説明

車両における修理手順を視覚化するための方法及び装置

【課題】 特に乗用車やオートバイのような道路走行用の自動車両における故障構成部品及び/又は修理手順及び/又は整備手順を視覚化するための画像データを提供するための方法である。従来の修理マニュアルで生じていた翻訳コストを減少させるために以下のことが提案される。
【解決手段】 特にCADデータ或いはベクトルデータ又はその他の視覚化可能なデータフォーマットのものである、車両の少なくとも2つの構成部品のデジタル化されたデータを提供すること。車両の2つの構成部品の互いに相対的な配置構成のデジタル化されたデータを提供すること。多数の修理手順から第1修理手順を選択するための第1選択要素を提供すること。第1修理手順の第1ステップのデータ或いは画像データを提供すること、次に、第1修理手順の第2ステップのデータ或いは画像データを提供すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、特に乗用車やオートバイのような道路走行用の自動車両(モータビークル)における故障構成部品及び/又は修理手順及び/又は整備手順を視覚化するための画像データを提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の修理マニュアルは、通常、テキストと2次元の図又は図面から構成されている。そのような修理マニュアルのテキストは大きな手間をかけて従って高コストで該当国の言語に翻訳される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は翻訳コストの減少にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従う方法の本質的な観点は以下の処理方式である。第1ステップでは、車両の少なくとも2つの構成部品のデジタル化されたデータが提供される、特にCADデータ或いはベクトルデータ又はその他の視覚化可能なデータフォーマットのものを提供すること。これらのデータ或いは出発データとしては、本発明に従い、好ましくは、いずれにせよ設けられている車両・構成データであり、これらの構成データは車両をディスプレイ上において仮想空間内で描写する。これらのデータとしては、好ましくは、当業者にとって周知のCATIAデータ又はPro−E−データである。これらのデータは、例えばDVD上やCD−ROM上やオンラインでアクセス可能なデータバンク内で使用可能とされ得る。
【0005】
第2ステップでは、車両の2つの構成部品の互いに相対的な配置構成のデジタル化されたデータが使用可能とされる。
【0006】
第3ステップでは、車両の2つの構成部品を互いに接続する少なくとも1つの固定手段のデジタル化されたデータが好ましくは提供される。
【0007】
第4ステップでは、多数の修理手順から第1修理手順を選択するための第1選択要素が本方法の利用者による選択のために提示される。第5ステップでは、第1修理手順の第1ステップの画像データの提供が行われ、次に、修理手順の第2ステップの画像データの提供等々が行われる。多数の修理手順としては、好ましくは(全)修理手順の個々のシーケンスであり、この際、これらのシーケンスは、本発明の実施形態では時間的順序で選択及び再現のためにディスプレイ上に提示される。
【0008】
第6ステップでは、車両において第1ステップを実際に実施するための少なくとも1つの第1工具の画像データを提供すること、車両において第2ステップを実際に実施するための少なくとも1つの第2工具の画像データを提供すること等々が好ましくは意図される。修理に必要とされる工具を描写することにより実際の修理の実施が容易化されて加速される。
【0009】
本発明に従う方法は十分に視覚的である修理手順の詳細描写を可能とし、この際、仮想修理の描写は整備工による実際の修理にほとんど対応する。翻訳コストは、仮想描写においてテキストの部分が少ない(又は無い)ために周知の解決策に比べて多大に減少される。車両・構成時に或いは車両の生産プロセス或いは組立プロセスのシムレーションとの関連でいずれにせよ生成されているCADデータ或いはCATIAデータなどを使用することにより、本発明に従う方法は経済的に実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態では、手動のデータ入力装置、特に接触感知可能なモニタ、即ち所謂タッチスクリーンモニタを有するデータ処理装置の使用が、提供されている画像データ及び第1選択要素の描写のために意図されていて、この際、第1選択要素は場合により手動接触によって選択される。そのようなデータ処理装置或いはそのような修理・描写・装置はコンパクトであり、荒涼たる工場状況のなかでさえ邪魔になるものではない。
【0011】
