説明

車両のステアリング装置

【課題】
分大きな曲率半径でもってケーブルを配策することが可能な車両のステアリング装置を提供する。
【解決手段】
駆動プーリボックス2に内蔵された駆動プーリと従動プーリボックス4に内蔵された従動プーリとは、2本のケーブル8A,8Aを介して接続されており、ステアリングホイル1の操舵トルクはケーブル8A,8Aを介してステアリングギアボックス3に装備されたピニオン5およびラック6に順次伝達されるようになっている。駆動プーリボックス2に内蔵された駆動プーリと従動プーリボックス4に内蔵された従動プーリとを接続しているケーブル8A,8Aは、車両のタイヤ10を収容するタイヤハウス9の上方に設けられたフェンダプロテクタ11の上側に配策されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイルの操舵トルクをケーブルを介してステアリングギアボックスに伝達する車両のステアリング装置に関し、特に、ケーブルの配策構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイル側に配置した駆動プーリと、ステアリングギアボックス側に配置した従動プーリとをケーブルを介して接続し、ステアリングホイルの操舵トルクをステアリングギアボックスに伝達する車両のステアリング装置が知られている。
【0003】
このような車両のステアリング装置において、右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車とでエンジンルームの共通化をはかるため、図14に示すようなケーブルの配策構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
まず、構成から説明すると、ステアリングホイル1側には駆動プーリを内蔵した駆動プーリボックス2が設置され、ステアリングギアボックス3側には従動プーリを内蔵した従動プーリボックス4が設置され、駆動プーリと従動プーリとは、ケーブル8,8を介して接続されている。
【0005】
そして、ケーブル8,8は、ダッシュロアパネル16近くの車室側に設けられた分割部17a,17b,17cにおいて、フロントケーブル8aとリヤケーブル8bとに分割可能に構成されている。
【0006】
次に、このような構成のステアリング装置の作用を説明すると、左ハンドル(LHD)仕様車のレイアウトは、実線で示すように、分割部17aでフロントケーブル8aとリヤケーブル8bとを接続し、また、分割部17bでフロントケーブル8aとリヤケーブル8bとを接続して、駆動プーリボックス2と従動プーリボックス4との間をケーブル8で連結することにより達成される。
【0007】
また、右ハンドル(RHD)仕様車のレイアウトは、2点鎖線(一部実線)で示すように、分割部17bでフロントケーブル8aとリヤケーブル8bとを接続し、また、分割部17cでフロントケーブル8aとリヤケーブル8bとを接続して、駆動プーリボックス2と従動プーリボックス4との間をケーブル8で連結することにより達成される。
【特許文献1】特開2001−63586号公報(図5、0045段落乃至0050段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、上記従来の車両のステアリング装置においては、ケーブル8の分割部17a,17b,17cを設け、これら分割部17a,17b,17cにリヤケーブル8bを接続することにより、右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車とでエンジンルームの共通化がはかられている。
【0009】
しかしながら、上記従来の車両のステアリング装置においては、フロントケーブル8aは、多数の部品が配設されたエンジンルーム内に配策されたものとなっている。
【0010】
このため、フロントケーブル8aを十分に大きな曲率半径でもって配策することは困難であり、ケーブルに加わる負荷を十分に低減することができないおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、十分大きな曲率半径でもってケーブルを配策することが可能な車両のステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、ステアリングホイルの操舵トルクをステアリングギアボックスに伝達するケーブルが、エンジンルーム内の下部に配設されたサスペンションメンバ、およびエンジンルーム内の車幅方向両側部において車両前後方向に配設された一対のサイドメンバにより囲まれた空間の外側に配策されていることを最も主な特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明のものは、ステアリングホイルの操舵トルクをステアリングギアボックスに伝達するケーブルは、エンジンルーム内の下部に配設されたサスペンションメンバの上側、およびエンジンルーム内の車両前後方向に配設された一対のサイドメンバにより囲まれた空間の外側に沿った部位という、部品数が少なく比較的余裕のある空間、またはエンジンルーム内において車両の前後方向に直線的に配設されたサスペンションメンバあるいはサイドメンバのような部材に沿って配策されるようになる。
【0014】
このため、ケーブルを大きな曲率半径でもって配策することができ、ケーブルに加わる負荷を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
[実施例1]
図1は、本実施例1による車両のステアリング装置を示したものである。
【0017】
ステアリングホイル1側には駆動プーリ(図示せず)を内蔵した駆動プーリボックス2が設置され、また、ステアリングギアボックス3側には従動プーリ(図示せず)を内蔵した従動プーリボックス4が設置されている。
【0018】
