説明

車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法

【課題】高電圧バッテリーシステムの個々のリレー全ての溶着の有無を検出し、バッテリーシステムの保護と安全性が確保された車両の高電圧バッテリーシステムを提供する。
【解決手段】高電圧バッテリーの負極に連結された負極リレーを接続する段階S101、正極に連結される正極リレーに並列で連結されたプリリレーを接続する段階S102、及びプリリレー接続時に電流の大きさを測定しプリリレーと正極リレーの溶着検査する段階S103を有する第1過程S100と、プリリレーを接続する段階S201、負極リレーを接続する段階S202、及び負極リレー接続時の負荷電流の大きさを測定し負極リレーの溶着の有無を検査する段階S203を有する第2過程S200と、を含んで構成され、第1過程S100と第2過程S200とが、リレーの溶着を検査する度に交代して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法に係り、より詳しくは、バッテリーシステムを構成する個々のリレー全部の溶着を検出する、車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車などのような環境問題対応車両には、高電圧バッテリーシステムが搭載される。
高電圧バッテリーシステムは、安全及びシステムの保護のために高電圧バッテリーの電流を接続/切断するリレーを備えている。
通常、高電圧バッテリーシステムのリレーは、イグニッションスイッチ接続(IG ON)時に連結され、イグニッションスイッチ切断(IG OFF)時に遮断される。
【0003】
このようなリレーは、過電流などによって、スイッチの役割をする両方の接点がお互いに固着する場合があり、これを溶着と言う。溶着が発生した場合には、高電圧バッテリーシステムは電流を遮断できなくなため、イグニッションスイッチ接続ごとにリレーの溶着が検査される(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
図1は、従来の車両用高電圧バッテリーシステムを示した図面である。図1に示すように、従来の車両用高電圧バッテリーシステムは、高電圧バッテリー500が高電圧負荷(V load)に正極リレー(RLY pos)及び負極リレー(RLY neg)を介して連結され、プリリレー(RLY pre)及びプリチャージ抵抗510が正極リレー(RLY pos)に並列で連結されている。
【0005】
従来のリレー溶着の検出方法は、先ず負極リレーを接続した後、プリリレーを接続し、その後に正極リレーを接続する手順で、各リレーの接続時に負荷電流が検出されるかどうかによってリレーの溶着を検出する。
【0006】
図2は、従来の車両用高電圧バッテリーシステムの正常状態の挙動を示した図である。
図2に示すように、負極リレーを接続した後プリリレーを接続し、プリチャージ抵抗510によって負荷電流を徐々に増加させ、引き続き正極リレーを接続すると、定格電流の負荷電流が流れるようになる。以後、プリリレーを遮断する。
【0007】
図3は、プリリレーの溶着を検出する方法を説明した図である。図3に示すように、プリリレーが溶着された場合は、負極リレー、プリリレー、及び正極リレーを順次接続した時、負極リレーを接続すると同時に負荷電流が徐々に増加し、プリリレーを接続する時点では既に相当な負荷電流が検出されるようになるので、プリリレー接続時の負荷電流大きさからプリリレーの溶着の有無を判定することができる。
【0008】
図4は、正極リレーの溶着を検出する方法を説明した図である。図4に示すように、正極リレーが溶着された場合は、負極リレー接続時から負荷電流が大きく上昇して、プリリレーを接続する時点では既に定格電流水準の電流が負荷電流に検出される。

【0009】
以上のようにプリリレーと正極リレーの溶着の有無は、負極リレー、プリリレー、及び正極リレーを順次に接続しながら、プリリレーの接続時点の負荷電流の大きさを測定することで判定する。
しかし負極リレーが溶着された状態は、負荷電流の挙動が図2に示す正常状態のものと同一になって、溶着を検出することができない。
【0010】
なお、参考のために、すべてのリレーが同時に溶着された場合は基本的に最初のリレー接続時点の負荷電流の大きさで判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−220328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、高電圧バッテリーシステムの電流を断続するリレーシステムの、個々のリレー全ての溶着の有無を検出し、バッテリーシステムの保護と安全性が確保された車両の高電圧バッテリーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するためになされた本発明の車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法は、相互に並列に連結された二つのリレーを、時間を置いて順に接続させた後、二つのリレーに直列で連結されたリレーを接続させながら、並列で連結された二つのリレーのうちで後に接続されるリレーの接続時に負荷電流の大きさを判断して各リレーの溶着の有無の検査を行い、各リレーの溶着の有無の検査を行う度に、並列で連結された二つのリレーの接続手順を相互に変えて各リレーの溶着の有無の検査を行うことを特徴とする。
