説明

車両における懸架システムのための変位計測システムおよび方法

【課題】計測すべきストラットの変位を効率的に可能にする一方で作業車両の運転中の計測システムに対する損傷を最小限に抑える、懸架ストラット計測システムおよび方法を提供すること。
【解決手段】車両は、車台、車軸、懸架ストラット、およびセンサ組立体を備える。前記懸架ストラットは、下端部および上端部を有するバレル、ならびに下端部および上端部を有するロッドを備える。前記ロッド下端部は、前記バレル上端部内に摺動可能に収容される。前記バレル下端部は前記車軸に連結され、前記ロッド上端部は前記車台に連結される。センサ組立体は、前記車台と前記車軸との間の相対運動を検知するために、前記車台と前記車軸との間に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の車両乗車環境システムに関し、より詳細には、ストラット変位計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設業、林業、採鉱業、および農業用車両などの作業車両には、それが不均一なまたは荒れた地形を横断するときの縦揺れおよび振動を最小限に抑えるために、電子制御式乗車環境制御システムが使用され得る。乗車環境制御により、運転者に対する縦揺れおよび振動を改善することができ、また、車両の油圧および電子制御式の機能を運転者が手動で操作するのと同様の安全性がもたらされ得る。乗車環境制御を実行するための1つの方法は、不均一なまたは荒れた地形を車両が移動するときの、車台と車軸との間の相対変位を計測することである。これは、直接計測するか、または車台と車軸との間の各取付け位置に関連した懸架ストラットの変位を計測することによって推定することができる。
【0003】
懸架ストラットの変位を計測するために通常使用される方法は、車軸または車軸組立体と車台枠との間にセンサを設置することである。これは通常、延長しているレバーアームを有するロータリーセンサを車台枠の近傍または車台枠上に設置し、次いでそのレバーアームを車軸組立体に連結するリンケージシステムを設けることによって達成される。車軸は、車両の最低構造部品であることが多いので、非常にぬかるんだ場所での用途では泥のなかを引きずられがちである。このことは、リンケージシステムは車軸上を流動する泥または岩屑による損傷を受けやすいということを意味する。
【0004】
ストラット変位センサを有する車両の懸架ストラットは、車台に取り付けられたストラットバレル、および車軸組立体に取り付けられたロッド部分を有するので、この検知方法が必要とされる。バレルは固定長であり、一方、露出したロッド区間はストラット変位とともに変化するので、ストラット変位はバレル端部(または車台)とロッド端部(または車軸組立体)との間で計測される必要があり、このロッド端部は、センサの部品を岩屑が流動する範囲に押しやる。
【0005】
Bell Equipment社では、車台と車軸組立体との間で計測することにより車両ストラット変位を検知する。Bell Equipment社の設計は、リンケージ連結部が岩屑の流動から外れるように、リンケージ連結部を車軸より高く持ち上げる頑丈なブラケットを使用することにより、センサの保護を試みている。この設計では、ブラケットは依然として損傷を受けやすい状態であり、またリンケージも依然として比較的低い位置にあるので、これらが損傷を受ける恐れが依然としてある。
【0006】
Volvo社は、ストラットセンサリンケージを、岩屑の流動に対してより損傷を受けやすい、車軸に向かってより低い位置に設置している。Volvo社の設計では、リンケージを損傷から保護するために、非常に頑丈な(従ってより高価な)リンケージ構成を使用している。
【0007】
変位センサを保護するための他の方法は、ストラット内にセンサを設置するか、または磁気センサを使用して、ストラット内のピストンの位置を計測することであろう。これらの技術は、油圧シリンダの変位を計測するために通常使用されているが、高価であり、またストラットの設計を相当複雑にするはずである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当技術分野で必要とされているのは、計測すべきストラットの変位を効率的に可能にする一方で作業車両の運転中における計測システムに対する損傷を最小限に抑える、懸架ストラット計測システムおよび方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車台枠上のより高い位置でありかつ岩屑が流動する領域の外で変位検知が行われることができるように、懸架装置の再配置をする。ロッド端部を車台枠に取り付け、バレル端部を車軸組立体に取り付けることにより、懸架ストラットが反転され、それによって、より高い位置でありかつ岩屑が流動する領域の外で変位計測を行うことが可能になる。
