説明

車両の電力供給システム

【課題】走行中の車両に供給される電力に対して、個々の車両で実際に消費した電力量を正確に把握する。
【解決手段】車両が給電区間に進入したとき、インフラ側の課金計算装置から送信される区間進入の合図を起点として車両の電力計算装置に記録していた電力積算値をリセットすると共に車両のIDコードをインフラ側の課金計算装置へ送信する。車両の電力計算装置は、電流検出値と電圧検出値とを元に受電した電力を計算して積算し、給電区間の終了地点に達したとき、課金計算装置60から送信される区間退出の合図を受信した時点で電力積算を停止し、区間の電力積算値を車両のIDコードと共に課金計算装置へ送信する。これにより、課金計算装置で個々の車両に対する課金処理を精度高く行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を走行中の車両に電力を供給する車両の電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行中の車両に電気エネルギーを供給する装置をインフラストラクチャ(インフラ)側の設備として設け、車両の航続距離の拡大等を図る試みが進められている。例えば、特許文献1には、車両走行中にマイクロ波を電気エネルギーに変換するとともに、エネルギー管理装置で受電量を積算し、ETC車載機を搭載している場合は区間課金が可能なシステムが開示されている。また、特許文献2には、コイルによる電磁誘導で電力を受電してコンデンサに蓄電し、コンデンサの充電量に基づいて利用料金の課金を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−246518号公報
【特許文献2】特開2005−73313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、個々の車両が実際にどの程度の電気エネルギーを利用したかを知ることは、技術的に明確化されておらず、インフラ側の装置から電気エネルギーを受け取った車両のユーザに課金する際、個々の車両毎に消費量を勘定するのは困難であるため、所定の走行区間での一律料金の課金とするシステムが多い。この場合、車両の個体差や走行状況に応じて消費量にバラツキが生じるため、一律料金での課金は不平等になる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、走行中の車両に供給される電力に対して、個々の車両で実際に消費した電力量を正確に把握することのできる車両の電力供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による車両の電力供給システムは、道路の所定区間に渡って設けられた給電区間を走行する車両に電力を供給する給電装置と、前記車両に搭載され、前記給電装置からの電力を受電する受電装置と、前記車両に搭載され、前記受電装置で受電した電力を計算して前記給電区間に渡って積算する電力計算装置と、前記電力計算装置から送信された電力積算量と前記車両の識別コードとを受信し、受信した電力積算量と識別コードとに基づいて、前記車両のユーザへの課金処理を行う課金計算装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行中の車両に供給される電力に対して個々の車両で実際に消費した量を正確に把握することができ、これにより、精度の高い課金システムを構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電力供給システムの全体構成図
【図2】給電開始地点と給電終了地点を示す説明図
【図3】システムの動作の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1に示す電力供給システム100は、道路1上を走行する車両10と、この車両10に電力を供給する道路側の給電装置50と、電力の供給量に応じた課金処理を行う課金計算装置60と基本として構成される。特徴的には、本電力供給システム100は、個々の車両10に道路側の給電装置50から受電した電力を自身で計量・積算する機能を備え、個々の車両10が実際に受電したエネルギー分だけの課金及び支払いが可能なシステムを実現することができる。
【0010】
車両10への電力供給は、例えば、電磁誘導、電磁共鳴といった無線給電方式を用いて実現することができ、条件によっては電車の鉄道架線のような有線での電力供給方式を用いることも可能である。本実施の形態においては、電磁誘導方式による電力供給を行う例を示し、給電装置50は、道路1に埋設された送電コイル部50aと、この送電コイル部50aから車両10への給電を制御する制御部50bとを備えて構成されている。
【0011】
送電コイル部50aは、平板状に形成されたループ状の送電コイルを、道路1の路面に埋め込んで設けられるものであり、予め設定された給電区間に渡って設けられている。送電コイル部50aには、制御部50bによって制御される高電圧の交流が印加され、この交流電圧の電磁誘導により、道路1外へ電力を供給することができる。
【0012】
車両10は、本実施の形態においては、モータ11の動力によって走行する電気自動車であり、モータ11への電気供給源となるバッテリ12、モータ11を駆動するためのインバータ13を搭載している。更に、車両10は、給電装置50から電力を受電するための受電装置14と、この受電装置14で受電した電力(交流電力)を直流電力に変換してバッテリ12に供給するための整流器15を備えている。
【0013】
受電装置14は、平板状に形成した受電コイルを車体の底面に沿って設置したものであり、道路1に埋設された送電コイル部50aの上を車両10が通過すると、送電コイル部50aに印加される交流電圧の電磁誘導により、誘導電力が受電装置14に受電される。受電装置14で受電された交流電力は、整流器15で直流電力に変換され、バッテリ12に充電される。尚、後述するように、受電装置14は、本実施の形態においては、車両10外の装置と無線通信を行うためのアンテナを兼用しており、道路1の給電区間に進入したとき、車両10を識別するための識別コード(IDコード)を外部に送信する。
