説明

車両のトノカバー装置

【課題】前部ロッドと後部ロッドの位置関係を変更することにより、ラップ部に小物の荷物を保持可能な状態と、垂れ下がり部に大形の荷物を保持可能な状態とを任意に選択でき、簡単な構成で、荷物の大きさ、形状に対応したカバー形状をフレキシブルに変更可能な車両のトノカバー装置を提供する。
【解決手段】前端部と後端部とが車両に着脱可能に固定された布状のトノカバー20と、荷室の両サイドに設けられたガイドレール12と、トノカバー20に配設された複数のロッド22,23とを有し、トノカバー20は上下方向にラップするように折返されたラップ部20Lを備え、ラップ部20Lの折返し端部は車幅方向に延在し、上記折返し端部の前側と後側とに上記ロッド22,23が配設され、前側に配設された前部ロッド22と後側に配設された後部ロッド23の少なくとも一方が上記ガイドレール12,12間に前後方向に移動可能に架設されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両後方部に形成された荷室フロアを覆うトノカバーが備えられたような車両のトノカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後方部に形成された荷室を荷物の大きさ、形状に対応して区分け、または隠蔽するものとして、一般的にトノカバーが用いられている。
このようなトノカバーを備えた構造としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
すなわち、車両後方部に形成された荷室を前後方向に引出し可能なトノカバーで隠蔽自在としたものにおいて、上記荷室の両サイドにスライドレールを設けて、これら両サイドのスライドレール間に前後動自在なスライドシャフトを複数本張架する一方、トノカバーは、そのカバーシートの前後長さを上記スライドレールの長さより長くして、スライドシャフト間において垂れ下がるカバーシートの襞によって荷室を前後に区分けできるように構成したものである。
【0003】
この特許文献1に開示された従来構造においては、スライドシャフト間においてカバーシートが垂れ下がり、荷室を前後に区分けすることができる利点がある反面で、トノカバーの巻取り装置が必要不可欠となるので、重量が大きく、またコスト高となり、例えば、冊子、ノートなどの薄形の小物を収容するには、その保持部がなく、車両の走行中に車両振動により小物が動くという問題点があった。
【0004】
一方、特許文献2にはトノカバーに類似したネットを用いて荷物を収納する構造が開示されている。
すなわち、前後左右の枠と、この前後左右枠の中に張られたネット本体からなる下部ネットと、該下部ネットの上側に位置する上部押さえ具とからなる車内装備ネットであって、上記下部ネットと上記上部押さえ具(上部ネット)との間に荷物を収納可能と成したものである。
【0005】
この特許文献2に開示された従来構造においては、下部ネットと上部ネットとの間に荷物を収納することができる利点がある反面で、ネットが固定して使用されるものであるから、荷物の大きさや形状に対応したフレキシブルな収容部に変更することができない、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−283920号公報
【特許文献2】特開2007−182125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、荷室の両サイドに設けられたガイドレールと、トノカバーに配設された複数のロッドとを有し、上記トノカバーは上下方向にラップするように折返されたラップ部を備え、該ラップ部の折返し端部は車幅方向に延在し、折返し端部の前側と後側とに上記ロッドが配設され、前側に配設された前部ロッドと後側に配設された後部ロッドの少なくとも一方を上記ガイドレール間に前後方向に移動可能に架設することで、
前部ロッドと後部ロッドの位置関係を変更することにより、ラップ部に小物の荷物を保持可能な状態と、垂れ下がり部に大形の荷物を保持可能な状態とを任意に選択することができ、簡単な構成でありながら、荷物の大きさ、形状に対応したカバー形状をフレキシブルに変更可能な車両のトノカバー装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による車両のトノカバー装置は、車両後方部に形成された荷室フロアを覆うトノカバーを備えた車両のトノカバー装置であって、前端部と後端部とが車両に着脱可能に固定された布状のトノカバーと、荷室の両サイドに設けられたガイドレールと、上記トノカバーに配設された複数のロッドとを有し、上記トノカバーは上下方向にラップするように折返されたラップ部を備え、上記ラップ部の折返し端部は車幅方向に延在し、上記折返し端部の前側と後側とに上記ロッドが配設され、前側に配設された前部ロッドと後側に配設された後部ロッドの少なくとも一方が上記ガイドレール間に前後方向に移動可能に架設されたものである。
