説明

車両のカウルグリル構造

【課題】本発明は、車幅方向に分割して複数の部材を組み合わせて一つのカウルグリルを構成する車両のカウルグリル構造において、雨水等の量が増加した場合や車両旋回等で流量が変化した場合においても、「合わせ部」への雨水等の浸入を抑えて、エンジンルーム内への水漏れを防止することができる車両のカウルグリル構造を提供することを目的とする。
【解決手段】凹状溝部33,43の合わせ部10の車幅方向両側位置には、車両前後方向に延びて、凹状溝部33,43を車幅方向に仕切る、流動規制手段たる堰状リブ部37,47を立設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のカウルグリル構造に関し、特に、エンジンルーム内への水漏れを防止する車両のカウルグリル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のカウルグリル構造は、フロントウィンドシールドの下端で車幅方向に延び、ボンネットとの間のカウルボックス上方を覆うように設置されている。このカウルグリルにおいては、フロントウィンドシールドから流れてくる雨水等を、下方のカウルボックス内に円滑に排水することが求められる。
【0003】
ところで、近年、フロントウィンドシールドの下端が車両前方側に突出して、フロントウィンドシールドがエンジンルーム側に近接するように配置されるようになっている。こうしたことから、フロントウィンドシールドからカウルグリルに流れ込んだ雨水等が、エンジンルーム内に流れ込むおそれがあった。
【0004】
そこで、下記特許文献1では、エンジンルーム内に水漏れするおそれがある部分に樋部材を設けて、エンジンルーム内への水漏れを防止するカウルグリル構造が開示されている。
【0005】
一方、カウルグリルは、一般に合成樹脂等で成形されるが、車幅方向全てを一つの部材で成形すると、成形型が大型化してコストが増大するといった問題がある。また、一つの部材で成形すると、車両に組付ける際に、円弧が大きくなって組み付け作業が困難になるといった問題がある。
【0006】
そこで、下記特許文献2のように、車幅方向に複数に分割したグリル部材を組み合わせることで、一つのカウルグリルとして構成することも知られている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−62474号公報
【特許文献2】特開2006−224758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車幅方向に分割した複数のグリル部材を組み合わせて構成するカウルグリルの場合には、各グリル部材の間に、どうしても「合わせ部」が生じることになる。こうした「合わせ部」が生じると、この「合わせ部」から雨水等が漏れてしまい、下方にカウルボックスがない部分では、エンジンルーム内に水漏れが生じるという問題が発生する。
【0009】
この問題に対しては、例えば、この「合わせ部」の下方に、引用文献1のように、樋部材等を設けて、エンジンルーム内への水漏れを防止することが考えられる。
【0010】
しかし、単に、こうした樋部材を設けても、雨水等の量が増加した場合や、車両旋回等で流量が変化した場合には、樋部材で受ける雨水等が樋部材の容量よりも多くなり、樋部材で全ての雨水等を排水できず、結果的にエンジンルーム内への水漏れが生じるおそれがあった。
【0011】
そこで、本発明は、車幅方向に分割して複数の部材を組み合わせて一つのカウルグリルを構成する車両のカウルグリル構造において、雨水等の量が増加した場合や車両旋回等で流量が変化した場合においても、「合わせ部」への雨水等の浸入を抑えて、エンジンルーム内への水漏れを防止することができる車両のカウルグリル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の車両のカウルグリル構造は、フロントウィンドシールドの前縁部からボンネットの後縁部の下方に渡って設けられ、車幅方向に分割した複数のグリル部材を組み合わせることで、一つのカウルグリルを構成する車両のカウルグリル構造であって、前記カウルグリルに、ボンネットとのシール部後方に車幅方向に延びる凹部を形成して、該凹部内に、車幅方向外方側からグリル部材間の合わせ部に向って流れる水の流れを制限する流動規制手段を、該合わせ部を挟んで車幅方向両側位置に設けたものである。
【0013】
