車両の側部車体構造
【課題】車両の側部車体構造において、フロントピラー及びサイドシル全体を補強することなく、少ない部品点数で、ドア開口部における車体の変形を抑える技術を提供する。
【解決手段】車両前後方向に延びるサイドシル3と、サイドシル3の前端部から上方に延びる下側フロントピラー5とを備えた車両の側部車体構造である。開断面状のサイドシルレイン33と、後壁部35cにおける下端部がサイドシルレイン33の頂壁部33bに接続されるフロントピラーレイン35と、サイドシルレイン33と閉断面を形成するガセット部材53と、サイドシル3と下側フロントピラー5との間に挟まれる、フロントドア開口部39のコーナー部に対応する部位57に設けられた第1補強部材43と、をさらに備えている。ガセット部材53の前端が、フロントピラーレイン35の後壁部35cにおける下端部近傍に位置している。
【解決手段】車両前後方向に延びるサイドシル3と、サイドシル3の前端部から上方に延びる下側フロントピラー5とを備えた車両の側部車体構造である。開断面状のサイドシルレイン33と、後壁部35cにおける下端部がサイドシルレイン33の頂壁部33bに接続されるフロントピラーレイン35と、サイドシルレイン33と閉断面を形成するガセット部材53と、サイドシル3と下側フロントピラー5との間に挟まれる、フロントドア開口部39のコーナー部に対応する部位57に設けられた第1補強部材43と、をさらに備えている。ガセット部材53の前端が、フロントピラーレイン35の後壁部35cにおける下端部近傍に位置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前後方向に延びるサイドシルと、当該サイドシルの前端部から上方に延びるフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドア開口部の車体の剛性を高めるべく、車両のドア開口部の下縁を規定する閉断面状のサイドシルの内部や、車両のドア開口部の前縁を規定する閉断面状のフロントピラーの内部にレインフォースメントを設けることが知られており、例えば、特許文献1には、フロントピラーとサイドシルとの結合部剛性を高めるべく、フロントピラーとサイドシルの各閉断面が交差する位置に、レインフォースメントに作用する最大剪断応力作用線δ方向に対して直線となる抗力面を形成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−192967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のものでは、フロントピラーとサイドシルとの結合部の剛性は高められるものの、車両衝突時におけるかかる結合部以外の部位の変形、例えば、フロントピラーがくの字に折れ曲がったり、サイドシルが座屈してフロントピラーが後方へさがったりするような車体の変形を抑えることは困難である。
【0005】
そこで、車両衝突時におけるフロントピラー及びサイドシルの様々な変形に対応するべく、サイドシル、フロントピラー及びこれら内部に設けられるレインフォースメントの板厚を全体的に厚くしたり、補強部材によってフロントピラー及びサイドシル全体を補強することも考えられるが、これらの補強構造では、製造コスト及び車体重量が増大するという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両前後方向に延びるサイドシルと、当該サイドシルの前端部から上方に延びるフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造において、フロントピラー及びサイドシル全体を補強することなく、少ない部品点数で、車両のドア開口部における車体の変形を抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明では、フロントピラーに入力した荷重を、当該フロントピラーを前方又は後方に倒すようなモーメントとして当該フロントピラーに作用させるとともに、かかるモーメント力に抗するように作用する補強部材を、フロントピラー及びサイドシルに設けるようにしている。
【0008】
具体的には、第1の発明は、車両のドア開口部の下縁を規定する、車両前後方向に延びる閉断面状のサイドシルと、車両のドア開口部の前縁を規定する、当該サイドシルの前端部から上方に延びる閉断面状のフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造を対象とする。
【0009】
そして、上記サイドシル内部を車両前後方向に延びる開断面状のサイドシルレインフォースメントと、上記フロントピラー内部を上下方向に延び、少なくともその後側部分における下端部が上記サイドシルレインフォースメントの上側部分に接続されるピラーレインフォースメントと、上記サイドシルの前端近傍部で、上記開断面状のサイドシルレインフォースメントの断面開口側に取り付けられて、当該サイドシルレインフォースメントと閉断面を形成するガセット部材と、上記サイドシルと上記フロントピラーとの間に挟まれる、上記ドア開口部のコーナー部に対応する部位に、当該サイドシル及び当該フロントピラーの内側面に沿うように連結された内側補強部材と、をさらに備え、上記ガセット部材の前端が、上記ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部近傍に位置していることを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明では、開断面状のサイドシルレインフォースメントの断面開口側にガセット部材が取り付けられて、当該ガセット部材と当該サイドシルレインフォースメントとが閉断面を形成することにより、サイドシルレインフォースメントの前端近傍部では剛性が向上している。
【0011】
そうして、ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部は、サイドシルレインフォースメントの上側部分に接続されているとともに、その近傍にガセット部材の前端が位置していることから、換言すると、ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部は、剛性が向上した部位の前端に接続されていることから、ピラーレインフォースメントに前方又は後方から荷重が入力すると、かかる後側部分における下端部を回転中心として、ピラーレインフォースメントを後方又は前方に倒すようなモーメントが発生する。
【0012】
言い換えると、フロントピラーに入力した荷重がピラーレインフォースメントに伝わると、かかる荷重は、ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部を回転中心とする、車幅方向から見て時計回り又は反時計回りのモーメント力としてピラーレインフォースメントに作用し、かかるモーメント力がフロントピラーに伝達されることになる。
【0013】
ここで、サイドシルとフロントピラーとの間に挟まれる、ドア開口部のコーナー部に対応する部位には、内側補強部材がサイドシル及びフロントピラーの内側面に沿うように連結されていることから、フロントピラーが前方に倒れようとする場合にはかかる内側補強部材が引張力に抗するように作用する一方、フロントピラーが後方に倒れようとする場合にはかかる内側補強部材が圧縮力に抗するように作用するので、フロントピラーの前後方向への倒れ込みを抑えることができる。
【0014】
以上により、フロントピラー及びサイドシル全体を補強することなく、少ない部品点数で、車両のドア開口部における車体の変形を抑えることができる。
【0015】
第2の発明は、車両のドア開口部の下縁を規定する、車両前後方向に延びる閉断面状のサイドシルと、車両のドア開口部の前縁を規定する、当該サイドシルの前端部から上方に延びる閉断面状のフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造であって、上記サイドシル内部を車両前後方向に延びる開断面状のサイドシルレインフォースメントと、上記フロントピラー内部を上下方向に延び、少なくともその後側部分における下端部が上記サイドシルレインフォースメントの上側部分に接続されるピラーレインフォースメントと、上記サイドシルの前端近傍部で、上記開断面状のサイドシルレインフォースメントの断面開口側に取り付けられて、当該サイドシルレインフォースメントと閉断面を形成するガセット部材と、上記サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部分と、上記ピラーレインフォースメントの下端部における前側部分とを連結する外側補強部材と、をさらに備え、上記ガセット部材の前端が、上記ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部近傍に位置していることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明では、上記第1の発明と同様、フロントピラーに前方又は後方から荷重が入力すると、フロントピラーを後方又は前方に倒すようなモーメントが発生するところ、サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部分と、ピラーレインフォースメントの下端部における前側部分とは、外側補強部材によって連結されていることから、フロントピラーが前方に倒れようとする場合にはかかる外側補強部材が圧縮力に抗するように作用する一方、フロントピラーが後方に倒れようとする場合にはかかる外側補強部材が引張力に抗するように作用する。これにより、フロントピラーの前後方向への倒れ込みを抑えることができる。