【0010】
固定長のバレルは、ストラットの相対運動がストラットの上端で起こるようにするので、変位センサは車台内の保護領域内に設置され、一方、リンケージシステムは短くなり、また岩屑から保護されているバレル組立体の上部に取り付けられる。
【0011】
本発明は一形態において、車台、車軸、懸架ストラット、およびセンサ組立体を備える車両を対象とする。懸架ストラットは、下端部および上端部を有するバレル、ならびに下端部および上端部を有するロッドを備える。ロッド下端部は、バレル上端部内に摺動可能に収容される。バレル下端部は車軸に連結され、ロッド上端部は車台に連結される。センサ組立体は、車台とバレルとの間の相対運動を検知するために、車台とバレルとの間に連結される。
【0012】
本発明は別の形態において、懸架ストラットおよびセンサ組立体を備える車両のためのストラット変位計測システムを対象とする。懸架ストラットは、下端部および上端部を有するバレル、ならびに下端部および上端部を有するロッドを備える。ロッド下端部は、バレル上端部内に摺動可能に収容される。バレル下端部は車両の車軸に連結可能であり、ロッド上端部は車両の車台に連結可能である。センサ組立体は、車台とバレルとの間の相対運動を検知するために、バレルに連結され、車両の車台に連結可能である。
【0013】
本発明はさらに別の形態において、車両の車台と車軸との間の相対変位の計測方法を対象とする。この方法は、下端部および上端部を有するバレル、ならびに下端部および上端部を有するロッドを備え、ロッド下端部がバレル上端部内に摺動可能に収容された、懸架ストラットを用意するステップと、バレル下端部と車軸、およびロッド上端部と車台とを連結するステップと、前記車台と前記バレルとの間にセンサ組立体を連結するステップと、センサ組立体を使用して車台とバレルとの間の相対運動を検知するステップと、を含む。
【0014】
本発明の上記その他の特徴および利点、ならびにそれらを達成する方法は、本発明の一実施形態の以下の説明を添付の図面と併せて参照することによってより明確となり、またよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】車台と車軸との間に相互接続された懸架ストラットを示す、車両の一部分の斜視図である。
【図2】センサ組立体が車台とストラットのバレルとの間に相互接続された、懸架ストラットの拡大斜視図である。
【図3】センサ組立体を見せるために板状の保護構造物が取り除かれた、懸架ストラットおよびセンサ組立体の別の斜視図である。
【図4】保護構造物が所定の位置にある、図3に示したものと同様の斜視図である。
【図5】懸架ストラットおよびセンサ組立体の上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
いくつかの図面を通して、対応する参照文字は対応する部分を示す。本明細書において提示された例示は、一形態における本発明の実施形態を示しており、かかる例示は如何なる場合であっても本発明の範囲を限定するものであると解釈してはならない。
【0017】
ここで図面を参照すると、車台12、車軸14、およびストラット変位システム16を一般に備える車両10の一部分の実施形態が示されている。示された実施形態において、車両10は連結式のダンプトラックであると考えられるが、農業用または林業用車両などの様々なタイプの作業車両も考えられる。車台12は一般に、車両10のための構造枠組を提供し、車体(図示せず)によって部分的または完全に覆われた、複数の相互接続された車台枠部材(個別に番号付けせず)を備える。車体は、運転室、パネル、泥よけ、等を備え得る。車軸14は、特定の用途に応じて、動力付き車軸でも非動力付き車軸でもよく、また、前車軸でも後車軸でもよい。示された実施形態において、車軸14は、複数輪駆動性能を有する作業車両の一部を形成している動力付きの前車軸であると考えられる。
【0018】
