説明

車両充電スタンド

【課題】アンテナへの悪戯や、アンテナの破損・脱落を防止することができ、車両充電スタンドを設置場所に設置してからアンテナの向きの調整が容易にできる車両充電スタンドを提供する。
【解決手段】金属製キャビネット10の天井と樹脂製屋根部材20との間に形成される空間に、キャビネット10の内部に収納される通信機器のアンテナ30を配設する。キャビネット10の天井面に、連通孔10aを形成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグインハイブリッド車や電気自動車等の車載電池を備えた車両を充電するために使用される車両充電スタンドの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1に示されるように車載電池を備えた車両を充電するために使用される車両充電スタンド提案されている。このような車両充電スタンドは、金属製のキャビネット内に、充電用電流を生成する充電用電流生成装置や充電される車両への充電状態を監視・制御する制御装置が収納されている。
近年、ユーザーが所持する携帯電話等の携帯端末に、充電終了時間、充電完了通知、課金情報等の充電情報が送信される車両充電スタンドが提案されている。このような車両充電スタンドには、携帯電話の基地局と送受信するためのアンテナを有しているが、アンテナを金属製のキャビネットの内部に収納すると、当然、電波がキャビネットで遮断されてしまうため、アンテナはキャビネットの外部に設置する必要がある。一般に、キャビネット内部に連通する入線部から配線をキャビネットの外部に通し、キャビネットの側面にアンテナを取り付けることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−122714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンテナは外部に露出していることから、アンテナへの接触や悪戯により、キャビネット側面からのアンテナの脱落やアンテナの破損、或いは、配線が断線してしまうことあった。また、アンテナがキャビネットの側面に取り付けられることにより、車両充電スタンドの設置場所によっては、周囲の構造物によってアンテナの設置方向が物理的に制限されるという問題点があった。さらに、アンテナが大型のものである場合には、強風等によってアンテナがキャビネット天井から脱落してしまう恐れがあった。また、一般にアンテナはその設置方向による指向性を有するが、アンテナからの電波が周囲の構造物と干渉することを防ぐため、車両充電スタンドを実際に設置場所に設置してからアンテナを調整する必要がある場合が多い。
本発明は、上記問題を解決し、アンテナへの悪戯やアンテナの破損・脱落を防止することができ、車両充電スタンドを設置場所に設置してからアンテナの向きの調整が容易にできる車両充電スタンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、金属製キャビネットの天井と樹脂製屋根部材との間に形成される空間に、前記キャビネットの内部に収納される通信機器のアンテナを配設したことを特徴とする。
これにより、車両充電スタンドの設置場所の周囲の構造物によってアンテナの設置方向が物理的に制限されることがない。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、金属製キャビネットの天井面に、連通孔を形成したことを特徴とする。これにより、車両充電スタンドを設置した後にアンテナの設置方向を調整することが可能となる上、作業者がキャビネットの内部側から連通孔に調整用工具を挿通させることにより、アンテナの設置方向を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属製キャビネットの天井と樹脂製屋根部材との間に形成される空間に、前記キャビネットの内部に収納される電気機器のアンテナを配設したので、アンテナが外部へ露出していることに起因するアンテナへの悪戯やアンテナの破損・脱落を防止することが可能となった。
また、車両充電スタンドの設置場所の周囲の構造物によってアンテナの設置方向が物理的に制限されることがない上、車両充電スタンドを設置した後にアンテナの設置方向を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態を示す車両充電スタンドの全体斜視図である。
【図2】図1の天井部の詳細図である。
【図3】天井部材の裏面斜視図である。
【図4】天井部材にアンテナを取り付けた状態の裏面斜視図である。
【図5】天井部材にアンテナを取り付けた状態の裏面図である。
【図6】第2の実施形態の天井部材にアンテナを取り付けた状態の裏面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を示す。
本発明の車両充電スタンド100は、図1や図2に示されるように、支柱形状のキャビネット10の内部に給電手段を有し、給電手段と電気自動車を通電する充電ケーブル50を備えていて、充電ケーブル50の先端部は、電気自動車に設けた給電部に接続する充電用コネクタ90を有している。また、車両充電スタンド100は金属製のキャビネット10、樹脂製の屋根部材20から構成されていて、キャビネット10正面には、不使用時に充電コネクタ90をキャビネット10に保持する保持空間80を備え、保持空間80の上部には、表示装置60を備えている。
また、キャビネット10は、右側面に充電ケーブルを巻き取るケーブル係止具70を備えた充電ケーブル保持面を備え、左側面に点検用扉(図示せず)を備えた箱体である。
図2に示されるように、キャビネット10の天井には、内部に連通する連通孔10aが形成されている。
【0010】
キャビネット10の内部には、図示しない充電ケーブルに流れる充電電流が異常な場合に遮断する遮断器、電気自動車の充電の開始を制御する制御装置(CPLT)、充電状況や充電完了を携帯端末等に充電情報を送信する通信機器等が収納されている。
【0011】
