説明

車両ドアラッチ装置

【課題】アクティブ回動盤が待機区間に位置するか否かを検出するための待機状態検出手段にかかるコストを抑えることが可能な車両ドアラッチ装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明では、待機区間がアクティブレバー50の回動規定範囲のリリース完了位置側に偏在して設けられている。これに対応して、レバースイッチ100の入力レバー101に設けられたカム溝102は、基準線S1から外れた位置で平行になるように形成され、待機区間にアクティブレバー50が位置する間に、基準線S1とカム溝102とが平行になるように、即ち、アクティブレバー50が待機区間に位置するときに、アクティブレバー50の単位回動角当たりの入力レバー101の回動角度が最大になるように構成されている。これにより、レバースイッチ100の精度を抑えても、アクティブレバー50が待機区間に位置するか否かを検出することが可能となりコストを下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに取り付けられて、車両本体に備えたストライカと噛み合って回動するラッチと、ラッチのロック方向への回動を許容しかつロック解除方向への回動を規制するポールとを備えた車両ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両ドアラッチ装置としては、モータの一方向の回転動力をラッチに伝達して、ラッチをストライカとの係合を深めるロック方向に回転駆動し、ドアを半ドア状態から完全に閉じた全閉状態に移行するためのクローズ動力伝達部を備えたものが知られている。(例えば、特許文献1)。通常、この種の車両ドアラッチ装置は、モータの回転出力軸に連結されて、予め設定された回動規定範囲で往復回動可能なアクティブ回動盤を備えている。アクティブ回動盤は、例えば、ドアが半ドア状態になったときに、モータの一方向の回転動力により一方向に回転駆動され、クローズ動力伝達部の一部品に当接したクローズ部品当接位置から、さらに所定のクローズ動作角だけ進んだクローズ完了位置まで回転駆動される。これにより、モータの動力をクローズ動力伝達部を介してラッチに伝達し、ラッチをロック方向に回転駆動させることができる。
【特許文献1】特開平10−266667号公報(段落[0015]、[0022]、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したクローズ動作の終了後、アクティブ回動盤がクローズ動力伝達部に当接したままでいると、ドアを開ける際の妨げとなるため、通常時は、アクティブ回動盤をクローズ動力伝達部から離しておく必要がある。そのために、アクティブ回動盤の回動規定範囲には、クローズ部品当接位置と、そのクローズ部品当接位置から所定の不作動角だけ他方向側に離れたクローズ部品最大離間位置とを両端とする待機区間が設定されている。
【0004】
その待機区間と回動規定範囲とを概念的に示したのが図23(A)である。同図に示すように、待機区間Qは回動規定範囲Pにおける一端側に偏在して設定される。また、上記理由から待機区間Qは必ず必要ではあるが、大き過ぎると装置の大型化を招くため、必要最小限に留めることが望ましい。さらに、通常時にアクティブ回動盤を確実に待機区間に位置させるためには、待機区間に位置するか否かを検出するための検出手段が必要になるが、待機区間を最小限に抑えるためには、その分、優れた精度を有する高価な検出手段が必要であった。しかしながら、価格競争の激しい昨今、検出手段に係るコストを抑えて低価格で製造可能な車両ドアラッチ装置の提供を開発が求められている。
【0005】
これに対し、アクティブ回動盤の回動規定範囲の全域に亘って連動回転しかつ、アクティブ回動盤よりも大きく回動する従動回動部材を設け、その従動回動部材の回動位置を検出することで、アクティブ回動盤が待機区間に位置するか否かを検出する構成も考えられる。
【0006】
これに関連して、上記特許文献1には、ラッチと、ラッチの側方に回動可能に設けられた回動レバーとをカム突部とカム溝とで連結して連動回転可能とし、ラッチの回動位置を回動レバーの回動位置として検出するものが開示されている。この従来技術では、ラッチがその回動規定範囲のちょうど中央位置に位置するときに、ラッチの回動中心と回動レバーの回動中心とを結ぶ基準線上にカム突部が位置し、その時点でカム溝も同じ基準線上に重なって平行になるように構成してある。この構成によれば、回動レバーの全長を短く抑えることができる。しかしながら、ドアの開閉時にラッチが急峻に回動するため、回動レバー及び検出手段は、ラッチの急峻な回動に耐え得るだけの耐久性が必要であり、コストを下げることは困難であった。
【0007】
また、特許文献1の技術をアクティブ回動盤の位置検出に適用すべく、ラッチを単にアクティブ回動盤に置き換えたものでは、以下のような構成となる。即ち、図23(B)に示すように、アクティブ回動盤1がその回動規定範囲Pのちょうど中央位置に位置するときに、アクティブ回動盤1の回動中心1Aと回動レバー2の回動中心2Aとを結ぶ基準線S1上にカム突部3が並びかつ、その時点で回動レバー2に形成されたカム溝4が基準線S1に重なった状態で基準線S1と平行になる。このような構成では、アクティブ回動盤1の単位回動角当たりの回動レバー2の回動角度が、回動規定範囲Pの中央位置近傍において最大になり、回動規定範囲Pの両端に近づくに従って次第に小さくなる。従って、回動規定範囲Pの一端に設定される待機区間Qでは、その待機区間Qの一端から他端までアクティブ回動盤1が回動する間に、回動レバー2が回動する角度が小さくなり、結局、回動レバー2の回動位置によって待機区間Qか否かを検出する場合でも、精度の高い検出手段が必要となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、アクティブ回動盤が待機区間に位置するか否かを検出するための待機状態検出手段にかかるコストを抑えることが可能な車両ドアラッチ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る車両ドアラッチ装置は、車両のドアに取り付けられ、車両本体に備えたストライカと噛み合って回動するラッチと、ラッチの回動を禁止するラッチ係止位置とラッチの回動を許容するラッチ係止解除位置との間で回動可能なポールと、ドアの開閉操作に応じて起動するモータと、モータの一方向の回転動力をポールに伝達して、ポールをラッチ係止位置からラッチ係止解除位置へと回転駆動するためのリリース動力伝達部と、モータの回転出力軸に連結されて、予め設定された回動規定範囲で往復回動可能であると共に、ドアの開放操作時に、一方向に回転駆動されてリリース動力伝達部の一部品に当接したリリース部品当接位置から、さらに所定のリリース動作角だけ進んだリリース完了位置まで回転駆動されることで、モータの動力をリリース動力伝達部を介してポールに伝達すると共に、通常時は、リリース部品当接位置とそのリリース部品当接位置から所定の不作動角だけ他方向側に離れたリリース部品最大離間位置との間の第1待機区間に配置される第1アクティブ回動盤と、第1アクティブ回動盤の回転軸と平行かつ第1アクティブ回動盤から離れた位置に配置された回転軸を中心に回動し、第1アクティブ回動盤に重ねられた第1従動回転部材と、第1アクティブ回動盤のうち第1従動回転部材との重ね合わせ面に突出形成された第1カム突部と、第1従動回転部材に形成されて第1カム突部がスライド可能に係合し、第1アクティブ回動盤と第1従動回転部材とを連動させるための第1カム溝と、第1従動回転部材の回動位置に基づいて第1アクティブ回動盤が第1待機区間に配置されているか否かを検出するための待機状態検出手段とを備えた車両ドアラッチ装置において、第1カム溝は、第1アクティブ回動盤の回動中心と第1従動回転部材の回動中心とを結ぶ第1基準線から外れた位置でその第1基準線と平行になるように延び、第1待機区間は、回動規定範囲の一端寄りに配置され、第1アクティブ回動盤が回動規定範囲の一端寄りに位置したときに、第1カム溝と第1基準線とが平行になるように構成したところに特徴を有する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両ドアラッチ装置において、第1アクティブ回動盤が第1待機区間に位置したときに、第1カム溝と第1基準線とが平行になるように構成したところに特徴を有する。
【0011】
請求項3の発明に係る車両ドアラッチ装置は、車両のドアに取り付けられ、車両本体に備えたストライカと噛み合って回動するラッチと、ラッチの回動を禁止するラッチ係止位置とラッチの回動を許容するラッチ係止解除位置との間で回動可能なポールと、ドアの開閉操作に応じて起動するモータと、モータの一方向の回転動力をラッチに伝達して、ラッチをストライカとの係合を深めるロック方向に回転駆動してドアを完全に閉じた全閉状態に移行するためのクローズ動力伝達部を設け、モータの回転出力軸に連結されて、予め設定された回動規定範囲で往復回動可能であると共に、ドアが半ドア状態になったときに、一方向に回転駆動されてクローズ動力伝達部の一部品に当接したクローズ部品当接位置から、さらに所定のクローズ動作角だけ進んだクローズ完了位置まで回転駆動されることで、モータの動力をクローズ動力伝達部を介してラッチに伝達すると共に、通常時は、クローズ部品当接位置とそのクローズ部品当接位置から所定の不作動角だけ他方向側に離れたクローズ部品最大離間位置との間の第2待機区間に配置される第2アクティブ回動盤と、第2アクティブ回動盤の回転軸と平行かつ第2アクティブ回動盤から離れた位置に配置された回転軸を中心に回動し、第2アクティブ回動盤に重ねられた第2従動回転部材と、第2アクティブ回動盤のうち第2従動回転部材との重ね合わせ面に突出形成された第2カム突部と、第2従動回転部材に形成されて第2カム突部がスライド可能に係合し、第2アクティブ回動盤と第2従動回転部材とを連動させるための第2カム溝と、第2従動回転部材の回動位置に基づいて第2アクティブ回動盤が第2待機区間に配置されているか否かを検出する待機状態検出手段とを備えた車両ドアラッチ装置において、第2カム溝は、第2アクティブ回動盤の回動中心と第2従動回転部材の回動中心とを結ぶ第2基準線から外れた位置でその第2基準線と平行になるように延び、第2待機区間は、回動規定範囲の一端寄りに配置され、第2アクティブ回動盤が回動規定範囲の一端寄りに位置したときに、第2カム溝と第2基準線とが平行になるように構成したところに特徴を有する。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車両ドアラッチ装置において、第2アクティブ回動盤が第2待機区間に位置したときに、第2カム溝と第2基準線とが平行になるように構成したところに特徴を有する。
