説明

車両のシャッタ装置

【課題】シャッタの位置を直接、検出するセンサを用いることなく、シャッタの故障を適切に判定することができる車両のシャッタ装置を提供する。
【解決手段】シャッタ装置は、シャッタを付勢することによって所定の初期位置に復帰させるための付勢手段と、電磁誘導作用によって、入力された動力を電力に変換するとともに、入力された電力を動力に変換可能に構成され、変換された動力によってシャッタを駆動する回転機とを備えており、付勢手段による付勢によってシャッタを初期位置に復帰させるために、回転機への電力の供給を停止する復帰制御を実行するとともに、その実行中に検出された回転機6の誘起電圧CVに基づいて、シャッタの故障を判定する(ステップ23、26〜29)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロント部に設けられ、フロント部に導入される外気の量を調整するための車両のシャッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両のシャッタ装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。このシャッタ装置は、車両の内燃機関を冷却するラジエータを流れる外気の流量を調整するためのものであり、車両のフロントグリルに設けられている。また、シャッタ装置は、回動自在の複数の羽根で構成されたシャッタと、駆動手段を備えている。この駆動手段によってシャッタが開閉され、それにより、ラジエータを流れる外気の流量が調整される。また、シャッタには、これを開放位置に付勢するスプリングが設けられている。この従来のシャッタ装置では、駆動手段が故障した場合でも、このスプリングにより、シャッタを開放位置に復帰させることによって、ラジエータによる冷却能力を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−114412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この種のシャッタは、車両のフロント部に設けられ、外気に晒されているので、特に、塵などの異物が付着しやすい。このため、従来のシャッタ装置では、シャッタが、付着した異物によって固着し、その結果、スプリングによる付勢によっても動かなくなり、故障するおそれがある。これに対して、従来のシャッタ装置では、駆動手段の故障を補償するために、シャッタにスプリングを設けるにすぎないので、上記のようなシャッタの故障を判定することができない。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、シャッタの位置を直接、検出するセンサを用いることなく、シャッタの故障を適切に判定することができる車両のシャッタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明による車両のシャッタ装置1は、車両Vのフロント部に設けられ、フロント部に導入される外気の量を調整するために開閉されるシャッタ3と、シャッタ3を付勢することによって所定の初期位置に復帰させるための付勢手段(実施形態における(以下、本項において同じ)復帰ばね5)と、電磁誘導作用によって、入力された動力を電力に変換するとともに、入力された電力を動力に変換可能に構成され、変換された動力によってシャッタ3を駆動する回転機6と、回転機6の誘起電圧である回転機誘起電圧CVを検出する誘起電圧検出手段(電圧センサ41、ECU2、誘起電圧検出部2b)と、付勢手段による付勢によってシャッタ3を初期位置に復帰させるために、回転機6への電力の供給を停止する復帰制御を実行する制御手段(ECU2、故障判定部2c、ステップ19)と、制御手段による復帰制御の実行中に検出された回転機誘起電圧CVに基づいて、シャッタ3の故障を判定する故障判定手段(ECU2、故障判定部2c、ステップ23、26〜29)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、車両のフロント部に設けられたシャッタが、回転機による駆動により開閉されるとともに、付勢手段により所定の初期位置に復帰するように付勢されている。また、回転機の誘起電圧である回転機誘起電圧が、誘起電圧検出手段によって検出される。さらに、付勢手段による付勢によってシャッタを初期位置に復帰させるために、回転機への電力供給を停止する復帰制御が、制御手段によって実行される。
【0008】
シャッタが故障していない正常時には、上記の復帰制御の実行中、シャッタは、付勢手段による付勢によって初期位置に向かって移動し、それに伴い、シャッタから回転機に、動力が伝達される。この場合、回転機は、入力された動力を電磁誘導作用によって電力に変換するように構成されているので、復帰制御の実行中、上記のようにシャッタから動力が伝達されることによって、回転機誘起電圧が発生する。一方、シャッタの故障時には、シャッタは、付勢手段による付勢によってほとんど動かずに固着した状態にあるため、復帰制御の実行中、シャッタから回転機に動力がほとんど伝達されず、その結果、回転機誘起電圧がほとんど発生しなくなる。
【0009】
上述した構成によれば、復帰制御の実行中に検出された回転機誘起電圧に基づき、故障判定手段によって、シャッタの故障を判定するので、この判定を適切に行うことができる。また、誘起電圧検出手段は、回転機を制御するために通常、用いられるものであるので、そのような誘起電圧検出手段を利用し、回転機誘起電圧を検出するだけで、シャッタの位置を直接、検出する専用のセンサを用いることがなくなり、装置の簡素化およびコストの削減を図ることができる。
【0010】
さらに、上述したように回転機誘起電圧は、シャッタの正常時には発生する一方、故障時にはほとんど発生しないので、検出精度の比較的低い誘起電圧検出手段を用いても、故障判定を支障なく行うことができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車両のシャッタ装置1において、制御手段は、回転機6による駆動によりシャッタ3が初期位置とは異なる所定位置に保持されている状態から、復帰制御を実行するに際し、シャッタ3を初期位置側に駆動するように回転機6を制御する補助駆動制御を所定時間TASCRにわたって実行してから(ステップ14、15:YES)、復帰制御を開始する(ステップ19)ことを特徴とする。
