説明

車両シート用空調装置

【課題】車両において快適さを損なうことなくシートを換気する。
【解決手段】空気送り装置(21)を支持装置(40)に対して旋回可能にする少なくとも1つの旋回装置(17)と、前記旋回装置(17)を前記支持装置(40)で保持する少なくとも1つの締結装置(50)と、によって、前記空気送り装置(21)を前記支持装置(40)に締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置の通風機のための締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、シートを換気するための通風機は、シートの連結部に締結される。このようなファンと金属構造の間の剛結合は、いずれにしても振動を生じさせない作りではない。ファンとフレーム構造との間の(乗客の作動による)持続的な相対運動を通じて“疲労させるブリッジ”が生まれることによって、ファンシステムが故障に至る可能性がある。ファンの振動は直接、構造本体とバックレストフォーム部分の中に伝わる。乗客はこれを“不快”と感じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、通風機をシートのフォームクッションの中に入れようとする試みもある。しかしながら、これは、例えば薄いクッションを詰めたシートの場合には困難である。そこで、快適さを損なうことなくシートを換気するために、代替の方法を用いることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらのことを背景として、本発明は、請求項1の特徴を有する技術構想を提案する。後続の請求項および以下の説明から、更なる有利な形態が推知できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】空調される対象としてのシートを備えた車両の部分的縦断面図である。
【図2】図1の空調されるシートの領域Aにおける部分切り取り図である。
【図3】締結装置が取り付けられた通風機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明の詳細を説明する。ここで述べる実施形態は本発明を分かり易くするものであるが、例示のためのものにすぎない。自明のことながら、本発明の枠内で述べる従属請求項によって限定された特徴を、個々に、又はある程度省略、改変又は補足することもあり得る。また、様々な実施形態の特徴を互いに組み合わせることも、自明のことながらあり得る。本発明のコンセプトが本質的に実用化されることが重要である。ある特徴が少なくとも部分的に満たすべきものである場合には、当該特徴が完全に満たされているか実質的に完全に満たされていることを含む。“実質的に”は、ここで特に、実用化によって所望の効果を認識可能な程度に得ることができるようにすることを意味する。これは特に、当該特徴が少なくとも50%、90%、95%又は99%満たされていることを意味することができる。最小の数量が記載されている時は、自明のことながら、かかる最小の数量より多くのものを使用することもあり得る。特定の構造部品の数が少なくとも1つと記載されているとき、これは、特に2つ、3つ又はそれ以上の多数の構造部品を有する実施形態も含む。特定の対象について記述されていることは、他の同種のあらゆる対象の大部分又は全部に当てはめることができる。別様の記載がない限り、範囲にはその境域点も含まれる。
【0007】
本発明は、特に乗物での使用に適する。乗物とは、特に陸上、水上又は空中の乗物、例えば航空機、鉄道車両、船舶、自動車などの総称である。
【0008】
本発明はまた、少なくとも表面付近において、少なくとも特定の気候上のパラメータ、例えば温度又は湿度が所望の範囲に又はある一定の値に保たれるように、当該表面が少なくとも部分的に調整される全ての対象において使用することに適する。よって、“空調対象”とは、特に車両1の利用者が乗客室内で接触し得る構造部品、例えば、自動車の操縦装置、インストルメントパネル、アームレスト、ドアトリムパネル、シートサポート、ヒートカバー、天井、クッション4、カバー6、シートなどの総称である。
【0009】
本目的に合致するように、少なくとも車両1は、少なくとも1つの空調すべき対象2、例えばシート、内装構造部品、車両操縦装置、インストルメントパネル、アームレスト、ドアトリムパネル、クッション4又はカバー6を有する。これにより、比較的長いドライブの時であっても、乗客のための温度調節と空調が可能となる。
【0010】
本目的に合致するように、少なくとも1つの対象2は、少なくとも1つのクッション4、例えば発泡性ポリウレタンからなるブロックを有する。
【0011】
少なくとも1つの対象2は、補剛又は構造形成の働きをする支持装置40(例えば車両シートの締結構造フレーム又は連結フレーム)を少なくとも1つ備えると好ましい。これは、少なくとも部分的に金属パイプ構造又は格子ロッド構造からなると好ましい。
【0012】
本目的に合致するように、少なくとも1つの対象2は、少なくとも1つの空調装置10を有する。空調装置とは、空調すべき領域内の温度、湿度及び/又は空気の動きの調節、例えば、車両1の乗客室内において利用者が接触する面の温度調節/空調に役立つ装置の総称である。
【0013】
