車両内装部材
【課題】基材のアンダーカット形状を有する壁部に近い位置に取付部材を取付け得るようにする。
【解決手段】基材20の第1壁部分20Aの裏側に、クリップCを装備した取付台座部材60に設けた当接板部64をタッピングネジSにより締結する取付ボス42と、該取付台座部材60に設けた鉤状板部66を係止するスリット44とを設ける。取付ボス42およびスリット44は、第1壁部分20Aに対し傾斜し、かつ同一方向を指向するように設けられる。また取付ボス42は、第3壁部分20Cの後端縁部を通って第1壁部分20Aの裏面に直交する基準線Hから第2壁部分20Bまでの部位に位置する。
【解決手段】基材20の第1壁部分20Aの裏側に、クリップCを装備した取付台座部材60に設けた当接板部64をタッピングネジSにより締結する取付ボス42と、該取付台座部材60に設けた鉤状板部66を係止するスリット44とを設ける。取付ボス42およびスリット44は、第1壁部分20Aに対し傾斜し、かつ同一方向を指向するように設けられる。また取付ボス42は、第3壁部分20Cの後端縁部を通って第1壁部分20Aの裏面に直交する基準線Hから第2壁部分20Bまでの部位に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内装部材の製造方法に関し、更に詳細には、第1壁部分と、前記第1壁部分の端縁部から該第1壁部分の後方に向け折曲的に形成された第2壁部分と、前記第2壁部分の後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分とを備えた基材を、車体嵌合手段を装備した取付部材により車体に固定する車両内装部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両における乗員室内には、図10に示すように、例えばリアサイドトリム12、ドアトリム14、ピラーガーニッシュ16およびリアゲートトリム18等の種々の車両内装部材10が、該乗員室内の側から車体Bへ組付けられている。これら車両内装部材10は、車体の金属部分が乗員室内へ露出しないように被覆するため、比較的大型でかつ複雑な凹凸形状に形成される場合が多く、一般的にはインジェクション成形技術により成形された合成樹脂製の基材20を主体としている。図11は、前述したリアサイドトリム12の裏面を概略的に示した背面図であって、該リアサイドトリム12を含む前述の車両内装部材10は、裏面の所要位置に複数のクリップ(車体嵌合手段)Cを設けてある。従って車両内装部材10は、これらクリップCを車体Bに設けた各係止孔B1(図12および図13参照)へ対応的に突入して嵌合させることで、該車体Bに対して取外し可能に組付けられる。
【0003】
前述した車両内装部材10は、基材20の裏面が複雑な凹凸形状に形成されているため、車体Bに組付けた際の基材20と車体Bとの間隔が各部位毎に異なっている。従って基材20の裏面には、図12および図13に示すように、所謂「やぐら形状」をなす所要高さの取付台座部22または取付台座部材(取付部材)24が設けられており、これら取付台座部22の上面および取付台座部材24の上面にクリップCが取付けられている。図12に示した取付台座部22は、基材20の第1壁部分20Aに一体的に形成されたもので、基材20を成形する成形型のスライド機構を利用して成形可能な場合は、このように基材20に一体的に形成することが多い。
【0004】
また、図13に示した取付台座部材24は、基材20とは別体に形成されたもので、隣接した部位に突部や壁部等があって成形型により取付台座部22の成形が不可能な場合は、基材20の付属部材として該基材20とは別体に該取付台座部材24を成形して、後工程において該基材20に組付けるようになっている。このような後組付形態の場合には、基材20の裏面に、柱状突起状のボス部32と、リブ35に形成した切り欠き状のスリット34とからなる設置支持部30を成形し、別体に成形した取付台座部材24に設けた鉤状爪部36をスリット34に係止すると共に、タッピングネジSをボス部32にねじ込んで締結することで、該取付台座部材24を設置支持部30に組付けるよう構成される。なお、車両内装部材を構成する基材の裏側に図13に示すような設置支持部を設け、この設置支持部に対して取付部材等を装着するようにした技術に関しては、例えば引用文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開2004−237763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図13に示した基材20のように、第1壁部分20Aと、該第1壁部分20Aの端縁部から該第1壁部分20Aの後方に向け折曲的に形成された第2壁部分20Bと、該第2壁部分20Bの後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分20Cとを有する形状の場合は、第3壁部分20Cが第1壁部分20Aの後方へ迫り出したアンダーカット形状となっているので、これら第1壁部分20Aの一部と第2壁部分20Bおよび第3壁部分20Cを形成するスライド型38を備えた成形型(図13にはスライド型38のみ図示)により成形される。しかし、従来の成形型では、スライド型38が移動する方向とボス部32の突出方向とが異なっているため、設置支持部30の全体を該スライド型38で成形することができなかった。従って、スリット34およびボス部32からなる設置支持部30は、スライド型38の移動に支障を来たさない位置に形成せざるを得ないことから、第2壁部分20Bからかなり離間した位置において第1壁部分20Aの裏側に設けられていた。設置支持部30を第2壁部分20Bから離間して設けた場合には、図13に示すように、取付台座部材24を第2壁部分20Bの側に傾斜した形状としても、クリップCと第2壁部分20Bとの間隔Lを小さくするには限界がある。間隔Lが大きい場合には、クリップCを利用して基材20を車体Bに組付けた際に、スリット34より第2壁部分20Bの側に位置する第1壁部分20Aや、該第2壁部分20Bおよび第3壁部分20Cの変形が許容され、これら壁部分の熱履歴等に伴う変形を防止できない問題が発生していた。
【0006】
また、スリット34を形成したリブ35の延在方向がスライド型38の移動方向と同一であれば、該スリット34を該スライド型38で成形することも可能である。しかし、スリット34だけをスライド型38で成形した場合には、該スライド型38で成形できないボス部32と該スリット34との配設間隔がむしろ大きくなってしまう。従って、ボス部32とスリット34との配設間隔が大きくなるに伴い、取付台座部材24が大型化してしまう不都合があった。
【0007】
そこで本発明では、基材のアンダーカット形状を有する壁部に近い位置に取付部材を取付けることができると共に、車体に対する基材の着脱を効率的に行ない得るようにした車両内装部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
第1壁部分と、前記第1壁部分の端縁部から該第1壁部分の後方に向け折曲的に形成された第2壁部分と、前記第2壁部分の後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分とを備えた基材を、車体嵌合手段を装備した取付部材により車体に固定する車両内装部材において、
前記第1壁部分の裏側に設けられ、前記取付部材に設けた第1取付部が締結手段により締結される締結部と、
前記第1壁部分または前記第2壁部分の裏側に設けられ、前記取付部材に設けた第2取付部が係止される係止部とを有し、
前記締結部および係止部は、前記第1壁部分に対し傾斜し、かつ同一方向を指向するように設けられたことを要旨とする。
【0009】
従って、請求項1に係る発明によれば、第1壁部分の裏側に設けた締結部および係止部に対して基材の後側から取付部材を取付けるに際し、該締結部に対する第1取付部の締結方向と該係止部に対する第2取付部の係止方向とが同じであるため、当該取付部材の取付け作業を簡易かつ適切に行なうことができる。また、締結部および係止部をスライド型で成形するため、これら締結部および係止部の配設間隔を小さくすることができ、これに伴って取付部材の小型化を図り得る。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記締結部は、前記第3壁部分の後端縁部を通って前記第1壁部分の裏面に直交する基準線から前記第2壁部分までの部位に位置することを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、第1壁部分の第2壁部分に近接した裏側に締結部および係止部が設けられているので、基材のアンダーカット形状を有する壁部に近い位置に取付部材を取付けることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、