【0009】
上記構成によれば、前部ロッドと後部ロッドの位置関係(ロッド間の前後方向の間隔やロッドの車両前後方向の位置)を変更することで、上記ラップ部に小物の荷物を保持可能な状態と、垂れ下がり部に大形の荷物を保持可能な状態とを任意に選択することができて、簡単な構造でありながら、荷物の大きさ、形状に対応したカバー形状をフレキシブルに変更することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記前部ロッドと後部ロッドの少なくとも一方が車両前後方向への付勢手段を介して車体部材に支持されたものである。
上記構成によれば、垂れ下がり部に大形の荷物を保持した状態から、該大形の荷物を取出すと、付勢手段の付勢力により自動的にラップ部に小物の荷物が保持可能な状態となり、利便性の向上を図ることができる。またトノカバーの巻取り装置も不要となる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記前部ロッドは車両前方向への第1付勢手段を介して車体部材に支持され、上記後部ロッドは車両後方向への第2付勢手段を介して車体部材に支持されたものである。
上記構成によれば、前部ロッドと後部ロッドとの両方にそれぞれ付勢手段を設けたので、ラップ部に小物の荷物が保持可能な状態と、垂れ下がり部に大形の荷物が保持可能な状態との何れにおいても、トノカバーの形状の安定化を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記第2付勢手段の付勢力が、上記第1付勢手段の付勢力に対して強く設定されたものである。
上記構成によれば、第2付勢手段の付勢力が強いことにより、後部ロッドは車両後方に配設されることになる。これにより、上記ラップ部が後面ドア(リヤゲート、リフトゲート参照)寄りに形成され、小物荷物の出し入れが容易となる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ラップ部の開口部が車両後方側に向けて形成されたものである。
上記構成によれば、ラップ部の開口部が車両後方側に向けて形成されるので、後面ドア側からの荷物の出し入れが容易となり、利便性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、荷室の両サイドに設けられたガイドレールと、トノカバーに配設された複数のロッドとを有し、上記トノカバーは上下方向にラップするように折返されたラップ部を備え、該ラップ部の折返し端部は車幅方向に延在し、折返し端部の前側と後側とに上記ロッドが配設され、前側に配設された前部ロッドと後側に配設された後部ロッドの少なくとも一方を上記ガイドレール間に前後方向に移動可能に架設したので、前部ロッドと後部ロッドの位置関係を変更することにより、ラップ部に小物の荷物を保持可能な状態と、垂れ下がり部に大形の荷物を保持可能な状態とを任意に選択することができ、簡単な構成でありながら、荷物の大きさ、形状に対応したカバー形状をフレキシブルに変更することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のトノカバー装置を備えた車両の側面図
【図2】車両のトノカバー装置を示す平面図
【図3】図2の側面図
【図4】トノカバー装置を示す分解斜視図
【図5】図3のA‐A線矢視断面図
【図6】図3の部分拡大側面図
【図7】大形荷物収納時の平面図
【図8】図7の側面図
【図9】車両のトノカバー装置の他の実施例を示す分解斜視図
【図10】小物荷物収納時の斜視図
【図11】大形荷物収納時の斜視図
【図12】車両のトノカバー装置のさらに他の実施例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
前部ロッドと後部ロッドの位置関係を変更することにより、ラップ部に小物の荷物を保持可能な状態と、垂れ下がり部に大形の荷物を保持可能な状態とを任意に選択することができ、簡単な構成でありながら、荷物の大きさ、形状に対応したカバー形状をフレキシブルに変更可能に成すという目的を、車両後方部に形成された荷室フロアを覆うトノカバーを備えた車両のトノカバー装置において、前端部と後端部とが車両に着脱可能に固定された布状のトノカバーと、荷室の両サイドに設けられたガイドレールと、上記トノカバーに配設された複数のロッドとを有し、上記トノカバーは上下方向にラップするように折返されたラップ部を備え、上記ラップ部の折返し端部は車幅方向に延在し、上記折返し端部の前側と後側とに上記ロッドが配設され、前側に配設された前部ロッドと後側に配設された後部ロッドの少なくとも一方を上記ガイドレール間に前後方向に移動可能に架設するという構成にて実現した。
