説明

車両のジャッキ固定構造

【課題】部品点数を少なくすることができ、組み付け精度を向上させることができる車両のジャッキ固定構造を提供する。
【解決手段】ジャッキブラケット10は、車体に固定されるブラケット基体24とブラケット基体24に固定されるブラケット本体25とで筒状に形成され、ジャッキがブラケット基体24とブラケット本体25の間に長手方向一端部側から挿通し伸長してブラケット基体24とブラケット本体25に挟み込み保持されるよう構成され、ブラケット基体24とブラケット本体25は、ジャッキの一側部の周りで第1方向Zに互いに固定され、ジャッキの他側部の周りで第1方向Zと交差する第2方向Wに固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に固定されたジャッキブラケットにジャッキを固定してある車両のジャッキ固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の車両のジャッキ固定構造として、特許文献1に開示されているように、車体に筒状のジャッキブラケットを固定し、そのジャッキブラケットにジャッキを挿入させた状態でジャッキを伸張することによってジャッキを固定した構造がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5−23423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の特許文献1の構造は、ジャッキの伸長によってジャッキブラケットにジャッキを固定するのでジャッキブラケットに大きな力がかかり、ジャッキブラケットの剛性と強度が必要になる。その結果、部品点数が増加するとともに、組み付け精度を出すのが難しくなる。
本発明は上記実状に鑑みてなされたもので、その目的は、部品点数を少なくすることができ、組み付け精度を向上させることができる車両のジャッキ固定構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
車体に固定されたジャッキブラケットにジャッキを固定してある車両のジャッキ固定構造であって、
前記ジャッキブラケットは、前記車体に固定されるブラケット基体と前記ブラケット基体に固定されるブラケット本体とで筒状に形成され、
前記ジャッキが前記ブラケット基体と前記ブラケット本体の間に長手方向一端部側から挿通し伸長して前記ブラケット基体と前記ブラケット本体に挟み込み保持されるように構成され、
前記ブラケット基体と前記ブラケット本体は、前記ジャッキの一側部の周りで第1方向に互いに固定され、前記ジャッキの他側部の周りで前記第1方向と交差する第2方向に互いに固定されている点にある。(請求項1)
【0006】
上記の構成によれば、前記ジャッキブラケットは、車体に固定されるブラケット基体とブラケット基体に固定されるブラケット本体とで筒状に形成されているから部品点数を少なくすることができる。
また、前記ブラケット基体と前記ブラケット本体は、前記ジャッキの一側部の周りで第1方向に互いに固定され、前記ジャッキの他側部の周りで前記第1方向と交差する第2方向に互いに固定されているから、例えば、ジャッキブラケットの高さ方向(縦方向)と幅方向(横方向)の2つの方向の位置決めを容易に行うことができ、ブラケット基体にブラケット本体を固定するときの組み付け精度を向上させることができる。
また、ブラケット基体とブラケット本体が、互いに交差する2つの方向によって固定されることで、ジャッキブラケットの剛性を強くすることができ、ジャッキブラケットに捻り力が加わった時にもジャッキブラケットの形状保持性(保形性)を高くすることができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記ジャッキの挿入方向上手側の前記ブラケット本体の端部に段差状の第1フランジが形成されていると次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
