面に接する大きさに形成されている。
【0031】
固定部材51の軸部55は、図2〜図5に示すように、円柱状の軸本体55Aと、軸本体55Aの左側(図3において左側)の端部の側面の一部分から扇状に拡がった規制部55Bとを有している。規制部55Bは軸本体55Aの円周方向に直交する面55Cが回転部材52の後述する当接部58の当接面58Aに当接することによって、固定部材51に対して回転部材52がねじりバネ53の弾性力によって回転することを制限することができる。つまり、バネユニット21において、コイル状のねじりバネ53を固定部材51と回転部材52との間にねじった状態に保持することができる。規制部55Bは、外方向に向けて開口し、ロック機構40のストッパー軸42の先端が挿入される凹部55Dが側面に形成されている。
【0032】
また、固定部材51の軸部55は、右側(図3において右側)の端面に中心軸に直交する溝部56Aが形成されている。軸部55と基部54とは同軸上に連結される。これによって、軸部55の溝部56Aと基部54の側面とが、ねじりバネ53の右側の端部53Aを挿入する挿通孔56を形成している。つまり、軸部55の溝部56Aにねじりバネ53の右側の端部53Aを収納した状態で、軸部55と基部54とをボルト51Aによって連結することによって、ねじりバネ53の中心軸に直交した挿通孔56が形成され、この挿通孔56にねじりバネ53の右側の端部53Aを挿入した状態にすることができる。
【0033】
コイル状のねじりバネ53の弾性力はコイルの中心軸を中心とした回転力として発揮される。このため、ねじりバネ53の中心軸に直交する挿通孔56にねじりバネの右側の端部53Aを挿通することによって、ねじりバネ53は、よじれることなく、回転力(弾性力)を良好に発揮することができる。また、ねじりバネ53は、右側の端部53Aをねじりバネ53の中心軸に直交する挿通孔56に挿通することによって固定部材51に連結することができる。このため、ねじりバネ53と固定部材51との連結構造がねじりバネ53の長さ方向に伸びず、バネユニット21の長さをコンパクトにすることができる。
【0034】
回転部材52は、図2〜図6に示すように、固定部材51に対して同軸上であり、軸部55の左側(図3において左側)の先端面に摺動するようにして、回転自在に取り付けられている。この回転部材52は、円盤状の本体部57と、この本体部57の外周部の一部分から軸線に平行に延びた当接部58と、当接部58の内側(固定部材51の軸部55側)に連続して形成され、当接部58よりも長く延びたガイド部59とを有している。当接部58及びガイド部59は、回転部材52の軸線に直交する断面形状が円弧状に湾曲した横長矩形状に形成されている。
【0035】
回転部材52の本体部57は、当接部58の回転部材52の回転方向に直交する側面(係止面)58Bの近傍にコイル状のねじりバネ53の左側の端部53Bを挿入して連結する連結孔57Aを有している。連結孔57Aは回転部材52の本体部57の外周部に貫設されており、回転部材52の回転軸に平行な方向に延びている。ねじりバネ53の左側の端部53Bは連結孔57Aから当接部58の係止面58Bに沿って延びており、ねじりバネ53がねじられるに従って、この係止面58Bにねじりバネ53の左側の端部53Bが接触して係止する。このため、ねじりバネ53の弾性力(回転方向に働く力)を確実に回転部材52が回転する方向に付与することができる。
【0036】
また、ガイド部59は、外側面59Aが円弧状に湾曲しており、この外側面59Aがコイル状のねじりバネ53の左側の端部53Bの内面に接触することによって、コイル状のねじりバネ53の左側の端部53Bの内面を案内している。これによって、ねじりバネ53のコイル形状の不規則な変形を防止することができる。このため、ねじりバネ53が他の部品に摺動し、手摺り部がスムーズに回動しなくなったり、摩耗や、異音の発生の原因になったりすることを防止することができる。
【0037】
また、回転部材52の本体部57は、図3に示すように、左側の側面57Bにロータリーダンパー22の後述する嵌合凸部22Bに嵌合する嵌合凹部57Cを設けている。この嵌合凹部57Cは、側面57Bに平行な断面形状が回転部材52の回転軸に直交する略横長矩形状に形成されており、一方の長辺の中央部が外側に円弧状に凹んでいる。この形状は、ロータリーダンパー22の嵌合凸部22Bと相似形であり、嵌合凸部22Bが嵌合凹部57Cに挿入される向きが制限されている。
