説明

車両データ処理システム

【課題】車両内通信ネットワークを有する車両において、車両内通信ネットワークから情報収集・中継手段(通信プロトコル変換器)を介して上位システム(例えば、車載コントローラや、車載モニタ)に車両データを送信するに際して、上位システムに同一データを繰返し送信することが回避される車両データ処理システムの提供。
【解決手段】車両の走行時及び停車時の車両データの収集を担う車両内通信ネットワーク(2)と、データ処理上位システム(車載コントロールユニット4)と、前記車両内通信ネットワーク(2)と前記データ処理上位システム(4)とを中継するデータ中継手段(通信プロトコル変換器;CANコンバータ3)とを有し、該データ中継手段(通信プロトコル変換器;CANコンバータ3)は、車両内通信ネットワーク(2)からデータ処理上位システム(4)に送信するデータが更新されている場合に限り車両内通信ネットワーク(2)からデータ処理上位システム(4)に車両データを送信するように構成されたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内通信ネットワーク、所謂「CAN」を有する貨物自動車において、走行時及び停車時の全ての車両情報を処理する際の車両データ処理システムに関して、詳細には、車両内通信ネットワーク「CAN」から上位システムである例えば車載制御手段にデータを中継する際の処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内通信ネットワーク「CAN」に接続される情報収集・中継手段(通信プロトコル変換器)は、図4に示すように、車両内通信ネットワーク20上のデータから必要な情報を受信した際に、予め定めたメモリエリアに受信データを格納し(S301〜S302)、上位システム40の例えば制御手段である図示しない車載コントロールユニットや表示手段である車載モニタへのデータ送信時はメモリエリアから当該情報を取り出してデータを送信する(S305〜S306)ように構成されている。
ここで、図4の符号S301〜S308は、通信プロトコル変換器における処理工程を順に示した工程番号である。
【0003】
このとき、車両内通信ネットワーク20のデータ周期Fiが、上位システムへのデータ送信周期Foよりも遅い場合は、受信データのメモリエリアが変化しないため、データが更新されないのにもかかわらず、同じデータを繰り返して上位システム側に送信してしまうという問題が発生してしまう。
【0004】
その他の従来技術として、例えば、トラクタとトレーラとの間の複数の信号線を切り換えるスイッチ手段を制御して、通信配線の制御及び診断を可能に構成した電気通信装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかるに、上記技術は、スイッチ手段を制御して、トレーラの電気要求に応じてトラクタからの電力を電気コネクタへ送るものであり、上記問題を解決するものではない。
【特許文献1】特開平6−199192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案するものであり、車両内通信ネットワーク「CAN]を有する車両において、車両内通信ネットワーク「CAN]から情報収集・中継手段(通信プロトコル変換器)を介して上位システム(例えば、車載コントローラや、車載モニタ)に車両データを送信するに際して、上位システムに同一データを繰り返して送信することを回避する車両データ処理システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両データ処理システムは、車両の走行時及び停車時の車両データの収集を担う車両内通信ネットワーク(CAN2)と、データ処理上位システム(車載コントロールユニット4)と、前記車両内通信ネットワーク(2)と前記データ処理上位システム(4)とを中継するデータ中継手段(通信プロトコル変換器;CANコンバータ3)とを有し、該データ中継手段(通信プロトコル変換器;CANコンバータ3)は、車両内通信ネットワーク(CAN2)からデータ処理上位システム(4)に送信するデータが更新されている場合に限り車両内通信ネットワーク(CAN2)からデータ処理上位システム(4)に車両データを送信するように構成されたことを特徴としている(請求項1)。
尚、車両内通信ネットワーク(CAN2)からデータ処理上位システム(4)に送信するデータが更新されていない場合は、エラーメッセージを上位システムである例えば表示手段(モニタ等)に表示させることが好ましい。
【0008】
前記データ処理上位システムは、車載制御手段(例えば、コントロールユニット4)、車載表示手段(例えば、モニタ5)、管理側制御手段(例えば、燃費解析用コンピュータ7)及び管理側出力手段(例えば、プリンタ8)の内の一つ以上の手段を有している(請求項2)。
【0009】
前記車載制御手段(例えば、コントロールユニット4)は、車両内通信ネットワーク(2)から収集した車両データに基づいて燃費に関わる諸物理量を演算するとともに、前記車載表示手段(例えば、モニタ5)を介して燃費情報及びドライバに省燃費運転を含む最適運転を喚起するための情報を表示するように構成され、前記管理側制御手段(例えば、燃費データ解析用コンピュータ7)は、車載制御手段(4)から車両データがデータ搬送手段(例えば、メモリカード6や無線通信)を介して入力され、そのデータに基づいて燃費に関わる諸物理量を演算し、演算した諸物理量の良否を評価し、前記出力手段(例えば、プリンタ8)によって出力する様に構成されている(請求項3)。