ジャッキの挿入方向上手側の前記ブラケット本体の端部に段差状の第1フランジを形成することで、ジャッキブラケットのジャッキ挿入口となるブラケット本体の端部の強度を向上させることができる。これにより、使用者がジャッキ挿入口となる端部にジャッキが当たるような挿入操作を行った場合でも端部の変形を抑制することができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記段差状の第1フランジは前記ブラケット本体の径方向外方側に張り出す外開き状に形成されていると次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
段差状の第1フランジを前記外開き状に形成することで、第1フランジをジャッキの挿入の際のガイドとして機能させることができてジャッキを挿入しやすくすることができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記ジャッキの挿入方向下手側の前記ブラケット本体の端部に、前記ジャッキブラケットの径方向内方側に張り出してジャッキ頭部を受け止める第2フランジが形成され、
前記ジャッキの挿入方向下手側の前記ブラケット基体の端部に、前記ジャッキブラケットの径方向内方側に張り出して前記ジャッキ基部を受け止める第3フランジが形成されていると次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
ジャッキをジャッキブラケットに挿入した時に、第2フランジによってジャッキ頭部が受け止められるとともに、第3フランジによってジャッキ基部が受け止められるので、ジャッキブラケットからジャッキが挿入方向下手側に抜け出ることを防止することができる。(請求項4)
【0013】
本発明において、
前記第3フランジから前記ジャッキの挿入方向下手側に縦壁が延びていると次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0014】
第3フランジに縦壁を設けることで、簡単な構成で第3フランジの受け止め強度を高めることができる。(請求項5)
【0015】
本発明において、
前記第3フランジには前記ジャッキブラケットの幅方向中央部で前記ジャッキに対する逃げ部が形成され、
前記逃げ部の形成によって前記第3フランジが一対の第3フランジ部分に分割され、前記第3フランジ部分の分割端部から前記ジャッキの挿入方向下手側に前記縦壁が延びていると次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0016】
前記逃げ部を形成することによって、第3フランジにジャッキの本体部が干渉することを防止することができる。また、第3フランジ部分の分割端部から縦壁が延びるように形成することで、逃げ部を形成しても各第3フランジ部分の強度を維持することができる。(請求項6)
【0017】
本発明において、
前記ジャッキ頭部に形成された凹部に嵌合する凸部が前記ブラケット本体に形成されていると次の作用を奏することができる。(請求項7)
【0018】
ジャッキ頭部の位置を前記凹部と凸部の嵌合によって設定することで、ジャッキ頭部の固定位置を予め設定した位置に維持できる。その結果、ジャッキブラケット内でのブラケットの姿勢を一定姿勢に保持しやすくなる。また、凹部と凸部が嵌合することでジャッキブラケット内の所定の固定位置にジャッキを固定できたことを感覚的に分かりやすくすることができる。(請求項7)
【0019】
本発明において、
前記ブラケット基体は前記ジャッキ基部を受け止める板状に形成され、
前記ブラケット本体は、前記ジャッキの両側部を覆う一対の側壁と、前記一対の側壁の頂部同士を連結し、前記ジャッキ頭部を受け止める上壁とを備え、
前記ブラケット基体とは反対側に位置する前記一対の側壁の上半部は、前記ブラケット基体側に位置する前記一対の側壁の下半部よりも互いの間隔が狭くなるよう構成されていると次の作用を奏することができる。(請求項8)
【0020】
