説明

車両および車両暖機システム

【課題】車両の各構成要素の暖機効率の向上を図ることができる車両等を提供する。
【解決手段】本発明の車両1によれば、熱媒体を車両1の外部から流入経路164を通じて循環経路160に対して流入させた上で、循環経路160から流出経路166を通じて車両1の外部に対して流出させることができる。このため、循環経路160を流れる熱媒体に対して車両1の外部から熱を伝達する際に、当該熱媒体とは別の熱媒体が用いられずに済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の構成要素を暖機するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの利用効率に対する意識が高まる中、車両の外部から受け入れた熱媒体を、当該車両の構成要素の暖機に利用する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
たとえば、車両外部から受け入れた第1の熱媒体とヒータコアとを熱交換させた上で、当該ヒータコアを経由する循環経路に第2の熱媒体を循環させることにより、当該循環経路が経由するエンジン等が暖機される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−322407号公報
【特許文献2】特開2009−045959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、車両外部から受け入れた第1の熱媒体とヒータコアとの熱交換効率が不十分であるため、循環経路における第2の熱媒体の循環による暖機効率が低下する可能性が高い。
【0006】
そこで、本発明は、車両の各構成要素の暖機効率の向上を図ることができる車両等を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の車両は、熱媒体を第1種の構成要素との間で熱交換させながら循環させるように配置されている循環経路を備えている車両であって、前記車両の外部から前記循環経路に対して前記熱媒体を流入させる流入経路と、前記循環経路から前記車両の外部に対して前記熱媒体を流出させる流出経路とを備えていることを特徴とする(第1発明)。
【0008】
本発明の車両によれば、熱媒体を車両の外部から流入経路を通じて循環経路に対して流入させた上で、循環経路から流出経路を通じて車両の外部に対して流出させることができる。このため、車両の外部から、流入経路および流出経路を経由して循環経路を流れる熱媒体に対して熱が直接的に伝達されうる。すなわち、循環経路を流れる熱媒体に対して車両の外部から熱を伝達する際に、当該熱媒体とは別の熱媒体が用いられずに済む。
【0009】
よって、循環経路を流れる熱媒体と、車両に対して供給される他の熱媒体との熱交換効率の影響を受けることなく、循環経路における熱媒体との熱交換によって、車両の構成要素のうち第1種の構成要素の暖機効率の向上が図られうる。
【0010】
第1発明の車両において、前記流入経路および前記流出経路のうち少なくとも1つが、前記熱媒体を第2種の構成要素との間で熱交換させながら流通させるように配置されていてもよい(第2発明)。
【0011】
当該構成の車両によれば、前記のように車両の外部から、流入経路および流出経路を経由して循環経路を流れる熱媒体に対して熱が直接的に伝達されうる。よって、流入経路および流出経路のうち少なくとも一方における熱媒体との熱交換によって、車両の構成要素のうち第2種の構成要素の暖機効率の向上が図られる。
【0012】
第2発明の車両は、前記第1種の構成要素として、前記車両の室内空間に連通するスペースに配置されているヒータコアと、動力源としてのエンジンとを備え、前記第2種の構成要素として、動力源であるモータに対する電力供給源である蓄電装置を備えていてもよい(第3発明)。
【0013】
当該構成の車両によれば、第1種の構成要素としてのヒータコアおよびエンジンの暖機と、第2種の構成要素としての蓄電装置の暖機とのそれぞれの効率の向上が図られる。
【0014】
第3発明の車両において、前記流出経路が前記熱媒体を前記蓄電装置と熱交換させながら流通させるように配置され、前記流入経路から前記循環経路に流入した前記熱媒体を、前記循環経路において前記エンジンと熱交換させた後、前記流出経路において前記蓄電装置と熱交換させながら流通させる第1流通制御を実行する流通制御要素をさらに備えていてもよい(第4発明)。
【0015】
