説明

車両のアイドルストップ制御システム

【課題】ドライバに違和感を感じさせることなくアイドルストップ制御によるエンジンの自動停止からの再始動を行うことができる車両のアイドルストップ制御システムを提供する。
【解決手段】エンジン1を自動停止させるための条件として運転状態に関する基本条件と当該基本条件以外の付加条件とを有しエンジン1の作動中に基本条件及び付加条件の全てが成立しているときエンジン1を自動停止し、自動停止中に基本条件或いは付加条件の少なくとも何れか一が非成立となったときエンジン1を再始動させるアイドルストップ制御において、ISS_ECU20は、エンジン1の自動停止中に付加条件の少なくとも何れか一の非成立に伴うエンジン1の再始動タイミングを演算し、エンジン1を再始動させるタイミング以前にその旨をドライバに報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定した条件が成立している場合にエンジンを自動停止させるアイドルストップ機能を備えた車両のアイドルストップ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両においては、燃費の低減や排気ガスの低減等を目的として、例えば、信号待ちや、電車通過待ち、人待ち等をしている際の車両停止時等のようにエンジンの作動が不要のときにエンジンを自動的に停止し、エンジンの作動が必要になったときにエンジンを再び始動するアイドルストップ機能についての様々な技術が提案され実用化されている。
【0003】
さらに、近年では、アイドルストップ制御に関する各種情報をドライバに提供するための技術が提案されており、例えば、特許文献1には、アイドルストップ直前の単位時間あたりの燃料噴射量とアイドルストップ時間とに基づいてアイドルストップにより節約した燃料量(節約燃料量)を算出し、当該節約燃料量を表示部に表示する燃料消費節約モニタが開示されている。
【0004】
ところで、一般に、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止は、例えば、ブレーキペダルが踏み込まれ、アクセルペダルが踏み込まれておらず、自車速が略0であること等の基本条件が全て成立したか否かに基づいて判断される。その一方で、たとえ前記基本条件が成立していたとしても、例えば、バッテリ電圧が設定電圧以上であること、エンジン冷却水温が設定温度以上であること等の付加条件が全て成立していない場合、エンジンの自動停止は保留される。
【0005】
また、一般に、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止からの復帰(再始動)は、例えば、前記基本条件の何れかが非成立となったか否かに基づいて判断される。その一方で、たとえ前記基本条件が全て成立していたとしても、例えば、前記付加条件の何れかが非成立となった場合、エンジンは再始動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−121471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止からの再始動は、常にドライバの運転操作に連動して行われるとは限らず、例えば、エンジンの自動停止中にバッテリ電圧が低下した場合には、ドライバの意図しないタイミングでエンジンが再始動される等、ドライバに違和感を感じさせる虞があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ドライバに違和感を感じさせることなくアイドルストップ制御によるエンジンの自動停止からの再始動を行うことができる車両のアイドルストップ制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による車両のアイドルストップ制御システムは、エンジンを自動停止させるための条件として運転状態に関する基本条件と当該基本条件以外の付加条件とを有し、エンジンの作動中に前記基本条件及び前記付加条件の全てが成立しているとき前記エンジンを自動停止させる自動停止判定手段と、前記エンジンの自動停止中に前記基本条件或いは前記付加条件の少なくとも何れか一が非成立となったとき前記エンジンを再始動させる再始動判定手段と、前記エンジンの自動停止中に前記付加条件の非成立に伴う前記エンジンの再始動タイミングを演算する再始動タイミング演算手段と、前記再始動タイミング演算手段で演算した前記再始動タイミング前に、前記エンジンを再始動する旨を報知する報知手段と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両のアイドルストップ制御システムによれば、ドライバに違和感を感じさせることなくアイドルストップ制御によるエンジンの自動停止からの再始動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わり、アイドルストップ制御システムの概略構成図
