説明

車両の表示装置

【課題】外装部品の塗色や模様等を簡単に変更することができる車両の表示装置を提供する。
【解決手段】自動二輪車1の各外装部品(フロントカウル20、フロントフェンダ21、センターカウル22、アンダーカウル23、シートカウル24、燃料タンク25)に一体に取り付けられて、車両の外方側に表示を行う表示装置と、表示装置に任意の表示を行わせる制御部32とを具備し、制御部32により、表示装置の画像表示を任意に変更可能に構成する。表示装置を、枠体40に取り付けられた薄板状のカラー液晶ディスプレイ41とする。枠体40を自動二輪車1に取り付けると共に、該枠体40に液晶ディスプレイ41を取り付けることにより、液晶ディスプレイ41がセンターカウル22を構成する。制御部32は、複数の表示装置に対して、それぞれ異なる画像表示を行わせることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の表示装置に係り、特に、乗員および車両の観察者に任意の表示を視認させることができる車両の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の構成部品の一部を画像スクリーンとして使用し、広告等の各種表示を車両の乗員または車両の観察者に視認させるようにした表示装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、4輪車のフロントガラスに取り付けた透明な光学ガラス素子に任意の表示を反射表示することで、これを車両の乗員に視認させるようにしたヘッドアップディスプレイ装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、4輪車の車室の天井に取り付けたプロジェクタ装置により、4輪車のサイドガラスに取り付けた透過型スクリーンに任意の表示を投写表示することで、これを車両の観察者に視認させるようにした画像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−45542号公報
【特許文献2】特開2006−113230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来、ユーザが車両の外装部品に施された塗色や模様等を変更するには、再塗装や外装部品の交換等が必要であり、費用がかかっていた。
【0007】
特許文献1,2に記載された表示装置は、車速や広告等の各種情報を表示するものであり、この表示機能を、外装部品の塗色や模様等の変更に利用することは検討されていなかった。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、外装部品の塗色や模様等を車両ユーザが簡単に変更することができる車両の表示装置を提供し、コストの低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、車両の外装部品に一体に配設されて、車両の外方側に画像の表示を行う表示装置と、前記表示装置に任意の画像表示を行わせる制御部とを具備し、前記制御部により、前記表示装置の表示画像を任意に変更可能に構成されている点に第1の特徴がある。
【0010】
また、前記表示装置は、前記外装部品の形状に沿った薄板状である点に第2の特徴がある。
【0011】
また、前記表示装置を取り付けるための枠体を有し、前記枠体を車両に取り付けると共に、該枠体に前記表示装置を取り付けることにより、前記表示装置が前記外装部品を構成するように構成されている点に第3の特徴がある。
【0012】
また、前記表示装置が複数個設けられており、前記制御部は、前記複数の表示装置に対して、それぞれ異なる画像表示を行わせるように構成されている点に第4の特徴がある。
【0013】
また、前記外装部品は、自動二輪車のカウリングおよび燃料タンクである点に第5の特徴がある。
【0014】
さらに、前記表示装置は、曲面部においても画像表示が可能な液晶ディスプレイである点に第6の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
第1の特徴によれば、車両の外装部品に一体に配設されて、車両の外方側に画像の表示を行う表示装置と、表示装置に任意の画像表示を行わせる制御部とを具備し、制御部により、表示装置の表示画像を任意に変更可能に構成されているので、表示装置の表示切り換えにより、外装部品の塗色や模様等を任意に変更することが可能となる。これにより、車両のユーザが自分の好みで車両の外装デザインを変更できるようになり、商品魅力を向上させることができる。また、外装部品の塗装等が不要となるため、コストの削減になる。
【0016】
第2の特徴によれば、表示装置は、外装部品の形状に沿った薄板状であるので、外装部品全体を表示装置として使用することができる。これにより、大きな表示面積が得られることとなり、表示変更による外観変化の効果を高めることが可能となる。また、外装面に沿った画像を自在に表示することが可能となり、車体のデザインが損なわれることがない。
【0017】
第3の特徴によれば、表示装置を取り付けるための枠体を有し、枠体を車両に取り付けると共に、該枠体に表示装置を取り付けることにより、表示装置が外装部品を構成するように構成されているので、防風等の外装部品の機能を表示装置に兼用させることで、部品点数や重量の増加を抑えることが可能となる。
【0018】