【0038】
また、回転部材52の本体部57は、図2及び図3に示すように、回動軸部20の外殻部23の側面を貫設した第2貫通孔23Bを挿通したボルトがねじ込まれる2個の螺子孔57Dが外周面に設けられている。このため、第1管部11A内から第2貫通孔23Bを介してボルトを螺子孔57Dにねじ込むことによって、外殻部23を回転部材52に固定することができる。外殻部23を回転部材52に固定することによって、手摺り部10は回動軸部20を回動軸として上下に回動することができる。
【0039】
ロータリーダンパー22は、図2及び図3に示すように、内部にオイルが収納された円筒形の本体部22Aと、本体部22Aに対して回転する回転軸22Cとを有している。このロータリーダンパー22は、回転軸22Cの一方向の回転に対して、本体部22A内のオイルの流動による抵抗を利用して、回転軸22Cに制動力を付与することができる。つまり、回転軸22Cの逆方向の回転に対しては制動力を付与しない。本体部22Aは右側(図3において右側)の端面に嵌合凸部22Bを凸設している。この嵌合凸部22Bは、前述したように、回転部材52の嵌合凹部57Cの形状と相似形であり、本体部22Aの中心軸に直交する断面形状が回転軸に直交する略横長矩形状であり、一方の長辺の中央部が外側に円弧状に膨らんでいる。回転軸22Cは、中心軸に直交する断面形状が略横長矩形状であり、両短辺が外側に膨らんだ湾曲形状である。
【0040】
回動軸部20は外殻部23の左側(図3において左側)の開口部23Dを閉鎖する閉鎖部材61を有している。この閉鎖部材61はベース部30の左側(図2において左側)の保持片32にボルト32Aによって固定される。この閉鎖部材61は、外殻部23の外周面よりわずかに小さい外周径を有した円盤状の第1円盤部61Aと、この第1円盤部61Aの右側(図3において右側)の側面に連続して形成され、第1円盤部61Aよりも径の小さい第2円盤部61Bとを有している。また、この閉鎖部材61は第2円盤部61Bの外周面に嵌合したベアリング部材61Cを有している。このベアリング部材61Cは、内周面が第2円盤部61Bの外周面に接しており、外周面が外殻部23の左側の開口部23Dの内周面に接する大きさに形成されている。さらに、この閉鎖部材61は、第1円盤部61Aと、第2円盤部61Bの中心を貫通した貫通孔62が設けられている。この貫通孔62は、ロータリーダンパー22の回転軸22Cの外形にわずかに大きい相似形に形成されており、回転軸22Cを挿入することができる。
【0041】
以上の構成を有する跳ね上げ式手摺りは、以下に説明するように、組み付けることができる。
【0042】
先ず、図3に示すように、回動軸部20の外殻部23の右側の開口部23Cからバネユニット21を挿入する。この際、回転部材20の本体部57の外周面に設けられた螺子孔57Dが外殻部23の側面に貫設した第2貫通孔23Bに重なるようにバネユニット21を外殻部23内の挿入する。そして、第2貫通孔23Bを介してボルトを螺子孔57Dにねじ込むことによって、外殻部23を回転部材52に固定する。これによって、外殻部23内にバネユニット21が組み付けられる。
【0043】
次に、ロック機構40を手摺り部10の第1直線部11を構成する第1管部11A内に挿入して取り付ける。その後、手摺り部10を構成する第3管部材16の両端部を夫々第1管部11A内及び第2管部12A内に挿入し、固定しつつ、操作レバー41を取り付ける。
【0044】
次に、回転軸部20の外殻部23の左側の開口部23Dからロータリーダンパー22を挿入する。この際、ロータリーダンパー22に設けられた嵌合凸部22Bが回転部材52の本体部57に設けられた嵌合凹部57Cに嵌合するようにロータリーダンパー22を外殻部23内に挿入する。その後、閉鎖部材61に貫設された貫通孔62にロータリーダンパー22の回転軸22Cを挿入しつつ、閉鎖部材61を外殻部23の左側の開口部23Dに嵌め込む。これによって、図7に示すように、回転軸部20の外殻部23内にバネユニット21と、ロータリーダンパー22とが組み付け状態で収納される。
【0045】
次に、ベース部30の保持片32の間に回動軸部20をボルト32Aによって固定することによって、跳ね上げ式手摺りの組み付けが完成する。
【0046】