また本発明は、各リレーの溶着の有無の検査がイグニッションスイッチ接続ごとに遂行されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明による車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法は、高電圧バッテリーの負極に連結された負極リレーを接続する第1段階と、第1段階から一定時間経過後に、高電圧バッテリーの正極に連結された正極リレーに並列に連結されたプリリレーを接続する第2段階と、正極リレーが遮断された状態でプリリレー接続時に負荷電流の大きさを測定して、プリリレーと正極リレーの溶着の有無を検査する第3段階と、を有する第1過程と、
プリリレーを接続する第4段階と、第4段階から一定時間経過後に、負極リレーを接続する第5段階と、正極リレーが遮断された状態で負極リレー接続時の負荷電流の大きさを測定し、負極リレーの溶着の有無を検査する第6段階と、を有する第2過程と、
を含んで構成され、各リレーの溶着の有無の検査が行われる度に、第1過程と第2過程とが、交代して行われることを特徴とする。
【0015】
各リレーの溶着の有無の検査は、イグニッションスイッチ接続ごとに遂行され、第1過程または第2過程それぞれにおいて、現在の過程選択ビットと異なった過程選択ビットが設定され、後続するイグニッションスイッチ接続ごとに、過程選択ビットに従って、第1過程と第2過程とが交互に行われることを特徴とする。
また本発明は、過程選択ビットは、車両の電気系統が遮断されたイグニッションスイッチ切断状態でも消去されない不揮発性メモリーに保存されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法は、高電圧バッテリーシステムの個々のリレー全ての溶着の有無を検出することによって、より向上した安全性の確保及びバッテリーシステムの保護を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の車両用高電圧バッテリーシステムを示した図面である。
【図2】従来の車両用高電圧バッテリーシステムの正常状態の挙動を示した図である。
【図3】図2の方法でプリリレーの溶着を検出する方法を説明した図である。
【図4】図2の方法で正極リレーの溶着を検出する方法を説明した図である。
【図5】本発明による車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法の実施例を示したフローチャートである。
【図6】本発明で遂行する第2過程によって負極リレーの溶着を検出する方法を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図5は、本発明による車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法の実施例を示したフローチャートである。
本発明の実施例は、図1に示す車両用高電圧バッテリーシステムにおいて、図5に示すように、高電圧バッテリーの負極に連結される負極リレーを接続する第1段階(S101)と、第1段階(S101)から一定時間経過後、高電圧バッテリーの正極に連結される正極リレーに並列で連結されたプリリレーを接続する第2段階(S102)と、正極リレーが遮断された状態でプリリレー接続時の負荷電流の大きさを測定して、プリリレーと正極リレーの溶着可否を検出する第3段階(S103)と、を有する第1過程(S100)と、
プリリレーを接続する第4段階(S201)と、第4段階(S201)から一定時間経過後、負極リレーを接続する第5段階(S202)と、正極リレーが遮断された状態で負極リレーの負荷電流の大きさを測定して負極リレーの溶着の有無を検出する第6段階(S203)と、を有する第2過程(S200)をと、
を含んで構成され、第1過程(S100)と第2過程(S200)とは、リレーの溶着の有無を検査する度ごとに相互に交代して行われる。
【0019】
本発明の実施例においては、図1示す車両用高電圧バッテリーシステムは、プリリレーと正極リレーとは等価であり、正極リレーと負極リレーとは等価である。
すなわち、互いに並列で連結された二つのリレーを、時間を置いて順に接続した後、二つのリレーに直列で連結されたリレーを接続させながら、並列で連結された二つのリレーのうちで後に接続されるリレーの接続時に負荷電流の大きさを判断してリレーの溶着を検出し、リレー溶着検出時ごとに、並列で連結された二つのリレーの接続手順を交代させながら各リレーの溶着を検出する。
【0020】
リレーの溶着の有無の検査は、車両のイグニッションスイッチ接続ごとに行い、続く一連のイグニッションスイッチ接続ごとに、第1過程(S100)と第2過程(S200)とを相互に交代しながら行うために、第1過程(S100)と第2過程(S200)ではそれぞれ過程選択ビットが互いに異なるように設定し(S104、S204)、次回にイグニッションスイッチを接続した時には、前回と異なるように設定された過程選択ビットによって前回と異なる第2過程(S200)または第1過程(S100)を選択して(S10)遂行する。