前記締結部と前記締結手段との締結方向および前記係止部と前記第2取付部との係脱方向は、前記車体に対する前記車体嵌合手段の組付け方向と交差することを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、締結部および係止部がアンダーカット形状を有する壁部に近接して設けられていても、第3壁部分が邪魔になることなく、これら締結部および係止部に対して取付部材を好適に取付けることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記締結部は、前記締結手段で締結される柱状突起であり、前記係止部は、前記第1壁部分または第2壁部分の裏側に設けたリブに形成された切り欠きであることを要旨する。
従って、請求項4に係る発明によれば、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明の効果に加え、柱状突起である締結部に締結手段を締結することで該締結部に対して第1取付部を適切に固定できると共に、切り欠きである係止部に第2取付部を適切に係止できるため、基材に対して取付部材を確実に取付けることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記リブは、前記係止部から前記第1壁部分の側に位置する第1当接部と、該係止部から前記車体の側に位置する第2当接部とからなることを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、基材を車体に組付ける際は、リブの第1当接部を介して取付部材が支えられるようになり、車体に対する車体嵌合手段の嵌合が効率的になされる。また、基材を車体から取外す際には、リブの第2当接部が取付部材を支えるようになり、車体からの車体嵌合手段の脱抜に対して、基材に対する取付部材の取付強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両内装部材によれば、基材のアンダーカット形状を有する壁部に近い位置に取付部材を取付けることができると共に、車体に対する基材の着脱を効率的に行ない得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る車両内装部材につき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照しながら、以下に説明する。なお実施例では、車両内装部材として、図13に示した従来の基材20と同様に、第1壁部分20A、第2壁部分20Bおよび第3壁部分20Cを有した基材20を例示する。従って、図10〜図14で既出の部材、部位と同一の部材、部位については、同一の符号を付して説明する。
【実施例】
【0016】
実施例の車両内装部材10を構成する基材20は、図4に示すと共に後述する成形型M1により、ポリプロピレン(PP)やガラス繊維強化AS(ASG)等の合成樹脂材料からインジェクション成形されたものである。すなわち基材20は、図1〜図3に示すように、車体Bに組付けた際に乗員室内へ臨む第1壁部分20Aと、第1壁部分20Aの端縁部から該第1壁部分20Aの後方に向け折曲的に形成された第2壁部分20Bと、第2壁部分20Bの後端縁から内側(第1壁部分20Aの後方側)に向け折曲的に形成されて車体Bに近接する第3壁部分20Cとを備えている。なお、説明の便宜上、図1における下方を車両内装部材10の前側(表側)とすると共に上方を後側(裏側)とし、また図1における紙面と直交する方向を該車両内装部材10の上下方向とする。
【0017】
基材20の裏側には、図1〜図3に示すように、車体Bへ組付けるために供される取付台座部材(取付部材)60を装着するための設置支持部40が、該基材20と一体的に形成されている。この設置支持部40は、後述するように、基材20を成形する成形型M1のスライド型104に設けた成形凹部120により、該基材20の裏側に形成されたものである。すなわち設置支持部40は、第1壁部分20Aの裏側に設けられ、取付台座部材60に設けた当接板部(第1取付部)64がタッピングネジ(締結手段)Sにより締結される取付ボス(締結部)42と、この取付ボス42より第2壁部分20Bから遠い位置に設けられ、取付台座部材60に設けた鉤状板部(第2取付部)66が係止されるスリット(係止部)44とを有している。
【0018】
取付ボス42は、図1および図2に示すように、基材20における第1壁部分20Aの裏側に立設された円柱状の突起(柱状突起)であり、取付台座部材60の当接板部64を該取付ボス42の先端部で当て受け得ると共に、前述したタッピングネジSが突入して螺合する有底穴46が先端部に形成されている。この取付ボス42は、第3壁部分20Cの後端縁部を通って第1壁部分20Aの裏面に直交する基準線Hから第2壁部分20Bまでの部位(図1におけるN)に基端部が位置して、該部位Nから先端部に向けて第2壁部分20Bから離間する方向へ所要の角度で傾斜した状態に形成されている。この部位Nは、第3壁部分20Cが第1壁部分20Aの後方へ迫り出していることで形成されたアンダーカット領域である。すなわち取付ボス42は、基材20のアンダーカット領域に基端部が位置するように形成されており、該先端部は基材20の裏側開口部21を指向している。なお取付ボス42は、径方向へ突出して軸方向へ延在する十字状のリブ48,50が一体的に形成され、補強が図られている。
【0019】
スリット44は、基材20の第1壁部分20Aの裏側に立設されたリブ52に所要長に形成されて、該リブ52の端縁部に開口した切り欠きであり、取付台座部材60の鉤状板部66が該開口から嵌入して係止される。このスリット44は、図2に示すように、第1壁部分20Aの裏面に対して所要の角度で傾斜していて、該スリット44の開口部は基材20の裏側開口部21を指向するように形成されている。なお、スリット44が形成されたリブ52は、図2に示すように、該スリット44から第1壁部分20Aの側に位置する第1当接部52Aと、該スリット44から車体Bの側に位置する第2当接部52Bとからなる。
【0020】
従って設置支持部40は、第1壁部分20Aの第2壁部分20Bに近接した裏側に位置し、該設置支持部40を構成する取付ボス42およびスリット44は何れも第1壁部分20Aの裏側に設けられ、かつ該第1壁部分20Aに対して傾斜して同一方向を指向するように設けられている。換言すると、第1壁部分20Aに対する取付ボス42およびスリット44の方向および角度が一致している。すなわち、取付ボス42およびスリット44は、図4に示すと共に後述するように、スライド型104の成形凹部120により成形されるため、成形された基材20を第2成形型M1から脱型するに際して、第1壁部分20Aおよび第2壁部分20Bの両方から相対的に離間するスライド型104の移動方向と同一方向に指向するように形成されている。
【0021】
実施例の設置支持部40は、取付ボス42を補強する前述のリブ50とスリット44を設けたリブ50とは、直線上に整列するように形成されているので、一体的に連設された単一のリブとして構成されている。また、実施例の設置支持部40は、図3に示すように、リブ50,52により連設された取付ボス42およびスリット44が、基材20の上下方向へ所要間隔をおいて2組ずつ設けられている。
【0022】
また、両取付ボス42の間には、これら取付ボス42と同一方向を指向する位置決めボス54が、第1壁部分20Aの裏側に立設されている。この位置決めボス54は、設置支持部40へ取付台座部材60を組付けるに際して、該取付台座部材60に設けた後述の位置決め孔72に整合して突入し得るようになっており、設置支持部40に対する取付台座部材60の位置決めを図るために機能する。更に、スリット44,44を形成した両リブ52,52の間には、該スリット44の延在方向と同一方向に沿った支持面56Aを有した支持リブ56,56が、第1壁部分20Aの裏側に突設されている。これら支持リブ56,56は、設置支持部40へ取付台座部材60を組付けるに際して、該取付台座部材60の部材本体62(後述)の底面に接触して案内すると共に、該設置支持部40に組付けた該取付台座部材60の部材本体62を下方から支持するようになっている。
【0023】
図2および図3に示すように、取付ボス42およびスリット44を裏側開口部21を指向する傾斜状態に設けた設置支持部40に対し、前述した取付台座部材60は、該裏側開口部21を介して斜め方向から装着される。この取付台座部材60は、基材20の後方側を指向するようになる頂部の頂面にクリップCを着脱可能に装着し得るブロック状の部材本体62と、第2壁部分20Bに対向する当接板部64と、部材本体62を基材20に装着する方向と交差する幅方向の両側部分から夫々外方へ延出する鉤状板部66,66とを有した合成樹脂製の一体成形部材である。部材本体62の頂面には、クリップCを装着するための切り欠き状の設置開口部68が形成されており、この設置開口部68にクリップCの軸部が嵌合するようになっている。
【0024】