【図2】同上、アイドルストップ制御ルーチンを示すフローチャート
【図3】同上、アイドルストップ制御ルーチンを示すフローチャート
【図4】同上、付加条件成立までの時間の演算サブルーチンを示すフローチャート
【図5】同上、付加条件非成立までの時間の演算サブルーチンを示すフローチャート
【図6】同上、報知情報の一例を示す説明図
【図7】同上、報知情報の一例を示す説明図
【図8】本発明の第2の実施形態に係わり、アイドルストップ制御ルーチンを示すフローチャート
【図9】同上、アイドルストップ制御ルーチンを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図1乃至図7は本発明の第1の実施形態に係わり、図1はアイドルストップ制御システムの概略構成図、図2,3はアイドルストップ制御ルーチンを示すフローチャート、図4は付加条件成立までの時間の演算サブルーチンを示すフローチャート、図5は付加条件非成立までの時間の演算サブルーチンを示すフローチャート、図6,7は報知情報の一例を示す説明図である。
【0013】
図1において符号1は自動車等の車両に搭載されるエンジンを示し、このエンジン1には、図示しない歯車機構等を介してスタータモータ2が連設されている。また、エンジン1の出力軸1aには、プーリ機構3を介してオルタネータ4が連設され、このオルタネータ4にはバッテリ5が電気的に接続されている。
【0014】
バッテリ5には、スタータモータ2が電気的に接続されていると共に、ナビゲーション装置8やオーディオ機器(図示せず)等の各種電気負荷がDC/DCコンバータ6を介して電気的に接続されている。さらに、バッテリ5には電圧センサ7が接続され、この電圧センサ7で検出されたバッテリ電圧Vbが、アイドルストップ制御装置(ISS_ECU)20に入力される。
【0015】
ISS_ECU20は、CAN(Controller Area Network)通信等の車内通信回線を通じて、エンジン制御装置(E/G_ECU)21、トランスミッション制御装置(T/M_ECU)22、ブレーキ制御装置(BRK_ECU)23、エアコン制御装置(A/C_ECU)24、及び、統合制御装置(統合_ECU)25等の各種制御装置と相互通信可能に接続されている。
【0016】
そして、ISS_ECU20には、E/G_ECU21からアクセル踏込量、エンジン冷却水温Tw等の情報が入力され、T/M_ECU22から自車速Vo、シフトレバー位置等の情報が入力され、BRK_ECU23からブレーキ踏込量等の情報が入力され、さらに、A/C_ECU24からエアコンの作動状態、エアコンの設定温度Tt、車室内温度T等の情報が入力される。
【0017】
これらの信号等に基づき、ISS_ECU20は、アイドルストップ制御を行う。すなわち、ISS_ECU20は、エンジン1を自動停止させるための予め設定された各種条件(自動停止条件)が成立しているか否かの判定を行い、全ての自動停止条件が成立していると判定した場合、E/G_ECU21を通じてエンジン1を自動停止させる。また、エンジン1が自動停止されると、ISS_ECU20は、エンジン1を自動停止から復帰(再始動)させるための条件が成立しているか否かの判定を行い(すなわち、自動停止条件の少なくとも何れか一が非成立となったか否かの判定を行い)、自動停止条件の少なくとも何れか一が非成立となったと判定した場合、ISS_ECU20は、E/G_ECU21を通じてスタータモータ2を駆動しエンジン1を再始動させる。
【0018】
具体的に説明すると、ISS_ECU20には、アイドルストップ制御によるエンジン1の自動停止及び当該自動停止からの再始動を判定するための条件として、自車両の運転状態に関する基本条件と、当該基本条件以外の付加条件とが予め設定されている。
【0019】
本実施形態において、基本条件には、例えば、ブレーキペダルが踏み込まれていること、アクセルペダルが解放されていること、及び、自車速Voが略0であること等を含む各種判定条件が設定されている。また、付加条件には、例えば、バッテリ電圧Vbが設定閾値Vbth以上であること、冷房時の車室内温度Tがエアコンの設定温度に基づく閾値Tth以下であること、エンジン1の冷却水温Twが設定閾値Twth以上であること等を含む各種判定条件が設定されている。
【0020】
そして、ISS_ECU20は、エンジン1の作動中において、これら基本条件及び付加条件の成否を調べ、基本条件及び付加条件の全てが成立しているとき、エンジン1の自動停止条件が成立したことを判定する。
【0021】
ここで、一般には上述の付加要件はエンジン1の始動から所定時間経過後には成立してその後維持されるものであるため、エンジン1の自動停止の成否は、基本的にはドライバの運転操作に密接に関連する基本条件の成否に依存する。従って、このような場合、エンジン1の自動停止は、ドライバに違和感のないタイミングで実行されることとなる。一方で、何らかの要因で付加条件が非成立となっている状況下では、基本条件が成立してもエンジン1の自動停止は実行されない。このような場合、その後の付加条件の成立に伴いエンジン1の自動停止がドライバの意図しないタイミングで実行される場合がある。そこで、ISS_ECU20は、エンジン1の作動中に、基本条件のみが成立し且つ付加条件が非成立の状態である場合には、付加条件の成立に伴うエンジン1の自動停止タイミングを演算し、当該タイミングをドライバに報知する。
