説明

車両のスマートキーレスエントリシステム

【課題】利便性に優れた車両のスマートキーレスエントリシステムの提供。
【解決手段】車両のドアに設けられたスイッチ手段1、1aと、ID信号を送信する携帯ユニット2と、受信したID信号の認証が成立した場合にドアのロック機構4、5を作動させる車載ユニット3を備え、携帯ユニット2による解錠操作が行われた場合に、又は、運転席ドアのスイッチ手段1が操作された場合に、運転席ドアのロック機構4を選択的に解錠させ、更に、運転席ドアのスイッチ手段1が操作された場合に、車両の全ドアのロック機構5を解錠させ、スイッチ手段は、タッチセンサスイッチ11、11aと機械式スイッチ12、12aとからなり、運転席ドアのロック機構4が選択的に解錠されている場合に、運転席ドア以外のドアのタッチセンサスイッチ11aが操作されると、全ドアのロック機構5が解錠される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスマートキーレスエントリシステムに係り、より詳細には、運転席ドア及び全ドアの解錠をいわゆる2ステージで行う車両のスマートキーレスエントリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のスマートエントリシステムが実用化されている。スマートエントリシステムでは、携帯機が従来の機械式キーの役割を果たす。例えば、カード状の携帯機をポケットやバッグに入れて携帯していれば、キーを取り出して操作しなくても、ドア解錠やエンジン始動等の操作を行うことができる。
【0003】
下記の特許文献1には、ドアに施錠用のタッチセンサと解錠用のタッチセンサとを設けた場合に、どちらのタッチセンサが有効であるか表示する技術が開示されている。これにより、使用者の混乱を防止している。
【0004】
【特許文献1】特開2006−9312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いわゆる2ステージのスマートキーレスエントリシステムでは、携帯ユニットのトランスミッタや運転席ドアのスイッチの1回目の操作で運転席ドアのみが解錠され、2回目の操作で全ドアが解錠されるようになっている。
【0006】
ところが、運転席ドアのみが解錠された状態では、助手席ドア等の運転席ドア以外のドアのスイッチを操作しても、運転席ドア以外のドアは解錠されない。このため、例えば、車両から離れた位置から携帯ユニットのトランスミッタで運転席ドアだけを解錠した後、助手席に荷物を置こうとして、助手席ドアのタッチセンサに触れても、助手席ドアは解錠されない。
【0007】
そこで、本発明は、利便性に優れた車両のスマートキーレスエントリシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のスマートキーレスエントリシステムは、車両のドアに設けられたスイッチ手段と、ID信号を送信する携帯ユニットと、受信したID信号の認証が成立した場合に、ドアのロック機構を作動させる車載ユニットとを備え、前記車載ユニットは、前記携帯ユニットによる解錠操作が行われた場合に、又は、運転席ドアのスイッチ手段が操作された場合に、運転席ドアのロック機構を選択的に解錠させ、更に、運転席ドアのロック機構の解錠から第1の所定時間内に、運転席ドアのスイッチ手段が操作された場合に、車両の全ドアのロック機構を解錠させる車両のスマートキーレスエントリシステムであって、前記スイッチ手段は、ドアのドアハンドル内側のタッチセンサスイッチとドアハンドル近傍の機械式スイッチとから構成され、前記車載ユニットは、運転席ドアのロック機構が選択的に解錠されている場合に、運転席ドア以外のドアのタッチセンサスイッチが操作されると、全ドアのロック機構を解錠させる、ことを特徴としている。
【0009】
このように、本発明のスマートキーレスエントリシステムによれば、運転席ドアが選択的に解錠されているときに、運転席ドア以外のドアのドアハンドルに手を掛けるだけで、全席のドアが解錠される。これにより、利便性に優れた車両のスマートキーレスエントリシステムが提供される。
【0010】
また、本発明において好ましくは、前記車載ユニットは、運転席ドアのロック機構が選択的に解錠されてから、第2の所定時間内に、運転席ドア以外のドアのタッチセンサスイッチが操作された場合に、全ドアのロック機構を解錠させる。
このように、第2の所定時間内のみ、運転席ドア以外のドアのタッチセンサスイッチが作動すれば、意図しないときに全ドアが解錠されることを防止することができる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記車載ユニットは、全ドアのロック機構が解錠されてから、第3の所定時間内に、いずれのドアも開かない場合に、全ドアのロック機構を施錠させる。
