説明

車両の駆動装置

【課題】車両の駆動装置において、簡易な構造で、リアクトルに対する潤滑油の冷却性能の向上を図る。
【解決手段】駆動装置20は、回転電機14,16とリアクトルL1とギア24とを収容するケース26を有する。また、駆動装置20は、ケース26の底部にはギア24の一部が浸るよう溜められ、ギア24の回転により掻き上げられる潤滑油を、回転電機14,16に供給する油供給路64を有する。油供給路64は、この供給路64を流れる潤滑油の少なくとも一部を堰き止める堰部66を有する。堰部66には、この堰部66に堰き止められた潤滑油をリアクトルL1の上部へ流出させる貫通孔68が形成される。このような簡易な構成により、リアクトルL1に対する冷却性能の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の動力を駆動輪に伝達する車両の駆動装置に関し、特にその冷却構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、原動機の動力を駆動輪に伝達する装置として車両の駆動装置が知られている。この駆動装置は、原動機の動力を駆動輪に伝達するギアと、ギアを収容するケースとを有する。ケースの底部には、ギアの一部が浸るよう潤滑油が溜められており、その潤滑油がギアの回転で掻き上げられることにより、ギアの動作を潤滑にする。
【0003】
このような駆動装置が、原動機である回転電機の出力により走行するハイブリッド自動車及び電気自動車に搭載される場合、この駆動装置のケースには、ギアに加えて、回転電機と、回転電機に電気的に接続される電気回路の一部であるリアクトルとが収容される例がある。
【0004】
下記特許文献1には、回転電機と、回転電機を駆動するために電気的に接続され、リアクトルを含む電気回路群と、回転電機の動力を駆動輪に伝達するギアとをケースに収容した車両の駆動装置が記載されている。この駆動装置は、リアクトルを収容するオイル室と、ギアにより掻き上げられた潤滑油をオイル室へ供給するオイル通路とを有する。オイル室には、リアクトルを潤滑油に浸漬状態に保ちつつ、その潤滑油を、ギアを収容する空間に向けて流出させる、径の小さいオイル抜き穴が形成されている。この構成においては、オイル室に供給された潤滑油がリアクトルを浸漬することにより、発熱したリアクトルを冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−129817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の駆動装置においては、上述したように、オイル室に溜まった潤滑油がリアクトルを浸漬することで、リアクトルを冷却することができる。しかしながら、このようにオイル室に潤滑油を単に滞留させる構成では、リアクトルから潤滑油への熱伝達効率が低く、冷却性能の向上を図ることができないという問題がある。さらに、オイル室に潤滑油を滞留させる構成では、その滞留した潤滑油の温度がリアクトルの発熱で上昇してしまうと、冷却性能が著しく低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、簡易な構造で、リアクトルに対する潤滑油の冷却性能の向上を図ることができる車両の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転電機と、回転電機に電気的に接続されるリアクトルと、回転電機とリアクトルとを収容するケースと、を有する車両の駆動装置において、ケースに収容され、回転電機の動力を駆動輪へ伝達するギアと、ケースの底部に前記ギアの一部が浸るよう溜められ、前記ギアの回転により掻き上げられる潤滑油を、回転電機に供給する油供給路と、を有し、油供給路は、この供給路を流れる潤滑油の少なくとも一部を堰き止める堰部を有し、堰部には、この堰部に堰き止められた潤滑油をリアクトルの上部へ流出させる貫通孔が形成されることを特徴とする。
【0009】
また、貫通孔は、堰部の下方に形成される第1の貫通孔と、第1の貫通孔より上方に位置し、第1の貫通孔より大きく形成される第2の貫通孔とを有することが好適である。
【0010】
また、リアクトルを収容するキャッチタンクを有し、キャッチタンクの下部には、キャッチタンクの潤滑油を回転電機に流出させる下部孔が形成されることが好適である。
【0011】
また、堰部の上流側における油供給路の底面が堰部側に向って下方へと傾くように形成されることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両の駆動装置によれば、簡易な構造で、リアクトルに対する潤滑油の冷却性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るハイブリッド車両の動力伝達系の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るハイブリッド車両の回転電機を制御する電気回路の構成を示す図である。
【図3】本実施形態の駆動装置の平面図である。