一対の側壁の上半部は、前記ブラケット基体側に位置する前記一対の側壁の下半部よりも互いの間隔が狭くなるよう構成されているので、ジャッキ頭部が一対の側壁の上半部にガイドされながらジャッキが伸長されることになり、ジャッキ固定作業の作業性を向上させることができる。
前記ブラケット基体と前記ブラケット本体の間に長手方向一端部側から挿通し伸長したジャッキは、ジャッキ基部がブラケット基体に受け止められ、ジャッキ頭部がブラケット本体の上壁に受け止められて、前記ブラケット基体とブラケット本体の上壁とに挟み込み保持される。(請求項8)
【0021】
本発明において、
前記一対の側壁の上半部は前記上壁側ほど互いの間隔が狭くなる傾斜姿勢に設定されていると次の作用を奏することができる。(請求項9)
【0022】
前記一対の側壁の上半部は前記上壁側ほど互いの間隔が狭くなる傾斜姿勢に設定されているから、ジャッキを伸長するに伴って、ジャッキ頭部が一対の側壁の下半部側から上半部側にガイドされる。これにより、ジャッキ頭部を上壁側にガイドしやすくすることができる。(請求項9)
【0023】
本発明において、
前記ジャッキが前記ブラケット基体と前記ブラケット本体に後ろ下がり傾斜姿勢に保持されるように、前記ブラケット基体に固定されたブラケット支持座がホイールハウスインナパネルの後ろ下がり傾斜姿勢の後壁に溶接固着され、
前記ホイールハウスインナパネルを覆うクオータインナトリムに、前記ジャッキを出し入れする開口部と、前記開口部を開閉するジャッキリッドとが設けられていると次の作用を奏することができる。(請求項10)
【0024】
ブラケット基体に固定されたブラケット支持座がホイールハウスインナパネルの後ろ下がり傾斜姿勢の後壁に溶接固着されることで、車体後部位置において荷物等を載置できないデッドスペースにジャッキブラケットを配置することができる。また、クオータインナトリムに、ジャッキを出し入れする開口部と、開口部を開閉するジャッキリッドとを設けることで、ジャッキブラケットが外部に露出せず外観品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、
部品点数を少なくすることができ、組み付け精度を向上させることができる車両のジャッキ固定構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】後部車体の斜視図
【図2】クオータインナトリムとジャッキリッドを示す側面図
【図3】クオータインナトリム及びジャッキリッドを取り外した状態のジャッキ固定構造の側面図
【図4】図2におけるA−A線の拡大縦断面図
【図5】ジャッキブラケットをジャッキの挿入方向斜め下手側から見た斜視図
【図6】ジャッキブラケットにジャッキを挿入して固定した状態をジャッキの挿入方向上手側から見た図
【図7】ジャッキブラケットにジャッキを挿入して固定した状態をジャッキの挿入方向下手側から見た図
【図8】ブラケット本体の斜視図
【図9】ブラケット基体を底面側から見た斜視図
【図10】ジャッキブラケットをジャッキブラケットの高さ方向上側から見た図
【図11】ジャッキブラケットにジャッキを固定した状態をジャッキブラケットの高さ方向上側から見た図
【図12】ジャッキブラケットの側面図
【図13】ジャッキブラケットにジャッキを固定した状態の側面図
【図14】(a)はブラケット支持座をジャッキの挿入方向上手側から見た図(b)はブラケット支持座をジャッキブラケットの高さ方向上側から見た図(c)はブラケット支持座をジャッキブラケットの幅方向外方側から見た図(d)は図14(b)のA−A断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1,図3,図4に示すように、車両後部において、ホイールハウスインナパネル2(車体に相当)とホイールハウスアウタパネル3が溶接接合されてホイールハウス4が形成され、ホイールハウスアウタパネル3にクオータインナパネル5の下端部が溶接接合されている。また、リアピラインナパネル7がホイールハウスインナパネル2の上壁部2Uとクオータインナパネル5に溶接接合されている。
