説明

車両の出力制御装置

【課題】運転者が予期していない車両の出力制御が実行されることを正確かつ迅速に防止できるようにする。
【解決手段】アクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたときにエンジンの出力を低下させるエンジン出力低減手段4を備え、アクセル検出手段1と、ブレーキ検出手段2と、車両を迅速に制動できる状態にあるか否かを判別する制動状態判別手段5と、上記アクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された時点から上記エンジン出力低減手段4を作動させてエンジン出力を低下させるまでの作動待機時間を上記制動状態判別手段5の判別結果に応じて設定する待機時間設定手段6とを有し、上記制動状態判別手段5により車両を迅速に制動できる状態にないと判別された場合には、車両を迅速に制動できる状態にあると判別された場合に比べて作動待機時間を短くするように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたときにエンジンの出力を低下させるエンジン出力低減手段を備えた車両の出力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、運転者のアクセルペダルに対する誤操作を的確に判断し、不用意な自車両の挙動を防止することにより事故を未然に防止することを目的として、アクセルペダルに足が置かれているかどうかを検出するための足位置検出センサを設け、該足位置検出センサとアクセルペダル操作量センサのそれぞれの検出値の時間的な変化の様子に基づいて、アクセルペダルの誤操作が検出されたときには、アクセルペダル操作量センサの検出信号を排除して、不用意な自車両の挙動を防止することが行われている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、ブレーキ検出部によって検出されるブレーキペダルの踏込量、またはブレーキ作動圧力が、意図的なアクセルペダルおよびブレーキペダルの同時踏込に対応した所定値以上であると演算部において判別されたときには、アクセル検出部によって検出されるアクセルペダルの踏込量に基づくエンジン制御信号に関わらずエンジンを強制的にアイドル状態にするエンジン制御信号を出力し、エンジン制御部が該エンジン制御信号に基づき該エンジンを制御することにより、運転者の意図的なアクセルペダルとブレーキペダルの同時踏込による走行を妨げることなく、運転者が間違えてアクセルペダルとブレーキペダルを同時に踏み込むことに起因する車両の暴走を回避するように構成された車両安全装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−233768号公報
【特許文献2】特開2005−291030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された発明は、例えば車庫入れや渋滞時等のように自車両の速度が低い状態で、アクセルペダルを踏み込んではいないが、直ぐに踏み込み得る状況下において、大きな踏み込み速度を持ってアクセルペダルが踏み込まれた場合に、運転者がブレーキペダルに足を置いているつもりで、アクセルペダルを勢いよく操作する誤操作が行われたと判定し、上記アクセルペダルの操作に応じた加速制御を排除するとともに、ブレーキ装置をスタンバイ状態とするものであり、上記状況下でアクセルペダルの急操作が行われたか否かを正確に検出することができないと、上記誤操作に基づく制御を適正に排除することができない。そして、上記誤操作を適正に検出するためのその判定時間を長くした場合には、迅速な制御を実行できないという問題があり、逆に上記判定時間を短くした場合には、上記誤操作を正確に検出することができず、適正な制御を迅速に行うことが困難であった。
【0006】
また、上記特許文献2に開示された発明においても、アクセル検出部およびブレーキ検出部の出力信号に応じてアクセルペダルおよびブレーキペダルの同時踏込が検出された場合に、この同時踏込が意図的なものであるか否かを正確に判別するのに所定時間を要するため、車両の出力制御を正確かつ迅速に実行することは困難であり、この点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、運転者が予期していない車両の出力制御が実行されることを正確かつ迅速に防止できる車両の出力制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、アクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたときにエンジンの出力を低下させるエンジン出力低減手段を備えた車両のエンジン出力制御装置において、アクセル操作が行われたことを検出するアクセル検出手段と、ブレーキ操作が行われたことを検出するブレーキ検出手段と、車両を迅速に制動できる状態にあるか否かを判別する制動状態判別手段と、上記アクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された時点から上記エンジン出力低減手段を作動させてエンジン出力を低下させるまでの作動待機時間を上記制動状態判別手段の判別結果に応じて設定する待