上記構成によれば、流動規制手段が合わせ部の車幅方向両側位置に設けられているため、凹部内を流れる雨水等が合わせ部に流れ込むのを防ぐことができる。
このため、雨水等が増加した場合や、車両旋回等で流量が変化した場合でも、雨水等が合わせ部に流れ込むことがなく、合わせ部から雨水等がエンジンルーム内に漏れるのを防ぐことができる。
【0014】
なお、流動規制手段としては、「堰部」「肉厚部」「凸部」「傾斜部」等、車幅方向に延びる凹部内で車幅方向に流れる水の流れを堰き止めるものであれば、どのような形状のものであってもよい。
また、カウルグリルは車幅方向に分割されるものであれば、二つのグリル部材に分割されるものであっても、三つのグリル部材に分割されるものであってもよい。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記流動規制手段を、前記合わせ部から車幅方向に離間して設けたものである。
上記構成によれば、合わせ部から流動規制手段を離間して設けることで、表面張力によって、凹部で流れる水が流動規制手段を超えて、合わせ部側に伝っていく場合があっても、合わせ部まで距離があることから、合わせ部からの水漏れを確実に防止できる。
よって、より確実に、流動規制手段の水漏れ防止機能を高めることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記合わせ部の下方に、合わせ部から漏れる水を、カウルボックス内に案内する樋部を設けたものである。
上記構成によれば、合わせ部の下方に樋部を設けたことで、合わせ部から少量の水が漏れる場合があっても、この樋部で水を受けることができ、この水をカウルボックス内に排水することができる。
よって、合わせ部から、少量の水漏れが生じた場合であっても、エンジンルーム内に水漏れが生じることを抑制して、確実にエンジンルーム内への水漏れを防止することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記ボンネットとのシール部における車幅方向分割面を、前記合わせ部に対して車幅方向にオフセットするように形成したものである。
上記構成によれば、シール部の車幅方向分割面を、合わせ部に対して、オフセットするように形成したことで、合わせ部を伝って車両前方側に流れる水を、クランク形状によるラビリンス効果によって、車幅方向分割面に流れないようにできる。
よって、シール部の車幅方向分割面からの水漏れを抑制することができ、エンジンルーム内への水漏れを、より確実に防止することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記車幅方向分割面の下方に水を受ける受け面を設け、該受け面で受けた水を、前記流動規制手段より反合わせ部側の凹部内に案内する排水案内部を設けたものである。
上記構成によれば、車幅方向分割面の下方の受け面で、車幅方向分割面から漏れる水を受けるとともに、この受けた水を、流動規制手段の反合わせ部側の凹部に案内することで、受けた水の樋部への流れ込みを防ぐことができる。
よって、車幅方向分割面での水漏れを防止しつつ、樋部の流量増加も、抑制できるため、さらに確実にエンジンルーム内への水漏れを防止できる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、前記受け面に、合わせ部側から反合わせ部側に向かって下方に傾斜する傾斜面を設けたものである。
上記構成によれば、合わせ部側から反合わせ部側に傾斜する傾斜面によって、合わせ部から離れる方向に水を誘導することができるため、合わせ部側に水が流れ込むのを確実に防止することができる。
よって、合わせ部からの水漏れを、確実に防止することができ、より確実にエンジンルーム内への水漏れを防止することができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、前記樋部を、一つのグリル部材に形成するとともに、該樋部の側面をカバーするカバー部を、他のグリル部材に設けたものである。
上記構成によれば、樋部を一つのグリル部材に形成して、他のグリル部材にカバー部を設けることで、各グリル部材の成形性を確保して、一方のグリル部材に樋部を形成したことによる隙を、他のグリル部材のカバー部で埋めることができる。
よって、グリル部材の成形性を維持しつつ、エンジンルーム内の熱気、臭気、及び、騒音の外部への漏れを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、雨水等が増加した場合や、車両旋回等で流量が変化した場合でも、雨水が合わせ部に流れ込むことがなく、合わせ部から雨水がエンジンルーム内に漏れるのを防ぐことができる。