当接板部64は、図3に示すように、横長のプレート状を呈し、設置支持部40の各取付ボス42,42の先端部へ当接するようになっている。そして、設置支持部40に対する装着方向に対して幅方向へ延出した当接板部64の両側部分には、各取付ボス42,42の有底穴46,46に夫々対応してタッピングネジSの挿通を許容する挿通孔70,70が穿設されている。また、当接板部64の幅方向の中央には、基材20の第1壁部分20Aに設けた前述の位置決めボス54の挿通を許容する位置決め孔72が穿設されている。従って、設置支持部40に対して取付台座部材60を装着するに際し、位置決め孔72を位置決めボス54に整合させることで、各挿通孔70,70を各取付ボス42,42の有底穴46,46に整合させ得るようになっている。
【0025】
鉤状板部66,66は、図3に示すように、設置支持部40に対する取付台座部材60の組付姿勢を基準とした部材本体62の底部から側外方へ延出すると共に、各鉤状板部66の折曲した先端部分は所要量だけ組付け方向の前方へ延出して、全体的には鉤状を呈している。これら鉤状板部66,66は、前述したスリット44,44へ夫々対応的に嵌合し得る厚さに設定されている。また、鉤状板部66,66が対応のスリット44,44に係合した状態においては、両鉤状板部66,66の先端部分は各リブ52,52の外側へ延出するようになるため、設置支持部40に対する取付台座部材60の幅方向の動きを規制し得るようになっている。
【0026】
前述のように構成された取付台座部材60は、図2および図3に示すように、当接板部64を設置支持部40に対向させた向きに把持し、取付ボス42,42およびスリット44,44の延在方向から設置支持部40へ装着するようになっている。先ず、両鉤状板部66,66を対応のスリット44,44の開口部に整合させると共に、位置決め孔72を位置決めボス54に整合させる。鉤状板部66,66および位置決め孔72がスリット44,44および位置決めボス54へ各々整合したら、取付台座部材60を第1壁部分20A側へ更に移動させると、両鉤状板部66,66がスリット44,44へ嵌合し、位置決め孔72が位置決めボス54に嵌合すると共に、当接板部64が各取付ボス42,42の先端に当接する。当接板部64が各取付ボス42,42の先端部に当接すると、これら取付ボス42,42の有底穴46,46と当接板部64の挿通孔70,70とが夫々整合するので、挿通孔70,70を介して有底穴46,46へタッピングネジS,Sをネジ込むことで、部材本体62が支持リブ56,56の支持面56Aに接触するようになり、設置支持部40に対して取付台座部材60が強固に固定される。
【0027】
そして、(1)当接板部64と取付ボス42との締結方向および鉤状板部66とスリット44との係脱方向は、図1に示すように、車体Bに対するクリップCの組付け方向と所要角度で交差している。また、(2)鉤状板部66とスリット44との係止位置は、図1に示すように、車体Bに対するクリップCの組付け方向に沿い、かつ該クリップCを通る平面に臨むように設定されている(図1に一点鎖線で示す)。更に、(3)鉤状板部66とスリット44との係止位置は、取付ボス42に対するタッピングネジSの締結位置よりも、該取付ボス42が指向する方向に離間している。従って、前述した(1)〜(3)により、取付台座部材60を装着した基材20を車体Bに組付ける際には、第1壁部分20Aを車体Bに向けて押すと、取付ボス42とリブ52の第1当接部52Aを介して取付台座部材60が支えられるようになり、車体Bの係止孔B1に対するクリップCの嵌合が効率的になされる構造となっている。一方、取付台座部材60を装着した基材20を車体Bから取外す際には、第1壁部分20Aを車体Bから引っ張ると、取付ボス42とリブ52の第2当接部52Bが取付台座部材60を支えるようになり、係止孔B1からのクリップCの脱抜が効率的になされる構造となっている。すなわち、基材20を車体Bから取外すに際して、取付台座部材60が第1壁部分20Aから離間する方向へ引張られても、取付ボス42が第1壁部分20Aから離間するように引き起こされたり、該取付ボス42と当接板部64との締結が解除されるのを好適に防止し得る構造となっている。
【0028】
次に、前述のように構成された設置支持部40を裏側に設けた基材20を成形するための成形型M1を、図4を参照して説明する。この成形型M1は、基材20の表面意匠形状を再現可能な成形面100Aを有する第1成形型100と、第1成形型100に対して型閉め可能で、基材20の裏面形状を再現可能な第2成形型102と、第2成形型102に対して斜めに往復スライド移動するスライド型104とを有している。
【0029】
第2成形型102は、図示しない作動装置により該第2成形型102に対し近接・離間移動が可能な型フレーム106を有している。この型フレーム106には、成形型M1で成形された基材20を脱型する際に該基材20を突出す突出しロッド108と、スライド型104を第2成形型102のガイド面102Bに沿って移動させる支持ロッド110とを有している。突出しロッド108は、第2成形型102の成形面102Aに対して垂直方向へ貫通するように配設され、一方の端部が型フレーム106に端部固定され、他方の端部が成形面102Aに臨んでいる。また支持ロッド110は、第2成形型102に対して傾斜状態で貫通するように配設され、一方の端部が型フレーム106に設けたガイドレール106Aに対してスライドピン110Aを介して連結され、他方の端部がスライド型104に固定されている。そして、型フレーム106に配設したガイドレール106Aは、基材20の第1壁部分20Aの裏側に対応する第2成形型102の成形面102Aとは平行ではなく、該成形面102Aと所要の角度で斜めに延在している。すなわちガイドレール106Aは、図4に示すように、型フレーム106の端部側から中央側に向かうに従って第2成形型102(成形面102A)から離間するよう斜めに延在している。
【0030】
一方、スライド型104には、図4に示すように、第1成形型100に対面する型面に開放して、設置支持部40を成形するための成形凹部120が凹設されている。この成形凹部120は、前述した取付ボス42を成形するための第1成形部122と、前述したスリット44を含むリブ52を成形するための第2成形部124とを有しており、成形型M1を型閉めした際には(図4)、内部に画成されるキャビティDの一部を構成するようになる。なお、第1成形部122および第2成形部124は連通しており、該第1成形部122は、第1壁部分20Aに対応するスライド型104の壁面(図4では水平部分)に開口しており、第2成形部124も、第1壁部分20Aに対応する該スライド型104の壁面(図4では水平部分)に開口している。すなわち第1成形部122は、成形される基材20における第1壁部分20Aの裏側において、第3壁部分20Cの後端縁部を通って第1壁部分20Aの裏面に直交する基準線Hから第2壁部分20Bまでの部位(図1におけるN)に対応する位置に臨んでおり、第2成形部124は、第1成形部122より第2壁部分20Bから遠い位置において第1壁部分20Aの裏側に臨んでいる。
【0031】
前述のように構成された成形型M1を使用して実施例の基材20を成形する場合には、先ず図4に示すように、第2成形型102に対して型フレーム106を最大に離間させ、突出しロッド108の先端を第2成形型102の成形面102Aと面一とすると共に、スライド型104を第2成形型102に密着させたもとで、第1成形型100に対して第2成形型102を型閉めする。そして、成形型M1内に画成された成形凹部120を含むキャビティD内へ、溶融した所要量の合成樹脂材料を射出して固化させることで、第1壁部分20Aと、第1壁部分20Aの端縁部から該第1壁部分20Aの後方に向け折曲的に形成された第2壁部分20Bと、第2壁部分20Bの後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分20Cとを備えた基材20を成形する。
【0032】
キャビティDで合成樹脂材料が固化したら、図5に示すように、第1成形型100から第2成形型102を離間させ、成形型M1を型開きする。更に、図6に示すように、型フレーム106を第2成形型102に向けて移動させ、突出しロッド108を第2成形型102の成形面102Aから突出させて基材20の第1壁部分20Aを裏側から押すと共に、スライド型104を第2成形型102から延出させ、基材20を第2成形型102の成形面102Aから徐々に離間させる。
【0033】
そして、基材20を第2成形型102から脱型するに際しては、設置支持部40の取付ボス42およびスリット44を成形する成形凹部120を設けたスライド型104が、第1壁部分20Aおよび第2壁部分20Bの両方から相対的に離間する方向へ移動するので、該取付ボス42およびスリット44が該スライド型104の移動方向を指向するように形成される。すなわち、第1壁部分20Aおよび第2壁部分20Bの両方から相対的に離間するスライド型104の移動方向とは、図6に示すように、該第1壁部分20Aに対して斜め方向であるから、設置支持部40の取付ボス42およびスリット44は、何れも第1壁部分20Aに対し傾斜し、かつ同一方向を指向するように形成される。更に、取付ボス42は、成形された基材20における第1壁部分20Aの裏側において、第3壁部分20Cの後端縁部を通って第1壁部分20Aの裏面に直交する基準線Hから第2壁部分20Bまでの部位Nに基端部が位置するように形成され、スリット44は、該取付ボス42より第2壁部分20Bから遠い位置において第1壁部分20Aの裏側に形成される。