【0012】
シャッタが、所定位置で停止している状態から初期位置に移動を開始する際、シャッタに作用する摩擦力は、静止摩擦力から動摩擦力に変化する。これにより、初期位置へのシャッタの移動開始時、シャッタから回転機に伝達される動力が不安定に変化する結果、発生する回転機誘起電圧が不安定になる。このことから、この移動開始時に検出された回転機誘起電圧を用いて故障判定を行う場合、この判定を適切に行うことができない可能性が高い。
【0013】
上述した構成によれば、回転機による駆動によりシャッタを初期位置とは異なる所定位置に保持している場合において復帰制御を実行するに際し、シャッタを初期位置側に駆動するように回転機を制御する補助駆動制御を実行するので、シャッタに作用する摩擦力を、静止摩擦力から動摩擦力に速やかに変化させることができる。また、この補助駆動制御を所定時間にわたって実行してから復帰制御を開始するので、シャッタに作用する摩擦力が動摩擦力に完全に変化した状態で、復帰制御を行うことができる。したがって、シャッタから回転機に伝達される動力が安定しているときに検出された回転機誘起電圧を故障判定に用いることができるので、この判定をより適切に行うことができる。
【0014】
また、この補助駆動制御を復帰制御の開始前に所定時間に限って実行するので、故障を判定する前に、シャッタが補助駆動制御により初期位置に到達するのを確実に回避することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の車両のシャッタ装置1において、故障判定手段は、復帰制御が開始されてから所定の待機時間TDELRが経過したときに検出された回転機誘起電圧CVを、シャッタ3の故障の判定に用いる(ステップ20:YES、ステップ23、26〜29)ことを特徴とする。
【0016】
復帰制御の開始直後では、付勢手段によるシャッタの駆動が開始されてから間もないため、シャッタが正常でも、シャッタからの動力の伝達によって回転する回転機の回転数は、非常に低く、同様に、回転機誘起電圧も非常に低い。このため、復帰制御の開始直後に検出された回転機誘起電圧を用いてシャッタの故障を判定すると、この判定を適切に行うことができない可能性がある。上述した構成によれば、復帰制御が開始されてから所定の待機時間が経過したときに検出された回転機誘起電圧が、シャッタの故障判定に用いられる。これにより、付勢手段によるシャッタの駆動がある程度行われることで回転機の回転数が十分に上昇した状態で発生した回転機誘起電圧を、故障判定に用いることができるので、この判定をさらに適切に行うことができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の車両のシャッタ装置1において、車両の速度を検出する車速検出手段(車速センサ43)をさらに備え、待機時間TDELRを検出された車両の速度(車速VP)に応じて設定する待機時間設定手段(ECU2、故障判定部2c、ステップ16)をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
請求項3の説明で述べたように、待機時間は、復帰制御中において回転機の回転数が十分に上昇した状態での回転機誘起電圧を故障判定に用いるために、復帰制御の開始時からの待ち時間として設定されている。また、前述したように、シャッタは、車両のフロント部に設けられているので、車両の走行中、シャッタには、走行風による風圧が作用する。この風圧の影響によって、復帰制御中にシャッタから回転機に伝達される動力が変化し、それにより、回転機の回転数が十分に上昇するまでにかかる時間が変化するとともに、シャッタが初期位置に到達するまでにかかる時間も変化する。以上から、待機時間を一定の所定値に設定した場合には、待機時間が経過しても回転機の回転数がまだ十分に上昇していなかったり、これとは逆に、待機時間が経過する前にシャッタが初期位置に到達してしまったりすることによって、シャッタの故障を適切に判定することができなくなってしまう。
【0019】
上述した構成によれば、走行風による風圧と密接な相関関係を有する車両の速度に応じて待機時間を設定するので、シャッタの故障をさらに適切に判定することができる。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の車両のシャッタ装置1において、車両の速度を検出する車速検出手段(車速センサ43)をさらに備え、故障判定手段は、検出された車両の速度(車速VP)が所定の上限値VPHLMTよりも高いとき(ステップ7:YES)に、シャッタ3の故障の判定を中止することを特徴とする。
【0021】
請求項4の説明で述べたように、車両の走行風による風圧がシャッタに作用するので、車両の速度が高いことにより風圧が非常に高いときには、シャッタから回転機に伝達される動力への風圧の影響が非常に大きいため、回転機誘起電圧に基づいてシャッタの故障判定を適切に行うことができない。上述した構成によれば、故障判定を、車両の速度が上限値よりも高いときに中止し、上限値以下のときに実行するので、この判定を、それに適した状況においてのみ行うことができる。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の車両のシャッタ装置1において、シャッタ3が当接することによって、初期位置を超えたシャッタ3の移動を規制するためのストッパ(上ストッパ19)をさらに備え、制御手段は、故障判定手段によるシャッタ3の故障の判定が完了したときに、復帰制御を終了するとともに、付勢手段による付勢によって初期位置側に移動するシャッタ3を制動するように、回転機6を制御する(ステップ31)ことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、シャッタがストッパに当接することによって、初期位置を超えたシャッタの移動が規制される。また、シャッタの故障判定が完了したときに、復帰制御を終了するとともに、付勢手段による付勢によって初期位置側に移動するシャッタを制動するように、回転機が制御される。これにより、シャッタの移動速度を低下させることができるので、シャッタがストッパに強く当接することによる打音および衝撃力を低減でき、したがって、シャッタやストッパが変形するのを回避することができる。