【0010】
前記データ中継手段(通信プロトコル変換器;CANコンバータ3)は、データ受信部(31)とデータ記憶部(32)と更新情報チェック部(33)とデータ送信部(34)とを有し、データ受信部(31)で受信したデータを一端データ記憶部(32)に記憶し、データ処理上位システム(4)にデータを送信するに際し、更新データチェック部(33)はデータ記憶部(32)からデータを引き出し当該データが更新されたものである場合にデータ送信部(34)を介してデータ処理上位システム(4)にデータを送信するように構成されている(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
上述する構成を具備する本発明の車両データ処理システムによれば、車両内通信ネットワーク(2)と、データ処理上位システム(4)と、前記車両内通信ネットワーク(2)と前記データ処理上位システム(4)とを中継するデータ中継手段(通信プロトコル変換器;CANコンバータ3)とを有し、該データ中継手段(通信プロトコル変換器;CANコンバータ3)は、車両内通信ネットワーク(2)からデータ処理上位システム(4)に送信するデータが更新されている場合に限り車両内通信ネットワーク(2)からデータ処理上位システム(4)に車両データを送信するように構成されているため、上位システムへの同一データの繰返し送信が回避される。
【0012】
したがって、車両内通信ネットワーク(2)上のデータを確実に管理することが出来、正確なデータ処理を実行することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1において、当該車両データ処理システムは、車両1側の装備U1と管理側の装備U2と、車両1側の装備U1で収録したデータを管理側の装備U2に移送する移送手段であるメモリカード6とによって構成されている。
ここで、管理側とは、例えば、車両1を所有する運送会社の車両管理部門等を指す。
【0015】
前記車両側の装備U1は、車両1に搭載されたCAN(車両内LAN)中継器であるCANバス9と、データ中継器であり、通信プロトコル変換器でもあるCANコンバータ(以降、データ中継器、或いは通信プロトコル変換器を、CANコンバータと言う)3と、車載制御手段である車載コントロールユニット4と、車載表示手段である車載モニタ5と、それらの装備間を接続する車両内通信ネットワーク(CAN)2とから構成されている。
【0016】
その車両内通信ネットワーク(CAN)2は、詳細には、車両1の図示しないエンジン回転センサ、図示しないアクセル開度センサ、図示しない車速センサ、図示しない燃料メータ、図示しないエンジン負荷センサ等からのデータを前記CANバス9に収集する図示しない車両内通信ネットワーク(CAN)の支線と、CANバス9と前記CANコンバータ3とを接続する幹線21と、CANコンバータ3と前記車載コントロールユニット4とを接続する幹線22とで構成されている。
【0017】
一方、管理側の装備U2は、前記車両データが、メモリカード6を介して入力され、車両データであって、計測されたエンジン回転数、アクセル開度、車速、燃料流量から、例えば、当該車両1の燃料消費量、及び今後の推定標準燃料消費量、目標燃料消費量を演算し、評価する管理側制御手段(燃費データ解析用コンピュータ;以降、管理側制御手段を管理側コントロールユニットという)7と、前記評価結果を出力する出力手段であるプリンタ8とによって構成されている。
【0018】
尚、管理側コントロールユニット7は、車載コントロールユニット4で演算された諸情報を、メモリーカード6に代えて、図示しない無線送受信手段によって、入力することも可能である。
【0019】
前記中継手段であるCANコンバータ3は、図2に示すように、データ受信部31とデータ記憶部32と更新情報チェック部33とデータ送信部34とを有している。
【0020】
CANコンバータ3は、データ受信部31で受信したデータを一端データ記憶部32に記憶し、データ処理上位システムである車載コントロールユニット4にデータを送信するに際して、更新データチェック部33がデータ記憶部32からデータを引き出し、当該データが更新されたものである場合にデータ送信部34を介して車載コントロールユニット4にデータを送信するように構成されている。
【0021】
次に、図3のフローチャート及び図1、図2の構成を参照して、CANコンバータ3から車載コントロールユニット4にデータを送信する際の制御方法について以下に説明する。
【0022】
先ず、ステップS1においてCANコンバータ3の更新データチェック部33は、データ記憶部32にデータが格納されているか否かを判断する。データ記憶部32にデータが格納されていれば(ステップS1のYES)、ステップS2に進み、格納されていなければ(ステップS1のNO)、ステップS4に進み、「FF信号」をデータ送信部34に送信した後、そのまま制御を終える。
「FF信号」を受信したデータ送信部34は、モニタ5にエラーメッセージを表示させて、当該データを上位システムに送信しない。