【0013】
請求項5の発明に係る車両ドアラッチ装置は、車両のドアに取り付けられ、車両本体に備えたストライカと噛み合って回動するラッチと、ラッチの回動を禁止するラッチ係止位置とラッチの回動を許容するラッチ係止解除位置との間で回動可能なポールと、ドアの開閉操作に応じて起動するモータと、モータの一方向の回転動力をポールに伝達して、ポールをラッチ係止位置からラッチ係止解除位置へと回転駆動するためのリリース動力伝達部と、モータの他方向の回転動力をラッチに伝達して、ラッチをストライカとの係合を深めるロック方向に回転駆動してドアを完全に閉じた全閉状態に移行するためのクローズ動力伝達部を設け、モータの回転出力軸に連結されて、予め設定された回動規定範囲で往復回動可能であると共に、ドアの開放操作時に、一方向に回転駆動されてリリース動力伝達部の一部品に当接したリリース部品当接位置から、さらに所定のリリース動作角だけ進んだリリース完了位置まで回転駆動されることで、モータの動力をリリース動力伝達部を介してポールに伝達し、ドアが半ドア状態になったときに、他方向に回転駆動されてクローズ動力伝達部の一部品に当接したクローズ部品当接位置から、さらに所定のクローズ動作角だけ進んだクローズ完了位置まで回転駆動されることで、モータの動力をクローズ動力伝達部を介してラッチに伝達し、さらに、通常時は、クローズ部品当接位置とリリース部品当接位置との間の第3待機区間に配置される第3アクティブ回動盤と、第3アクティブ回動盤の回転軸と平行かつ第3アクティブ回動盤から離れた位置に配置された回転軸を中心に回動し、第3アクティブ回動盤に重ねられた第3従動回転部材と、第3アクティブ回動盤のうち第3従動回転部材との重ね合わせ面に突出形成された第3カム突部と、第3従動回転部材に形成されて第3カム突部がスライド可能に係合し、第3アクティブ回動盤と第3従動回転部材とを連動させるための第3カム溝と、第3従動回転部材の回動位置に基づいて第3アクティブ回動盤が第3待機区間に配置されているか否かを検出する待機状態検出手段とを備えた車両ドアラッチ装置において、第3カム溝は、第3アクティブ回動盤の回動中心と第3従動回転部材の回動中心とを結ぶ第3基準線から外れた位置でその第3基準線と平行になるように延び、第3待機区間は、回動規定範囲の一端寄りに配置され、第3アクティブ回動盤が回動規定範囲の一端寄りに位置したときに、第3カム溝と第3基準線とが平行になるように構成したところに特徴を有する。
【0014】
請求項6の発明は、請求項5に記載の車両ドアラッチ装置において、第3アクティブ回動盤が第3待機区間に位置したときに、第3カム溝と第3基準線とが平行になるように構成したところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
[請求項1の発明]
請求項1の発明によれば、モータが一方向に回転すると、その回転動力が第1アクティブ回動盤、リリース動力伝達部、ポールの順に伝達され、ポールが、ラッチの回動を禁止したラッチ係止位置から、ラッチの回動を許容したラッチ係止解除位置へと回転する。
【0016】
詳細には、第1アクティブ回動盤は、予め設定された回動規定範囲で往復動可能とされ、ドアの開放操作時に、モータによって一方向に回転駆動される。そして、リリース動力伝達部の一部品に当接したリリース部品当接位置から、さらに所定のリリース動作角だけ進んだリリース完了位置まで回転駆動されることで、ポールをラッチ係止解除位置に移動させる。
【0017】
また、第1アクティブ回動盤は、通常時には、リリース部品当接位置と、そのリリース部品当接位置から所定の不作動角だけ他方向側に離れたリリース部品最大離間位置との間の第1待機区間に配置される。
【0018】
この第1アクティブ回動盤には、第1従動回動部材が連動回転可能に連結されている。第1従動回動部材は、第1アクティブ回動盤の回転軸と平行かつ第1アクティブ回動盤から離れた位置に配置された回転軸を中心に回動し、第1アクティブ回動盤に重ねられている。また、第1従動回転部材に突出形成された第1カム突部が、第1従動回転部材に形成された第1カム溝にスライド可能に係合することで、それらが連動回転可能となっている。そして、待機状態検出手段は、第1従動回転部材の回動位置に基づいて、第1アクティブ回動盤が第1待機区間に配置されているか否かを検出している。
【0019】
ところで、第1アクティブ回動盤が回動規定範囲のちょうど中央位置に位置したときに第1カム溝が、第1アクティブ回動盤の回動中心と第1従動回転部材の回動中心とを結ぶ第1基準線と重なった状態でその第1基準線と平行に延びるように構成した場合、第1アクティブ回動盤の単位回動角当たりの第1従動回動部材の回動角度は、回動規定範囲の中央位置から離れるに従って小さくなる。そのため、第1待機区間が回動規定範囲の一端寄りに配置されているものでは、その第1待機区間において第1従動回動部材の回動角度を十分に大きくすることができず、結局、高精度の待機状態検出手段が必要となる。
【0020】
これに対し、請求項1の発明によれば、第1カム溝は、第1アクティブ回動盤の回動中心と第1従動回転部材の回動中心とを結ぶ第1基準線から外れた位置でその第1基準線と平行になるように延び、第1アクティブ回動盤が回動規定範囲の一端寄りに位置したときに、第1カム溝と第1基準線とが平行になるように構成したので、第1アクティブ回動盤が回動規定範囲の一端寄りに配置された第1待機区間を、一端から他端まで回動する間に第1従動回動部材が回動する角度を大きくすることができる。これにより、待機状態検出手段の精度を抑えても、第1アクティブ回動盤が第1待機区間に位置するか否かを検出することが可能となり、待機状態検出手段にかかるコストを下げることができる。
【0021】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、第1アクティブ回動盤の単位回動角当たりの第1従動回動部材の回動角度が最大になる位置が、第1待機区間に含まれるので、第1待機区間の一端から他端まで第1アクティブ回動盤が回動する間に第1従動回動部材が回動する角度をより大きくすることができる。従って、待機状態検出手段の精度をさらに抑えることが可能となり、待機状態検出手段にかかるコストをさらに下げることができる。
【0022】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、モータが一方向に回転すると、その回転動力が第2アクティブ回動盤、クローズ動力伝達部、ラッチの順に伝達され、ラッチがストライカとの係合を深めるロック方向に回転する。
【0023】
詳細には、第2アクティブ回動盤は、予め設定された回動規定範囲で往復動可能とされ、ドアが半ドア状態になったときに、モータによって一方向に回転駆動される。そして、クローズ動力伝達部の一部品に当接したクローズ部品当接位置から、さらに所定のクローズ動作角だけ進んだクローズ完了位置まで回転駆動されることで、ラッチをロック方向に回動し、ドアを完全に閉じた全閉状態に移行させる。
【0024】
また、第2アクティブ回動盤は、通常時には、クローズ部品当接位置とクローズ部品当接位置から所定の不作動角だけ他方向側に離れたクローズ部品最大離間位置との間の第2待機区間に配置される。
【0025】
この第2アクティブ回動盤には、第2従動回動部材が連動回転可能に連結されている。第2従動回動部材は、第2アクティブ回動盤の回転軸と平行かつ第2アクティブ回動盤から離れた位置に配置された回転軸を中心に回動し、第2アクティブ回動盤に重ねられている。また、第2従動回転部材に突出形成された第2カム突部が、第2従動回転部材に形成された第2カム溝にスライド可能に係合することで、それらが連動回転可能となっている。そして、待機状態検出手段は、第2従動回転部材の回動位置に基づいて、第2アクティブ回動盤が第2待機区間に配置されているか否かを検出している。
【0026】
ところで、第2アクティブ回動盤が回動規定範囲のちょうど中央位置に位置したときに第2カム溝が、第2アクティブ回動盤の回動中心と第2従動回転部材の回動中心とを結ぶ第2基準線と重なった状態でその第2基準線と平行に延びるように構成した場合、第2アクティブ回動盤の単位回動角当たりの第2従動回動部材の回動角度は、回動規定範囲の中央位置から離れるに従って小さくなる。そのため、第2待機区間が回動規定範囲の一端寄りに配置されているものでは、その第2待機区間において第2従動回動部材の回動角度を十分に大きくすることができず、結局、高精度の待機状態検出手段が必要となる。
【0027】
これに対し、請求項3の発明によれば、第2カム溝は、第2アクティブ回動盤の回動中心と第2従動回転部材の回動中心とを結ぶ第2基準線から外れた位置でその第2基準線と平行になるように延び、第2アクティブ回動盤が回動規定範囲の一端寄りに位置したときに、第2カム溝と第2基準線とが平行になるように構成したので、第2アクティブ回動盤が回動規定範囲の一端寄りに配置された第2待機区間を、一端から他端まで回動する間に第2従動回動部材が回動する角度を大きくすることができる。これにより、待機状態検出手段の精度を抑えても第2アクティブ回動盤が第2待機区間に位置するか否かを検出することが可能となり、待機状態検出手段にかかるコストを下げることができる。
【0028】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、第2アクティブ回動盤の単位回動角当たりの第2従動回動部材の回動角度が最大になる位置が、第2待機区間に含まれるので、第2待機区間の一端から他端まで第2アクティブ回動盤が回動する間に第2従動回動部材が回動する角度をより大きくすることができる。従って、待機状態検出手段の精度をさらに抑えることが可能となり、待機状態検出手段にかかるコストをさらに下げることができる。