【0028】
ホイールハウスインナパネル2は後ろ下がり傾斜姿勢の後壁2K(車両後方側ほど下方に位置するように傾斜した後壁2K)を備えている。そして、ジャッキ8を後ろ下がり傾斜姿勢に収容保持するジャッキブラケット10が前記後壁2Kに溶接固着されて車両のジャッキ固定構造が構成されている。符号11は前記後壁2Kとランプハウスインナパネル9との間に形成されたジャッキ8の収容空間である。
【0029】
図5に示すように前記ジャッキブラケット10は、ホイールハウスインナパネル2の後壁2Kに連続するパネル部材に溶接接合(固定の一例)されるブラケット基体24と、ブラケット基体24に溶接接合されるブラケット本体25とで筒状に形成されている。さらに、ホイールハウスインナパネル2の後壁2Kとブラケット基体24の間に介在してこれら両者に溶接接合されるブラケット支持座26が設けられている。そして、図1,図3に示すように、ジャッキ8がブラケット基体24とブラケット本体25の間に長手方向一端部側から挿通し伸長してブラケット基体24とブラケット本体25に挟み込み保持されるよう構成されている。
【0030】
図2,図4に示すように、クオータインナパネル5と前記収容空間11は車室内側(車幅方向内側)から樹脂製のクオータインナトリム13で覆われている。クオータインナトリム13には、ジャッキ8を車室内側から出し入れする開口部13Kと、開口部13Kを開閉するジャッキリッド15とが設けられ、図4に示すように、クオータインナトリム13の裏面とジャッキリッド15の裏面にサイレンサ16が設けられている。
【0031】
[ジャッキ8の構造]
図13に示すように、ジャッキ8は周知のパンタグラフ式の構造であり、ジャッキ基部19(図6,図7,図11参照)と、ジャッキ基部19に一端部が各別にピン連結された一対の下アーム18と、一対の下アーム18の他端部に一端部が各別にピン連結された一対の上アーム17と、一対の上アーム17の他端部がピン連結されたジャッキ頭部20と、ジャッキ8の長手方向の他端部側に設けられ、ジャッキ操作具(図示せず)の被係止部を係止させる係止部12と、ジャッキ操作具を用いての係止部12の回転操作により前記ジャッキ頭部20をジャッキ基部19に対して近接離間させてジャッキ8を伸縮させる伸縮機構(図示せず)とを備えている。
【0032】
ジャッキ頭部20の長手方向中央部には幅方向(横方向)に延びる上側開放(ジャッキ8の高さ方向で上側に開放)の凹溝部21(凹部に相当,図13参照)が形成されている。図11に示すように、ジャッキ基部19は、ジャッキ8の高さ方向上方側から見てジャッキ中央部側ほど幅狭の鼓形に形成されている。
【0033】
上記のように、前記後壁2Kにジャッキブラケット10を溶接固着してあるから、ジャッキ8の係止部12をジャッキブラケット10の上方に突出させることができ、係止部12とは反対側のジャッキ8の長手方向一端部をジャッキブラケット10の下方に突出させることができる。
【0034】
[ジャッキブラケット10の構造]
前記ブラケット基体24は、上記のようにホイールハウスインナパネル2の後ろ下がり傾斜姿勢の後壁2Kに連続するパネル部材に溶接固着され、ブラケット基部24の下面に溶接接合されるブラケット支持座26は後壁2Kに溶接接合され、ジャッキ8はブラケット基体24とブラケット本体25に後ろ下がり傾斜姿勢に保持される。
【0035】
後述のように、ブラケット基体24とブラケット本体25は、ジャッキ8の一側部の周りでジャッキブラケット10の高さ方向Z(第1方向に相当)に互いに溶接接合され、ジャッキ8の他側部の周りでジャッキブラケット10の幅方向W(第1方向と交差する第2方向に相当)に互いに溶接接合されている。
【0036】
[ブラケット支持座26の構造]
図5〜図7,図14(a)〜図14(d)に示すように、ブラケット支持座26は板状に形成され、前記ジャッキ8の挿入方向上手側J1の支持座部分26Bがブラケット基体24の下面に溶接接合される。前記支持座部分26Bはその周りの周部26Cに対してブラケット基体24側に膨出している。また、ジャッキ8の挿入方向下手側J2のブラケット支持座26の端部のうち、幅方向の両端部と幅方向の中央部に取り付け座26Aがそれぞれ形成されている。この取り付け座26Aはブラケット基体24と反対側に膨出して、ホイールハウスインナパネル2の後ろ下がり傾斜姿勢の後壁2Kに溶接固着される。