機時間設定手段とを有し、上記制動状態判別手段により車両を迅速に制動できる状態にないと判別された場合には、車両を迅速に制動できる状態にあると判別された場合に比べて作動待機時間を短くするように構成したものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の出力制御装置において、車両のブレーキ系に、吸気負圧を利用して制動力を倍加するマスターバック装置を有し、上記制動状態判別手段は、該マスターバック装置内の負圧値を測定し、該負圧値が大気圧に近いほど、車両を迅速に制動できる状態にないと判別するように構成されたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の出力制御装置において、上記制動状態判別手段は、車両の駆動力と走行抵抗とに基づいて設定された車両の運動モデルから車両の駆動力と走行抵抗とを演算し、その演算値に基づいて車両を迅速に制動できる状態にあるか否かを判別するように構成されたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両の出力制御装置において、上記制動状態判別手段に検出信号を入力する検出手段に故障が発生しているか否かを検出し、該検出手段に故障が発生していると判定された場合には、上記待機時間設定手段により作動待機時間を設定することなく、上記アクセル検出手段およびブレーキ検出手段の検出信号に応じてアクセルおよびブレーキの同時操作が検出されるとともに、ブレーキ操作量が一定値となったことが検出された時点で上記エンジン出力低減手段を作動させるように構成したものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の出力制御装置において、エンジン始動後の同一運転サイクルで、エンジン出力低減手段を作動させてエンジン出力を低下させる制御が実行された後に、再びアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された場合には、上記待機時間設定手段により設定される作動待機時間を、上記制動状態判別手段の判別結果の如何に拘わらず最短時間に設定するように構成したものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、車両を迅速に制動できる状態にあると判別された場合に、上記作動待機時間を長い値に設定するように構成したため、運転者がそのペダル操作足をブレーキペダルに載せた状態でそのままアクセルペダルに踏み換える等の癖を有し、その踏み換え操作が不適切になることに起因してアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われる等の誤操作が生じ易い状態おいて、アクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された時点で直ちにエンジン出力を低下させる制御が実行されるのを防止して運転者が違和感を受けるのを防止することができるとともに、運転者が上記誤操作を行ったことに気付くことなく、上記作動待機時間が経過した場合には、エンジン出力の低下制御を実行することにより運転者に注意を促すことができる。また、車両を迅速に制動できる状態にないと上記制動状態判別手段において推定された場合には、上記作動待機時間を、車両を迅速に制動できる状態にあると判別された場合に比べて短い値に設定することにより、運転者の意思に反して長時間に亘り車両を早期に停車することができないという事態の発生を効果的に防止し、運転者の制動意図に適合した出力制御を実行できるという利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明では、制動状態判別手段において測定されたマスターバック装置内の負圧値が大気圧に近いほど、車両を迅速に制動できる状態にないと判別するように構成したため、上記マスターバック装置内の負圧値が小さく、運転者のブレーキ操作に応じて迅速に制動力を付与できる状態にない場合に、上記作動待機時間を、車両を迅速に制動できる状態にあると判別された場合に比べて短い値に設定することにより、運転者の制動意図に適合した出力制御を実行することができないという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明では、車両の駆動力と走行抵抗とに基づいて設定された車両の運動モデルから車両の駆動力と走行抵抗とを演算し、上記走行抵抗が小さい場合に、該走行抵抗が大きい場合に比べて車両を迅速に制動できる状態にないと判別することにより、車両の走行状態に適合したエンジンの出力制御を正確に実行できるという利点がある。
【0016】