【実施例1】
【0017】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のトノカバー装置を示し、図1において、車室1内の前部にはフロントシート2を配設し、車室1内の後部にはリヤシート3(荷室11の直前に位置する最後列シート)を配設している。
フロントシート2は、前席乗員の着座面を形成するシートクッション4と、前席乗員の背もたれ面を形成するシートバック5と、前席乗員の頭部を保持するヘッドレスト9とを備えている。
同様に、リヤシート3は、後席乗員の着座面を形成するシートクッション7と、後席乗員の背もたれ面を形成するシートバック8と、後席乗員の頭部を保持するヘッドレスト9とを備えている。
上述のリヤシート3と、後面ドアとしてのリフトゲート10との間には荷室11が形成されており、該荷室11の底部には荷室フロアが形成されている。つまり、この荷室フロアは車両後方部に形成されたものである。
【0018】
図2は車両のトノカバー装置を示す平面図、図3はその側面図、図4はトノカバー装置の分解斜視図、図5は図3のA‐A線矢視断面図であって、図2〜図5に示すように、荷室11の左右両サイドには断面略C字状のガイドレール12,12を固定している。
【0019】
図5に示すように、このガイドレール12は内装部材としてのクオータトリム13の荷室11側に形成された凹部13aに配設されている。
上述のクオータトリム13はボディ側壁としてのクオータインナパネル14を覆うトリム部材で、クオータインナパネル14のガイドレール取付け部位には断面ハット形状のブラケット15を溶接固定し、このブラケット15の裏面に予めナット16を溶接固定して、クオータトリム13の凹部13aに配設されたガイドレール12とクオータトリム13とを、ボルト17を用いて上述のナット16に共締め固定している。
この実施例では、上述のガイドレール12の取付け高さを、図1に示すようにリヤシート3のヘッドレスト9下部の高さ位置に設定しているが、ガイドレール12の取付け高さ位置は、これに限定されるものではない。
【0020】
荷室フロアを覆う布状のトノカバー20を設ける一方、このトノカバー20を張設するために、図2〜図4に示すように、フロントエンドロッド21と、前部ロッド22と、後部ロッド23と、リヤエンドロッド24とを設けている。トノカバー20は、これら各ロッド21〜24の車幅方向の長さと略等しい車幅方向の長さを有する。
これらの各ロッド21,22,23,24は車幅方向に延びる直線状のロッドであり、これらの各ロッド21〜24の左右両端部には、ガイドレール12内を摺動する非転動のローラ25,26,27,28をそれぞれ一体的に取付けている。
上述のガイドレール12には各ロッド21〜24の車両前後方向への移動を許容する直線状のスリット29が形成されている。
また、フロントエンドロッド21およびリヤエンドロッド24には、各ロッド21,24のロッド軸と一体に車幅方向に延びる、一対かつ、鍔状のストッパ21a,21b、24a,24bが一体または一体的に形成されている。
【0021】
図4に示すように、上述のガイドレール12の前端部および後端部には、フロントエンドロッド21のストッパ21a,21bおよびリヤエンドロッド24のストッパ24a,24bを係止する係止部30と、フロントエンドロッド21を前方へ移動許容するリリース用の開口部31と、リヤエンドロッド24を後方へ移動許容するリリース用の開口部32とが形成されている。
ここで、ガイドレール12のスリット29は、ロッド21〜24の直径と対応する上下幅を有し、リリース用の開口部31,32の上下幅は、ローラ25,28の直径と対応する上下幅を有する。
【0022】
図2に示すように、左右のガイドレール12,12内に各ロッド21〜24のそれぞれのローラ25〜28が位置するように、合計4本のロッド21〜24を配設し、図3に示すように、トノカバー20の前端をその全幅にわたってフロントエンドロッド21に固定し、このトノカバー20を一旦、後部ロッド23に掛けて折返し、折返されたトノカバー20の中途部を前部ロッド22に掛けて再び折返した後に、該トノカバー20の後端をその全幅にわたってリヤエンドロッド24に固定している。
つまり、上述のトノカバー20は側面視において各ロッド21〜24間に略Z字状に架設したものであり、前部ロッド22と後部ロッド23との間には、トノカバー20が上下方向にオーバラップするように折返されたラップ部20Lが車幅方向に延在するように形成されている。
【0023】