この跳ね上げ式手摺りを壁面に固定する際には、図8に示すように、手摺り部は壁面に沿って略垂直方向に延びた退避状態Aとなる。この状態で、バネユニット21内のコイル状のねじりバネ53はねじられた状態に保持されている。このため、ねじりバネ53の弾性力を手摺り部10に付与し、手摺り部10が退避状態Aから意図せずに下方に回動することを防止することができる。
【0047】
また、手摺り部10を退避状態Aから使用状態Bに下ろす際には、バネユニット21の回転部材52にねじりバネ53の弾性力と、ロータリーダンパー22の制動力とが付与されるため、手摺り部10はゆっくりと下りる。
【0048】
手摺り部10が使用状態Bにあるときは、図9及び図10に示すように、ロック機構40のストッパー軸42の先端がバネユニット21の固定部51の規制部55Bに設けられた凹部55Dに挿入される。このため、手摺り部10は使用状態Bにロックされている。
【0049】
手摺り部10に設けられた操作レバー41を手摺り部41の先端側に移動させると、ロック機構40のストッパー軸42の先端を凹部55Dから引き出すことができ、ロック機構40が手摺り部10を使用状態Bにロックしている状態を解除することができる。このため、手摺り部10を使用状態Bから退避状態Aに跳ね上げることができる。その際、手摺り部10にロータリーダンパー22の制動力が付与されず、バネユニット21のねじりバネ53の弾性力に助けられて、手摺り部10を軽い力で跳ね上げることができる。このように、この跳ね上げ式手摺りは、ねじりバネ53の弾性力及びロータリーダンパー22の制動力を利用して手摺り部の上げ下げを良好に行うことができる。
【0050】
この跳ね上げ式手摺りは、ロータリーダンパー22の耐久年数が経過した際等にロータリーダンパー22の交換を容易に行うことができる。つまり、ロータリーダンパー22を交換する際には、壁面にベース部30を固定したまま、ボルト32Aを外して、回動軸部20をベース部30の保持片32の間から取り外す。これによって、回動軸部20の外殻部23の左側の開口部23Dからロータリーダンパー22を取り出すことができる。そして、新しいロータリーダンパー22を外殻部23の左側の開口部23Dから挿入して、閉鎖部材61を外殻部23の左側の開口部23Dに嵌め込み、再度、回動軸部20をベース部30の保持片32の間に配置し、ボルト32Aを締め込んで固定する。このように、この跳ね上げ式手摺りは、ロータリーダンパー22の交換を容易に行うことができる。
【0051】
また、この跳ね上げ式手摺りは、ねじりバネ53の耐久年数が経過した際等にねじりバネ53の交換も容易に行うことができる。つまり、バネユニット21を交換する際には、壁面にベース部30を固定したまま、ボルト32Aを外して、回動軸部20をベース部30の保持片32の間から取り外す。さらに、外殻部23と回転部材52とを固定するボルトを外すことによって、回動軸部20の外殻部23の右側の開口部23Cからバネユニット21を取り出すことができる。そして、新しいバネユニット21を外殻部23の右側の開口部23Cから挿入して、外殻部23と回転部材52とをボルトによって固定する。そして、再度、回動軸部20をベース部30の保持片32の間に配置し、ボルト32Aを締め込んで固定する。このように、この跳ね上げ式手摺りは、バネユニット21の交換も容易に行うことができる。
【0052】
また、ねじりバネ53はバネユニット内にねじられた状態に保持されて一体化されているため、ねじりバネ53の弾性力の影響を受けずに回動軸部20をベース部30の保持片32の間から取り外したり、取り付けたりすることができる。また、同様にロータリーダンパー22や、バネユニット21を外殻部23から取り出したり、挿入したりする際にもねじりバネ53の弾性力の影響を受けないため、ロータリーダンパー22を容易に交換することができる。
【0053】
したがって、実施例の跳ね上げ式手摺りは、部品交換を容易に行うことができ、長期間、良好に使用することができる。
【0054】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、ロック機構を有しているが、ロック機構を有さなくてもよい。この場合、図11に示すように、手摺り部に操作レバーを有さない。