当該構成の車両によれば、流入経路から循環経路を経て流出経路にいたる経路において、上流側でエンジンが暖機され、下流側で蓄電装置が暖機される。このため、エンジンの温度が、蓄電装置の温度よりも高くなるように、構成要素のそれぞれの暖機が図られる。すなわち、燃費の向上およびエミッションの低減を図るというエンジンの暖機目的と、電力供給性能等を十分に発揮させるという蓄電装置の暖機目的とのそれぞれに鑑みて、エンジンおよび蓄電装置が効率的に暖機されうる。
【0016】
第4発明の車両において、前記循環経路に対する前記流入経路の接続箇所の下流側と、前記循環経路に対する前記流出経路の接続箇所の上流側とのそれぞれにおいて、前記エンジンを迂回するように前記循環経路に対して接続されている迂回経路を備え、前記流通制御要素が、前記流入経路から前記循環経路に流入した前記熱媒体を、前記循環経路において前記エンジンと熱交換させずに前記迂回経路を流通させた後、前記流出経路において前記蓄電装置と熱交換させながら流通させる第2流通制御を実行するように構成されていてもよい(第5発明)。
【0017】
当該構成の車両によれば、必要に応じて蓄電装置をエンジンよりも優先的に暖機することができる。
【0018】
第5発明の車両において、前記迂回経路として、前記熱媒体をラジエータとの間で熱交換させながら流通させる第1迂回経路と、前記熱媒体をラジエータとの間で熱交換させずに流通させる第2迂回経路とを備え、前記流通制御要素が、前記流入経路から前記循環経路に流入した前記熱媒体を、前記第1迂回経路を流通させず、かつ、前記循環経路において前記エンジンと熱交換させずに前記第2迂回経路を流通させた後、前記流出経路において前記蓄電装置と熱交換させながら流通させる前記第2流通制御を実行するように構成されていてもよい(第6発明)。
【0019】
当該構成の車両によれば、ラジエータとの熱交換によって熱媒体の熱が損なわれる事態が回避されうるので、蓄電装置をエンジンよりも優先的に暖機する場合、当該暖機効率の向上が図られる。
【0020】
第3発明の車両において、前記蓄電装置が、前記車両の外部から供給される電力によって充電されるように構成され、前記流通制御要素が、前記熱媒体の温度が閾値以下であることを要件として、前記熱媒体を前記蓄電装置と熱交換させながら前記流入経路および前記流出経路のうち少なくとも一方を流通させるように構成されていてもよい(第7発明)。
【0021】
当該構成の車両によれば、充電性能を十分に発揮させるという蓄電装置の暖機目的に鑑みて、蓄電装置が効率的に暖機されうる。
【0022】
前記課題を解決するための本発明の車両暖機システムは、車両の外部にあって、当該車両の構成要素を暖機するためのシステムであって、第1〜第7発明のうちいずれか1つの車両が有する前記流入経路および前記流出経路のそれぞれに接続される熱交換用経路と、住宅からの廃熱を利用して前記熱交換用経路を流通する前記熱媒体を加熱する加熱装置とを備えていることを特徴とする(第8発明)。
【0023】
本発明の車両暖機システムによれば、車両の外部から、流入経路および流出経路を経由して循環経路を流れる熱媒体に対して、住宅からの廃熱が直接的に伝達されうる。すなわち、循環経路を流れる熱媒体に対して車両の外部から当該廃熱を伝達する際に、当該熱媒体とは別の熱媒体が用いられずに済む。
【0024】
よって、循環経路を流れる熱媒体と、車両に対して供給される他の熱媒体との熱交換効率の影響を受けることなく、循環経路における熱媒体との熱交換によって、車両の構成要素の暖機効率の向上が図られうる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態としての車両および車両暖機システムの構成説明図。
【図2】車両の構成要素の暖機方法を示すフローチャート。
【図3】車両の構成要素の暖機方法に関する説明図。
【図4】サーモスタットの機能説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、図1に概念的に示されているように、車両暖機システム2によって、住宅からの廃熱を利用して、車両1の構成要素を暖機する点に特徴がある。住宅からの廃熱は、当該住宅用に設置されているエアコン、コジェネレーションまたはヒートポンプなどからの廃熱であってもよい。
【0027】
また、住宅に配線されている商用電源線から得られる商用電力を利用して、車両1に搭載されている蓄電装置が充電される。商用電力に代えて、コジェネレーションによる発電電力または住宅の屋根などに設置されている太陽電池パネルによる発電電力によって車両1の蓄電装置が充電されてもよい。