第4の特徴によれば、表示装置が複数個設けられており、制御部は、複数の表示装置に対して、それぞれ異なる画像表示を行わせるので、表示デザインの自由度を高めることができる。また、例えば、隣接する表示装置に異なる表示を行わせることで、隣接する表示装置の間で連続的な模様等を表示させることが可能となる。
【0019】
第5の特徴によれば、外装部品は、自動二輪車のカウリングおよび燃料タンクであるので、自動二輪車の外観デザインを任意に変更することが可能となる。
【0020】
第6の特徴によれば、表示装置は、曲面部においても画像表示が可能な液晶ディスプレイであるので、外装部品が曲面を有する場合でも、任意の画像表示が可能な表示装置を得ることが可能となる。これにより、外装部品のデザインの自由度が損なわれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の表示装置を適用した自動二輪車の側面図である。
【図2】車両の表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】各外装部品に任意の画像を表示させた状態を示す側面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】センターカウルの構造説明図である。
【図6】各外装部品に他の画像を表示させた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両の表示装置を適用した自動二輪車1の側面図である。メインフレーム2の前端部に設けられたヘッドパイプ3には、不図示のステアリングステムが回動自在に軸支されている。該ステアリングステムには、前輪WFを回転可能に軸支する左右一対のフロントフォーク4が取り付けられており、前輪WFは、フロントフォーク4の上端部に取り付けられた左右一対のハンドルバー5によって操舵可能とされている。また、メインフレーム2の後方下部には、駆動輪としての後輪WRを回転可能に軸支するスイングアーム12が、ピボット軸10によって揺動自在に軸支されている。スイングアーム12とメインフレーム2との間には、リンク機構を介して互いを連結するリヤクッション11が配設されている。
【0023】
ピボット軸10の前方かつメインフレーム2の下方には、エンジン14が配設されている。エンジン14の上部には、燃料噴射装置およびスロットルボディを含む吸気管9が取り付けられており、その上部には、エアクリーナボックス13が接続されている。エンジン14の前方側には、該エンジン14の燃焼ガスを車体後端部に配設されたマフラ16に導く排気管15が取り付けられている。
【0024】
ヘッドパイプ3の前方側には、フロントカウル20が配設されており、前輪WFの上方には、フロントフェンダ21が配設されている。また、エンジン14の側方には、左右一対のセンターカウル22が配設され、その下部には、左右一対のアンダーカウル23が配設されている。メインフレーム2の上部には、燃料タンク25が配設されている。メインフレーム2から後方上方に延出するシートフレーム17には、シート8およびシートカウル24が取り付けられている。前記したフロントカウル20、フロントフェンダ21、センターカウル22、アンダーカウル23、シートカウル24、燃料タンク25は、自動二輪車1の外装部品として機能する。なお、シート8の下方には、バッテリ19および制御装置としてのECU30が配設されている。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係る車両の表示装置の構成を示すブロック図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。本実施形態に係る各外装部品(フロントカウル20、フロントフェンダ21、センターカウル22、アンダーカウル23、シートカウル24、燃料タンク25)は、それぞれ、その表面側に任意の画像等を表示することが可能に構成されている。
【0026】
前記ECU30には、画像記憶部31と、制御部32と、画像出力部33とが含まれる。制御部32は、各種の画像を記憶する画像記憶部31から任意の画像を選択して、画像出力部33に伝達可能とされている。画像出力部33は、制御部32からの出力指令に基づいて、選択された画像を各外装部品に出力することが可能とされる。制御部32は、乗員等によって操作される入力手段34からの信号に基づいて、画像出力部33によって出力させる各種の画像を選択・変更することができる。これにより、画像記憶装置31に記憶されている複数の画像の中から、乗員等が好みに応じて選択した画像を各外装部品に表示することが可能となる。
【0027】
さらに、画像記憶部31に記憶された画像は、他の画像データを記憶する外部記憶装置(不図示)をECU30に接続することで任意に更新することが可能である。他の画像データは、販売店等からユーザに配布される記憶媒体のほか、ネットワーク経由で取得することもできる。また、ユーザに画像作成用アプリケーションソフトを配布することで、ユーザが自分で作成した画像データを画像記憶部31に記憶させ、これを各外装部品に表示させることも可能である。なお、画像記憶部31に記憶された画像の選択・変更は、無線リモコン等によって行うことも可能である。
【0028】
図3は、各外装部品に任意の画像を表示させた状態を示す側面図である。この図の例では、フロントカウル20、センターカウル22、燃料タンク25にそれぞれ異なる画像を表示させることで、隣接する外装部品同士の間で連続的な模様を表示している。なお、表示装置をカラーディスプレイとすることで、塗色の変更も自在とされる。
【0029】