【0034】
前述した成形型M1により成形された実施例の車両内装部材10の基材20は、図2および図3に示すように、第1壁部分20Aの裏側に設けた設置支持部40の取付ボス42およびスリット44に対して基材20の後側から取付台座部材60を取付けるに際し、取付ボス42に対するタッピングネジSのねじ込み方向とスリット44に対する鉤状板部66の係止方向とが同じであるため、設置支持部40に対する当該取付台座部材60の取付け作業を簡易かつ適切に行なうことができる。しかも、タッピングネジSを取付ボス42にねじ込むと共に鉤状板部66をスリット44に係止させる形態であるから、設置支持部40に対して取付台座部材60を確実に装着し得る。また、取付ボス42およびスリット44を含む設置支持部40をスライド型104で成形するため、これら取付ボス42およびスリット44の配設間隔を小さくすることができ、これに伴って取付台座部材60の小型化を図り得る。
【0035】
また、第1壁部分20Aの第2壁部分20Bに近い位置に、設置支持部40の取付ボス42およびスリット44が設けられているので、図1に示すように、設置支持部40に装着した取付台座部材60は、基材20のアンダーカット形状を有する壁部(第2壁部分20Bおよび第3壁部分20C)に近い位置に取付けられる。従って、取付台座部材60に装着されたクリップCと第3壁部分20Cとの間隔Lを小さくできるので、クリップCを車体Bの係止孔B1へ嵌合させて基材20を該車体Bへ取付けた場合に、第2壁部分20Bに隣接した第1壁部分20Aや該第2壁部分20Bおよび第3壁部分20Cの熱履歴等による変形を好適に規制でき、該第3壁部分20Cと車体Bとの間に隙間が形成されることを防止できる。
【0036】
更に、設置支持部40に対する取付台座部材60の装着方向と、車体Bに対する基材20の組付け方向とが異なっているので、取付ボス42およびスリット44からなる設置支持部40がアンダーカット形状を有する壁部(第2壁部分20Bおよび第3壁部分20C)に近接して設けられていても、該第3壁部分20Cが邪魔になることなく、設置支持部40に対して取付台座部材60を好適に取付けることができる。また、基材20を車体Bに組付ける際は、第1壁部分20Aを車体Bに向けて押すと、取付ボス42とリブ52の第1当接部52Aとを介して取付台座部材60が支えられるので、車体Bの係止孔B1に対するクリップCの嵌合が効率的になされる。また更に、基材20を車体Bから取外す際には、第1壁部分20Aを車体Bから引っ張ると、取付ボス42とリブ52の第2当接部50Bとが取付台座部材60を支えるようになるので、車体Bの係止孔B1からのクリップCの脱抜に対して、基材20に対する取付台座部材60の取付強度を充分に確保することができる。
【0037】
(変更例)
前述した実施例では、取付ボス42を第1壁部分20Aの裏側に設けると共に、スリット44を、該取付ボス42より第2壁部分20Bから遠い位置において第1壁部分20Aの裏側に設けた場合を例示したが、これら取付ボス42およびスリット44の位置関係は、実施例の形態に限定されない。図8は、設置支持部40における取付ボス42を、第1壁部分20Aの裏側に設けると共に、スリット44を、該取付ボス42より第2壁部分に近い位置において第1壁部分20Aの裏側に設け、これら取付ボス42およびスリット44を、第1壁部分20Aに対し傾斜して、かつ同一方向を指向するように設けたものである。更に、スリット44の位置(スリット44と鉤状板部66との係止位置)は、第3壁部分20Cの後端縁部を通って第1壁部分20Aの裏面に直交する基準線Hから第2壁部分20Bまでの部位Nに位置するように設けてある。取付ボス42およびスリット44の位置を図8のように設定しても、設置支持部40がアンダーカット領域に臨むように設けられると共に、鉤状板部66とスリット44との係止形態および取付ボス42とタッピングネジSとの締結形態は前述した実施例と同じであるから、実施例と同様の作用効果が得られる。
【0038】
図9は、設置支持部40における取付ボス42を第1壁部分20Aの裏側に設けると共に、スリット44を第2壁部分20Bの裏側に設け、これら取付ボス42およびスリット44を、第1壁部分20Aに対し傾斜して、かつ同一方向を指向するように設けたものである。取付ボス42およびスリット44の位置を図9のように設定しても、設置支持部40がアンダーカット領域に臨むように設けられると共に、鉤状板部66とスリット44との係止形態および取付ボス42とタッピングネジSとの締結形態は前述した実施例と同じであるから、実施例と同様の作用効果が得られる。なお、第1壁部分20Aの裏側に設けられる取付ボス42は、前述した実施例および図9に示した変更形と同様に、基端部が部位Nに位置するように設けることも可能である。
【0039】
なお、図8および図9に示した各変更例に係る設置支持部40は、図4に示した成形型M1のスライド型104に設けられる成形凹部120の位置および形状を変更することで、好適に成形することが可能である。
【0040】
前述した実施例では、設置支持部40における取付ボス42とスリット44とが、リブ50,52で一体的に連設された形態を例示したが、これら取付ボス42およびスリット44とは、個別に単独で設けるようにしてもよい。また実施例では、図3に示したように、取付ボス42およびスリット44を設けたリブ52を、一列に整列した状態に設けた場合を例示したが、これら取付ボス42およびスリット44は互い違いとなるように設けてもよい。また、取付ボス42およびスリット44の個数は、実施例に示した数に限定されるものではなく、取付台座部材60の形状、サイズに基づいて適宜増減される。
【0041】
更に、前述した実施例では、締結部である取付ボス42に取付台座部材60の当接板部64を締結するための締結手段として、該取付ボス42に対してタッピングネジSをねじ込むようにした締結形態を例示したが、この締結部の締結形態はこれに限るものではない。例えば、取付ボス42の頂部に該取付ボス42より小径のボス部を形成し、この小径のボス部を取付台座部材60の当接板部64に穿設した挿通孔70に挿通して突出させ、突出した該ボス部を溶融させて熱カシメする締結形態等としてもよい。
【0042】
本発明に係る車両内装部材は、第1壁部分と、前記第1壁部分の端縁部から該第1壁部分の後方に向け折曲的に形成された第2壁部分と、前記第2壁部分の後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分とを備えた基材を、車体嵌合手段を装備した取付部材により車体に固定するもので、例えばリアサイドトリム、ドアトリム、ピラーガーニッシュおよびリアゲートトリム等として好適に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例に係る車両内装部材を、基材裏側に設けた設置支持部に固定した取付台座部材を使用して車体に組付けた状態で示した部分断面図。
【図2】基材の裏側に設けた設置支持部に対して取付台座部材を装着する状態を示した説明断面図。
【図3】基材の裏側に設けた設置支持部に対して取付台座部材を装着する状態を示した説明斜視図。
【図4】実施例の基材を成形するための成形型を、キャビティ内で該基材を成形している状態で示した部分断面図。
【図5】基材の成形完了後に、第1成形型から第2成形型を離間させて型開きした状態を示した説明断面図。
【図6】型フレームを第2成形型へ近接移動させることで、第1壁部分および第2壁部分の両方から相対的に離間する方向へスライド型が移動することを示した説明断面図。
【図7】第1壁部分および第2壁部分の両方から相対的に離間する方向へスライド型を移動させることで、基材の裏側に設置支持部が形成された状態を示した説明断面図。
【図8】設置支持部の変更例を示した説明断面図。
【図9】設置支持部の別変更例を示した説明断面図。
【図10】種々の車両内装部材を設置した車両乗員室の概略図。
【図11】車両内装部材であるリアサイドトリムの背面図。
【図12】図11のX−X線断面図であって、基材に一体成形した取付台座部を示している。
【図13】図11のXI−XI線断面図であって、取付台座部材を取付けるために基材に設けた設置支持部の形態を示している。
【符号の説明】
【0044】
20 基材,20A 第1壁部分,20B 第2壁部分,20C 第3壁部分,
42 取付ボス(柱状突起、締結部),44 スリット(切り欠き、係止部),
52 リブ,52A 第1当接部,52B 第2当接部,60 取付台座部材(取付部材),
64 当接板部(第1取付部),66 鉤状板部(第2取付部),