【0037】
[ブラケット本体25の構造]
図5〜図8,図10〜図12に示すように、前記ブラケット本体25は、ジャッキ8の両側部を覆う一対の側壁36,37と、一対の側壁36,37の頂部同士を連結し、ジャッキ頭部20を受け止める上壁32とを備えている。ブラケット基体25とは反対側に位置する一対の側壁36,37の上半部36S1,37S1は、ブラケット基体25側に位置する一対の側壁36,37の下半部36S2,37S2よりも互いの間隔が狭い幅狭に形成されるとともに、上壁32側ほど互いの間隔が狭くなる傾斜姿勢に設定されている。
【0038】
また、車室外側の側壁37の下半部37S2の下端部が幅方向外側に折曲されて、ジャッキブラケット10の高さ方向Zを向く第1接合面部35に構成され、車室内側の側壁36の下半部36S2の下端部が、ジャッキブラケット10の幅方向Wを向く第2接合面部34に構成されている。第1接合面部35と第2接合面部34はブラケット基体24に溶接接合される。図8に第1接合面部35と第2接合面部34を2点鎖線のハッチングで示してある。
【0039】
図5,図8に示すように、ジャッキ8の挿入方向上手側J1のブラケット本体25の端部に段差状の第1フランジ28が形成されている。この第1フランジ28は、ブラケット本体25の径方向外方側に張り出す断面L字形の外開き状に形成されている。これにより、ブラケット本体25の剛性を向上させることができる。
【0040】
ジャッキ8の挿入方向Jで上壁32の中央部には、ジャッキブラケット10の内方側に向けて突出し、ジャッキブラケット10の幅方向Wに延びるビード状の断面円弧の凸部30が形成されている。図13に示すように、この凸部30はジャッキ頭部20に形成された凹溝部21に嵌合する。これにより、ジャッキブラケット10に対してジャッキ8を前記挿入方向Jで位置決めすることができる。
【0041】
また、図8に示すように、車室内側の側壁36の上半部36S1のうち、ジャッキ8の挿入方向下手側J2に位置する前記上半部36S1の端部と、ジャッキ8の挿入方向下手側J2に位置する上壁32の端部とに、ジャッキブラケット10の径方向内方側に張り出してジャッキ頭部20を受け止める第2フランジ29が形成されている。
【0042】
[ブラケット基体24の構成]
図5〜図7,図9に示すように、ブラケット基体24はジャッキ基部19を受け止める平板状に形成されている。このブラケット基体24は、ジャッキ8の挿入方向上手側J1に、ホイールハウスインナパネル2の後ろ下がり傾斜姿勢の後壁2Kに連続するパネル部材に対する第5接合面部40を備えている。第5接合面部40はブラケット本体25の第1フランジ28よりも前記挿入方向上手側J1に突出するとともに、車室外側の部分が車室内側の部分よりも前記挿入方向上手側J1に長く突出し、前記挿入方向上手側J1に向かって先窄まり形状に形成されている。
【0043】
ブラケット基体24の車室内側の側縁部は上方に向けて折曲されて、ジャッキブラケット10の幅方向Wを向く第3接合面部38に構成されている。また、ブラケット基体24の車室外側の側縁はジャッキブラケット10の高さ方向Zを向く第4接合面部39に構成されている。図9に第3接合面部38と第4接合面部39を2点鎖線のハッチングで示してある。図9はブラケット基体24を底面側から見た斜視図である。ブラケット基体24の第3接合面部38にはブラケット本体25の第2接合面部34が、ジャッキブラケット10の幅方向外方側から溶接接合され(図12,図13参照)、第4接合面部39にはブラケット本体25の第1接合面部35がジャッキブラケット10の高さ方向上方側から溶接接合される(図5参照)。
【0044】