【図4】図3のA−A線による断面図である。
【図5】図3のB−B線による断面図である。
【図6】図3のC−C線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両の駆動装置の実施形態について図を用いて説明する。一例として、回転電機と内燃機関との出力により走行するハイブリッド車両を挙げ、この車両に搭載された駆動装置について説明する。なお、本発明は、ハイブリッド車両に搭載された駆動装置に限らず、回転電機の出力のみにより走行する電気自動車に搭載された駆動装置にも適用することができる。
【0015】
まず、本実施形態のハイブリッド車両の動力伝達系について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【0016】
ハイブリッド車両(以下、単に「車両」と記す)10は、原動機として内燃機関12と第1回転電機14及び第2回転電機16を搭載し、また、これらの原動機12,14,16の動力を駆動輪18に伝達する装置として駆動装置20を搭載している。
【0017】
駆動装置20は、内燃機関12と第1及び第2回転電機14,16の動力を分配、統合する動力分配統合機構22と、動力を伝達するギア24と、第1及び第2回転電機14,16と動力分配統合機構22とギア24とを収容するケース26とを有する。動力分配統合機構22は遊星歯車機構により構成され、この遊星歯車機構の三要素に内燃機関12と第1及び第2回転電機14,16がそれぞれ接続されている。すなわち、内燃機関12が遊星歯車機構のプラネタリギア28に、第1回転電機14が遊星歯車機構のサンギア30に、第2回転電機16が遊星歯車機構のリングギア32にそれぞれ接続されている。また、リングギア32には、ギア24が接続され、ギア24には、車軸を介して駆動輪18が接続されている。
【0018】
ギア24は、遊星歯車機構のリングギア32に連結されたカウンタドライブギア36と、これに噛み合うカウンタドリブンギア38と、このカウンタドリブンギア38と結合されるファイナルドライブギア40と、これに噛み合うファイナルドリブンギア42と、このファイナルドリブンギア42に連結された差動機構44を有している。差動機構44には、車軸を介して駆動輪18が接続されている。
【0019】
このようなギア24の構成により、動力分配統合機構22により統合された各原動機12,14,16の動力が、各ギア36,38,40,42を介し、その速度を変更されて差動機構44に伝達され、さらに差動機構44により左右に分配された動力が車軸を介して駆動輪18に伝達される。
【0020】
以上に説明したような車両10の動力伝達系を構成することで、各原動機12,14,16の動力が、駆動装置20を介して駆動輪18に伝達され、車両10が走行する。
【0021】
次に、本実施形態の車両10の電力系について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係るハイブリッド車両の回転電機を制御する電気回路の構成を示す図である。
【0022】
車両10は、バッテリ46、DC/DCコンバータ48、第1及び第2インバータ50,52および制御装置54を有する。
【0023】
バッテリ46は、充放電可能な二次電池、例えばニッケル水素二次電池またはリチウムイオン二次電池などで構成される。なお、バッテリ46は、大容量コンデンサとすることもできる。
【0024】
DC/DCコンバータ48は、リアクトルとスイッチング素子とを有し、スイッチング素子のスイッチング動作によりリアクトルにおけるエネルギの蓄積と放出とを繰り返し、直流入力電圧を変換して直流出力電圧を得る装置である。図2においては、DC/DCコンバータ48は、昇圧および降圧を行う双方向DC/DCコンバータである。
【0025】
具体的には、図2において、DC/DCコンバータ48は、リアクトルL1と、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを有する。スイッチング素子Q1,Q2は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワートランジスタ、サイリスタ等から構成される。スイッチング素子Q1,Q2は、第1及び第2インバータ50,52の電源ラインとアースラインとの間に直列に接続される。上アームのスイッチング素子Q1のコレクタは電源ラインに接続され、下アームのスイッチング素子Q2のエミッタはアースラインに接続される。スイッチング素子Q1,Q2の中間点、すなわちスイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタの接続点にはリアクトルL1の一端が接続される。このリアクトルL1の他端は、バッテリ46の正極に接続される。また、スイッチング素子Q2のエミッタは、バッテリ46の負極に接続される。また、各スイッチング素子Q1,Q2のコレクタとエミッタとの間には、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すようにダイオードD1,D2がそれぞれ配置される。
