説明

車両の灯具装置

【課題】車室に設けられる灯具に対しカバー体が係止されている場合において、灯具からのカバー体の取り外し作業が容易にできるようにする。
【解決手段】車両の灯具装置は、車室3内に設置される灯具15と、この灯具15の一部外面を覆うカバー体16と、このカバー体16を灯具15に対し係脱可能に係止させる係止部18とを備える。カバー体16の一部分に上記灯具15側に向かって膨出する膨出部33を形成し、この膨出部33の外面部に係止部18を形成する。膨出部33の内部空間34の内面側に対する操作力に基づく外力により、膨出部33が弾性的に撓み可能とされ、この膨出部33の撓みに係止部18が連動するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に設置される灯具と、この灯具の一部外面を覆うカバー体とを設け、このカバー体を上記灯具に係止させるようにした車両の灯具装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両の灯具装置には、従来、下記特許文献1の特に第1図〜第4図に示されるものがある。この公報のものによれば、車両の灯具装置は、ストップランプであって、車室内に設置される灯具と、この灯具の一部外面を覆うカバー体と、このカバー体を上記灯具に対し係脱可能に係止させる係止部とを備えている。
【0003】
上記灯具は、ブレーキ操作時に、上記カバー体とは反対側である車体の後方側に向かって光を照射することとされている。一方、上記灯具におけるバルブの交換時などに、上記灯具からカバー体の取り外し作業をする場合には、まず、このカバー体の下端部を左右から挟むように押圧して、このカバー体を弾性変形させる。すると、この弾性変形に連動して上記各係止部による上記灯具への係止が解除され、上記灯具からのカバー体の取り外しができることとされている。
【特許文献1】実開平4−69802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の技術において、上記したように灯具からカバー体を取り外す作業をする場合には、このカバー体を左右から挟んで弾性変形させることが要求される。
【0005】
しかし、車両の走行時の振動などにより、上記カバー体自体にがたつきが生じないよう、また、上記灯具へのカバー体の係止が不意に解除されることがないよう、通常、上記カバー体にはある程度の剛性が与えられている。このため、上記したようにカバー体を左右から挟んで弾性変形させる、ということは容易にはし難いおそれがあり、つまり、上記した灯具からのカバー体の取り外し作業は煩雑になるおそれがある。
【0006】
しかも、上記灯具へのカバー体の係止状態を、外観上、見ることは、上記カバー体によって遮られるため、上記取り外し作業は更に煩雑になるおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車室に設けられる灯具に対しカバー体が係止されている場合において、上記灯具からのカバー体の取り外し作業が容易にできるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、車室3内に設置される灯具15と、この灯具15の一部外面を覆うカバー体16と、このカバー体16を上記灯具15に対し係脱可能に係止させる係止部18とを備えた車両の灯具装置において、
上記カバー体16の一部分に上記灯具15側に向かって膨出する膨出部33を形成し、この膨出部33の外面部に上記係止部18を形成し、上記膨出部33の内部空間34の内面側に対する操作力に基づく外力により、上記膨出部33が弾性的に撓み可能とされ、この膨出部33の撓みに上記係止部18が連動するようにしたことを特徴とする車両の灯具装置である。
【0009】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明による効果は、次の如くである。
【0011】
請求項1の発明は、車室内に設置される灯具と、この灯具の一部外面を覆うカバー体と、このカバー体を上記灯具に対し係脱可能に係止させる係止部とを備えた車両の灯具装置において、
上記カバー体の一部分に上記灯具側に向かって膨出する膨出部を形成し、この膨出部の外面部に上記係止部を形成し、上記膨出部の内部空間の内面側に対する操作力に基づく外力により、上記膨出部が弾性的に撓み可能とされ、この膨出部の撓みに上記係止部が連動するようにしている。
【0012】
このため、上記灯具におけるバルブの交換時などに、この灯具からカバー体を取り外す作業をする場合には、まず、上記膨出部の内部空間の内面側に対し操作力に基づく外力を与える。そして、この外力により上記膨出部を弾性的に撓ませ、これに連動する上記係止部を上記灯具から離脱させてこの灯具への係止を解除させればよい。よって、上記カバー体が全体的に剛性を有しているとしても、上記膨出部を含むこの膨出部の周りさえ、少し弾性変形させ易くしておけば、上記灯具からのカバー体の取り外し作業は容易にすることができる。
【0013】