よって、車幅方向に分割して複数の部材を組み合わせて一つのカウルグリルを構成する車両のカウルグリル構造において、雨水等の量が増加した場合や車両旋回等で流量が変化した場合においても、「合わせ部」への雨水等の浸入を抑えて、エンジンルーム内への水漏れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0023】
図1は本発明の第一実施形態に係る車両のカウルグリル構造とフロントウィンドシールドを含んだ全体斜視図、図2はカウルグリル構造の合わせ部を示した要部斜視図、図3は組付け前のカウルグリル構造の合わせ部を示した要部斜視図、図4は樋部側方の側壁部等を示した斜視図、図5は第一グリル部材の受け面部等を示した詳細斜視図、図6は図2のA−A線矢視断面図、図7は図2のB−B線矢視断面図である。なお、各図において、車幅左側方向をLとして、車幅右側方向をRとして、説明する。
【0024】
この実施形態のカウルグリル1は、図1に示すように、後上がりに傾斜配置されたフロントウィンドシールド2の下端縁に、車幅方向全域に亘って設置されている。このフロントウィンドシールド2表面には、図示しないワイパー装置で拭き落とされる雨水等が流れるようになっている。
【0025】
カウルグリル1は、合成樹脂で成形された成形部品で構成しており、車幅方向で右側に配置した第一グリル部材3と、左側に配置した第二グリル部材4の、二部材で構成している。そして、この第一グリル部材3と第二グリル部材4は、車幅方向に連なるように組み合わせることで、一つのカウルグリル1を構成するようにしている。
【0026】
このように、二つのグリル部材3,4を組み合わせて、一つのカウルグリル1を構成することにより、樹脂成形の成形型を小さなものとすることができるため、成形コストを削減することができる。また、カウルグリル1の車体への組付け作業も、円弧長を短いものを組付けるだけでよいため、容易に行なうことができる。
【0027】
前述の第一グリル部材3は、車幅方向中心位置(C)よりもやや左側位置まで略帯状に延びて、カウルグリル1の右側部分を構成している。この第一グリル部材3は、右端及び中央にワイパー装置のワイパーアーム(図示せず)を挿通するワイパーアーム孔5,6をそれぞれ形成している。
【0028】
また、第一グリル部材3の前端縁には、ボンネット7(図6参照)後端をシール部材8(図6参照)を介して支持するシール受け部31を形成して、後端縁には、フロントウィンドシールド2下端2aに当接するウィンド当接部32を形成している。
【0029】
そして、シール受け部31とウィンド当接部32の間には、車幅方向に延びる凹状溝部33を形成して、この凹状溝部33には、ほぼ全域に亘ってメッシュ開口部34を形成している。こうして、このメッシュ開口部34から、凹状溝部33内に流れ込んだ雨水等を、下方に位置するカウルボックス9(図6参照)内に排水するように構成している。
【0030】
なお、凹状溝部33の後方には、車幅方向に延びて、上方に隆起する凸状部35を形成している。この凸状部35は、ボンネット7後端とカウルグリル1との間の隙を、外部から目立たないようにするためと、フロントウィンドシールド2から車両前方に流れ落ちる雨水等を、できるだけ車両前方側に行かないようにするために設けている。
【0031】
前述の第二グリル部材4は、車幅方向中心位置(C)よりやや左側位置まで略帯状に延びて、カウルグリル1の左側部分を構成している。この第二グリル部材4にも、前端縁にボンネット7後端を支持するシール受け部41を形成して、後端縁にフロントウィンドシールド2下端2aに当接するウィンド当接部42を形成している。
【0032】
そして、このシール受け部41とウィンド当接部42の間にも、車幅方向に延びる凹状溝部43を形成し、この凹状溝部43に、ほぼ全域に亘ってメッシュ開口部44を形成している。こうして、この第二グリル部材4も、メッシュ開口部44から凹状溝部43内に流れ込んだ雨水等をカウルボックス9(図6参照)内に、排水するように構成している。
【0033】
図2に示すように、この第一グリル部材3と第二グリル部材4は、車幅方向略中央位置の合わせ部10で、組み合わせることで、それぞれ隣接する側端面36,46を当接状態にして設置している。
【0034】