【0029】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、モータが一方向に回転すると、その回転動力が第3アクティブ回動盤、リリース動力伝達部、ポールの順に伝達され、ポールが、ラッチの回動を禁止したラッチ係止位置から、ラッチの回動を許容したラッチ係止解除位置へと回転する。
【0030】
また、モータが他方向に回転すると、その回転動力が第3アクティブ回動盤、クローズ動力伝達部、ラッチの順に伝達され、ラッチがストライカとの係合を深めるロック方向に回転する。
【0031】
詳細には、第3アクティブ回動盤は、予め設定された回動規定範囲で往復動可能とされ、ドアの開放操作時に、モータによって一方向に回転駆動される。そして、リリース動力伝達部の一部品に当接したリリース部品当接位置から、さらに所定のリリース動作角だけ進んだリリース完了位置まで回転駆動されることで、ポールをラッチ係止解除位置にする。また、第3アクティブ回動盤は、ドアが半ドア状態になったときには、モータによって他方向に回転駆動される。そして、クローズ動力伝達部の一部品に当接したクローズ部品当接位置から、さらに所定のクローズ動作角だけ進んだクローズ完了位置まで回転駆動されることで、ラッチをロック方向に回動し、ドアを完全に閉じた全閉状態に移行させる。 さらに、第3アクティブ回動盤は、ドアが開放操作されずかつ、ドアが半ドア状態ではない通常時には、クローズ部品当接位置とリリース部品当接位置との間の第3待機区間に配置される。
【0032】
この第3アクティブ回動盤には、第3従動回動部材が連動回転可能に連結されている。第3従動回動部材は、第3アクティブ回動盤の回転軸と平行かつ第3アクティブ回動盤から離れた位置に配置された回転軸を中心に回動し、第3アクティブ回動盤に重ねられている。また、第3従動回転部材に突出形成された第3カム突部が、第3従動回転部材に形成された第3カム溝にスライド可能に係合することで、それらが連動回転可能となっている。そして、待機状態検出手段は、第3従動回転部材の回動位置に基づいて、第3アクティブ回動盤が第3待機区間に配置されているか否かを検出している。
【0033】
ところで、第3アクティブ回動盤が回動規定範囲のちょうど中央位置に位置したときに第3カム溝が、第3アクティブ回動盤の回動中心と第3従動回転部材の回動中心とを結ぶ第3基準線と重なった状態でその第3基準線と平行に延びるように構成した場合、第3アクティブ回動盤の単位回動角当たりの第3従動回動部材の回動角度は、回動規定範囲の中央位置から離れるに従って小さくなる。そのため、第3待機区間が回動規定範囲の一端寄りに配置されているものでは、その第3待機区間において第3従動回動部材の回動角度を十分に大きくすることができず、結局、高精度の待機状態検出手段が必要となる。
【0034】
これに対し、請求項5の発明によれば、第3カム溝は、第3アクティブ回動盤の回動中心と第3従動回転部材の回動中心とを結ぶ第3基準線から外れた位置でその第3基準線と平行になるように延び、第3アクティブ回動盤が回動規定範囲の一端寄りに位置したときに、第3カム溝と第3基準線とが平行になるように構成したので、第3アクティブ回動盤が回動規定範囲の一端寄りに配置された第3待機区間を、一端から他端まで回動する間に第3従動回動部材が回動する角度を大きくすることができる。これにより、待機状態検出手段の精度を抑えても、第3アクティブ回動盤が第3待機区間に位置するか否かを検出することが可能となり、待機状態検出手段にかかるコストを下げることができる。
【0035】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、第3アクティブ回動盤の単位回動角当たりの第3従動回動部材の回動角度が最大になる位置が、第3待機区間に含まれるので、第3待機区間の一端から他端まで第3アクティブ回動盤が回動する間に第3従動回動部材が回動する角度をより大きくすることができる。従って、待機状態検出手段の精度をさらに抑えることが可能となり、待機状態検出手段にかかるコストをさらに下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図22に基づいて説明する。図1には、車両ドアロックシステム10を備えたスライドドア90を有する車両が示されている。このスライドドア90は、車両本体99の昇降口を閉じた状態から斜め後方に後退しかつ、途中から真っ直ぐ後退して全開状態になる。そして、車両ドアロックシステム10は、スライドドア90を閉鎖状態に保持するための閉鎖ドアロック装置10Aと、全開状態に保持するための全開ドアロック装置10Cと、半ドア状態から全閉状態にするためのクローザ装置10Bと、リモコン装置91とを備えてなる。
【0037】
図2に示すように、閉鎖ドアロック装置10A及び全開ドアロック装置10Cは、スライドドア90の前端縁における高さ方向の中間部と下端部とに配置され、クローザ装置10Bは、スライドドア90の後端縁における高さ方向の中間部に配置されている。これらに対応して、ドア枠99W(昇降口の枠)の内側面における三箇所にストライカ40が設けられている。
【0038】
各ストライカ40は、例えば断面円形の線材を屈曲して形成され、1対の脚部40X,40Xの先端間に連絡棒40Yを差し渡した門形構造をなしている。そして、閉鎖ドアロック装置10Aに対応したストライカ40は、ドア枠99Wの前側内側面から水平後方に延びかつ1対の脚部40X,40Xがドア枠99Wの内外方向に並べられ、それらのうち外寄りに配置された一方の脚部40Xに閉鎖ドアロック装置10Aが係合するようになっている。なお、図3〜図6には、ストライカ40のうち閉鎖ドアロック装置10Aと係合する部分のみの断面図が示されている。また、クローザ装置10Bに対応したストライカ40は、後側内側面から水平前方に延びかつ1対の脚部40X,40Xがドア枠99Wの内外方向に並べられ、それらのうち外寄りに配置された一方の脚部40Xにクローザ装置10Bが係合するようになっている。さらに、全開ドアロック装置10Cに対応したストライカは、図2には表されていないが1対の脚部がドア枠99Wの前側内側面から水平後方に延びかつ上下方向に並べられ、連絡棒に全開ドアロック装置10Cが係合するようになっている。
【0039】
図3に示すように、閉鎖ドアロック装置10Aは、ベース盤11にラッチ20及びポール30を回動可能に組み付けて備えている。ベース盤11は、ボルト固定孔13を複数箇所に備え、スライドドア90の前端壁に内側から宛がわれてボルト固定孔13に通した(又は、螺合した)ボルトにて固定されている。
【0040】
ベース盤11には、水平方向に延びたストライカ受容溝12が備えられている。このストライカ受容溝12の一端部は、車内側に向かって開放したストライカ受容口12Kになっており、他端部は閉じている。また、ベース盤11が取り付けられたスライドドア90の一端壁にもストライカ受容溝12に対応した切り欠き(図示せず)が備えられている。そして、スライドドア90を閉じるとストライカ受容口12Kからストライカ受容溝12内にストライカ40が進入する。
【0041】
ベース盤11のうちストライカ受容溝12より下方には、ポール30が回動可能に軸支されている。ポール30は、ラッチ回動規制片31とストッパ片32とを回動軸30Jから相反する方向に突出して備えている。また、ポール30とベース盤11との間にはトーションバネ30S(図3参照)が備えられ、このトーションバネによってポール30が図3における反時計回り方向に付勢され、通常はストッパ片32がベース盤11に備えたポールストッパ16に当接して位置決めされている。
【0042】
また、ポール30にはベース盤11を隔ててラッチ回動規制片31及びストッパ片32と反対側にポール駆動レバー30Rを備え、そのポール駆動レバー30Rとリモコン装置91とがオープンケーブル93Wにて連結されている。また、オープンケーブル93Wの中間部分は被覆管93Hにて覆われている。そして、オープンケーブル93Wがリモコン装置91側に引かれると、ポール30が図3における時計回り方向に回動してラッチ回動規制片31が次述するラッチ20の回動領域から退避したリリース位置に移動する。
【0043】
ベース盤11のうちストライカ受容溝12より上方にはラッチ20が回動可能に軸支されている。ラッチ20は、金属板を樹脂層で覆って防音を図った構造になっている。ラッチ20には、互いに平行になった1対の係止爪21,22が備えられ、それら係止爪21,22の間がストライカ受容部23になっている。また、ラッチ20は、ベース盤11との間に設けたトーションバネ20S(図3参照)により本発明に係るロック解除方向(図3における時計回り方向)に付勢されている。そして、スライドドア90を開けた状態では、ラッチ20に備えたストッパ当接部24とベース盤11に備えたラッチストッパ14との当接によりラッチ20がアンラッチ位置(図3に示した位置)に位置決めされる。
【0044】
そのアンラッチ位置では、前側の係止爪21がストライカ受容溝12の上方に退避しかつ、後側の係止爪22がストライカ受容溝12を横切った状態になり、ストライカ受容部23の開口端がストライカ受容溝12のストライカ受容口12K側を向く。そして、ストライカ受容溝12に進入したストライカ40がストライカ受容部23内に受容されると共に、ストライカ40が後側の係止爪22を押してラッチ20が本発明に係るロック方向に(図3における反時計回り方向)に回動する。これにより、図4に示すように、ストライカ受容溝12のうちストライカ40よりストライカ受容口12K側が前側の係止爪21によって塞がれると共に、前側の係止爪21がストライカ40の脚部40X,40X(図1参照)の間に突入し、ラッチ20がストライカ40と噛み合った状態になる。
【0045】
スライドドア90に勢いを付与して閉じると、スライドドア90がドア枠99Wとの間の防音部材(図示せず)を最大限に押し潰した位置まで閉じられ、このとき、図6に示すように、ラッチ20は、ポール30を通過しかつそのポール30から僅かに離間したオーバーストローク位置に至る。そして、防音部材の弾発力によりスライドドア90が戻され、これに伴ってラッチ20がオーバーストローク位置からアンラッチ位置側に若干戻されると、図5に示すようにラッチ20の前側の係止爪21とポール30のラッチ回動規制片31とが当接し、ラッチ20がフルラッチ位置に位置決めされる。詳細には、前側の係止爪21の先端部には、上述の樹脂層から露出したポール当接部26が設けられており、そのポール当接部26とラッチ回動規制片31とを構成する金属同士が当接する。これにより、ラッチ20のロック解除方向への回動が規制され、スライドドア90が全閉状態に保持される。
