説明

車両における荷室用デッキボード

【課題】デッキボードの組立作業が容易にできるようにする。
【解決手段】荷室用デッキボードは、2枚のボード24,25の互いの対向縁部24a,25aを枢支すると共に、一方のボード25に対し他方のボード24を相対回動C,D可能とさせるヒンジ26と、他方のボード24を一方向に回動Cさせるよう弾性的に付勢するコイル式スプリング28と、一方のボード25の対向縁部25aに取り付けられ、この対向縁部25aを車体2側に連結する連結ブラケット37とを備える。両ボード24,25の相対回動C,Dにより両ボード24,25がほぼ水平方向に並設された状態で、両対向縁部24a,25aの間に第1空間46が形成され、かつ、両対向縁部24a,25aとこれに対面する連結ブラケット37の部分との間に、第1空間46と互いに連通する第2空間47が形成される。第1、第2空間46,47にスプリング28のコイル部30が収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷室に並設される2枚のボードと、これら両ボードを相対回動可能に連結するヒンジと、上記両ボードを相対回動させるよう弾性的に付勢するスプリングとを備えた車両における荷室用デッキボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両の車体の内部が車室とされ、この車室の前部側にリヤシートが設けられている。このリヤシートは、車体フロアパネルに対し前後移動可能に支持されるシートクッションと、このシートクッションの後端部に前後傾動可能に支持されるシートバックとを備えている。
【0003】
一方、上記車体後部内の車室後部は荷室とされ、この荷室は上記リヤシートの後側に隣接し、この荷室の下部にデッキボードが設けられている。このデッキボードは、上記荷室に並設される前後2枚のボードと、これら両ボードの互いの対向縁部を互いに枢支すると共に、この枢支部を中心として後ボードに対し前ボードを相対回動可能とさせるヒンジと、コイル部、およびこのコイル部から延出する2つの延出部を有し、これら両延出部のうち、一方の延出部が上記後ボードの対向縁部に取り付けられ、他方の延出部が前ボードの対向縁部に取り付けられ、この前ボードを前方向に回動させるよう弾性的に付勢するコイル式スプリングと、上記後ボードの対向縁部に取り付けられ、この対向縁部を上記シートクッションに連結させる連結ブラケットとを備えている。
【0004】
そして、通常、上記デッキボードにおける前ボードは縦向き姿勢とされ、その回動端部は上記リヤシートのシートバックの背面に対し、上記スプリングの付勢力により圧接させられる。このため、上記シートバックを前後傾動させた場合、このシートバックとデッキボードとの間に隙間が生じることは上記前ボードによって防止される。一方、上記シートクッション上にシートバックが重なるようこのシートバックを前方に大きく傾動させた場合には、上記前ボードは上記シートバックの背面に圧接しようとして大きく前方に回動し、これにより、上記荷室が前方に拡大される。
【0005】
また、上記シートクッションの前後移動によりリヤシートの前後位置調整をしたとき、上記デッキボードは上記連結ブラケットを介し上記シートクッションに連動する。これにより、上記リヤシートのシートバックと上記デッキボードの前、後ボードとの前記した関連構成が維持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−239086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の技術では、デッキボードは、回動可能とされる2枚のボードと、これら両ボードのうち、一方のボードに対し他方のボードを一方向に回動させるよう付勢するスプリングと、上記一方のボードをシートクッション側に連結する連結ブラケットとを別々に備えていて、その構成部品の点数が多いことから、このデッキボードの組立作業が煩雑になりがちである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、上記デッキボードの組立作業が容易にできるようにすることである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、構成部品を少なくすることにより構成が簡単とされる車両における荷室用デッキボードを提供することである。
【0010】
請求項1の発明は、車体2後部内の荷室19に並設される2枚のボード24,25と、これら両ボード24,25の互いの対向縁部24a,25aを互いに枢支すると共に、この枢支部を中心として一方のボード25に対し他方のボード24を相対回動C,D可能とさせるヒンジ26と、上記他方のボード24を一方向に回動Cさせるよう弾性的に付勢するコイル式スプリング28と、上記一方のボード25の対向縁部25aに取り付けられ、この対向縁部25aを車体2側に連結する連結ブラケット37とを備えた車両における荷室用デッキボードにおいて、
