説明

車両の冷却システム内の冷却液の追加冷却のための方法及びシステム

【課題】車両の冷却システム内の冷却液を追加冷却するための方法及びシステムを提供すること。
【解決手段】本発明は、圧縮機10によって駆動される冷媒回路9を有する車両であって、凝縮器11、蒸発器12、及びラジエータ7を備える車両内で冷却液を冷却するための方法に関する。本発明は、冷媒回路の液冷式凝縮器11と液冷式蒸発器12とを、ラジエータ7の上流及び/又は下流で車両の冷却回路2に接続することによって、且つ冷媒回路9を使用してラジエータ7の下流で車両の冷却回路2内の冷却液の温度を低下させることによって実現される。また本発明は、車両内の冷却液を冷却するためのシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、車両内の冷却システムに関し、特に、凝縮器及び蒸発器を備えた少なくとも1つの圧縮機駆動式の閉じた冷媒回路を有する冷却システムに関する。より具体的には、本発明は、通常は空冷式低温ラジエータによって冷却される車両内のユニットをより効果的に冷却することができるように、車両の冷却回路内で冷却液を追加冷却(extra cooling)するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の開発は、より優れた機能やより高い効率などを実現するように意図された、より一層進歩した複雑なシステムを目指して進められている。これは特に、大型車、高重量車、商用車に当てはまり、制御ユニット、給気冷却器、EGR冷却器などに関わることがある。これらのユニットの多くは熱を発生し、この熱は、適切な様式で冷却除去されなければならない。
【0003】
通常、ユニットは、車両内のいわゆる受動冷却システムに接続され、受動冷却システムは、余剰の熱の一部を空冷式ラジエータによって冷却除去する。特に車両が温暖な気候の地域を走行しているとき、十分に効果的な冷却を実現するのがより一層難しくなり、それにより様々なユニットが、望ましくない温度条件で動作しなければならない。冷却液の温度と周囲空気の温度との差が減少し、ラジエータが熱を冷却除去する能力が大幅に低下する。これはとりわけ、より高温で動作することができる、より進歩した、耐性のある、したがってより高価な構成要素を車両内で使用しなければならないことを意味する。しかし、給気及びEGR温度が高くなるとエンジン効率が低下し、したがって燃料消費が増加し、非常に多くの熱にさらされる例えばエンジン制御用の制御ユニットは、一般に耐用年数が比較的短く、又は製造費が比較的高い。制御ユニットを冷却する既知の手法は、ディーゼル燃料によって熱を搬送して除去することである。
【0004】
しかし、最新技術は、圧縮機駆動式の冷媒回路によって車両の冷却液の温度を低下させる単純で効率の良い手法を提示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記問題を解決し、効果的な動作のためにより良い冷却を必要とする車両内のユニット及び構成要素を、より良く、より効果的に冷却できるようにする方法及びシステムを提案することである。
【0006】
本発明の更なる目的は、車両の空冷式ラジエータによる通常の受動冷却の代わりに能動冷却を用いることであり、その結果、受動冷却で行うことができる冷却よりも効果的に冷却液を冷却できるようになり、これは例えば車両が温暖な環境を走行しているときに特に有利である。
【0007】
本発明の更なる目的は、車両内の冷却されるユニット及び構成要素の効率を改善し、それにより燃料消費の減少、環境の影響の低減、及び運転費の削減を実現することである。
【0008】
本発明の更なる目的は、車両内の冷却されるユニットを、より安価な構成要素に基づいて製造できるようにすること、及び/又はそれらの耐用年数を延ばすことができるようにすることである。
【0009】
本発明の更なる目的は、車両の通常の冷却回路と既存の空冷式ラジエータとを使用する解決策を提案することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、車両内に設置空間を容易に見出せる単純でコンパクトな解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの前記目的及び更なる目的は、本発明によれば、請求項1及び6に示した構成に従う方法及びシステムによって実現される。
【0012】