本発明の他の構成では、修理すべき又は整備すべき車両の診断システムが本発明に従う方法に取り入れられる。車両のこの診断システムは、通常、車両の少なくとも1つの第1電子コンポーネントの状態又は稼動可能状態を検知するための少なくとも1つの故障メモリ(キープ・アライブ・メモリ)を有する。本発明に従い、診断システムを車両の診断プラグを介して及び/又は対応的な送受信装置を介して無線式でデータ処理装置と接続させることが意図されている。データ処理装置に診断システムから伝達された故障データ及び/又は状態データはデータ処理装置により評価される。好ましくは具体的な車両タイプ及び/又は具体的な車両装備をも認識させる具体的な故障データ又は状態データに依存し、車両タイプに特有の1つの又は複数の修理手順がデータ処理装置のディスプレイにおいてフィルムのような描写のために提供される。本方法を実施するために、本発明に従うデータ処理装置は対応的な順序制御を好ましくは全体的に又は部分的にソフトウェア被制御式で有する。
【0012】
本方法の本発明に従う他の構成では、車両の欠陥構成部品がディスプレイ上で強調されて描写され、視覚的な修理マニュアル又は整備マニュアルが提供される。このことは修理又は整備の迅速な実施を可能とし、更には故障率を減少させる。前提として、構成部品の機能及び/又は整備すべきコンポーネントの液体レベルが診断システムにより監視されるということがある。構成部品としては、例えば制御装置やリレーやスイッチのような電気コンポーネントでも、例えばブレーキライニングのような電気的に監視されるコンポーネントでもあり得る。例えば、視覚的に支援される整備作業としては、機関液体又は変速機液体、ブレーキ液体などの充填や、ブレーキライニング又はその他の摩損部品の交換などである。本発明に従う方法では、好ましくは、視覚的に対応して識別しやすくされた構成部品の交換の必然性に対する(視覚的な)指摘も、成功裏に実施された交換に対する(視覚的な)指摘も提供され、これは、例えば、交換された構成部品の電気機能が車両の診断装置により認識され、本発明に従うデータ処理装置に伝送され、このデータ処理装置により表示へともたらされることによってである。同じことが車両の整備作業或いは液体レベルにも当てはまり、これは、データ処理装置が、車両の診断システムの関与のもと、低すぎる液体レベルを表示へともたらし、液体の充填時又は充填後に現在の液体レベルつまり正確に実施された整備作業をも表示へともたらすことによってである。
【0013】
本発明の更なる構成では、少なくとも、欠陥のある重要な部品又は整備すべきコンポーネント、例えば液体容器又はブレーキライニングが、別の構成部品に比べて視覚的に目立つように強調され、この際、そのために好ましくは、詳細化された描写、及び/又は、より大きな解像度による描写、及び/又は、拡大された描写が、データ処理装置により表示へともたらされる。
【0014】
本発明の選択的な又は追加的な実施形態では、データ処理装置が、修理場面に対する視角を変更するための手動操作可能な選択要素を表示のために提供する。従って整備工には、修理手順又は整備手順を様々な視角から見て不明点を排除する仮想的な可能性が提供される。本発明に従うこの措置は、修理又は整備の品質も速度も増加させる。
【0015】
本発明の選択的な又は追加的な他の実施形態では、ソフトウェア被制御式のデータ処理装置が、修理手順内で描写された構成部品の少なくとも1つを全体的に又は部分的にフェードアウトさせるための手動操作可能な選択要素を表示のために提供することが意図されている。この措置も、仮想的な描写方式内の修理手順又は整備手順の明確化を手助けし、実際の手順の品質と速度を増加させることになる。
【0016】
本発明の特に有利な実施形態では、ディスプレイと、自動車両の診断システムの故障データ及び/又は状態データを受信するための無線式の受信装置とを備えている、ソフトウェア被制御式のデータ処理装置により本方法が実施される。データ処理装置と車両の診断システムとの間の無線式の単方向性通信又は双方向性通信は、例えば、車両が対応的に装備されているのであればブルートゥース・標準規格を基礎にした接続を介して行われる。同様に所謂ワイヤレス・LAN・接続が確立され得て、これは、診断システムのインタフェースが「外界」に対して対応的なLAN装置を備えていること又は工場内で対応的なLAN装置が一次的に備えられることによってである。
【0017】
本発明の特に有利な他の実施形態では、本発明に従う方法が、接触感知可能なディスプレイ、所謂タッチスクリーンを使用して実施される。このタッチスクリーン上では、対応する選択要素の接触により、ビデオ・アニメーションの形式である行うべき修理手順又は整備手順の描写の種類に特に影響が及ぼされ得る。このことは、特に、描写されている視角、及び/又は、邪魔な構成部品の完全な又は部分的なフェードアウトに関して当てはまる。
【0018】
取扱い手順は、通常、車両に固有である、即ち取扱い手順は車両タイプごとに変化する。従って、データ処理装置において該当車両タイプの構成部品などのデジタル化されたデータが常に使用可能であることが必要である。このことを達成するために、本発明の実施形態では、データ処理装置が、車両タイプを、診断システムがデータ処理装置に伝達する識別データに基づいて検出することが意図されている。その際、データ処理装置は、これらのデータを有する特にDVDのような詳細表記されたデータ記憶媒体を対応するドライブに挿入することを要求する。
【0019】