上記両ボード24,25の相対回動C,Dによりこれら両ボード24,25がほぼ水平方向に並設された状態で、上記両対向縁部24a,25aの間に第1空間46が形成され、かつ、上記両対向縁部24a,25aとこれに対面する上記連結ブラケット37の部分との間に、上記第1空間46と互いに連通する第2空間47が形成され、これら第1、第2空間46,47に上記スプリング28のコイル部30が収容されたことを特徴とする車両における荷室用デッキボードである。
【0011】
請求項2の発明は、上記スプリング28が、上記コイル部30から延出する2つの延出部31,32を有し、これら両延出部31,32のうち、一方の延出部31が上記一方のボード25の対向縁部25a側に保持され、他方の延出部32が上記他方のボード24に取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両における荷室用デッキボードである。
【0012】
請求項3の発明は、上記スプリング28の一方の延出部31が、その長手方向に向かって移動可能となるよう上記一方のボード25の対向縁部25aと上記連結ブラケット37との組み合せ体25a,37に保持されたことを特徴とする請求項2に記載の車両における荷室用デッキボードである。
【0013】
請求項4の発明は、上記連結ブラケット37に突設され、上記コイル部30をその軸方向から囲むと共にその突出側が上記第1空間46に収容される一対の突出部48,48が設けられたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の車両における荷室用デッキボードである。
【0014】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明による効果は、次の如くである。
【0016】
請求項1の発明は、車体後部内の荷室に並設される2枚のボードと、これら両ボードの互いの対向縁部を互いに枢支すると共に、この枢支部を中心として一方のボードに対し他方のボードを相対回動可能とさせるヒンジと、上記他方のボードを一方向に回動させるよう弾性的に付勢するコイル式スプリングと、上記一方のボードの対向縁部に取り付けられ、この対向縁部を車体側に連結する連結ブラケットとを備えた車両における荷室用デッキボードにおいて、
上記両ボードの相対回動によりこれら両ボードがほぼ水平方向に並設された状態で、上記両対向縁部の間に第1空間が形成され、かつ、上記両対向縁部とこれに対面する上記連結ブラケットの部分との間に、上記第1空間と互いに連通する第2空間が形成され、これら第1、第2空間に上記スプリングのコイル部が収容されている。
【0017】
このため、デッキボードの組立作業において、上記両ボード、スプリング、および連結ブラケットの4つの部材を順次組み付けるとき、上記スプリングのコイル部を、上記第1、第2空間に収容させれば、上記した4つの部材の互いの相対的な位置決めができる。よって、この位置決めにより、上記デッキボードの組立作業が容易にできる。
【0018】
請求項2の発明は、上記スプリングが、上記コイル部から延出する2つの延出部を有し、これら両延出部のうち、一方の延出部が上記一方のボードの対向縁部側に保持され、他方の延出部が上記他方のボードに取り付けられている。
【0019】
このため、上記スプリングによる付勢力は、このスプリングの他方の延出部を介して上記他方のボードに対しより直接的に伝達される。よって、この他方のボードによる上記一方向への所望の回動が、より確実に達成される。
【0020】
請求項3の発明は、上記スプリングの一方の延出部が、その長手方向に向かって移動可能となるよう上記一方のボードの対向縁部と上記連結ブラケットとの組み合せ体に保持されている。
【0021】
ここで、仮に、上記一方のボードに対し他方のボードをスプリングの付勢力に対抗して上記一方向への回動とは反対方向に大きく回動させたとする。すると、この場合、上記スプリングはその両延出部が互いに大きく離間するよう引張されて、このスプリングのコイル部による付勢力が増大しようとする。
【0022】
このため、第1に、上記一方のボードに対し他方のボードを上記のように一方向への回動方向とは反対方向に回動させる操作をするとき、上記付勢力の増大によって上記操作が阻害されるおそれを生じる。また、第2に、上記両延出部の間に位置して大きく引張される上記スプリングのコイル部は、上記両ボードやヒンジに圧接しがちとなる。そして、これは、上記操作時に、デッキボードに異音や損傷を生じさせるおそれがあって好ましくない。
【0023】
しかし、上記発明によれば、スプリングの一方の延出部が、その長手方向に向かって移動可能となるよう上記一方のボードの対向縁部と上記連結ブラケットとの組み合せ体に保持されたため、上記一方のボードに対し他方のボードを大きく回動させることにより上記スプリングの両延出部が互いに大きく離間しようとしても、この場合、上記スプリングの一方の延出部がその長手方向に向かって移動して上記両延出部が互いに大きく離間することが抑制される。