また、上記膨出部の内部空間は、上記カバー体の外面に開口するものであって、このカバー体の外方から容易に見ることができるため、上記内部空間の内面側に操作力に基づく外力を与えることは容易にできる。よって、上記取り外し作業は更に容易にすることができる。
【0014】
しかも、上記膨出部の内部空間は、上記カバー体の一部を膨出させることにより形成したものであるため、第1に、上記内部空間を通して灯具の灯りがカバー体の外部側(車室内)に漏れる、ということは防止される。また、第2に、上記カバー体に単に貫通孔を形成することに比べて、このカバー体の強度低下が防止される。よって、上記したように、カバー体の取り外し作業が容易にできるようにした場合でも、灯具装置の外観上の見栄えが良好に保たれると共に、上記カバー体の強度も良好に保たれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の車両の灯具装置に関し、車室に設けられる灯具に対しカバー体が係止されている場合において、上記灯具からのカバー体の取り外し作業が容易にできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0016】
即ち、車両の灯具装置は、車室内に設置される灯具と、この灯具の一部外面を覆うカバー体と、このカバー体を上記灯具に対し係脱可能に係止させる係止部とを備える。上記カバー体の一部分に上記灯具側に向かって膨出する膨出部が形成され、この膨出部の外面部に上記係止部が形成される。上記膨出部の内部空間の内面側に対する操作力に基づく外力により、上記膨出部が弾性的に撓み可能とされ、この膨出部の撓みに上記係止部が連動する。
【実施例】
【0017】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0018】
図において、符号1は、自動車で例示される車両である。また、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは車両1の幅方向をいうものとする。
【0019】
車両1の車体2の内部が車室3とされ、車体2の後壁4はインナパネル5とアウタパネル6とで構成されている。上記後壁4にはリヤウィンド9が設けられている。このリヤウィンド9は、上記後壁4に形成されるウィンド開口10と、このウィンド開口10を閉じるウィンドガラス11とを備えている。
【0020】
上記車室3の後上端部にはストッパランプである灯具装置14が設けられている。この灯具装置14は、上記後壁4に支持され、ブレーキ操作時に点灯して、この操作をしたことを上記ウィンドガラス11を通し車両1の後方に向けて表示する灯具15と、この灯具15の一部外面である前面を車室3の前部側から覆う樹脂製のカバー体16と、このカバー体16の左右各側部を上記灯具15の左右各側部に係脱可能に係合させる左右一対の係合部17,17と、上記カバー体16の上部を上記灯具15の上部に係脱可能に係止させる左右一対の係止部18,18とを備えている。上記カバー体16は、上記各係合部17と係止部18とにより上記灯具15に着脱可能に支持される。上記灯具装置14は、その左右方向の中央を通る中心線19を基準として、左右ほぼ対称形とされている。
【0021】
上記灯具15は、バルブ21と、このバルブ21を着脱可能に装着させる装着部22と、上記バルブ21をその後方(ウィンドガラス11側)から覆って上記装着部22に取り付けられるレンズ23と、上記装着部22の上面から上方に向かって突出し、上記ウィンド開口10の開口縁部の上部に係脱可能に係止される左右一対の係止具24,24とを備えている。これら各係止具24は、上記ウィンド開口10の開口縁部の上部におけるインナパネル5に形成された係止孔25に係脱可能に係止されて、上記後壁4に灯具15を支持させている。
【0022】
上記カバー体16は車両1の側面断面視(図1)でL字形状をなし、その上端部はシール材28を介して上記インナパネル5の下面に当接し、下後端部は上記シール材28を介してウィンドガラス11の内面に当接している。
【0023】
上記各係合部17は、上記灯具15の左右各外側面に一体的に突設される係合突起29と、上記カバー体16の左右各内側面に一体的に突設された突起に形成され、後方に向かって開口する係合凹部30とを備えている。上記灯具15の前方から上記カバー体16を後方移動させて上記灯具15に外嵌させると、上記係合突起29に係合凹部30が嵌脱可能に嵌合する。これら各係合部17の作用により、前記したように、カバー体16は灯具15に係脱可能に係合させられる。
【0024】
前記各係止部18は、上記カバー体16の上端部から後方に向かって一体的に突出するよう形成され、各係止部18はフック形状とされている。一方、上記装着部22の前上端部には前方に向かって突出する左右一対の係止部であるフック部31が形成されている。これら各フック部31に対し、上記カバー体16が有する弾性力により上記各係止部18が弾性的に係脱可能に係止される。
【0025】
上記カバー体16の一部分である上部に、上記灯具15側(後方)に向かって膨出する左右一対の膨出部33,33が形成されている。これら各膨出部33の外面部に上記各係止部18が一体的に形成されている。上記各膨出部33の内部空間34は前下方に向かって開口し、この内部空間34には、ドライバーなど工具35の先端部が挿入可能とされている。