ストラット変位計測システム16は一般に、懸架ストラット18、センサ組立体20、および1つまたは複数の保護構造物22を備える。懸架ストラット18は、バレル24、およびその中に相互に配置されたロッド26を備える。示された実施形態において、懸架ストラット18は、油圧駆動のストラットであると考えられるが、用途に応じて様々なタイプの流体駆動ストラットも考えられる。バレル24は、下端部28および上端部30を備える。同様に、ロッド26は、下端部32および上端部34を備える。ロッド26の下端部32は、バレル24の上端部30の中に摺動可能に収容される。バレル24の下端部28は、車軸14に連結され、ロッド26の上端部34は、車台12に連結される。
【0019】
センサ組立体20は、車台12とバレル24との間に連結され、車台12とバレル24との間の相対運動を検知する。より詳細には、センサ組立体20は、バレル24の上端部30に連結される。バレル24の下端部28は、車軸14には枢動可能に連結されるが、車軸14の上面に対しては縦方向に固定される。したがって、センサ組立体20を使用した車台12とバレル24との間の相対運動の検知を、車台12と車軸14との間の運動を間接的に検知することに使用することができる。
【0020】
図2および図3を参照すると、センサ組立体20は、枢動レバーアーム36、および直線リンク38を備える。レバーアーム36は、車台12の板40を貫通して板40の背後の保護領域41まで延長している端部を有する。車両10の運転中にロッド26がバレル24内で上下に摺動すると、レバーアーム36は、バレル24内のロッド26の行程長に応じて揺動するかたちで上下に枢動する。レバーアーム36の反対側または遠位端部は、リンク38の上端部に枢動可能に連結され、リンク38は、バレル24の上端部28に枢動可能に連結された下端部を有する。
【0021】
示された実施形態において、センサ組立体20は、枢動可能な揺動レバーアーム36を備えるように示されているが、他のタイプのセンサ組立体も車台12とバレル24との間の垂直方向の変位を検知するために使用することができることを理解されたい。例えば、回転レバーアームではなく、車台12とバレル24との間の垂直方向の変位に対応した枢動アームの角度位置を有する片持ち梁タイプの枢動アームを、センサ組立体20の部品として使用することも可能である。
【0022】
1対の保護構造物22が、車台12によって担持されかつ車台12から外方に延在して、車両10の運転中に岩屑または他の物体が車軸14の上部上を通過する際に、センサ組立体20を物理的な損傷から少なくとも部分的に保護する。示された実施形態において、各保護構造物22は、懸架ストラット18と車台12との間の領域または間隙をほぼ覆う所定の形状を有する板の形態をなしている。特定の車両および用途に応じて、板の形状が変更し得ることが理解されよう。さらに、車両10の大抵の走行が前進方向であるので、保護構造物は、走行方向42に対してセンサ組立体20の前方に少なくとも配置されることが好ましい。しかし、車両10は後退方向に移動することも可能であり、おそらくその過程で岩屑に接触するので、第2の保護構造物22が走行方向42に対してセンサ組立体20の後側に配置されることがさらに好ましい。
【0023】
運転中、車両10が不均一なまたは荒れた地形上を走行すると、車軸14が車台12に対して枢動する。車軸14が車台12に対して枢動すると、懸架ストラット18との連結箇所が同様に上下動し、次いでロッド26がバレル24から摺動して出入りする。バレル24内のロッド26の動きが、車台12とバレル24との間の垂直方向の変位(同様に車台12と車軸14との間の垂直方向の変位)を変化させ、このことが、板40を貫通して延長しているレバーアーム36の枢動方向を変化させる。レバーアーム36の裏側は、車両10の乗車環境制御を作用させるための制御装置に出力信号を送るのに適した、任意の電子構造物に関連付けられていてもよい。例えば、板40を貫通して保護領域41内に延長しているレバーアーム36の端部は、車両10の乗車環境制御のための制御装置に出力信号を送る、センサ組立体20の部分を形成する電位差計または他の適切な電気部品に接続されてもよい。
【0024】
少なくとも1つの実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明はこの開示の精神および範囲内においてさらに修正することができる。本出願はしたがって、その全般的な原理を使用する本発明の任意の変形形態、使用、または翻案をも含むことが意図されている。さらに、本出願は、本発明に関連する当技術分野において既知または慣習の範囲内であって添付の特許請求の範囲内である、本開示から逸脱した内容をも含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0025】
