説明

車両のブレーキ装置

【課題】キングピン軸を中心に操向可能な車輪に対するブレーキ系の配索(配管や配線)において、車輪の操向に伴って配索がタイヤや周辺部品と干渉するのを防止する。
【解決手段】ブレーキ回路は、車体側に支持される第1の配管部分21と、同じく車輪側に支持される第2の配管部分22と、これらを継ぐ第3の配管部分21と、からなり、第3の配管部分22との接続部25aと第2の配管部分21との接続部25bを持つコネクタ25を備えるものにあって、コネクタ25は、キングピン軸を中心に操向可能な車輪10側に対し、第3の配管部分22との接続部25aの軸線がキングピン軸の延長線と合致する配置状態に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のブレーキ装置に関する。詳しくは、キングピン軸を中心に操向可能な車輪に対するブレーキ系の配索(配管や配線)の改良技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ装置においては、キングピン軸を中心に操向可能な車輪のブレーキアクチュエータに対し、ブレーキ圧の給排を制御するブレーキ回路の車体側配管(車体側に支持される配管部分)から車輪側のブレーキアクチュエータへ延びる配管部分が、車輪の操向に追従可能なフレキシブルなホースから構成される(特許文献1,特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−370641号
【特許文献2】特開2006−193056号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ブレーキ回路の車体側配管から車輪側のブレーキアクチュエータへ延びる配管部分を構成するホースは、車輪の操向に伴う変形(弛み)が大きくなる(車輪の操向角が大きくなり、ブレーキ回路の車体側配管とブレーキアクチュエータとの距離が縮小する)と、タイヤや周辺部品と干渉して損傷を受ける可能性が考えられる。
【0004】
ブレーキ装置がABS機能を備える場合、車体側に配置されるABSコントロールユニットと、キングピン軸を中心に操向可能な車輪側に配置される回転(車輪速)センサと、の間を接続する配線についても、車輪の操向角が大きくなり、車輪速センサと車体側配線(車体側に支持される配線部分)の最終支持点との距離が縮小すると、弛み量が大きくなり、タイヤや周辺部品と干渉して損傷を受ける可能性が考えられる。
【0005】
この発明は、このような不具合を防止するための有効な手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、車輪側に配置されるブレーキアクチュエータと、車輪側のブレーキアクチュエータに対するブレーキ圧の給排を制御するブレーキ回路と、を備える車両のブレーキ装置において、キングピン軸を中心に操向可能な車輪側に対し、ブレーキ回路の車体側配管から車輪側のブレーキアクチュエータへ延びる配管の途中をその軸線がキングピン軸の延長線上を通るように支持したことを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に係る車両のブレーキ装置において、配管の途中は、キングピン軸の延長線回りを回転自在な支持状態に設定したことを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、車輪側に配置されるブレーキアクチュエータと、車輪側のブレーキアクチュエータに対するブレーキ圧の給排を制御するブレーキ回路と、を備える車両のブレーキ装置において、ブレーキ回路は、車体側に支持される第1の配管部分と、同じく車輪側に支持される第2の配管部分と、これらを継ぐ第3の配管部分と、からなり、第3の配管部分との接続部と第2の配管部分との接続部を持つコネクタを備えるものにあって、コネクタは、キングピン軸を中心に操向可能な車輪側に対し、第3の配管部分との接続部の軸線がキングピン軸の延長線と合致する配置状態に設定したことを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第3の発明に係る車両のブレーキ装置において、コネクタは、第3の配管部分との接続部がキングピン軸の延長線回りを回転自在な支持状態に設定したことを特徴とする。
【0010】
第5の発明は、車輪側に配置されるブレーキアクチュエータと、車輪の回転速度を検出する回転センサと、回転センサの検出信号に基づいて車輪がロックしないように車輪側のブレーキアクチュエータに対するブレーキ圧を制御するABSコントロールユニットと、を備える車両のブレーキ装置において、キングピン軸を中心に操向可能な車輪側に対し、車体側に配置されるABSコントロールユニットと車輪側に配置される回転センサとの間を接続するハーネスの途中をその軸線がキングピン軸の延長線上を通るように支持したことを特徴とする。
【0011】
第6の発明は、第5の発明に係る車両のブレーキ装置において、ハーネスの途中は、キングピン軸の延長線回りを回転自在な支持状態に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明においては、配管の途中は車輪側にその軸線がキングピン軸の延長線上を通るように支持されるので、この支持点と車体側配管との位置関係が車輪の操向に伴って変化するようなことはなく、その間の配索状態が車両の操向に対して一定に保たれるため、タイヤや周辺部品との干渉を有効に防止できるようになる。