S タッピングネジ(締結手段),C クリップ(車体嵌合手段),H 基準線,N 部位
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内装部材の製造方法に関し、更に詳細には、第1壁部分と、前記第1壁部分の端縁部から該第1壁部分の後方に向け折曲的に形成された第2壁部分と、前記第2壁部分の後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分とを備えた基材を、車体嵌合手段を装備した取付部材により車体に固定する車両内装部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両における乗員室内には、図10に示すように、例えばリアサイドトリム12、ドアトリム14、ピラーガーニッシュ16およびリアゲートトリム18等の種々の車両内装部材10が、該乗員室内の側から車体Bへ組付けられている。これら車両内装部材10は、車体の金属部分が乗員室内へ露出しないように被覆するため、比較的大型でかつ複雑な凹凸形状に形成される場合が多く、一般的にはインジェクション成形技術により成形された合成樹脂製の基材20を主体としている。図11は、前述したリアサイドトリム12の裏面を概略的に示した背面図であって、該リアサイドトリム12を含む前述の車両内装部材10は、裏面の所要位置に複数のクリップ(車体嵌合手段)Cを設けてある。従って車両内装部材10は、これらクリップCを車体Bに設けた各係止孔B1(図12および図13参照)へ対応的に突入して嵌合させることで、該車体Bに対して取外し可能に組付けられる。
【0003】
前述した車両内装部材10は、基材20の裏面が複雑な凹凸形状に形成されているため、車体Bに組付けた際の基材20と車体Bとの間隔が各部位毎に異なっている。従って基材20の裏面には、図12および図13に示すように、所謂「やぐら形状」をなす所要高さの取付台座部22または取付台座部材(取付部材)24が設けられており、これら取付台座部22の上面および取付台座部材24の上面にクリップCが取付けられている。図12に示した取付台座部22は、基材20の第1壁部分20Aに一体的に形成されたもので、基材20を成形する成形型のスライド機構を利用して成形可能な場合は、このように基材20に一体的に形成することが多い。
【0004】
また、図13に示した取付台座部材24は、基材20とは別体に形成されたもので、隣接した部位に突部や壁部等があって成形型により取付台座部22の成形が不可能な場合は、基材20の付属部材として該基材20とは別体に該取付台座部材24を成形して、後工程において該基材20に組付けるようになっている。このような後組付形態の場合には、基材20の裏面に、柱状突起状のボス部32と、リブ35に形成した切り欠き状のスリット34とからなる設置支持部30を成形し、別体に成形した取付台座部材24に設けた鉤状爪部36をスリット34に係止すると共に、タッピングネジSをボス部32にねじ込んで締結することで、該取付台座部材24を設置支持部30に組付けるよう構成される。なお、車両内装部材を構成する基材の裏側に図13に示すような設置支持部を設け、この設置支持部に対して取付部材等を装着するようにした技術に関しては、例えば引用文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開2004−237763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図13に示した基材20のように、第1壁部分20Aと、該第1壁部分20Aの端縁部から該第1壁部分20Aの後方に向け折曲的に形成された第2壁部分20Bと、該第2壁部分20Bの後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分20Cとを有する形状の場合は、第3壁部分20Cが第1壁部分20Aの後方へ迫り出したアンダーカット形状となっているので、これら第1壁部分20Aの一部と第2壁部分20Bおよび第3壁部分20Cを形成するスライド型38を備えた成形型(図13にはスライド型38のみ図示)により成形される。しかし、従来の成形型では、スライド型38が移動する方向とボス部32の突出方向とが異なっているため、設置支持部30の全体を該スライド型38で成形することができなかった。従って、スリット34およびボス部32からなる設置支持部30は、スライド型38の移動に支障を来たさない位置に形成せざるを得ないことから、第2壁部分20Bからかなり離間した位置において第1壁部分20Aの裏側に設けられていた。設置支持部30を第2壁部分20Bから離間して設けた場合には、図13に示すように、取付台座部材24を第2壁部分20Bの側に傾斜した形状としても、クリップCと第2壁部分20Bとの間隔Lを小さくするには限界がある。間隔Lが大きい場合には、クリップCを利用して基材20を車体Bに組付けた際に、スリット34より第2壁部分20Bの側に位置する第1壁部分20Aや、該第2壁部分20Bおよび第3壁部分20Cの変形が許容され、これら壁部分の熱履歴等に伴う変形を防止できない問題が発生していた。
【0006】
また、スリット34を形成したリブ35の延在方向がスライド型38の移動方向と同一であれば、該スリット34を該スライド型38で成形することも可能である。しかし、スリット34だけをスライド型38で成形した場合には、該スライド型38で成形できないボス部32と該スリット34との配設間隔がむしろ大きくなってしまう。従って、ボス部32とスリット34との配設間隔が大きくなるに伴い、取付台座部材24が大型化してしまう不都合があった。
【0007】
そこで本発明では、基材のアンダーカット形状を有する壁部に近い位置に取付部材を取付けることができると共に、車体に対する基材の着脱を効率的に行ない得るようにした車両内装部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
第1壁部分と、前記第1壁部分の端縁部から該第1壁部分の後方に向け折曲的に形成された第2壁部分と、前記第2壁部分の後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分とを備えた基材を、車体嵌合手段を装備した取付部材により車体に固定する車両内装部材において、
前記第1壁部分の裏側に設けられ、前記取付部材に設けた第1取付部が締結手段により締結される締結部と、
前記第1壁部分または前記第2壁部分の裏側に設けられ、前記取付部材に設けた第2取付部が係止される係止部とを有し、
前記締結部および係止部は、前記第1壁部分に対し傾斜し、かつ同一方向を指向するように設けられたことを要旨とする。
【0009】
従って、請求項1に係る発明によれば、第1壁部分の裏側に設けた締結部および係止部に対して基材の後側から取付部材を取付けるに際し、該締結部に対する第1取付部の締結方向と該係止部に対する第2取付部の係止方向とが同じであるため、当該取付部材の取付け作業を簡易かつ適切に行なうことができる。また、締結部および係止部をスライド型で成形するため、これら締結部および係止部の配設間隔を小さくすることができ、これに伴って取付部材の小型化を図り得る。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記締結部は、前記第3壁部分の後端縁部を通って前記第1壁部分の裏面に直交する基準線から前記第2壁部分までの部位に位置することを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、第1壁部分の第2壁部分に近接した裏側に締結部および係止部が設けられているので、基材のアンダーカット形状を有する壁部に近い位置に取付部材を取付けることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、
前記締結部と前記締結手段との締結方向および前記係止部と前記第2取付部との係脱方向は、前記車体に対する前記車体嵌合手段の組付け方向と交差することを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、締結部および係止部がアンダーカット形状を有する壁部に近接して設けられていても、第3壁部分が邪魔になることなく、これら締結部および係止部に対して取付部材を好適に取付けることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記締結部は、前記締結手段で締結される柱状突起であり、前記係止部は、前記第1壁部分または第2壁部分の裏側に設けたリブに形成された切り欠きであることを要旨する。
