説明

車両の車体構成部品配設構造

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、車両における車体構成部品であるエンジン、変速装置、およびフートレストの配設構造に関する。
【0002】
【従来の技術】自動二輪車には、前、後輪間にエンジンと変速装置とを車体幅方向で並設し、上記エンジンが、車体幅方向に延びるクランク軸と、上記変速装置とは車体幅方向で反対側の上記クランク軸の一端部の近傍に配設されてこの一端部に連動連結されるフライホイールマグネトとを備える一方、上記変速装置が、変速ケースと、車体幅方向に延びてこの変速ケースに支承される駆動軸と、この駆動軸に支承されてVベルト巻掛径が変更可能な駆動プーリと、この駆動プーリのVベルト巻掛径を変更調整するモータとを備え、上記エンジンとは車体幅方向で反対側の後方にフートレストを配設したものがみられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記変速装置の駆動プーリは上記駆動軸を介し上記クランク軸に連動連結されるものであるが、上記駆動軸が車体の前後方向で上記クランク軸から大きく離れていると、このクランク軸に対し上記駆動軸を介し駆動プーリを連動連結させるための構成が複雑になる。
【0004】また、上記モータはその駆動で発熱するものであるため、これが走行風によって効果的に冷却されることが望まれており、また、上記モータがフートレスト上のライダーの足と干渉しないようにすることも望まれる。
【0005】
【発明の目的】この発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、エンジンのクランク軸に変速装置の駆動プーリを連動連結させることが簡単な構成で達成されるようにし、また、変速装置の変速を可能とするためのモータが、走行風によって十分に冷却されるようにすると共に、このモータがフートレスト上のライダーの足に干渉しないようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためのこの発明の特徴とするところは、前、後輪11,16間にエンジン21と変速装置58とを車体幅方向で並設し、上記エンジン21が、車体幅方向に延びるクランク軸43と、上記変速装置58とは車体幅方向で反対側の上記クランク軸43の一端部の近傍に配設されてこの一端部に連動連結されるフライホイールマグネト47とを備える一方、上記変速装置58が、変速ケース62と、車体幅方向に延びてこの変速ケース62に支承される駆動軸43aと、この駆動軸43aに支承されてVベルト溝69に巻き掛けられたVベルト67のVベルト巻掛径が変更可能な駆動プーリ64と、この駆動プーリ64のVベルト巻掛径を変更調整するモータ82とを備え、上記エンジン21とは車体幅方向で反対側の上記変速ケース62の外側後方にフートレスト39を配設した車両の車体構成部品配設構造において、
【0007】上記クランク軸43と同じ軸心上で、その他端部の外側方に上記駆動軸43aを配設して、この駆動軸43aを上記クランク軸43に連動連結し、
【0008】上記変速ケース62を基準として上記エンジン21とは車体幅方向で反対側の上記変速ケース62の前部外側面側から外側方に上記モータ82が突出するようこのモータ82を上記変速ケース62に取り付け
【0009】上記駆動プーリ64が、上記駆動軸43aに対し軸方向にのみそれぞれ摺動自在に支承され互いに協同して上記Vベルト溝69を形成する一対の駆動フェース64a,64bを有し、上記駆動軸43aと平行に延びてその軸心回りに回転自在となるよう上記変速ケース62に支承され上記モータ82に連動連結される変速駆動軸79を設け、この変速駆動軸79に上記各駆動フェース64a,64bをそれぞれ連動連結し、上記モータ82の駆動による上記変速駆動軸79の回転に連動して、上記駆動軸43aに対し上記各駆動フェース64a,64bがそれぞれ摺動して互いに引き離され、もしくは互いに接近して、上記駆動プーリ64のVベルト巻掛径が変更されるようにした点にある。
【0010】
【作 用】上記構成による作用は次の如くである。
【0011】エンジン21のクランク軸43と同じ軸心上で、その外側方に変速装置58の駆動軸43aを配設して、この駆動軸43aを上記クランク軸43に連動連結してあり、このため、上記駆動軸43aが車体の前後方向で上記クランク軸43から大きく離れていることに比べて、上記クランク軸43に駆動軸43aを連動連結させることは簡単な構成で達成される。