ステアリングギアボックス3は、ピニオン5およびラック6を備えており、ラック6の両端にはタイロッド7が連結され、このタイロッドの動きにより車両の前輪(図示せず)が操舵される。
【0019】
駆動プーリボックス2に内蔵された駆動プーリと従動プーリボックス4に内蔵された従動プーリとは、2本のケーブル8A,8Aを介して接続されており、ステアリングホイル1の操舵トルクはケーブル8A,8Aを介してステアリングギアボックス3に装備されたピニオン5およびラック6に順次伝達されるようになっている。
【0020】
なお、ケーブル8A,8Aは、アウターチューブの内部にインナーケーブルを摺動自在に挿通させたものであるが、便宜上ケーブルとして説明する。
【0021】
図2乃至図4は、本実施例1による車両のステアリング装置のケーブル配策構造を示したものである。
【0022】
左ハンドル(LHD)仕様車の場合は、実線(および破線)で示したように、駆動プーリボックス2に内蔵された駆動プーリと従動プーリボックス4に内蔵された従動プーリとを接続しているケーブル8A,8Aは、車両のタイヤ10を収容するタイヤハウス9の上方に設けられたフェンダプロテクタ11の上側に、フェンダ12に近接して配策されている。
【0023】
また、右ハンドル(RHD)仕様車の場合は、2点鎖線で示したように、左ハンドル仕様車とは左右対称に配策される。
【0024】
このように、ケーブル8A,8Aは、エンジンEやトランスミッションT等の部品が多数配置されているサイドメンバ14,14で挟まれた空間を回避して、障害となる部品は殆ど配置されていないタイヤハウス9内に配策されている。
【0025】
このため、ケーブル8A,8Aの曲率半径を大きくして配策することができ、ケーブル8A,8Aにかかわる負荷を低減することができる。
【0026】
また、ハンドル1の仕様に拘わらず大きな曲率半径でもってケーブル8A,8Aを配策することができ、右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車とでエンジンルームレイアウトを共通化することが可能となる。
【0027】
さらに、ハンドル1の仕様の共通化による部品の種類の削減および部品の共有化により、エンジンルーム内のスペースを有効活用することができ、レイアウトの自由度が向上する。
【0028】
しかも、タイヤハウス9内の上側に配策する程、ケーブル8A,8Aは他部品と干渉しにくくなり、ケーブル8A,8Aの曲率半径をより確実に大きくすることができる。
【0029】
さらに、また本実施例では、タイヤハウス9の上方に設けられたフェンダプロテクタ11の上側で、フェンダ12に近い箇所にケーブル8A,8Aを配策しているので、前記した効果に加えて、ケーブル8A,8Aの組み付け性(脱着性)が良くなり、また、補修の際の作業性も良くなる。
【0030】
さらに、横置きに搭載されたエンジンEを持つ前輪駆動車の右ハンドル仕様の場合には、エンジンE、ストラットハウジング、カウルトップパネルで囲まれた極小スペース内を回避した部位にケーブルを配策することができ、十分に大きなな曲率半径を確保することが可能となる。
[実施例2]
本実施例2による車両のステアリング装置について、前記実施例1と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
【0031】
本実施例2による車両のステアリング装置のケーブル配策構造は、図5乃至図7に示すように、駆動プーリボックス2に内蔵された駆動プーリと従動プーリボックス4に内蔵された従動プーリとを接続しているケーブル8B,8Bを、フェンダ12内に配策したものである。
【0032】
左ハンドル(LHD)仕様車の配策構造は、実線(および破線)で示され、右ハンドル(RHD)仕様車の配策構造は2点鎖線で示されている。
【0033】
フェンダ12内には、ケーブル8B,8Bを配策する上で障害となる部品は殆どないので、ケーブル8B,8Bの曲率半径を大きくして配策することができる。
【0034】
他の構成および作用については、前記実施例1と同様であるので、説明を省略する。
[実施例3]
本実施例3による車両のステアリング装置について、前記実施例1と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
【0035】
本実施例3による車両のステアリング装置のケーブル配策構造は、図8(底面図)乃至図10に示すように、駆動プーリボックス2に内蔵された駆動プーリと従動プーリボックス4に内蔵された従動プーリとを接続しているケーブル8C,8Cを、サスペンションメンバ13の上面に沿って配策したものである。
【0036】
左ハンドル(LHD)仕様車の配策構造は、実線(および破線)で示され、右ハンドル(RHD)仕様車の配策構造は2点鎖線で示されている。
【0037】
このように、エンジンルーム内で車両前後方向に配設されたサスペンションメンバ13に沿ってケーブル8C,8Cを配設することにより、ケーブル8C,8Cの曲率半径を大きくすることができる。
【0038】
また、車両への衝撃荷重入力時には、サスペンションメンバ13で衝撃の入力を受けるため、ケーブル8C,8Cが受ける損傷を低減することができる。
【0039】
他の構成および作用については、前記実施例1と同様であるので、説明を省略する。
[実施例4]
本実施例4による車両のステアリング装置について、前記実施例1と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
【0040】
本実施例4による車両のステアリング装置のケーブル配策構造は、図11乃至図13に示すように、駆動プーリボックス2に内蔵された駆動プーリと従動プーリボックス4に内蔵された従動プーリとを接続しているケーブル8D,8Dを、サイドメンバ14の外側面に沿って配策したものである。
【0041】
この場合、サイドメンバ14の外側面に凹部15を形成し、この凹部15内にケーブル8D,8Dを配策すると、周辺部材の影響を受けにくくなる。
【0042】