【0022】
具体的には、ISS_ECU20は、例えば、付加条件を構成する各要件についての時間的な推移に基づいて付加条件が全て成立するタイミングを自動停止タイミングとして推定する。そして、ISS_ECU20は、推定したタイミングを、例えば、統合_ECU25を通じて、コンビネーションメータ9上のマルチファンクションディスプレイ9a上に表示する。
【0023】
一方、エンジン1の自動停止中において、ISS_ECU20は、基本条件及び付加条件の成否を監視し、基本条件或いは付加条件の少なくとも何れか一が非成立となったとき、エンジン1の再始動条件が成立したことを判定する(自動停止条件が非成立となったことを判定する)。なお、アイドルストップ制御ハンチングを防止するため、この場合の自動停止条件には、自動停止判定時のものとの間に所定のヒステリシスを持たせることが望ましい。
【0024】
ここで、上述のように、一般には付加要件はエンジン1の始動から所定時間経過後には成立してその後維持されるものであるため、エンジン1の再始動の成否は、基本的にはドライバの運転操作に密接に関連する基本条件の成否に依存する。従って、このような場合、エンジン1の再始動は、ドライバに違和感のないタイミングで実行されることとなる。一方で、例えば、エンジン1の自動停止状態が長時間に渡って継続した等の場合、基本条件が成立中に付加条件が非成立に転じる場合がある。このような場合、付加条件の非成立に伴いエンジン1の再始動がドライバの意図しないタイミングで実行される場合がある。そこで、ISS_ECU20は、エンジン1の自動停止中に、付加条件の非成立に伴うエンジン1の再始動タイミングを演算し、当該タイミングドライバに報知する。
【0025】
具体的には、ISS_ECU20は、例えば、付加条件を構成する各要件についての時間的な推移に基づいて付加条件の何れか一が非成立となるタイミングを再始動タイミングとして推定する。そして、ISS_ECU20は、推定したタイミングを、例えば、統合_ECU25を通じて、コンビネーションメータ9上のマルチファンクションディスプレイ9a上に表示する。
【0026】
なお、エンジン1の自動停止及び再始動についての報知方法は、マルチファンクションディスプレイ9a上への表示に限らず、例えば、ナビゲーション装置8のディスプレイ8a上への表示によって実現してもよく、また、ナビゲーション装置8のスピーカ8b等を通じて音声によって実現してもよい。さらに、例えば、コンビネーションメータ9上のメータリング9bを点滅等することによって実現してもよい。
【0027】
このように、本実施形態においてISS_ECU20は、自動停止判定手段、再始動判定手段、自動停止タイミング演算手段、再始動タイミング演算手段、及び、報知手段としての各機能を実現する。
【0028】
次に、ISS_ECU20によるアイドルストップ制御について、図2,3に示すアイドルストップ制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、設定時間毎に実行されるもので、ルーチンがスタートすると、ISS_ECU20は、先ず、ステップS101において、現在、エンジン1が自動停止中であるか否かを調べる。
【0029】
そして、ステップS101において、エンジン1が自動停止中ではないと判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS102に進み、エンジン1を自動停止させるための基本条件が全て成立しているか否かを調べる。
【0030】
そして、ステップS102において、基本条件が成立していない判定した場合、ISS_ECU20は、そのままルーチンを抜ける。
【0031】
一方、ステップS102において、基本条件が全て成立していると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS103に進み、エンジン1を自動停止させるための付加条件が全て成立しているか否かを調べる。
【0032】
そして、ステップS103において、付加条件が成立していないと判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS104に進み、付加条件が全て成立するまでの時間t1を演算する。
【0033】
この時間t1の演算は、例えば、図4に示すサブルーチンに従って実行されるもので、サブルーチンがスタートすると、ISS_ECU20は、先ず、ステップS201において、バッテリ電圧Vbの時間的な変化に基づいて、当該バッテリ電圧Vbが予め設定された閾値Vbth以上となるまでの時間tvを演算(推定)する。なお、バッテリ電圧Vbが既に閾値Vbth以上である場合、時間tvは「0」となる。