【0012】また、上記変速ケース62を基準として上記エンジン21とは車体幅方向で反対側の上記変速ケース62の前部外側面側から外側方に上記モータ82が突出するようこのモータ82を上記変速ケース62に取り付けてある。
【0013】このため、上記モータ82は、車両が走行するときの走行風を、上記変速ケース62に邪魔されることなく十分に受けることとなる。
【0014】また、上記の場合、エンジン21が、クランク軸43の一端部の近傍に配設されてこの一端部に連動連結されるフライホイールマグネト47を備える一方、上記モータ82を変速ケース62の外側面側から車体幅方向で上記エンジン21とは反対方向の外側方に突出させたことから、上記フライホイールマグネト47とモータ82とは車体幅方向で左右に大きく振り分けられることとなる。
【0015】よって、上記フライホイールマグネト47とモータ82に対するそれぞれの配線作業や保守点検作業が互いに干渉し合うことが抑制される。
【0016】また、上記したように、エンジン21とは車体幅方向で反対側の上記変速ケース62の外側後方にフートレスト39を配設した場合に、上記したように、エンジン21とは車体幅方向の反対側の上記変速ケース62の前部外側面側からモータ82を外側方に突出させてある。このため、上記フートレスト39とモータ82とは車体幅方向で同じところに位置しがちとはなるが、上記モータ82はフートレスト39から前方に離れて位置することになる。
【0017】また、上記駆動プーリ64が、上記駆動軸43aに対し軸方向にのみそれぞれ摺動自在に支承され互いに協同して上記Vベルト溝69を形成する一対の駆動フェース64a,64bを有し、上記駆動軸43aと平行に延びてその軸心回りに回転自在となるよう上記変速ケース62に支承され上記モータ82に連動連結される変速駆動軸79を設け、この変速駆動軸79に上記各駆動フェース64a,64bをそれぞれ連動連結し、上記モータ82の駆動による上記変速駆動軸79の回転に連動して、上記駆動軸43aに対し上記各駆動フェース64a,64bがそれぞれ摺動して互いに引き離され、もしくは互いに接近して、上記駆動プーリ64のVベルト巻掛径が変更されるようにしてある。
【0018】このため、上記モータ82の駆動により変速駆動軸79を回転させて、Vベルト巻掛径を変更調整したとき、上記両駆動フェース64a,64bはそれぞれが互いに引き離され、もしくは接近させられることから、上記駆動プーリ64に巻き掛けられたVベルト67の部分の上記駆動軸43aの軸方向における位置は変化することが防止される。
【0019】よって、上記Vベルト巻掛径の変更調整毎に、駆動軸43aの軸方向で、上記駆動プーリ64と従動プーリ66の相対位置が変化して、上記Vベルト67が屈曲する、ということを防止でき、その分、上記モータ82の負担を軽減させることができる。
【0020】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面により説明する。
【0021】図2と図3において、符号1は車両である自動二輪車で、2は車体フレームである。なお、図中矢印Frは車体の前方を示し、左右とはこの前方に向っての車体幅方向をいうものとする。
【0022】上記車体フレーム2はその前部にヘッドパイプ3を有し、このヘッドパイプ3から後下方に向って主フレーム4が延び、この主フレーム4の後端から更に下方に向ってリヤアームブラケット5が延びている。また、上記主フレーム4の下方で、同上ヘッドパイプ3から後下方に向ってダウンチューブ6が延び、このダウンチューブ6の後端と、上記リヤアームブラケット5の下端とが互いに連結されている。7はシートレール、8はバックステーである。
【0023】上記ヘッドパイプ3にはフロントフォーク10が操向自在に支承されている。このフロントフォーク10の下端に前輪11が支承され、同上フロントフォーク10の上端にハンドル12が取り付けられている。
【0024】上記リヤアームブラケット5には枢支軸14によりリヤアーム15が上下揺動自在に枢支され、このリヤアーム15の揺動端に後輪16が支承されている。また、上記主フレーム4の後端とリヤアーム15の前後中途部との間にはリンク機構18を介し緩衝器19が架設されている。
