説明

車両のサイドスカート構造

【課題】車両後方の空気の流れを整流して剥離による渦の発生を抑制し且つ車両後面の圧力分布を負圧領域が小さくなるようにすることができ、空気抵抗低減を図り得る車両のサイドスカート構造を提供する。
【解決手段】車両1の下部側方を覆うサイドスカート4の後端部に、側面整流部3bから下方へ連続して同一平面となるよう折り曲げられた側面整流補助部4bを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサイドスカート構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、図7に示されるような大型トラック等の車両1の場合、該車両1のキャブ2によって牽引される荷台3の下部側方を覆うようにサイドスカート4を設けることにより、走行時における空力特性を高め、燃費の向上を図って経済性を高めるようにしたものがある。
【0003】
又、前記車両1の荷台3後端上部には、該荷台3の天井面から車両1後方へ向け下り勾配の傾斜面となる上面整流部3aを形成すると共に、前記車両1の荷台3後端両側部にはそれぞれ、該荷台3の両側面から車両1後方へ向け幅寸法が狭まる方向の傾斜面となる側面整流部3bを形成し、車両1の走行時に荷台3の外面に沿って後方へ流れる空気を、前記上面整流部3a並びに側面整流部3bにより、荷台3の後方へ緩やかに案内し、車両1の後方における渦のできる範囲を小さくし、該渦による空気抵抗を低減するようにしてある。
【0004】
尚、前述の如き車両のサイドスカート構造と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−109826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のサイドスカート4は単なる平板状のものであり、しかも、前記車両1の後輪5から後方のオーバハング部は、後端に向かって地上高が高くなるようにしてデパーチャアングルを確保する必要があることから、前記後輪5より後方に設けられるサイドスカート4の後部には、切欠部4aを形成しなければならず、この結果、サイドスカート4の側面の空気の流れは、該サイドスカート4に沿って車両1前方から車両1後方へ流れるものの、図4(a)に示される如く、該車両1後方で空気の流れが剥離して渦を発生しやすくなり、空気抵抗低減効果が充分に得られなかった。
【0007】
又、前記車両1後面の圧力分布に関しても、図5(a)に示される如く、負圧領域が大きくなり、空気抵抗が充分に低減されず、改善が望まれていた。尚、図5においては黒くなっている部分ほど圧力が低く、白くなっている部分ほど圧力が高いことを示している。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、車両後方の空気の流れを整流して剥離による渦の発生を抑制し且つ車両後面の圧力分布を負圧領域が小さくなるようにすることができ、空気抵抗低減を図り得る車両のサイドスカート構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両の荷台後端上部に、該荷台の天井面から車両後方へ向け下り勾配の傾斜面となる上面整流部を形成すると共に、前記車両の荷台後端両側部にそれぞれ、該荷台の両側面から車両後方へ向け幅寸法が狭まる方向の傾斜面となる側面整流部を形成し、前記車両の荷台下部側方を覆うようにサイドスカートを設けた車両のサイドスカート構造であって、
前記車両の下部側方を覆うサイドスカートの後端部に、前記側面整流部から下方へ連続して同一平面となるよう折り曲げられた側面整流補助部を形成したことを特徴とする車両のサイドスカート構造にかかるものである。
【0010】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0011】
前述の如くサイドスカートの後端部に、前記側面整流部から下方へ連続して同一平面となるよう折り曲げて側面整流補助部を形成すると、単なる平板状の従来のサイドスカートとは異なり、該サイドスカートの後端部においても、車両前方からサイドスカート外面に沿って車両後方へ向う空気の流れが側面整流補助部により車両後方へ緩やかに案内され、該車両後方で空気の流れが剥離せず渦を発生しにくくなって乱れにくくなり、渦による空気抵抗を確実に低減することが可能となる。