【0013】
第2の発明においては、車輪側に配管の途中が固定的に支持されると、この支持点から車体側配管へ至る部分が車輪の操向に伴って捻れることになるので、配管の途中をその軸線回り(キングピン軸の延長線回り)に回転自在な支持状態に設定することにより、配管が車輪の操向に伴う捻れの発生を防止することができる。
【0014】
第3の発明においては、コネクタは車輪側に第3の配管部分との接続部の軸線がキングピン軸の延長線と合致する配置状態に設定されるので、この接続部と車体側配管との位置関係が車輪の操向に伴って変化するようなことはなく、その間の配索状態が車両の操向に対して一定に保たれるため、タイヤや周辺部品との干渉を有効に防止できるようになる。
【0015】
第4の発明においては、第3の配管部分との接続部がその軸線回り(キングピン軸の延長線回り)に回転自在な支持状態に設定されるので、第3の配管部分が車輪の操向に伴って捻れるのを防止することができる。
【0016】
第5の発明においては、ハーネスの途中は車輪側にその軸線がキングピン軸の延長線上を通るように支持されるので、この支持点と車体側配線(車体側に支持される配線部分)の最終支持点との位置関係が車輪の操向に伴って変化するようなことはなく、その間の配索状態が車両の操向に対して一定に保たれるため、タイヤや周辺部品との干渉を有効に防止できるようになる。
【0017】
第6の発明においては、ハーネスの途中はその軸線回り(キングピン軸の延長線回り)に回転自在な支持状態に設定されるので、ハーネスが車輪の操向に伴って捻れるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図に基づいて、この発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1は、サスペンションに空気ばねを用いるバスへの適用例を表すものであり、10は前輪であり、11は後輪であり、各輪10,11の内側にブレーキ装置が収装される。この場合、ブレーキ装置は、ブレーキドラムと、ブレーキシューと、ブレーキアクチュエータと、を備えるドラムブレーキが用いられる。ブレーキ回路は、ブレーキペダルに連動するブレーキバルブ12を含めて構成され、ブレーキペダルの踏量に応じたブレーキ圧を各輪10,11のブレーキアクチュエータへ供給するようになっている。
【0020】
図2〜図5において、15は前輪10のフロントアクスルであり、その両端にステアリングナックル16がキングピン(図示せず)を介して回転自在に取り付けられる。タイヤ10aは、キングピン回りを操向可能かつステアリングナックル16のスピンドル17(図4,5、参照)回りを回転自在に支持される。18はステアリングナックル16に締結されるバックプレートであり、ブレーキシューおよびブレーキアクチュエータが配置される。
【0021】
ブレーキ回路の配索については、車体側に支持される配管部分20(第1の配管部分)と、車輪側に支持される配管部分(第2の配管部分)と、これらを継ぐ配管部分22(第3の配管部分)と、から構成される(図1、参照)。
【0022】
25は配管部分22の一端と車輪側の配管部分21との間を継ぐコネクタであり、配管部分22の一端との接続部25aの軸線がキングピン軸の延長線と合致する配置状態にブラケット26を介してステアリングナックル16のキングピン支持部16aに取り付けられる。つまり、配管部分22は、その軸線がキングピン軸の延長線上を通るように支持される。
【0023】
コネクタ25は、配管部分22との接続部25aを持つ管部分が、配管部分21との接続部25bを持つ管部分に対し、キングピン軸の延長線回りを回転自在に構成され、配管部分21との接続部25bを持つ管部分が、ブラケット26を介してステアリングナックル16のキングピン支持部16aに固定される。
【0024】
30は車体1(図1、参照)を懸架するサスペンションの空気ばね(図示せず)を支持するシート部であり、配管部分22の途中を支持するブラケット31がシート部30に備えられる。配管部分22は、2本のホース22a,22bからなり、これらを継ぐ接続金具32(パイプ)がブラケット31に支持される。つまり、ホース22bは、空気ばねの伸縮に追従して変形する(サスペンションストロークを吸収する)一方、ホース22aは、空気ばねの伸縮に伴う変形を受けないようになっている。
【0025】
このような構成により、コネクタ25は、ステアリングナックル16において、配管部分22との接続部25aの軸線がキングピン軸の延長線と合致する配置状態に設定されるので、配管部分22との接続部25aとブラケット31の接続金具32との位置関係が車輪の操向に伴って変化するようなことはなく、ホース22aの配索状態が車輪の操向きに対して一定に保たれるため、タイヤや周辺部品との干渉を有効に防止することができる。
【0026】
コネクタ25は、配管部分22との接続部25aを持つ管部分が、ステアリングナックル16側に固定の管部分(配管部分21との接続部25bを持つ)に対し、キングピン軸の延長線回りを回転自在に構成されるので、ホース22aが車輪10の操向に伴って捻られることもなくなり、ホース22aとタイヤ10aや周辺部品との干渉を一段と有効に防止することができる。
【0027】