(2)実施例では、ねじりバネの左側の端部のみが、コイル状のねじりバネの中心軸から外れており、回転部材のねじりバネの中心軸から外れた位置で連結されているが、右側の端部のみ、又は左右両端部がコイル状のねじりバネの中心軸から外れており、右側の端部は固定部材のねじりバネの中心軸から外れた位置で連結してもよい。この場合、ねじりバネの右側の端部の内面を案内するガイド部を固定部材に設けるとよい。
(3)実施例では、ねじりバネの左側の端部のみが、ねじりバネの中心軸から外れた位置で中心軸に平行な方向に延びているが、右側の端部のみ、又は左右両端部がねじりバネの中心軸から外れた位置で中心軸に平行な方向に延びていてもよい。この場合、ねじりバネの右側の端部に係止する係止面を固定部材に設けるとよい。
【符号の説明】
【0055】
10…手摺り部
20…回動軸部
21…バネユニット
23…外殻部
30…ベース部
51…固定部材
52…回転部材
53…ねじりバネ
54…基部
55…軸部
55B…規制部
56…挿通孔
58…当接部
58B…係止面
59…ガイド部
A…退避状態
B…使用状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺り部を備えており、この手摺り部が、壁面から略水平方向に延びた使用状態と、この壁面に沿って略垂直方向に延びた退避状態との間を回動自在に壁面に取り付けられる跳ね上げ式手摺りであって、
前記手摺り部が前記使用状態から前記退避状態に回動する方向に弾性力を付与するコイル状のねじりバネを有するバネユニット、及びこのバネユニットを収納した筒状の外殻部を有しており、前記手摺り部の端部を連結して回動軸を構成する回動軸部と、
前記壁面に固定し、この回動軸部を保持するベース部とを備えており、
前記バネユニットは、前記ベース部に固定し、前記コイル状のねじりバネの一端部を連結する固定部材と、この固定部材に対して回転自在に取り付け、前記コイル状のねじりバネの他端部を連結した回転部材とを有し、
前記コイル状のねじりバネは、一端部及び/又は他端部がこのコイル状のねじりバネの中心軸から外れており、
このコイル状のねじりバネの中心軸から外れた一端部及び/又は他端部が連結している前記固定部材及び/又は前記回転部材は、前記ねじりバネの中心軸から外れた端部の内面を案内するガイド部を有していることを特徴とする跳ね上げ式手摺り。
【請求項2】
前記固定部材は、前記ベース部に固定する基部と、この基部から前記手摺り部の回動軸線上に延び、前記コイル状のねじりバネが周囲を覆う軸部とを有し、
前記回転部材は、前記軸部の先端面に回転可能に取り付けられており、
前記基部及び/又は前記回転部材は、前記コイル状のねじりバネの中心軸から外れた位置で前記コイルバネの一端部又は他端部を連結していることを特徴とする請求項1記載の跳ね上げ式手摺り。
【請求項3】
前記バネユニットは前記手摺り部が前記退避状態で前記コイル状のねじりバネをねじられた状態に保持していることを特徴とする請求項1又は2記載の跳ね上げ式手摺り。
【請求項4】
前記固定部材及び/又は前記回転部材は、前記コイル状のねじりバネの中心軸に直交し、このコイル状のねじりバネの端部を挿通する挿通孔を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の跳ね上げ式手摺り。
【請求項5】
前記コイル状のねじりバネの前記一端部及び/又は前記他端部は、中心軸から外れた位置で中心軸に平行な方向に延びており、
前記コイル状のねじりバネの中心軸から外れた位置で中心軸に平行な方向に延びた前記コイル状のねじりバネの前記一端部及び/又は前記他端部が連結している前記固定部材及び/又は回転部材は、前記一端部又は前記他端部を係止し、前記回転部材の回転方向に直交する係止面を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の跳ね上げ式手摺り。
【請求項6】
前記固定部材は前記回転部材の回転を規制する規制部を有し、前記回転部材はこの規制部に当接する当接部を有していることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項記載の跳ね上げ式手摺り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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