【0034】
そして、ステップS201からステップS202に進むと、ISS_ECU20は、付加条件が全て成立するまでの時間t1として、ステップS201で推定した時間tvをセットした後、ステップS203に進む。
【0035】
ステップS203に進むと、ISS_ECU20は、車室内の温度Tの時間的な変化に基づいて、当該温度Tがエアコン設定温度に基づいて可変設定される閾値Tth以下となるまでの時間taを演算(推定)する。なお、エアコンが暖房にセットされているとき、或いは、冷房時の温度Tが閾値Tth以下である場合、時間taは「0」となる。
【0036】
そして、ステップS203からステップS204に進むと、ISS_ECU20は、付加条件が全て成立するまでの時間t1として、ステップS202で設定した時間t1とステップS203で推定した時間taのうちの小値を新たにセットした後、ステップS205に進む。
【0037】
ステップS205に進むと、ISS_ECU20は、エンジン水温Twの時間的な変化に基づいて、当該水温Twが予め設定された閾値Twth以上となるまでの時間twを演算(推定)する。なお、水温Twが既に閾値Twth以上である場合、時間twは「0」となる。
【0038】
そして、ステップS205からステップS206に進むと、ISS_ECU20は、付加条件が全て成立するまでの時間として、ステップS204で設定した時間t1とステップS205で推定した時間twのうちの小値を新たにセットした後、サブルーチンを抜ける。
【0039】
図2のメインルーチンにおいて、ステップS104からステップS105に進むと、ISS_ECU20は、時間t1が予め設定された閾値t1th(例えば、t1th=5秒)よりも大きいか否かを調べる。
【0040】
そして、ステップS105において、t1≦t1thであると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS106に進み、統合_ECU25を通じてマルチファンクションディスプレイ9a上にエンジン1が自動停止される旨を表示した後、ルーチンを抜ける。この表示は、例えば、マルチファンクションディスプレイ9a自体を点滅させながら、当該ディスプレイ9a上にエンジン1を自動停止する旨を表示することにより行われる。なお、この場合において、例えば、図9(a)に示すように、エンジン1の自動停止タイミングまでの残り時間を併せて表示することが望ましい。さらに、例えば、図10(a)に示すように、エンジン1を自動停止できなかった原因(非成立となっている付加条件)を併せて表示することがより望ましい。
【0041】
一方、ステップS105において、t1>t1thであると判定した場合、(すなわち、エンジン1の自動停止タイミングまでの時間が十分に長いと判定した場合)、ISS_ECU20は、自動停止タイミングをドライバに報知することなく、そのままルーチンを抜ける。
【0042】
また、ステップS103において、付加条件が全て成立していると判定した場合(すなわち、基本条件及び付加条件の全てが成立していると判定した場合)、ISS_ECU20は、ステップS107に進み、E/G_ECU21を通じてエンジン1を自動停止させた後、ルーチンを抜ける。
【0043】
また、ステップS101において、エンジン1が自動停止中であると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS108に進み(図3参照)、エンジン1を自動停止させるための基本条件のうちの少なくとも何れか一が非成立となっているか否かを調べる。
【0044】
そして、ステップS108において、基本条件のうちの少なくとも何れか一が非成立となっていると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS113に進む。
【0045】
一方、ステップS108において、基本条件の全てが成立中であると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS109に進み、エンジン1を自動停止させるための付加条件のうち少なくとも何れか一が非成立となっているか否かを調べる。
【0046】
そして、ステップS109において、付加条件のうちの少なくとも何れか一が非成立となっていると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS113に進む。
【0047】
一方、ステップS109において、付加条件の全てが成立中であると判定した場合(すなわち、基本条件及び付加条件の全てが成立中であると判定した場合)、ISS_ECU20は、ステップS110に進み、付加条件のうちの何れか一が不成立となるまでの時間t2を演算する。
【0048】
この時間t2の演算は、例えば、図5に示すサブルーチンに従って実行されるもので、サブルーチンがスタートすると、ISS_ECU20は、先ず、ステップS301において、バッテリ電圧Vbの時間的な変化に基づいて、当該バッテリ電圧Vbが予め設定された閾値Vbth以下となるまでの時間tvを演算(推定)する。