図2,図4に示すように、フロントエンドロッド21のローラ25と、前部ロッド22のローラ26との間には、前部ロッド22を車両前方向へ付勢する第1付勢手段としての伸縮可能なエンドレス状のゴムベルト33を張架している。
また、リヤエンドロッド24のローラ28と、後部ロッド23のローラ27との間には、後部ロッド23を車両後方向へ付勢する第2付勢手段としての伸縮可能なエンドレス状のゴムベルト34を張架している。
ここで、後側のゴムベルト34(第2付勢手段)の付勢力を、前側のゴムベルト33(第1付勢手段)の付勢力に対して強く設定すると共に、上述のラップ部20Lの開口部35が車両後方側に向くように形成されている。
【0024】
図3に示すように、各ローラ25,26間および各ローラ27,28間に付勢手段としての伸縮可能なゴムベルト33,34を張架した時、フロントエンドロッド21のストッパ21a,21bが係止部30に係止され、また、図3,図6に示すように、リヤエンドロッド24のストッパ24a,24bが係止部30に係止されて、これら両エンドロッド21,24が位置決め固定されると共に、トノカバー20の前端部と後端部が、これら各ロッド21,24に固定保持される。
なお、フロントエンドロッド21を一旦前方へ移動した後に、該ロッド21を90度回転させると、ストッパ21a,21bが水平状となって、フロントエンドロッド21がスリット29に沿って移動可能となる。
同様に、リヤエンドロッド24を一旦後方へ移動した後に、該ロッド24を90度回転させると、ストッパ24a,24bが水平状となって、リヤエンドロッド24がスリット29に沿って移動可能となる。
【0025】
要するに、実施例1においては、前端部と後端部とが車両に着脱可能に固定された布状のトノカバー20と、荷室11の両サイドに設けられたガイドレール12と、上記トノカバー20に配設された複数のロッド22,23とを有し、上記トノカバー20は上下方向にラップするように折返されたラップ部20Lを備え、上記ラップ部20Lの折返し端部は車幅方向に延在し、上記折返し端部の前側と後側とに上記ロッド22,23が配設され、前側に配設された前部ロッド22と後側に配設された後部ロッド23の少なくとも一方(この実施例では両方)が上記ガイドレール12,12間に前後方向に移動可能に架設されている。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
【0026】
このように構成した車両のトノカバー装置の作用について、以下に説明する。
図2,図3,図6に示すように、フロントエンドロッド21およびリヤエンドロッド24はその位置が固定されており、かつ、後側のゴムベルト34の後方への付勢力と、前側のゴムベルト33の前方への付勢力とが各ロッド22,23を介してトノカバー20に付加されるので、該トノカバー20はその前後方向中間部にラップ部20Lを形成した状態で、側面視Z字状に張架される。
【0027】
この場合、後側のゴムベルト34の付勢力が、前側のゴムベルト33の付勢力よりも強いので、ラップ部20Lはトノカバー20の前後方向中間部のうちでもリフトゲート10寄りに形成され、かつラップ部20Lの開口部35が車両後方側に向けて形成されるので、上述のラップ部20Lに対して、冊子、ノートなどの薄形の小物をリフトゲート10側から容易に出し入れすることができ、利便性の向上を図ることができる。
【0028】
トノカバー20に大形の荷物Xを保持させる場合、図7,図8に示すように、後部ロッド23とリヤエンドロッド24との間のトノカバー20に対して、上方から大形の荷物Xを下方移動させると、この下方移動に伴ってトノカバー20は下方に垂れ下がり、これにより前後のゴムベルト33,34がその弾性力にて伸長して、ラップ部20Lの前後方向の長さが短くなって、図8に示す垂れ下がり部20Aに大形の荷物Xを保持した状態が得られる。
また、図7,図8に示す垂れ下がり部20Aに大形の荷物Xを保持した状態から、該大形の荷物Xを取出すと、付勢手段としてのゴムベルト33,34の付勢力により、トノカバー20は自動的に図2,図3に示す状態に復帰し、ラップ部20Lに小物の荷物が保持可能な状態となる。
【0029】
このように、図1〜図8で示した実施例1の車両のトノカバー装置は、車両後部に形成された荷室フロアを覆うトノカバー20を備えた車両のトノカバー装置であって、前端部と後端部とが車両に着脱可能に固定された布状のトノカバー20と、荷室11の両サイドに設けられたガイドレール12と、上記トノカバー20に配設された複数のロッド22,23とを有し、上記トノカバー20は上下方向にラップするように折返されたラップ部20Lを備え、上記ラップ部20Lの折返し端部は車幅方向に延在し、上記折返し端部の前側と後側とに上記ロッド22,23が配設され、前側に配設された前部ロッド22と後側に配設された後部ロッド23の少なくとも一方が上記ガイドレール12,12間に前後方向に移動可能に架設されたものである(図2,図3参照)。