【0017】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部位と、上記ピラーレインフォースメントの下端部における前側部位とを連結する外側補強部材をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0018】
第3の発明によれば、ドア開口部のコーナー部に対応する部位に、サイドシル及びフロントピラーの内側面に沿うように内側補強部材が連結されているとともに、サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部分と、ピラーレインフォースメントの下端部における前側部分とが、外側補強部材によって連結されていることから、フロントピラーの前後方向への倒れ込みをより確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る車両の側部車体構造によれば、ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部が、ガセット部材によって剛性が向上した部位の前端に接続されていることから、フロントピラーに入力した荷重は、かかる後側部分における下端部を回転中心とする、ピラーレインフォースメントを後方又は前方に倒すようなモーメントとしてフロントピラーに伝達されるところ、サイドシルとフロントピラーとの間に挟まれる、ドア開口部のコーナー部に対応する部位には、内側補強部材がサイドシル及びフロントピラーの内側面に沿うように連結されていることから、かかる内側補強部材がモーメントによる引張力又は圧縮力に抗するように作用するので、フロントピラーの前後方向への倒れ込みを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る、フロントドア開口部を構成する側部車体を車室外から見た斜視図である。
【図2】車室内から見た、側部車体の側面図である。
【図3】図2に示す側部車体からインナパネルの一部を取り外した状態を示す側面図である。
【図4】サイドシルレインフォースメントの前端部を示す斜視図である。
【図5】サイドシルの構造を模式的に示す断面図である。
【図6】フロントピラーレインフォースメントを示す斜視図である。
【図7】サイドシルとフロントピラーとの接続部を斜め下方から見た斜視図である。
【図8】サイドシルとフロントピラーとの接続部を斜め上方から見た斜視図である。
【図9】ガセットを示す図であり、同図(a)は正面図であり、同図(b)は斜視図である。
【図10】サイドシルとフロントピラーとの接続部の拡大図である。
【図11】側部車体における力の伝わり方を模式的に説明する図である。
【図12】第1補強部材を示す斜視図である。
【図13】第2補強部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る、フロントドア開口部を構成する側部車体を車室外から見た斜視図であり、図2は、車室内から見た、側部車体の側面図である。この側部車体1は、車両前後方向に延びるサイドシル3と、当該サイドシル3の前端部から上方に延びる下側フロントピラー5と、当該下側フロントピラー5の上端から上方に行くほど後方に延びる上側フロントピラー7と、当該上側フロントピラー7の後端から後方に延びるルーフサイドレール9と、ルーフサイドレール9の車両前後方向中央部とサイドシル3の車両前後方向中央部とを結ぶセンタピラー21と、を備えている。そうして、前輪37の後方に形成されたフロントドア開口部39は、サイドシル3によって下縁が、下側フロントピラー5によって前縁が、上側フロントピラー7及びルーフサイドレール9によって上縁が、センタピラー21によって後縁がそれぞれ規定されている。
【0023】
これらサイドシル3、下側フロントピラー5、上側フロントピラー7、ルーフサイドレール9及びセンタピラー21は、アウタパネル11とインナパネルとを接合することによってそれぞれ閉断面状に形成されている。
【0024】
より詳しくは、アウタパネル11は、図1に示すように、サイドシル3、下側フロントピラー5、上側フロントピラー7、ルーフサイドレール9及びセンタピラー21にそれぞれ対応する、サイドシル部13、下側フロントピラー部15、上側フロントピラー部17、ルーフサイドレール部19及びセンタピラー部31を備えており、本実施形態では1枚の板金からプレス成形によって形成されている。これらサイドシル部13、下側フロントピラー部15、上側フロントピラー部17、ルーフサイドレール部19及びセンタピラー部31はいずれも、車幅方向外側に突出し且つフランジ部を有する断面略ハット状とされている。
【0025】
インナパネルを構成するサイドシルインナ23、コーナーパネル47、フロントピラーインナロア25、フロントピラーインナアッパ27、ルーフサイドレールインナ29及びセンタピラーインナ41は、いずれも車幅方向内側に突出し且つフランジ部を有する断面略ハット状とされている。
【0026】
そうして、アウタパネル11のフランジ部と各インナパネル23,25,27,29,41,47のフランジ部とを接合することによって、サイドシル部13とサイドシルインナ23及びコーナーパネル47の下部47aとで閉断面状のサイドシル3が形成され、下側フロントピラー部15とフロントピラーインナロア25及びコーナーパネル47の上部47bとで閉断面状の下側フロントピラー5が形成され、上側フロントピラー部17とフロントピラーインナアッパ27とで閉断面状の上側フロントピラー7が形成され、ルーフサイドレール部19とルーフサイドレールインナ29とで閉断面状のルーフサイドレール9が形成され、センタピラー部31とセンタピラーインナ41とで閉断面状のセンタピラー21が形成されている。
【0027】
これら閉断面状のサイドシル3、下側フロントピラー5、上側フロントピラー7、ルーフサイドレール9及びセンタピラー21の内部には、レインフォースメントがそれぞれ設けられており、これにより、フロントドア開口部39を構成する側部車体1の剛性が高められている。なお、図2の符号49は、フロントピラーインナロア25とフロントピラーインナアッパ27とを連結するためのプレートである。
【0028】
図3は、図2に示す側部車体からサイドシルインナ、コーナーパネル及びフロントピラーインナロアを取り外した状態を示す側面図である。図3に示すように、閉断面状のサイドシル3の内部には車両前後方向に延びるサイドシルレインフォースメント(以下、サイドシルレインという。)33が、また、閉断面状の下側フロントピラー5の内部には上下方向に延びるフロントピラーレインフォースメント(以下、フロントピラーレインという。)35がそれぞれ設けられている。なお、下側及び上側フロントピラー5,7のうち下側フロントピラー5が、本発明で言うところのフロントピラーにあたる。
【0029】
サイドシルレイン33は、図4に示すように、車両前後方向に延びる側壁部33aと、側壁部33aの上端部から車幅方向内側に延びる頂壁部(上側部分)33bと、側壁部33aの下端部から車幅方向内側に延びる底壁部33cと、頂壁部33bの車幅方向内側の端部から上方に延びる上側フランジ部33dと、底壁部33cの車幅方向内側の端部から下方に延びる下側フランジ部33eとを有していて、車両前後方向からみて断面略ハット状(開断面状)に形成されている。なお、底壁部33cの先端は、図5に示すように、頂壁部33bの先端よりも車幅方向内側に延びている。また、頂壁部33bの前端部は上方に延びるように折り曲げられており、これにより、前側取付部33fが形成されている。
【0030】
このサイドシルレイン33は、図5に示すように、その上側フランジ部33dがサイドシル部13の上側フランジ部13aとサイドシルインナ23の上側フランジ部23aとの間に挟まれ、且つ、その下側フランジ部33eがサイドシル部13の下側フランジ部13bとサイドシルインナ23の下側フランジ部23bとの間に挟まれた状態で、サイドシル3に接合されており、これにより、サイドシル3の内部には2つの閉断面部が形成されている。また、前側取付部33fは、後述するフロントピラーレイン35の前壁部35bにおける車両前後方向後側の面に取り付けられている(図8参照)。なお、図5中の符号77は、フロアパネルを示す。