従って、請求項4に係る発明によれば、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明の効果に加え、柱状突起である締結部に締結手段を締結することで該締結部に対して第1取付部を適切に固定できると共に、切り欠きである係止部に第2取付部を適切に係止できるため、基材に対して取付部材を確実に取付けることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記リブは、前記係止部から前記第1壁部分の側に位置する第1当接部と、該係止部から前記車体の側に位置する第2当接部とからなることを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、基材を車体に組付ける際は、リブの第1当接部を介して取付部材が支えられるようになり、車体に対する車体嵌合手段の嵌合が効率的になされる。また、基材を車体から取外す際には、リブの第2当接部が取付部材を支えるようになり、車体からの車体嵌合手段の脱抜に対して、基材に対する取付部材の取付強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両内装部材によれば、基材のアンダーカット形状を有する壁部に近い位置に取付部材を取付けることができると共に、車体に対する基材の着脱を効率的に行ない得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る車両内装部材につき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照しながら、以下に説明する。なお実施例では、車両内装部材として、図13に示した従来の基材20と同様に、第1壁部分20A、第2壁部分20Bおよび第3壁部分20Cを有した基材20を例示する。従って、図10〜図14で既出の部材、部位と同一の部材、部位については、同一の符号を付して説明する。
【実施例】
【0016】
実施例の車両内装部材10を構成する基材20は、図4に示すと共に後述する成形型M1により、ポリプロピレン(PP)やガラス繊維強化AS(ASG)等の合成樹脂材料からインジェクション成形されたものである。すなわち基材20は、図1〜図3に示すように、車体Bに組付けた際に乗員室内へ臨む第1壁部分20Aと、第1壁部分20Aの端縁部から該第1壁部分20Aの後方に向け折曲的に形成された第2壁部分20Bと、第2壁部分20Bの後端縁から内側(第1壁部分20Aの後方側)に向け折曲的に形成されて車体Bに近接する第3壁部分20Cとを備えている。なお、説明の便宜上、図1における下方を車両内装部材10の前側(表側)とすると共に上方を後側(裏側)とし、また図1における紙面と直交する方向を該車両内装部材10の上下方向とする。
【0017】
基材20の裏側には、図1〜図3に示すように、車体Bへ組付けるために供される取付台座部材(取付部材)60を装着するための設置支持部40が、該基材20と一体的に形成されている。この設置支持部40は、後述するように、基材20を成形する成形型M1のスライド型104に設けた成形凹部120により、該基材20の裏側に形成されたものである。すなわち設置支持部40は、第1壁部分20Aの裏側に設けられ、取付台座部材60に設けた当接板部(第1取付部)64がタッピングネジ(締結手段)Sにより締結される取付ボス(締結部)42と、この取付ボス42より第2壁部分20Bから遠い位置に設けられ、取付台座部材60に設けた鉤状板部(第2取付部)66が係止されるスリット(係止部)44とを有している。
【0018】
取付ボス42は、図1および図2に示すように、基材20における第1壁部分20Aの裏側に立設された円柱状の突起(柱状突起)であり、取付台座部材60の当接板部64を該取付ボス42の先端部で当て受け得ると共に、前述したタッピングネジSが突入して螺合する有底穴46が先端部に形成されている。この取付ボス42は、第3壁部分20Cの後端縁部を通って第1壁部分20Aの裏面に直交する基準線Hから第2壁部分20Bまでの部位(図1におけるN)に基端部が位置して、該部位Nから先端部に向けて第2壁部分20Bから離間する方向へ所要の角度で傾斜した状態に形成されている。この部位Nは、第3壁部分20Cが第1壁部分20Aの後方へ迫り出していることで形成されたアンダーカット領域である。すなわち取付ボス42は、基材20のアンダーカット領域に基端部が位置するように形成されており、該先端部は基材20の裏側開口部21を指向している。なお取付ボス42は、径方向へ突出して軸方向へ延在する十字状のリブ48,50が一体的に形成され、補強が図られている。
【0019】
スリット44は、基材20の第1壁部分20Aの裏側に立設されたリブ52に所要長に形成されて、該リブ52の端縁部に開口した切り欠きであり、取付台座部材60の鉤状板部66が該開口から嵌入して係止される。このスリット44は、図2に示すように、第1壁部分20Aの裏面に対して所要の角度で傾斜していて、該スリット44の開口部は基材20の裏側開口部21を指向するように形成されている。なお、スリット44が形成されたリブ52は、図2に示すように、該スリット44から第1壁部分20Aの側に位置する第1当接部52Aと、該スリット44から車体Bの側に位置する第2当接部52Bとからなる。
【0020】
従って設置支持部40は、第1壁部分20Aの第2壁部分20Bに近接した裏側に位置し、該設置支持部40を構成する取付ボス42およびスリット44は何れも第1壁部分20Aの裏側に設けられ、かつ該第1壁部分20Aに対して傾斜して同一方向を指向するように設けられている。換言すると、第1壁部分20Aに対する取付ボス42およびスリット44の方向および角度が一致している。すなわち、取付ボス42およびスリット44は、図4に示すと共に後述するように、スライド型104の成形凹部120により成形されるため、成形された基材20を第2成形型M1から脱型するに際して、第1壁部分20Aおよび第2壁部分20Bの両方から相対的に離間するスライド型104の移動方向と同一方向に指向するように形成されている。
【0021】
実施例の設置支持部40は、取付ボス42を補強する前述のリブ50とスリット44を設けたリブ50とは、直線上に整列するように形成されているので、一体的に連設された単一のリブとして構成されている。また、実施例の設置支持部40は、図3に示すように、リブ50,52により連設された取付ボス42およびスリット44が、基材20の上下方向へ所要間隔をおいて2組ずつ設けられている。
【0022】
また、両取付ボス42の間には、これら取付ボス42と同一方向を指向する位置決めボス54が、第1壁部分20Aの裏側に立設されている。この位置決めボス54は、設置支持部40へ取付台座部材60を組付けるに際して、該取付台座部材60に設けた後述の位置決め孔72に整合して突入し得るようになっており、設置支持部40に対する取付台座部材60の位置決めを図るために機能する。更に、スリット44,44を形成した両リブ52,52の間には、該スリット44の延在方向と同一方向に沿った支持面56Aを有した支持リブ56,56が、第1壁部分20Aの裏側に突設されている。これら支持リブ56,56は、設置支持部40へ取付台座部材60を組付けるに際して、該取付台座部材60の部材本体62(後述)の底面に接触して案内すると共に、該設置支持部40に組付けた該取付台座部材60の部材本体62を下方から支持するようになっている。
【0023】
図2および図3に示すように、取付ボス42およびスリット44を裏側開口部21を指向する傾斜状態に設けた設置支持部40に対し、前述した取付台座部材60は、該裏側開口部21を介して斜め方向から装着される。この取付台座部材60は、基材20の後方側を指向するようになる頂部の頂面にクリップCを着脱可能に装着し得るブロック状の部材本体62と、第2壁部分20Bに対向する当接板部64と、部材本体62を基材20に装着する方向と交差する幅方向の両側部分から夫々外方へ延出する鉤状板部66,66とを有した合成樹脂製の一体成形部材である。部材本体62の頂面には、クリップCを装着するための切り欠き状の設置開口部68が形成されており、この設置開口部68にクリップCの軸部が嵌合するようになっている。
【0024】
当接板部64は、図3に示すように、横長のプレート状を呈し、設置支持部40の各取付ボス42,42の先端部へ当接するようになっている。そして、設置支持部40に対する装着方向に対して幅方向へ延出した当接板部64の両側部分には、各取付ボス42,42の有底穴46,46に夫々対応してタッピングネジSの挿通を許容する挿通孔70,70が穿設されている。また、当接板部64の幅方向の中央には、基材20の第1壁部分20Aに設けた前述の位置決めボス54の挿通を許容する位置決め孔72が穿設されている。従って、設置支持部40に対して取付台座部材60を装着するに際し、位置決め孔72を位置決めボス54に整合させることで、各挿通孔70,70を各取付ボス42,42の有底穴46,46に整合させ得るようになっている。
【0025】
鉤状板部66,66は、図3に示すように、設置支持部40に対する取付台座部材60の組付姿勢を基準とした部材本体62の底部から側外方へ延出すると共に、各鉤状板部66の折曲した先端部分は所要量だけ組付け方向の前方へ延出して、全体的には鉤状を呈している。これら鉤状板部66,66は、前述したスリット44,44へ夫々対応的に嵌合し得る厚さに設定されている。また、鉤状板部66,66が対応のスリット44,44に係合した状態においては、両鉤状板部66,66の先端部分は各リブ52,52の外側へ延出するようになるため、設置支持部40に対する取付台座部材60の幅方向の動きを規制し得るようになっている。
