説明

車両の熱管理システム及び熱管理方法

【課題】熱をより効率的に利用可能な車両の熱管理システム及び熱管理方法を提供する。
【解決手段】熱を蓄えるためのヒートマスとしてバッテリー2を利用するとともに、プラグインによるバッテリー2の充電中に同バッテリー2への蓄熱を行い、車両の走行中にバッテリー2に蓄えられた熱を車室内の空調装置30に供給することで、車両の熱利用の効率化を図るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の熱管理システム及び熱管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、蓄冷剤が収容された蓄冷部を、バッテリー収容用のケースに一体的に設けるとともに、車両走行中に走行風等を利用して蓄冷剤を冷却しておくことで、駐車中にその冷却された蓄冷剤でバッテリーを冷却するバッテリー冷却システムが提案されている。すなわち、このバッテリー冷却システムは、バッテリーのケースと一体に、冷熱を蓄えるためのヒートマスとなる蓄冷部を設けるとともに、車両走行中にその蓄冷部に蓄えた冷熱で駐車中のバッテリーの冷却を行うものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−193832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年には、環境性能の向上を目的として、車両の電動化やハイブリッド化が進められている。電気自動車では、車室内の暖房等に利用可能な熱を供給する熱源としての内燃機関が搭載されておらず、またハイブリッド車両では、電動アシストが得られる分、内燃機関が小型化されている。そのため、電気自動車、ハイブリッド車では、利用可能な熱が内燃機関車よりも少なくなっており、熱の効率利用が必要となる。
【0005】
その点、上記のようなバッテリー冷却システムは、駐車中のバッテリーの冷却には確かに有効ではあるものの、バッテリーからの放熱は、何らの利用もなされておらず、車両の熱利用効率の点で更なる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、熱をより効率的に利用可能な車両の熱管理システム及び熱管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、車両の熱管理システムとしての請求項1に記載の発明は、熱を蓄えるためのヒートマスとしてバッテリーを利用するとともに、そのバッテリーに蓄えられた熱を車室内の空調に供する熱供給手段を備えるようにしている。
【0008】
上記の如く構成された車両の熱管理システムでは、バッテリーに温熱或いは冷熱が蓄えられるようになる。そしてバッテリーに蓄えられた熱が車室内の空調に利用されるようになる。こうした車両では、バッテリーに熱を一時的に預けておくことで、熱を生成する時期と、その熱を空調に利用する時期とをずらすことができるようになる。そのため、空調の利用時ではなく、効率的な熱生成が可能な時期に空調用の熱を生成することができるようになる。また蓄熱に必要なヒートマスとしてバッテリーを利用するため、蓄熱用に格別なヒートマスを設ける必要もない。したがって、上記構成によれば、熱をより効率的に利用することができるようになる。
【0009】
ところで近年には、外部からの電力供給でバッテリーの充電を行う、いわゆるプラグイン方式の電気自動車やハイブリッド車両が実用されている。バッテリーに蓄えられる熱の生成を電力で行う場合、その電力をバッテリーから得るのであれば、使用電力が増大して車両の航続距離が短くなってしまう。その点、請求項2に記載のように、バッテリーへの蓄熱を、外部からの電力供給による該バッテリーの充電中に実施するとともに、バッテリーから空調への熱の供給を、車両の走行中に行うようにすれば、走行中の車両の消費電力を増大せずとも車室内の空調を行うことができるようになる。したがって、請求項2に記載の発明によれば、空調利用時の車両の航続距離を延長することができるようになる。
【0010】
ちなみに、プラグイン中のバッテリーへの蓄熱は、請求項3によるように、バッテリーの周囲を通って循環される冷媒を、外部から供給された電力を利用して加熱又は冷却する熱源を備えることで行うことが可能である。
【0011】
上記課題を解決するため、車両の熱管理システムとしての請求項4に記載の発明は、バッテリーを収容するとともに、同バッテリーを外部から断熱する保温容器と、その保温容器に収容されたバッテリーを加熱又は冷却する手段と、を備えるようにしている。こうした車両では、熱を蓄えるヒートマスとしてバッテリーを利用することができるようになる。そしてバッテリーに熱を一時的に預けておくことで、熱を生成する時期と、その熱を利用する時期とをずらすことができるようになる。そのため、熱の使用時ではなく、効率的な熱生成が可能な時期に熱を生成することができるようになる。また蓄熱に必要なヒートマスとしてバッテリーを利用するため、蓄熱用に格別なヒートマスを設ける必要もない。したがって、上記構成によれば、熱をより効率的に利用することができるようになる。