図2や図3に示されるように、屋根部材20は、下側に開放した扁平な箱形の構造である。図3に示されるように、屋根部材20の内部には、周壁20aが形成されていて、周壁20a内部の空間は収納部20bとなっている。周壁20aの下端全周には、パッキン取付凹部20cが形成されている。パッキン取付凹部20cには図示しないパッキンが取り付けられる。屋根部材20は、ネジ止め等でキャビネット10の天井に載置された状態で取り付けられる。屋根部材20がキャビネット10の天井に取り付けられた状態では、パッキン取付凹部20cに取り付けられたパッキンが、キャビネット10の天井と当接して、収納部20b内が防水防塵構造となっている。
【0012】
図3に示されるように、屋根部材20の収納部20b内には、取付軸支部20dが形成されている。図4や図5に示されるように、棒状のアンテナ30がブラケット40を介して、取付軸支部20dに軸支されて、キャビネット10の天井と収納部20bとの間に形成される空間に取り付けられている。具体的には、アンテナ30はブラケット40に取り付けられ、ブラケット40は屋根部材20の取付軸支部20dに軸支されて取り付けられている。このような構造により、アンテナ30は車両充電スタンド100に対して周方向回動自在となっていて、アンテナ30の送受信方向を調整することができるようになっている。また、アンテナ30はキャビネット10の天井と隙間を設けて配置されることとなり、電波が金属製の天井により電波が反射し、送受信に干渉することを防いでいる。
図に示される実施形態では、アンテナ30は、ブラケット40を介して取付軸支部20dに軸支されて取り付けられているが、アンテナ30が直接取付軸支部20dに軸支されて取り付けられる構成であっても差し支えない。
【0013】
アンテナ30からは配線31が延出している。本実施形態では、配線31を連通孔10aに挿通させて、配線31をキャビネット10の内部に配設された通信機器に接続させている。なお、連通孔10aは屋根部材20がキャビネット10の天井に取り付けられた状態において、アンテナ30の直接取付軸支部20dに対応する位置にも受けることが好ましい。
作業者は、キャビネット10の内部側から、連通孔10aに棒状の調整用工具を挿通させることにより、アンテナ30を周方向に回動させることができ、アンテナ30の水平方向の向きを微調整することができる。このため、アンテナ30の指向性、偏波方向による車両充電スタンド100の設置方向を考慮すること無く、任意の方向に、車両充電スタンド100を設置することができる。また、車両充電スタンド100を設置した後にアンテナ30の設置方向を調整することが可能となる。
【0014】
なお、キャビネット10の天井に、連通孔10aとは別に、配線孔を形成し、前記配線孔に配線31を挿通させて、配線31をキャビネット10の内部に配設された通信機器に接続させても差し支えない。本発明では、配線31は、屋根部材20によって完全に被覆されて外部に露出していないので、接触や悪戯による配線31の断線が防止される。連通孔10a等の連通孔が、屋根部材20によって完全に被覆されているので、キャビネット10の内部への雨水等の異物の進入が防止される。
【0015】
本発明では、アンテナ30はキャビネット10の天井と収納部20bとの間に形成される空間に取り付けられているので、アンテナ30が露出していることに起因するアンテナへの悪戯やアンテナの破損・脱落が防止される。屋根部材20は樹脂製であるので、当然、屋根部材20で電波が遮断されることが無く、屋根部材20で被覆されたアンテナ30は電波を送受信することができる。また、車両充電スタンド100の設置場所の周囲の構造物によってアンテナ30の設置方向が物理的に制限されることがない上、車両充電スタンド100を設置した後にアンテナ30の設置方向を調整することが可能となる。
【0016】
(第2の実施形態)
以下に図6を用いて、第1の実施形態と異なる点について第2の実施形態を説明する。第2の実施形態では、屋根部材20には、取付軸支部20dの代わりに、アンテナ取付リブ20eが形成されている。図6に示される実施形態では、アンテナ取付リブ20eによって、アンテナ30が取り付けられる十字状の溝が形成されている。このような構造により、アンテナ30を周方向90°ずつ回転させて、アンテナ30の水平方向の向きを調整することができるようになっている。アンテナ取付リブ20eは、図6に示される形状に限定されず、アンテナ30が取り付けられる放射状の溝が形成されるアンテナ取付リブ20eであっても差し支えない。
上記の各実施形態では水平辺波のアンテナを配置したものとして説明を行ったが、キャビネットの天井と樹脂製屋根部材との間に形成される空間に、垂直偏波のアンテナを設けたものとしてもよい。
【0017】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両充電スタンドもまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0018】
10 キャビネット
10a 連通孔
20 屋根部材
20a 周壁
20b 収納部
20c パッキン取付凹部
20d 取付軸支部
20e アンテナ取付リブ
30 アンテナ
31 配線
40 取付ブラケット
50 充電ケーブル
60 表示装置
70 ケーブル係止具
80 保持空間
90 充電コネクタ
100 車両充電スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製キャビネットの天井と樹脂製屋根部材との間に形成される空間に、前記キャビネットの内部に収納される通信機器のアンテナを配設したことを特徴とする車両充電スタンド。
【請求項2】
金属製キャビネットの天井面に、連通孔を形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両充電スタンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−90027(P2012−90027A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234277(P2010−234277)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】