【0024】
また、回転機誘起電圧を用いたシャッタの故障判定が完了した後に、上記の回転機の制御によるシャッタの制動を行うので、故障の適切な判定と、シャッタなどの変形の回避とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態による車両のシャッタ装置を、シャッタが閉鎖されている場合について示す断面図である。
【図2】シャッタ装置を、シャッタが開放されている場合について示す断面図である。
【図3】シャッタ装置のうちのECUなどを示すブロック図である。
【図4】シャッタの故障を判定する処理を示すフローチャートである。
【図5】図4の続きを示すフローチャートである。
【図6】図4および図5に示す処理の動作例を、シャッタが正常である場合について示すタイミングチャートである。
【図7】図6の比較例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1に示すシャッタ装置1は、グリル31およびダクト32とともに、車両Vのフロント部に設けられており、その後方には、コンデンサCおよびラジエータRが設けられている。車両Vの走行中、外気が、これらのグリル31およびダクト32によって、コンデンサCおよびラジエータRに案内される。このコンデンサCは、コンプレッサおよびエバポレータ(いずれも図示せず)などとともに、車両Vのエアコンディショナ(図示せず)の冷凍サイクルを構成するものである。また、ラジエータRは、車両Vの動力源である内燃機関(図示せず)を冷却するためのものである。
【0027】
図1に示すように、シャッタ装置1は、コンデンサCなどに導入される外気の流量を調整するためのシャッタ3と、このシャッタ3を支持するシャッタベース4と、シャッタ3を初期位置に復帰させるための復帰ばね5と、シャッタ3を駆動するための回転機6を備えている。
【0028】
シャッタ3は、常開(ノーマルオープン)式のものであり、複数のシャフト11と、各シャフト11に回動自在に取り付けられた羽根板12と、これらの羽根板12を互いに連結するスライドリンク13を有している。これらのシャフト11は、シャッタベース4に固定されており、車両Vの左右方向に延びるとともに、互いに上下方向に所定の間隔を存した状態で並んでいる。
【0029】
また、各羽根板12は、継手14を介してスライドリンク13に連結されており、それにより、スライドリンク13に対して回動自在である。また、スライドリンク13は、上下方向に延びており、連結ピン15およびアームリンク16を介して、回転機6の回転軸6aに連結されている。さらに、シャッタベース4には、上ストッパ19および下ストッパ20が取り付けられている。これらの上下のストッパ19,20は、スライドリンク13の上方および下方にそれぞれ配置されており、上下のストッパ19,20によって、スライドリンク13を含むシャッタ3の移動が、後述するように規制される。なお、図1および図2において、シャフト11や羽根板12などの複数の要素の符号については、便宜上、その一部を省略している。
【0030】
また、上記の復帰ばね5は、引っ張りコイルばねで構成されており、その上端部がシャッタベース4に、下端部がスライドリンク13に、それぞれ取り付けられている。スライドリンク13は、この復帰ばね5によって上方に付勢されている。
【0031】
回転機6は、ブラシレスDCモータであり、U相、V相およびW相からなるコイルなどで構成されたステータと、磁石などで構成されたロータ(いずれも図示せず)を有しており、このロータには、回転軸6aが一体に設けられている。また、回転機6は、電磁誘導作用によって、回転軸6aに入力された動力を電力に変換し、ステータから出力する(発電)とともに、ステータに入力された電力を動力に変換し、回転軸6aに出力可能に構成されている。また、回転機6には、電源としてのバッテリ(図示せず)と、後述するECU2が接続されており(図3参照)、このバッテリからステータに入力(供給)される電力は、ECU2によって制御される。
【0032】
以上の構成のシャッタ装置1では、バッテリから回転機6への電力の供給が停止され、それにより、シャッタ3が回転機6により駆動されていないときには、復帰ばね5による付勢によって、スライドリンク13を含むシャッタ3は、図1に示す開放位置に位置する。これにより、ダクト32が開放されることによって、コンデンサCなどへの外気の導入が許容される。また、この状態では、スライドリンク13の上端が上ストッパ19に当接している。これにより、スライドリンク13を含むシャッタ3が開放位置を超えて上方に移動しないように、シャッタ3の移動が規制されるとともに、シャッタ3が開放位置に保持される。
【0033】
また、図1に示す状態から、バッテリから回転機6への電力の供給によって回転軸6aが時計回りに回動すると、それと一体にアームリンク16が回動するのに伴い、スライドリンク13は、復帰ばね5の付勢力に抗して、下ストッパ20に当接するまで、下方に移動する。このスライドリンク13の移動に伴い、各羽根板12は、シャフト13を中心として時計回りに回動し、シャッタ3は、図2に示す閉鎖位置に位置する。これにより、ダクト32が閉鎖されることによって、コンデンサCなどへの外気の導入が停止される。また、この状態では、スライドリンク13の下端が下ストッパ20に当接している。これにより、スライドリンク13を含むシャッタ3が閉鎖位置を超えて下方に移動しないように、シャッタ3の移動が規制されるとともに、シャッタ3が閉鎖位置に保持される。
【0034】
また、図3に示すように、ECU2には、電圧センサ41、水温センサ42および車速センサ43が接続されている。この電圧センサ41は、回転機6のU相コイルの端子における電圧(以下「U相端子電圧」という)を検出するとともに、その検出信号をECU2に出力する。また、水温センサ42は、前述した内燃機関を冷却するための冷却水の温度であるエンジン水温TWを検出し、その検出信号をECU2に出力する。さらに、車速センサ43は、車両Vの速度である車速VPを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