請求項4に係る発明では、制動状態判別手段により上記検出手段に故障が発生していると判定された場合には、上記待機時間設定手段により作動待機時間を設定することなく、上記アクセル検出手段およびブレーキ検出手段の検出信号に応じてアクセルおよびブレーキの同時操作が検出されるとともに、ブレーキ操作量が一定値となったことが検出された時点で上記エンジン出力低減手段を作動させるように構成したため、故障が生じた検出手段の検出値に基づく不正確な出力制御が実行されるのを防止して、運転者に違和感が与えるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明では、エンジン始動後の同一運転サイクルで、エンジン出力低減手段を作動させてエンジン出力を低下させる制御が実行された後に、再びアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された場合には、上記待機時間設定手段により設定される作動待機時間を、上記制動状態判別手段の推定値の如何に拘わらず最短時間に設定するように構成したため、運転者にそれ程強い違和感を与えることなく、上記癖に起因した誤操作を行ったことを運転者に対して迅速に認識させることにより、上記誤操作を早期に解消できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車両の出力制御装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】マスターバック装置の負圧状態に応じて待機時間を設定する対応テーブルの一例を示すグラフである。
【図3】上記車両の出力制御装置の制御動作を示すタイムチャートである。
【図4】上記車両の出力制御装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図5】車両の駆動力と走行抵抗との関係を示す説明図である。
【図6】車速の演算制御の前半部を示すフローチャートである。
【図7】車速の演算制御の後半部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係る車両の出力制御装置の実施形態を示している。該車両の出力制御装置は、アクセル操作が行われたことを検出するアクセル検出手段1と、ブレーキ操作が行われたことを検出するブレーキ検出手段2と、エンジンの出力を制御するエンジンコントロールユニット3とを有している。
【0020】
上記エンジンコントロールユニット3には、後述するようにアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが確認された場合にエンジンの出力を低下させる制御を実行するエンジン出力低減手段4と、車両を迅速に制動できる状態にあるか否か判別する制動状態判別手段5と、上記アクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された時点から上記エンジン出力低減手段4を作動させてエンジン出力を低下させる制御の開始時点までの作動待機時間を上記制動状態判別手段5の判別結果に応じて設定する待機時間設定手段6とが設けられている。
【0021】
上記アクセル検出手段1は、運転者によりアクセルペダルが踏み込まれたことを検出して、その検出信号を上記エンジンコントロールユニット3に出力するように構成されている。また、上記ブレーキ検出手段2は、運転者によりブレーキペダルが踏み込まれたことを検出するとともに、ブレーキペダルの踏込量を検出し、その検出信号を上記エンジンコントロールユニット3に出力するように構成されている。
【0022】
上記エンジン出力低減手段4は、アクセル検出手段1およびブレーキ検出手段2の出力信号に応じ、運転者によりアクセルとブレーキとが同時操作されたことが検出する機能と、この状態が検出された時点から上記待機時間設定手段6により設定された作動待機時間が経過したか否かを判定する機能とを有している。
【0023】
そして、上記作動待機時間が経過した時点においても、アクセルおよびブレーキの同時操作状態が未だ解除していないことが上記エンジン出力低減手段4において確認された場合に、ガソリンエンジンのスロットル弁駆動装置7にスロットル弁を強制的に閉止状態とする制御信号を出力することにより、エンジン出力を低減する制御が実行されるようになっている。なお、ディーゼルエンジン車では、上記スロットル弁駆動装置7に代えて燃料ポンプに制御信号を出力し、該燃料ポンプから噴射される燃料の噴射量をアイドル運転時の噴射量に低下させることにより、エンジン出力を低減する制御を実行することが可能である。
【0024】
上記制動状態判別手段5は、吸気負圧を利用して制動力を倍加するマスターバック装置の負圧状態を直接検出する圧力センサの検出値、またはエンジンの運転状態および走行環境に基づいてマスターバック装置の負圧状態を間接的に測定した測定値に応じ、車両を迅速に制動できる状態にあるか否か判別するよう構成されている。すなわち、上記マスターバック装置内の負圧値が大気圧に近いほど車両を迅速に制動できる状態にないと判別されるとともに、マスターバック装置内の負圧値と大気圧との差が大きいほど車両を迅速に制動できる状態にあると判別され、その判別結果が上記待機時間設定手段6に出力されるようになっている。
【0025】
上記待機時間設定手段6は、制動状態判別手段5により車両に制動力を迅速に付与できる状態にないと判別された場合に、該制動力を迅速に付与できる状態にあると判別された場合に比べて作動待機時間を短くするように構成されている。当実施形態では、図2に示すグラフのように上記マスターバック装置内の負圧値に応じて上記作動待機時間Tがリニアに変化するように設定された対応テーブルと、上記制動状態判別手段5により測定されたマスターバック装置内の負圧値とに基づき、該負圧値に対応した上記作動待機時間Tが設定されるようになっている。
【0026】