本目的に合致するように、少なくとも1つの対象2は、少なくとも1つの換気装置20を有する。換気装置とは、空気を交換するために特定の面領域又は空間領域内の空気組成又は空気流を目標通り変えるのに利用できる装置、例えば車載空調装置、少なくとも部分的に通気性を有する間隔媒質、間隔ニット及び/又は空調用インサートの総称である。その数は、例えば対象2ごとに、又は空調すべき面ごとに換気装置20が1つ設けられているように選定することができる。
【0014】
本目的に合致するように、少なくとも1つの換気装置20は、少なくとも1つの空気送り装置21を有する。空気送り装置とは、空調される対象2との間で空気を出し入れするのに適した装置、例えばアキシャルベンチレータやラジアルベンチレータなどの、特に空気流動機械の総称である。その数は、例えば対象2ごとに、又は空調すべき面ごとに空気送り装置21が1つ設けられているように選定することができる。
【0015】
空気送り装置21は、少なくとも1つの旋回装置17を用いて旋回自在に、少なくとも1つの締結装置50を介して支持装置40で支承されていることが好ましい。これは、少なくとも予備組み立ての状態で成り立つ。組み立てが完成した空気送り装置21の場合、旋回自在性は旋回軸15を中心として20°より小さい角度、むしろ10°より小さい角度に局限されている。そのため、空気送り装置21は、周囲を3つ又は4つの点において締結されるものではない。局限されていれば締結されているのが普通であるが、当該装置はむしろ片側で支承されているだけである。これは特に、締結が唯一の保持点11でなされるだけであることと解するか、又は、複数の保持点が設けられているが、通風機5の回転軸に対して全部共同で180°以下の1つの扇形の中に位置することと解する。締結点11は、空気送り装置21の通風機5の羽根車16が回転時にかすめる基礎面の外に位置することが好ましい(羽根車の回転軸に沿って見た場合)。
【0016】
旋回装置17を支持装置40で保持するために、2つの保持点11と2つの付属の締結装置50が設けられていることが好ましい。
【0017】
少なくとも1つの空気送り装置21は、好ましくは振動を減衰させるように支持装置40に締結されている。さらに、少なくとも1つの旋回装置17及び/又は1つの締結装置50は、弾性部分及び/又は可撓性部分を備えると好ましい。旋回装置17の弾性部分は、例えばゴムリング25により作られており、締結ねじ又は保持クリップが締結点11を中心として旋回できるようにする。ここで、旋回軸15は羽根車16の略回転平面内に位置する。旋回軸15は、羽根車16の領域の中を通らないことが好ましい。
【0018】
少なくとも1つの締結装置及び/又は少なくとも1つの空気送り装置21がランバサポートから間隔をあけて配置されていると好ましい。これらは、例えば、腰椎を保護するランバサポートより上のバックレスト上部域の真中にあって、構造フレーム側で腰部を支える懸架部の間、又は、2つのヘッドレストガイドの間に設けられていると好ましい。このような構成が好ましい理由は、空気送り装置21のための構造スペースが確保できること、支持装置40に対するクッション4の相対運動が最も小さくなること、シートの上クロスフレームが空気送り装置21を結合させるのに使用できること、そして、空気送り装置21の構造スペースによっても後部座席の乗客の膝の運動の自由をほとんど制限されないことである。
【0019】
本目的に合致するように、少なくとも1つの換気装置20は、少なくとも1つの空気案内装置22を有する。これにより、所期の通り、空気を少なくとも1つの空気送り装置21から少なくとも1つの空気交換装置221に、又は逆方向に通すことが可能となる。
【0020】
本目的に合致するように、少なくとも1つの空気案内装置22は、少なくとも1つの被包装置224を有する。これは、空気案内装置22の中に通された空気が、空気案内装置22から望まれない場所へ、例えば泡立ちダクト、フォイルシート、ホースなどへと漏れ出るのを防止する装置の総称である。少なくとも1つの被包装置224、少なくとも第1の被包セクション及び/又は第2の被包セクションが、少なくとも部分的に繊維平面的材料、例えば布織物、例えばPET、PA、PP又はPUの通気性フォイル、ポリウレタンからなる好ましくは通気性のフォーム、繊維材料を含んだ空気流抑制層、又は、ポリアクリル、PA又はハードPVCなどの硬質プラスチックから作られていると好ましい。
【0021】
本目的に合致するように、少なくとも1つの換気装置20は、少なくとも1つの空気交換装置221を有する。これによって、空気案内装置22と、空調すべき対象2の空調すべき表面との間において、空気を交換することができる。
【0022】
少なくとも1つの空気交換装置221は少なくとも部分的に、その平らな構造部品が空調すべき表面の大きさとなるように形成されていると好ましい。本目的に合致するように、少なくとも1つの空気交換装置221の厚みは、最大でクッション厚の30%である。この値は、本目的に合致するように5〜20mmの範囲内、好ましくは10〜15mmの範囲内にある。これにより、クッション効果を下げることなく、クッション4に空気交換装置を組み込むことが可能となる。
【0023】