【0035】
ECU2は、CPU、RAM、ROMおよび入出力インターフェースなどから成るマイクロコンピュータ(いずれも図示せず)を有している。また、ECU2は、上述したセンサ41〜43の検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに従って、各種の処理を実行する。
【0036】
具体的には、ECU2は、回転機6を駆動するための回路と、回転機駆動部2a、誘起電圧検出部2bおよび故障判定部2cを有している。この回路は、回転機6の前述したU相〜W相コイルにそれぞれ接続された第1〜第3スイッチング素子などで構成されている。
【0037】
回転機駆動部2aは、これらのスイッチング素子のON/OFFをそれぞれデューティ制御することによって、各相のコイルに供給される電力(電流)を制御する。これにより、回転機6が駆動されることによって、シャッタ3の開閉動作が制御される。この場合、所定の開放条件が成立しているときには、回転機6への電力の供給が停止される。これにより、シャッタ3は、前述した復帰ばね5による付勢によって、開放位置に保持される。一方、開放条件が成立していないときには、回転機6に電力が供給される。これにより、シャッタ3は、回転機6で駆動されることによって、閉鎖位置に保持される。
【0038】
なお、この開放条件は、検出されたエンジン水温TWが所定温度よりも高いという条件を含む所定の複数の条件が成立しているときに、成立していると判定される。また、開放条件の成立直後には、後述するように故障判定手段2cによりシャッタ3の故障が判定され、この判定の実行中には、回転機6の動作は、回転機駆動部2aではなく、故障判定部2cによって制御される。
【0039】
また、誘起電圧検出部2bは、回転機6で発生した誘起電圧(以下「回転機誘起電圧」という)CVを検出する。前述した回転機6の機能から明らかなように、U相〜W相コイルでは、電流の供給により回転軸6aが回転している場合、および、電流の供給が停止され、外力により回転軸6aが回転している場合のいずれの場合にも、回転軸6aの回転に伴って、誘起電圧が発生する。このため、検出されたU相端子電圧は、U相コイルに電流が供給されているときには、U相コイルの端子に印可されている電圧を表し、U相コイルに電流が供給されていないときには、U相コイルで発生した誘起電圧を表す。したがって、誘起電圧検出部2bは、検出されたU相端子電圧に基づき、回転機誘起電圧CVを検出する。この場合における「U相コイルに電流が供給されていないとき」には、V相およびW相コイルを含むコイル全体に電流が供給されていないときだけでなく、V相またはW相コイルには電流が供給され、U相コイルにのみ電流が供給されていないときも含まれる。
【0040】
また、回転機駆動部2aは、検出された回転機誘起電圧CVに基づいて、回転機6におけるステータに対するロータの回転角度位置を検出するとともに、検出されたロータの回転角度位置に基づいて、スイッチング素子のON/OFFをデューティ制御する。この場合におけるロータの回転角度位置の検出は、例えば、本出願人により提案された特開2003−189675号公報に開示された手法によって行われる。
【0041】
さらに、故障判定部2cは、図4および図5に示す故障判定処理に従って、シャッタ3の故障を判定する。この判定は、回転機6および電圧センサ41が正常であることを条件として実行される。以下、図4および図5を参照しながら、この故障判定処理について説明する。本処理は、所定周期(例えば10msec)で繰り返し実行される。
【0042】
まず、図4のステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、前述したシャッタ3の開放条件が成立しているか否かを判別する。この答がNOのときには、ステップ2、3、4および5においてそれぞれ、後述する判定動作完了フラグF_DONE、制動制御フラグF_BRC、復帰制御フラグF_REC、および補助駆動制御フラグF_ASCを、「0」に初期化する。次いで、誘起電圧平均値CVAVEを値0にリセットし(ステップ6)、本処理を終了する。
【0043】
一方、上記ステップ1の答がYESで、開放条件が成立しているときには、検出された車速VPが所定の上限値VPHLMTよりも高いか否かを判別する(ステップ7)。この答がYESで、車速VPが非常に高いときには、シャッタ3に作用する走行風による風圧の影響によってシャッタ3の故障を適切に判定することができないため、上記ステップ2以降を実行し、故障を判定することなく、本処理を終了する。
【0044】
一方、上記ステップ7の答がNOのときには、ステップ8、9、10および11においてそれぞれ、判定動作完了フラグF_DONE、制動制御フラグF_BRC、復帰制御フラグF_RECおよび補助駆動制御フラグF_ASCが「1」であるか否かを判別する。これらのステップ8〜11の答のいずれもがNOのときには、ダウンカウント式の補助駆動制御タイマのタイマ値tASCを所定時間TASCRに設定する(ステップ12)。
【0045】
次いで、補助駆動制御を実行するために、補助駆動制御フラグF_ASCを「1」にセットする(ステップ13)とともに、補助駆動制御を実行する(ステップ14)。この補助駆動制御の実行中、電力が回転機6に供給され、シャッタ3が開放位置側に移動するように、回転機6が制御される。
【0046】
また、上記ステップ13を実行した後には、前記ステップ11の答がYESになり、その場合には、ステップ12および13をスキップし、ステップ14に進み、補助駆動制御を実行する。また、ステップ14に続くステップ15では、上記ステップ12で設定されたタイマ値tASCが値0であるか否かを判別する。
【0047】