【0012】
なお請求項5によるように、バッテリーに蓄えられた熱を車室内の空調に供給する熱供給手段を備えるようにすれば、バッテリーに蓄えられた熱を車室内の空調に利用することができるようになる。
【0013】
上記課題を解決するため、車両の熱管理方法としての請求項6に記載の発明は、熱を蓄えるためのヒートマスとしてバッテリーを利用するとともに、そのバッテリーに蓄えられた熱を車室内の空調に供するようにしている。
【0014】
こうした熱管理方法によれば、空調の利用時ではなく、効率的な熱生成が可能な時期に空調用の熱を生成することができるようになる。また蓄熱に必要なヒートマスとしてバッテリーを利用するため、蓄熱用に格別なヒートマスを設ける必要もない。したがって、上記のような熱管理方法によれば、熱をより効率的に利用することができるようになる。
【0015】
更に請求項7によるように、バッテリーへの蓄熱を、外部からの電力供給による該バッテリーの充電中に実施するとともに、バッテリーから空調への熱の供給を、車両の走行中に行うようにすれば、走行中の車両の消費電力を増大せずとも車室内の空調を行うことができるようになる。したがって、請求項7に記載の発明によれば、空調利用時の車両の航続距離を延長することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の熱管理システムの構成を模式的に示す略図。
【図2】同実施形態に適用される蓄熱モード時制御ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態に適用される放熱モード時制御ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の車両の熱管理システム及び熱管理方法を具体化した一実施形態を、図1〜図3を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態の適用される車両は、外部からの電力供給でバッテリーの充電を実施可能なプラグイン方式の電気自動車又はハイブリッド車両として構成されている。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る車両の熱管理システムの全体構成を示している。同図に示すように、この熱管理システムは、2つの冷媒回路、すなわち空調用の主たる冷媒が循環される主冷媒回路1と、バッテリー2の加熱、冷却や同バッテリー2からの熱の取り出しのための冷媒が循環されるバッテリー冷媒回路3とを備えている。なお、以下では主冷媒回路1を循環する冷媒を主冷媒と記載し、バッテリー冷媒回路3を循環される冷媒をバッテリー冷媒と記載する。
【0019】
同図に示すように、主冷媒回路1は、冷媒を循環させる電動ポンプ10、その下流に設けられて冷媒を加熱又は冷却する熱源11を備えている。なお、熱源11としては、ヒートポンプやペルチェヒーター/クーラーなどを用いることができる。また暖房のみを行う場合には、熱源11として電気ヒーターや燃焼式ヒーターを用いることもできる。
【0020】
主冷媒回路1の熱源11の下流側には、切替弁12が設けられ、主冷媒回路1はその切替弁12において2つの通路に分岐される。ここで分岐された通路の一方は、同通路の流れる主冷媒とバッテリー冷媒との間で熱交換を行う熱交換器13の設けられた主通路14となっており、もう一方は、熱交換器13を迂回するバイパス通路15となっている。なお、切替弁12は、主通路14、バイパス通路15のいずれに主冷媒を流すかを選択的に切り替えるように構成されている。
【0021】
主通路14、バイパス通路15の合流後、主冷媒回路1は、空調装置30に設けられたブロワー31によって車室内へと送風される空気と主冷媒との間で熱交換を行う熱交換器33を通る。そしてその後、電動ポンプ10に戻るように、主冷媒回路1が形成されている。
【0022】
一方、バッテリー冷媒回路3は、バッテリー2を収容するとともに、同バッテリー2を外部から断熱するバッテリー保温容器4の内部を通って形成されている。こうしたバッテリー冷媒回路3には、バッテリー冷媒を循環させる電動ポンプ20が設けられている。そしてバッテリー冷媒回路3の電動ポンプ20の下流には、ブロワー31によって車室内へと送風される空気とバッテリー冷媒との間で熱交換を行う熱交換器34が設けられている。またバッテリー冷媒回路3の熱交換器34の下流には、主冷媒、バッテリー冷媒間で熱交換を行う上記の熱交換器13と、バッテリー冷媒の温度を検出する冷媒温度センサー21とが設けられている。
【0023】