【0012】
前記車両のサイドスカート構造においては、前記サイドスカートの後部に、後端に向かって地上高が高くなるようにしてデパーチャアングルを確保するための切欠部を形成すると共に、該切欠部を補うよう下方へ張り出す展開位置と前記切欠部を出現させるよう上方に格納される格納位置との間で昇降自在な可動スカートを配設し、該可動スカートの後端部に、その展開位置において前記サイドスカートの側面整流補助部から下方へ連なる側面整流補助可動部を形成することができ、このようにすると、前記可動スカートを上昇させて格納位置に格納しておけば、前記切欠部を出現させデパーチャアングルを確保することが可能となる一方、前記可動スカートを格納位置から下方へ張り出させて展開位置に下降させれば、該可動スカートにより前記サイドスカートの切欠部が補われ、且つ該サイドスカートの側面整流補助部から下方へ可動スカートの側面整流補助可動部が連なる形となるため、前記車両前方からサイドスカート外面に沿って車両後方へ向う空気の流れを側面整流補助部に加えて前記可動スカート及びその側面整流補助可動部により車両後方へ緩やかに案内することが可能となり、該車両後方での空気の流れの剥離と渦の発生を抑え、渦による空気抵抗をより確実に低減することが可能となる。
【0013】
更に、前記車両のサイドスカート構造においては、前記可動スカートを昇降させる昇降駆動手段と、
前記車両が設定速度未満で走行していることを検出した際、前記可動スカートを格納位置に上昇させる制御信号を前記昇降駆動手段へ出力する一方、前記車両が設定速度以上で走行していることを検出した際、前記可動スカートを展開位置に下降させる制御信号を前記昇降駆動手段へ出力する制御手段と
を備えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両のサイドスカート構造によれば、車両後方の空気の流れを整流して剥離による渦の発生を抑制し且つ車両後面の圧力分布を負圧領域が小さくなるようにすることができ、空気抵抗低減を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の車両のサイドスカート構造の第一実施例を示す後部側面図であって、(a)は可動スカートを上方に格納した状態を示す側面図、(b)は可動スカートを下方へ張り出させた状態を示す側面図である。
【図2】本発明の車両のサイドスカート構造の第一実施例を示す後部断面図であって、(a)は可動スカートを上方に格納した状態を示す図1(a)のIIa−IIa矢視相当図、(b)は可動スカートを下方へ張り出させた状態を示す図1(b)のIIb−IIb矢視相当図である。
【図3】本発明の車両のサイドスカート構造の第一実施例を示す後部斜視図である。
【図4】(a)は従来の車両のサイドスカート構造の一例における空気の流れを示す流線分布図、(b)は本発明の車両のサイドスカート構造の第一実施例における空気の流れを示す流線分布図である。
【図5】(a)は従来の車両のサイドスカート構造の一例における車両後面の圧力分布図、(b)は本発明の車両のサイドスカート構造の第一実施例における車両後面の圧力分布図である。
【図6】本発明の車両のサイドスカート構造の第二実施例を示す全体側面図である。
【図7】従来の車両のサイドスカート構造の一例を示す全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1〜図5は本発明の車両のサイドスカート構造の第一実施例であって、図中、図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図7に示す従来のものと同様であるが、本第一実施例の特徴とするところは、図1に示す如く、車両1の下部側方を覆うサイドスカート4の後端部に、側面整流部3bから下方へ連続して同一平面となるよう折り曲げられた側面整流補助部4bを形成した点にある。
【0018】
本第一実施例の場合、前記サイドスカート4の後部に、後端に向かって地上高が高くなるようにしてデパーチャアングルを確保するための切欠部4aを形成すると共に、該切欠部4aを補うよう下方へ張り出す展開位置(図1(b)参照)と前記切欠部4aを出現させるよう上方に格納される格納位置(図1(a)参照)との間で昇降自在な可動スカート6を配設し、該可動スカート6の後端部に、その展開位置において前記サイドスカート4の側面整流補助部4bから下方へ連なる側面整流補助可動部6aを形成してある。