このステップ15の答がNOのときには、そのまま本処理を終了する一方、YESで、tASC=0になったとき、すなわち、補助駆動制御の開始後、所定時間TASCRが経過したときには、車速VPに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、待機時間TDELRを算出する(ステップ16)。このマップでは、待機時間TDELRは、車速VPが高いほど、より小さな値に設定されている。この理由については後述する。
【0048】
次いで、ダウンカウント式の待機タイマのタイマ値tDELを、上記ステップ16で算出された待機時間TDELRに設定する(ステップ17)。次に、復帰制御を実行するために、復帰制御フラグF_RECを「1」にセットする(ステップ18)とともに、復帰制御を実行する(ステップ19)。この復帰制御の実行中、回転機6への電力の供給が停止され、それにより、シャッタ3は、固着により故障しておらず、正常であるときには、復帰ばね5による付勢によって開放位置側に移動する。
【0049】
また、上記ステップ18を実行した後には、前記ステップ10の答がYESになり、その場合には、ステップ11〜18をスキップし、ステップ19に進み、復帰制御を実行する。
【0050】
前述したように、シャッタ3は、開放条件が成立していないとき(ステップ1:NO)には、閉鎖位置に保持されている。この状態から、開放条件が成立することによりステップ1の答がYESになると、車速VPが上限値VPHLMT以下(ステップ7:NO)であれば、それに伴って補助駆動制御が開始され(ステップ14)、この補助駆動制御の実行中、シャッタ3が開放位置側に移動するように、回転機6が制御される。また、開放条件が成立するとともに車速VPが上限値VPHLMT以下である限り、補助駆動制御は、その開始後、所定時間TASCRが経過するまで(ステップ15の答がYESになるまで)実行され、所定時間がTASCRが経過した時点で、復帰制御が開始される(ステップ19)。
【0051】
この所定時間TASCRは、それまで開放条件が成立していないことにより閉鎖位置に保持されていたシャッタ3に作用する摩擦力を、静止摩擦力から動摩擦力に変化させられるような最短の時間に設定されており、シャッタ3の慣性モーメントや、復帰ばね5の付勢力などに応じて、実験によりあらかじめ設定されている。
【0052】
また、前記ステップ19に続く図5のステップ20では、ステップ17で設定された待機タイマのタイマ値tDELが値0であるか否かを判別する。この答がNOのときには、車速VPに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、記憶時間TSTORを算出する(ステップ21)。このマップでは、記憶時間TSTORは、車速VPが高いほど、より小さな値に設定されている。この理由については後述する。次いで、ダウンカウント式の記憶タイマのタイマ値tSTOを、ステップ21で算出された記憶時間TSTORに設定し(ステップ22)、本処理を終了する。
【0053】
一方、上記ステップ20の答がYESで、tDEL=0のとき、すなわち、復帰制御の開始から待機時間TDELR以上の時間が経過しているときには、そのときに検出された回転機誘起電圧CVを記憶する(ステップ23)。これにより、回転機誘起電圧CVは、RAMが有する複数のバッファ(図示せず)に順次、記憶される。
【0054】
次いで、上記ステップ22で設定された記憶タイマのタイマ値tSTOが値0であるか否かを判別する(ステップ24)。この答がNOのときには、ダウンカウント式の制動制御タイマのタイマ値tBRを、所定時間TBRRに設定し(ステップ25)、本処理を終了する。一方、ステップ24の答がYESで、tSTO=0になったとき、すなわち、ステップ23による回転機誘起電圧CVの記憶の開始後、記憶時間TSTORが経過したときには、記憶された複数の回転機誘起電圧CVの平均値である誘起電圧平均値CVAVEを算出する(ステップ26)。
【0055】
以上のように、復帰制御の実行中、その開始から待機時間TDELRが経過すると(ステップ20:YES)、検出された回転機誘起電圧CVが、本処理が実行されるごとに、複数のバッファに順次、記憶される(ステップ23)。また、この回転機誘起電圧CVの記憶は、その開始後、記憶時間TSTORが経過するまで行われる。そして、記憶時間TSTORが経過すると(ステップ24:YES)、記憶された複数の回転機誘起電圧CVの平均値が誘起電圧平均値CVAVEとして算出される(ステップ26)。
【0056】
また、図1から明らかなように、車両Vの走行風による風圧は、シャッタ3を開放位置側に移動させるように作用する。これに対して、前述したように、待機時間TDELRおよび記憶時間TSTORはいずれも、車速VPが高いほど、すなわち、走行風による風圧が高いほど、より短い時間に設定される(ステップ16、21)。したがって、走行風による風圧の高低に応じて、シャッタ3が開放位置の付近に到達する前に、誘起電圧平均値CVAVEの算出を完了させることができる。
【0057】
また、前記ステップ26に続くステップ27では、算出された誘起電圧平均値CVAVEが所定のしきい値CVJUDよりも小さいか否かを判別する。このしきい値CVJUDは、回転機6を外力により非常に低い所定回転数(例えば5rpm)で回転させた場合に発生する回転機誘起電圧CVに設定されている。
【0058】
このステップ27の答がYESで、誘起電圧平均値CVAVEが非常に小さいときには、シャッタ3が固着していることなどによりほとんど移動しておらず、それにより、シャッタ3から回転機6に動力がほとんど伝達されていないとみなし、シャッタ3が故障していると判定する。また、そのことを表すために、故障フラグF_SHNGを「1」にセットする(ステップ28)。一方、ステップ27の答がNOのときには、シャッタ3が正常であると判定するとともに、そのことを表すために、故障フラグF_SHNGを「0」にセットする(ステップ29)。
【0059】