また、上記待機時間設定手段6は、エンジン始動後の同一運転サイクル、つまりイグニッションスイッチのON操作後(詳しくは、イグニッションスイッチをON操作後にエンジン回転数が所定回転数を超えたエンジンの始動後)から、該イグニッションスイッチをOFF操作するまでの間に、上記ブレーキペダルおよびブレーキペダルの同時操作が検出されてエンジン出力低減手段4によりエンジンの出力を低下させる制御が実行された場合には、それ以降に設定される作動待機時間Tを、上記制動状態判別手段5による判別結果の如何に拘わらず最短時間(例えば0.6秒)とするように構成されている。
【0027】
次に、上記エンジンコントロールユニット3において実行されるエンジンの出力制御動作を、図3に示すタイムチャートおよび図4に示すフローチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、上記アクセル検出手段1の出力信号に応じてアクセルペダルが操作状態にあるか否かを判定し(ステップS1)、YESと判定された場合には、ブレーキ検出手段2の出力信号に応じてブレーキペダルが操作状態にあるか否かを判定する(ステップS2)。
【0028】
上記ステップS2でYESと判定されてアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが確認された場合には、この状態がエンジンの始動後における同一運転サイクルで二回以上発生したか否か、つまりイグニッションスイッチのON操作後に該イグニッションスイッチをOFF操作するまでの間に、上記エンジン出力低減手段4によりエンジンの出力を低下させる制御が既に実行された後に、再びアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われた状態が発生した状態にあるか否か判定する(ステップS3)。
【0029】
該ステップS3でNOと判定されて同一の運転サイクルで初めてアクセルおよびブレーキの同時操作が行われたことが確認された場合には、この状態の検出時点t1から上記エンジン出力低減手段4の作動を開始するまでの作動待機時間Tを、上記制動状態判別手段5の判別結果に応じて設定する(ステップS4)。すなわち、図2に示す対応テーブルと、上記制動状態判別手段5により測定されたマスターバック装置内の負圧値とに基づき、該負圧値に対応した上記作動待機時間Tを例えば0.6秒〜10秒の範囲内で設定することにより、上記制動状態判別手段5により車両を迅速に制動できる状態にないと判別された場合に、車両を迅速に制動できる状態にあると判別された場合に比べて作動待機時間Tを短い値に設定する。
【0030】
次いで、上記アクセル検出手段1およびブレーキ検出手段2の出力信号に応じて上記アクセルおよびブレーキの同時操作が解消されたか否かを判定し(ステップS5)、YESと判定された場合には、エンジン出力低減手段4によりエンジンの出力を低下させる制御を実行することなく、そのままリターンする。
【0031】
上記ステップS5でNOと判定されてアクセルおよびブレーキの同時操作が継続していることが確認された場合には、上記作動待機時間Tが経過したか否かを判定し(ステップS6)、NOと判定された場合には、ステップS5に戻って上記制御動作を繰り返す。そして、上記ステップS6でYESと判定されてアクセルおよびブレーキの同時操作が継続した状態で上記作動待機時間Tが経過したことが確認された場合には、その時点t2で上記エンジン出力低減手段4においてエンジンの出力を低下させる制御を実行する(ステップS7)。例えば、上記時点t2で、図3の破線Aに示すようにスロットル弁の開度を0に低下させる制御信号を出力することにより、エンジン回転数をアイドル回転数に低下させる制御を実行する。
【0032】
なお、運転者がその意図に範囲してアクセル操作とブレーキ操作とを同時に行う誤操作を行った後に、上記エンジン出力低減手段4によりエンジンの出力を低下させる制御が実行され、運転者が上記誤操作に気付いてブレーキペダルから足を離した場合には、図3の破線Bに示すように、ブレーキスイッチスイッチがOFF状態となったことが検出された時点t4でスロットル弁の開度Thをアクセルペダルの操作量に対応した値に復帰させる制御が実行されるようになっている。
【0033】
また、上記ステップS3でYESと判定されてエンジン始動後の同一の運転サイクルで、エンジン出力低減手段4を作動させてエンジン出力を低下させる制御が実行された後に、再びアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された場合には、その時点6で上記待機時間設定手段6において作動待機時間Tを最短時間である0.6秒に設定した後(ステップS8)、上記ステップS5に移行してアクセルおよびブレーキの同時操作が解消されたか否かを判定する。そして、アクセルおよびブレーキの同時操作が継続した状態で上記作動待機時間T(0.6秒)が経過したことが確認された時点で、スロットル弁の開度を0に低下させる制御信号を出力することにより、エンジン回転数をアイドル回転数に低下させる制御を実行する。
【0034】