【0025】上記車体フレーム2にはエンジン21が支持されている。このエンジン21はアルミ合金製のクランクケース22とシリンダ23とを有している。このシリンダ23の後面に設けられた吸気ポートには、気化器24とエアクリーナ25とが連設されている。
【0026】同上シリンダ23の前面に設けられた排気ポートには排気管26の一端が連結されている。この排気管26の他端側は、上記シリンダ23から一旦前下方に延びた後、左方に折れ曲がり、更に、右方に折り返され、この折り返し部27は前記ダウンチューブ6の前側に位置している。また、この折り返し部27の折り返し端は後方に延び、その後端にサイレンサ28が取り付けられている。
【0027】上記クランクケース22の後部には動力伝達装置30が連設されており、この動力伝達装置30は出力部である駆動鎖車31を有している。一方、前記後輪16には従動鎖車32が取り付けられ、上記駆動鎖車31と従動鎖車32とにチェーン33が巻き掛けられている。そして、上記エンジン21の動力は、上記動力伝達装置30やチェーン33等を介して後輪16に伝達可能とされ、この後輪16の駆動により、自動二輪車1が走行路面35上を走行する。
【0028】なお、上記エンジン21と動力伝達装置30とは、ボルト形状とされた前記枢支軸14と、三本のボルト36によって車体フレーム2に支持されている。37は燃料タンク、38はシートである。また、39は左右一対のフートレストで、これら各フートレスト39は動力伝達装置30の右側部の外側後方に位置し、リヤアームブラケット5の下端からそれぞれ外側方に向って突設されている。そして、これらフートレスト39に、上記シート38上のライダーが、図1で示すように足40を乗せるようになっている。
【0029】図1と図4において、前記クランクケース22は互いに締結された左右ケース41,42を備え、これら両ケース41,42に、軸心が左右に延びるクランク軸43が支承されている。44は連接棒である。上記クランクケース22はカバーケース46を有し、このカバーケース46は上記左ケース41の左側面を覆っている。上記クランク軸43の一端部である左端部の近傍で、上記左ケース41とカバーケース46の間の空間にフライホイールマグネト47が配設されている。このフライホイールマグネト47は上記クランク軸43の左端部に連動連結され、より具体的には、上記フライホイールマグネト47のローター48が上記クランク軸43の左端部に支持されている。
【0030】50はキック式スタータで、このキック式スタータ50は、上記左ケース41とカバーケース46とに支承されたキック軸51を有している。このキック軸51にキックペダル52が取り付けられ、このキックペダル52を所定姿勢に保持するスプリング53が設けられている。一方、前記ローター48と同軸上で、カバーケース46に係合軸54が支承され、この係合軸54は上記キック軸51に歯車組55によって連結されている。
【0031】上記係合軸54の軸端は上記ローター48に係脱自在とされており、通常は、上記係合軸54はスプリング56により付勢されて、ローター48に対する係止が解除されている。エンジン21を始動しようとするときには、スプリング53に抗しキックペダル52を勢いよく踏み込む。すると、この動力がキック軸51と歯車組55を介し係合軸54に伝えられ、この係合軸54が回転する。また、上記キックペダル52を踏み込んだときの上記動力の一部で、スプリング56に抗し係合軸54がローター48側に移動して係合し、これにより、クランキングが行われる。なお、上記踏み込みを解除すれば、各スプリング53,56によって、キックペダル52と係合軸54は元の状態に戻る。
【0032】図1において、前記動力伝達装置30は上記エンジン21と車体幅方向で並設される変速装置58、クラッチ59、および減速装置60で構成され、この順序でエンジン21からの動力が前記駆動鎖車31に伝達される。
【0033】図1と図5により、上記変速装置58につき説明する。
【0034】この変速装置58はVベルト巻掛機構61と、このVベルト巻掛機構61を内有する変速ケース62を有し、この変速ケース62は前記右ケース42の一部と、この右ケース42から後方に延びる延長ケース42aと、これら右ケース42と延長ケース42aの右側面を覆うアルミ合金製の変速カバーケース63とで構成されている。