また、上記ステップ28または29に続くステップ30では、制動制御を実行するために、制動制御フラグF_BRCを「1」にセットし、次いで、ステップ31において、制動制御を実行する。この制動制御の実行中、回転機6に電力を供給するとともに、回転軸6aが所定回転数で回転するように、前述したスイッチング素子をデューティ制御する。この所定回転数は、次のように設定されている。すなわち、シャッタ3が正常である場合において、復帰ばね5による付勢によって移動するシャッタ3から動力が伝達されることによって回転する回転機6の回転数を実験により求め、この回転数よりも低い値に、所定回転数は設定されている。これにより、シャッタ3が正常であるときには、回転機6からシャッタ3に、制動力が作用する。
【0060】
また、上記ステップ30を実行した後には、前記ステップ9の答がYESになり、その場合には、ステップ10〜30をスキップし、ステップ31に進み、制動制御を実行する。
【0061】
また、ステップ31に続くステップ32では、前記ステップ25で設定された制動制御タイマのタイマ値tBRが値0であるか否かを判別する。この答がNOのときには、そのまま本処理を終了する一方、YESで、tBR=0のとき、すなわち、制動制御の開始後、所定時間TBRRが経過したときには、シャッタ3の故障判定を含む故障判定用の制御動作が完了したとして、そのことを表すために、判定動作完了フラグF_DONEを「1」にセットし(ステップ33)、本処理を終了する。
【0062】
また、このステップ33を実行した後には、前記ステップ8の答がYESになり、その場合には、前記ステップ3以降を実行する。以上により、ステップ9〜33までの一連の動作、すなわち、補助駆動制御、復帰制御、シャッタ3の故障判定および制動制御は、開放条件が成立するごとに1回のみ行われる。
【0063】
また、図6は、上述した故障判定処理の動作例を、シャッタ3が正常である場合について示している。同図において、実線はシャッタ3の位置を、一点鎖線は回転機誘起電圧CVを、それぞれ表している。開放条件が成立していないことによりシャッタ3が閉鎖位置に保持されている状態(時点t0〜)では、回転機6が回転していないため、回転機誘起電圧CVは、値0の状態で推移する。そして、開放条件が成立すると(時点t1、ステップ1:YES)、補助駆動制御が実行される(ステップ14)。これにより、シャッタ3は、回転機6によって開放位置側に駆動される。この補助駆動制御は、所定時間TASCRにわたって実行される。
【0064】
また、シャッタ3は、補助駆動制御の開始前に閉鎖位置に保持されていたため、その慣性によって、補助駆動制御の実行中に比較的低い速度で開放位置側に移動する。さらに、このシャッタ3の動力が回転機6の回転軸6aに伝達されることによって、回転軸6aが回転するとともに、回転機6の回転数が、値0の状態から比較的小さな傾きで上昇する。この場合、回転機誘起電圧CVは、回転機6の回転数に比例するので、回転機6の回転数と同様、値0の状態から比較的小さな傾きで上昇する。
【0065】
そして、補助駆動制御の開始から所定時間TASCRが経過すると(時点t2、ステップ15:YES)、復帰制御が実行される(ステップ19)。これにより、回転機6への電力供給が停止され、シャッタ3は、復帰ばね5による付勢によって開放位置側にさらに移動する。この場合、シャッタ3は、その慣性によって、補助駆動制御の場合よりも高い速度で開放位置側に移動する。また、それにより回転機6がより高い回転数で回転することによって、回転機誘起電圧CVは、より大きな傾きで上昇する。
【0066】
そして、復帰制御の開始から待機時間TDELRが経過すると(時点t3、ステップ20:YES)、経過した時点から記憶時間TSTORが経過するまでの間、回転機誘起電圧CVが記憶される(ステップ23)。そして、記憶時間TSTORが経過すると(時点t4、ステップ24:YES)、記憶された複数の回転機誘起電圧CVの平均値である誘起電圧平均値CVAVEとしきい値CVJUDとの比較結果に基づいて、シャッタ3の故障が判定される(ステップ27〜29)とともに、制動制御が実行される(ステップ31)。
【0067】
この場合、復帰制御の実行中で、かつ、回転機誘起電圧CVが記憶されているときに、回転機誘起電圧CVは、しきい値CVJUDを大きく上回っており、それにより、誘起電圧平均値CVAVEもしきい値CVJUDを大きく上回る(ステップ27:NO)。その結果、シャッタ3は正常であると判定される(ステップ29)。
【0068】
これに対して、シャッタ3が固着し、故障しているときには、復帰制御の実行中、シャッタ3から回転軸6aに動力が伝達されないので、回転機6の回転数は値0の状態で推移し、回転機誘起電圧CVも、値0の状態で推移する。これにより、誘起電圧平均値CVAVEは、しきい値CVJUDを下回り、その結果、シャッタ3は故障していると判定される(ステップ28)。
【0069】
また、この動作例では、復帰制御の実行中、回転機誘起電圧CVは、待機時間TDELRが経過した直後に最大になり、その後、若干減少している。これは、シャッタ3が開放位置に近づくことにより、復帰ばね5の伸びが小さくなり、復帰ばね5の付勢力が小さくなることによって、シャッタ3の移動速度、すなわち回転機6の回転数が低下するためである。
【0070】
また、制動制御の実行中、回転機6からシャッタ3に制動力が作用することによって、開放位置側に移動するシャッタ3の速度が大きく低下する。それに伴い、回転機6の回転数が大きく低下し、それにより、回転機誘起電圧CVは、大きく低下する。そして、制動制御の開始から所定時間TBRRが経過すると(時点t5、ステップ32:YES)、制動制御が終了され(ステップ33、ステップ8:YES)、シャッタ3は、復帰ばね5による付勢によって、開放位置に保持される。
【0071】
また、図7は、図6の比較例を示しており、具体的には、車速VPが上限値VPHLMTよりも高いときに補助駆動制御および復帰制御を実行した場合におけるシャッタ3の位置と回転機誘起電圧CVの関係を示している。前述したように、車両Vの走行風による風圧は、シャッタ3を開放位置側に移動させるように作用する。このため、復帰制御の実行中、車速VPが非常に高く、走行風による風圧が非常に高いことによって、シャッタ3は、急速に開放位置側に移動し、復帰制御の開始後すぐに、開放位置に到達してしまう。このことから、回転機誘起電圧CVに基づいてシャッタ3の故障を適切に判定することができないため、車速VPが上限値VPHLMTよりも高いときには、ステップ7により故障判定が中止される。