【0024】
よって、上記一方のボードに対し他方のボードを上記のように一方向への回動方向とは反対方向に回動させる操作をしたとしても、上記した両延出部が互いに大きく離間して引張されることは抑制され、このため、第1に、上記操作は円滑にできる。また、第2に、上記スプリングのコイル部が上記両ボードやヒンジに圧接することは防止されて、デッキボードに異音や損傷が生じることは防止される。
【0025】
また、上記発明によれば、一方のボードの対向縁部側に対しスプリングの一方の延出部を保持させるために上記連結ブラケットを利用したことから、この利用の分、上記デッキボードの構成部品を少なくして、その構成を簡単にできる。
【0026】
請求項4の発明は、上記連結ブラケットに突設され、上記コイル部をその軸方向から囲むと共にその突出側が上記第1空間に収容される一対の突出部が設けられている。
【0027】
このため、デッキボードの組立作業において、上記両ボード、スプリング、および連結ブラケットの4つの部材を順次組み付けるとき、上記第1空間に上記各突出部を収容させれば、上記第1空間を形成する両ボードの両対向縁部と各突出部との互いの相対的な位置決めができ、つまり、上記両ボードと連結ブラケットとの互いの位置決めができる。よって、この位置決めにより、上記デッキボードの組立作業が、より容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図4のI−I線矢視断面図である。
【図2】車両後部の側面断面図である。
【図3】車両後部の平面図である。
【図4】図3の各ボードを仮想線で示した部分拡大図である。
【図5】図4のV−V線矢視断面図である。
【図6】デッキボードの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の車両における荷室用デッキボードに関し、デッキボードの組立作業が容易にできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0030】
即ち、車両における荷室用デッキボードは、車体後部内の荷室に並設される2枚のボードと、これら両ボードの互いの対向縁部を互いに枢支すると共に、この枢支部を中心として一方のボードに対し他方のボードを相対回動とさせるヒンジと、上記他方のボードを一方向に回動させるよう弾性的に付勢するコイル式スプリングと、上記一方のボードの対向縁部に取り付けられ、この対向縁部を車体側に連結する連結ブラケットとを備えている。
【0031】
上記両ボードの相対回動によりこれら両ボードがほぼ水平方向に並設された状態で、上記両対向縁部の間に第1空間が形成され、かつ、上記両対向縁部とこれに対面する上記連結ブラケットの部分との間に、上記第1空間と互いに連通する第2空間が形成され、これら第1、第2空間に上記スプリングのコイル部が収容されている。
【実施例】
【0032】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0033】
図において、符号1は、自動車で例示される車両である。また、矢印Frはこの車両1の進行方向の前方を示している。
【0034】
上記車両1の車体2の内部が車室3とされている。図3中、符号4は、上記車体2の幅方向の中央部を示している。上記車体2は、上記車室3の下面を形成する車体フロアパネル6と、上記車室3の後面を形成するバックパネル7と、このバックパネル7に形成されたバックドア開口8をその後方から開閉可能に閉じるバックドア9とを備え、上記バックパネル7における上記バックドア開口8の下部開口縁部がロアバックパネル10とされている。
【0035】
上記車室3の前部側にリヤシート13が設けられている。このリヤシート13は、上記車体フロアパネル6に対しシートレール14を介し前後移動A可能に支持されるシートクッション15と、このシートクッション15の後端部に前後傾動B可能に支持されるシートバック16とを備えている。
【0036】
一方、上記車体2後部内の車室3後部は上記バックパネル7とリヤシート13とで前後から挟まれた荷室19とされている。この荷室19の下端部には、上面が水平に平坦に延びるデッキボックス20が配置されている。このデッキボックス20の上面にデッキボード21が載置され、このデッキボード21は上記荷室19の床面を形成している。
【0037】
上記デッキボード21は、車体2の前後方向に並設される2枚の前、後ボード24,25と、これら両ボード24,25の互いの対向縁部24a,25aを互いに枢支すると共に、この枢支部を中心として一方のボードである後ボード25に対し、他方のボードである前ボード24を相対回動C,D可能とさせるヒンジ26とを備えている。具体的には、上記各ボード24,25は樹脂製で中空である。また、上記ヒンジ26は上記各対向縁部24a,25aにそれぞれ一体的に形成されたインテグラルヒンジであり,その回動C,Dの軸心は、車体2の幅方向に延びている。