【0031】
フロントピラーレイン35は、図6に示すように、上下方向に延びる側壁部35aと、側壁部35aの前端部から車幅方向内側に延びる前壁部35bと、側壁部35aの後端部から車幅方向内側に延びる後壁部(後側部分)35cとを有していて、断面略コ字状に形成されている。また、前壁部35bの上端部には、上方に延びる上側取付部35dが形成されている一方、後壁部35cの下端部には、前方に延びる下側取付部35eが形成されている。
【0032】
このフロントピラーレイン35は、上側及び下側フランジ部33d,33eを、サイドシル部13とサイドシルインナ23のフランジ部13a,13b,23a,23bで挟むようにしてサイドシル3に接合されるサイドシルレイン33とは異なり、図7及び図8に示すように、閉断面状の下側フロントピラー5の内部を上下に仕切るように設けられた取付部材55を介して下側フロントピラー5に取り付けられている。
【0033】
この取付部材55は、下側フロントピラー5の内側に取付固定される上側プレート部65と、主としてフロントピラーレイン35と接続される下側プレート部75とを備えている。この上側プレート部65は、略矩形板状の本体部65aと、本体部65aの車幅方向内側且つ車両前後方向後側の端部から後方に延びる延出部65bとを有しており、本体部65aの車幅方向外側の端部が下側フロントピラー部15の側壁部15aから車幅方向内側に突設された突条部15fに連結されるとともに、延出部65bが下側フロントピラー部15の後側フランジ部15eから車幅方向内側に突設された突条部15gに連結されることで、下側フロントピラー5の内側に取付固定されている。
【0034】
一方、下側プレート部75は、略矩形板状の本体部75aと、本体部75aの前端部を上方に折り曲げることで形成された前側取付部75bと、本体部75aの後端部を下方に折り曲げることで形成された後側取付部75cと、本体部75aの車幅方向外側の端部を下方に折り曲げることで形成された外側取付部75dと、本体部75aの車幅方向内側の端部を上方に折り曲げることで形成された内側取付部75eとを有しており、本体部75aの上面と上側プレート部65の本体部65aの下面とを接合するとともに、内側取付部75eをフロントピラーインナロア25の内側面に取り付けることで、下側フロントピラー5の内側に取付固定されている。
【0035】
そうして、フロントピラーレイン35は、その上側取付部35dに下側プレート部75の前側取付部75bが、その側壁部35aの上端部に下側プレート部75の外側取付部75dが、その後壁部35cの上端部に下側プレート部75の後側取付部75cがそれぞれ取り付けられることによって、取付部材55を介して、下側フロントピラー5に取り付けられている。また、フロントピラーレイン35は、その下側取付部35eがサイドシルレイン33の頂壁部33bの上面に取り付けられることで、その後壁部35cにおける下端部がサイドシルレイン33の頂壁部33bに接続されている。
【0036】
このように、サイドシルレイン33をサイドシル3の内部に、また、フロントピラーレイン35を下側フロントピラー5の内部にそれぞれ設けることで、これらサイドシル3及び下側フロントピラー5の剛性が高められているが、本実施形態では、サイドシル3の前端部の剛性をさらに高めるべく、図7及び図8に示すように、サイドシルレイン33の前端近傍部にガセット部材53を設けている。
【0037】
このガセット部材53は、1枚のプレートを曲げ加工することによって形成されており、図9(a)及び(b)に示すように、略矩形状の側壁部53aと、側壁部53aの前端部から車幅方向外側に延びる前壁部53bと、側壁部53aの後端部から車幅方向外側に延びる後壁部53cと、前壁部53bの車幅方向外側の端部から前方に延びる前側フランジ部53dと、後壁部53cの車幅方向外側の端部から後方に延びる後側フランジ部53eとを有していて、平面視で断面略ハット状に形成されている。また、側壁部53aには、その上端部に上方に延びる上側取付部53fが形成されている一方、その下端部に車幅方向内側に延びる下側取付部53gが形成されている。さらに、前壁部53bには、その上端部及び下端部からそれぞれ前方に延びる前側取付部53h,53iが形成されている一方、後壁部53cには、その上端部及び下端部からそれぞれ後方に延びる後側取付部53j,53kが形成されている。
【0038】
このガセット部材53は、その前端が、フロントピラーレイン35の後壁部35cにおける下端部近傍に位置するように、具体的には、その前壁部53bの前面とフロントピラーレイン35の後壁部35cの後面とが面一になるように、開断面状のサイドシルレイン33の断面開口側(車幅方向内側)に取り付けられている。
【0039】
より詳しくは、図7及び図8に示すように、ガセット部材53は、その前側フランジ部53d及び後側フランジ部53eが、サイドシルレイン33の側壁部33aの内側面に取り付けられているとともに、その上側取付部53fが、サイドシルレイン33の上側フランジ部33dの内側面に取り付けられている。そして、サイドシルレイン33は、上述の如く、その底壁部33cの先端が頂壁部33bの先端よりも車幅方向内側に延びていることから、頂壁部33bの先端に形成された上側フランジ部33dから下方に延びるガセット部材53の側壁部53aの下端は底壁部33cの上面に当たるとともに、かかる底壁部33cの上面に下側取付部53gが取り付けられている。また、ガセット部材53の上下の前側取付部53h,53iは、サイドシルレイン33の頂壁部33bの下面及び底壁部33cの上面にそれぞれ取り付けられている一方、ガセット部材53の上下の後側取付部53j,53kは、サイドシルレイン33の頂壁部33bの下面及び底壁部33cの上面にそれぞれ取り付けられている。
【0040】
このように、ガセット部材53をサイドシルレイン33に取り付けることにより、ガセット部材53とサイドシルレイン33とは、車両前後方向から見て、サイドシルレイン33の側壁部33a、頂壁部33b及び底壁部33cとガセット部材53の側壁部53aとからなる閉断面を形成するのみならず、車幅方向から見て、サイドシルレイン33の頂壁部33b及び底壁部33cとガセット部材53の前壁部53b及び後壁部53cとからなる閉断面、並びに、上方から見て、サイドシルレイン33の側壁部33aとガセット部材53の側壁部53a、前壁部53b及び後壁部53cとからなる閉断面を形成している。換言すると、サイドシルレイン33の前端近傍部には、サイドシルレイン33の側壁部33a、頂壁部33b及び底壁部33cとガセット部材53の側壁部53a、前壁部53b及び後壁部53cとによって、箱状の部位が形成されており、これにより、かかる部位におけるサイドシルレイン33の剛性が向上している。
【0041】
そうして、フロントピラーレイン35の後壁部35cにおける下端部は、サイドシルレイン33の頂壁部33bに接続されているとともに、ガセット部材53は、その前壁部53bの前面とフロントピラーレイン35の後壁部35cの後面とが面一になるように、サイドシルレイン33に取り付けられていることから、換言すると、フロントピラーレイン35の後側部分における下端部は、剛性が向上した部位の前端に接続されていることから、例えば、フロントピラーレイン35に前方から荷重が入力すると、図10に示すように、後壁部35cにおける下端部を回転中心として、白抜き矢印で示すようなモーメントが発生する。
【0042】
言い換えると、図11に示すように、下側フロントピラー5に前方から入力した荷重Fがフロントピラーレイン35に伝わると、かかる荷重Fは、フロントピラーレイン35の後壁部35cにおける下端部Aを回転中心とする、車幅方向内側から見て時計回りのモーメント力としてフロントピラーレイン35に作用し、かかるモーメント力が下側フロントピラー5に伝達されることになる。このため、下側フロントピラー5及びサイドシル3には、図11の黒抜き矢印で示すような圧縮力や、図11の白抜き矢印で示すような引張力が作用することになる。なお、図10における太線は、側部車体構造と図11のフレーム構造との関係が分かり易くなるように描き加えたものであり、構造物の輪郭を示すものではない。
【0043】
このように、本実施形態では、フロントドア開口部39を構成する側部車体1をどのように変形させるかが予測し難い、下側フロントピラー5に入力した荷重Fを、意図的に下側フロントピラー5を後方に倒すようなモーメントとして当該下側フロントピラー5に作用させるようにしている。それ故、本実施形態の側部車体1では、図11の黒抜き矢印で示すような圧縮力や白抜き矢印で示すような引張力が作用するであろう部位に、これらの力に抗するように第1及び第2補強部材43,45を設けるようにしている。
【0044】