【0021】
過程選択ビットの情報は、車両の電気系統が遮断されたイグニッションスイッチ切断の状態でも消去されない不揮発性メモリーに保存される。
したがって、コントローラーはイグニッションスイッチが接続されると、過程選択ビットの値によって第1過程(S100)を遂行するか、または第2過程(S200)を遂行し、相互に交代しながら他方のリレーの溶着の有無を検出する。
【0022】
第1過程(S100)は、従来技術と同一である。
図6は、本発明で遂行する第2過程によって負極リレーの溶着を検出する方法を説明した図である。
第2過程(S200)は、図6に示したように遂行される。ここで、負極リレーが溶着されている場合は、図6に示したように、プリリレーを接続した時点から負荷電圧が増大し始め、負極リレーを接続した時点では既に相当な電流値まで上昇する。負極リレーを接続した時点での負荷電流の大きさによって負極リレーの溶着の有無が判断される。
【0023】
以上ののように、本発明は、車両のイグニッションスイッチを接続するごとに第1過程(S100)と第2過程(S200)を交代で遂行し、高電圧バッテリーリレーシステムのすべてのリレーの溶着の有無を検出するので、高電圧バッテリーシステムが保護され、安全性が向上する。
【0024】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0025】
500 高電圧バッテリー
510 プリチャージ抵抗
V load 高電圧負荷
S101 第1段階
S102 第 2段階
S103 第3段階
S100 第1過程
S201 第4段階
S202 第5段階
S203 第6段階
S200 第2過程
RLY pos 正極リレー
RLY neg 負極リレー
RLY pre プリリレー



【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に並列に連結された二つのリレーを、時間を置いて順に接続させた後、前記二つのリレーに直列で連結されたリレーを接続させながら、前記並列で連結された二つのリレーのうちで後に接続されるリレーの接続時に負荷電流の大きさを判断して各リレーの溶着の有無の検査を行い、前記各リレーの溶着の有無の検査を行う度に、前記並列で連結された二つのリレーの接続手順を相互に変えて前記各リレーの溶着の有無の検査を行うことを特徴とする車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法。
【請求項2】
前記各リレーの溶着の有無の検査は、イグニッションスイッチ接続ごとに遂行されることを特徴とする請求項1に記載の車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法。
【請求項3】
高電圧バッテリーの負極に連結された負極リレーを接続する第1段階(S101)と、前記第1段階(S101)から一定時間経過後に、前記高電圧バッテリーの正極に連結された正極リレーに並列に連結されたプリリレーを接続する第2段階(S102)と、前記正極リレーが遮断された状態で前記プリリレー接続時に負荷電流の大きさを測定して、前記プリリレーと前記正極リレーの溶着の有無を検査する第3段階(S103)と、を有する第1過程(S100)と、
前記プリリレーを接続する第4段階(S201)と、前記第4段階(S201)から一定時間経過後に、前記負極リレーを接続する第5段階(S202)と、前記正極リレーが遮断された状態で前記負極リレー接続時の負荷電流の大きさを測定し、前記負極リレーの溶着の有無を検査する第6段階(S203)と、を有する第2過程(S200)と、
を含んで構成され、
各リレーの溶着の有無の検査が行われる度に、前記第1過程(S100)と前記第2過程(S200)とが、交代して行われることを特徴とする車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法。
【請求項4】
前記各リレーの溶着の有無の検査は、イグニッションスイッチ接続ごとに行われ、前記第1過程(S100)または前記第2過程(S200)それぞれにおいて、現在の過程選択ビットと異なった過程選択ビットが設定され、後続するイグニッションスイッチ接続ごとに、前記現在の過程選択ビットと異なった過程選択ビットに従って、前記第1過程(S100)と前記第2過程(S200)とが交互に行われることを特徴とする請求項3に記載の車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法。
【請求項5】
前記過程選択ビットは、車両の電気系統が遮断されたイグニッションスイッチ切断状態でも消去されない不揮発性メモリーに保存されることを特徴とする請求項4に記載の車両の高電圧バッテリーシステムリレー溶着検出方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−84538(P2013−84538A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267188(P2011−267188)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】