【0023】
ステップS2では、CANコンバータ3の更新データチェック部33は、データが更新されているか否かを判断する。データが更新されていれば(ステップS2のYES)、ステップS3に進み、更新されていなければ(ステップS2のNO)、ステップS4に進み、「FF信号」をデータ送信部34に送信した後、そのまま制御を終える。
「FF信号」を受信したデータ送信部34は、モニタ5にエラーメッセージを表示させて、当該データを上位システムに送信しない。
【0024】
ステップS3では、CANコンバータ3の更新データチェック部33は、当該データを、データ送信部34を介して、車載コントロールユニット4に送信して制御を終了する。
【0025】
上述した構成及び制御方法を有する本実施形態によれば、車両内通信ネットワーク(CAN)2と、上位システムである車載コントロールユニット4と、前記車両内通信ネットワーク(CAN)2と車載コントロールユニット4を中継するCANコンバータ3とを有し、そのCANコンバータ3は、車両内通信ネットワーク(CAN)2から車載コントロールユニット4に送信するデータが更新されている場合に限り車両内通信ネットワーク(CAN)2から車載コントロールユニット4に車両データを送信するように構成されているため、車載コントロールユニット4への同一データの繰返し送信が回避される。
【0026】
したがって、車両内通信ネットワーク2上のデータを確実に管理することが出来、正確なデータ処理を実行することが出来る。
【0027】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、例えば、車載表示手段である車載モニタは、車載制御手段である車載コントロールユニットに装備されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の車両データ処理システムの全体構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態における通信プロトコル変換器の内部構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態の制御方法であって、CANコンバータから車載コントロールユニットにデータを送信する際の制御の流れを説明するフローチャート。
【図4】従来技術における車両内通信ネットワークから通信プロトコル変換器を経て上位システムにデータを送信する状態を示した説明図。
【符号の説明】
【0029】
1・・・車両
2・・・車両内通信ネットワーク
3・・・データ中継手段/通信プロトコル変換器;CANコンバータ
4・・・車載制御手段/車載コントロールユニット
5・・・車載表示手段/車載モニタ
6・・・メモリカード
7・・・管理側制御手段/燃費データ解析用コンピュータ
8・・・出力手段/プリンタ
9・・・CANバス
31・・・データ送信部
32・・・データ記憶部
33・・・更新データチェック部
34・・・データ送信部
U1・・・車両側の装備
U2・・・管理側の装備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行時及び停車時の車両データの収集を担う車両内通信ネットワークと、データ処理上位システムと、前記車両内通信ネットワークと前記データ処理上位システムとを中継するデータ中継手段とを有し、該データ中継手段は、車両内通信ネットワークからデータ処理上位システムに送信するデータが更新されている場合に限り車両内通信ネットワークからデータ処理上位システムに車両データを送信するように構成されたことを特徴とする車両データ処理システム。
【請求項2】
前記データ処理上位システムは、車載制御手段、車載表示手段、管理側制御手段及び管理側出力手段の内の一つ以上の手段を有している請求項1の車両データ処理システム。
【請求項3】
前記車載制御手段は、車両内通信ネットワークから収集した車両データに基づいて燃費に関わる諸物理量を演算するとともに、前記車載表示手段を介して燃費情報及びドライバに省燃費運転を含む最適運転を喚起するための情報を表示するように構成され、前記管理側制御手段は、車載制御手段から車両データがデータ搬送手段を介して入力され、そのデータに基づいて燃費に関わる諸物理量を演算し、演算した諸物理量の良否を評価し、前記出力手段によって出力する様に構成された請求項2の車両のデータ処理システム。
【請求項4】
前記データ中継手段は、データ受信部とデータ記憶部と更新情報チェック部とデータ送信部とを有し、データ受信部で受信したデータを一端データ記憶部に記憶し、データ処理上位システムにデータを送信するに際し、更新データチェック部はデータ記憶部からデータを引き出し当該データが更新されたものである場合にデータ送信部を介してデータ処理上位システムにデータを送信するように構成されている請求項1〜請求項3の何れかの車両のデータ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−137207(P2006−137207A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325857(P2004−325857)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】