具体的には、サイドシル3と下側フロントピラー5との間に挟まれる、フロントドア開口部39のコーナー部に対応する部位57に、第1補強部材(内側補強部材)を設けるとともに、サイドシルレイン33の底壁部33cの前端部(前端部における下側部位)と、フロントピラーレイン35の前壁部35bの下端部(下端部における前側部位)とを連結する第2補強部材(外側補強部材)を設けている。
【0045】
第1補強部材43は、図12に示すように、上下方向に延びる側壁部43aと、側壁部43aの前端部から車幅方向内側に延びる前壁部43bと、側壁部43aの後端部から車幅方向内側に延びる後壁部43cと、後壁部43cの下端部から大きく湾曲して後方に延びる底壁部43dと、前壁部43bの車幅方向内側の端部から前方に延びる前側フランジ部43eと、後壁部43cの車幅方向内側の端部から後方に延びるとともに底壁部43dの車幅方向内側の端部から上方に延びる後側フランジ部43fとを有している。この第1補強部材43は、1枚の板金からプレス成形によって形成されたものであり、横断面略ハット状に形成されているとともに、車幅方向から見て略L字状に形成されている。
【0046】
この第1補強部材43は、その前壁部43bが下側フロントピラー部15の前壁部15bとフロントピラーレイン35の前壁部35bとに挟まれ、その側壁部43aが下側フロントピラー部15の側壁部15aとフロントピラーレイン35の側壁部35aとに挟まれ、その後壁部43cが下側フロントピラー部15の後壁部15cとフロントピラーレイン35の後壁部35cとに挟まれ且つその底壁部43dがサイドシル部13とサイドシルレイン33の頂壁部33bとに挟まれるように配置されていて、その前側フランジ部43eが下側フロントピラー部15の前側フランジ部15dと接合され、且つ、その後側フランジ部43fが下側フロントピラー部15の後側フランジ部15e及びサイドシル部13の上側フランジ部13aと接合されることにより、サイドシル3及び下側フロントピラー5の内側にこれらの内側面に沿うように連結されている。
【0047】
そうして、第1補強部材43の側壁部43a、前壁部43b及び後壁部43cは、その上端がフロントピラーレイン35の上端と略一致するように上方に延びている一方、第1補強部材43の底壁部43dはガセット部材53の後壁部53cよりも後方に延びており、サイドシル3と下側フロントピラー5との間に挟まれる、フロントドア開口部39のコーナー部に対応する部位57において、あたかも斜材のような役割を果たすことになる。これにより、フロントドア開口部39のコーナー部に対応する部位57の強度が高められることから、下側フロントピラー5が後方に倒れようとすると、かかる第1補強部材43が圧縮力に抗するように作用して、下側フロントピラー5の後方への倒れ込みが抑えられる。
【0048】
一方、第2補強部材45は、図13に示すように、後方且つ下方に延びる本体部45aと、本体部45aの前端部から上方に延びる前側取付部45bと、本体部45aの後端部から後方に延びる後側取付部45cと、本体部45aの車幅方向外側の端部から後方且つ上方に延びる外側取付部45dとを有している。なお、本体部45aの車幅方向内側の端部は上方に折り曲げられており、これにより、本体部45aの剛性が高められている。
【0049】
この第2補強部材45は、その前側取付部45bがフロントピラーレイン35の前壁部35bの下端部に取り付けられるとともに、その後側取付部45c及び外側取付部45dがサイドシルレイン33の底壁部33cの前端部及び側壁部33aの前端部にそれぞれ取り付けられることにより、フロントピラーレイン35の下端部とサイドシルレイン33の前端部とを連結している。これにより、下側フロントピラー5が後方に倒れようとすると、かかる第2補強部材45が引張力に抗するように作用するので、下側フロントピラー5の後方向への倒れ込みが抑えられる。
【0050】
以上により、本実施形態に係る側部車体構造によれば、下側フロントピラー5及びサイドシル3全体を補強することなく、少ない部品点数で、車両のドア開口部39における車体の変形を抑えることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、下側フロントピラー5に前方から荷重Fが入力した場合について説明したが、下側フロントピラー5に後方から荷重が入力した場合には、かかる荷重は、フロントピラーレイン35の後壁部35cにおける下端部を回転中心とする、車幅方向内側から見て反時計回りのモーメント力としてフロントピラーレイン35に作用し、かかるモーメント力が下側フロントピラー5に伝達されることになる。そうして、下側フロントピラー5が前方に倒れようとすると、第1補強部材43が引張力に抗するように作用するとともに、第2補強部材45が圧縮力に抗するように作用するので、下側フロントピラー5の前方向への倒れ込みを抑えることができる。
【0052】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0053】
上記実施形態では、サイドシルレイン33の前端近傍部に箱状の部位が形成されるようにガセット部材53を形成したが、車両前後方向から見て、少なくとも、サイドシルレイン33の側壁部33a、頂壁部33b及び底壁部33cとガセット部材53の側壁部53aとからなる閉断面が形成されるのであれば、ガセット部材53をどのような形状にしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、側部車体1に第1及び第2補強部材43,45を設けたが、これに限らず、第1補強部材43のみ、又は、第2補強部材45のみを設けるようにしてもよい。
【0055】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、車両前後方向に延びるサイドシルと、当該サイドシルの前端部から上方に延びるフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造等について有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 側部車体
3 サイドシル
5 下側フロントピラー(フロントピラー)
33 サイドシルレインフォースメント
33b 頂壁部(上側部分)
35 フロントピラーレインフォースメント(ピラーレインフォースメント)
35c 後壁部(後側部分)
39 フロントドア開口部(ドア開口部)
43 第1補強部材(内側補強部材)
45 第2補強部材(外側補強部材)
53 ガセット部材
57 コーナー部に対応する部位
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前後方向に延びるサイドシルと、当該サイドシルの前端部から上方に延びるフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドア開口部の車体の剛性を高めるべく、車両のドア開口部の下縁を規定する閉断面状のサイドシルの内部や、車両のドア開口部の前縁を規定する閉断面状のフロントピラーの内部にレインフォースメントを設けることが知られており、例えば、特許文献1には、フロントピラーとサイドシルとの結合部剛性を高めるべく、フロントピラーとサイドシルの各閉断面が交差する位置に、レインフォースメントに作用する最大剪断応力作用線δ方向に対して直線となる抗力面を形成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−192967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のものでは、フロントピラーとサイドシルとの結合部の剛性は高められるものの、車両衝突時におけるかかる結合部以外の部位の変形、例えば、フロントピラーがくの字に折れ曲がったり、サイドシルが座屈してフロントピラーが後方へさがったりするような車体の変形を抑えることは困難である。
【0005】
そこで、車両衝突時におけるフロントピラー及びサイドシルの様々な変形に対応するべく、サイドシル、フロントピラー及びこれら内部に設けられるレインフォースメントの板厚を全体的に厚くしたり、補強部材によってフロントピラー及びサイドシル全体を補強することも考えられるが、これらの補強構造では、製造コスト及び車体重量が増大するという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両前後方向に延びるサイドシルと、当該サイドシルの前端部から上方に延びるフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造において、フロントピラー及びサイドシル全体を補強することなく、少ない部品点数で、車両のドア開口部における車体の変形を抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明では、フロントピラーに入力した荷重を、当該フロントピラーを前方又は後方に倒すようなモーメントとして当該フロントピラーに作用させるとともに、かかるモーメント力に抗するように作用する補強部材を、フロントピラー及びサイドシルに設けるようにしている。