左ハンドル(LHD)仕様車の配策構造は、実線(および破線)で示され、右ハンドル(RHD)仕様車の配策構造は2点鎖線で示されている。
【0043】
このように、エンジンルーム内で車両前後方向に配設されたサイドメンバ14に沿ってケーブル8D,8Dを配設することにより、ケーブル8D,8Dの曲率半径を大きくすることができる。
【0044】
また、車両の衝撃荷重入力時には、サイドメンバ14で衝撃入力を受けるため、ケーブル8D,8Dが受ける損傷を最小限とすることができる。
【0045】
他の構成および作用については、前記実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0046】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施例3では、ケーブル8C,8Cを、サスペンションメンバ13の上面に沿って配策した例を説明したが、サスペンションメンバ13の側面に沿って配策しても良い。
【0048】
また、前記実施例4では、ケーブル8D,8Dを、サイドメンバ14の外側面に沿って配策した例を説明したが、サイドメンバ14の上面に沿って配策しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の最良の実施の形態である実施例1の車両のステアリング装置の全体の構成を説明する斜視図である。
【図2】実施例1の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する平面図である。
【図3】実施例1の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する側面図である。
【図4】実施例1の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する図3のX1−X1線断面図である。
【図5】本発明の最良の実施の形態である実施例2の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する平面図である。
【図6】実施例2の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する側面図である。
【図7】実施例2の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する図6のX2−X2線断面図である。
【図8】本発明の最良の実施の形態である実施例3の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する平面図である。
【図9】実施例3の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する側面図である。
【図10】実施例3の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する図9のX3−X3線断面図である。
【図11】本発明の最良の実施の形態である実施例4の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する平面図である。
【図12】実施例4の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する側面図である。
【図13】実施例4の車両のステアリング装置におけるケーブルの配策構造を説明する図12のX4−X4線断面図である。
【図14】従来例の車両のステアリング装置の構成を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ステアリングホイル
3 ステアリングギアボックス
8,8A,8B,8C,8D ケーブル
9 タイヤハウス
11 フェンダプロテクタ
12 フェンダ
13 サスペンションメンバ
14 サイドメンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイルの操舵トルクをステアリングギアボックスに伝達するケーブルが、前記ステアリングホイルと前記ステアリングギアボックスとの間に配策されている車両のステアリング装置であって、
前記ケーブルは、エンジンルーム内の下部に配設されたサスペンションメンバおよびエンジンルーム内の車幅方向両側部において車両前後方向に配設された一対のサイドメンバにより囲まれた空間の外側に配策されていることを特徴とする車両のステアリング装置。
【請求項2】
前記ケーブルは、タイヤハウス内に配策されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のステアリング装置。
【請求項3】
前記ケーブルは、タイヤハウス内の上側に配策されていることを特徴とする請求項2に記載の車両のステアリング装置。
【請求項4】
前記ケーブルは、タイヤハウス内の上方で、フェンダプロテクタの上側に配策されていることを特徴とする請求項3に記載の車両のステアリング装置。
【請求項5】
前記ケーブルは、フェンダ内に配策されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のステアリング装置。
【請求項6】
前記ケーブルは、サスペンションメンバに沿って配策されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のステアリング装置。
【請求項7】
前記ケーブルは、サイドメンバに沿って配策されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−232236(P2006−232236A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53959(P2005−53959)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】