上記のようにアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたときにエンジンの出力を低下させるエンジン出力低減手段4を備えた車両のエンジン出力制御装置において、アクセル操作が行われたことを検出するアクセル検出手段1と、ブレーキ操作が行われたことを検出するブレーキ検出手段2と、車両を迅速に制動できる状態にあるか否かを判別する制動状態判別手段5と、上記アクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された時点から上記エンジン出力低減手段4を作動させてエンジン出力を低下させるまでの作動待機時間Tを上記制動状態判別手段5の判別結果に応じて設定する待機時間設定手段6とを設け、該待機時間設定手段6において設定される作動待機時間Tを、制動状態判別手段5により車両を迅速に制動できる状態にないと判別された場合に、車両を迅速に制動できる状態にあると判別された場合に比べて短くするように構成したため、運転者が予期していないエンジンの出力制御が実行されることを正確かつ迅速に防止できるという利点がある。
【0035】
すなわち、上記実施形態では、マスターバック装置内の負圧値が大きいほど上記作動待機時間Tが長くなるように設定された対応テーブルと、上記制動状態判別手段5により測定されたマスターバック装置内の負圧値とに基づき、該負圧値に対応した上記作動待機時間Tを設定することにより、上記マスターバック装置内の負圧値が充分に大きく、運転者のブレーキ操作に応じて迅速に制動力を付与できる状態にある場合には、上記作動待機時間Tを長い時間に設定するように構成している。このため、運転者がそのペダル操作足(右足)をブレーキペダルに載せた状態でそのままアクセルペダルに踏み換える等の癖を有し、その踏み換え操作が不適切になることに起因してアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われる等の誤操作が生じ易い場合には、アクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された時点で直ちに上記エンジン出力低減手段4によりエンジン出力を低下させる制御が実行されることはない。
【0036】
したがって、運転者が上記誤操作を行ったことに直ぐに気が付いて、ブレーキペダルから足を離したような場合に、上記エンジン出力低減手段4によりエンジン出力の低下制御が実行されるのを防止して運転者が違和感を受けるのを防止することができる。また、運転者が上記誤操作に気付くことなく、上記作動待機時間Tが経過した場合には、エンジン出力低下手段4を作動させてエンジン出力を低下させることにより運転者に注意を促すことができる。
【0037】
一方、長い下り坂の走行時等にブレーキ操作を頻繁に行った場合には、マスターバック装置内の負圧値が次第に減少し、ブレーキペダルを強く踏まないと充分な制動力を得にくい状態となるため、上記マスターバック装置内の負圧値が小さい場合には、上記作動待機時間Tを短い時間に設定する。これにより、運転者が制動力を付与しようとしてブレーキペダルとアクセルペダルとを同時に踏み込むという誤操作が生じた場合においても、エンジン出力低減手段4によりエンジン出力の低下制御が長時間に亘り実行されず、かつ上記マスターバック装置内の負圧値が小さいために迅速な制動が困難になるという事態の発生を効果的に防止し、運転者の制動意図に適合した出力制御を実行することができる。
【0038】
特に、上記実施形態では、マスターバック装置内の負圧値に応じて上記作動待機時間Tをリニアに変化させるように構成したため、マスターバック装置内の負圧値がそれ程小さくないにも拘わらず、上記エンジン出力低減手段4によるエンジン出力の低下制御が直ちに実行されたり、マスターバック装置内の負圧値がかなり小さいにも拘わらず、上記エンジン出力の低下制御が長期間に亘って実行されなかったりすることを効果的に防止し、運転者の制動意図度合に応じたエンジン出力の低下制御を、より正確かつ迅速に防止できるという利点がある。
【0039】
また、上記実施形態では、エンジン始動後の同一運転サイクルで、エンジン出力低減手段4を作動させてエンジン出力を低下させる制御が実行された後に、再びアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された場合に、上記待機時間設定手段6により設定される作動待機時間Tを、上記制動状態判別手段5の判別結果の如何に拘わらず最短時間、例えば0.6秒に設定するように構成したため、運転者がそのペダル操作足をブレーキペダルに載せた状態でそのままアクセルペダルに踏み換える等の癖を有していることを運転者に対して迅速かつ適正に認識させることができる。
【0040】
すなわち、エンジン始動後の同一運転サイクルにおいて、最初にアクセルおよびブレーキの同時操作が行われたことが検出された時点でエンジン出力低減手段4を作動させてエンジン出力を低下させる制御を実行することにより、運転者に注意を促すことができる。したがって、再びアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された時点で直ちに上記エンジン出力低減手段4によりエンジン出力を低下させる制御を実行するように構成した場合においても、運転者にそれ程強い違和感を与えることなく、上記癖に起因した誤操作を行ったことを運転者に対して迅速に認識させることにより、上記誤操作を早期に解消できるという利点がある。
【0041】