【0038】
また、上記デッキボード21は、上記前ボード24を車体2の前方である一方向に回動Cさせるようこの前ボード24を弾性的に付勢するコイル式スプリング28を備えている。このスプリング28は、軸心29が車体2の幅方向に延びるコイル部30、およびこのコイル部30から延出する2つの延出部31,32を有している。これら両対向縁部24a,25aのうち、一方の延出部31は上記後ボード25の対向縁部25a側に保持され、他方の延出部32は上記前ボード24の対向縁部24aに締結具33により取り付けられている。
【0039】
また、上記デッキボード21は、上記後ボード25の対向縁部25aの下面に締結具36により取り付けられる樹脂製の左右一対の連結ブラケット37,37を備えている。一方、上記車体2側の部材である上記リヤシート13のシートクッション15はシートクッションフレーム15aを有しており、このシートクッションフレーム15aから後上方に向かって左右一対の係合アーム38,38が突設されている。これら各係合アーム38の突出端部と上記各連結ブラケット37とが互いに係脱可能に係合している。そして、上記後ボード25の対向縁部25aは、互いに係合した上記連結ブラケット37と係合アーム38とを介して上記シートクッションフレーム15aに連結されている。
【0040】
上記連結ブラケット37は、上記後ボード25の対向縁部25aの下面に上記締結具36により取り付けられる平面視で矩形の基板40と、この基板40の前縁部から前下方に向かって一体的に突出し、その突出端部が上記係合アーム38の突出端部に係合する係合突起41とを備えている。また、この係合突起41は、上記基板40の前縁部から前下方に向かって一体的に突出する左右一対の突出片42,42と、車体2の幅方向に延び上記左右突出片42,42の突出端部に一体的に架設される係合軸43とを備えている。そして、上記係合アーム38の突出端部に上方に向かって開くよう形成された係合凹部38aと、上記係合軸43とが上下方向で係脱可能に係合している。
【0041】
上記左右突出片42,42の各基部の間における上記基板40の前縁部は、上記したように係合突起41が前下方に突出したことに追従して、上記基板40の一般部よりも低く位置するよう下方に向かって屈曲させられている。これにより、上記左右突出片42,42の各基部の間における上記基板40の前縁部の上面と、上記左右突出片42,42の各基部との間には上方に向かって開く凹部45が形成されている。
【0042】
上記両ボード24,25の相対回動C,Dによりこれら両ボード24,25がほぼ水平方向に並設された状態(図1〜3中実線)で、上記両対向縁部24a,25aの間に下方に向かって開く第1空間46が形成されている。また、上記両対向縁部24a,25aとこれに上下方向で対面する上記連結ブラケット37の部分(前端縁部)との間には、上記第1空間46と互いに連通し、上記凹部45内の空間を含む第2空間47が形成されている。
【0043】
そして、上記第1、第2空間46,47に跨るように前記スプリング28のコイル部30が収容されている。また、上記コイル部30をその軸方向(車体2の幅方向)から囲む左右一対の突出部48,48が上記左右突出片42,42の各基部上面に一体的に形成されている。また、上記各突出部48の突出側はそれぞれ上記第1空間46に収容されている。
【0044】
上記連結ブラケット37の基板40の上面には、上方に向かって開き、車体2の前後方向に直線的に延びる溝49が形成されている。この溝49の上端開口は上記後ボード25の対向縁部25aによって閉じられている。そして、上記溝49を貫通するよう、この溝49に前記スプリング28の一方の延出部31が嵌入されている。これにより、この一方の延出部31は、その長手方向に向かって移動E可能となるよう上記後ボード25の対向縁部25aと上記連結ブラケット37との組み合せ体25a,37に保持されている。
【0045】
また、上記一方の延出部31の延出端には、この延出部31の屈曲により円環状のストッパ50が形成されている。上記連結ブラケット37に対し上記スプリング28の一方の延出部31が過大に前方に移動Eしようとしたときには、上記ストッパ50が上記基板40における上記溝49の後端開口縁部に当接して、上記一方の延出部31のそれ以上の前方への移動Eが阻止される。
【0046】
そして、通常、上記リヤシート13のシートバック16は、シートクッション15の後端部から上方に突出する姿勢とされ(図1,2中一点鎖線、二点鎖線)、このリヤシート13に対し乗員が着座可能とされている。また、この際、上記デッキボード21における前ボード24は縦向き姿勢とされ、その回動端部は上記リヤシート13のシートバック16の背面に対し、上記スプリング28の付勢力により圧接させられる。このため、上記シートバック16を前後傾動Bさせた場合(図2中一点鎖線、二点鎖線)、このシートバック16とデッキボード21との間に隙間が生じることは上記前ボード24によって防止される。