【0046】
また、スライドドア90に閉じる際の勢いが弱いために、ラッチ20がオーバーストローク位置又はフルラッチ位置に至らない状態で、防音部材の弾発力によりスライドドア90が戻されると、図4に示すようにポール30がラッチ20の後側の係止爪22の先端部に当接し、ラッチ20がハーフラッチ位置に位置決めされて、スライドドア90が、所謂、半ドア状態になる。閉鎖ドアロック装置10Aの構成に関する説明は以上である。次に、本発明の「車両ドアラッチ装置」に相当するクローザ装置10Bの構成に関する説明を行う。
【0047】
クローザ装置10Bは、図7〜図15に示されている。図8に示すように、クローザ装置10Bは、閉鎖ドアロック装置10Aと同様のラッチ20、ポール30、ストライカ受容溝12等を有するラッチアンドポール機構20Kを備えている。このラッチアンドポール機構20Kは、ラッチ20の回動軸20Jがストライカ受容溝12(図7参照)より下側、ポール30の回動軸30Jがストライカ受容溝12より上側に配置されている点、後側の係止爪22にラッチ駆動レバー25(本発明の「クローズ動力伝達部」に相当する)が備えられている点、前側の係止爪22にハーフラッチ係止突部29及び位置検出ピン28が備えられている点等が閉鎖ドアロック装置10Aと異なる。以下、クローザ装置10Bと閉鎖ドアロック装置10Aとの間で同一の構成に関しては同一符号を付して重複説明を省略し、異なる構成に関してのみ説明する。
【0048】
図7及び図8に示すように、クローザ装置10Bのベース盤11は、板金を鈍角に曲げてその角部にストライカ受容口12Kを備えている。そして、ベース盤11のうち角部より一方側の先端部には、機構板81が重ねた状態にして連結され、他方側の内面には図8に示すようにラッチアンドポール機構20Kが設けられている。また、ラッチアンドポール機構20Kのラッチ20は、図示しないラッチポールカバーによって覆われている。
【0049】
図8に示すように、ラッチ20にはラッチ駆動レバー25、ハーフラッチ係止突部29及び位置検出ピン28が備えられている。ラッチ駆動レバー25及びハーフラッチ係止突部29は、ラッチ20の回動軸20Jの軸方向と直交しかつ相反する方向に延びている。そして、ポール30がラッチ20のハーフラッチ係止突部29に当接して、ラッチ20がハーフラッチ位置(図8参照)に位置した状態で、ラッチ駆動レバー25は斜め下方を向いている。この状態で後述するシーソー形回動盤55によってラッチ駆動レバー25が上方に押し上げられると、ラッチ20は、ストライカ40との係合を深めるロック方向に回動し、前側の係止爪22の先端部にポール30が当接したフルラッチ位置(図9参照)へと移動する。また、位置検出ピン28は、ラッチ20のうち回動軸20Jから下方にずれた位置に配置されて、回動軸20Jの軸方向と平行になってベース盤11から離れる方向に延びている。また、位置検出ピン28の先端部は、ラッチポールカバーを貫通して図示しないラッチ位置検出センサに連結されている。そして、このラッチ位置検出センサによってラッチ20が、ハーフラッチ位置(図8参照)、フルラッチ位置(図9参照)及びアンラッチ位置(図11参照)の何れの位置に配置されているかを検出する。
【0050】
ポール30の回動軸30Jは、ベース盤11から離れる方向に延び、その先端部がラッチポールカバー(図示せず)を貫通している。また、その回動軸30Jの先端部から側方にポール駆動レバー133が張り出している。ポール駆動レバー133はストッパ片134と被押下片135とに分かれている。ストッパ片134がラッチポールカバーに備えたストッパ(図示せず)と当接することで、ポール30がラッチ20の回動を規制可能な位置(ラッチ係止位置)に位置決めされている。また、被押下片135は、後述するオープンレバー60の押下片61によって押し下げ可能になっている。そして、被押下片135が押し下げられることで、ポール30のラッチ回動規制片31がラッチ20の回動領域から退避したリリース位置(本発明の「ラッチ係止解除位置」に相当する)に移動し、ラッチ20の回動規制が解除される。
【0051】
機構板81には、本発明に係る「リリース動力伝達部」の構成部品が取り付けられている。具体的には、以下のようである。機構板81の下端寄り位置には、アクティブレバー50が回動可能に軸支されている。アクティブレバー50には、その回動軸50J(図10参照)を挟んでラッチアンドポール機構20Kと反対側に扇形回動板51が備えられ、その扇形回動板51の外周縁にギヤ50Gが形成されている。また、アクティブレバー50には、回動軸50Jよりラッチアンドポール機構20K側に突出した回動支持突片52が備えられ、その回動支持突片52の先端部にシーソー形回動盤55が回動可能に軸支されている。
【0052】
シーソー形回動盤55は、回動軸55Jを挟んで両側に回動片が張り出したシーソー構造をなし、その上縁部からは機構板81と反対側に押上壁56が曲げ起こされている。押上壁56は、シーソー形回動盤55のうち回動軸55Jの上方位置からラッチアンドポール機構20K側の先端部に亘って延び、ラッチ駆動レバー25に下方から当接可能になっている。また、シーソー形回動盤55は、図8に示したトーションコイルバネ58により、押上壁56がラッチ駆動レバー25から離れる方向(図8における時計回り方向)に付勢されている。
【0053】
シーソー形回動盤55のうちラッチアンドポール機構20Kと反対側の端部には当接コロ57が取り付けられ、この当接コロ57に上方側から後述する位置決レバー63が突き当てられている。そして、これらアクティブレバー50、シーソー形回動盤55及び位置決レバー63により本発明に係る「第2キャンセル機構」が構成されており、当接コロ57が位置決レバー63によって位置決めされた状態で、アクティブレバー50が図8の反時計回りに回動すると、シーソー形回動盤55の回動軸55Jが上方に移動し、シーソー形回動盤55の先端部における押上壁56がラッチ駆動レバー25を上方に押し上げる。このアクティブレバー50の動作がクローズ動作である。また、位置決レバー63が当接コロ57から離れた位置に移動すると、シーソー形回動盤55がアクティブレバー50に対して自在に回転可能になり、アクティブレバー50からシーソー形回動盤55への動力の伝達が遮断され、シーソー形回動盤55の押上壁56によってラッチ駆動レバー25を押し上げることができなくなる。
【0054】
図8に示すように、アクティブレバー50を挟んでラッチアンドポール機構20Kと反対側にはアクチュエータ41が設けられている。アクチュエータ41は、ラッチ駆動モータ41M(本発明の「モータ」に相当する)と減速機構41Gとからなる。減速機構41Gは、ウォームギヤ41Aとウォームホイール41Bとを内蔵して備え、ウォームギヤ41Aにラッチ駆動モータ41Mのモータ出力軸が連結されている。そして、ウォームホイール41Bに一体に備えた小ギヤ41X(図8参照)が扇形回動板51のギヤ50Gに噛合している。これによりラッチ駆動モータ41Mによってアクティブレバー50を時計回り方向と反時計回り方向の任意の方向に回動させることができる。
【0055】
図8に示すように、機構板81のうちアクティブレバー50の回動軸50Jの上方には、位置決レバー63及びオープンレバー60が共通の回動軸60Jを中心に回動可能に軸支されている。オープンレバー60のうち回動軸60Jから下方に延びた部位の先端にはオープンケーブル92Wの一端部が連結され、そのオープンケーブル92Wの他端部はリモコン装置91(図16参照)に連結されている。また、オープンケーブル92Wは、両端部を除く全体が被覆管92Hによって覆われている。
【0056】
オープンレバー60の上端部からは、押下片61がポール30側に張り出されている。そして、オープンケーブル92Wがリモコン装置91側に引っ張られると、オープンレバー60が回動して押下片61がポール駆動レバー133(被押下片135)を押し下げ、これにより、前述の如く、ポール30がリリース位置に移動して、ポール30によるラッチ20の回動規制が解除される。このアクティブレバー50の動作がリリース動作である。なお、オープンレバー60は、機構板81との間に設けたトーションコイルバネ62により、押下片61が被押下片135から離れる方向(図8における反時計回り方向)に付勢されている。
【0057】
位置決レバー63はオープンレバー60に重ねて設けられ、位置決レバー63の側縁部から起立した連動当接片63Tが、オープンレバー60の一側縁部に側方から対向している。そして、オープンケーブル92Wがリモコン装置91側に引っ張られてオープンレバー60が回動すると、連動当接片63Tがオープンレバー60に押されて位置決レバー63も回動し、当接コロ57から離間することで、前述の如く、アクティブレバー50からシーソー形回動盤55への動力の伝達が遮断され、シーソー形回動盤55の押上壁56によってラッチ駆動レバー25を押し上げることができなくなる。
【0058】
オープンレバー60の上方には、リリース入力盤170(本発明の「リリース動力伝達部の一部品」に相当する)、スライド回動盤175及びリリースレバー165が共通の回動軸65Jを中心に回動可能に軸支されて、本発明に係る「第1キャンセル機構」を構成している。リリース入力盤170は、図15(A)に示すように、回動軸65Jから下方に延びた第1回動片170Aと、横方向に延びた第2回動片170Bとを有している。第1回動片170Aの先端部からは、機構板81側に向かって当接ボス170Eが突出している。第2回動片170Bには、横長矩形の突部係合孔170Rが形成されている。また、リリース入力盤170は、上方に向かって突出したスプリング係止フック170Cを備えている。
【0059】
そして、ラッチ駆動モータ41Mにてアクティブレバー50を時計回り方向に回動させたときにアクティブレバー50に備えた加圧部50Tが第1回動片170Aの当接ボス170Eに当接し、リリース入力盤170が、トーションバネ170Sの付勢力に抗して図8の反時計回り方向に回動する。
【0060】