図4は、図3のA−A線断面図である。また、図5は、センターカウル22の構造説明図である。本実施形態に係る外装部品は、樹脂等で形成された格子状の枠体の外側に、厚みの小さい薄板状の液晶カラーディスプレイを取り付けた構成とされている。以下では、センターカウル22を一例として説明するが、他の外装部品も同様の構成とされている。
【0030】
図4を参照して、センターカウル22に沿った形状とされる表示装置としての液晶ディスプレイ41の縁部には、係合部41aが形成されており、この係合部41aを枠体40の縁部に引っかけるように係合させることで、液晶ディスプレイ41が枠体40に支持される。図5を参照して、枠体40は格子状とされており、十分な剛性を保ちつつ軽量化が図られている。そして、液晶ディスプレイ41は、走行風や雨等が乗員や内部部品に当たらないようにする等の外装部品としての機能を果たすこととなる。
【0031】
車両へのセンターカウル22の取り付けは、締結部材等で車両に固定された枠体40に対して、液晶ディスプレイ41を嵌め込むように係合することで実行される。また、液晶ディスプレイ41には、画像出力部33から配線36を介して伝達された画像データを液晶ディスプレイ41に出力するためのドライバ35が取り付けられている。なお、ドライバ35は、ECU30内等に設けてもよい。
【0032】
なお、枠体40と液晶ディスプレイ41との固定は、締結部材による締結や接着等で行ってもよい。また、外装部品に通風孔40a等を設ける場合は、これに合わせて枠体40および液晶ディスプレイ41を形成することが可能である。
【0033】
図6は、各外装部品に他の画像を表示させた状態を示す側面図である。この図の例では、各外装部品(フロントカウル20、フロントフェンダ21、センターカウル22、アンダーカウル23、シートカウル24、燃料タンク25)に、それぞれ異なる画像を表示している。車両のユーザは、車両に取り付けられた切り換えスイッチ等の前記入力手段34の操作によって、例えば、図3に示した外観デザインから図5に示した外観デザインに瞬時に切り換えることができる。
【0034】
なお、表示装置には、本実施形態に係る液晶ディスプレイのほか、有機ELディスプレイやセグメント式ディスプレイ等を適用することができる。また、表示装置には、文字や動画を表示させることも可能である。さらに、エンジン回転数センサや車速センサ、ブレーキスイッチやウインカスイッチ等の出力信号に応じて、画像データが変更されるように構成してもよい。
【0035】
上記したように、本発明に係る車両の表示装置によれば、自動二輪車の外装部品を、枠体に取り付けられたディスプレイによって構成したので、ディスプレイの表示切り換えにより、外装部品の塗色や模様等を任意に変更することが可能となる。これにより、車両のユーザが自分の好みで車両のデザインを変更できるようになり、商品魅力を向上させることができる。本発明に係る車両の表示装置は、自動二輪車に限られず、三輪車や四輪車等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…自動二輪車(車両)、20…フロントカウル(外装部品)、21…フロントフェンダ(外装部品)、22…センターカウル(外装部品)、23…アンダーカウル(外装部品)、24…シートカウル(外装部品)、25…燃料タンク(外装部品)、30…ECU、31…画像記憶部、32…制御部、33…画像出力部、34…入力手段、40…枠体、41…液晶ディスプレイ(表示装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の外装部品(22)に一体に配設されて、車両の外方側に画像の表示を行う表示装置(41)と、
前記表示装置(41)に任意の画像表示を行わせる制御部(32)とを具備し、
前記制御部(32)により、前記表示装置(41)の表示画像を任意に変更可能に構成されていることを特徴とする車両の表示装置。
【請求項2】
前記表示装置(41)は、前記外装部品(22)の形状に沿った薄板状であることを特徴とする請求項1に記載の車両の表示装置。
【請求項3】
前記表示装置(41)を取り付けるための枠体(40)を有し、
前記枠体(40)を車両(1)に取り付けると共に、該枠体(40)に前記表示装置(41)を取り付けることにより、前記表示装置(41)が前記外装部品(22)を構成するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の表示装置。
【請求項4】
前記表示装置が複数個設けられており、
前記制御部(32)は、前記複数の表示装置に対して、それぞれ異なる画像表示を行わせるように構成されていることを特徴とする請求項得1ないし3のいずれかに記載の車両の表示装置。
【請求項5】
前記外装部品は、自動二輪車(1)のカウリング(20,21,22,23,24)および燃料タンク(25)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両の表示装置。
【請求項6】
前記表示装置(41)は、曲面部においても画像表示が可能な液晶ディスプレイであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−228509(P2010−228509A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76379(P2009−76379)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】