【0028】
(車両および車両暖機システム構成)
本発明の一実施形態としての車両および車両暖機システムの構成について説明する。
【0029】
図1に示されている車両1は、動力源としてエンジン(内燃機関)11およびモータ(電動モータ)12を備えているハイブリッド車両である。エンジン11およびモータ12は、共通の駆動軸に接続されており、ギア機構およびディファレンシャルギア等を介して前輪FWを駆動する。
【0030】
なお、後輪RWは、モータ12とは別個のモータによって、前輪FWと同様にギア機構およびディファレンシャルギア等を介して駆動されてもよい。車両1は、蓄電装置14から供給された電力により車両を推進させる構成であれば、ハイブリッド車両のほか、燃料電池車両または電気自動車等であってもよい。
【0031】
車両1は、充放電が可能であって、モータ12等に対して電力を供給する蓄電装置14を備えている。蓄電装置14は、たとえばリチウムイオン電池であり、その出力電圧は約300V〜500Vの範囲で変動する。蓄電装置14は、ニッケル水素電池および鉛蓄電池といった二次電池または電気二重層キャパシタ等の比較的大きな容量を有するキャパシタであってもよい。蓄電装置14は、複数の電池セルが直列または並列接続された電池パックとして形成されていてもよい。
【0032】
車両1は、車両暖機システム2を構成する給電コネクタ242と接続される受電コネクタ142を備えている。蓄電装置14は、給電コネクタ242と接続されている状態の受電コネクタ142を介して、外部電源から車両1に対して供給される電力によって充電されうる。車両1は、蓄電装置14の充電のためのAC/DCコンバータやDC/DCコンバータなどの電力変換装置を備えている。
【0033】
蓄電装置14は、エンジン11または前輪FWの動力に応じたモータ12による発電電力によって充電されうる。なお、後輪RWが他のモータにより駆動される場合、蓄電装置14は、後輪RWの動力に応じた当該他のモータによる発電電力によって充電されてもよい。
【0034】
受電コネクタ142および給電コネクタ242には、PLCモデム等の通信用コネクタが設けられ、当該通信用コネクタを通じた通信によって車両1および車両暖機システム2の相互認証等が実行されてもよい。
【0035】
車両1は、一または複数のECU(Electric Control Unit)により構成されている制御装置100を備えている。ECUは、CPU、RAMおよびROM等のメモリ、I/O回路等からなるコンピュータにより構成されている。制御装置100が複数のECUによって構成される場合、当該複数のECUは車内に配線されている通信線によって相互通信可能に接続されている。
【0036】
制御装置100は、温度センサ等の種々のセンサから得られる情報を用い、車両1の走行状況に鑑みて適当な燃料消費効率を実現するように、エンジン11およびモータ12の動作を制御する等、車両1に搭載されているその構成要素である機器の動作を制御するように構成されている。
【0037】
制御装置100が機器の動作を制御するとは、その構成要素であるCPUがメモリから読み出したデータに基づき、同じくメモリから読み出されたソフトウェアにしたがって演算処理を実行することにより、当該制御に必要な制御指令信号を生成かつ出力することを意味する。
【0038】
制御装置100は、蓄電装置14に対する充電電流や充電電圧を制御しつつ、電力線を介して蓄電装置14に対して外部電力を供給する機能を有するが、当該機能を有する部分は、PDU(Power drive Unit)等の独立したユニットにより構成されていてもよい。
【0039】
本発明は、車両1の外部において車両暖機システム2によって加熱された熱媒体(水またはLLC等の液体)により、車両1のエンジン11およびバッテリ14等の構成要素を暖機する点に特徴がある。そこで、暖機のための車両1の構成について説明する。
【0040】
車両1は、熱媒体が流される熱媒体経路(配管)16を備えている。熱媒体経路16は、循環経路160と、第1迂回経路161と、第2迂回経路162と、車両1の外部から循環経路160に対して熱媒体を流入させる流入経路164と、循環経路160から車両1の外部に対して熱媒体を流出させる流出経路166とを備えている。
【0041】