スライド回動盤175は、リリース入力盤170と機構板81との間に配置されている。また、スライド回動盤175は、リリース入力盤170における第2回動片170Bの長手方向に延びている。図15(B)に示すように、スライド回動盤175には、長手方向に沿って延びた長孔177が形成されおり、その長孔177を回動軸65Jが貫通している。また、スライド回動盤175は先端部にスプリング係止フック175Bを突出して備えており、リリース入力盤170に備えたスプリング係止フック170Rとの間がスプリング85によって連結されている(図8参照)。
【0061】
リリース入力盤170の先端部からは機構板81から離れる側に連結旋回突部175Aが突出している。この連結旋回突部175Aは、リリース入力盤170の突部係合孔170Rの幅と略同一の幅の角柱形状になし、その突部係合孔170Rを貫通して次述するリリースレバー165の突部受容溝165R内にも受容されている。
【0062】
そして、スライド回動盤175は、スプリング85によって、長孔177の先端側に回動軸65Jが当接した状態に付勢にされ、スライド回動盤175が回動軸65Jの軸方向と直交する方向に移動することを規制している。また、スライド回動盤175の長手方向に外力を加えると、スプリング85の付勢力に抗してスライド回動盤175をスライドさせることができる。
【0063】
そして、スライド回動盤175を動力伝達位置から動力遮断位置へと直動させるためのキャンセル操作バー176がスライド回動盤175に連結されている。キャンセル操作バー176は、長孔177を挟んで連結旋回突部175Aとは反対の基端部に連結ピン176Pによって回動可能に連結されている。キャンセル操作バー176は、スライド回動盤175の長手方向と略平行に延びており、その基端部が図8に示すように、機構板81の外縁部から側方に露出している。
【0064】
キャンセル操作バー176の長手方向の中央部より基端側部分には、長手方向に沿って延びた長孔176Rが形成されており、機構板81から起立したピン81Pが長孔176Rを貫通している。これにより、キャンセル操作バー176は、長手方向に直動可能とされかつピン81Pを支点として回動可能になっている。
【0065】
キャンセル操作バー176の基端部には、押圧操作片176Aが備えられている。押圧操作片176Aは、機構板81から離れる側(図15の紙面手前側)に突出したクランク形状をなしている。押圧操作片176Aは、スライドドア90の後端壁に形成された非常用操作孔90R(図7参照)に対向配置されており、その非常用操作孔90Rから挿入した所定のツールを突き当てることが可能となっている。なお、押圧操作片176Aのうち、機構板81に対して直角な壁部は、非常用操作孔90Rから見た正面が緩やかに湾曲した凹面状をなしている。そして、所定のツールとして先端が尖ったツールを使用した場合に、そのツールの先端部と凹凸係合する滑り止め用凹所176Bが形成されている。
【0066】
リリースレバー165は、図15(C)に示すように、回動軸65Jから斜め下方に延び、その下端部には図8に示すようにリリースケーブル91Wの一端が連結されている。そのリリースケーブル91Wの他端部は、リモコン装置91に連結されると共に、リリースケーブル91Wの中間部は被覆管91Hにて覆われている。ここで、リリースレバー165は後述するリモコン装置91に備えた第1原点保持スプリング98Sによってリリースケーブル91Wが引っ張られることにより、図8における時計回り方向に付勢されている。
【0067】
リリースレバー165は、回動軸65J寄りの基端部から中間部に亘った部分が扇形状に幅が広がっており、そこに突部受容溝165Rが形成されている。突部受容溝165Rは、回動軸65Jと直交する方向(具体的には、ラッチアンドポール機構20Kとは反対側)に開放した「コ」の字形状をなしている。そして、図8〜図11に示すように、スライド回動盤175が動力伝達位置に配置されたときには、連結旋回突部175Aが突部受容溝165Rに受容され、図12に示すように、スライド回動盤175が動力遮断位置に配置されたときには、連結旋回突部175Aが突部受容溝165Rの側方に離脱する。
【0068】
ここで、連結旋回突部175Aが突部受容溝165Rに受容された状態でアクティブレバー50から動力を受けてリリース入力盤170が回動すると、図10から図11の変化に示すように、スライド回動盤175及びリリースレバー165がリリース入力盤170と一体に回動する。これにより、リリースケーブル91Wをリモコン装置91からクローザ装置10B側に引くことができる。
【0069】
また、図11から図12の変化に示すように、スライド回動盤175を動力伝達位置から動力遮断位置に移動して、連結旋回突部175Aを突部受容溝165Rの側方に離脱させると、図13に示すように、スライド回動盤175に対してリリースレバー165が自在に回転可能になる。即ち、連結旋回突部175Aとリリースレバー165との間での力の伝達が遮断される。
【0070】
全開ドアロック装置10Cは、図示しないが閉鎖ドアロック装置10Aと同様に動作するラッチアンドポール機構を有している。全開ドアロック装置10Cのポールにも閉鎖ドアロック装置10Aと同様にポール駆動レバーが備えられ、そのポール駆動レバーとリモコン装置91との間がオープンケーブル94W(図2参照)にて連結されている。
【0071】
図16に概念的に示すように、リモコン装置91は、前記オープンケーブル92W,93W,94Wが一端部に連結されたリモコン回動レバー98を備えている。そのリモコン回動レバー98は第1原点保持スプリング98Sとストッパ98Tとによって原点位置(図16に示した位置)に付勢かつ位置決めされている。また、リモコン回動レバー98のうちオープンケーブル92W,93W,94Wとの連結部分に対して回動中心を挟んで反対側の端部には、前記リリースケーブル91Wが連結されている。これにより、ラッチ駆動モータ41Mを駆動してリリースケーブル91Wをクローザ装置10B側に引くと、リモコン回動レバー98が原点位置から離れる方向(図16における反時計回り方向)に回動し、オープンケーブル92W,93W,94Wがリモコン装置91側に引かれる。これにより、閉鎖ドアロック装置10A、クローザ装置10B、全開ドアロック装置10Cの全てのポール30がリリース位置に移動し、全てのラッチ20の回動規制が一度に解除される。
【0072】
リモコン装置91には、スライドドア90の内面と外面とに別々に備えられたハンドル95が備えられている。それらハンドル95は、第2原点保持スプリング97Sとストッパ97Tとによって原点位置に付勢かつ保持されている。そして、その第2原点保持スプリング97Sに抗してハンドル95を原点位置から離れる側に移動操作すると、ハンドル95に連結されたハンドル連動部品97が原点位置から所定の単独可動域L1を通過し、リモコン回動レバー98に当接する。そして、この状態でハンドル95を原点位置からさらに離れる側に移動すると、ハンドル連動部品97がリモコン回動レバー98を押して回動させる。また、リモコン装置91には、ハンドル連動部品97が原点位置側から単独可動域L1に進入したことを検出するためのハンドル操作検出センサ96が備えられている。また、上記したハンドル操作検出センサ96の検出信号は、前記ラッチ位置検出センサの検出信号と共に車両本体99に備えた図示しないECUに取り込まれている。そして、ECUが、それら検出信号に基づいてラッチ駆動モータ41Mを以下に詳説するように駆動する。
【0073】
上記構成による本実施形態の作用効果について説明する。スライドドア90を締めると、閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの各ラッチ20が対応したストライカ40とそれぞれ噛み合って回動する。このとき、スライドドア90を比較的強い力で閉めてスライドドア90が全閉状態になると、閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの各ラッチ20が図5及び図10に示すようにフルラッチ位置まで回動してそれらラッチ20にポール30(詳細には、ポール30のラッチ回動規制片31)が係合し、各ラッチ20のロック解除方向への回動が規制(禁止)される。これにより、スライドドア90が全閉状態に保持される。
【0074】
また、スライドドア90を比較的弱い力で閉めたために半ドア状態になると、閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの各ラッチ20が図4及び図8に示すようにハーフラッチ位置まで回動してそれらラッチ20にポール30が係合し、各ラッチ20のロック解除方向への回動が規制(禁止)され、半ドア状態に保持される。すると、クローザ装置10Bのラッチ位置検出センサにより、ラッチ20がハーフラッチ位置に位置していることが検出され、その検出結果がECUに取り込まれる。そして、ECUがクローザ装置10Bに備えたラッチ駆動モータ41Mのモータ出力軸を一方に回転させ、アクティブレバー50を図8における反時計回り方向に回転駆動する。このとき、位置決レバー63が当接コロ57に当接してシーソー形回動盤55の一端部を位置決めし、アクティブレバー50によってシーソー形回動盤55の回動軸55Jを持ち上げることで、アクティブレバー50からシーソー形回動盤55に動力が伝達され、シーソー形回動盤55のの他端部(詳細には、シーソー形回動盤55に備えた押上壁56の先端部)がラッチ20のラッチ駆動レバー25を押し上げる。これにより、ラッチ20が図8に示したハーフラッチ位置から図9に示したフルラッチ位置に移動し、スライドドア90が半ドア状態から全閉状態になって保持される。
【0075】
ここで、半ドア状態から全閉状態に移行する途中でハンドル95を操作すると、オープンケーブル92Wがリモコン装置91側に引かれて位置決レバー63がシーソー形回動盤55の当接コロ57から離間する。これにより、アクティブレバー50からシーソー形回動盤55への動力の伝達が緊急遮断され、半ドア状態から全閉状態への移行をキャンセルすることができる。そして、ハンドル95の操作に連動してオープンレバー60も回動し、そのオープンレバー60の押下片61がポール30のポール駆動レバー133を押し下げるので、仮にクローザ装置10Bのポール30がラッチ20に係合していてもリリース位置に移動することができる。また、他のオープンケーブル93Wもハンドル95の操作によってリモコン装置91側に引っ張られるので、閉鎖ドアロック装置10Aにおけるポール30もリリース位置に移動する。これにより、スライドドア90を開くことができる。