【0019】
尚、前記側面整流補助部4b及び側面整流補助可動部6aの傾斜角度θは、図3に示す如く、側面整流部3bの荷台3側面に対する傾斜角度θと等しく、10〜15°とし、上面整流部3aの荷台3上面に対する傾斜角度θも10〜15°としてある。
【0020】
前記可動スカート6は、図1及び図2に示す如く、荷台3の側板3c及びサイドスカート4と、該側板及びサイドスカート4の内面側に所要間隔をあけて設けられるガイドプレート4cとの間に、上下方向へスライド自在に配設すると共に、電動ウインチ7aから繰り出されてシーブ7bに掛け回されるワイヤ7cにより吊り下げ配置し、該電動ウインチ7aとシーブ7bとワイヤ7cとによって前記可動スカート6を昇降させる昇降駆動手段7を構成してある。尚、該昇降駆動手段7は、図1及び図2に示すような構造に限らず、モータ或いは流体圧シリンダによりリンク機構を介して前記可動スカート6を昇降させるような構造を採用できることは言うまでもない。
【0021】
又、前記車両1が設定速度(例えば、50[km/h])未満で走行していることを検出した際、前記可動スカート6を格納位置に上昇させる制御信号を前記昇降駆動手段7の電動ウインチ7aへ出力する一方、前記車両1が設定速度以上で走行していることを検出した際、前記可動スカート6を展開位置に下降させる制御信号を前記昇降駆動手段7の電動ウインチ7aへ出力する制御手段8を設けるようにしてある。
【0022】
前記制御手段8は、ETC(Electronic Toll Collection system:高速道路通行料の自動料金収受システム)ゲートを通過した際に受信する信号により車両1が高速道路を走行中であるか否かを検出するETCセンサ8aと、車両1の走行速度を検出する速度センサ8bと、前記ETCセンサ8a及び速度センサ8bで検出された信号に基づき前記昇降駆動手段7の電動ウインチ7aへ制御信号を出力する制御装置8cとから構成してある。
【0023】
次に、上記第一実施例の作用を説明する。
【0024】
前述の如くサイドスカート4の後端部に、前記側面整流部3bから下方へ連続して同一平面となるよう折り曲げて側面整流補助部4bを形成すると、単なる平板状の従来のサイドスカート4とは異なり、該サイドスカート4の後端部においても、車両1前方からサイドスカート4外面に沿って車両1後方へ向う空気の流れが側面整流補助部4bにより車両1後方へ緩やかに案内され、該車両1後方で空気の流れが剥離せず渦を発生しにくくなって乱れにくくなり、渦による空気抵抗を確実に低減することが可能となる。
【0025】
しかも、本第一実施例の場合、前記ETCセンサ8a及び速度センサ8bで検出された信号に基づき、前記車両1が高速道路ではない所を設定速度(例えば、50[km/h])未満で走行或いは停止していることが検出されると、前記可動スカート6を格納位置に上昇させる制御信号が制御手段8の制御装置8cから前記昇降駆動手段7の電動ウインチ7aへ出力され、該電動ウインチ7aにワイヤ7cが巻き取られ、前記可動スカート6は上昇して格納位置に格納された状態に保持されるため、図1(a)に示す如く、前記切欠部4aを出現させデパーチャアングルを確保することが可能となる。
【0026】
一方、前記ETCセンサ8a及び速度センサ8bで検出された信号に基づき、前記車両1が高速道路を設定速度(例えば、50[km/h])以上で走行していることが検出されると、前記可動スカート6を展開位置に下降させる制御信号が制御手段8の制御装置8cから前記昇降駆動手段7の電動ウインチ7aへ出力され、該電動ウインチ7aからワイヤ7cが繰り出され、前記可動スカート6は格納位置から下方へ張り出されて展開位置に下降した状態に保持されるため、図1(b)に示す如く、該可動スカート6により前記サイドスカート4の切欠部4aが補われ、且つ該サイドスカート4の側面整流補助部4bから下方へ可動スカート6の側面整流補助可動部6aが連なる形となり、前記車両1前方からサイドスカート4外面に沿って車両1後方へ向う空気の流れを側面整流補助部4bに加えて前記可動スカート6及びその側面整流補助可動部6aにより車両1後方へ緩やかに案内することが可能となり、図4(b)に示す如く、該車両1後方での空気の流れの剥離と渦の発生を抑え、渦による空気抵抗をより確実に低減することが可能となる。
【0027】