タイヤ10aの内側に収装されるブレーキ装置は、2つのブレーキアクチュエータを備えるが、ブレーキアクチュエータが1つの場合、コネクタ25において、車輪側に支持される配管部分21は1系統となるので、配管部分21との接続部25bも1つとなる。ブレーキ装置として、ディスクブレーキを用いる場合においても、コネクタを用いてブレーキ回路の配索状態を前記と同様に設定することにより、車輪10の操向に伴ってホース22aがタイヤ10aや周辺部品と干渉するのを有効に防止することができる。
【0028】
図6は、別の実施形態を説明するものであり、コネクタ25は、ステアリングナックル16に形成される。25aは配管部分22との接続部であり、25bは配管部分21との接続部であり、配管部分22との接続部25aは、その軸線回り(キングピン軸の延長線回り)を回転自在に組み付けられる。図6において、図2〜図5と実質的に同一の部位は、同一の符合を付ける。
【0029】
ブレーキ装置がABS(アンチロックブレーキシステム)機能を備える場合、タイヤの内側に配置される回転センサ(車輪速センサ)と、車体側に配置されるABSコントロールユニットと、の間を接続するABSハーネスについても、図示しないが、車体側に支持される配線部分から車輪側に支持される配線部分へ延びるハーネス(ケーブル)の途中にグロメットを嵌着する一方、このグロメットをキングピン軸の延長線回りを回転自在に支持するブラケットをステアリングナックルに取り付けることにより、車輪の操向に伴ってハーネスがタイヤや周辺部品と干渉するのを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】バスのブレーキ系の概略図である。
【図2】前輪まわりの構成を説明する斜視図である。
【図3】ステアリングナックルの正面図である。
【図4】ステアリングナックルの平面図である。
【図5】ステアリングナックルの側面図である。
【図6】前輪まわりの構成を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
10 前輪
10a タイヤ
12 ブレーキバルブ
15 フロントアクスル
17 ナックルスピンドル
20 第1の配管部分
21 第2の配管部分
22 第3の配管部分
22a、22b ホース
25 コネクタ
25a 第3の配管部分との接続部
25b 第2の配管部分との接続部
26 ブラケット
30 空気ばねのシート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪側に配置されるブレーキアクチュエータと、車輪側のブレーキアクチュエータに対するブレーキ圧の給排を制御するブレーキ回路と、を備える車両のブレーキ装置において、キングピン軸を中心に操向可能な車輪側に対し、ブレーキ回路の車体側配管から車輪側のブレーキアクチュエータへ延びる配管の途中をその軸線がキングピン軸の延長線上を通るように支持したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
【請求項2】
配管の途中は、キングピン軸の延長線回りを回転自在な支持状態に設定したことを特徴とする請求項1の記載に係る車両のブレーキ装置。
【請求項3】
車輪側に配置されるブレーキアクチュエータと、車輪側のブレーキアクチュエータに対するブレーキ圧の給排を制御するブレーキ回路と、を備える車両のブレーキ装置において、ブレーキ回路は、車体側に支持される第1の配管部分と、同じく車輪側に支持される第2の配管部分と、これらを継ぐ第3の配管部分と、からなり、第3の配管部分との接続部と第2の配管部分との接続部を持つコネクタを備えるものにあって、コネクタは、キングピン軸を中心に操向可能な車輪側に対し、第3の配管部分との接続部の軸線がキングピン軸の延長線と合致する配置状態に設定したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
【請求項4】
コネクタは、第3の配管部分との接続部がキングピン軸の延長線回りを回転自在な支持状態に設定したことを特徴とする請求項3の記載に係る車両のブレーキ装置。
【請求項5】
車輪側に配置されるブレーキアクチュエータと、車輪の回転速度を検出する回転センサと、回転センサの検出信号に基づいて車輪がロックしないように車輪側のブレーキアクチュエータに対するブレーキ圧を制御するABSコントロールユニットと、を備える車両のブレーキ装置において、キングピン軸を中心に操向可能な車輪側に対し、車体側に配置されるABSコントロールユニットと車輪側に配置される回転センサとの間を接続するハーネスの途中をその軸線がキングピン軸の延長線上を通るように支持したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
【請求項6】
ハーネスの途中は、キングピン軸の延長線回りを回転自在な支持状態に設定したことを特徴とする請求項5の記載に係る車両のブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−52536(P2010−52536A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218360(P2008−218360)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】