【0076】
スライドドア90が全閉状態になると、スライドドア90とドア枠99Wとの間で防音部材が押し潰され、その反力によって閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの各ポール30と各ラッチ20とが摩擦係合した状態になる。一方、スライドドア90を開くには、これらポール30とラッチ20との摩擦抵抗に抗して閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの両ポール30をリリース位置に移動する必要があり、手動操作のみで両ポール30をリリース位置に移動するには大きな力を要する。しかしながら、本実施形態では、ハンドル95を操作すると、ポール30とラッチ20との摩擦抵抗がハンドル95にかかる前に、ハンドル操作検出センサ96がハンドル95が操作されたことを検出し、これを受けてECUがラッチ駆動モータ41Mのモータ出力軸を他方に回転させる。
【0077】
すると、アクティブレバー50が図10における時計回り方向に回転駆動され、そのアクティブレバー50から動力を受けてリリース入力盤170、スライド回動盤175及びリリースレバー165が同図における反時計回り方向に回動する。そして、図10から図11の変化に示すように、リリースレバー165がリリースケーブル91Wをクローザ装置10B側に引く。これにより、リモコン装置91のリモコン回動レバー98が回動し、オープンケーブル92W,93Wがリモコン装置91側に引かれて、ラッチ駆動モータ41Mの動力により閉鎖ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの両ポール30をリリース位置に移動することができ、容易にスライドドア90を開くことができる。
【0078】
また、スライドドア90を全開状態にすると、全開ドアロック装置10Cの図示しないラッチ20とストライカ40とが噛み合い、ポール30がラッチ20と摩擦係合する。この場合も、ハンドル95を操作することで、オープンケーブル94Wがリモコン装置91側に引かれて、ラッチ駆動モータ41Mの動力により全開ドアロック装置10Cのポール30をリリース位置に移動することができる。これにより、容易にスライドドア90を閉じることができる。
【0079】
さて、図11に示すようにリリースケーブル91Wがリモコン装置91からクローザ装置10B側に引っ張られた状態で、ラッチ駆動モータ41Mと共にリリース入力盤170、スライド回動盤175及びリリースレバー165が異常停止した場合には、ECUがラッチ駆動モータ41Mへの通電状態等からこの異常停止を検出し、例えば、図示しない運転席の警告灯を点灯する。この状態では、オープンレバー60がポール駆動レバー133の押下片135を押し下げてポール30がリリース位置から戻らないため、ラッチ20をストライカ40と噛み合った状態に保持することができない。即ち、スライドドア90を完全に閉じた全閉状態にすることができないので、車両自体は走行可能であっても、実際には走行が不可能となる。
【0080】
このような場合、運転者は、スライド回動盤175を動力遮断位置に切り替えればよい。即ち、スライドドア90の後端壁に設けられた非常用操作孔90Rから所定のツール(車両のキーやドライバー等)を挿入してキャンセル操作バー176を奥に押す。すると、スライド回動盤175が長孔177に沿って直動して連結旋回突部175Aがリリースレバー165の突部受容溝165Rの外側へ押し出され、スライド回動盤175とリリースレバー165との連結が解除される(図12参照)。これにより、連結旋回突部175Aとリリースレバー165との間での力の伝達が遮断されると共に、リリースレバー165がスライド回動盤175に対して自在に回転可能となる。なお、警告灯の消灯は、スライド回動盤175を適切な位置に操作したことを検出することで行われる。そして、連結旋回突部175Aが突部受容溝165Rから押し出されると、リモコン回動レバー98が第1原点保持スプリング98Sによって原点位置(図16に示した位置)に戻され、これにより、リリースケーブル91Wがリモコン装置91側に引かれるので、図13に示すように、リリースレバー165がスライド回動盤175に対して個別に回転して元の位置に戻される。また、リリースレバー165が回動すると、連結旋回突部175Aに対してリリースレバー165の突部移動規制部165Aが回動軸65J側から対向して、連結旋回突部175Aが回動軸65J側に接近することが規制される。即ち、スライド回動盤175は動力遮断位置に維持される。
【0081】
これにより、ラッチ駆動モータ41Mが異常停止しても、閉鎖ドアロック装置10A、クローザ装置10B、全開ドアロック装置10Cのポール30をリリース位置からラッチ20に係合する位置に戻すことができ、スライドドア90を閉じた状態に保持することが可能になる。
【0082】
さらに、スライド回動盤175が動力遮断位置でかつリリースレバー165だけが単独で元の位置に戻された状態(図13の状態)で、ラッチ駆動モータ41Mが復帰し、アクティブレバー50がリリース入力盤170(当接ボス170E)から離れる方向に回動すると、図13から図14への変化に示すように、リリース入力盤170及びスライド回動盤175がトーションバネ170S(図8参照)の付勢力にて元の位置に戻る。そして、リリース入力盤170に備えた突部係合孔170Rとリリースレバー165の突部受容溝165Rとが重なって一致すると、スプリング85の付勢力によって、スライド回動盤175の連結旋回突部175Aがリリースレバー165の突部受容溝165Rに再受容される。即ち、スライド回動盤175が自動的に動力伝達位置に復帰すると共に、キャンセル操作バー176がスライドドア90の非常用操作孔90Rに向けて押し戻される(図10参照)。
【0083】
ところで、ラッチ駆動モータ41Mによって駆動されるアクティブレバー50は、上述の如く予め設定された回動規定範囲で往復回動するように構成されており、リリース動作及びクローズ動作の何れもが行われていない通常時には、回動規定範囲内に設定された待機区間に配置されている。図19(A)には、回動規定範囲の一端位置におけるアクティブレバー50が実線で示され、回動規定範囲の他端位置におけるアクティブレバー50が点線で示されている。また、図20(A)には、待機区間の一端位置におけるアクティブレバー50が実線で示され、待機区間の他端位置におけるアクティブレバー50が点線で示されている。
【0084】
回動規定範囲のうち待機区間より一方側の区間、具体的には、アクティブレバー50の扇形回動板51がリリース入力盤170に当接したリリース部品当接位置(図19(B)の実線で示す位置)から、さらに所定のリリース動作角θ2だけ進んで、回動規定範囲の一端であるリリース完了位置(図19(A)の実線で示す位置)に達するまでの区間は、ポール30をラッチ係止位置からラッチ係止解除位置に移動させるリリース作動区間である。図19(B)には、リリース作動区間の両端位置におけるアクティブレバー50が実線と点線とで示されている。
【0085】
回動規定範囲のうち待機区間より他方側の区間、具体的には、シーソー形回動盤55がハーフラッチ位置のラッチ20に当接したクローズ部品当接位置(図20(A)の実線で示す位置)から、さらに所定のクローズ動作角θ3だけ進んで、回動規定範囲の他端位置であるクローズ完了位置(図20(B)の実線で示す位置)に達するまでの区間は、ラッチ20をハーフラッチ位置からフルラッチ位置に移動させるクローズ作動区間である。図20(B)には、クローズ作動区間の両端位置におけるアクティブレバー50が、実線と点線とで示されている。
【0086】
このように、待機区間は、リリース部品当接位置(図20(A)の点線で示す位置)とクローズ部品当接位置(図20(A)の実線で示す位置)との間に設けられている。なお、リリース部品当接位置は、本発明の「第2アクティブ回動盤」に係る「クローズ部品最大離間位置」に相当し、クローズ部品当接位置は、本発明の「第1アクティブ回動盤」に係る「リリース部品最大離間位置」に相当する。
【0087】
ここで、本実施形態における、アクティブレバー50の回動規定範囲、即ち、リリース完了位置とクローズ完了位置との間の角度θ1(図19(A)参照)は、例えば、53.3°に設定されている。このうち、リリース作動区間の角度(リリース動作角θ2、図19(B)参照)は、例えば、12.2°に設定され、クローズ作動区間の角度(クローズ動作角θ3、図20(B)参照)は38.1°に設定され、待機区間の角度(不動作角θ4、図20(A)参照)は、例えば、13°に設定されている。
【0088】
つまり、待機区間は、アクティブレバー50の回動規定範囲のちょうど中央位置よりも一端側のリリース完了位置に近い側に偏在するように設定されている。そして、アクティブレバー50が、待機区間に配置されているか否かを検出するために、クローザ装置10Bには、図17に示すようにロータリー式のレバースイッチ100(本発明の「待機状態検出手段」に相当する)が備えられている。なお、図8〜14では、説明の便宜上、レバースイッチ100が省略されている。
【0089】
レバースイッチ100は機構板81に固定され、入力レバー101を回動可能に備えている。図18に示すように入力レバー101の基端部にはロータ103が一体に備えられている。ロータ103は、機構板81に固定された円筒形のスイッチハウジング104内に回動可能に収容されており、入力レバー101の回動に伴いスイッチハウジング104に対して相対回転する。スイッチハウジング104の内部には、その周方向に沿って複数の固定接点が設けられており、ロータ103には、それら固定接点と摺接可能な可動接点が備えられている。また、固定接点は、アクティブレバー50が待機区間の両端寄り位置に位置するときに、入力レバー101の可動接点と接するように配置されており、それら可動接点と固定接点は、スイッチハウジング104の外部に延びた複数のケーブルによって車両本体99に備えたECU(図示せず)に電気接続されている。これにより、アクティブレバー50に連動して回動する入力レバー101の回動位置がECUに取り込まれており、アクティブレバー50が待機区間に配置されているか否かを入力レバー101の回動位置によって検出可能となっている。