【0026】
前述のように構成された取付台座部材60は、図2および図3に示すように、当接板部64を設置支持部40に対向させた向きに把持し、取付ボス42,42およびスリット44,44の延在方向から設置支持部40へ装着するようになっている。先ず、両鉤状板部66,66を対応のスリット44,44の開口部に整合させると共に、位置決め孔72を位置決めボス54に整合させる。鉤状板部66,66および位置決め孔72がスリット44,44および位置決めボス54へ各々整合したら、取付台座部材60を第1壁部分20A側へ更に移動させると、両鉤状板部66,66がスリット44,44へ嵌合し、位置決め孔72が位置決めボス54に嵌合すると共に、当接板部64が各取付ボス42,42の先端に当接する。当接板部64が各取付ボス42,42の先端部に当接すると、これら取付ボス42,42の有底穴46,46と当接板部64の挿通孔70,70とが夫々整合するので、挿通孔70,70を介して有底穴46,46へタッピングネジS,Sをネジ込むことで、部材本体62が支持リブ56,56の支持面56Aに接触するようになり、設置支持部40に対して取付台座部材60が強固に固定される。
【0027】
そして、(1)当接板部64と取付ボス42との締結方向および鉤状板部66とスリット44との係脱方向は、図1に示すように、車体Bに対するクリップCの組付け方向と所要角度で交差している。また、(2)鉤状板部66とスリット44との係止位置は、図1に示すように、車体Bに対するクリップCの組付け方向に沿い、かつ該クリップCを通る平面に臨むように設定されている(図1に一点鎖線で示す)。更に、(3)鉤状板部66とスリット44との係止位置は、取付ボス42に対するタッピングネジSの締結位置よりも、該取付ボス42が指向する方向に離間している。従って、前述した(1)〜(3)により、取付台座部材60を装着した基材20を車体Bに組付ける際には、第1壁部分20Aを車体Bに向けて押すと、取付ボス42とリブ52の第1当接部52Aを介して取付台座部材60が支えられるようになり、車体Bの係止孔B1に対するクリップCの嵌合が効率的になされる構造となっている。一方、取付台座部材60を装着した基材20を車体Bから取外す際には、第1壁部分20Aを車体Bから引っ張ると、取付ボス42とリブ52の第2当接部52Bが取付台座部材60を支えるようになり、係止孔B1からのクリップCの脱抜が効率的になされる構造となっている。すなわち、基材20を車体Bから取外すに際して、取付台座部材60が第1壁部分20Aから離間する方向へ引張られても、取付ボス42が第1壁部分20Aから離間するように引き起こされたり、該取付ボス42と当接板部64との締結が解除されるのを好適に防止し得る構造となっている。
【0028】
次に、前述のように構成された設置支持部40を裏側に設けた基材20を成形するための成形型M1を、図4を参照して説明する。この成形型M1は、基材20の表面意匠形状を再現可能な成形面100Aを有する第1成形型100と、第1成形型100に対して型閉め可能で、基材20の裏面形状を再現可能な第2成形型102と、第2成形型102に対して斜めに往復スライド移動するスライド型104とを有している。
【0029】
第2成形型102は、図示しない作動装置により該第2成形型102に対し近接・離間移動が可能な型フレーム106を有している。この型フレーム106には、成形型M1で成形された基材20を脱型する際に該基材20を突出す突出しロッド108と、スライド型104を第2成形型102のガイド面102Bに沿って移動させる支持ロッド110とを有している。突出しロッド108は、第2成形型102の成形面102Aに対して垂直方向へ貫通するように配設され、一方の端部が型フレーム106に端部固定され、他方の端部が成形面102Aに臨んでいる。また支持ロッド110は、第2成形型102に対して傾斜状態で貫通するように配設され、一方の端部が型フレーム106に設けたガイドレール106Aに対してスライドピン110Aを介して連結され、他方の端部がスライド型104に固定されている。そして、型フレーム106に配設したガイドレール106Aは、基材20の第1壁部分20Aの裏側に対応する第2成形型102の成形面102Aとは平行ではなく、該成形面102Aと所要の角度で斜めに延在している。すなわちガイドレール106Aは、図4に示すように、型フレーム106の端部側から中央側に向かうに従って第2成形型102(成形面102A)から離間するよう斜めに延在している。
【0030】
一方、スライド型104には、図4に示すように、第1成形型100に対面する型面に開放して、設置支持部40を成形するための成形凹部120が凹設されている。この成形凹部120は、前述した取付ボス42を成形するための第1成形部122と、前述したスリット44を含むリブ52を成形するための第2成形部124とを有しており、成形型M1を型閉めした際には(図4)、内部に画成されるキャビティDの一部を構成するようになる。なお、第1成形部122および第2成形部124は連通しており、該第1成形部122は、第1壁部分20Aに対応するスライド型104の壁面(図4では水平部分)に開口しており、第2成形部124も、第1壁部分20Aに対応する該スライド型104の壁面(図4では水平部分)に開口している。すなわち第1成形部122は、成形される基材20における第1壁部分20Aの裏側において、第3壁部分20Cの後端縁部を通って第1壁部分20Aの裏面に直交する基準線Hから第2壁部分20Bまでの部位(図1におけるN)に対応する位置に臨んでおり、第2成形部124は、第1成形部122より第2壁部分20Bから遠い位置において第1壁部分20Aの裏側に臨んでいる。
【0031】
前述のように構成された成形型M1を使用して実施例の基材20を成形する場合には、先ず図4に示すように、第2成形型102に対して型フレーム106を最大に離間させ、突出しロッド108の先端を第2成形型102の成形面102Aと面一とすると共に、スライド型104を第2成形型102に密着させたもとで、第1成形型100に対して第2成形型102を型閉めする。そして、成形型M1内に画成された成形凹部120を含むキャビティD内へ、溶融した所要量の合成樹脂材料を射出して固化させることで、第1壁部分20Aと、第1壁部分20Aの端縁部から該第1壁部分20Aの後方に向け折曲的に形成された第2壁部分20Bと、第2壁部分20Bの後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分20Cとを備えた基材20を成形する。
【0032】
キャビティDで合成樹脂材料が固化したら、図5に示すように、第1成形型100から第2成形型102を離間させ、成形型M1を型開きする。更に、図6に示すように、型フレーム106を第2成形型102に向けて移動させ、突出しロッド108を第2成形型102の成形面102Aから突出させて基材20の第1壁部分20Aを裏側から押すと共に、スライド型104を第2成形型102から延出させ、基材20を第2成形型102の成形面102Aから徐々に離間させる。
【0033】
そして、基材20を第2成形型102から脱型するに際しては、設置支持部40の取付ボス42およびスリット44を成形する成形凹部120を設けたスライド型104が、第1壁部分20Aおよび第2壁部分20Bの両方から相対的に離間する方向へ移動するので、該取付ボス42およびスリット44が該スライド型104の移動方向を指向するように形成される。すなわち、第1壁部分20Aおよび第2壁部分20Bの両方から相対的に離間するスライド型104の移動方向とは、図6に示すように、該第1壁部分20Aに対して斜め方向であるから、設置支持部40の取付ボス42およびスリット44は、何れも第1壁部分20Aに対し傾斜し、かつ同一方向を指向するように形成される。更に、取付ボス42は、成形された基材20における第1壁部分20Aの裏側において、第3壁部分20Cの後端縁部を通って第1壁部分20Aの裏面に直交する基準線Hから第2壁部分20Bまでの部位Nに基端部が位置するように形成され、スリット44は、該取付ボス42より第2壁部分20Bから遠い位置において第1壁部分20Aの裏側に形成される。
【0034】
前述した成形型M1により成形された実施例の車両内装部材10の基材20は、図2および図3に示すように、第1壁部分20Aの裏側に設けた設置支持部40の取付ボス42およびスリット44に対して基材20の後側から取付台座部材60を取付けるに際し、取付ボス42に対するタッピングネジSのねじ込み方向とスリット44に対する鉤状板部66の係止方向とが同じであるため、設置支持部40に対する当該取付台座部材60の取付け作業を簡易かつ適切に行なうことができる。しかも、タッピングネジSを取付ボス42にねじ込むと共に鉤状板部66をスリット44に係止させる形態であるから、設置支持部40に対して取付台座部材60を確実に装着し得る。また、取付ボス42およびスリット44を含む設置支持部40をスライド型104で成形するため、これら取付ボス42およびスリット44の配設間隔を小さくすることができ、これに伴って取付台座部材60の小型化を図り得る。