【0026】
リアクトルL1の他端とアースラインとの間には平滑用コンデンサC1が接続される。また、スイッチング素子Q1のコレクタとアースラインとの間には平滑用コンデンサC2が接続される。これらのコンデンサC1,C2は、電解コンデンサまたはフィルムコンデンサからなる。
【0027】
第1及び第2インバータ50,52は、DC/DCコンバータ48に対し並列に接続される。第1インバータ50は、第1回転電機14に電気的に接続され、第2インバータ52は、第2回転電機16に電気的に接続される。第1及び第2回転電機14,16は、3相の永久磁石モータである。以下、第1インバータ50の構成について説明する。なお、第2インバータ52は、第1インバータ50と同じ構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0028】
第1インバータ50は、電源ラインとアースラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相の各アームから構成される。U相はスイッチング素子Q3,Q4の直列接続からなり、V相はスイッチング素子Q5,Q6の直列接続からなり、W相はスイッチング素子Q7,Q8の直列接続からなる。スイッチング素子Q3−Q8は、IGBT、パワートランジスタ、サイリスタ等から構成される。各スイッチング素子Q3−Q8のコレクタとエミッタとの間には、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すダイオードD3−D8がそれぞれ配置されている。
【0029】
各相アームの中間点は、第1回転電機14の各相コイルの各相端に接続されている。具体的には、U相アームのスイッチング素子Q3,Q4の中間点、すなわちスイッチング素子Q3のエミッタとスイッチング素子Q4のコレクタの接続点は、第1回転電機14のU相コイルの一端に接続される。また、V相アームのスイッチング素子Q5,Q6の中間点、すなわちスイッチング素子Q5のエミッタとスイッチング素子Q6のコレクタの接続点は、第1回転電機14のV相コイルの一端に接続される。また、W相アームのスイッチング素子Q7,Q8の中間点、すなわちスイッチング素子Q7のエミッタとスイッチング素子Q8のコレクタの接続点は、第1回転電機14のW相コイルの一端に接続される。第1回転電機14は、この回転電機14の各相コイルの他端が中点に共通に接続されて構成される。
【0030】
制御装置54は、DC/DCコンバータ48と、第1及び第2インバータ50,52とを制御して、第1及び第2回転電機14,16の駆動および回生を制御するものであり、例えば電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。制御装置54には、別のECU(図示せず)が接続されている。このECUは、第1及び第2インバータ50,52のトルク指令値を制御装置54へ出力する。
【0031】
また、制御装置54には、対象機器の状態を検出する各種センサが接続されている。具体的には、制御装置54には、第1及び第2回転電機14,16の回転速度を検出する回転速度センサ56が接続される。また、制御装置54には、リアクトルL1を流れる電流を検出する電流センサ58が接続されている。さらに、制御装置54には、コンデンサC2の両端の電圧を検出する電圧センサ60が接続されている。制御装置54は、別のECUから入力されたトルク指令値、回転速度センサ56から入力された回転速度、電流センサ58から入力された電流および電圧センサ60から入力された電圧に基づいてDC/DCコンバータ48と第1及び第2インバータ50,52とを制御するための信号を生成し、その生成した信号をDC/DCコンバータ48と第1及び第2インバータ50,52とにそれぞれ出力する。
【0032】
第1回転電機14の駆動時における電力系の動作について説明する。制御装置54は、DC/DCコンバータ48を制御して、バッテリ46の直流電力をDC/DCコンバータ48へ供給する。具体的には、制御装置54は、DC/DCコンバータ48のスイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とを交互にオン・オフさせる制御を行う。スイッチング素子Q2がオンになると、スイッチング素子Q2を介してリアクトルL1に電流が流れ、バッテリ46からの直流電力がリアクトルL1に蓄積される。そして、スイッチング素子Q2がオフになると、リアクトルL1に蓄積された直流電力がダイオードD1を介して第1インバータ50側に出力される。また、制御装置54は、第1インバータ50のスイッチング素子Q3−Q8のスイッチング動作を制御することにより、DC/DCコンバータ48からの直流電力を第1インバータ50により交流電力に変換し、得られた交流電力を第1回転電機14に供給する。これにより、第1回転電機14が回転駆動される。
【0033】