【0090】
入力レバー101は、その基端部と先端部との中間で曲がった形状をなしており、曲がった部分より先端側に長孔状のカム溝102が形成されている。入力レバー101の回動中心101Pは、アクティブレバー50の回動規定範囲の角度θ1の2等分線上に配置されており(図19参照)、アクティブレバー50の回動中心50Pとの間の距離が、例えば、72mmに設定されている。
【0091】
入力レバー101は、アクティブレバー50の扇形回動板51にオーバーラップするように取り付けられている。扇形回動板51の一角部(加圧部50T)には入力レバー101に向かって突出したカム突部51Tが備えられ、そのカム突部51Tが入力レバー101のカム溝102に対して回動可能かつ直動可能に係合している。
【0092】
カム突部51Tと入力レバー101の回動中心101Pとの最短距離は、カム突部51Tの回動半径より短くなっている。具体的には、例えば、カム突部51Tの回動半径は51mmであり、カム突部51Tと入力レバー101との最短距離は21mmである。。
【0093】
さて、入力レバー101に形成されたカム溝102は直線状に延びており、その長軸102Aの延長線は、入力レバー101の回動中心101Pを通らないようになっている。即ち、入力レバー101の回動中心101Pは、カム溝102の長軸102Aと直交した方向に所定の距離L1(例えば13mm)だけオフセットした位置に配設されている。換言すれば、入力レバー101の回動中心101Pとアクティブレバー50の回動中心50Pとを結ぶ基準線S1(図19参照)から外れた位置で、カム溝102の長軸102Aが基準線S1と平行になり、その平行状態で基準線S1とカム溝102の長軸102Aとが距離L1だけ離れるように配置されている。さらに、カム溝102は、回動規定範囲のちょうど中央位置からリリース完了位置側にずれた位置にアクティブレバー50が位置するとき、より詳細には、待機区間にアクティブレバー50が位置する間に基準線S1と平行になるように構成されている(図20(A)を参照)。従って、アクティブレバー50が回動可能範囲のちょうど中央位置に位置したとき(基準線S1上にカム突部51Tが位置したとき)には、カム溝102が基準線S1と平行にはならず、基準線S1に対して斜めに交差する。
【0094】
アクティブレバー50と入力レバー101とは、これらカム突部51Tとカム溝102との凹凸係合により連動回転可能となっている。リリース動作を行う場合、アクティブレバー50は、待機区間から図19(B)における時計回り方向に回動してリリース作動区間に移行する。このとき、入力レバー101は反時計回り方向に回動する。一方、クローズ動作を行う場合、アクティブレバー50は、待機区間から図20(A)における反時計回り方向に回動してクローズ作動区間に移行する。このとき、同図(B)への変化に示すように入力レバー101は時計回り方向に回動する。
【0095】
そして、アクティブレバー50が、その回動規定範囲の両端間(リリース完了位置とクローズ完了位置との間)で回動する間に、カム突部51Tは、カム溝102のうち、入力レバー101の回動中心101Pから離れた側の端部から近い側の端部に接近し、再び離れた側の端部へと引き返すように、カム溝102内をちょうど1往復する。
【0096】
なお、本実施形態においてアクティブレバー50は、本発明に係る「第1アクティブ回動盤」,「第2アクティブ回動盤」,「第3アクティブ回動盤」に相当し、入力レバー101は本発明に係る「第1従動回動部材」,「第2従動回動部材」,「第3従動回動部材」に相当する。また、カム突部51Tは、本発明に係る「第1カム突部」,「第2カム突部」,「第3カム突部」に相当し、カム溝102は、本発明に係る「第1カム溝」,「第2カム溝」,「第3カム溝」に相当する。さらに、待機区間は、本発明に係る「第1待機区間」,「第2待機区間」,「第3待機区間」に相当し、基準線S1は、本発明に係る「第1基準線」,「第2基準線」,「第3基準線」に相当する。
【0097】
このように本実施形態では、待機区間は、アクティブレバー50の回動規定範囲のちょうど中央位置より一端側(リリース完了位置側)に偏在して設けられている。これに対応して、レバースイッチ100の入力レバー101に設けられたカム溝102は、回動中心50P,101P間を結ぶ基準線S1から外れた位置で平行になるように形成され、待機区間にアクティブレバー50が位置する間に、基準線S1とカム溝102とが平行になるように構成されている。つまり、アクティブレバー50が待機区間に位置するときに、アクティブレバー50の単位回動角当たりの入力レバー101の回動角度が最大になるように構成されている。従って、アクティブレバーが回動規定範囲のちょうど中央位置に位置するときにカム溝102が基準線S1と重なった状態で平行に延びるように構成したものに比べて、アクティブレバー50が待機区間の一端から他端へと移動する間に入力レバー101が回動する角度を大きくすることができる。これにより、待機状態検出手段の精度を抑えてもアクティブレバー50が待機区間に位置するか否かを検出することが可能となり、待機状態検出手段にかかるコストを下げることができる。以下、実施例と比較例とを挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0098】
[実施例]
本発明に係る実施例のレバースイッチ100及びアクティブレバー50の構造、寸法及び位置関係は上述の通りである。また、アクティブレバー50の回動規定範囲、リリース作動区間、クローズ作動区間、待機区間の各角度θ1,θ2,θ3,θ4についても上述の通りである。
【0099】
[比較例1]
比較例1は図21に示されている。同図に示すように、入力レバー201のカム溝202が、回動中心50P、201Pを結ぶ基準線S1と重なった状態で平行になるように構成した点以外は、実施例と同一の構造である。
【0100】
[比較例2]
比較例2は図22に示されている。同図に示すように、比較例1と同様に入力レバー301のカム溝302が基準線S1と重なった状態で平行になるようにした上で、入力レバー301の回動中心301Pの位置を、アクティブレバー50の回動規定範囲の角度θ1の2等分線より一方側(リリース作動区間側)に約13°ずらして配置した。回動中心50P,301P間の距離及び、カム突部51Tと入力レバー301の回動中心301Pとの最短距離は実施例と同一である。
【0101】
[比較結果]
図21(A)には、比較例1において、回動規定範囲の一端位置におけるアクティブレバー50と入力レバー201とが実線で示され、回動規定範囲の他端位置におけるアクティブレバー50と入力レバー201とが点線で示されている。また、図21(B)には、待機区間の一端位置におけるアクティブレバー50と入力レバー201とが実線で示され、待機区間の他端位置におけるアクティブレバー50と入力レバー201とが点線で示されている。図21(B)に示したように、比較例1では、アクティブレバー50が待機区間の一端から他端まで(不動作角θ4=13°)回動する間に入力レバー201が回動する角度θ4’は20.6°であった。これに対し、本発明を適用した実施例では、待機区間における入力レバー101の回動角度θ4’(図20(A)参照)が30.7°となり、比較例1より大きくなった。
【0102】
図22(A)には、比較例2において、回動規定範囲の一端位置におけるアクティブレバー50と入力レバー301とが実線で示され、回動規定範囲の他端位置におけるアクティブレバー50と入力レバー301とが点線で示されている。また、図22(B)には、待機区間の一端位置におけるアクティブレバー50と入力レバー301とが実線で示され、待機区間の他端位置におけるアクティブレバー50と入力レバー301とが点線で示されている。
【0103】
図22(B)に示すように、比較例2では、待機区間における入力レバー301の回動角度θ4’が31.4°となり、実施例とほぼ同等になった。しかしながら、回動規定範囲の全域でカム突部51Tとカム溝302との係合を維持するために、カム溝302及び入力レバー301を実施例のものより約2割程度長くする必要があった。その結果、入力レバー301の回動半径及び回動に必要なスペースが増大した。言い換えれば、実施例では、待機区間における入力レバー101の回動角度を比較例2と同等まで大きくしながらも、比較例2よりも入力レバー101の大型化を抑えることができた。
【0104】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態のクローザ装置10Bは、アクティブレバーが、リリース動作又はクローズ動作の何れか一方だけを行う車両ドアラッチ装置に本発明を適用してもよい。即ち、回動規定範囲が待機区間とリリース作動区間だけ、或いは、待機区間とクローズ作動区間だけで構成されているクローザ装置に本発明を適用してもよい。
【0105】
(2)上記実施形態では、スライドドア90のクローザ装置10Bに本発明を適用していたが、車両本体に回動可能に備えられた回動ドアに取り付けられた回動ドアロック装置に、本発明を適用してもよい。この場合、回動ドアロック装置は、ラッチアンドポール機構、前記ラッチ駆動モータ、リリース動力伝達部又はクローズ動力伝達部を設けた構成にしておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両ドアロックシステムを備えた車両の概念図
【図2】車両ドアロックシステムを備えたスライドドアの概念図
【図3】アンラッチ状態の閉鎖ドアロック装置の正面図
【図4】ハーフラッチ状態の閉鎖ドアロック装置の正面図
【図5】フルラッチ状態の閉鎖ドアロック装置の正面図
【図6】オーバーラッチ状態の閉鎖ドアロック装置の正面図
【図7】クローザ装置の側面図
【図8】ハーフラッチ状態のクローザ装置の正面図
【図9】フルラッチ状態のクローザ装置の正面図
【図10】リリースレバーに当接する直前の状態のクローザ装置の正面図
【図11】ラッチ駆動モータの動力によりポールをリリース位置に移動した状態のクローザ装置の正面図