この合わせ部10は、ウィンド当接部32,42、凸状部35,45、及び凹状溝部33,43を縦断するように、車両後方側から車両前方側に、略直線状に延びるように形成(設定)されている。
もっとも、シール部31,41においては、これらの合わせ部10から、車幅方向中心側にオフセットした位置で、車両前後方向に延びるように車幅方向分割面11を形成している。
【0035】
このように、車幅方向分割面11を、合わせ部10からオフセットした位置に形成することで、合わせ部10との間が平面視でクランク状に屈曲することになるため、車両後方側から合わせ部10を伝って前方に流れてくる雨水等を、シール部31,41の車幅方向分割面11へ流れ込むのを防いでいる。
【0036】
凹状溝部33,43の合わせ部10の車幅方向両側位置には、車両前後方向に延びて、凹状溝部33,43を車幅方向に仕切る、流動規制手段たる堰状リブ部37,47を立設している。
【0037】
この堰状リブ部37,47は、第一グリル部材3側に形成される第一堰状リブ部37と、第二グリル部材4側に形成される第二堰状リブ部47とによって構成しており、共に、側面視略J形状のリブ壁面で形成している。
【0038】
この二つの堰状リブ部37,47を設けることで、この間に位置する合わせ部10に、凹状溝部33,43内の雨水が流れ込み難くしている。すなわち、凹状溝部33,43内の雨水は、車両旋回時や、雨水等が大量に流れ込んだ場合に、メッシュ開口部34,44から全て排水されず、合わせ部10側に流れ込むおそれがあるが、堰状リブ部37,47を設けることで、この雨水等の流れを堰き止めているのである。
【0039】
また、この第一堰状リブ部37と第二堰状リブ部47は、共に、図7に示すように、合わせ部10から車幅方向に、所定距離(例えば、S1:2cm,S2:1cm)を隔てて立設している。
【0040】
このため、仮に、雨水等が、表面張力によって第一堰状リブ部37や第二堰状リブ部47を越えたとしても、合わせ部10までたどり着き難くなり、合わせ部10からの水漏れを防止することができる。
【0041】
また、この合わせ部10の下方には、図6、図7で示すように、車両前後方向に延びる断面U字状の樋部12を設けている。
【0042】
この樋部12は、その車両後方側を下方に傾斜させて、後端12aをカウルボックス9内に開放している。これにより、合わせ部10から漏れた水を、樋部12で受けて、カウルボックス9内に案内することができる。
【0043】
なお、この樋部12の下方は、図6に示すように、エンジンルームEであり、この樋部12がなければ、凹状溝部33,43の合わせ部10から、エンジンルーム内に水漏れが生じる。この水漏れを、合わせ部10下方の樋部12によって、防止している。
【0044】
また、この樋部12の下部には、カウルグリル1を、カウルボックス9の前端フランジ9aに載置する、載置部13を設けている。
【0045】
第一グリル部材3と第二グリル部材4の連結構造は、第二グリル部材4の下面に形成した差込ピン48と係合爪49、及び、第一グリル部材3に形成した差込穴38と係止穴39、によって構成している。
【0046】
すなわち、第二グリル部材4の凸状部45下面に突出形成した差込ピン48を、第一グリル部材3の差込穴38に差し込んで、第二グリル部材4のウィンド当接部42下面に形成した係合爪49を、第一グリル部材3の係止穴39に係止固定することで、第一グリル部材3と第二グリル部材4を、カウルボックス9上方で、結合している。(図3の矢印参照)。
【0047】
また、図3に示すように、第二グリル部材4の突出片部4Aは、第二グリル部材4の側端面46(合わせ部10)よりも、車幅方向右側に突出する矩形形状で形成して、前述したシール部31,41の車幅方向分割面11を構成している。
【0048】
この突出片部4Aの前端縁には、さらに切欠部4Aaを設けることで、シール部31,41の車幅方向分割面11が、平面視でクランク形状となるように構成している。
【0049】
こうすることで、図2に示すように、車幅方向分割面11の前端11aが、樋部12の前端12a上方に位置することになるため、この車幅方向分割面11の前端11aから流れ落ちる雨水等を、樋部12で受けることができるようにしている。
【0050】
また、この突出片部4Aの下方に位置する第一グリル部材3には、図3に示すように、突出片部4Aから漏れる水を受ける受け面部50を形成している。
【0051】
この受け面部50には、車幅方向に延びる縦壁部51,52を前後位置に二つ並行に設けており、受け面部50上で突出片部4Aを支えている。
【0052】