なお、こうした車両の熱管理システムは、電子制御ユニット5により制御されている。電子制御ユニット5は、中央演算処理装置(CPU)、読込専用メモリー(ROM)、ランダムアクセスメモリー(RAM)、入出力ポート(I/O)を備えている。ここでCPUは、熱管理システムの制御に係る各種の演算処理を実施し、ROMは、制御用のプログラムやデータを記憶する。またRAMは、CPUの演算結果やセンサーの検出結果等を一時的に記憶し、I/Oは、外部との信号の送受に係るインターフェイスとして機能する。
【0024】
なお、本実施の形態の熱管理システムでは、両電動ポンプ10,20、切替弁12、熱源11、及びブロワー31が電子制御ユニット5により制御されている。また電子制御ユニット5には、上記冷媒温度センサー21や、空調装置30の吸込空気の温度を検出する吸込温度センサー35などの検出信号が入力されている。
【0025】
さて、以上のように構成された本実施の形態では、熱を蓄えるためのヒートマスとしてバッテリー2を利用するようにしている。そしてバッテリー2に蓄えられた熱を車室内の空調に供するようにしている。具体的には、この車両では、外部からの電力供給によるバッテリー2の充電中に、バッテリー2への蓄熱を行い、車両の走行中に、車室内の空調のための蓄えた温熱又は冷熱の放熱を行うようにしている。
【0026】
まず、こうした熱管理システムの蓄熱モード時の動作について説明する。このときの主冷媒回路1では、電動ポンプ10及び熱源11が作動され、主冷媒が熱源11を通って循環されている。このときの熱源11は、暖房が必要な冬季には、主冷媒を加熱し、冷房が必要な夏季には、主冷媒を冷却するようにしている。またこのときの切替弁12は、熱交換器13の設けられた主通路14を通って主冷媒を流すように作動されている。
【0027】
一方、このときのバッテリー冷媒回路3では、電動ポンプ20が作動され、それによりバッテリー冷媒が循環されている。そのため、このときの熱交換器13では、熱源11により加熱/冷却された主冷媒と、バッテリー冷媒との間で熱交換が行われ、これによりバッテリー冷媒が加熱/冷却されるようになる。そしてその加熱/冷却されたバッテリー冷媒により、バッテリー2が加熱/冷却されるようになる。
【0028】
ちなみに、このときの空調装置30は、作動しておらず、ブロワー31も停止されている。
続いて、こうした熱管理システムの放熱モード時の動作について説明する。このときの主冷媒回路1では、電動ポンプ10及び熱源11が作動され、熱源11による主冷媒の加熱/冷却が行われる。またこのときの切替弁12は、熱交換器13を迂回するバイパス通路15を通って主冷媒を流すように作動されている。したがって、このときには、熱交換器13での主冷媒、バッテリー冷媒間の熱交換は行われないようになっている。また、このときの空調装置30は作動され、ブロワー31による空気の吸い込み、及び車室内への空気の送風が行われている。そのため、空調装置30の熱交換器33においては、熱源11により加熱/冷却された主冷媒と空気との熱交換が行われ、熱源11の熱を利用した車室内の空調が行われる。
【0029】
一方、このときのバッテリー冷媒回路3では、電動ポンプ20が作動され、それによりバッテリー冷媒が循環されている。そしてバッテリー冷媒は、空調装置30の熱交換器34を通って循環される。そのため、このときの熱交換器34においては、バッテリー冷媒と空気との熱交換が行われ、バッテリー2に蓄えられた温熱/冷熱を利用した車室内の空調が行われる。
【0030】
なお、バッテリー2への蓄熱のための冬季におけるバッテリー冷媒の加熱は、バッテリー冷媒の温度THBが、バッテリー2を劣化から保護可能なバッテリー温度の上限値として設定された保護温度(例えば40℃)以上となるまで行われる。またバッテリー2への蓄熱のための夏季におけるバッテリー冷媒の冷却は、バッテリー冷媒の温度THBが、バッテリー2の充電性能を好適に確保可能なバッテリー温度の下限値として設定された下限温度(例えば15℃)以下となるまで行われる。
【0031】
一方、冬季における暖房のためのバッテリー冷媒の循環は、空調装置30の吸込温度が十分に低く(例えば25℃未満)、バッテリー2に蓄えられた温熱による車室内の暖房が十分に可能なときにのみ行われる。また夏季における冷房のためのバッテリー冷媒の循環は、空調装置30の吸込温度が十分に高く(例えば25℃以上)、バッテリー2に蓄えられた冷熱による車室内の冷房が十分に可能なときにのみ行われる。
【0032】
図2は、こうした本実施の形態に採用される蓄熱モード時制御ルーチンのフローチャートを示している。本ルーチンの処理は、プラグインによる外部電力でのバッテリー2の充電時に電子制御ユニット5により実行されるものとなっている。
【0033】