少なくとも1つの空気交換装置221は、少なくとも部分的に、空調すべき対象2の空調すべき表面の付近、例えばクッション4と空調すべき表面の間、好ましくはシートフォームクッション4とシートカバー6の間で、例えばシートの利用者に面した側(A側)においてカバー6の下に配置されていると好ましい。これにより、接触面の湿気が均一に除去されることになる。
【0024】
少なくとも1つの空気案内装置22は、少なくとも空気送り装置21に面した結合セクション12において少なくとも部分的に、少なくとも1つの柔軟な弾性及び/又は可撓性の材料、例えばゴム、シリコン、ラバー、PVC、ポリエチレン、ポリウレタン等から作られていると好ましい。
【0025】
本目的に合致するように、少なくとも1つの結合セクション12は、弾性及び/又は可撓性を有し、ゴム又はシリコンからなるベローズ、チューブ又はグロメットとして形成されていると好ましい。これによって、空気送り装置21がシートの支持装置40からも空調装置10からも隔離され、空気送り装置21から周囲部分に振動がまったく又はほとんど伝わらないようにされる。
【0026】
空気送り装置21と空気案内装置22の結合セクション12の間の連絡は、好ましくはスナップジョイント/クイックジョイントを通して、好ましくは一方の部分のアンダカット30と他方の部分のコイルばねを通して行われる。その漏れ止めは、好ましくは溝/ばね結合部にプリテンションをかけることによって行われる。
【0027】
少なくとも1つの空気送り装置21と少なくとも1つの結合セクション12は、互いに異なる色を呈すると好ましい。これにより、組み付けの際にジョイントが正しく(耐密で)取り付けられているか否かを即座に認識できる。
【0028】
少なくとも1つの結合セクション12は、少なくとも空気送り装置21に面した端、及び/又は、少なくとも空気交換装置221に面した端に、少なくとも1つのフランジ及び/又は少なくとも1つのシャックルを備えると好ましい。これは、取り付け補助具として役立ち、又は、相異なる構造部品の間の過渡部分の漏れ止めをより良くするのに役立つ。
【0029】
溶接困難な材料又は接着性の乏しい材料から結合セクション12が構成される場合、少なくとも1つのフランジ上に接着層が縫い付けられていると好ましい。このような接着層は、例えばテキスタイル、例えばフリースから作られていてよい。この場合、境を接する構造部品、例えば空気交換装置221などは接着層と接着又は溶接されていてよく、これにより結合セクション12と間接的に結合した形になっていてよい。
【0030】
上記の空気送り装置21には、クッション4のあらゆる運動が加えられる(例えば、シートにおいて乗客が動く時)。その時、空気送り装置21とクッション表面の間の結合は常に圧密状態のままである。バックレストフレームへの結合部が可動であることにより、空気送り装置21は実に速やかに取り付けることができる。通風機5の振動がシートの連結部の金属構造に伝わることはない(乗客にとって快適である)。
【0031】
また、すでに締結された空気送り装置21は、エアダクトと継ぎ合わせる際により大きい取り付けフリースペースを得るために持ち上げることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 車両
2 対象
4 クッション
5 通風機
6 カバー
10 空調装置
11 保持点
12 結合セクション
15 旋回軸
16 羽根車
17 旋回装置
20 換気装置
21 空気送り装置
22 空気案内装置
25 ゴムリング
30 アンダカット
40 支持装置
50 締結装置
221 空気交換装置
224 被包装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気送り装置(21)を支持装置(40)に対して旋回できるようにする少なくとも1つの旋回装置(17)と、前記旋回装置(17)を前記支持装置(40)で保持する少なくとも1つの締結装置(50)と、によって、前記空気送り装置(21)を前記支持装置(40)に締結するための締結装置(50)。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1つの締結装置(50)を備えた空気送り装置(21)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の少なくとも1つの空気送り装置(21)及び/又は締結装置(50)を備えた換気装置(20)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1つの締結装置(50)、少なくとも1つの空気送り装置(21)及び/又は少なくとも1つの換気装置(20)を備えることを特徴とする対象(2)。
【請求項5】
内装構造部品、特に車両操縦装置、インストルメントパネル、アームレスト、ドアトリムパネル、クッション(4)、カバー(6)、又はシートであることを特徴とする請求項4に記載の対象(2)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの締結装置(50)、少なくとも1つの空気送り装置(21)及び/又は少なくとも1つの換気装置(20)及び/又は少なくとも1つの対象(2)を備えることを特徴とする車両(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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