【0008】
具体的には、第1の発明は、車両のドア開口部の下縁を規定する、車両前後方向に延びる閉断面状のサイドシルと、車両のドア開口部の前縁を規定する、当該サイドシルの前端部から上方に延びる閉断面状のフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造を対象とする。
【0009】
そして、上記サイドシル内部を車両前後方向に延びる開断面状のサイドシルレインフォースメントと、上記フロントピラー内部を上下方向に延び、少なくともその後側部分における下端部が上記サイドシルレインフォースメントの上側部分に接続されるピラーレインフォースメントと、上記サイドシルの前端近傍部で、上記開断面状のサイドシルレインフォースメントの断面開口側に取り付けられて、当該サイドシルレインフォースメントと閉断面を形成するガセット部材と、上記サイドシルと上記フロントピラーとの間に挟まれる、上記ドア開口部のコーナー部に対応する部位に、当該サイドシル及び当該フロントピラーの内側面に沿うように連結された内側補強部材と、をさらに備え、上記ガセット部材の前端が、上記ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部近傍に位置していることを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明では、開断面状のサイドシルレインフォースメントの断面開口側にガセット部材が取り付けられて、当該ガセット部材と当該サイドシルレインフォースメントとが閉断面を形成することにより、サイドシルレインフォースメントの前端近傍部では剛性が向上している。
【0011】
そうして、ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部は、サイドシルレインフォースメントの上側部分に接続されているとともに、その近傍にガセット部材の前端が位置していることから、換言すると、ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部は、剛性が向上した部位の前端に接続されていることから、ピラーレインフォースメントに前方又は後方から荷重が入力すると、かかる後側部分における下端部を回転中心として、ピラーレインフォースメントを後方又は前方に倒すようなモーメントが発生する。
【0012】
言い換えると、フロントピラーに入力した荷重がピラーレインフォースメントに伝わると、かかる荷重は、ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部を回転中心とする、車幅方向から見て時計回り又は反時計回りのモーメント力としてピラーレインフォースメントに作用し、かかるモーメント力がフロントピラーに伝達されることになる。
【0013】
ここで、サイドシルとフロントピラーとの間に挟まれる、ドア開口部のコーナー部に対応する部位には、内側補強部材がサイドシル及びフロントピラーの内側面に沿うように連結されていることから、フロントピラーが前方に倒れようとする場合にはかかる内側補強部材が引張力に抗するように作用する一方、フロントピラーが後方に倒れようとする場合にはかかる内側補強部材が圧縮力に抗するように作用するので、フロントピラーの前後方向への倒れ込みを抑えることができる。
【0014】
以上により、フロントピラー及びサイドシル全体を補強することなく、少ない部品点数で、車両のドア開口部における車体の変形を抑えることができる。
【0015】
第2の発明は、車両のドア開口部の下縁を規定する、車両前後方向に延びる閉断面状のサイドシルと、車両のドア開口部の前縁を規定する、当該サイドシルの前端部から上方に延びる閉断面状のフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造であって、上記サイドシル内部を車両前後方向に延びる開断面状のサイドシルレインフォースメントと、上記フロントピラー内部を上下方向に延び、少なくともその後側部分における下端部が上記サイドシルレインフォースメントの上側部分に接続されるピラーレインフォースメントと、上記サイドシルの前端近傍部で、上記開断面状のサイドシルレインフォースメントの断面開口側に取り付けられて、当該サイドシルレインフォースメントと閉断面を形成するガセット部材と、上記サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部分と、上記ピラーレインフォースメントの下端部における前側部分とを連結する外側補強部材と、をさらに備え、上記ガセット部材の前端が、上記ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部近傍に位置していることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明では、上記第1の発明と同様、フロントピラーに前方又は後方から荷重が入力すると、フロントピラーを後方又は前方に倒すようなモーメントが発生するところ、サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部分と、ピラーレインフォースメントの下端部における前側部分とは、外側補強部材によって連結されていることから、フロントピラーが前方に倒れようとする場合にはかかる外側補強部材が圧縮力に抗するように作用する一方、フロントピラーが後方に倒れようとする場合にはかかる外側補強部材が引張力に抗するように作用する。これにより、フロントピラーの前後方向への倒れ込みを抑えることができる。
【0017】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部位と、上記ピラーレインフォースメントの下端部における前側部位とを連結する外側補強部材をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0018】
第3の発明によれば、ドア開口部のコーナー部に対応する部位に、サイドシル及びフロントピラーの内側面に沿うように内側補強部材が連結されているとともに、サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部分と、ピラーレインフォースメントの下端部における前側部分とが、外側補強部材によって連結されていることから、フロントピラーの前後方向への倒れ込みをより確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る車両の側部車体構造によれば、ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部が、ガセット部材によって剛性が向上した部位の前端に接続されていることから、フロントピラーに入力した荷重は、かかる後側部分における下端部を回転中心とする、ピラーレインフォースメントを後方又は前方に倒すようなモーメントとしてフロントピラーに伝達されるところ、サイドシルとフロントピラーとの間に挟まれる、ドア開口部のコーナー部に対応する部位には、内側補強部材がサイドシル及びフロントピラーの内側面に沿うように連結されていることから、かかる内側補強部材がモーメントによる引張力又は圧縮力に抗するように作用するので、フロントピラーの前後方向への倒れ込みを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る、フロントドア開口部を構成する側部車体を車室外から見た斜視図である。
【図2】車室内から見た、側部車体の側面図である。
【図3】図2に示す側部車体からインナパネルの一部を取り外した状態を示す側面図である。
【図4】サイドシルレインフォースメントの前端部を示す斜視図である。
【図5】サイドシルの構造を模式的に示す断面図である。
【図6】フロントピラーレインフォースメントを示す斜視図である。
【図7】サイドシルとフロントピラーとの接続部を斜め下方から見た斜視図である。
【図8】サイドシルとフロントピラーとの接続部を斜め上方から見た斜視図である。
【図9】ガセットを示す図であり、同図(a)は正面図であり、同図(b)は斜視図である。
【図10】サイドシルとフロントピラーとの接続部の拡大図である。
【図11】側部車体における力の伝わり方を模式的に説明する図である。
【図12】第1補強部材を示す斜視図である。
【図13】第2補強部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る、フロントドア開口部を構成する側部車体を車室外から見た斜視図であり、図2は、車室内から見た、側部車体の側面図である。この側部車体1は、車両前後方向に延びるサイドシル3と、当該サイドシル3の前端部から上方に延びる下側フロントピラー5と、当該下側フロントピラー5の上端から上方に行くほど後方に延びる上側フロントピラー7と、当該上側フロントピラー7の後端から後方に延びるルーフサイドレール9と、ルーフサイドレール9の車両前後方向中央部とサイドシル3の車両前後方向中央部とを結ぶセンタピラー21と、を備えている。そうして、前輪37の後方に形成されたフロントドア開口部39は、サイドシル3によって下縁が、下側フロントピラー5によって前縁が、上側フロントピラー7及びルーフサイドレール9によって上縁が、センタピラー21によって後縁がそれぞれ規定されている。