さて本ルーチンが開始されると、まずステップS100において、熱源11、及び2つの電動ポンプ10,20が作動され、主冷媒、及びバッテリー冷媒を媒介した熱源11によるバッテリー2の加熱/冷却が開始される。なお、このときの熱源11、及び2つの電動ポンプ10,20の作動は、冬季であれば、バッテリー冷媒の温度THBが上記保護温度(ここでは40℃)以上となるまで、夏季であれば、バッテリー冷媒の温度THBが上記下限温度(ここでは15℃)以下となるまで継続される。
【0034】
そして冬季においてバッテリー冷媒の温度THBが上記保護温度を超えるか、夏季においてバッテリー冷媒の温度THBが上記下限温度を下回るかすると(S101:YES)、ステップS102において、熱源11及び両電動ポンプ10,20が停止され、これをもって今回の本ルーチンの処理が終了されるようになる。
【0035】
一方、図3は、本実施の形態の採用する放熱モード時制御ルーチンのフローチャートを示している。本ルーチンの処理は、車両の走行時に電子制御ユニット5により実行されるものとなっている。
【0036】
さて本ルーチンが開始されると、まずステップS200において、両電動ポンプ10,20が作動され、主冷媒回路1及びバッテリー冷媒回路3での冷媒の循環が開始される。またブロワー31の作動により車室内への送風が開始され、熱源11の発生する温冷熱、及びバッテリー2に蓄えられた温冷熱による車室内の空調が開始される。
【0037】
なお冬季におけるバッテリー2に蓄えられた温熱による車室内の暖房は、空調装置30の空気の吸込温度がある程度(ここでは25℃以上)まで上昇して、蓄熱による効果的な暖房が不能となるまで継続される。また夏季におけるバッテリー2に蓄えられた冷熱による車室内の冷房は、空調装置30の空気の吸込温度がある程度(ここでは25℃以下)まで下降して、蓄熱による効果的な冷房が不能となるまで継続される。
【0038】
そして冬季において空調装置30の吸込温度が25℃以上となるか、夏季において空調装置30の吸込温度が25℃以下となるかすると(S201:NO)、ステップS202においてバッテリー冷媒回路3の電動ポンプ20が停止され、バッテリー2の蓄熱による車室内の空調が停止され、これをもって今回の本ルーチンの処理が終了されるようになる。なお、これ以降の空調は、熱源11の発生する温冷熱のみを利用して行われることになる。
【0039】
ちなみに、こうした本実施の形態では、バッテリー冷媒回路3及び熱交換器34により、「バッテリーに蓄えられた熱を車室内の空調に供する熱供給手段」が構成されている。また本実施の形態では、熱源11、熱交換器13等により、「保温容器に収容されたバッテリーを加熱又は冷却する手段」が構成されている。
【0040】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、熱を蓄えるためのヒートマスとしてバッテリー2を利用するとともに、そのバッテリーに蓄えられた熱を車室内の空調に供するようにしている。具体的には、バッテリー冷媒回路3及び熱交換器34を設けることで、バッテリー2に蓄えられた熱を車室内の空調に供するようにしている。こうした本実施の形態では、バッテリー2に温熱或いは冷熱が蓄えられるようになる。そしてバッテリーに2蓄えられた熱が車室内の空調に利用されるようになる。こうした車両では、バッテリー2に熱を一時的に預けておくことで、熱を生成する時期と、その熱を空調に利用する時期とをずらすことができるようになる。そのため、空調の利用時ではなく、効率的な熱生成が可能な時期に空調用の熱を生成することができるようになる。また蓄熱に必要なヒートマスとしてバッテリー2を利用するため、蓄熱用に格別なヒートマスを設ける必要もない。したがって、本実施の形態によれば、熱をより効率的に利用することができるようになる。
【0041】
(2)本実施の形態では、バッテリー2への蓄熱を、外部からの電力供給による該バッテリー2の充電中に実施するとともに、バッテリー2から空調への熱の供給を、車両の走行中に行うようにしている。そのため、走行中の車両の消費電力を増大せずとも車室内の空調を行うことができるようになり、空調利用時の車両の航続距離を延長することができるようになる。
【0042】
(3)本実施の形態では、バッテリー2を収容するとともに、同バッテリー2を外部から断熱するバッテリー保温容器4と、そのバッテリー保温容器4に収容されたバッテリー2を加熱又は冷却する手段と、を備えるようにしている。具体的には、熱源11、熱交換器13等を設けることで、バッテリー保温容器4に収容されたバッテリー2を加熱/冷却可能としている。こうした本実施の形態の適用される車両では、熱を蓄えるヒートマスとしてバッテリー2を利用することができるようになる。そしてバッテリー2に熱を一時的に預けておくことで、熱を生成する時期と、その熱を利用する時期とをずらすことができるようになる。そのため、熱の使用時ではなく、効率的な熱生成が可能な時期に熱を生成することができるようになる。また蓄熱に必要なヒートマスとしてバッテリー2を利用するため、蓄熱用に格別なヒートマスを設ける必要もない。したがって、本実施の形態によれば、熱をより効率的に利用することができるようになる。