図5,図7に示すように、前記ジャッキ8の挿入方向下手側J2のブラケット基体24の端部には、ジャッキブラケット10の径方向内方側に張り出してジャッキ基部19を受け止める第3フランジ41が形成されている。この第3フランジ41にはジャッキブラケット10の幅方向中央部でジャッキ8に対する逃げ部42が形成されている。その逃げ部42によって、ジャッキ8の先端側の下アーム18が第3フランジ41と干渉しないようにしてある。逃げ部42によって第3フランジ41は車室内側の第3フランジ部分41Aと車室外側の第3フランジ部分41Bに分割される。
【0045】
前記第3フランジ部分41A,41Bの分割端部からジャッキの挿入方向下手側に縦壁43が延びており、この縦壁43によって各フランジ部分41A,41Bの受け止め強度を向上させている。車室内側の第3フランジ部分41Aは第3接合面部38に接続されている。これにより、曲げや捻り方向の力に対して強度を向上させることができる。
【0046】
逃げ部42に接する各第3フランジ部分41A・41Bの中央側端部と縦壁43は他の第3フランジ41の高さ寸法に比べて上方に盛り上がって形成されている。その結果、ジャッキ基部19をしっかり受け止めることができる。
【0047】
ブラケット基体24の中央には円形の重量軽減用の開口46が形成されている。また、ブラケット基体24の前記開口46の周りに複数のビード47が形成されている
【0048】
[ジャッキブラケットの組み付け]
一例として、
(1) ホイールハウスインナパネル2の後壁2Kにブラケット支持座26の取り付け座26Aを溶接接合し、後壁2Kに連続するパネル部材にブラケット基体24の第5接合面部40を溶接接合し、ブラケット支持座26の支持座部分26Bにブラケット基体24の下面を溶接接合する。そして、ブラケット基体24の第3接合面部38にブラケット本体25の第2接合面部34を幅方向外方側から溶接接合する(図5参照)。これにより、ジャッキブラケット10の幅方向Wにおいて、ブラケット基体24とブラケット本体25を高い精度で位置決めすることができる。
【0049】
(2) ブラケット基体24の第4接合面部39とブラケット本体25の第1接合面部35とを溶接接合する(図5参照)。これにより、ジャッキブラケット10の高さ方向Zにおいて、ブラケット基体24とブラケット本体25を高い精度で位置決めすることができる。また、捻りなどの変形に対しても筒体として十分な強度を維持できる。
【0050】
[ジャッキのジャッキブラケットへの固定]
ジャッキ8をジャッキブラケット10に固定する時は、
(1) クオータインナトリム13に設けられたジャッキリッド15を開放し、上下のアーム17・18を折り畳んだ短縮状態のジャッキ8を係止部12とは反対側の長手方向の一端部からジャッキブラケット10に挿入する。
(2) ジャッキブラケット10の第2フランジ29にジャッキ頭部20が受け止め支持され、第3フランジ41にジャッキ基部19が受け止め支持された状態で、係止部12に操作具を連結し、各アーム17・18を開いてジャッキ8を伸長させる。
(3) 図13に示すように、ジャッキ頭部20の凹溝部21に上壁の凸部30を嵌合させてジャッキ8をジャッキブラケット10に固定する。
(4) 前記ジャッキリッド15をクオータインナトリム13の開口部13Kに取り付けて前記開口部13Kを閉じる。
【符号の説明】
【0051】
2 ホイールハウスインナパネル(車体)
2K ホイールハウスインナパネルの後壁
8 ジャッキ
10 ジャッキブラケット
13 クオータインナトリム
13K 開口部
15 ジャッキリッド
19 ジャッキ基部
20 ジャッキ頭部
21 凹部(凹溝部)
24 ブラケット基体
25 ブラケット本体
26 ブラケット支持座
28 第1フランジ
29 第2フランジ
30 凸部
32 上壁
36 側壁(車室内側の側壁)
36S1 側壁(車室内側の側壁)の上半部
36S2 側壁(車室内側の側壁)の下半部
37 側壁(車室外側の側壁)
37S1 側壁(車室外側の側壁)の上半部
37S2 側壁(車室外側の側壁)の下半部
41 第3フランジ
42 逃げ部
41A 第3フランジ部分