本発明は、圧縮機駆動式の冷媒回路を車両内に提供することによって実質的にもたらされ、冷媒回路の2次側が、車両の既存の低温冷却回路に接続され、この冷却回路が、例えば給気、EGRガス、様々な制御ユニットなどを冷却するために使用される。より具体的には、冷媒回路の凝縮器が、ラジエータの上流で車両の冷却回路に接続され、それにより、冷却回路内の温められた冷却液の少なくとも一部が凝縮器の熱交換器を通り、冷却液が更に温められ、その後、ラジエータの直前で車両の冷却回路に戻される。そのように追加して温められた冷却液は、ラジエータに流入し、したがってラジエータは、通常の場合よりも温まる。ラジエータ内の冷却液と、例えばファンによってラジエータを冷却する周囲空気との温度差が増加するにつれてラジエータの冷却効果も高まり、すなわち、より多くの熱をラジエータから周囲空気に放出することができる。
【0013】
冷却液がラジエータ内を通って冷却された後、すなわちラジエータのすぐ下流で、冷却液の少なくとも一部が、圧縮機駆動式の冷媒回路の熱交換器内に流通され、この熱交換器は、蒸発器と一体に組み立てられ、この熱交換器内で冷却液が更に冷却される。その後、冷却液は、ラジエータの下流で、車両の冷却回路内に戻るようにポンプで送られ、車両内の冷却すべきユニットに進む。その結果、冷却回路の冷却液が追加して冷却され、それにより車両内の重要なユニットの十分な冷却が保証される。
【0014】
本発明は、原理的には、車両の冷却回路内で、ラジエータを通過後、ラジエータを冷却するために使用される周囲空気よりも実際的に低い冷却液温度を実現することを可能にする。
【0015】
当然、本発明による圧縮機システムを作動させるのにエネルギー、したがって燃料費が必要であり、しかし、例えば車両のエンジンが最適な条件で動作することができ、したがって効率がより良く、燃料消費がより少ないので、より多くのエネルギー及び燃料が節約される。
【0016】
したがって、低温ラジエータを通過する前に冷却液の温度を上昇させることによって、車両の冷却液システムからより多くの熱を冷却除去することができる。これは、周囲空気、すなわちラジエータを横方向に通過する冷却空気の温度と、ラジエータを通してポンプで送られる冷却液の温度との差が大きくなるにつれて、一般にラジエータによって及ぼされる効果が大きくなるからである。
【0017】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下に述べる本発明のより詳細な説明、並びに添付図面及び他の請求項によって示される。
【0018】
以下、本発明を、好ましい実施例の実例の形態で、添付図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】当技術分野での最新技術を示し、車両内のいわゆる受動冷却に基づく単純な冷却システムを概略的に示す図である。
【図2】圧縮機駆動式の冷媒回路が、ラインによって車両の既存の冷却回路に接続され、冷却液の少なくとも一部が、圧縮機駆動式の冷媒回路内の蒸発器及び/又は凝縮器用の熱交換器の少なくとも一方を通る、本発明によるいわゆる能動冷却システムを概略的に示す図である。
【図3】図2による本発明の代替実施例の実例であって、車両の冷却回路内の全ての冷却液の流れが、圧縮機駆動式の冷媒回路の凝縮器及び蒸発器を通して流通される実例を概略的に示す図である。
【図4】図2による本発明の更なる代替実施例の実例であって、車両の冷却回路からの冷却液の量を調整することができ、それにより、より多量又は少量の冷却液を、圧縮機駆動式の冷媒回路の凝縮器及び/又は蒸発器を通して流通させることができる実例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、当技術分野での最新技術を示し、通常の「受動」冷却を用いた車両ベース冷却システム1の単純な例を示し、この場合、通常は水とグリコールとの混合物の形態での冷却液が、例えば機械駆動式ポンプ3によって、実質的に閉じた冷却回路2内を巡るようにポンプされる。冷却液は、冷却を必要とする車両内の1つ又は複数のユニット4〜6を通過する。これらのユニットは、車両のエンジン、エンジン制御ユニット、EGR冷却器、給気冷却器などであってよい。冷却液は、空冷式低温ラジエータ7を通って流れ、その後、ポンプ3に戻るように流通される。ラジエータ7の冷却効果は、とりわけ周囲空気の温度と、ラジエータ7を通る空気の速度とによって制限され、例えば車両が気温の高い地域を走行するときには、かなり低下する。これは、十分な冷却を常に実現できるわけではないことを意味し、その結果、車両内の重要なユニット及び機能の効率が低下し、燃料費が増加する。
【0021】
図2は、本発明による「能動」冷却システム8を概略的に示す。圧縮機駆動式の冷媒回路9が、ライン系統によって、空冷式ラジエータ7のそれぞれ上流及び下流で、車両の既存の低温冷却回路2に接続される。