なお、マスターバック装置の負圧状態を直接測定する圧力センサの測定値、またはエンジンの運転状態および走行環境に基づいてマスターバック装置の負圧状態を間接的に測定した測定値に応じ、車両を迅速に制動できる状態にあるか否か上記制動状態判別手段5において判別するように構成した上記実施形態に代え、車両の駆動力と走行抵抗とに基づいて設定された車両の運動モデルから車両の駆動力と走行抵抗とを上記制動状態判別手段5において演算し、その演算値に基づいて車両を迅速に制動できる状態にあるか否かを判別するように構成してもよい。
【0042】
すなわち、ブレーキ操作を行う前の走行状態では、車両の駆動力と走行抵抗とが釣り合った状態にあり、図5に示すように、該走行抵抗は、車両の転がり抵抗と、空気抵抗と、加速抵抗と、勾配抵抗とを加算した値となる。そして、車体重量をM(kg)、重力加速度をg(m/s)、車両の転がり抵抗係数をμR、空気抵抗係数をμ1、前面投影面積をA(m)、車速をV(km/h)、等価慣性重量をMr(kg)、車両の加速度をdV/dt(m/s)、路面の勾配角をθ(degree)とすると、上記車両の転がり抵抗はM・g・μRとなり、空気抵抗はμ1・A・Vとなり、加速抵抗は(M+Mr)・dV/dtとなり、勾配抵抗はM・g・sinθとなり、路面の勾配(sinθ)は(駆動力−空気抵抗−加速抵抗)/(M・g)−Urとなるため、以下の式が成立する。
【0043】
駆動力=走行抵抗
=車両の転がり抵抗−空気抵抗−加速抵抗−勾配抵抗
=M・g・μR−μ1・A・V・−(M+Mr)・dV/dt−M・g・sinθ
したがって、エンジンから駆動輪に付与される車両の駆動力と、予め分かっている車体重量等からなる車両の特性と、その走行状態とに基づいて設定された上記式からなる車両の運動モデルから、ブレーキ操作を行う際に車両を迅速に制動できる状態にあるか否かを制動状態判別手段5において判別することができる。例えば、上り坂の走行時には、上記勾配抵抗M・g・sinθが大きくなって車両を迅速に制動できる状態にあると判別され、逆に上り坂の走行時には、上記勾配抵抗M・g・sinθがマイナスの値となって車両を迅速に制動できる状態にあると判別されることになる。
【0044】
上記のように上り坂の走行時に等において車両の走行抵抗が大きい場合に、車両を迅速に制動できる状態にあると判別して上記作動待機時間Tが長い値に設定することにより、車両を迅速に制動できる状態で上記エンジン出力低減手段4によるエンジン出力の低下制御が直ちに実行されたり、逆に下り坂の走行時に等において車両の走行抵抗が小さい場合に、車両を迅速に制動できない状態にあるにも拘わらず、上記作動待機時間Tが長く設定されることに起因して、上記エンジン出力の低下制御が長期間に亘って実行されなかったりすることを効果的に防止し、運転者の制動意図に応じたエンジン出力の低下制御を、より正確かつ迅速に防止できるという利点がある。
【0045】
なお、上記式において、転がり抵抗係数、空気抵抗、係数加速抵抗および車速等には、様々なノイズが存在しており、該ノイズを除去する方法としては、制動力の一次応答遅れによりスパイク信号を除去する方法があるが、確実に精度を上げることができるのは車速信号である。例えば、図6および図7に示すフローチャートに基づいてノイズを除去した車速の演算方法を以下に説明する。
【0046】
まず、各車輪に設けられた車輪速センサの出力信号に応じて、駆動輪の平均速度vdおよび従動輪の平均速度vfを算出するとともに(ステップS21)、駆動輪の平均加速度adおよび従動輪の平均加速度afを算出する(ステップS22)。その後に、左後輪、右前輪および右後輪からなる三輪の平均速度va1と、左後輪、左前輪、右後輪からなる三輪の平均速度va2と、左前輪、右後輪および右前輪からなる三輪の平均速度va3と、右後輪、左前輪、右前輪からなる三輪の平均速度va4とを算出する(ステップS23)。
【0047】
次いで、上記駆動輪の平均速度vdが適正範囲外であるか否かを判定する(ステップS24)。具体的には、駆動輪の平均速度vdが、従動輪の平均速度vfに10%を掛け合わせた値よりも大きい場合、または小さい場合に、駆動輪の平均加速度adが適正範囲外にあると判定し、かつ駆動輪の平均加速度adが、予め設定された上限値よりも大きい場合、または予め設定された下限値よりも小さい場合に、駆動輪の平均速度vdが適正範囲外にあると判定する。上記ステップS24でYESと判定されて駆動輪の平均速度vdが適正範囲外にあることが確認された場合には、そのことを示す状態値x1を設定する(ステップS25)。
【0048】
上記ステップS24でNOと判定された場合には、従動輪の平均速度vfが適正範囲外であるか否かを判定する(ステップS26)。具体的には、従動輪の平均速度vfが、駆動輪の平均速度vdに10%を掛け合わせた値よりも大きい場合、または小さい場合に、従動輪の平均速度vfが適正範囲外にあると判定し、かつ従動輪の平均加速度afが、予め設定された上限値よりも大きい場合、または予め設定された下限値よりも小さい場合に、従動輪の平均速度vfが適正範囲外にあると判定する。上記ステップS26でYESと判定されて従動輪の平均速度vfが適正範囲外にあることが確認された場合には、そのことを示す状態値x2を設定する(ステップS27)。
【0049】