循環経路160は、熱媒体をエンジン11およびヒータコア18(第1種の構成要素)との間で熱交換させながら循環させるように配置されている。ヒータコア18は、車両1の室内に連通する空間に配置されている。ヒータコア18は比較的大きな熱容量を有しており、循環経路160を流れる熱媒体との間で熱交換することにより、当該熱媒体の熱を蓄熱する。そして、ヒータコア18と熱交換した空気(車両1の外部から車両1の内部に取り込まれた空気または車両1の内部を循環している空気)が車両1の室内に導入または送風されうる。
【0042】
第1迂回経路161および第2迂回経路162のそれぞれは、エンジン11を迂回するように循環経路160に対して接続されている。第1迂回経路161および第2迂回経路162のそれぞれは、循環経路160に対する流入経路164の接続箇所の下流側と、循環経路160に対する流出経路166の接続箇所の上流側とのそれぞれにおいて、循環経路160に対して接続されている。第1迂回経路161は、熱媒体をラジエータ19との間で熱交換させながら流通させる。第2迂回経路162は、熱媒体をラジエータ19との間で熱交換させずに流通させる。
【0043】
流入経路164は、車両側流入カプラ144を通じて、車両暖機システム2の熱交換用経路260と接続される。流出経路166は、車両側流出カプラ146を通じて、車両暖機システム2の熱交換用経路260と接続される。流出経路166は、熱媒体をバッテリ14(第2種の構成要素)との間で熱交換させながら流通させるように配置されている。
【0044】
流出経路166に代えてまたは加えて、流入経路164が、熱媒体をバッテリ14(第2種の構成要素)との間で熱交換させながら流通させるように配置されていてもよい。また、循環経路160に代えてまたは加えて、流入経路164および流出経路166のうち少なくとも一方が、熱媒体をエンジン11(第1種の構成要素)との間で熱交換させながら流通させるように配置されていてもよい。さらに、循環経路160が熱媒体をバッテリ14(第2種の構成要素)との間で熱交換させながら流通させるように配置されていてもよい。
【0045】
熱媒体経路16には、ポンプ171およびサーモスタット172が設けられている。制御装置100ならびに制御装置100により動作が制御されるポンプ171およびサーモスタット172が、本発明の「流通制御要素」を構成する。流通制御要素が熱媒体の流通経路および流量を制御することにより、当該熱媒体との熱交換によるエンジン11、バッテリ14およびヒータコア18の暖機の程度が調節されうる。
【0046】
ポンプ171はエンジン11の上流側に配置され、蓄電装置14から供給される電力によって作動する。ポンプ171の動作により、熱媒体は循環経路160のうち当該ポンプ171の下流側に流れることができる。すなわち、ポンプ171の動作が停止している場合、熱媒体は当該ポンプ171を通過することが禁止される。
【0047】
サーモスタット172は、第1迂回経路161および第2迂回経路162の上流側分岐箇所に配置され、第1迂回経路161および第2迂回経路162のそれぞれにおける熱媒体の流通を制御する。
【0048】
参考のため、図4(a)および(b)に、車両1の走行中であってポンプ171が動作している際の熱媒体の流通態様を矢印で示している。熱媒体温度τが基準値τ0未満である場合(低温である場合)、図4(a)に示されているように、サーモスタット172はエンジン11と熱交換した熱媒体の一部を第2迂回経路162に流通させる一方、第1迂回経路161における当該熱媒体の流通を遮断する。これに対して、熱媒体温度τが基準値τ0以上である場合(高温である場合)、図4(b)に示されているように、サーモスタット172はエンジン11と熱交換した熱媒体の一部を第1迂回経路161に流通させる一方、第2迂回経路162における当該熱媒体の流通を遮断する。
【0049】
住宅からの廃熱を利用して車両1の構成要素を暖機するための車両暖機システム2は、熱交換用経路260と、ポンプ261と、熱交換用経路260を流通する熱媒体を加熱するための加熱装置22と、充電装置24とを備えている。
【0050】
熱交換用経路260は、システム側流出カプラ244が車両側流入カプラ144に接続されることにより、下流側において車両1の流入経路164に接続される。その一方、熱交換用経路260は、システム側流入カプラ246が車両側流出カプラ146に接続されることにより、上流側において車両1の流出経路166に接続される。カプラ244および246には接続および非接続の別に応じて自動的に開閉するバルブが内蔵されている。熱交換用経路260には定常的に熱媒体が充填され、適宜熱媒体が補充されるように構成されている。
【0051】