41B 第3フランジ部分
43 縦壁
J ジャッキ挿入方向
J1 ジャッキ挿入方向上手側
J2 ジャッキ挿入方向下手側
W 第2方向(ジャッキブラケットの幅方向)
Z 第1方向(ジャッキブラケットの高さ方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されたジャッキブラケットにジャッキを固定してある車両のジャッキ固定構造であって、
前記ジャッキブラケットは、前記車体に固定されるブラケット基体と前記ブラケット基体に固定されるブラケット本体とで筒状に形成され、
前記ジャッキが前記ブラケット基体と前記ブラケット本体の間に長手方向一端部側から挿通し伸長して前記ブラケット基体と前記ブラケット本体に挟み込み保持されるように構成され、
前記ブラケット基体と前記ブラケット本体は、前記ジャッキの一側部の周りで第1方向に互いに固定され、前記ジャッキの他側部の周りで前記第1方向と交差する第2方向に互いに固定されている車両のジャッキ固定構造。
【請求項2】
前記ジャッキの挿入方向上手側の前記ブラケット本体の端部に段差状の第1フランジが形成されている請求項1記載の車両のジャッキ固定構造。
【請求項3】
前記段差状の第1フランジは前記ブラケット本体の径方向外方側に張り出す外開き状に形成されている請求項2記載の車両のジャッキ固定構造。
【請求項4】
前記ジャッキの挿入方向下手側の前記ブラケット本体の端部に、前記ジャッキブラケットの径方向内方側に張り出してジャッキ頭部を受け止める第2フランジが形成され、
前記ジャッキの挿入方向下手側の前記ブラケット基体の端部に、前記ジャッキブラケットの径方向内方側に張り出して前記ジャッキ基部を受け止める第3フランジが形成されている請求項1〜3のいずれか一つに記載の車両のジャッキ固定構造。
【請求項5】
前記第3フランジから前記ジャッキの挿入方向下手側に縦壁が延びている請求項4に記載の車両のジャッキ固定構造。
【請求項6】
前記第3フランジには前記ジャッキブラケットの幅方向中央部で前記ジャッキに対する逃げ部が形成され、
前記逃げ部の形成によって前記第3フランジが一対の第3フランジ部分に分割され、前記第3フランジ部分の分割端部から前記ジャッキの挿入方向下手側に前記縦壁が延びている請求項5に記載の車両のジャッキ固定構造。
【請求項7】
前記ジャッキ頭部に形成された凹部に嵌合する凸部が前記ブラケット本体に形成されている請求項1〜6のいずれか一つに記載の車両のジャッキ固定構造。
【請求項8】
前記ブラケット基体は前記ジャッキ基部を受け止める板状に形成され、
前記ブラケット本体は、前記ジャッキの両側部を覆う一対の側壁と、前記一対の側壁の頂部同士を連結し、前記ジャッキ頭部を受け止める上壁とを備え、
前記ブラケット基体とは反対側に位置する前記一対の側壁の上半部は、前記ブラケット基体側に位置する前記一対の側壁の下半部よりも互いの間隔が狭くなるよう構成されている請求項1〜7のいずれか一つに記載の車両のジャッキ固定構造。
【請求項9】
前記一対の側壁の上半部は前記上壁側ほど互いの間隔が狭くなる傾斜姿勢に設定されている請求項8に記載の車両のジャッキ固定構造。
【請求項10】
前記ジャッキが前記ブラケット基体と前記ブラケット本体に後ろ下がり傾斜姿勢に保持されるように、前記ブラケット基体に固定されたブラケット支持座がホイールハウスインナパネルの後ろ下がり傾斜姿勢の後壁に溶接固着され、
前記ホイールハウスインナパネルを覆うクオータインナトリムに、前記ジャッキを出し入れする開口部と、前記開口部を開閉するジャッキリッドとが設けられている請求項1〜9のいずれか一つに記載の車両のジャッキ固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−225112(P2011−225112A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96981(P2010−96981)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】