次に、第1回転電機14の回生時における電力系の動作について説明する。制御装置54は、第1インバータ50のスイッチング素子Q3−Q8のスイッチング動作を制御することにより、第1回転電機14で発電された交流電力を第1インバータ50により直流電力に変換し、得られた直流電力をDC/DCコンバータ48に供給する。また、制御装置54は、DC/DCコンバータ48を制御して、第1インバータ50から直流電力をDC/DCコンバータ48により降圧してバッテリ46を充電する。具体的には、制御装置54は、DC/DCコンバータ48のスイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とを交互にオン・オフさせる制御を行う。スイッチング素子Q1がオンになると、スイッチング素子Q1を介してリアクトルL1に電流が流れ、第1インバータ50からの直流電力がリアクトルL1に蓄積される。そして、スイッチング素子Q1がオフになると、リアクトルL1の起電力によりダイオードD2を介して電流が還流し、これによりリアクトルL1に蓄積された直流電力がバッテリ46に供給される。これにより、バッテリ46が充電される。
【0034】
次に、本実施形態に係る駆動装置20の構成について、図3〜6を用いて説明する。図3は、本実施形態の駆動装置の平面図であり、図4は、図3のA−A線による断面図であり、図5は、図3のB−B線による断面図であり、図6は、図3のC−C線による断面図である。
【0035】
駆動装置20のケース26には、上述したように、第1及び第2回転電機14,16と動力分配統合機構22とギア24とが収容される。また、ケース26には、図3に示されるように、リアクトルL1が収容される。そして、ケース26の上部には、図4,5に示されるように、各インバータ50,52及び制御装置54を含むPCU(Power Control Unit)62が一体的に固定されている。なお、本発明はこの構成に限定されず、ケース26に他の電気機器、例えば各インバータ50,52または制御装置54が収容されてもよい。
【0036】
ケース26の内部には、図4に示されるように、第2回転電機16が配置され、この第2回転電機16の奥に同軸上に第1回転電機14(図5に示す)が配置される。また、ケース26の内部には、第1及び第2回転電機14,16の間に、同軸上に動力統合分割機構22が配置される。動力統合分割機構22の上方であって、第1及び第2回転電機14,16の間には、リアクトルL1が配置される。
【0037】
そして、ケース26の内部には、図4に示されるように、第2回転電機16の左斜め上方にカウンタドリブンギア38と、カウンタドリブンギア38の下方にファイナルドリブンギア42がそれぞれ配置されている。ケース26の底部には、ファイナルドリブンギア42の一部が浸るよう潤滑油が溜められている。この溜められている潤滑油は、ファイナルドリブンギア42が回転動作することにより、図4に示される矢印方向に掻き上げられる。
【0038】
また、ケース26の内部には、掻き上げられた潤滑油を受け止めて各回転電機14,16に供給する油供給路64が設けられている。油供給路64の一端部には、掻き上げられた潤滑油を受け止める受止部64aが設けられ、その他端部側には、潤滑油を各回転電機14,16へ流出させる流出孔64bが形成されている。そして、油供給路64は、一端部から他端部に向けて下るように勾配がつけられている。これにより、図4に示すような矢印の向きに沿って、掻きあげられた潤滑油は受止部64aから流出孔64bへと流れ各回転電機14,16へ供給される。そして、供給された潤滑油が各回転電機14,16に接して熱を奪って各回転電機14,16を冷却し、ケース26の底部に戻される。
【0039】
本実施形態の油供給路64は、一端部と他端部の間に、潤滑油の少なくとも一部を堰き止める堰部66を有する。堰部66は、リアクトルL1側に位置する油供給路64の側壁である。そして、堰部66には、油供給路64からリアクトルL1側に貫通する貫通孔68が形成される。貫通孔68は、リアクトルL1より上方に位置する。よって、貫通孔68は、堰部66に堰き止められた潤滑油をリアクトルL1の上部へ流出させることができる。
【0040】
このような構成により、ケース26の底部から掻き上げられた潤滑油を、油供給路64を介して、リアクトルL1の上部にも供給することができる。そして、このような構成においては、従来技術で述べたようなリアクトルを潤滑油で浸漬させる構成に比べ、ケース26の底部に溜められている比較的低温の潤滑油を常にリアクトルL1全体に接触させることができるので、リアクトルL1をより効率よく冷却することができる。
【0041】
また、堰部66に形成される貫通孔68は、図4に示されるように、堰部66の下方に形成される第1の貫通孔68aと、第1の貫通孔68aより上方に位置し、第1の貫通孔68aより大きく形成される第2の貫通孔68bとをそれぞれ3個有する。なお、本発明は第1及び第2の貫通孔68a,68bの数3個に限定されず、それぞれ2個以下であっても4個以上であってもよい。
【0042】