加熱装置22は、たとえば、水素と空気中の酸素から電気をつくりだし、副次的に発生する熱を蒸気や温水として回収する燃料電池システム等、コジェネレーションシステム(以下、適宜「コジェネ」という。)によって構成される。コジェネにより生じた温水によって、熱交換用経路260における熱媒体が加熱されうる。
【0052】
充電装置24は、住宅の商用電源用配線に接続されており、給電コネクタ242が車両1の受電コネクタ142に接続された状態で商用電力を、蓄電装置14の充電等のために車両1に対して供給する。加熱装置22がコジェネにより構成されている場合、充電装置24は、コジェネによる発電電力を車両1に対して供給してもよい。
【0053】
(車両の構成要素の暖機方法)
前記構成の車両1および車両暖機システム2の機能について説明する。具体的には、制御装置100により以下に説明する一連の演算処理が実行される。
【0054】
まず、IGNスイッチがOFFにされていることと、カプラ144と244とが接続されるとともにカプラ146と246とが接続されていることとが確認される。たとえば、各カプラに設けられている端子間の導通の有無により、当該カプラの接続の有無が検知されうる。
【0055】
その上で、二対のカプラのうち少なくとも一対のカプラが接続されることにより接続される通信線を介して、車両1および車両暖機システム2が通信することによってコジェネ(加熱装置22)が作動中であるか否かが判定される(図2/STEP02)。
【0056】
コジェネが作動していないと判定された場合(図2/STEP02‥NO)、コジェネの作動要求が車両1から車両暖機システム2に対して送信される(図2/STEP04)。作動要求に応じて車両暖機システム2はその作動を開始し、発電するとともに、副次的に生じる廃熱により住宅に供給される温水を生じさせることができる。
【0057】
コジェネが作動していると判定された場合(図2/STEP02‥YES)、コジェネの温水温度Tが、車両暖機システム2から車両1に送信されることにより検知される(図2/STEP06)。その上で、コジェネの温水温度Tが基準温度Tc以上であるか否かが判定される(図2/STEP08)。
【0058】
コジェネの温水温度Tが基準温度Tc未満であると判定された場合(図2/STEP08‥NO)、車両1から車両暖機システム2に対してコジェネの作動継続指示が送信される(図2/STEP10)。
【0059】
コジェネの温水温度Tが基準温度Tc以上であると判定された場合(図2/STEP08‥YES)、熱媒体経路16における熱媒体温度τが検知される(図2/STEP12)。熱媒体温度τの検知に際して、熱媒体経路16の一または複数個所に設けられている温度センサからの出力が用いられる。その上で、熱媒体温度τが閾値τc以下であるか否かが判定される(図2/STEP14)。閾値τcは、車両1の構成要素であるエンジン11等が十分に暖機されていると推察されるという観点からあらかじめ設定されている。
【0060】
熱媒体温度τが閾値τc以下であると判定された場合(図2/STEP14‥YES)、蓄電装置14の充電状態SOCが検知される(図2/STEP16)。SOCは、たとえば、蓄電装置12の出力電圧および出力電流から蓄電装置14の開路電圧が推定された上で、当該推定開路電圧と充電量であるSOCとの関係を定義する算出式またはデータテーブルにしたがって算出されうる。
【0061】
一方、熱媒体温度τが閾値τcより高いと判定された場合(図2/STEP14‥NO)、エンジン11等を暖機する必要がないと推察されることに鑑みて、後述する暖機処理は実行されないまま一連の処理が終了する。
【0062】
SOCが閾値SOC0以上であるか否かが判定される(図2/STEP18)。
【0063】
SOCが閾値SOC0以上であると判定された場合(図2/STEP18‥YES)、ポンプ171が作動させられる(図2/STEP22)。
【0064】
SOCが閾値SOC0未満であると判定された場合(図2/STEP18‥NO)、受電プラグ142および給電プラグ242が接続されていることが確認された上で、蓄電装置14の充電が制御される(図2/STEP20)。その上で、ポンプ171が作動させられる(図2/STEP22)。プラグ142および242の接続の有無は、たとえば、プラグ142および242のそれぞれに設けられている端子の導通の有無に応じて判定されうる。
【0065】
ポンプ171の作動により、図3(a)に太矢印で示されているように、流入経路164から循環経路160に流入した熱媒体を、循環経路160においてエンジン11と熱交換させた後、循環経路160においてヒータコア18と熱交換させるとともに、流出経路166において蓄電装置14と熱交換させながら流通させることができる。これが本発明の「第1流通制御」に該当する。