又、前記車両1後面の圧力分布に関しても、図5(b)に示す如く、従来と比べ、負圧領域が小さくなり、空気抵抗が充分に低減され、改善されていることがわかる。
【0028】
尚、前記ETCセンサ8aは必ずしも設ける必要はなく、車両1が高速道路を走行中であるか否かについては判定せずに、前記速度センサ8bで検出された信号のみに基づいて制御装置8cから前記昇降駆動手段7の電動ウインチ7aへ制御信号を出力するようにしても良いことは言うまでもない。
【0029】
こうして、車両1後方の空気の流れを整流して剥離による渦の発生を抑制し且つ車両1後面の圧力分布を負圧領域が小さくなるようにすることができ、空気抵抗低減を図り得る。
【0030】
図6は本発明の車両のサイドスカート構造の第二実施例であって、図中、図1〜図5と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図1〜図5に示すものと同様であるが、本第二実施例の特徴とするところは、図6に示す如く、荷台3の上面を前部から後部へ向け滑らかに湾曲させてティアドロップ状とし且つ荷台3後端に上面整流部3aと側面整流部3bが形成された車両1に対し、後端部に側面整流補助部4bが形成されたサイドスカート4と、後端部に側面整流補助可動部6aが形成された可動スカート6とを装備した点にある。
【0031】
本第二実施例のように構成すると、車両1前方から荷台3のティアドロップ状とした上面に沿って車両1後方へ向う空気の流れが上面整流部3aへ滑らかに導かれると共に、前記車両1前方からサイドスカート4外面に沿って車両1後方へ向う空気の流れが側面整流補助部4bに加えて前記可動スカート6及びその側面整流補助可動部6aにより車両1後方へ緩やかに案内され、該車両1後方での空気の流れの剥離と渦の発生を抑え、渦による空気抵抗をより確実に低減することが可能となる。
【0032】
こうして、図6に示す第二実施例においても、図1〜図5に示す第一実施例の場合と同様、車両1後方の空気の流れを整流して剥離による渦の発生を抑制し且つ車両1後面の圧力分布を負圧領域が小さくなるようにすることができ、空気抵抗低減を図り得る。
【0033】
尚、本発明の車両のサイドスカート構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 車両
3 荷台
3a 上面整流部
3b 側面整流部
4 サイドスカート
4a 切欠部
4b 側面整流補助部
6 可動スカート
6a 側面整流補助可動部
7 昇降駆動手段
8 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台後端上部に、該荷台の天井面から車両後方へ向け下り勾配の傾斜面となる上面整流部を形成すると共に、前記車両の荷台後端両側部にそれぞれ、該荷台の両側面から車両後方へ向け幅寸法が狭まる方向の傾斜面となる側面整流部を形成し、前記車両の荷台下部側方を覆うようにサイドスカートを設けた車両のサイドスカート構造であって、
前記車両の下部側方を覆うサイドスカートの後端部に、前記側面整流部から下方へ連続して同一平面となるよう折り曲げられた側面整流補助部を形成したことを特徴とする車両のサイドスカート構造。
【請求項2】
前記サイドスカートの後部に、後端に向かって地上高が高くなるようにしてデパーチャアングルを確保するための切欠部を形成すると共に、該切欠部を補うよう下方へ張り出す展開位置と前記切欠部を出現させるよう上方に格納される格納位置との間で昇降自在な可動スカートを配設し、該可動スカートの後端部に、その展開位置において前記サイドスカートの側面整流補助部から下方へ連なる側面整流補助可動部を形成した請求項1記載の車両のサイドスカート構造。
【請求項3】
前記可動スカートを昇降させる昇降駆動手段と、
前記車両が設定速度未満で走行していることを検出した際、前記可動スカートを格納位置に上昇させる制御信号を前記昇降駆動手段へ出力する一方、前記車両が設定速度以上で走行していることを検出した際、前記可動スカートを展開位置に下降させる制御信号を前記昇降駆動手段へ出力する制御手段と
を備えた請求項2記載の車両のサイドスカート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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