このように、第3の所定時間経過後に全ドアが施錠されれば、車両のドアの施錠のし忘れを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の車両のスマートキーレスエントリシステムの実施形態を説明する。まず、図1のブロック図を参照して、実施形態のスマートキーレスエントリシステムの構成を説明する。
なお、本実施形態では、車両の運転席ドア以外のドアを助手席ドアで代表させて説明する。
【0013】
本実施形態のスマートキーレスエントリシステムは、車両のドアに設けられたスイッチ手段と、車両の運転席ドアに設けられたスイッチ手段1と、助手席ドアに設けられたスイッチ手段1aと、ID信号を送信する携帯ユニット2と、受信したID信号の認証が成立した場合に、ドアのロック機構4、5を作動させる車載ユニット3と、を備えている。
【0014】
そして、車載ユニット3は、携帯ユニット2のトランスミッタによる解錠(アンロック)操作が行われた場合に、又は、運転席ドアのスイッチ手段1が操作された場合に、運転席ドアのロック機構4を選択的に解錠させる。更に、運転席ドアのロック機構4の解錠から第1の所定時間内に、例えば、3秒以内に、運転席ドアのスイッチ手段1が操作された場合に、車両の全ドアのロック機構4、5を解錠させる。
【0015】
なお、車載ユニット3の機能は、例えば、車両に搭載されたECU(electric control unit:電子制御装置)等のコンピュータにおいて、所定のプログラムを実行することにより、或いは、ICチップ等により実現される。また、経過時間は、車載ユニットに内蔵された不図示のタイマーによって計測される。
【0016】
さらに、運転席ドア及び助手席ドアのスイッチ手段11、11aは、それぞれ、ドアのドアハンドル内側のタッチセンサスイッチ11、11aとドアハンドル近傍の機械式スイッチ12、12aとから構成されている。
【0017】
ここで、図2に、運転席ドア40のスイッチ手段1を示す。スイッチ手段1は、図2に示すように、運転席ドア40のドアハンドル41の内側に設けられたタッチセンサスイッチ11と、ドアハンドル41上又はドアハンドル41近傍に設けられた機械式スイッチ12とから構成されている。
なお、助手席ドアのスイッチ手段1aも、運転席ドアのスイッチ手段1と同様の構成である。
【0018】
タッチセンサスイッチ11は、ドアハンドル41にセンサ電極を備え、運転席ドア40とセンサ電極との間の静電容量の変化を検知する静電容量式スイッチである。携帯ユニット2の携帯者が運転席ドア40を開けようとしてドアハンドル41に手を掛けると、運転席ドア40とセンサ電極との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化を電圧の変化として検出することにより、スイッチとして機能する。
【0019】
なお、タッチセンサスイッチ11を操作させるためには、手がドアハンドル41に必ずしも触れる必要はない。例えば、センサ電極と運転席ドア40との間に手が挿入されるだけでも、静電容量が変化するため、タッチセンサスイッチを操作することができる。
【0020】
また、センサ電極は、ドアハンドル41のドアに面した面に露出させてもよいし、ドアハンドル41に内蔵してもよい。また、車両のドアは、一般に鋼板で作られているため、ドア自体がセンサ電極の対向電極として機能する。ただし、車両のドアを、例えば、強化樹脂等の非導電性の材料で形成する場合には、ドアにも電極を設けるとよい。
【0021】
機械式スイッチ12は、例えば、従来からスマートキーレスエントリシステムにおいて使用されている押しボタン式のリクエストスイッチ等の任意好適なものを採用することができる。ただし、機械式スイッチ12は、ドアハンドル41上又はドアハンドル41近傍、例えば、ドアハンドル41に手を掛けた状態で、親指が届く位置に設けることが望ましい。かかる位置に機械式スイッ12を設ければ、ドアを開ける動作を妨げることなく、機械式スイッチ12を容易に操作することができる。
【0022】
次に、図3のフローチャートを参照して、実施形態の車両のスマートキーレスエントリシステムの動作例を説明する。
先ず、全ドアのロック機構4、5が施錠(ロック)状態の場合(S1で「Yes」)において、携帯ユニット2のトランスミッタによる解錠(アンロック)操作が行われた場合に、又は、運転席ドアのスイッチ手段1が操作された場合に(S2で「Yes」)、ID信号の認証が成立すれば(S3で「Yes」)、運転席ドアのロック機構4が選択的に解錠(アンロック)される(S4)。
【0023】
ここで、トランスミッタの操作がされた場合には、携帯ユニット2から送信されたID信号の認証が行われる。また、運転席ドアのリクエストスイッチ11が押下されて操作された場合には、車載ユニット3からリクエスト信号を送信し、携帯ユニット2からのID信号の認証が行われる。
【0024】