【0049】
そして、ステップS301からステップS302に進むと、ISS_ECU20は、付加条件の少なくとも何れか一が非成立となるまでの時間t2として、ステップS301で推定した時間tvをセットした後、ステップS303に進む。
【0050】
ステップS303に進むと、ISS_ECU20は、車室内の温度Tの時間的な変化に基づいて、当該温度Tがエアコン設定温度に基づいて可変設定される閾値Tth以上となるまでの時間taを演算(推定)する。なお、エアコンが暖房にセットされているとき、時間taは「∞」となる。
【0051】
そして、ステップS303からステップS304に進むと、ISS_ECU20は、付加条件の少なくとも何れか一が非成立となるまでの時間t2として、ステップS302で設定した時間t2とステップS303で推定した時間taのうちの小値を新たにセットした後、ステップS305に進む。
【0052】
ステップS305に進むと、ISS_ECU20は、エンジン水温Twの時間的な変化に基づいて、当該水温Twが予め設定された閾値Twth以下となるまでの時間twを演算(推定)する。
【0053】
そして、ステップS305からステップS306に進むと、ISS_ECU20は、付加条件うちの何れか一が非成立となるまでの時間として、ステップS304で設定した時間t2とステップS305で推定した時間twのうちの小値を新たにセットした後、サブルーチンを抜ける。
【0054】
図3のメインルーチンにおいて、ステップS110からステップS111に進むと、ISS_ECU20は、時間t2が予め設定された閾値t2th(例えば、t2th=5秒)よりも大きいか否かを調べる。
【0055】
そして、ステップS111において、t2≦t2thであると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS112に進み、統合_ECU25を通じてマルチファンクションディスプレイ9a上にエンジン1が再始動される旨を表示した後、ルーチンを抜ける。この表示は、例えば、マルチファンクションディスプレイ9a自体を点滅させながら、当該ディスプレイ9a上にエンジン1を再始動する旨を表示することにより行われる。なお、この場合において、例えば、図9(b)に示すように、エンジン1の再始動タイミングまでの残り時間を併せて表示することが望ましい。さらに、例えば、図10(b)に示すように、エンジン1を再始動するための原因(非成立となる付加条件)を併せて表示することがより望ましい。
【0056】
一方、ステップS111において、t2>t2thであると判定した場合、(すなわち、エンジン1の再始動タイミングまでの時間が十分に長いと判定した場合)、ISS_ECU20は、再始動タイミングをドライバに報知することなく、そのままルーチンを抜ける。
【0057】
また、ステップS108或いはステップS109からステップS113に進むと、ISS_ECU20は、E/G_ECU21を通じてスタータモータ2を駆動しエンジン1を再始動させた後、ルーチンを抜ける。
【0058】
このような実施形態によれば、エンジン1を自動停止させるための条件として運転状態に関する基本条件と当該基本条件以外の付加条件とを有しエンジン1の作動中に基本条件及び付加条件の全てが成立しているときエンジン1を自動停止し、自動停止中に基本条件或いは付加条件の少なくとも何れか一が非成立となったときエンジン1を再始動させるアイドルストップ制御において、基本条件が成立し且つ付加条件が非成立であるエンジン1の作動中に、付加条件の成立に伴うエンジン1の自動停止タイミングを演算し、エンジン1を自動停止するタイミング以前にその旨をドライバに報知することにより、ドライバに違和感を感じさせることなくアイドルストップ制御によるエンジン1の自動停止を行うことができる。
【0059】
一方、エンジン1の自動停止中に付加条件の少なくとも何れか一の非成立に伴うエンジン1の再始動タイミングを演算し、エンジン1を再始動させるタイミング以前にその旨をドライバに報知することにより、ドライバに違和感を感じさせることなくアイドルストップ制御によるエンジン1の自動停止からの再始動を行うことができる。
【0060】
次に、図8,9は本発明の第2の実施形態に係わり、図8,9はアイドルストップ制御ルーチンを示すフローチャートである。なお、上述の第1の実施形態においては、付加条件の時間的変化に基づいて推定したエンジン1の自動停止タイミング、及び、付加条件の時間的変化に基づいて推定したエンジン1の再始動タイミングをドライバに報知する一例について説明したが、本実施形態においては、付加条件の成立時にはその後設定時間が経過したタイミングをエンジン1の自動停止タイミングとして設定するとともに、付加条件の非成立時にはその後設定時間が経過が経過したタイミングをエンジン1の再始動タイミングとして設定し、これらをドライバに報知する点が上述の第1の実施形態と異なる。その他、同様の点については説明を省略する。