【0035】上記Vベルト巻掛機構61につき説明すると、変速ケース62の前部には、軸心が車体幅方向に延びる駆動軸43aが支承されている。この駆動軸43aは、前記クランク軸43と同じ軸心上に位置し、かつ、このクランク軸43の他端部である右端部の外側方に配設されている。また、上記駆動軸43aは、上記クランク軸43の右端部に一体成形されることにより、このクランク軸43に連動連結され、上記駆動軸43aに駆動プーリ64が支承されている。また、同上変速ケース62内の後部には中間軸65が支承され、この中間軸65に従動プーリ66が支持されている。そして、上記駆動プーリ64と従動プーリ66とにVベルト67が巻き掛けられている。
【0036】上記駆動プーリ64は、そのVベルト溝69に巻き掛けられたVベルト67のVベルト巻掛径が変更可能とされている。この駆動プーリ64はVベルト溝69を互いに協同して形成する左右一対の駆動フェース64a,64bを有し、これら駆動フェース64a,64bは上記駆動軸43aにそれぞれ軸方向にのみ摺動自在となるようスプライン嵌合している。また、上記従動プーリ66は互いに協同してVベルト溝70を形成する左右一対の従動フェース66a,66bを有し、これら従動フェース66a,66bは上記中間軸65にそれぞ軸方向にのみ摺動自在となるようスプライン嵌合している。
【0037】上記駆動プーリ64と従動プーリ66の左右外側方に左右一対の連動バー71,71が設けられている。これら両連動バー71,71の各前後中途部は、枢支ピン72と連結バー73とで互いに連結され、各連動バー71は枢支ピン72の回りに揺動自在とされている。
【0038】上記各連動バー71の前部は、対応する駆動フェース64a,64bにそれぞれ前連結ピン74で連結されている。この場合、各駆動フェース64a,64bは上記連動バー71の動きに係りなく、駆動軸43aと共に回転可能であるが、この連動バー71の前部と左右に共に移動するようになっている。
【0039】また、同上各連動バー71の後部は、対応する従動フェース66a,66bにそれぞれ後連結ピン75で連結されている。この場合、各従動フェース66a,66bは上記連動バー71に係りなく、中間軸65と共に回転可能であるが、この連動バー71の前部と左右に共に移動するようになっている。76はテンションプーリで、このテンションプーリ76は、ばねによる弾性力でVベルト67に圧接し、このVベルト67の緩みを防止している。
【0040】上記各連動バー71を枢支ピン72回りに揺動させる駆動手段78が設けられている。この駆動手段78は上記駆動軸43aと平行に延びてその軸心回りに回動自在となるよう上記変速ケース62の前部に支承される変速駆動軸79を有し、この変速駆動軸79に記各駆動フェース64a,64bがそれぞれ連動連結されている。より具体的には、上記変速駆動軸79には、左右一対で互いに逆ねじのボルト80,80が軸方向摺動自在にキー結合している。そして、上記各連動バー71の前端は、これに対応する上記ボルト80にそれぞれねじ付けられている。また、上記各ボルト80を左右から挟むように付勢する三本のばね81が設けられている。
【0041】上記変速装置58は、上記駆動プーリ64のVベルト巻掛径を変更調整するステップモータ82を備えている。上記変速ケース62を基準として上記エンジン21とは車体幅方向で反対側の上記変速ケース62の前部外側面側から外側方に突出するよう上記モータ82が上記変速ケース62に取り付けられている。より具体的には、上記モータ82は上記変速カバーケース63の前部外側面に取り付けられている。このモータ82の出力軸83に上記変速駆動軸79が連動連結されている。
【0042】上記モータ82を駆動させて、変速駆動軸79を、例えば図5中矢印Aで示す方向に回転させると、これに伴い回転する各ボルト80と、各連動バー71前端との左右位置が相対的に変化し、つまり、各連動バー71の前端同士が、図5中矢印Bで示すように互いに引き離される。すると、これに伴い左右駆動フェース64a,64bが引き離されて、Vベルト溝69に対するVベルト67の巻掛径が小さくなる。
【0043】また、これの反作用として、各連動バー71の後端同士が、図5中矢印Cで示すように互いに接近する。すると、これに伴い左右従動フェース66a,66bが互いに接近して、Vベルト溝70に対するVベルト67の巻掛径が大きくなる。
【0044】そして、これによって、変速装置58における減速比が大きくなり、つまり、出力軸83が減速されることとなる。