この受け面部50は、図5に示すように、車幅方向右側が下方となるように傾斜した傾斜面で形成しており、そして、縦壁部52の右側端に、凹状溝部33側(車両後方側)に開放した案内開放部53を形成している。
【0053】
この案内開放部53は、第一堰状リブ部37よりも車幅方向右側、すなわち、合わせ部10の反対側(反合わせ部10側)の凹状溝部33に、開放している。このような位置に、案内開放部53を開放することで、受け面部50で受ける雨水等を、車幅方向右側、すなわち、合わせ部10の反対側に流すことができる。このため、受け面部50で受けた雨水が、合わせ部10側に流れ込むのを防ぐことができる。
【0054】
また、この第一グリル部材3の左側端には、前述のように、樋部12を形成しているが、樋部12の側部(左側側壁)を上方位置まで成形することは、成形誤差や組付け誤差を考慮すると、できない。
【0055】
そこで、図4に示すように、第二グリル部材4の下部に、樋部12の側面をカバーする側壁部13を下方に延びるように形成して、樋部12の側面を上方位置まで覆うようにしている。
【0056】
この側壁部13は、樋部12の側方で、車両前後方向に延びるように形成することで、樋部12と第二グリル部材4の下面の間に全く隙が生じないようにしている。
【0057】
なお、この樋部12と側壁部13との関係は、図7にも示すように、側壁部13が樋部12の側方を完全に覆うように位置することで、樋部12の内部空間14が完全に密閉された空間となるようにしている。
【0058】
このため、樋部12内の内部空間14は、エンジンルームEとは遮断された空間となり、エンジンルームE内の、熱気、臭気、及び騒音が、樋部12を介して、カウルボックス9内等のエンジンルーム外(例えば、車外)に漏れるのを防止している。
【0059】
次に、このように構成された本実施形態の作用効果について説明する。
この実施形態の車両のカウルグリル1は、車幅方向に分割した第一グリル部材3と第二グリル部材4を組み合わせることで、一つのカウルグリル1を構成するものであって、車幅方向外方側から各グリル部材3,4間の合わせ部10に向って流れる水の流れを制限する第一堰状リブ部37と第二堰状リブ部47を、合わせ部10を挟んで車幅方向両側位置に設けている。
【0060】
これにより、第一堰状リブ部37と第二堰状リブ部47が、凹状溝部33,43内を流れる雨水等を、合わせ部10に流れ込むのを防ぐことができる。
このため、雨水等が増加した場合や、車両旋回等で流量が変化した場合でも、雨水等が合わせ部10に流れ込むことがなく、合わせ部10から雨水等がエンジンルームE内に漏れるのを防ぐことができる。
よって、車幅方向に分割して複数のグリル部材3,4を組み合わせて一つのカウルグリル1を構成する車両のカウルグリル1構造において、雨水等の量が増加した場合や車両旋回等で流量が変化した場合においても、合わせ部10への雨水等の浸入を抑えて、エンジンルームE内への水漏れを防止することができる。
【0061】
また、この実施形態では、第一堰状リブ部37と第二堰状リブ部47を、合わせ部10から車幅方向に所定長さ(S1、S2)離間して設けている。
これにより、表面張力によって、凹状溝部33,43内を流れる水が、第一堰状リブ部37と第二堰状リブ部47を超えて、合わせ部10側に伝っていく場合があっても、合わせ部10まで距離があることから、合わせ部10からの水漏れを防ぐことができる。
よって、より確実に、第一堰状リブ部37と第二堰状リブ部47の水漏れ防止機能を高めることができる。
【0062】
また、この実施形態では、合わせ部10の下方に、合わせ部10から漏れる水を、カウルボックス9内に案内する樋部12を設けている。
これにより、合わせ部10から少量の水が漏れる場合があっても、この樋部12で水を受けることができ、この水をカウルボックス9内に排水することができる。
よって、合わせ部10から、少量の水漏れが生じた場合であっても、エンジンルームE内に水漏れが生じることを抑制することができ、確実にエンジンルームE内への水漏れを防止することができる。
【0063】
また、この実施形態では、シール部31,41の車幅方向分割面11を、合わせ部10に対して車幅方向にオフセットして形成している。
これにより、合わせ部10を伝って車両前方側に流れる水を、クランク形状によるラビリンス効果によって、車幅方向分割面11に流れないようにできる。
よって、車両前方側に位置する車幅方向分割面11からの水漏れを抑制することができ、エンジンルームE内への水漏れを、より確実に防止することができる。