【0066】
基準値τ0が閾値τcより低温であって、熱媒体温度τが基準値τ0未満である場合、エンジン11と熱交換した熱媒体の一部は、サーモスタット172の動作によって第1迂回経路161を流れずに第2迂回経路162を流れる(図4(a)参照)。その一方、基準値τ0が閾値τcより低温であって、熱媒体温度τが基準値τ0以上である場合、エンジン11と熱交換した熱媒体の一部は、サーモスタット172の動作によって第2迂回経路162を流れずに第1迂回経路161を流れることにより、ラジエータ19において外部空気と熱交換する(図4(b)参照)。基準値τ0は閾値τcに対して等温または高温であってもよい。
【0067】
その後、熱媒体温度τが閾値τcより高いか否かが判定される(図2/STEP24)。熱媒体温度τが閾値τc以下であると判定された場合(図2/STEP24‥NO)、ポンプ171の作動が継続される(図2/STEP22)。その一方、熱媒体温度τが閾値τcより高いと判定された場合(図2/STEP24‥YES)、ポンプ171の作動が停止される(図2/STEP26)。
【0068】
なお、制御装置100により、第1流通制御の実行の前後において、または、第1流通制御に代えて、第2流通制御が実行されてもよい。具体的には、制御装置100によりポンプ171の作動されないまたは作動停止されるとともに、サーモスタット172により第1迂回経路161が遮断される一方、第2迂回経路162が開放される。また、制御装置100からの動作指令信号に応じて、車両暖機システム2の熱交換用経路260に設けられているポンプ261が作動する。
【0069】
これにより、図3(b)に太矢印で示されているように、流入経路164から循環経路160に流入した熱媒体を、第1迂回経路161を流通させず、かつ、循環経路160においてエンジン11と熱交換させずに第2迂回経路162を流通させた後、循環経路160においてヒータコア18と熱交換させるとともに、流出経路166において蓄電装置14と熱交換させながら流通させる。
【0070】
(本発明の車両および車両暖機システムの作用効果)
本発明の車両1によれば、熱媒体を車両1の外部から流入経路164を通じて循環経路160に対して流入させた上で、循環経路160から流出経路166を通じて車両1の外部に対して流出させることができる(図3(a)(b)参照)。このため、車両1の外部から、流入経路164および流出経路166を経由して循環経路160を流れる熱媒体に対して熱が直接的に伝達されうる。すなわち、循環経路160を流れる熱媒体に対して車両1の外部から熱を伝達する際に、当該熱媒体とは別の熱媒体が用いられずに済む。
【0071】
よって、循環経路160を流れる熱媒体と、車両1に対して供給される他の熱媒体との熱交換効率の影響を受けることなく、循環経路160における熱媒体との熱交換によって、車両の構成要素のうち第1種の構成要素としてのエンジン11およびヒータコア18の暖機効率の向上が図られうる。また、流出経路166における熱媒体との熱交換によって、車両1の構成要素のうち第2種の構成要素である蓄電装置14の暖機効率の向上が図られる。
【0072】
このように、エンジン11に加えて、蓄電装置14についても暖機できるので、冬季や寒冷地であっても、車両1の冷間始動直後からその性能を十分に発揮させることができる。
【0073】
また、第1流通制御の実行により、流入経路164から循環経路160を経て流出経路166にいたる経路において、上流側でエンジン11が暖機され、下流側で蓄電装置14が暖機される(図3(a)参照)。このため、エンジン11の温度が、蓄電装置14の温度よりも高くなるように、構成要素のそれぞれの暖機が図られる。すなわち、燃費の向上およびエミッションの低減を図るというエンジン11の暖機目的と、電力供給性能等を十分に発揮させるという蓄電装置14の暖機目的とのそれぞれに鑑みて、エンジン11および蓄電装置14が効率的に暖機されうる。
【0074】
さらに、第2流通制御の実行により、必要に応じて蓄電装置14をエンジン11よりも優先的に暖機することができる(図3(b)参照)。この際、ラジエータ19との熱交換によって熱媒体の熱が損なわれる事態が回避されうるので、蓄電装置14の暖機効率の向上が図られる。
【0075】