【0045】上記とは逆に、モータ82を駆動させて、変速駆動軸79を上記とは逆に(矢印Aと反対方向に)回転させると、上記動作が逆に行われて、変速装置58における減速比は小さくなり、つまり、出力軸83が増速されることとなる。
【0046】上記の場合、変速カバーケース63の右側部における前部外側面の側方は、この変速装置58に邪魔されることなくその前方から後方に向けて走行風84が円滑に流れ易い部分である。
【0047】そして、この実施例によれば、上記変速カバーケース63の右側部における前部外側面にモータ82を取り付けてある。このため、このモータ82はその駆動で発熱して高温になり易いものではあるが、上記走行風84によって効果的に冷却される。
【0048】また、上記エンジン21とは車体幅方向で反対側の変速ケース62の外側後方にフートレスト39が配設されている。これに対して、前記したように、モータ82は上記変速カバーケース63の右側部の前部外側面に取り付けてあるため、上記フートレスト39とモータ82とは車体幅方向で同じところに位置しがちとはなるが、上記モータ82は上記フートレスト39から前方に離れて位置し、上記モータ82がフートレスト39上のライダーの足40に干渉することが防止される。
【0049】また、上記モータ82の前方近傍には、前記排気管26の折り返し部27が配設されており、このため、上記モータ82は上記折り返し部27によって保護されている。
【0050】図1と図6において、前記クラッチ59につき説明する。
【0051】前記エンジン21のクランクケース22は重いものであるため、車体のバランス上、このクランクケース22は、車体の左右ほぼ中央に配置されている。一方、前記クラッチ59は湿式多板クラッチとされ、このクラッチ59はクランクケース22の後方近傍に設けられている。つまり、このクラッチ59も上記クランクケース22と共に車体の左右ほぼ中央に設けられており、よって、上記クラッチ59が湿式多板形とされて重いものではあるが、車体の重量バランスは良好に保たれている。
【0052】上記クラッチ59はクラッチケース85を有し、このクラッチケース85は前記延長ケース42aと、前記左ケース41から後方に延びる延長ケース41aとで構成されている。
【0053】上記クラッチケース85内には前記中間軸65の左端が臨んでおり、この中間軸65の左端にディスク86が一体成形されている。このディスク86の外周面には径方向対称位置に一対の突起86aが形成され、この突起86aの回転位置によってクランク軸43のクランク角が検出されるようになっている。
【0054】上記ディスク86にはクラッチアウタ87が取り付けられ、このクラッチアウタ87に複数のフリクションプレート88が軸方向にのみ摺動自在に内嵌されている。一方、上記中間軸65と同軸上で、上記クラッチケース85と中間軸65の左端とに出力軸90が支承されている。この出力軸90に円筒状の従動軸91が同軸上で支承され、この従動軸91に前記減速装置60を介して出力軸90が連結されている。
【0055】上記クラッチインナ92に複数のクラッチプレート93が軸方向にのみ摺動自在に外嵌され、上記フリクションプレート88とクラッチプレート93とは軸方向で交互に配設されている。
【0056】上記フリクションプレート88とクラッチプレート93とを互いに離反させれば(切断動作)、動力伝達が切断され、また、互いに摩擦接合させれば(接続動作)、中間軸65側から出力軸90側に動力が伝達される。
【0057】上記フリクションプレート88とクラッチプレート93による組合せ体の右側方にプレッシャプレート94が設けられ、このプレッシャプレート94は上記クラッチアウタ87に軸方向摺動自在に内嵌されている。また、上記プレッシャプレート94と上記クラッチアウタ87の内側面との間に中間プレート95が介設され、更に、上記プレッシャプレート94と中間プレート95との間に中間ばね96が介設されている。
【0058】また、上記クラッチアウタ87の内側面には傾斜面87aが形成されている。この傾斜面87aと上記中間プレート95との間の空間は、側面視で径方向外方に進むに従い幅が細くなる形状となっている。この空間に球状の重り97が介在し、一方、上記フリクションプレート88とクラッチプレート93とを離反させるように付勢する離反ばね98が設けられている。
【0059】そして、上記中間軸65が所定回転数以下のときには、上記重り97に生じる遠心力は小さいため、離反ばね98によりフリクションプレート88とクラッチプレート93とは相対的に引き離され、クラッチ59が切断動作する(図6において、プレッシャプレート94、中間プレート95、重り97などの前半分により図示)。