【0064】
また、この実施形態では、車幅方向分割面11の下方に水を受ける受け面部50を設け、この受け面部50で受けた水を、第一堰状リブ部37より反合わせ部側(車幅外方側)の凹状溝部33に案内する案内開放部53を設けている。
これにより、受け面部50で、車幅方向分割面11から漏れる水を受けるとともに、この受けた水を、第一堰状リブ部37より車幅外方側の凹状溝部33に案内することで、受けた水の樋部12への流れ込みを防ぐことができる。
よって、車幅方向分割面11での水漏れを防止しつつ、樋部12の流量増加も抑制できるため、さらに確実にエンジンルームE内への水漏れを防止できる。
【0065】
また、この実施形態では、受け面部50を、合わせ部10側から車幅外方側に向かって下方に傾斜する傾斜面で形成している。
これにより、合わせ部10から離れる方向に水を誘導することができるため、合わせ部10側に水が流れ込むのを確実に防止することができる。
よって、合わせ部10からの水漏れを、確実に防止することができ、より確実にエンジンルームE内への水漏れを防止することができる。
【0066】
また、この実施形態では、樋部12を第一グリル部材3に形成するとともに、この樋部12の側面をカバーする側壁部13を、第二グリル部材4に設けている。
これにより、各グリル部材3,4の生産性を確保して、第一グリル部材3に樋部12を形成したことによる隙を、第二グリル部材4の側壁部13で埋めることができる。
よって、カウルグリル1の生産性を維持しつつ、エンジンルームE内の熱気、臭気、及び騒音の、外部への漏れを防止することができる。
【0067】
次に、他の実施形態について説明する。図8は、図7に対応する第二実施形態のB−B線矢視断面図である。
この第二実施形態では、第一堰状リブ部137と第二堰状リブ部147を、車幅外方側を鉛直面137a、147aとした断面略台形状に形成することで、水の流れを規制している。
【0068】
このように、第一堰状リブ部137と第二堰状リブ部147を形成し、基端側を太く形成することで、基端側の剛性が高まり、大量の水が流れてきた場合であっても、第一堰状リブ部137と第二堰状リブ部147で確実に流動を規制することができる。
【0069】
また、洗車作業等の際に、作業者が誤って上方から押圧したとしても、第一堰状リブ部137と第二堰状リブ部147に、倒れ変形が生じることもない。
【0070】
よって、この実施形態によると、合わせ部10側へ水が流れるのを、長期間に亘って、確実に防止することができる。
【0071】
図9は、第三実施形態のB−B線矢視断面図である。
この第三実施形態では、第一グリル部材3と第二グリル部材4の合わせ部10の両側に、車幅方向外方側に傾斜した第一肉厚部237と第二肉厚部247を形成して、これらの肉厚部237,247で水の流れを規制している。
【0072】
このように、第一肉厚部237と第二肉厚部247を形成することで、第二実施形態と同様に、基端側が太くなるので、水の流れを規制する規制手段(237,247)の剛性を高めることができ、長期間に亘って、確実に水の流れを規制することができる。
【0073】
また、第一肉厚部237と第二肉厚部247との間に、窪みが生じないため、外観上の見栄えの悪化も生じない。
【0074】
よって、この実施形態によると、合わせ部10側に水が流れるのを、長期間に亘って確実に防止できると共に、流動規制手段(237,247)を設けたことによる見栄えの悪化を、防止することもできる。
【0075】
図10は、第四実施形態のB−B線矢視断面図である。
この第四実施形態では、第一堰状リブ部37と第二堰状リブ部47に加えて、さらに第三堰状リブ部337と第四堰状リブ部347を形成して、水の流れを規制している。
【0076】
このように、第三堰状リブ部337と第四堰状リブ部347を、さらに形成することで、合わせ部10までの間に規制手段がいくつも設けられることになるため、合わせ部10への水の流れが、より規制されることになる。
【0077】
よって、この実施形態によると、さらに、合わせ部10側への水の流れを規制することができ、確実に、合わせ部10からのエンジンルームE内への水漏れを防止することができる。
【0078】
図11は、第五実施形態のB−B線矢視断面図である。
この第五実施形態では、第一堰状リブ部37と第二堰状リブ部47の上端に、車幅外方側に延びるカエシ部37a、47aを形成して、水の流れを規制している。
【0079】