【0072】
また、実施形態における各種の要素と、特許請求の範囲に記載された発明(以下「本発明」という)における各種の要素との関係は、次のとおりである。すなわち、実施形態における復帰ばね5および上ストッパ19が、本発明における付勢手段およびストッパにそれぞれ相当する。また、実施形態における電圧センサ41、ECU2および誘起電圧検出部2bが、本発明における誘起電圧検出手段に相当し、実施形態におけるECU2および故障判定部2cが、本発明における制御手段、故障判定手段および待機時間設定手段に相当するとともに、実施形態における車速センサ43が、本発明における車速検出手段に相当する。
【0073】
以上のように、実施形態によれば、車両Vのフロント部に設けられたシャッタ3が、回転機6による駆動により開閉されるとともに、復帰ばね5により開放位置に復帰するように付勢されている。また、復帰ばね5による付勢によりシャッタ3を開放位置に復帰させるために、復帰制御の実行によって、回転機6への電力供給が停止されるとともに、この復帰制御の実行中に検出された回転機誘起電圧CVに基づいて、シャッタ3の故障が判定される。したがって、この判定を適切に行うことができる。この場合、回転機6を制御するために通常、用いられる電圧センサ41などにより回転機誘起電圧CVを検出するだけで、シャッタ3の位置を直接、検出する専用のセンサを用いることがなくなり、装置の簡素化およびコストの削減を図ることができる。
【0074】
また、シャッタ3の故障判定が、複数の回転機誘起電圧CVの平均値である誘起電圧平均値CVAVEとしきい値CVJUDとの比較結果に基づいて行われる。これにより、電圧センサ41の検出信号に含まれうる一時的なノイズなどの影響を抑制しながら、故障判定をより適切に行うことができる。さらに、復帰制御の実行中、シャッタ3が正常であるときには、回転機誘起電圧CVは、前述したように復帰ばね5による付勢により移動するシャッタ3から回転機6に動力が伝達されることによって発生する。これに対し、シャッタ3が故障し、固着しているときには、シャッタ3から回転機6に動力がほとんど伝達されず、回転機誘起電圧CVは、ほとんど発生しない。以上から、シャッタ3の故障を判定するために誘起電圧平均値CVAVEと比較されるしきい値CVJUDを、容易に設定することができる。同じ理由により、検出精度の比較的低い電圧センサ41を用いても、故障判定を支障なく行うことができる。
【0075】
また、シャッタ3を閉鎖位置に保持している場合において復帰制御を実行するに際し、補助駆動制御を実行することによって、シャッタ3を開放位置側に駆動するように回転機6を制御するので、シャッタ3に作用する摩擦力を、静止摩擦力から動摩擦力に速やかに変化させることができる。さらに、この補助駆動制御を所定時間TASCRにわたって実行してから復帰制御を開始するので、シャッタ3に作用する摩擦力が動摩擦力に完全に変化した状態で、復帰制御を行うことができる。したがって、シャッタ3から回転機6に伝達される動力が安定しているときに検出された回転機誘起電圧CVを故障判定に用いることができるので、この判定をさらに適切に行うことができる。同じ理由により、しきい値CVJUDの設定をより容易に行うことができる。
【0076】
また、この補助駆動制御を復帰制御の開始前に所定時間TASCRに限って実行するので、故障を判定する前に、シャッタ3が補助駆動制御により開放位置に到達するのを確実に回避することができる。
【0077】
さらに、復帰制御が開始されてから待機時間TDELRが経過したときに検出された回転機誘起電圧CVが、故障判定に用いられる。これにより、復帰ばね5によるシャッタ3の駆動がある程度行われることで回転機6の回転数が十分に上昇した状態で発生した回転機誘起電圧CVを、故障判定に用いることができるので、この判定をさらに適切に行うことができる。この場合、走行風による風圧と密接な相関関係を有する車速VPに応じて待機時間TDELRを設定するので、シャッタ3の故障をさらに適切に判定することができる。
【0078】
また、故障判定が、車速VPが上限値VPHLMTよりも高いときに中止され、上限値VPHLMT以下のときに実行される。したがって、この判定を、それに適した状況においてのみ行うことができる。
【0079】
さらに、シャッタ3が上ストッパ19に当接することによって、開放位置を超えたシャッタ3の移動が規制される。また、故障判定が完了したときに、復帰制御を終了するとともに、制動制御が実行されることによって、復帰ばね5による付勢によって開放位置側に移動するシャッタ3を制動するように、回転機6が制御される。これにより、シャッタ3の移動速度を低下させることができるので、シャッタ3が上ストッパ19に強く当接することによる打音および衝撃力を低減でき、したがって、シャッタ3や上ストッパ19が変形するのを回避することができる。さらに、回転機誘起電圧CVを用いた故障判定が完了した後に、制動制御を行うので、故障の適切な判定と、シャッタ3などの変形の回避とを両立させることができる。
【0080】
なお、実施形態では、シャッタ3が正常であるとき、および、故障しているときのいずれにおいても、制動制御を行っているが、シャッタ3が固着し、故障しているときには、シャッタ3が、復帰ばね5による付勢によって開放位置側にほとんど移動しないことから、制動制御を行う必要がない。このため、シャッタ3が正常であるときに限って、制動制御を行ってもよい。
【0081】
また、実施形態では、車速VPが上限値VPHLMTよりも高いときに、故障判定を中止しているが、これに代えて、または、これとともに、車速VPに応じて算出された待機時間TDELRおよび記憶時間TSTORの少なくとも一方が所定時間よりも短いときに、故障判定を中止してもよい。