【0023】
これらサイドシル3、下側フロントピラー5、上側フロントピラー7、ルーフサイドレール9及びセンタピラー21は、アウタパネル11とインナパネルとを接合することによってそれぞれ閉断面状に形成されている。
【0024】
より詳しくは、アウタパネル11は、図1に示すように、サイドシル3、下側フロントピラー5、上側フロントピラー7、ルーフサイドレール9及びセンタピラー21にそれぞれ対応する、サイドシル部13、下側フロントピラー部15、上側フロントピラー部17、ルーフサイドレール部19及びセンタピラー部31を備えており、本実施形態では1枚の板金からプレス成形によって形成されている。これらサイドシル部13、下側フロントピラー部15、上側フロントピラー部17、ルーフサイドレール部19及びセンタピラー部31はいずれも、車幅方向外側に突出し且つフランジ部を有する断面略ハット状とされている。
【0025】
インナパネルを構成するサイドシルインナ23、コーナーパネル47、フロントピラーインナロア25、フロントピラーインナアッパ27、ルーフサイドレールインナ29及びセンタピラーインナ41は、いずれも車幅方向内側に突出し且つフランジ部を有する断面略ハット状とされている。
【0026】
そうして、アウタパネル11のフランジ部と各インナパネル23,25,27,29,41,47のフランジ部とを接合することによって、サイドシル部13とサイドシルインナ23及びコーナーパネル47の下部47aとで閉断面状のサイドシル3が形成され、下側フロントピラー部15とフロントピラーインナロア25及びコーナーパネル47の上部47bとで閉断面状の下側フロントピラー5が形成され、上側フロントピラー部17とフロントピラーインナアッパ27とで閉断面状の上側フロントピラー7が形成され、ルーフサイドレール部19とルーフサイドレールインナ29とで閉断面状のルーフサイドレール9が形成され、センタピラー部31とセンタピラーインナ41とで閉断面状のセンタピラー21が形成されている。
【0027】
これら閉断面状のサイドシル3、下側フロントピラー5、上側フロントピラー7、ルーフサイドレール9及びセンタピラー21の内部には、レインフォースメントがそれぞれ設けられており、これにより、フロントドア開口部39を構成する側部車体1の剛性が高められている。なお、図2の符号49は、フロントピラーインナロア25とフロントピラーインナアッパ27とを連結するためのプレートである。
【0028】
図3は、図2に示す側部車体からサイドシルインナ、コーナーパネル及びフロントピラーインナロアを取り外した状態を示す側面図である。図3に示すように、閉断面状のサイドシル3の内部には車両前後方向に延びるサイドシルレインフォースメント(以下、サイドシルレインという。)33が、また、閉断面状の下側フロントピラー5の内部には上下方向に延びるフロントピラーレインフォースメント(以下、フロントピラーレインという。)35がそれぞれ設けられている。なお、下側及び上側フロントピラー5,7のうち下側フロントピラー5が、本発明で言うところのフロントピラーにあたる。
【0029】
サイドシルレイン33は、図4に示すように、車両前後方向に延びる側壁部33aと、側壁部33aの上端部から車幅方向内側に延びる頂壁部(上側部分)33bと、側壁部33aの下端部から車幅方向内側に延びる底壁部33cと、頂壁部33bの車幅方向内側の端部から上方に延びる上側フランジ部33dと、底壁部33cの車幅方向内側の端部から下方に延びる下側フランジ部33eとを有していて、車両前後方向からみて断面略ハット状(開断面状)に形成されている。なお、底壁部33cの先端は、図5に示すように、頂壁部33bの先端よりも車幅方向内側に延びている。また、頂壁部33bの前端部は上方に延びるように折り曲げられており、これにより、前側取付部33fが形成されている。
【0030】
このサイドシルレイン33は、図5に示すように、その上側フランジ部33dがサイドシル部13の上側フランジ部13aとサイドシルインナ23の上側フランジ部23aとの間に挟まれ、且つ、その下側フランジ部33eがサイドシル部13の下側フランジ部13bとサイドシルインナ23の下側フランジ部23bとの間に挟まれた状態で、サイドシル3に接合されており、これにより、サイドシル3の内部には2つの閉断面部が形成されている。また、前側取付部33fは、後述するフロントピラーレイン35の前壁部35bにおける車両前後方向後側の面に取り付けられている(図8参照)。なお、図5中の符号77は、フロアパネルを示す。
【0031】
フロントピラーレイン35は、図6に示すように、上下方向に延びる側壁部35aと、側壁部35aの前端部から車幅方向内側に延びる前壁部35bと、側壁部35aの後端部から車幅方向内側に延びる後壁部(後側部分)35cとを有していて、断面略コ字状に形成されている。また、前壁部35bの上端部には、上方に延びる上側取付部35dが形成されている一方、後壁部35cの下端部には、前方に延びる下側取付部35eが形成されている。
【0032】
このフロントピラーレイン35は、上側及び下側フランジ部33d,33eを、サイドシル部13とサイドシルインナ23のフランジ部13a,13b,23a,23bで挟むようにしてサイドシル3に接合されるサイドシルレイン33とは異なり、図7及び図8に示すように、閉断面状の下側フロントピラー5の内部を上下に仕切るように設けられた取付部材55を介して下側フロントピラー5に取り付けられている。
【0033】
この取付部材55は、下側フロントピラー5の内側に取付固定される上側プレート部65と、主としてフロントピラーレイン35と接続される下側プレート部75とを備えている。この上側プレート部65は、略矩形板状の本体部65aと、本体部65aの車幅方向内側且つ車両前後方向後側の端部から後方に延びる延出部65bとを有しており、本体部65aの車幅方向外側の端部が下側フロントピラー部15の側壁部15aから車幅方向内側に突設された突条部15fに連結されるとともに、延出部65bが下側フロントピラー部15の後側フランジ部15eから車幅方向内側に突設された突条部15gに連結されることで、下側フロントピラー5の内側に取付固定されている。
【0034】
一方、下側プレート部75は、略矩形板状の本体部75aと、本体部75aの前端部を上方に折り曲げることで形成された前側取付部75bと、本体部75aの後端部を下方に折り曲げることで形成された後側取付部75cと、本体部75aの車幅方向外側の端部を下方に折り曲げることで形成された外側取付部75dと、本体部75aの車幅方向内側の端部を上方に折り曲げることで形成された内側取付部75eとを有しており、本体部75aの上面と上側プレート部65の本体部65aの下面とを接合するとともに、内側取付部75eをフロントピラーインナロア25の内側面に取り付けることで、下側フロントピラー5の内側に取付固定されている。
【0035】
そうして、フロントピラーレイン35は、その上側取付部35dに下側プレート部75の前側取付部75bが、その側壁部35aの上端部に下側プレート部75の外側取付部75dが、その後壁部35cの上端部に下側プレート部75の後側取付部75cがそれぞれ取り付けられることによって、取付部材55を介して、下側フロントピラー5に取り付けられている。また、フロントピラーレイン35は、その下側取付部35eがサイドシルレイン33の頂壁部33bの上面に取り付けられることで、その後壁部35cにおける下端部がサイドシルレイン33の頂壁部33bに接続されている。
【0036】
このように、サイドシルレイン33をサイドシル3の内部に、また、フロントピラーレイン35を下側フロントピラー5の内部にそれぞれ設けることで、これらサイドシル3及び下側フロントピラー5の剛性が高められているが、本実施形態では、サイドシル3の前端部の剛性をさらに高めるべく、図7及び図8に示すように、サイドシルレイン33の前端近傍部にガセット部材53を設けている。
【0037】
このガセット部材53は、1枚のプレートを曲げ加工することによって形成されており、図9(a)及び(b)に示すように、略矩形状の側壁部53aと、側壁部53aの前端部から車幅方向外側に延びる前壁部53bと、側壁部53aの後端部から車幅方向外側に延びる後壁部53cと、前壁部53bの車幅方向外側の端部から前方に延びる前側フランジ部53dと、後壁部53cの車幅方向外側の端部から後方に延びる後側フランジ部53eとを有していて、平面視で断面略ハット状に形成されている。また、側壁部53aには、その上端部に上方に延びる上側取付部53fが形成されている一方、その下端部に車幅方向内側に延びる下側取付部53gが形成されている。さらに、前壁部53bには、その上端部及び下端部からそれぞれ前方に延びる前側取付部53h,53iが形成されている一方、後壁部53cには、その上端部及び下端部からそれぞれ後方に延びる後側取付部53j,53kが形成されている。