このように、貫通孔68の大きさが堰部66の下方より上方のほうが大きく形成されることにより、次のような効果を得ることができる。すなわち、ギア24の回転数が小さく、掻き上げられる潤滑油の流量が少ない場合、油供給路64を流れる潤滑油の油面が低くなり、潤滑油は貫通孔68aのみを通ってリアクトルL1へ流出する。これにより、リアクトルL1へ供給される潤滑油の流量を少なくして、各回転電機14,16への潤滑油の供給を確実に確保することができる。このとき、堰部66に溜まった潤滑油が、比較的小さい貫通孔68aを通過することにより流速が上がるので、リアクトルL1接触時における熱伝達効率が向上し、少ない流量にもかかわらず冷却性能を上げることができる。
【0043】
一方、ギア24の回転数が大きく、掻き上げられる潤滑油の流量が多い場合、油供給路64を流れる潤滑油の油面が高くなり、潤滑油は貫通孔68aに加え貫通孔68bを通ってリアクトルL1へ流出する。このとき、各回転電機14,16への潤滑油の供給が当然に確保されている。これにより、リアクトルL1へ供給される潤滑油の流量を多くすることができるので、堰部66の上流側で潤滑油が滞留してしまうことを抑制することができる。潤滑油の滞留が抑制される、言い換えれば潤滑油の循環性能が向上するので、潤滑油の放熱も促進され、結果としてリアクトルL1に対する潤滑油の冷却性能の向上を図ることができる。
【0044】
そして、本実施形態の駆動装置20は、図5に示されるように、リアクトルL1を収容するキャッチタンク70を有し、キャッチタンク70の下部には、キャッチタンク70の潤滑油を各回転電機14,16に流出させる下部孔72が形成されている。下部孔72は、キャッチタンク70内の潤滑油をスムーズに流出させることができる大きさである。このような構成により、貫通孔68から供給された潤滑油は、リアクトルL1の上部に接触し、そのままリアクトルL1に接触しながら、言い換えればリアクトルL1から熱を奪いながら流下して下部孔72から流出する。そして、下部孔72から流出した潤滑油は各回転電機14,16へ供給されて、各回転電機14,16を冷却する。動作時における各回転電機14,16の温度は、リアクトルL1の温度より高くなる場合があるので、上述のように、潤滑油がリアクトルL1から各回転電機14,16へと流れるように流路が構成されることで、潤滑油により有効に熱を回収することができ、駆動装置20全体の冷却性能の向上を図ることができる。
【0045】
さらに、本実施形態の駆動装置20においては、図6に示されるように、堰部66の上流側における油供給路64の底面64cが堰部66側に向って下方へと傾くように形成される。この構成により、積極的に潤滑油をリアクトルL1に供給することができ、リアクトルL1に対する潤滑油の冷却性能を上げるができる。
【符号の説明】
【0046】
10 ハイブリッド車両、14 第1回転電機、16 第2回転電機、20 駆動装置、26 ケース、24 ギア、64 油供給路、66 堰部、68 貫通孔、70 キャッチタンク、L1 リアクトル、72 下部孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
回転電機に電気的に接続されるリアクトルと、
回転電機とリアクトルとを収容するケースと、
を有する車両の駆動装置において、
ケースに収容され、回転電機の動力を駆動輪へ伝達するギアと、
ケースの底部に前記ギアの一部が浸るよう溜められ、前記ギアの回転により掻き上げられる潤滑油を、回転電機に供給する油供給路と、
を有し、
油供給路は、この供給路を流れる潤滑油の少なくとも一部を堰き止める堰部を有し、
堰部には、この堰部に堰き止められた潤滑油をリアクトルの上部へ流出させる貫通孔が形成される、
ことを特徴とする車両の駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の駆動装置において、
貫通孔は、堰部の下方に形成される第1の貫通孔と、第1の貫通孔より上方に位置し、第1の貫通孔より大きく形成される第2の貫通孔とを有する、
ことを特徴とする車両の駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両の駆動装置において、
リアクトルを収容するキャッチタンクを有し、
キャッチタンクの下部には、キャッチタンクの潤滑油を回転電機に流出させる下部孔が形成される、
ことを特徴とする車両の駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両の駆動装置において、
堰部の上流側における油供給路の底面が堰部側に向って下方へと傾くように形成される、
ことを特徴とする車両の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87815(P2013−87815A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226742(P2011−226742)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】