熱媒体の温度τが閾値τc以下であることを要件として、熱媒体を蓄電装置14と熱交換させながら流出経路166を流通させるので、充電性能を十分に発揮させるという蓄電装置14の暖機目的に鑑みて、蓄電装置14が効率的に暖機されうる(図2/STEP24→STEP22、図3(a)(b)参照)。
【符号の説明】
【0076】
1‥車両、2‥車両暖機システム、11‥エンジン、12‥モータ、14‥蓄電装置、16‥熱媒体経路、160‥循環経路、161‥第1迂回経路、162‥第2迂回経路、164‥流入経路、166‥流出経路、18‥ヒータコア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を第1種の構成要素との間で熱交換させながら循環させるように配置されている循環経路を備えている車両であって、
前記車両の外部から前記循環経路に対して前記熱媒体を流入させる流入経路と、前記循環経路から前記車両の外部に対して前記熱媒体を流出させる流出経路とを備えていることを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両において、
前記流入経路および前記流出経路のうち少なくとも1つが、前記熱媒体を第2種の構成要素との間で熱交換させながら流通させるように配置されていることを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項2記載の車両において、
前記第1種の構成要素として、前記車両の室内空間に連通するスペースに配置されているヒータコアと、動力源としてのエンジンとを備え、
前記第2種の構成要素として、動力源であるモータに対する電力供給源である蓄電装置を備えていることを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項3記載の車両において、
前記流出経路が前記熱媒体を前記蓄電装置と熱交換させながら流通させるように配置され、
前記流入経路から前記循環経路に流入した前記熱媒体を、前記循環経路において前記エンジンと熱交換させた後、前記流出経路において前記蓄電装置と熱交換させながら流通させる第1流通制御を実行する流通制御要素をさらに備えていることを特徴とする車両。
【請求項5】
請求項4記載の車両において、
前記循環経路に対する前記流入経路の接続箇所の下流側と、前記循環経路に対する前記流出経路の接続箇所の上流側とのそれぞれにおいて、前記エンジンを迂回するように前記循環経路に対して接続されている迂回経路を備え、
前記流通制御要素が、前記流入経路から前記循環経路に流入した前記熱媒体を、前記循環経路において前記エンジンと熱交換させずに前記迂回経路を流通させた後、前記流出経路において前記蓄電装置と熱交換させながら流通させる第2流通制御を実行するように構成されていることを特徴とする車両。
【請求項6】
請求項5記載の車両において、
前記迂回経路として、前記熱媒体をラジエータとの間で熱交換させながら流通させる第1迂回経路と、前記熱媒体をラジエータとの間で熱交換させずに流通させる第2迂回経路とを備え、
前記流通制御要素が、前記流入経路から前記循環経路に流入した前記熱媒体を、前記第1迂回経路を流通させず、かつ、前記循環経路において前記エンジンと熱交換させずに前記第2迂回経路を流通させた後、前記流出経路において前記蓄電装置と熱交換させながら流通させる前記第2流通制御を実行するように構成されていることを特徴とする車両。
【請求項7】
請求項3記載の車両において、
前記蓄電装置が、前記車両の外部から供給される電力によって充電されるように構成され、
前記流通制御要素が、前記熱媒体の温度が閾値以下であることを要件として、前記熱媒体を前記蓄電装置と熱交換させながら前記流入経路および前記流出経路のうち少なくとも一方を流通させるように構成されていることを特徴とする車両。
【請求項8】
車両の外部にあって、当該車両の構成要素を暖機するためのシステムであって、
請求項1〜7のうちいずれか1つに記載の車両が有する前記流入経路および前記流出経路のそれぞれに接続される熱交換用経路と、
住宅からの廃熱を利用して前記熱交換用経路を流通する前記熱媒体を加熱する加熱装置とを備えていることを特徴とする車両暖機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−247210(P2011−247210A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122958(P2010−122958)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】