【0047】
一方、上記リヤシート13の不使用時において、上記シートクッション15上にシートバック16が重なるようこのシートバック16を前方に大きく傾動させた場合(図2中三点鎖線)には、上記前ボード24は上記シートバック16の背面(上面)に圧接しようとして大きく前方に回動し(図1〜3中実線)、これにより、上記荷室19が前方に拡大される。
【0048】
また、上記シートクッション15の前後移動Aによりリヤシート13の前後位置調整をしたとき、上記デッキボード21は上記連結ブラケット37を介し上記シートクッション15に連動する。これにより、上記リヤシート13のシートバック16と上記デッキボード21の前、後ボード24,25との前記した関連構成が維持されるようになっている。
【0049】
上記構成によれば、両ボード24,25の相対回動C,Dによりこれら両ボード24,25がほぼ水平方向に並設された状態で、上記両対向縁部24a,25aの間に第1空間46が形成され、かつ、上記両対向縁部24a,25aとこれに対面する上記連結ブラケット37の部分との間に、上記第1空間46と互いに連通する第2空間47が形成され、これら第1、第2空間46,47に上記スプリング28のコイル部30が収容されている。
【0050】
このため、デッキボード21の組立作業において、上記両ボード24,25、スプリング28、および連結ブラケット37の4つの部材24,25,28,37を順次組み付けるとき、上記スプリング28のコイル部30を、上記第1、第2空間46,47に収容させれば、上記した4つの部材24,25,28,37の互いの相対的な位置決めができる。よって、この位置決めにより、上記デッキボード21の組立作業が容易にできる。
【0051】
また、前記したように、上記スプリングが、上記コイル部から延出する2つの延出部を有し、これら両延出部のうち、一方の延出部が上記一方のボードの対向縁部側に保持され、他方の延出部が上記他方のボードに取り付けられている。
【0052】
このため、上記スプリング28による付勢力は、このスプリング28の他方の延出部32を介して上記他方のボード24に対しより直接的に伝達される。よって、この他方のボード24による上記一方向への所望の回動Cが、より確実に達成される。
【0053】
また、前記したように、スプリング28の一方の延出部31が、その長手方向に向かって移動可能となるよう上記後ボード25の対向縁部25aと上記連結ブラケット37との組み合せ体25a,37に保持されている。
【0054】
ここで、仮に、上記後ボード25に対し前ボード24をスプリング28の付勢力に対抗して上記一方向への回動Cとは反対方向に大きく回動Dさせたとする。すると、この場合、上記スプリング28はその両延出部31,32が互いに大きく離間するよう引張されて、このスプリング28のコイル部30による付勢力が増大しようとする。
【0055】
このため、第1に、上記後ボード25に対し前ボード24を上記のように一方向への回動C方向とは反対方向に回動Dさせる操作をするとき、上記付勢力の増大によって上記操作が阻害されるおそれを生じる。また、第2に、上記両延出部31,32の間に位置して大きく引張される上記スプリング28のコイル部30は、上記両ボード24,25やヒンジ26に圧接しがちとなる。そして、これは、上記操作時に、デッキボード21に異音や損傷を生じさせるおそれがあって好ましくない。
【0056】
しかし、上記構成によれば、スプリング28の一方の延出部31が、その長手方向に向かって移動可能となるよう上記後ボード25の対向縁部25aと上記連結ブラケット37との組み合せ体25a,37に保持されたため、上記後ボード25に対し前ボード24を大きく回動Dさせることにより上記スプリング28の両延出部31,32が互いに大きく離間しようとしても、この場合、上記スプリング28の一方の延出部31がその長手方向に向かって移動して上記両延出部31,32が互いに大きく離間することが抑制される。
【0057】
よって、上記後ボード25に対し前ボード24を上記のように一方向への回動C方向とは反対方向に回動Dさせる操作をしたとしても、上記した両延出部31,32が互いに大きく離間して引張されることは抑制され、このため、第1に、上記操作は円滑にできる。また、第2に、上記スプリング28のコイル部30が上記両ボード24,25やヒンジ26に圧接することは防止されて、デッキボード21に異音や損傷が生じることは防止される。
【0058】
また、上記構成によれば、後ボード25の対向縁部25a側に対しスプリング28の一方の延出部31を保持させるために上記連結ブラケット37を利用したことから、この利用の分、上記デッキボード21の構成部品を少なくして、その構成を簡単にできる。
【0059】
また、上記構成によれば、連結ブラケット37に突設され、上記コイル部30をその軸方向から囲むと共にその突出側が上記第1空間46に収容される一対の突出部48,48が設けられている。