【0082】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、シャッタ3は、常開式のもの、すなわち、復帰ばね5により開放位置に付勢されるタイプのものであるが、常閉式のもの、すなわち、復帰ばね5により閉鎖位置に付勢されるタイプのものでもよい。この場合、車両の走行風による風圧が、実施形態の場合と同様に、シャッタを開放位置側に移動させるように作用するときには、風圧が高いほど、シャッタが閉鎖位置側に移動しにくくなる。このため、前述した待機時間TDELRおよび記憶時間TSTORはいずれも、実施形態の場合と異なり、車速VPが高いほど、すなわち、走行風による風圧が高いほど、より長い時間に設定される。また、実施形態では、シャッタ3は、走行風による風圧により開放位置側に移動するように構成されているが、閉鎖位置側に移動するように構成してもよい。
【0083】
さらに、実施形態では、シャッタ3として、開放位置または閉鎖位置に保持されるタイプのものを用いているが、その位置(開度)が連続的に変更されるタイプのものを用いてもよい。この場合、故障判定を、実施形態の場合と同様、閉鎖位置に保持されているシャッタを開放位置に駆動するときに行ってもよく、あるいは、実施形態の場合と異なり、閉鎖位置よりも開放位置側の所定位置に位置しているシャッタを開放位置に駆動するときに行ってもよい。
【0084】
また、実施形態では、回転機6は、3相ブラシレスDCモータであるが、この相数は「3」に限らないことはいうまでもなく、また、特許請求の範囲に記載された機能を有する他の適当な回転機、例えばACモータでもよい。さらに、実施形態では、復帰ばね5は、引っ張りコイルばねであるが、シャッタ3を復帰させるために付勢可能な他の適当な付勢手段、例えば、圧縮コイルばねや、渦巻ばね、板ばねなどでもよい。
【0085】
また、実施形態では、故障判定に、誘起電圧平均値CVAVEを用いているが、記憶された複数の回転機誘起電圧CVのうちの最大値を用いてもよく、あるいは、待機時間TDELRが経過した直後に検出された単一の回転機誘起電圧CVを用いてもよい。さらに、実施形態では、故障判定を、開放条件が成立するごとに行っているが、比較的長い所定時間が経過するごとに行ってもよく、あるいは、内燃機関の運転中に1回のみ行ってもよい。また、実施形態では、開放条件の成立によりシャッタ3を開放位置に駆動するという状況を利用して、故障判定を行っているが、開放条件が成立していないときに、故障判定を強制的に行ってもよい。
【0086】
さらに、実施形態は、コンデンサCなどに導入される外気の量を調整するためのシャッタ装置1に、本発明を適用した例であるが、本発明は、車両Vのフロント部に設けられ、フロント部に導入される外気の量を調整するための他の適当なシャッタ装置にも、適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
V 車両
1 シャッタ装置
2 ECU(誘起電圧検出手段、制御手段、故障判定手段、待機時間設定手 段)
2b 誘起電圧検出部(誘起電圧検出手段)
2c 故障判定部(制御手段、故障判定手段、待機時間設定手段)
3 シャッタ
5 復帰ばね(付勢手段)
6 回転機
19 上ストッパ(ストッパ)
41 電圧センサ(誘起電圧検出手段)
43 車速センサ(車速検出手段)
CV 回転機誘起電圧
TASCR 所定時間
TDELR 待機時間
VP 車速(車両の速度)
VPHLMT 上限値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロント部に設けられ、当該フロント部に導入される外気の量を調整するために開閉されるシャッタと、
当該シャッタを付勢することによって所定の初期位置に復帰させるための付勢手段と、
電磁誘導作用によって、入力された動力を電力に変換するとともに、入力された電力を動力に変換可能に構成され、当該変換された動力によって前記シャッタを駆動する回転機と、
当該回転機の誘起電圧である回転機誘起電圧を検出する誘起電圧検出手段と、
前記付勢手段による付勢によって前記シャッタを前記初期位置に復帰させるために、前記回転機への電力の供給を停止する復帰制御を実行する制御手段と、
当該制御手段による前記復帰制御の実行中に検出された回転機誘起電圧に基づいて、前記シャッタの故障を判定する故障判定手段と、
を備えることを特徴とする車両のシャッタ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記回転機による駆動により前記シャッタが前記初期位置とは異なる所定位置に保持されている状態から、前記復帰制御を実行するに際し、前記シャッタを前記初期位置側に駆動するように前記回転機を制御する補助駆動制御を所定時間にわたって実行してから、前記復帰制御を開始することを特徴とする、請求項1に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項3】
前記故障判定手段は、前記復帰制御が開始されてから所定の待機時間が経過したときに検出された前記回転機誘起電圧を、前記シャッタの故障の判定に用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項4】
前記車両の速度を検出する車速検出手段をさらに備え、
前記待機時間を前記検出された車両の速度に応じて設定する待機時間設定手段をさらに備えることを特徴とする、請求項3に記載の車両のシャッタ装置。
【請求項5】
前記車両の速度を検出する車速検出手段をさらに備え、
前記故障判定手段は、前記検出された車両の速度が所定の上限値よりも高いときに、前記シャッタの故障の判定を中止することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の車両のシャッタ装置。
【請求項6】
前記シャッタが当接することによって、前記初期位置を超えた前記シャッタの移動を規制するためのストッパをさらに備え、
前記制御手段は、前記故障判定手段による前記シャッタの故障の判定が完了したときに、前記復帰制御を終了するとともに、前記付勢手段による付勢によって前記初期位置側に移動する前記シャッタを制動するように、前記回転機を制御することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の車両のシャッタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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