【0026】
図3中一点鎖線で示すように、上記膨出部33の内部空間34に工具35の先端部を挿入して、この工具35への手動によるこじり操作により、上記内部空間34の内面側に対し、上記こじり操作の操作力に基づく外力を与えると、上記膨出部33が弾性的に撓み可能とされている。また、この膨出部33の撓みに上記係止部18が連動して、上記装着部22のフック部31への上記係止部18の係止が解除可能とされている。
【0027】
なお、以上は図示の例によるが、上記係合部17の係合突起29と係合凹部30とは、上記灯具15とカバー体16とへの形成を逆にしてもよい。また、上記装着部22のフック部31は、上記係止部18を嵌脱可能に嵌入させて係止させる係止孔にしてもよく、上記係止部18を係止孔とし、これを上記フック部31に係止させるようにしてもよい。また、上記係止部18や膨出部33は左右方向で単一であってもよく、3つ以上の複数であってもよい。また、上記膨出部33の内部空間34に指や爪を挿入可能として、これらによる外力で上記膨出部33を弾性的に撓ませるようにしてもよい。
【0028】
上記構成によれば、カバー体16の一部分に上記灯具15側に向かって膨出する膨出部33を形成し、この膨出部33の外面部に上記係止部18を形成し、上記膨出部33の内部空間34の内面側に対する操作力に基づく外力により、上記膨出部33が弾性的に撓み可能とされ、この膨出部33の撓みに上記係止部18が連動するようにしている。
【0029】
このため、上記灯具15におけるバルブ21の交換時などに、この灯具15からカバー体16を取り外す作業をする場合には、まず、上記膨出部33の内部空間34の内面側に対し操作力に基づく外力を与える。そして、この外力により上記膨出部33を弾性的に撓ませ、これに連動する上記係止部18を上記灯具15から離脱させてこの灯具15への係止を解除させればよい。よって、上記カバー体16が全体的に剛性を有しているとしても、上記膨出部33を含むこの膨出部33の周りさえ、少し弾性変形させ易くしておけば、上記灯具15からのカバー体16の取り外し作業は容易にすることができる。
【0030】
また、上記膨出部33の内部空間34は、上記カバー体16の外面に開口するものであって、このカバー体16の外方から容易に見ることができるため、上記内部空間34の内面側に操作力に基づく外力を与えることは容易にできる。よって、上記取り外し作業は更に容易にすることができる。
【0031】
しかも、上記膨出部33の内部空間34は、上記カバー体16の一部を膨出させることにより形成したものであるため、第1に、上記内部空間34を通して灯具15のバルブ21の灯りがカバー体16の外部側(車室3内)に漏れる、ということは防止される。また、第2に、上記カバー体16に単に貫通孔を形成することに比べて、このカバー体16の強度低下が防止される。よって、上記したように、カバー体16の取り外し作業が容易にできるようにした場合でも、灯具装置14の外観上の見栄えが良好に保たれると共に、上記カバー体16の強度も良好に保たれる。
【0032】
また、特に、上記内部空間34を工具35のみ挿入可能にすれば、指や爪を挿入可能にすることに比べて、上記内部空間34の開口面積を小さく形成できる。よって、上記カバー体16の外面の面積に対する上記内部空間34の開口面積の占める比率を十分に小さくできることから、上記灯具装置14の外観上の見栄えをより良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】灯具装置の側面断面図である。
【図2】灯具装置の部分平面図である。
【図3】図1の部分拡大作用説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 車両
2 車体
3 車室
4 後壁
5 インナパネル
6 アウタパネル
14 灯具装置
15 灯具
16 カバー体
17 係合部
18 係止部
21 バルブ
22 装着部
23 レンズ
29 係合突起
30 係合凹部
31 フック部
33 膨出部
34 内部空間
35 工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設置される灯具と、この灯具の一部外面を覆うカバー体と、このカバー体を上記灯具に対し係脱可能に係止させる係止部とを備えた車両の灯具装置において、
上記カバー体の一部分に上記灯具側に向かって膨出する膨出部を形成し、この膨出部の外面部に上記係止部を形成し、上記膨出部の内部空間の内面側に対する操作力に基づく外力により、上記膨出部が弾性的に撓み可能とされ、この膨出部の撓みに上記係止部が連動するようにしたことを特徴とする車両の灯具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−179291(P2009−179291A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22497(P2008−22497)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】