【0038】
このガセット部材53は、その前端が、フロントピラーレイン35の後壁部35cにおける下端部近傍に位置するように、具体的には、その前壁部53bの前面とフロントピラーレイン35の後壁部35cの後面とが面一になるように、開断面状のサイドシルレイン33の断面開口側(車幅方向内側)に取り付けられている。
【0039】
より詳しくは、図7及び図8に示すように、ガセット部材53は、その前側フランジ部53d及び後側フランジ部53eが、サイドシルレイン33の側壁部33aの内側面に取り付けられているとともに、その上側取付部53fが、サイドシルレイン33の上側フランジ部33dの内側面に取り付けられている。そして、サイドシルレイン33は、上述の如く、その底壁部33cの先端が頂壁部33bの先端よりも車幅方向内側に延びていることから、頂壁部33bの先端に形成された上側フランジ部33dから下方に延びるガセット部材53の側壁部53aの下端は底壁部33cの上面に当たるとともに、かかる底壁部33cの上面に下側取付部53gが取り付けられている。また、ガセット部材53の上下の前側取付部53h,53iは、サイドシルレイン33の頂壁部33bの下面及び底壁部33cの上面にそれぞれ取り付けられている一方、ガセット部材53の上下の後側取付部53j,53kは、サイドシルレイン33の頂壁部33bの下面及び底壁部33cの上面にそれぞれ取り付けられている。
【0040】
このように、ガセット部材53をサイドシルレイン33に取り付けることにより、ガセット部材53とサイドシルレイン33とは、車両前後方向から見て、サイドシルレイン33の側壁部33a、頂壁部33b及び底壁部33cとガセット部材53の側壁部53aとからなる閉断面を形成するのみならず、車幅方向から見て、サイドシルレイン33の頂壁部33b及び底壁部33cとガセット部材53の前壁部53b及び後壁部53cとからなる閉断面、並びに、上方から見て、サイドシルレイン33の側壁部33aとガセット部材53の側壁部53a、前壁部53b及び後壁部53cとからなる閉断面を形成している。換言すると、サイドシルレイン33の前端近傍部には、サイドシルレイン33の側壁部33a、頂壁部33b及び底壁部33cとガセット部材53の側壁部53a、前壁部53b及び後壁部53cとによって、箱状の部位が形成されており、これにより、かかる部位におけるサイドシルレイン33の剛性が向上している。
【0041】
そうして、フロントピラーレイン35の後壁部35cにおける下端部は、サイドシルレイン33の頂壁部33bに接続されているとともに、ガセット部材53は、その前壁部53bの前面とフロントピラーレイン35の後壁部35cの後面とが面一になるように、サイドシルレイン33に取り付けられていることから、換言すると、フロントピラーレイン35の後側部分における下端部は、剛性が向上した部位の前端に接続されていることから、例えば、フロントピラーレイン35に前方から荷重が入力すると、図10に示すように、後壁部35cにおける下端部を回転中心として、白抜き矢印で示すようなモーメントが発生する。
【0042】
言い換えると、図11に示すように、下側フロントピラー5に前方から入力した荷重Fがフロントピラーレイン35に伝わると、かかる荷重Fは、フロントピラーレイン35の後壁部35cにおける下端部Aを回転中心とする、車幅方向内側から見て時計回りのモーメント力としてフロントピラーレイン35に作用し、かかるモーメント力が下側フロントピラー5に伝達されることになる。このため、下側フロントピラー5及びサイドシル3には、図11の黒抜き矢印で示すような圧縮力や、図11の白抜き矢印で示すような引張力が作用することになる。なお、図10における太線は、側部車体構造と図11のフレーム構造との関係が分かり易くなるように描き加えたものであり、構造物の輪郭を示すものではない。
【0043】
このように、本実施形態では、フロントドア開口部39を構成する側部車体1をどのように変形させるかが予測し難い、下側フロントピラー5に入力した荷重Fを、意図的に下側フロントピラー5を後方に倒すようなモーメントとして当該下側フロントピラー5に作用させるようにしている。それ故、本実施形態の側部車体1では、図11の黒抜き矢印で示すような圧縮力や白抜き矢印で示すような引張力が作用するであろう部位に、これらの力に抗するように第1及び第2補強部材43,45を設けるようにしている。
【0044】
具体的には、サイドシル3と下側フロントピラー5との間に挟まれる、フロントドア開口部39のコーナー部に対応する部位57に、第1補強部材(内側補強部材)を設けるとともに、サイドシルレイン33の底壁部33cの前端部(前端部における下側部位)と、フロントピラーレイン35の前壁部35bの下端部(下端部における前側部位)とを連結する第2補強部材(外側補強部材)を設けている。
【0045】
第1補強部材43は、図12に示すように、上下方向に延びる側壁部43aと、側壁部43aの前端部から車幅方向内側に延びる前壁部43bと、側壁部43aの後端部から車幅方向内側に延びる後壁部43cと、後壁部43cの下端部から大きく湾曲して後方に延びる底壁部43dと、前壁部43bの車幅方向内側の端部から前方に延びる前側フランジ部43eと、後壁部43cの車幅方向内側の端部から後方に延びるとともに底壁部43dの車幅方向内側の端部から上方に延びる後側フランジ部43fとを有している。この第1補強部材43は、1枚の板金からプレス成形によって形成されたものであり、横断面略ハット状に形成されているとともに、車幅方向から見て略L字状に形成されている。
【0046】
この第1補強部材43は、その前壁部43bが下側フロントピラー部15の前壁部15bとフロントピラーレイン35の前壁部35bとに挟まれ、その側壁部43aが下側フロントピラー部15の側壁部15aとフロントピラーレイン35の側壁部35aとに挟まれ、その後壁部43cが下側フロントピラー部15の後壁部15cとフロントピラーレイン35の後壁部35cとに挟まれ且つその底壁部43dがサイドシル部13とサイドシルレイン33の頂壁部33bとに挟まれるように配置されていて、その前側フランジ部43eが下側フロントピラー部15の前側フランジ部15dと接合され、且つ、その後側フランジ部43fが下側フロントピラー部15の後側フランジ部15e及びサイドシル部13の上側フランジ部13aと接合されることにより、サイドシル3及び下側フロントピラー5の内側にこれらの内側面に沿うように連結されている。
【0047】
そうして、第1補強部材43の側壁部43a、前壁部43b及び後壁部43cは、その上端がフロントピラーレイン35の上端と略一致するように上方に延びている一方、第1補強部材43の底壁部43dはガセット部材53の後壁部53cよりも後方に延びており、サイドシル3と下側フロントピラー5との間に挟まれる、フロントドア開口部39のコーナー部に対応する部位57において、あたかも斜材のような役割を果たすことになる。これにより、フロントドア開口部39のコーナー部に対応する部位57の強度が高められることから、下側フロントピラー5が後方に倒れようとすると、かかる第1補強部材43が圧縮力に抗するように作用して、下側フロントピラー5の後方への倒れ込みが抑えられる。
【0048】
一方、第2補強部材45は、図13に示すように、後方且つ下方に延びる本体部45aと、本体部45aの前端部から上方に延びる前側取付部45bと、本体部45aの後端部から後方に延びる後側取付部45cと、本体部45aの車幅方向外側の端部から後方且つ上方に延びる外側取付部45dとを有している。なお、本体部45aの車幅方向内側の端部は上方に折り曲げられており、これにより、本体部45aの剛性が高められている。
【0049】
この第2補強部材45は、その前側取付部45bがフロントピラーレイン35の前壁部35bの下端部に取り付けられるとともに、その後側取付部45c及び外側取付部45dがサイドシルレイン33の底壁部33cの前端部及び側壁部33aの前端部にそれぞれ取り付けられることにより、フロントピラーレイン35の下端部とサイドシルレイン33の前端部とを連結している。これにより、下側フロントピラー5が後方に倒れようとすると、かかる第2補強部材45が引張力に抗するように作用するので、下側フロントピラー5の後方向への倒れ込みが抑えられる。
【0050】