上記ステップS26でNOと判定された場合には、左前輪の回転速度が適正範囲外であるか否かを判定するとともに(ステップS28)、右前輪の回転速度が適正範囲外であるか否かを判定する(ステップS29)。具体的には、左前輪の回転速度が、上記三輪の平均速度va1に10%を掛け合わせた値よりも大きい場合、または小さい場合に、左前輪の回転速度が適正範囲外にあると判定し、かつ右前輪の回転速度が、上記三輪の平均速度va2に10%を掛け合わせた値よりも大きい場合、または小さい場合に、右前輪の回転速度が適正範囲外にあると判定する。上記ステップS28またはステップS29でYESと判定されて左前輪または右前輪の何れか一方の回転速度が適正範囲外にあることが確認された場合には、そのことを示す状態値x3を設定する(ステップS30)。
【0050】
同様にして、左後輪の回転速度と上記三輪の平均速度va3に10%を掛け合わせた値とを比較することにより、左後輪の回転速度が適正範囲外であるか否かと判定するとともに(ステップS31)、右後輪の回転速度と上記三輪の平均速度va4に10%を掛け合わせた値とを比較することにより、右後輪の回転速度が適正範囲外であるか否かと判定する(ステップS32)。上記ステップS31またはステップS32でYESと判定されて左後輪または右後輪の何れか一方の回転速度が適正範囲外にあることが確認された場合には、そのことを示す状態値x4を設定する(ステップS33)。
【0051】
その後、車輪の駆動方式が後輪駆動車FRであるか否かを判定し(ステップS35)、YESと判定されて後輪駆動車FRであることが確認された場合には、上記状態値としてx1が設定されているか否かを判定する(ステップS36)、該ステップS35でYESと判定されて駆動輪(後輪)の平均速度vdが適正範囲外にあることが確認された場合には、前輪の回転速度に基づいて車速Vを算出する(ステップS37)。
【0052】
上記ステップS35の判定結果がNOであり、駆動輪(後輪)の平均速度vdが適正範囲外にあると判定されなかった場合には、上記状態値としてx2が設定されているか否かを判定する(ステップS38)、該ステップS38でYESと判定されて従動輪(前輪)の平均速度vfが適正範囲外にあることが確認された場合には、後輪の回転速度に基づいて車速Vを算出する(ステップS39)。
【0053】
上記ステップS38の判定結果がNOであり、従動輪(前輪)の平均速度vfが適正範囲外にあると判定されなかった場合には、上記状態値としてx3が設定されているか否かを判定する(ステップS40)、該ステップS40でYESと判定されて左前輪または右前輪の回転速度が適正範囲外にあることが確認された場合には、上記ステップS39に移行して後輪の回転速度に基づいて車速Vを算出する。
【0054】
上記ステップS40の判定結果がNOであり、左前輪および右前輪の回転速度が適正範囲外であると判定されなかった場合には、上記状態値としてx4が設定されているか否かを判定する(ステップS41)、該ステップS41でYESと判定されて左後輪または右後輪の回転速度が適正範囲外にあることが確認された場合には、上記ステップS37に移行して前輪の回転速度に基づいて車速Vを算出する。なお、上記ステップS41の判定結果がNOであり、左後輪および右後輪の回転速度が適正範囲外にあると判定されなかった場合には、駆動輪の平均速度Vdに基づいて車速Vを算出する(ステップS42)。
【0055】
一方、上記ステップS35でNOと判定されて前輪駆動車FFであることが確認された場合には、上記状態値としてx1が設定されているか否かを判定する(ステップS43)、該ステップS43でYESと判定されて駆動輪(前輪)の平均速度vdが適正範囲外にあることが確認された場合には、ステップS39に移行して後輪の回転速度に基づいて車速Vを算出する。
【0056】
上記ステップS43の判定結果がNOであり、駆動輪(前輪)の平均速度vdが適正範囲外にあると判定されなかった場合には、上記状態値としてx2が設定されているか否かを判定する(ステップS44)、該ステップS44でYESと判定されて従動輪(後輪)の平均速度vfが適正範囲外にあることが確認された場合には、ステップS37に移行して前輪の回転速度に基づいて車速Vを算出する。
【0057】
上記ステップS44の判定結果がNOであり、従動輪(後輪)の平均速度vfが適正範囲外にあると判定されなかった場合には、上記状態値としてx3が設定されているか否かを判定する(ステップS45)、該ステップS45でYESと判定されて左前輪または右前輪の回転速度が適正範囲外にあることが確認された場合には、上記ステップS39に移行して後輪の回転速度に基づいて車速Vを算出する。
【0058】
上記ステップS45の判定結果がNOであり、左前輪および右前輪の回転速度が適正範囲外にあると判定されなかった場合には、上記状態値としてx4が設定されているか否かを判定する(ステップS46)、該ステップS46でYESと判定されて左後輪または右後輪の回転速度が適正範囲外にあることが確認された場合には、上記ステップS37に移行して前輪の回転速度に基づいて車速Vを算出する。なお、上記ステップS46の判定結果がNOであり、左後輪および右後輪の回転速度が適正範囲外にあると判定されなかった場合には、ステップS42に移行して駆動輪の平均速度Vdに基づいて車速Vを算出する。
【0059】