【0022】
圧縮機駆動式の冷媒回路9は、既知の様式で、冷媒(通常は加圧下のガス)によって作動する気密封止流れ回路を有する。冷媒回路9は、既知の様式で、機械駆動式の圧縮機10と、凝縮器11と、蒸発器12と、乾式フィルタ13と、膨張手段14とを有し、これらの構成要素は、ホース及び/又はパイプライン系統によって互いに接続される。冷媒回路9は、凝縮器11を通して熱を放出し、蒸発器12を通して熱を吸収する。ここでは、凝縮器11と蒸発器12のそれぞれは、それらそれぞれの液体ベース熱交換器と一体に組み立てられている。冷媒回路9の流れは、圧縮機10によって引き起こされ、圧縮機10から凝縮器11を通って進み、凝縮器11で熱が放出され、更に乾式フィルタ13と膨張手段14とを通って蒸発器12に進み、蒸発器12で熱が吸収され、その後、圧縮機10に戻る。
【0023】
冷却液がユニット4〜6を通って温められた後、車両の冷却回路2内の冷却液の少なくとも一部が、第1の冷却液ポンプ15によって、ラジエータ7の上流にある第1の分岐点16aから、凝縮器11及びその熱交換器を通して流通され、そこで更に温められる。そのようにして追加して温められた冷却液は、その後、同様にラジエータ7よりも上流にあるが、第1の分岐点16aよりは下流にある第2の分岐点16bで冷却回路2に戻るように流通され、その後、ラジエータ7を通して流通され、ラジエータ7において冷却液が周囲空気によって冷却される。
【0024】
図1及び2は、通常の動作状況で生じうる典型的な温度レベルの例を、様々な点で示している。これらの温度は、約30度の周囲温度の典型であり、単なる例にすぎず、当然、異なる負荷条件などを有する異なる動作状況ごとに大きく異なることがある。
【0025】
ラジエータ7の下流で、そのように空冷された冷却液の少なくとも一部が、第2の冷却液ポンプ17によって、第3の分岐点16cから蒸発器12の熱交換器を通して送られ、そこで更に冷却され、その後、冷却液は、ラジエータ7よりも下流で、第3の分岐点16cよりも下流に位置された第4の分岐点16dを通って冷却回路2に戻るように流通される。
【0026】
その結果、より良い冷却を必要とする車両内のユニット/構成要素をより効果的に冷却することができる、追加して冷却された冷却液が得られる。本発明は、ラジエータ7の後の冷却液の温度を低下させ、それにより冷却液が実際的に周囲空気の温度未満になることを可能にする。
【0027】
図3は、全ての冷却液が冷媒回路の凝縮器及び蒸発器を通る、本発明の代替実施例の実例を概略的に示す。その結果、冷却回路2内で単一の共通の流れが得られ、凝縮器11の熱交換器と蒸発器12の熱交換器のサイズ、及び冷媒回路のパイプラインのサイズは増大しなければならない。全ての冷却液の流れを凝縮器11及び蒸発器12に通すことで、これらの構成要素においてより効果的な熱交換を実現できるようになり、冷却システムの効率を改善する。冷却すべきユニット4〜6以外に分岐点又は分流が存在しないので、このシステムで必要とされる唯一の更なる要素は、単一の共通の冷却液ポンプ3である。
【0028】
図4は、本発明の更なる代替実施例の実例を概略的に示す。ラジエータ7のそれぞれ上流及び下流で、冷却回路2内に第1及び第2の弁18a、bを配置し、第1の弁が第1及び第2の分岐点16a、bの間にあり、第2の弁が第3及び第4の分岐点16c、dの間にあるようにすることで、それぞれ凝縮器11及び蒸発器12を通過する冷却液の量を望みに応じて調整できるようになっている。弁18a、bはどちらも、それらが完全に開く、又は完全に閉じるように制御されることがあり、或いはそれらが徐々に流れに対して開く、又は閉じるように調整されることがあり、それにより、個々の場合の冷却要件に応じて、より多量又はより少量の冷却液を、圧縮機駆動式の冷媒回路9の凝縮器11及び蒸発器12を通して流通させることができる。
【0029】
また本発明は、車両内に設置空間を容易に見出せ、且つ温かい液体と冷たい液体との両方を搬送することができるコンパクトなユニットを作成するという目的で、図4に破線のボックスによって示されるように、それぞれが熱交換器を有する蒸発器12及び凝縮器11を、単一の共通のユニット19に一体に組み立てること、又は統合することができる。
【0030】
図4に示される温度値は、弁18a、bが少なくとも部分的に開いた動作状況を表す。
【0031】