【0060】
このため、デッキボード21の組立作業において、上記両ボード24,25、スプリング28、および連結ブラケット37の4つの部材24,25,28,37を順次組み付けるとき、上記第1空間46に上記各突出部48を収容させれば、上記第1空間46を形成する両ボード24,25の両対向縁部24a,25aと各突出部48との互いの相対的な位置決めができ、つまり、上記両ボード24,25と連結ブラケット37との互いの位置決めができる。よって、この位置決めにより、上記デッキボード21の組立作業が、より容易にできる。
【0061】
なお、上記位置決めに先立って、上記第1空間46に上記各突出部48を収容させようとするとき、上記第1空間46の内面である上記両対向縁部24a,25aの互いの対向面と上記各突出部48の前、後面とが摺接して、上記第1空間46と各突出部48とが上記位置決めされるべき所定位置に案内される。よって、この点でも、上記デッキボード21の組立作業が容易にできる。
【0062】
また、上記したように、第1空間46に上記各突出部48を収容させた場合において、上記後ボード25に対し前ボード24が上記一方向に向かって大きく回動Cしようとするとき、上記第1空間46の内面と各突出部48の外面とが互いに当接して、上記前ボード24の上記一方向への過大な回動Cが阻止される。よって、この点でも、上記デッキボード21の組立作業が容易にできる。
【0063】
なお、以上は図示の例によるが、上記両ボード24,25は、車体2の幅方向に並設されたものであってもよい。また、上記ヒンジ26は、上記各ボード24,25とは別体に設けたものであってもよい。また、上記連結ブラケット37は、上記後ボード25の対向縁部25aを車体2のフロアパネル側に連結させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
2 車体
3 車室
13 リヤシート
14 シートレール
15 シートクッション
16 シートバック
19 荷室
20 デッキボックス
21 デッキボード
24 (他方の)ボード
24a 対向縁部
25 (一方の)ボード
25a 対向縁部
26 ヒンジ
28 スプリング
29 軸心
30 コイル部
31 延出部
32 延出部
33 締結具
36 締結具
37 連結ブラケット
38 係合アーム
40 基板
41 係合突起
42 突出片
43 係合軸
45 凹部
46 第1空間
47 第2空間
48 突出部
49 溝
50 ストッパ
A 前後移動
B 前後傾動
C 回動
D 回動
E 移動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部内の荷室に並設される2枚のボードと、これら両ボードの互いの対向縁部を互いに枢支すると共に、この枢支部を中心として一方のボードに対し他方のボードを相対回動可能とさせるヒンジと、上記他方のボードを一方向に回動させるよう弾性的に付勢するコイル式スプリングと、上記一方のボードの対向縁部に取り付けられ、この対向縁部を車体側に連結する連結ブラケットとを備えた車両における荷室用デッキボードにおいて、
上記両ボードの相対回動によりこれら両ボードがほぼ水平方向に並設された状態で、上記両対向縁部の間に第1空間が形成され、かつ、上記両対向縁部とこれに対面する上記連結ブラケットの部分との間に、上記第1空間と互いに連通する第2空間が形成され、これら第1、第2空間に上記スプリングのコイル部が収容されたことを特徴とする車両における荷室用デッキボード。
【請求項2】
上記スプリングが、上記コイル部から延出する2つの延出部を有し、これら両延出部のうち、一方の延出部が上記一方のボードの対向縁部側に保持され、他方の延出部が上記他方のボードに取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両における荷室用デッキボード。
【請求項3】
上記スプリングの一方の延出部が、その長手方向に向かって移動可能となるよう上記一方のボードの対向縁部と上記連結ブラケットとの組み合せ体に保持されたことを特徴とする請求項2に記載の車両における荷室用デッキボード。
【請求項4】
上記連結ブラケットに突設され、上記コイル部をその軸方向から囲むと共にその突出側が上記第1空間に収容される一対の突出部が設けられたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の車両における荷室用デッキボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−20713(P2012−20713A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161985(P2010−161985)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000244280)盟和産業株式会社 (48)
【Fターム(参考)】