次いで、運転席ドアのロック機構4のみが解錠(アンロック)された状態で、更に、運転席ドアの機械式スイッチ(リクエストSW)12が操作(ON)された場合(S7で「Yes」)に、車両の全ドアのロック機構を解錠させる(S8)。ただし、更なるリクエストSW11の操作の前に運転席ドアが開けられた場合(S5で「Yes」)には、上記処理は無効となる。また、更なるリクエストSW11の操作が、運転席ドアのロック機構4の解錠から第1の所定時間内に行われない場合(S6で「Yes」)にも、上記処理は無効となる。なお、ドアの開閉は、ドア開閉センサ6で検出される。
【0025】
また、運転席ドアのロック機構4のみが解錠されている場合(S4)に、運転席ドア以外のドア、ここでは助手席ドアのタッチセンサスイッチ11aが操作されると(S9で「Yes」)、全ドアのロック機構が解錠(アンロック)される(S10)。ここでは、助手席ドアのロック機構5が解錠される。ただし、助手席ドアのタッチセンサスイッチ11aが、運転席ドアのロック機構が選択的に解錠されてから、第2の所定時間内に、例えば、90秒以内に操作されない場合(S8で「Yes」)には、上記処理は無効となる。
なお、第2の所定時間は、第1の所定時間よりも長いことが望ましい。
【0026】
さらに、全ドアのロック機構が解錠されてから、第3の所定時間内に、例えば、30秒以内(S13で「No」)に、いずれのドアも開かない場合(S11で「Yes」)に、全ドアのロック機構が施錠される(S14)。このようにして、車両に誰も乗らない場合に、車両の全てのドアが施錠される。
【0027】
ただし、上記第3の所定時間は、図3のフローチャートのステップS9からの分岐「A」を経由する場合は、運転席ドアが解錠(S4)されてからの経過時間とする。また、第3の所定時間は、第1の所定時間よりも長く、かつ第2の所定時間よりも短いことが望ましい。
【0028】
なお、車両の何れかのドアのロック機構が解錠されている場合において(S1で「No」)、運転席ドアの機械式スイッチ(リクエストSW)12が操作されたときには(S15で「Yes」)、車両の全てのドアのロック機構が施錠される(S16)。これにより、全てのドアの施錠が容易かつ確実に行われる。
【0029】
上述した各実施形態においては、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組み合わせを行うことができ、これに限定されるものではない。例えば、第1〜第3の所定時間は、上記数値例に限定されず、任意好適な値とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態のスマートエントリシステムの構成を示すブロックである。
【図2】運転席ドアのドアハンドル付近を示す図である。
【図3】本発明の実施形態のスマートエントリシステムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1、1a スイッチ手段
2 携帯ユニット
3 車載ユニット
4 運転席ドアのロック機構
5 助手席ドアのロック機構
11、11a タッチセンサスイッチ
12、12a 機械式スイッチ
40 運転席ドア
41 ドアハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられたスイッチ手段と、
ID信号を送信する携帯ユニットと、
受信したID信号の認証が成立した場合に、ドアのロック機構を作動させる車載ユニットと、
を備え、
前記車載ユニットは、前記携帯ユニットによる解錠操作が行われた場合に、又は、運転席ドアのスイッチ手段が操作された場合に、運転席ドアのロック機構を選択的に解錠させ、更に、運転席ドアのロック機構の解錠から第1の所定時間内に、運転席ドアのスイッチ手段が操作された場合に、車両の全ドアのロック機構を解錠させる車両のスマートキーレスエントリシステムであって、
前記スイッチ手段は、ドアのドアハンドル内側のタッチセンサスイッチとドアハンドル近傍の機械式スイッチとから構成され、
前記車載ユニットは、運転席ドアのロック機構が選択的に解錠されている場合に、運転席ドア以外のドアのタッチセンサスイッチが操作されると、全ドアのロック機構を解錠させる、
ことを特徴とする車両のスマートキーレスエントリシステム。
【請求項2】
前記車載ユニットは、運転席ドアのロック機構が選択的に解錠されてから、第2の所定時間内に、運転席ドア以外のドアのタッチセンサスイッチが操作された場合に、全ドアのロック機構を解錠させる、
ことを特徴とする車両のスマートキーレスエントリシステム。
【請求項3】
前記車載ユニットは、全ドアのロック機構が解錠されてから、第3の所定時間内に、いずれのドアも開かない場合に、全ドアのロック機構を施錠させる、
ことを特徴とする車両のスマートキーレスエントリシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−228271(P2009−228271A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73876(P2008−73876)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】