【0030】
この構成によれば、前部ロッド22と後部ロッド23の位置関係(ロッド22,23間の前後方向の間隔やロッド22,23の車両前後方向の位置)を変更することで、上記ラップ部20Lに小物の荷物を保持可能な状態(図2,図3参照)と、垂れ下がり部20Aに大形の荷物Xを保持可能な状態(図7,図8参照)とを任意に選択することができて、簡単な構造でありながら、荷物の大きさ、形状に対応したカバー形状をフレキシブルに変更することができる。
また、上記前部ロッド22と後部ロッド23の少なくとも一方が車両前後方向への付勢手段(ゴムベルト33,34参照)を介して車体部材に支持されたものである(図2参照)。
【0031】
この構成によれば、垂れ下がり部20Aに大形の荷物Xを保持した状態(図7,図8参照)から、該大形の荷物Xを取出すと、付勢手段(ゴムベルト33,34参照)の付勢力により自動的にラップ部20Lに小物の荷物が保持可能な状態(図2,図3参照)となり、利便性の向上を図ることができる。またトノカバー20の巻取り装置も不要となる。
さらに、上記前部ロッド22は車両前方向への第1付勢手段(ゴムベルト33参照)を介して車体部材に支持され、上記後部ロッド23は車両後方向への第2付勢手段(ゴムベルト34参照)を介して車体部材に支持されたものである(図2参照)。
【0032】
この構成によれば、前部ロッド22と後部ロッド23との両方にそれぞれ付勢手段(ゴムベルト33,34参照)を設けたので、ラップ部20Lに小物の荷物が保持可能な状態(図2,図3参照)と、垂れ下がり部20Aに大形の荷物が保持可能な状態(図7,図8参照)との何れにおいても、トノカバー20の形状の安定化を図ることができる。
さらにまた、上記第2付勢手段(ゴムベルト34参照)の付勢力が、上記第1付勢手段(ゴムベルト33参照)の付勢力に対して強く設定されたものである(図2参照)。
【0033】
この構成によれば、第2付勢手段(ゴムベルト34参照)の付勢力が強いことにより、後部ロッド23は車両後方に配設されることになる。これにより、上記ラップ部20Lが後面ドア(リフトゲート10参照)寄りに形成され、小物荷物の出し入れが容易となる。
加えて、上記ラップ部20Lの開口部35が車両後方側に向けて形成されたものである(図2,図3参照)。
【0034】
この構成によれば、ラップ部20Lの開口部35が車両後方側に向けて形成されるので、後面ドア(リフトゲート10参照)側からの荷物の出し入れが容易となり、利便性の向上を図ることができる。
なお、この実施例1において乗員のニーズに対応して前側のゴムベルト33と後側のゴムベルト34とを入れ変えて、ロッド21,22間にゴムベルト34を配設し、ロッド23,24間にゴムベルト33を配設して、ラップ部20Lをリヤシート3寄りに形成してもよく、あるいは、ラップ部20Lの開口部35が車両前方側に向けて形成されるようにトノカバー20全体の配設構造を図示実施例に対して前後逆に構成してもよい。
【実施例2】
【0035】
図9,図10,図11は車両のトノカバー装置の他の実施例を示し、図9はその分解斜視図、図10は小物荷物収納時の斜視図、図11は大形荷物収納時の斜視図である。
図9〜図11で示すこの実施例2においては、リヤエンドロッド24とリフトゲート10(図1参照)側との間にリヤトノカバー20Rを設けたものである。
このリヤトノカバー20Rの後端部は、リフトゲート10の内面またはリフトゲートトリムの内面形状に対応して、曲率形状に形成されている。
また、図9に示すように、リヤトノカバー20Rの前端部は、その全幅にわたって、リヤエンドロッド24のストッパ24aの上端部リヤ面に固定される一方で、トノカバー20の後端部は、その全幅にわたって、リヤエンドロッド24のストッパ24bの下端部フロント面に固定されている。
さらに、上述のリヤトノカバー20Rの後端部中央には取手部36が一体的に形成されている。
【0036】
この実施例2においては、乗員が取手部36を把持してリヤトノカバー20Rを後方に引くと、リヤエンドロッド24が回動し、上下方向に指向していたストッパ24a,24bが水平状となることで、該リヤエンドロッド24の位置決め固定がリリースされて、リヤエンドロッド24はガイドレール12のスリット29に沿って前後方向に移動可能となるものである。
【0037】
この実施例2においても、図10に示すように、ラップ部20Lに小物の荷物を保持可能な状態と、図11に示すように、垂れ下がり部20Aに大形の荷物Xを保持可能な状態とを任意に選択することができて、簡単な構造でありながら、荷物の大きさ、形状に対応したトノカバー形状をフレキシブルに変更することができる。
【0038】