【0014】
また、車両10には、給電装置50から受電した電力を計算するための電力計算装置20が搭載されている。電力計算装置20は、マイクロコンピュータを中心として構成され、整流器15と電気負荷としてのバッテリ12との間で検出した電圧検出値と、整流器15とバッテリ12との間に介装した電流センサ16による電流検出値とに基づいて車両10が受電した電力量を演算し、この電力量を給電装置50の給電区間で積算する。
【0015】
車両10の電力計算装置20で積算された電力量は、電力供給システム100のインフラ(インフラストラクチャ)側の設備として設けられた課金計算装置60に送信される。課金計算装置60は、本実施の形態においては、道路1に埋設した送電コイル部50aを通信用アンテナとして共有することで、車両10と無線通信を行い、車両10の給電区間への進入及び退出を監視し、進入車両の識別、課金処理を行う。
【0016】
車両の給電区間への進入・退出は、例えば、図2に示すように、道路1の給電区間の開始地点と終了地点とに、それぞれ、カメラや光電管等によって車両を検出するゲート装置60a,60bを設けることで監視することができる。また、車両側が周期的に車両IDを送信して車両の位置を課金計算装置60へ知らせ、車両位置から給電区間への進入・退出を判断するようにしても良い。
【0017】
尚、給電装置50の制御部50b及び課金計算装置60は、地上の設備とすることなく、地下に埋設することも可能である。また、課金計算装置60と車両10との通信は、例えば、ETC(Electronic Toll Collection System:ノンストップ自動料金収受システム)のような方式としても良い、
次に、以上の電力供給システム100における動作の流れについて、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0018】
車両10が給電区間に進入すると、先ず、ステップS1の処理として、インフラ側の課金計算装置60から車両10へ区間進入の合図を示す信号を送信する。車両10は、ステップS2の処理として、この区間進入の合図を起点として電力計算装置20の内部に記録していた電力積算値をリセットし、ステップS3の処理として、進入車両を管理するためのIDコードを課金計算装置60へ送信する。
【0019】
続くステップS4は車両10の電力計算装置20の処理であり、電力計算装置20は、受電装置14で受電してバッテリ12へ送電する電流、電圧を検出し、電流検出値と電圧検出値とを元に、受電した電力を計算して積算する。そして、車両10が給電区間の終了地点に達すると、ステップS5の処理として、課金計算装置60から車両10に区間退出の合図を示す信号を送信する。
【0020】
この区間退出の合図を車両10が受信すると、車両10は、ステップS6の処理として、退出の合図を受信した時点で電力積算を停止して履歴として記録し、区間の電力積算値を車両のIDコードと共に課金計算装置60へ送信する。これにより、課金計算装置60で区間の総消費電力を検出し、個々の車両に対する課金処理を行う。この課金処理は、例えば、車両IDから特定される個々の車両毎に、各車両のユーザの金融機関の口座から料金を自動引き落としする等の処理である。
【0021】
このように本実施の形態においては、走行中の車両にインフラ側から供給される電力に対して、個々の車両で実際に消費した量を正確に把握することが可能となり、精度の高い課金システムを構築することができる。すなわち、インフラ側から供給される電気エネルギーの対価を、個々の車両が実際に消費した分だけ徴収することが可能となり、公共性の高いインフラとしての不公平感の無い枠組を構築することができる。例えば、エコノミーな運転をした車両に対しては、料金を安くする等のインセンティブを与える等、公共設備としての環境意識の向上と消費エネルギーの抑制に繋がるビジネスモデルを構築することが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1 道路
10 車両
14 受電装置
20 電力計算装置
50 給電装置
50a 送電コイル部
50b 制御部
60 課金計算装置
100 電力供給システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の所定区間に渡って設けられた給電区間を走行する車両に電力を供給する給電装置と、
前記車両に搭載され、前記給電装置からの電力を受電する受電装置と、
前記車両に搭載され、前記受電装置で受電した電力を計算して前記給電区間に渡って積算する電力計算装置と、
前記電力計算装置から送信された電力積算量と前記車両の識別コードとを受信し、受信した電力積算量と識別コードとに基づいて、前記車両のユーザへの課金処理を行う課金計算装置と
を備えたことを特徴とする車両の電力供給システム。
【請求項2】
前記電力計算装置は、前記受電装置から前記車両の電気負荷への電流値と電圧値とに基づいて電力を算出することを特徴とする請求項1記載の車両の電力供給システム。
【請求項3】
前記電力計算装置は、前記車両の前記給電区間への進入時に電力供給開始の合図を前記課金計算装置から受信し、その合図を起点に前回の電力積算量をリセットして受電電力の積算を開始した後、前記車両の前記給電区間からの退出時に電力供給終了の合図を前記課金計算装置から受信し、その合図で電力積算を停止して電力積算値を前記課金計算装置に送信することを特徴とする請求項1又は2記載の車両の電力供給システム。
【請求項4】
前記給電装置と前記受電装置とは、送電コイル及び受電コイルを介した電磁誘導により電力の授受を行うと共に、前記送電コイル及び前記受電コイルを通信用のアンテナとして兼用することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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