【0060】一方、上記中間軸65が上記した所定回転数以上となったときには、上記重り97に生じる遠心力が大きくなり、このため、この重り97は傾斜面87aを径方向外方に移動して、離反ばね98に抗し中間プレート95を左方に押すこととなる。すると、これに伴い中間ばね96を介しプレッシャプレート94が左方に押されて、このプレッシャプレート94が上記フリクションプレート88とクラッチプレート93とを摩擦接合させ、これによりクラッチ59が接続動作する(図6において、プレッシャプレート94、中間プレート95、重り97などの後半分により図示)。
【0061】上記中間軸65が、再び同上所定回転数以下になると、クラッチ59は再び前記切断動作をする。
【0062】前記カバーケース46の後端は後方に延びて延長ケース46aとなっており、この延長ケース46aに出力軸90の左端が支承されている。そして、前記左ケース41の延長ケース41aと、上記カバーケース46の延長ケース46aとの間で上記出力軸90に前記駆動鎖車31が取り付けられている。上記出力軸90にはその軸心上に貫通孔101が形成され、この貫通孔101内には第1操作軸102が軸方向摺動自在に嵌入している。
【0063】上記第1操作軸102の右端は球体103を介し、上記プレッシャプレート94に連結されている。また、同上第1操作軸102の左端に対応して上記延長ケース46aに操作孔104が形成され、この操作孔104に第2操作軸105がその軸心回り回動自在に嵌入している。この第2操作軸105の中途部には半円部106が形成され、この半円部106は、第2操作軸105の回動で上記第1操作軸102の左端に係脱するようになっている。
【0064】上記第2操作軸105は、前記ハンドル12の左側グリップに対応して設けられたクラッチレバー(図示せず)に連結されている。このクラッチレバーを握ることにより回動させると、上記半円部106が第1操作軸102の左端に係合し、上記中間ばね96に抗して第1操作軸102を右方に押す。すると、この第1操作軸102が球体103を介しプレッシャプレート94を右方に押してフリクションプレート88とクラッチプレート93を互いに離反させ、クラッチ59を前記したと同じように切断動作させる。つまり、中間軸65が所定回転数以上であって、前記したように重り97の作用により、クラッチ59が接続動作しているときでも、上記クラッチレバーを操作すれば、クラッチ59を切断動作させることができる。
【0065】同上図1と図6において、前記減速装置60は出力軸90と同軸上に設けられる遊星歯車式とされている。この減速装置60は、左ケース41の延長ケース41aに取り付けられるリングギヤ108と、従動軸91に形成されるサンギヤ109と、出力軸90にスプライン嵌合するキャリア110と、このキャリア110に支承され上記リングギヤ108とサンギヤ109とに噛合するプラネタリギヤ111とで構成されている。
【0066】図4と図6において、上記左ケース41およびその延長ケース41aと、カバーケース46およびその延長ケース46aとはボルト113によって着脱自在にねじ止めされ、上記両者間にはアルミ製のガスケット114が介設されている。115はノックピンである。
【0067】図6において、右ケース42の延長ケース42aに対し中間軸65を支承させる軸受部116と、上記中間軸65の左端に対し出力軸90を支承させる軸受部117とを潤滑する潤滑装置が設けられている。
【0068】前記クラッチケース85内の底部は潤滑油の油溜め部となっており、この油溜め部により、フリクションプレート88やクラッチプレート93の下部が常時油浴されている。
【0069】図3と図6において、上記フリクションプレート88やクラッチプレート93によって掻き上げられた潤滑油が左ケース41の延長ケース41aやカバーケース46の延長ケース46aに形成された油路121を通して前記操作孔104に供給されるようになっている。また、前記第2操作軸105の外周面には螺旋状の油溝122が形成され、貫通孔101の右端の内周面にも軸方向に延びる油溝123が形成されている。また、出力軸90には径方向に貫通する油孔124が形成され、この油孔124に対応するクラッチインナ92にも油孔125が形成されている。