このように、カエシ部37a,47aを形成することによって、第一堰状リブ部37や第二堰状リブ部47を越えようとする水の流れを、より確実に規制することでき、合わせ部10側への水の流れを抑制できる。
【0080】
よって、この実施形態によると、さらに、確実に合わせ部10側への水の流れを規制でき、合わせ部10からのエンジンルームE内への水漏れを防止できる。
【0081】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明のグリル部材は、実施形態の第一グリル部材3、第二グリル部材4に対応し、
以下、同様に、
凹部は、凹状溝部33,34に対応し、
流動規制手段は、第一堰状リブ部37、第二堰状リブ部47、第一堰状リブ部137、第二堰状リブ部147、第一肉厚部237、第二肉厚部247、第三堰状リブ部337、第四堰状リブ部347、カエシ部37a、カエシ部47aに対応し、
受け面は、受け面部50に対応し、
排水案内部は、案内開放部53に対応し、
カバー部は、側壁部13に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる車両のカウルグリル構造に適用する実施形態を含むものである。
【0082】
本実施形態では、二分割タイプのカウルグリルで説明したが、三分割タイプのカウルグリルで本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第一実施形態に係る車両のカウルグリル構造とフロントウィンドシールドを含んだ全体斜視図。
【図2】カウルグリル構造の合わせ部を示した要部斜視図。
【図3】組付け前のカウルグリル構造の合わせ部を示した要部斜視図。
【図4】樋部側方の側壁部等を示した斜視図。
【図5】第一グリル部材の受け面部等を示した詳細斜視図。
【図6】図2のA−A線矢視断面図。
【図7】図2のB−B線矢視断面図。
【図8】第二実施形態のB−B線矢視断面図。
【図9】第三実施形態のB−B線矢視断面図。
【図10】第四実施形態のB−B線矢視断面図。
【図11】第五実施形態のB−B線矢視断面図。
【符号の説明】
【0084】
1…カウルグリル
2…フロントウィンドシールド
3…第一グリル部材
4…第二グリル部材
7…ボンネット
10…合わせ部
11…車幅方向分割面
12…樋部
33…凹状溝部
37…第一堰状リブ部
43…凹状溝部
47…第二堰状リブ部
50…受け面部
53…案内開放部
137…第一堰状リブ部
147…第二堰状リブ部
237…第一肉厚部
247…第二肉厚部
337…第三堰状リブ部
347…第四堰状リブ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウィンドシールドの前縁部からボンネットの後縁部の下方に渡って設けられ、車幅方向に分割した複数のグリル部材を組み合わせることで、一つのカウルグリルを構成する車両のカウルグリル構造であって、
前記カウルグリルに、ボンネットとのシール部後方に車幅方向に延びる凹部を形成して、
該凹部内に、車幅方向外方側からグリル部材間の合わせ部に向って流れる水の流れを制限する流動規制手段を、該合わせ部を挟んで車幅方向両側位置に設けた
車両のカウルグリル構造。
【請求項2】
前記流動規制手段を、前記合わせ部から車幅方向に離間して設けた
請求項1記載の車両のカウルグリル構造。
【請求項3】
前記合わせ部の下方に、合わせ部から漏れる水を、カウルボックス内に案内する樋部を設けた
請求項1又は2記載の車両のカウルグリル構造。
【請求項4】
前記ボンネットとのシール部における車幅方向分割面を、前記合わせ部に対して車幅方向にオフセットするように形成した
請求項1〜3いずれか記載の車両のカウルグリル構造。
【請求項5】
前記車幅方向分割面の下方に水を受ける受け面を設け、
該受け面で受けた水を、前記流動規制手段より反合わせ部側の凹部内に案内する排水案内部を設けた
請求項4記載の車両のカウルグリル構造。
【請求項6】
前記受け面に、合わせ部側から反合わせ部側に向かって下方に傾斜する傾斜面を設けた
請求項5記載の車両のカウルグリル構造。
【請求項7】
前記樋部を、一つのグリル部材に形成するとともに、
該樋部の側面をカバーするカバー部を、他のグリル部材に設けた
請求項1〜6いずれか記載の車両のカウルグリル構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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