本発明を、様々な好ましい実施例を参照して上述してきた。当然、本発明は、上述した実施例に限定されず、それらの実施例は単なる例とみなされるべきである。したがって本発明の他の変形形態も添付の特許請求の範囲の保護の範囲内で問題なく可能である。したがって圧縮機駆動式の冷媒回路が車両の既存のラジエータの下流でのみ接続されてもよく、それにより、冷媒回路の蒸発器によってラジエータの下流で液体が冷却される。そのようなシステムでは、凝縮器を液冷式ではなく空冷式にすることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(10)によって駆動される冷媒回路(9)を有する車両の冷却回路であって、凝縮器(11)、蒸発器(12)、及びラジエータ(7)を備える冷却回路内の冷却液を冷却するための方法において、
前記冷媒回路の前記液冷式凝縮器(11)と液冷式蒸発器(12)とを、前記ラジエータ(7)の上流又は下流で前記車両の冷却回路(2)に接続するステップと、
前記冷媒回路(9)を使用して、前記ラジエータ(7)の下流で、前記車両の冷却回路(2)内の前記冷却液の温度を低下させるステップと
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記凝縮器(11)を、前記ラジエータ(7)の上流で前記車両の冷却回路(2)に接続し、それによって前記凝縮器(11)が、前記ラジエータ(7)に供給される前記冷却液を温めるステップ
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蒸発器(12)を、前記ラジエータ(7)の下流で前記車両の冷却回路(2)に接続し、それによって前記蒸発器(12)が、前記ラジエータ(7)から送達される前記冷却液を冷却するステップ
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記車両の冷却回路(2)内の前記冷却液を、周囲空気の温度未満の温度まで冷却するステップ
を特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記冷却液の少なくとも一部が前記冷媒回路(9)の前記凝縮器(11)及び/又は蒸発器(12)を通るように、前記冷却回路(2)からの前記冷却液の流れを制御するステップ
を特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
圧縮機(10)によって駆動される冷媒回路(9)を有する車両の冷却回路であって、凝縮器(11)、蒸発器(12)、及びラジエータ(7)を備える冷却回路内の冷却液を冷却するためのシステムにおいて、
前記冷媒回路(9)が、前記ラジエータ(7)の上流又は下流で前記車両の冷却回路(2)に接続されること、及び
前記冷媒回路(9)が、前記ラジエータ(7)の下流で前記車両の冷却回路(2)内の冷却液の温度を低下させるようになされていること
を特徴とするシステム。
【請求項7】
前記凝縮器(11)が、前記ラジエータ(7)の上流で前記車両の冷却回路(2)に接続され、それによって前記凝縮器(11)が、前記ラジエータ(7)に供給される前記冷却液を温め、それによって前記ラジエータ(7)の冷却効果を高めること
を特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記蒸発器(12)が、前記ラジエータ(7)の下流で前記車両の冷却回路(2)に接続され、それによって前記蒸発器(12)が、前記ラジエータ(7)かられる前記冷却液を冷却すること
を特徴とする請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
前記冷媒回路(9)が、前記冷却回路(2)内の前記冷却液を、周囲空気の温度未満の温度まで冷却するようになっていること
を特徴とする請求項6から8までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
少なくとも1つの弁(18a、b)が、前記ラジエータ(7)の上流及び/又は下流に提供され、前記冷却液の少なくとも一部が前記凝縮器(11)及び/又は前記蒸発器(12)を通るように、前記車両の冷却回路(2)内の流れを制御するようになされていること
を特徴とする請求項6から9までのいずれか一項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−127282(P2010−127282A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−267163(P2009−267163)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(500190915)スカニア シーブイ アクチボラグ(パブル) (64)
【Fターム(参考)】