【0070】そして、油圧ポンプによることなく図3中矢印Eで示すように油路121を通って操作孔104に自然流下した潤滑油は、更に、図6中矢印Fで示すように、上記操作孔104から貫通孔101、油溝122、および油孔124,125を通ってフリクションプレート88とクラッチプレート93の間に流入し、これらを潤滑する。また、同上図6中矢印Gで示すように、上記貫通孔101内の潤滑油118の一部は、油溝123を通って軸受部117を潤滑する
【0071】図6において、上記右ケース42の延長ケース42aの内側面にはリブ127が突設され、このリブ127に続くガイド切欠128と油孔129とが形成されている。そして、前記ディスク86の突起86aやクラッチアウタ87等で掻き上げられた潤滑油は、図6中矢印Hで示すように、上記リブ127、ガイド切欠128、および油孔129を通って前記軸受部116に案内され、これを潤滑する。
【0072】図1と図5において、前記変速カバーケース63の右側面には水ポンプ131が取り付けられ、この水ポンプ131は駆動軸43aによって駆動される。そして、この水ポンプ131は前記シリンダ23を冷却するため、冷却水を循環させる。
【0073】
【発明の効果】この発明によれば、前、後輪間にエンジンと変速装置とを車体幅方向で並設し、上記エンジンが、車体幅方向に延びるクランク軸と、上記変速装置とは車体幅方向で反対側の上記クランク軸の一端部の近傍に配設されてこの一端部に連動連結されるフライホイールマグネトとを備える一方、上記変速装置が、変速ケースと、車体幅方向に延びてこの変速ケースに支承される駆動軸と、この駆動軸に支承されてVベルト溝に巻き掛けられたVベルトのVベルト巻掛径が変更可能な駆動プーリと、この駆動プーリのVベルト巻掛径を変更調整するモータとを備え、上記エンジンとは車体幅方向で反対側の上記変速ケースの外側後方にフートレストを配設した車両の車体構成部品配設構造において、
【0074】上記クランク軸と同じ軸心上で、その他端部の外側方に上記駆動軸を配設して、この駆動軸を上記クランク軸に連動連結してある。
【0075】このため、エンジンのクランク軸と同じ軸心上で、その外側方に変速装置の駆動軸を配設して、この駆動軸を上記クランク軸に連動連結してあり、このため、上記駆動軸が車体の前後方向で上記クランク軸から大きく離れていることに比べて、上記クランク軸に駆動軸を連動連結させることは簡単な構成で達成され、即ち、上記クランク軸に対し、上記駆動軸を介して変速装置の駆動プーリを連動連結させるための構成が簡単になる。
【0076】また、上記変速ケースを基準として上記エンジンとは車体幅方向で反対側の上記変速ケースの前部外側面側から外側方に上記モータが突出するようこのモータを上記変速ケースに取り付けてある。
【0077】このため、上記モータは、車両が走行するときの走行風を、上記変速ケースに邪魔されることなく十分に受けることとなる。よって、このモータはその駆動で発熱して高温になり易いものではあるが、これは、上記走行風によって効果的に冷却される。
【0078】また、上記の場合、エンジンが、クランク軸の一端部の近傍に配設されてこの一端部に連動連結されるフライホイールマグネトを備える一方、上記モータを変速ケースの外側面側から車体幅方向で上記エンジンとは反対方向の外側方に突出させたことから、上記フライホイールマグネトとモータとは車体幅方向で左右に大きく振り分けられることとなる。
【0079】よって、上記フライホイールマグネトとモータに対するそれぞれの配線作業や保守点検作業が互いに干渉し合うことが抑制されて、これら作業がし易くなる。
【0080】また、上記したように、エンジンとは車体幅方向で反対側の上記変速ケースの外側後方にフートレストを配設した場合に、上記したように、エンジンとは車体幅方向の反対側の上記変速ケースの前部外側面側からモータを外側方に突出させてある。
【0081】このため、上記フートレストとモータとは車体幅方向で同じところに位置しがちとはなるが、上記モータはフートレストから前方に離れて位置することになる。よって、フートレスト上のライダーの足にモータが干渉することは防止される。
【0082】また、上記駆動プーリが、上記駆動軸に対し軸方向にのみそれぞれ摺動自在に支承され互いに協同して上記Vベルト溝を形成する一対の駆動フェースを有し、上記駆動軸と平行に延びてその軸心回りに回転自在となるよう上記変速ケースに支承され上記モータに連動連結される変速駆動軸を設け、この変速駆動軸に上記各駆動フェースをそれぞれ連動連結し、上記モータの駆動による上記変速駆動軸の回転に連動して、上記駆動軸に対し上記各駆動フェースがそれぞれ摺動して互いに引き離され、もしくは互いに接近して、上記駆動プーリのVベルト巻掛径が変更されるようにしてある。