【図12】ラッチ駆動モータの異常停止時にスライド回動盤を動力遮断位置にした直後のクローザ装置の正面図
【図13】動力遮断位置になったことでリリースレバーが元の位置に戻った状態のクローザ装置の正面図
【図14】ラッチ駆動モータが復帰してスライド回動盤が動力伝達位置に戻る直前のクローザ装置の正面図
【図15】第1キャンセル機構の構成部品の正面図
【図16】リモコン装置の概念図
【図17】クローザ装置の正面図
【図18】レバースイッチの正面図
【図19】(A)リリース完了位置におけるアクティブレバー及び入力レバーの正面図(B)リリース部品当接位置におけるアクティブレバー及び入力レバーの正面図
【図20】(A)クローズ部品当接位置におけるアクティブレバー及び入力レバーの正面図,(B)クローズ完了位置におけるアクティブレバー及び入力レバーの正面図
【図21】比較例1のアクティブレバー及び入力レバーの正面図
【図22】比較例2のアクティブレバー及び入力レバーの正面図
【図23】(A)回動規制範囲及び待機区間を示す概念図、(B)従来技術をアクティブ回動盤の位置検出に利用した構成の一例を示す概念図
【符号の説明】
【0107】
10 車両ドアロックシステム
10A,10B1 閉鎖ドアロック装置
10B クローザ装置
10B2 回動ドアロック装置
10C 全開ドアロック装置
20 ラッチ
30 ポール
40 ストライカ
41M ラッチ駆動モータ(モータ)
50 アクティブレバー(第1アクティブ回動盤,第2アクティブ回動盤,第3アクティブ回動盤)
100 レバースイッチ(待機状態検出手段)
51T カム突部(第1カム突部,第2カム突部,第3カム突部)
101 入力レバー(第1従動回動部材,第2従動回動部材,第2従動回動部材)
102 カム溝(第1カム溝,第2カム溝,第3カム溝)
170 リリース入力盤
S1 基準線(第1基準線,第2基準線,第3基準線)
θ2 リリース動作角
θ3 クローズ動作角
θ4 不動作角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに取り付けられ、車両本体に備えたストライカと噛み合って回動するラッチと、
前記ラッチの回動を禁止するラッチ係止位置と前記ラッチの回動を許容するラッチ係止解除位置との間で回動可能なポールと、
前記ドアの開閉操作に応じて起動するモータと、
前記モータの一方向の回転動力を前記ポールに伝達して、前記ポールを前記ラッチ係止位置から前記ラッチ係止解除位置へと回転駆動するためのリリース動力伝達部と、
前記モータの回転出力軸に連結されて、予め設定された回動規定範囲で往復回動可能であると共に、前記ドアの開放操作時に、一方向に回転駆動されて前記リリース動力伝達部の一部品に当接したリリース部品当接位置から、さらに所定のリリース動作角だけ進んだリリース完了位置まで回転駆動されることで、前記モータの動力を前記リリース動力伝達部を介して前記ポールに伝達すると共に、通常時は、前記リリース部品当接位置とそのリリース部品当接位置から所定の不作動角だけ他方向側に離れたリリース部品最大離間位置との間の第1待機区間に配置される第1アクティブ回動盤と、
前記第1アクティブ回動盤の回転軸と平行かつ前記第1アクティブ回動盤から離れた位置に配置された回転軸を中心に回動し、前記第1アクティブ回動盤に重ねられた第1従動回転部材と、
前記第1アクティブ回動盤のうち前記第1従動回転部材との重ね合わせ面に突出形成された第1カム突部と、
前記第1従動回転部材に形成されて前記第1カム突部がスライド可能に係合し、前記第1アクティブ回動盤と前記第1従動回転部材とを連動させるための第1カム溝と、
前記第1従動回転部材の回動位置に基づいて前記第1アクティブ回動盤が前記第1待機区間に配置されているか否かを検出するための待機状態検出手段とを備えた車両ドアラッチ装置において、
前記第1カム溝は、前記第1アクティブ回動盤の回動中心と前記第1従動回転部材の回動中心とを結ぶ第1基準線から外れた位置でその第1基準線と平行になるように延び、
前記第1待機区間は、前記回動規定範囲の一端寄りに配置され、
前記第1アクティブ回動盤が前記回動規定範囲の一端寄りに位置したときに、前記第1カム溝と前記第1基準線とが平行になるように構成したことを特徴とする車両ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記第1アクティブ回動盤が前記第1待機区間に位置したときに、前記第1カム溝と前記第1基準線とが平行になるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項3】
車両のドアに取り付けられ、車両本体に備えたストライカと噛み合って回動するラッチと、
前記ラッチの回動を禁止するラッチ係止位置と前記ラッチの回動を許容するラッチ係止解除位置との間で回動可能なポールと、
前記ドアの開閉操作に応じて起動するモータと、
前記モータの一方向の回転動力を前記ラッチに伝達して、前記ラッチを前記ストライカとの係合を深めるロック方向に回転駆動して前記ドアを完全に閉じた全閉状態に移行するためのクローズ動力伝達部を設け、
前記モータの回転出力軸に連結されて、予め設定された回動規定範囲で往復回動可能であると共に、前記ドアが半ドア状態になったときに、一方向に回転駆動されて前記クローズ動力伝達部の一部品に当接したクローズ部品当接位置から、さらに所定のクローズ動作角だけ進んだクローズ完了位置まで回転駆動されることで、前記モータの動力を前記クローズ動力伝達部を介して前記ラッチに伝達すると共に、通常時は、前記クローズ部品当接位置とそのクローズ部品当接位置から所定の不作動角だけ他方向側に離れたクローズ部品最大離間位置との間の第2待機区間に配置される第2アクティブ回動盤と、
前記第2アクティブ回動盤の回転軸と平行かつ前記第2アクティブ回動盤から離れた位置に配置された回転軸を中心に回動し、前記第2アクティブ回動盤に重ねられた第2従動回転部材と、
前記第2アクティブ回動盤のうち前記第2従動回転部材との重ね合わせ面に突出形成された第2カム突部と、
前記第2従動回転部材に形成されて前記第2カム突部がスライド可能に係合し、前記第2アクティブ回動盤と前記第2従動回転部材とを連動させるための第2カム溝と、
前記第2従動回転部材の回動位置に基づいて前記第2アクティブ回動盤が前記第2待機区間に配置されているか否かを検出する待機状態検出手段とを備えた車両ドアラッチ装置において、
前記第2カム溝は、前記第2アクティブ回動盤の回動中心と前記第2従動回転部材の回動中心とを結ぶ第2基準線から外れた位置でその第2基準線と平行になるように延び、
前記第2待機区間は、前記回動規定範囲の一端寄りに配置され、
前記第2アクティブ回動盤が前記回動規定範囲の一端寄りに位置したときに、前記第2カム溝と前記第2基準線とが平行になるように構成したことを特徴とする車両ドアラッチ装置。
【請求項4】
前記第2アクティブ回動盤が前記第2待機区間に位置したときに、前記第2カム溝と前記第2基準線とが平行になるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項5】
車両のドアに取り付けられ、車両本体に備えたストライカと噛み合って回動するラッチと、
前記ラッチの回動を禁止するラッチ係止位置と前記ラッチの回動を許容するラッチ係止解除位置との間で回動可能なポールと、
前記ドアの開閉操作に応じて起動するモータと、
前記モータの一方向の回転動力を前記ポールに伝達して、前記ポールを前記ラッチ係止位置から前記ラッチ係止解除位置へと回転駆動するためのリリース動力伝達部と、
前記モータの他方向の回転動力を前記ラッチに伝達して、前記ラッチを前記ストライカとの係合を深めるロック方向に回転駆動して前記ドアを完全に閉じた全閉状態に移行するためのクローズ動力伝達部を設け、
前記モータの回転出力軸に連結されて、予め設定された回動規定範囲で往復回動可能であると共に、前記ドアの開放操作時に、一方向に回転駆動されて前記リリース動力伝達部の一部品に当接したリリース部品当接位置から、さらに所定のリリース動作角だけ進んだリリース完了位置まで回転駆動されることで、前記モータの動力を前記リリース動力伝達部を介して前記ポールに伝達し、前記ドアが半ドア状態になったときに、他方向に回転駆動されて前記クローズ動力伝達部の一部品に当接したクローズ部品当接位置から、さらに所定のクローズ動作角だけ進んだクローズ完了位置まで回転駆動されることで、前記モータの動力を前記クローズ動力伝達部を介して前記ラッチに伝達し、さらに、通常時は、前記クローズ部品当接位置と前記リリース部品当接位置との間の第3待機区間に配置される第3アクティブ回動盤と、
前記第3アクティブ回動盤の回転軸と平行かつ前記第3アクティブ回動盤から離れた位置に配置された回転軸を中心に回動し、前記第3アクティブ回動盤に重ねられた第3従動回転部材と、
前記第3アクティブ回動盤のうち前記第3従動回転部材との重ね合わせ面に突出形成された第3カム突部と、
前記第3従動回転部材に形成されて前記第3カム突部がスライド可能に係合し、前記第3アクティブ回動盤と前記第3従動回転部材とを連動させるための第3カム溝と、
前記第3従動回転部材の回動位置に基づいて前記第3アクティブ回動盤が前記第3待機区間に配置されているか否かを検出する待機状態検出手段とを備えた車両ドアラッチ装置において、
前記第3カム溝は、前記第3アクティブ回動盤の回動中心と前記第3従動回転部材の回動中心とを結ぶ第3基準線から外れた位置でその第3基準線と平行になるように延び、
前記第3待機区間は、前記回動規定範囲の一端寄りに配置され、
前記第3アクティブ回動盤が前記回動規定範囲の一端寄りに位置したときに、前記第3カム溝と前記第3基準線とが平行になるように構成したことを特徴とする車両ドアラッチ装置。
【請求項6】
前記第3アクティブ回動盤が前記第3待機区間に位置したときに、前記第3カム溝と前記第3基準線とが平行になるように構成したことを特徴とする請求項5に記載の車両ドアラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−31569(P2010−31569A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195748(P2008−195748)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】