図9〜図11で示した実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例1と同様であるから、図9〜図11において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略するが、図10,図11において、37はクオータウインド、図11においてYはフロントエンドロッド21と後部ロッド23との間に張設されたトノカバー20上に載置した衣服などの他の荷物である。
【実施例3】
【0039】
図12は車両のトノカバー装置のさらに他の実施例を示す平面図であって、この実施例3においては、先の実施例1,2のゴムベルト33,34に代えて、前部ロッド22と後部ロッド23との間に付勢手段としてのコイルスプリング38(圧縮バネ)を設けたものである。
このコイルスプリング38は、前部ロッド22と後部ロッド23とが互いに近づこうとする時、反発力によって前部ロッド22と後部ロッド23とを引き離そうとするように付勢する付勢手段である。
【0040】
図12で示すこの実施例3においても、前端部と後端部とが車両に着脱可能に固定された布状のトノカバー20と、荷室11の両サイドに設けられたガイドレール12,12と、上記トノカバー20に配設された複数のロッド22,23とを有し、上記トノカバー20は上下方向にラップするように折返されたラップ部20Lを備え、上記ラップ部20Lの折返し端部は車幅方向に延在し、上記折返し端部の前側と後側とに上記ロッド22,23が配設され、前側に配設された前部ロッド22と後側に配設された後部ロッド23の少なくとも一方(この実施例では両方)が上記ガイドレール12,12間に前後方向に移動可能に架設されたものであって、先の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図12において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0041】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の第1付勢手段は、実施例のゴムベルト33に対応し、
以下同様に、
第2付勢手段は、ゴムベルト34に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては第2列目シートと後面ドアとの間において荷室フロアを覆うトノカバーを設けたが、これは荷室直前に位置する最後列シートと後面ドアとの間において荷室フロアを覆うように設けてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
11…荷室
12…ガイドレール
20…トノカバー
20L…ラップ部
22…前部ロッド
23…後部ロッド
33…ゴムベルト(第1付勢手段)
34…ゴムベルト(第2付勢手段)
35…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後方部に形成された荷室フロアを覆うトノカバーを備えた車両のトノカバー装置であって、
前端部と後端部とが車両に着脱可能に固定された布状のトノカバーと、
荷室の両サイドに設けられたガイドレールと、
上記トノカバーに配設された複数のロッドとを有し、
上記トノカバーは上下方向にラップするように折返されたラップ部を備え、
上記ラップ部の折返し端部は車幅方向に延在し、
上記折返し端部の前側と後側とに上記ロッドが配設され、
前側に配設された前部ロッドと後側に配設された後部ロッドの少なくとも一方が上記ガイドレール間に前後方向に移動可能に架設された
車両のトノカバー装置。
【請求項2】
上記前部ロッドと後部ロッドの少なくとも一方が車両前後方向への付勢手段を介して車体部材に支持された
請求項1記載の車両のトノカバー装置。
【請求項3】
上記前部ロッドは車両前方向への第1付勢手段を介して車体部材に支持され、
上記後部ロッドは車両後方向への第2付勢手段を介して車体部材に支持された
請求項1記載の車両のトノカバー装置。
【請求項4】
上記第2付勢手段の付勢力が、上記第1付勢手段の付勢力に対して強く設定された
請求項3記載の車両のトノカバー装置。
【請求項5】
上記ラップ部の開口部が車両後方側に向けて形成された
請求項1〜4の何れか1項に記載の車両のトノカバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−32102(P2013−32102A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169199(P2011−169199)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】