以上により、本実施形態に係る側部車体構造によれば、下側フロントピラー5及びサイドシル3全体を補強することなく、少ない部品点数で、車両のドア開口部39における車体の変形を抑えることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、下側フロントピラー5に前方から荷重Fが入力した場合について説明したが、下側フロントピラー5に後方から荷重が入力した場合には、かかる荷重は、フロントピラーレイン35の後壁部35cにおける下端部を回転中心とする、車幅方向内側から見て反時計回りのモーメント力としてフロントピラーレイン35に作用し、かかるモーメント力が下側フロントピラー5に伝達されることになる。そうして、下側フロントピラー5が前方に倒れようとすると、第1補強部材43が引張力に抗するように作用するとともに、第2補強部材45が圧縮力に抗するように作用するので、下側フロントピラー5の前方向への倒れ込みを抑えることができる。
【0052】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0053】
上記実施形態では、サイドシルレイン33の前端近傍部に箱状の部位が形成されるようにガセット部材53を形成したが、車両前後方向から見て、少なくとも、サイドシルレイン33の側壁部33a、頂壁部33b及び底壁部33cとガセット部材53の側壁部53aとからなる閉断面が形成されるのであれば、ガセット部材53をどのような形状にしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、側部車体1に第1及び第2補強部材43,45を設けたが、これに限らず、第1補強部材43のみ、又は、第2補強部材45のみを設けるようにしてもよい。
【0055】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、車両前後方向に延びるサイドシルと、当該サイドシルの前端部から上方に延びるフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造等について有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 側部車体
3 サイドシル
5 下側フロントピラー(フロントピラー)
33 サイドシルレインフォースメント
33b 頂壁部(上側部分)
35 フロントピラーレインフォースメント(ピラーレインフォースメント)
35c 後壁部(後側部分)
39 フロントドア開口部(ドア開口部)
43 第1補強部材(内側補強部材)
45 第2補強部材(外側補強部材)
53 ガセット部材
57 コーナー部に対応する部位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドア開口部の下縁を規定する、車両前後方向に延びる閉断面状のサイドシルと、車両のドア開口部の前縁を規定する、当該サイドシルの前端部から上方に延びる閉断面状のフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造であって、
上記サイドシル内部を車両前後方向に延びる開断面状のサイドシルレインフォースメントと、
上記フロントピラー内部を上下方向に延び、少なくともその後側部分における下端部が上記サイドシルレインフォースメントの上側部分に接続されるピラーレインフォースメントと、
上記サイドシルの前端近傍部で、上記開断面状のサイドシルレインフォースメントの断面開口側に取り付けられて、当該サイドシルレインフォースメントと閉断面を形成するガセット部材と、
上記サイドシルと上記フロントピラーとの間に挟まれる、上記ドア開口部のコーナー部に対応する部位に、当該サイドシル及び当該フロントピラーの内側面に沿うように連結された内側補強部材と、をさらに備え、
上記ガセット部材の前端が、上記ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部近傍に位置していることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項2】
車両のドア開口部の下縁を規定する、車両前後方向に延びる閉断面状のサイドシルと、車両のドア開口部の前縁を規定する、当該サイドシルの前端部から上方に延びる閉断面状のフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造であって、
上記サイドシル内部を車両前後方向に延びる開断面状のサイドシルレインフォースメントと、
上記フロントピラー内部を上下方向に延び、少なくともその後側部分における下端部が上記サイドシルレインフォースメントの上側部分に接続されるピラーレインフォースメントと、
上記サイドシルの前端近傍部で、上記開断面状のサイドシルレインフォースメントの断面開口側に取り付けられて、当該サイドシルレインフォースメントと閉断面を形成するガセット部材と、
上記サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部分と、上記ピラーレインフォースメントの下端部における前側部分とを連結する外側補強部材と、をさらに備え、
上記ガセット部材の前端が、上記ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部近傍に位置していることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項3】
請求項1記載の車両の側部車体構造において、
上記サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部位と、上記ピラーレインフォースメントの下端部における前側部位とを連結する外側補強部材をさらに備えていることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項1】
車両のドア開口部の下縁を規定する、車両前後方向に延びる閉断面状のサイドシルと、車両のドア開口部の前縁を規定する、当該サイドシルの前端部から上方に延びる閉断面状のフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造であって、
上記サイドシル内部を車両前後方向に延びる開断面状のサイドシルレインフォースメントと、
上記フロントピラー内部を上下方向に延び、少なくともその後側部分における下端部が上記サイドシルレインフォースメントの上側部分に接続されるピラーレインフォースメントと、
上記サイドシルの前端近傍部で、上記開断面状のサイドシルレインフォースメントの断面開口側に取り付けられて、当該サイドシルレインフォースメントと閉断面を形成するガセット部材と、
上記サイドシルと上記フロントピラーとの間に挟まれる、上記ドア開口部のコーナー部に対応する部位に、当該サイドシル及び当該フロントピラーの内側面に沿うように連結された内側補強部材と、をさらに備え、
上記ガセット部材の前端が、上記ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部近傍に位置していることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項2】
車両のドア開口部の下縁を規定する、車両前後方向に延びる閉断面状のサイドシルと、車両のドア開口部の前縁を規定する、当該サイドシルの前端部から上方に延びる閉断面状のフロントピラーとを備えた車両の側部車体構造であって、
上記サイドシル内部を車両前後方向に延びる開断面状のサイドシルレインフォースメントと、
上記フロントピラー内部を上下方向に延び、少なくともその後側部分における下端部が上記サイドシルレインフォースメントの上側部分に接続されるピラーレインフォースメントと、
上記サイドシルの前端近傍部で、上記開断面状のサイドシルレインフォースメントの断面開口側に取り付けられて、当該サイドシルレインフォースメントと閉断面を形成するガセット部材と、
上記サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部分と、上記ピラーレインフォースメントの下端部における前側部分とを連結する外側補強部材と、をさらに備え、
上記ガセット部材の前端が、上記ピラーレインフォースメントの後側部分における下端部近傍に位置していることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項3】
請求項1記載の車両の側部車体構造において、
上記サイドシルレインフォースメントの前端部における下側部位と、上記ピラーレインフォースメントの下端部における前側部位とを連結する外側補強部材をさらに備えていることを特徴とする車両の側部車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−1226(P2013−1226A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133659(P2011−133659)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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