10 車両
12 車台
14 車軸
16 ストラット変位計測システム
18 懸架ストラット
20 センサ組立体
22 保護構造物
24 バレル
26 ロッド
28 下端部
30 上端部
32 下端部
34 上端部
36 枢動レバーアーム
38 直線リンク
40 板
42 走行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台と、
車軸と、
下端部および上端部を有するバレル、ならびに下端部および上端部を有するロッドを備え、前記ロッド下端部が前記バレル上端部内に摺動可能に収容され、前記バレル下端部が前記車軸に連結され、前記ロッド上端部が前記車台に連結された、懸架ストラットと、
前記車台と前記バレルとの間の相対運動を検知するために前記車台と前記バレルとの間に連結されたセンサ組立体と
を備える、車両。
【請求項2】
前記センサ組立体が、前記バレルの前記上端部に連結された、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記センサ組立体が、前記車台と前記車軸との間の相対運動を間接的に検知する、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記センサ組立体が、前記車台内の保護領域内に配置された部分を備える、請求項1に記載の車両。
【請求項5】
前記車台によって担持された保護構造物を備え、前記センサ組立体が前記物体により物理的な損傷から少なくとも部分的に保護される、請求項1に記載の車両。
【請求項6】
前記保護構造物が、前記車両の走行方向に対して前記センサ組立体の前方に配置された板を備える、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
車両のためのストラット変位計測システムであって、
下端部および上端部を有するバレル、ならびに下端部および上端部を有するロッドを備え、前記ロッド下端部が前記バレル上端部内に摺動可能に収容され、前記バレル下端部が前記車両の車軸に連結可能であり、前記ロッド上端部が前記車両の車台に連結可能である、懸架ストラットと、
前記車台と前記バレルとの間の相対運動を検知するために前記バレルに連結されかつ前記車両の前記車台に連結可能であるセンサ組立体と
を備える、ストラット変位計測システム。
【請求項8】
前記センサ組立体が、前記バレルの前記上端部に連結された、請求項7に記載のストラット変位計測システム。
【請求項9】
前記センサ組立体が、前記車台と前記車軸との間の相対運動を間接的に検知する、請求項7に記載のストラット変位計測システム。
【請求項10】
車両の車台と車軸との間の相対変位計測方法であって、
下端部および上端部を有するバレル、ならびに下端部および上端部を有するロッドを備え、前記ロッド下端部が前記バレル上端部内に摺動可能に収容された、懸架ストラットを用意するステップと、
前記バレル下端部と前記車軸、および前記ロッド上端部と前記車台とを連結するステップと、
前記車台と前記バレルとの間にセンサ組立体を連結するステップと、
前記センサ組立体を使用して前記車台と前記バレルとの間の相対運動を検知するステップと
を含む、相対変位計測方法。
【請求項11】
前記センサ組立体が、前記車台と前記車軸との間の相対運動を間接的に検知する、請求項10に記載の相対変位計測方法。
【請求項12】
前記車台によって担持された保護構造物を使用して、センサ組立体を物理的な損傷から少なくとも部分的に保護するステップを含む、請求項10に記載の相対変位計測方法。
【請求項13】
前記保護構造物が、車両の走行方向に対して前記センサ組立体の前方に配置された板を備える、請求項12に記載の相対変位計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−166778(P2012−166778A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−24678(P2012−24678)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(591005165)ディーア・アンド・カンパニー (109)
【氏名又は名称原語表記】DEERE AND COMPANY
【Fターム(参考)】