【0043】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、プラグインによるバッテリー2の充電中に、同バッテリー2への蓄熱を行うようにしていたが、それ以外の時期に蓄熱を行うようにしても良い。蓄熱に利用可能な余剰熱が存在する時期、或いはその熱を効率的に生成可能な時期にバッテリー2への蓄熱を行うようにすれば、熱の効率利用を図ることができる。
【0044】
・上記実施の形態では、2つの冷媒回路を設けることで、バッテリー2への蓄熱と、バッテリー2に蓄えられた熱の空調装置30への供給とを行うようにしていたが、別の形態でも同様の蓄熱及び熱供給を行うことができる。例えば単一の冷媒回路のみを備える熱管理システムでも、同様の蓄熱及び熱供給は実施可能である。これを実現するには、上記実施の形態の熱管理システムからバッテリー冷媒回路3を割愛するとともに、バッテリー2の周囲を通って冷媒を流す通路と、バッテリー2の周囲を迂回して冷媒を流す通路とを主冷媒回路1に追加する。そして切替弁を設けて、いずれの通路を通じて冷媒を流すかを切り替え可能とし、バッテリー2への蓄熱時及びその蓄熱の空調装置30への供給時にバッテリー2の周囲を通って冷媒を流すこととすれば、上記実施の形態と同様の蓄熱及び熱供給を単一の冷媒回路で実現することができる。
【0045】
・上記実施の形態では、バッテリー2に冷熱及び温熱を蓄え、その熱を車室内の冷房と暖房とに利用するようにしていたが、冷熱のみ、又は温熱のみをバッテリー2に蓄えて、蓄熱による車室内の冷房のみ、或いは蓄熱による車室内の暖房のみを行うようにしても良い。
【0046】
・上記実施の形態では、バッテリー2に蓄えた熱を、車室内の空調に供するようにしていたが、その熱をそれ以外の用途に利用するようにしても良い。例えばバッテリー2に蓄えた熱で内燃機関や変速機の暖機を行うことが考えられる。
【0047】
・上記実施の形態では、プラグイン方式の電気自動車又はハイブリッド車両に本発明の熱管理システム及び熱管理方法を適用した場合を説明したが、本発明は、それ以外の車両にも、上記実施の形態と同様或いはそれに順じた態様で適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…主冷媒回路、2…バッテリー、3…バッテリー冷媒回路、4…バッテリー保温容器、5…電子制御ユニット、10…電動ポンプ、11…熱源、12…切替弁、13…熱交換器、14…主通路、15…バイパス通路、20…電動ポンプ、21…冷媒温度センサー、30…空調装置、31…ブロワー、32…空気、33…熱交換器、34…熱交換器、35…吸込温度センサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を蓄えるためのヒートマスとしてバッテリーを利用するとともに、前記バッテリーに蓄えられた熱を車室内の空調に供する熱供給手段を備える
ことを特徴とする車両の熱管理システム。
【請求項2】
前記車両は、外部からの電力供給で前記バッテリーの充電を実施可能に構成され、
前記バッテリーへの蓄熱を、外部からの電力供給による該バッテリーの充電中に実施するとともに、前記バッテリーから空調への熱の供給を、前記車両の走行中に行うようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の熱管理システム。
【請求項3】
前記バッテリーの周囲を通って循環される冷媒を、外部から供給された電力を利用して加熱又は冷却する熱源を備える
請求項2に記載の車両の熱管理システム。
【請求項4】
バッテリーを収容するとともに、同バッテリーを外部から断熱する保温容器と、
その保温容器に収容されたバッテリーを加熱又は冷却する手段と、
を備えることを特徴とする車両の熱管理システム。
【請求項5】
前記バッテリーに蓄えられた熱を車室内の空調に供給する熱供給手段を備える
請求項4に記載の車両の熱管理システム。
【請求項6】
熱を蓄えるためのヒートマスとしてバッテリーを利用するとともに、前記バッテリーに蓄えられた熱を車室内の空調に供するようにした
ことを特徴とする車両の熱管理方法。
【請求項7】
外部からの電力供給で前記バッテリーの充電を実施可能に構成された車両にあって、
外部からの電力供給による前記バッテリーの充電中に同バッテリーへの蓄熱を行うとともに、前記車両の走行中に前記バッテリーから空調への熱の供給を行うようにした
ことを特徴とする請求項6に記載の車両の熱管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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