【0061】
本実施形態のアイドルストップ制御は、例えば、図8,9に示すアイドルストップ制御ルーチンのフローチャートに従って設定時間毎に実行されるもので、ルーチンがスタートすると、ISS_ECU20は、先ず、ステップS401において、現在、エンジン1が自動停止中であるか否かを調べる。
【0062】
そして、ステップS401において、エンジン1が自動停止中ではないと判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS402に進み、エンジン1を自動停止させるための基本条件が全て成立しているか否かを調べる。
【0063】
そして、ステップS402において、基本条件が成立していないと判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS404に進み、エンジン1を自動停止させるまでの時間t1を初期値t1ini(例えば、t1ini=5秒)にリセットした後、ルーチンを抜ける。
【0064】
一方、ステップS402において、基本条件が全て成立していると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS403に進み、エンジン1を自動停止させるための付加条件が全て成立しているか否かを調べる。
【0065】
そして、ステップS403において、付加条件が成立していないと判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS404に進み、エンジン1を自動停止させるまでの時間t1を初期値t1ini(例えば、t1ini=5秒)にリセットした後、ルーチンを抜ける。
【0066】
一方、ステップS403において、付加条件の全てが成立していると判定した場合(すなわち、基本条件及び付加条件の全てが成立していると判定した場合)、ISS_ECU20は、ステップS405に進み、付加条件の全てが成立したタイミングが基本条件の全てが成立後のタイミングであったか否かを調べる。
【0067】
そして、ステップS405において、基本条件の全てが成立前に付加条件の全てが成立していたと判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS409に進む。
【0068】
一方、ステップS405において、付加条件の全てが成立したタイミングが基本条件の全てが成立後のタイミングであったと判定した場合(すなわち、基本条件の全てが成立したタイミングでは付加条件の全てが成立していなかったと判定した場合)、ISS_ECU20は、ステップS406に進み、現在カウントされているエンジン1を自動停止させるまでの時間t1をカウントダウンさせた後(t1←t1−Δt)、ステップS407に進む。
【0069】
そして、ステップS406からステップS407に進むと、ISS_ECU20は、時間t1が「0」までカウントダウンされているか否かを調べ、時間t1が「0」までカウントダウンされていないと判定した場合、ステップS408に進み、統合_ECU25を通じてマルチファンクションディスプレイ9a上にエンジン1が自動停止される旨を表示した後、ルーチンを抜ける。
【0070】
一方、ステップS407において、時間t1が「0」までカウントダウンされていると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS409に進む。
【0071】
そして、ステップS405或いはステップS407からステップS409に進むと、ISS_ECU20は、E/G_ECU21を通じてエンジン1を自動停止させた後、ルーチンを抜ける。
【0072】
また、ステップS401において、エンジン1が自動停止中であると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS410に進み(図9参照)、エンジン1を自動停止させるための基本条件のうちの少なくとも何れか一が非成立となっているか否かを調べる。
【0073】
そして、ステップS410において、基本条件のうちの少なくとも何れか一が非成立となっていると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS416に進む。
【0074】
一方、ステップS410において、基本条件の全てが成立中であると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS411に進み、エンジン1を自動停止させるための付加条件のうち少なくとも何れか一が非成立となっているか否かを調べる。
【0075】
そして、ステップS411において、付加条件の全てが成立中であると判定した場合(すなわち、全ての基本条件及び付加条件が未だ成立中であると判定した場合)、ISS_ECU20は、ステップS412に進み、エンジン1を再始動させるまでの時間t2を初期値t2ini(例えば、t2ini=5秒)にリセットした後、ルーチンを抜ける。