上記構成によれば、車両の走行時に特定の車輪が路面から離間したり、各車輪の回転速度を検出する車輪速センサの一つに故障が生じたりすることに起因して、当該車輪の回転速度を正確に検出することができなかった場合においても、他の車輪の回転速度等に基づいて車速Vを適正に検出することが可能である。したがって、当該車速Vに基づいて車両を迅速に制動できる状態にあるか否かを制動状態判別手段5により適正に判別して、運転者の予期しない車両の出力制御が実行されるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0060】
また、上記制動状態判別手段5の判別結果に基づいたエンジン出力の制御を実行する前に、上記制動状態判別手段5に検出信号を入力する車輪速センサ等からなる検出手段に故障が発生しているか否かを上記制動状態判別手段5において判別し、上記検出手段に故障が発生していると判別された場合には、上記待機時間設定手段6により作動待機時間を設定することなく、上記アクセル検出手段1およびブレーキ検出手段2の検出信号に応じて上記アクセルおよびブレーキの同時操作が検出されるとともに、ブレーキ操作量が一定値となったことが検出された時点で上記エンジン出力低減手段4を作動させることにより、エンジンの出力を低減するように構成してもよい。
【0061】
上記のように構成した場合には、故障が生じた検出手段の検出値に基づく不正確な出力制御が実行されるのを防止して、運転者に違和感が与えるのを効果的に防止することができる。なお、上記ブレーキ検出手段2に故障が生じることに起因してアクセルペダルを操作した通常の運転時に、運転者の意図に反して上記エンジン出力低減手段4によりエンジンの出力を低減する制御が実行されるのを防止するため、作動状態判別手段5によりブレーキ検出手段2に故障が生じたことが検出された場合には、上記エンジン出力低減手段4によるエンジンの出力制御を禁止するように構成することが望ましい。
【符号の説明】
【0062】
1 アクセル検出手段
2 ブレーキ検出手段
4 エンジン出力低減手段
5 制動状態判別手段
6 待機時間設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたときにエンジンの出力を低下させるエンジン出力低減手段を備えた車両のエンジン出力制御装置において、アクセル操作が行われたことを検出するアクセル検出手段と、ブレーキ操作が行われたことを検出するブレーキ検出手段と、車両を迅速に制動できる状態にあるか否かを判別する制動状態判別手段と、上記アクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された時点から上記エンジン出力低減手段を作動させてエンジン出力を低下させるまでの作動待機時間を上記制動状態判別手段の判別結果に応じて設定する待機時間設定手段とを有し、上記制動状態判別手段により車両を迅速に制動できる状態にないと判別された場合には、車両を迅速に制動できる状態にあると判別された場合に比べて作動待機時間を短くするように構成したことを特徴とする車両の出力制御装置。
【請求項2】
車両のブレーキ系に、吸気負圧を利用して制動力を倍加するマスターバック装置を有し、上記制動状態判別手段は、該マスターバック装置内の負圧値が大気圧に近いほど、車両を迅速に制動できる状態にないと判別するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の出力制御装置。
【請求項3】
上記制動状態判別手段は、車両の駆動力と走行抵抗とに基づいて設定された車両の運動モデルから車両の駆動力と走行抵抗とを演算し、その演算値に基づいて車両を迅速に制動できる状態にあるか否かを判別するように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の出力制御装置。
【請求項4】
上記制動状態判別手段に検出信号を入力する検出手段に故障が発生しているか否かを検出し、該検出手段に故障が発生していると判定された場合には、上記待機時間設定手段により作動待機時間を設定することなく、上記アクセル検出手段およびブレーキ検出手段の検出信号に応じてアクセルおよびブレーキの同時操作が検出されるとともに、ブレーキ操作量が一定値となったことが検出された時点で上記エンジン出力低減手段を作動させるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の車両の出力制御装置。
【請求項5】
エンジン始動後の同一運転サイクルで、エンジン出力低減手段を作動させてエンジン出力を低下させる制御が実行された後に、再びアクセル操作とブレーキ操作とが同時に行われたことが検出された場合には、上記待機時間設定手段により設定される作動待機時間を、上記制動状態判別手段の判別結果の如何に拘わらず最短時間に設定するように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の出力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225233(P2012−225233A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92886(P2011−92886)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】