選択的に又は追加的に本発明の別の実施形態では、データ処理装置が、これらのデータを、多数の車両タイプのためのデータを最新の形式で記憶しているサーバから呼び出すことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に乗用車やオートバイのような道路走行用の自動車両における故障構成部品及び/又は修理手順及び/又は整備手順を視覚化するための画像データを提供するための方法において、
− 特にCADデータ或いはベクトルデータ又はその他の視覚化可能なデータフォーマットのものである、車両の少なくとも2つの構成部品のデジタル化されたデータを提供すること、
− 車両の2つの構成部品の互いに相対的な配置構成のデジタル化されたデータを提供すること、
− 多数の修理手順から第1修理手順を選択するための第1選択要素を提供すること、
− 第1修理手順の第1ステップのデータ或いは画像データを提供すること、次に、その修理手順の第2ステップのデータ或いは画像データを提供すること
を特徴とする方法。
【請求項2】
手動データ入力装置、特に接触感知可能なモニタ、即ち所謂タッチスクリーンモニタを有するデータ処理装置が、提供されているデータ或いは画像データ及び第1選択要素の描写のために使用され、第1選択要素が場合により手動接触によって選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
車両が、車両の少なくとも1つの第1電子コンポーネントの状態又は稼動可能状態を検知するための少なくとも1つの故障メモリを有する診断システムを有し、この診断システムが車両の診断プラグを介して及び/又は無線式でデータ処理装置と接続され、更に、データ処理装置が、診断システムにより提供された故障データ又は状態データを処理し、具体的な故障データ又は状態データに依存して少なくとも1つの第1修理手順を描写のために提供することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
診断システムにより提供された故障データ又は状態データが、どの車両タイプであるかを認識させ、該当車両タイプの第1修理手順が描写のために提供されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
欠陥のある第1電子コンポーネントの取り外しが描写され、障害のない新たな第1電子コンポーネントの正確な取り付けが診断システムにより検知され、データ処理装置に伝達され、正確な取り付けが、診断システムによる新たな第1電子コンポーネントの機能のチェック及びデータ処理装置への転送を通じて表示へともたらされることを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
構成部品の少なくとも1つが少なくとも1つの別の構成部品に比べて視覚的に目立つように強調され、そのために好ましくは、詳細化された描写、及び/又は、より大きな解像度による描写、及び/又は、拡大された描写が、データ処理装置により表示へともたらされることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
データ処理装置により、修理手順内で描写された少なくとも2つの構成部品に対する視角を変更するための手動操作可能な選択要素が表示のために提供されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
データ処理装置により、修理手順内で描写された構成部品の少なくとも1つを全体的に又は部分的にフェードアウトさせるための手動操作可能な選択要素が表示のために提供されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載した方法を実施するための装置。
【請求項10】
ディスプレイと、自動車両の診断システムの故障データ又は状態データを受信するための無線式の受信装置とを備えているデータ処理装置が設けられていて、このデータ処理装置が、具体的な故障データ又は状態データ並びに具体的な自動車両に割り当てられている少なくとも1つの修理手順をディスプレイ上で描写し、このディスプレイが好ましくは接触感知可能なディスプレイであり、ディスプレイ上の対応する少なくとも1つの選択要素の接触を介し、修理手順の描写に対し、特に、描写されている視角、及び/又は、少なくとも1つの構成部品の完全な又は部分的なフェードアウトに関して影響が及ぼされることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載した方法を実施するためのコンピュータプログラム製品。

【公表番号】特表2007−523781(P2007−523781A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501916(P2006−501916)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001710
【国際公開番号】WO2004/074950
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】