【0083】このため、上記モータの駆動により変速駆動軸を回転させて、Vベルト巻掛径を変更調整したとき、上記両駆動フェースはそれぞれが互いに引き離され、もしくは接近させられることから、上記駆動プーリに巻き掛けられたVベルトの部分の上記駆動軸の軸方向における位置は変化することが防止される。
【0084】よって、上記Vベルト巻掛径の変更調整毎に、駆動軸の軸方向で、上記駆動プーリと従動プーリの相対位置が変化して、上記Vベルトが屈曲する、ということを防止でき、その分、上記モータの負担を軽減させることができて、このモータの発熱が未然に防止され、この点でも、モータが高温になることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジンと動力伝達装置の平面断面簡略図である。
【図2】自動二輪車の全体左側面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図1の部分拡大図である。
【図5】図1の部分拡大図である。
【図6】図1の部分拡大図である。
【符号の説明】
1 自動二輪車
11 前輪
16 後輪
21 エンジン
39 フートレスト
40 足
43 クランク軸
43a 駆動軸
47 フライホイールマグネト
58 変速装置
61 Vベルト巻掛機構
62 変速ケース
64 駆動プーリ
64a 駆動フェース
64b 駆動フェース
82 モータ
69 Vベルト溝
79 変速駆動軸
84 走行風

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前、後輪間にエンジンと変速装置とを車体幅方向で並設し、上記エンジンが、車体幅方向に延びるクランク軸と、上記変速装置とは車体幅方向で反対側の上記クランク軸の一端部の近傍に配設されてこの一端部に連動連結されるフライホイールマグネトとを備える一方、上記変速装置が、変速ケースと、車体幅方向に延びてこの変速ケースに支承される駆動軸と、この駆動軸に支承されてVベルト溝に巻き掛けられたVベルトのVベルト巻掛径が変更可能な駆動プーリと、この駆動プーリのVベルト巻掛径を変更調整するモータとを備え、上記エンジンとは車体幅方向で反対側の上記変速ケースの外側後方にフートレストを配設した車両の車体構成部品配設構造において、上記クランク軸と同じ軸心上で、その他端部の外側方に上記駆動軸を配設して、この駆動軸を上記クランク軸に連動連結し、上記変速ケースを基準として上記エンジンとは車体幅方向で反対側の上記変速ケースの前部外側面側から外側方に上記モータが突出するようこのモータを上記変速ケースに取り付け上記駆動プーリが、上記駆動軸に対し軸方向にのみそれぞれ摺動自在に支承され互いに協同して上記Vベルト溝を形成する一対の駆動フェースを有し、上記駆動軸と平行に延びてその軸心回りに回転自在となるよう上記変速ケースに支承され上記モータに連動連結される変速駆動軸を設け、この変速駆動軸に上記各駆動フェースをそれぞれ連動連結し、上記モータの駆動による上記変速駆動軸の回転に連動して、上記駆動軸に対し上記各駆動フェースがそれぞれ摺動して互いに引き離され、もしくは互いに接近して、上記駆動プーリのVベルト巻掛径が変更されるようにした車両の車体構成部品配設構造。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3313387号(P3313387)
【登録日】平成14年5月31日(2002.5.31)
【発行日】平成14年8月12日(2002.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−46105
【出願日】平成4年1月31日(1992.1.31)
【公開番号】特開平5−213264
【公開日】平成5年8月24日(1993.8.24)
【審査請求日】平成10年6月30日(1998.6.30)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【参考文献】
【文献】特開 昭57−176321(JP,A)
【文献】特開 昭60−1453(JP,A)