【0076】
一方、ステップS411において、付加条件のうちの何れか一が非成立となってると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS413に進み、現在カウントされているエンジン1を再始動させるまでの時間t2をカウントダウンさせた後(t2←t2−Δt)、ステップS414に進む。
【0077】
そして、ステップS413からステップS414に進むと、ISS_ECU20は、時間t2が「0」までカウントダウンされているか否かを調べ、時間t2が「0」までカウントダウンされていないと判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS415に進み、統合_ECU25を通じてマルチファンクションディスプレイ9a上にエンジン1が再始動される旨を表示した後、ルーチンを抜ける。
【0078】
一方、ステップS414において、時間t2が「0」までカウントダウンされていると判定した場合、ISS_ECU20は、ステップS416に進む。
【0079】
そして、ステップS410或いはステップS414からステップS416に進むと、ISS_ECU20は、E/G_ECU21を通じてスタータモータ2を駆動しエンジン1を再始動させた後、ルーチンを抜ける。
【0080】
このような実施形態によれば、上述の第1の実施形態と略同様の効果を奏することができる。
【0081】
なお、上述の各実施形態において、アイドルストップ制御に用いる基本条件及び付加条件等は上述のものに限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0082】
1 … エンジン
1a … 出力軸
2 … スタータモータ
3 … プーリ機構
4 … オルタネータ
5 … バッテリ
6 … DC/DCコンバータ
7 … 電圧センサ
8 … ナビゲーション装置
8a … ディスプレイ
8b … スピーカ
9 … コンビネーションメータ
9a … マルチファンクションディスプレイ
9b … メータリング
20 … アイドルストップ制御装置(自動停止判定手段、再始動判定手段、自動停止タイミング演算手段、再始動タイミング演算手段、報知手段)
21 … エンジン制御装置
22 … トランスミッション制御装置
23 … ブレーキ制御装置
24 … エアコン制御装置
25 … 統合制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを自動停止させるための条件として運転状態に関する基本条件と当該基本条件以外の付加条件とを有し、エンジンの作動中に前記基本条件及び前記付加条件の全てが成立しているとき前記エンジンを自動停止させる自動停止判定手段と、
前記エンジンの自動停止中に前記基本条件或いは前記付加条件の少なくとも何れか一が非成立となったとき前記エンジンを再始動させる再始動判定手段と、
前記エンジンの自動停止中に前記付加条件の非成立に伴う前記エンジンの再始動タイミングを演算する再始動タイミング演算手段と、
前記再始動タイミング演算手段で演算した前記再始動タイミング前に、前記エンジンを再始動する旨を報知する報知手段と、を備えたことを特徴とする車両のアイドルストップ制御システム。
【請求項2】
前記付加条件は、バッテリ電圧が設定閾値以上であることを含むことを特徴とする請求項1記載の車両のアイドルストップ制御システム。
【請求項3】
前記付加条件は、車室内温度がエアコンの設定温度に基づく閾値以下であることを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両のアイドルストップ制御システム。
【請求項4】
前記付加条件は、エンジンの冷却水温が設定閾値以上であることを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両のアイドルストップ制御システム。
【請求項5】
前記報知手段は、前記エンジンの再始動タイミングまでの残り時間が設定時間未満となったとき、当該エンジンを再始動する旨の報知を開始することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の車両のアイドルストップ制御システム。
【請求項6】
前記報知手段は、前記エンジンの再始動タイミングまでの残り時間を表示することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の車両のアイドルストップ制御システム。
【請求項7】
前記報知手段は、前記付加条件が非成立となる原因を表示することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の車両のアイドルストップ制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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