【0035】
また、第1壁部分20Aの第2壁部分20Bに近い位置に、設置支持部40の取付ボス42およびスリット44が設けられているので、図1に示すように、設置支持部40に装着した取付台座部材60は、基材20のアンダーカット形状を有する壁部(第2壁部分20Bおよび第3壁部分20C)に近い位置に取付けられる。従って、取付台座部材60に装着されたクリップCと第3壁部分20Cとの間隔Lを小さくできるので、クリップCを車体Bの係止孔B1へ嵌合させて基材20を該車体Bへ取付けた場合に、第2壁部分20Bに隣接した第1壁部分20Aや該第2壁部分20Bおよび第3壁部分20Cの熱履歴等による変形を好適に規制でき、該第3壁部分20Cと車体Bとの間に隙間が形成されることを防止できる。
【0036】
更に、設置支持部40に対する取付台座部材60の装着方向と、車体Bに対する基材20の組付け方向とが異なっているので、取付ボス42およびスリット44からなる設置支持部40がアンダーカット形状を有する壁部(第2壁部分20Bおよび第3壁部分20C)に近接して設けられていても、該第3壁部分20Cが邪魔になることなく、設置支持部40に対して取付台座部材60を好適に取付けることができる。また、基材20を車体Bに組付ける際は、第1壁部分20Aを車体Bに向けて押すと、取付ボス42とリブ52の第1当接部52Aとを介して取付台座部材60が支えられるので、車体Bの係止孔B1に対するクリップCの嵌合が効率的になされる。また更に、基材20を車体Bから取外す際には、第1壁部分20Aを車体Bから引っ張ると、取付ボス42とリブ52の第2当接部50Bとが取付台座部材60を支えるようになるので、車体Bの係止孔B1からのクリップCの脱抜に対して、基材20に対する取付台座部材60の取付強度を充分に確保することができる。
【0037】
(変更例)
前述した実施例では、取付ボス42を第1壁部分20Aの裏側に設けると共に、スリット44を、該取付ボス42より第2壁部分20Bから遠い位置において第1壁部分20Aの裏側に設けた場合を例示したが、これら取付ボス42およびスリット44の位置関係は、実施例の形態に限定されない。図8は、設置支持部40における取付ボス42を、第1壁部分20Aの裏側に設けると共に、スリット44を、該取付ボス42より第2壁部分に近い位置において第1壁部分20Aの裏側に設け、これら取付ボス42およびスリット44を、第1壁部分20Aに対し傾斜して、かつ同一方向を指向するように設けたものである。更に、スリット44の位置(スリット44と鉤状板部66との係止位置)は、第3壁部分20Cの後端縁部を通って第1壁部分20Aの裏面に直交する基準線Hから第2壁部分20Bまでの部位Nに位置するように設けてある。取付ボス42およびスリット44の位置を図8のように設定しても、設置支持部40がアンダーカット領域に臨むように設けられると共に、鉤状板部66とスリット44との係止形態および取付ボス42とタッピングネジSとの締結形態は前述した実施例と同じであるから、実施例と同様の作用効果が得られる。
【0038】
図9は、設置支持部40における取付ボス42を第1壁部分20Aの裏側に設けると共に、スリット44を第2壁部分20Bの裏側に設け、これら取付ボス42およびスリット44を、第1壁部分20Aに対し傾斜して、かつ同一方向を指向するように設けたものである。取付ボス42およびスリット44の位置を図9のように設定しても、設置支持部40がアンダーカット領域に臨むように設けられると共に、鉤状板部66とスリット44との係止形態および取付ボス42とタッピングネジSとの締結形態は前述した実施例と同じであるから、実施例と同様の作用効果が得られる。なお、第1壁部分20Aの裏側に設けられる取付ボス42は、前述した実施例および図9に示した変更形と同様に、基端部が部位Nに位置するように設けることも可能である。
【0039】
なお、図8および図9に示した各変更例に係る設置支持部40は、図4に示した成形型M1のスライド型104に設けられる成形凹部120の位置および形状を変更することで、好適に成形することが可能である。
【0040】
前述した実施例では、設置支持部40における取付ボス42とスリット44とが、リブ50,52で一体的に連設された形態を例示したが、これら取付ボス42およびスリット44とは、個別に単独で設けるようにしてもよい。また実施例では、図3に示したように、取付ボス42およびスリット44を設けたリブ52を、一列に整列した状態に設けた場合を例示したが、これら取付ボス42およびスリット44は互い違いとなるように設けてもよい。また、取付ボス42およびスリット44の個数は、実施例に示した数に限定されるものではなく、取付台座部材60の形状、サイズに基づいて適宜増減される。
【0041】
更に、前述した実施例では、締結部である取付ボス42に取付台座部材60の当接板部64を締結するための締結手段として、該取付ボス42に対してタッピングネジSをねじ込むようにした締結形態を例示したが、この締結部の締結形態はこれに限るものではない。例えば、取付ボス42の頂部に該取付ボス42より小径のボス部を形成し、この小径のボス部を取付台座部材60の当接板部64に穿設した挿通孔70に挿通して突出させ、突出した該ボス部を溶融させて熱カシメする締結形態等としてもよい。
【0042】
本発明に係る車両内装部材は、第1壁部分と、前記第1壁部分の端縁部から該第1壁部分の後方に向け折曲的に形成された第2壁部分と、前記第2壁部分の後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分とを備えた基材を、車体嵌合手段を装備した取付部材により車体に固定するもので、例えばリアサイドトリム、ドアトリム、ピラーガーニッシュおよびリアゲートトリム等として好適に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例に係る車両内装部材を、基材裏側に設けた設置支持部に固定した取付台座部材を使用して車体に組付けた状態で示した部分断面図。
【図2】基材の裏側に設けた設置支持部に対して取付台座部材を装着する状態を示した説明断面図。
【図3】基材の裏側に設けた設置支持部に対して取付台座部材を装着する状態を示した説明斜視図。
【図4】実施例の基材を成形するための成形型を、キャビティ内で該基材を成形している状態で示した部分断面図。
【図5】基材の成形完了後に、第1成形型から第2成形型を離間させて型開きした状態を示した説明断面図。
【図6】型フレームを第2成形型へ近接移動させることで、第1壁部分および第2壁部分の両方から相対的に離間する方向へスライド型が移動することを示した説明断面図。
【図7】第1壁部分および第2壁部分の両方から相対的に離間する方向へスライド型を移動させることで、基材の裏側に設置支持部が形成された状態を示した説明断面図。
【図8】設置支持部の変更例を示した説明断面図。
【図9】設置支持部の別変更例を示した説明断面図。
【図10】種々の車両内装部材を設置した車両乗員室の概略図。
【図11】車両内装部材であるリアサイドトリムの背面図。
【図12】図11のX−X線断面図であって、基材に一体成形した取付台座部を示している。
【図13】図11のXI−XI線断面図であって、取付台座部材を取付けるために基材に設けた設置支持部の形態を示している。
【符号の説明】
【0044】
20 基材,20A 第1壁部分,20B 第2壁部分,20C 第3壁部分,
42 取付ボス(柱状突起、締結部),44 スリット(切り欠き、係止部),
52 リブ,52A 第1当接部,52B 第2当接部,60 取付台座部材(取付部材),
64 当接板部(第1取付部),66 鉤状板部(第2取付部),
S タッピングネジ(締結手段),C クリップ(車体嵌合手段),H 基準線,N 部位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1壁部分と、前記第1壁部分の端縁部から該第1壁部分の後方に向け折曲的に形成された第2壁部分と、前記第2壁部分の後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分とを備えた基材を、車体嵌合手段を装備した取付部材により車体に固定する車両内装部材において、
前記第1壁部分の裏側に設けられ、前記取付部材に設けた第1取付部が締結手段により締結される締結部と、
前記第1壁部分または前記第2壁部分の裏側に設けられ、前記取付部材に設けた第2取付部が係止される係止部とを有し、
前記締結部および係止部は、前記第1壁部分に対し傾斜し、かつ同一方向を指向するように設けられた
ことを特徴とする車両内装部材。
【請求項2】
前記締結部は、前記第3壁部分の後端縁部を通って前記第1壁部分の裏面に直交する基準線から前記第2壁部分までの部位に位置する請求項1記載の車両内装部材。
【請求項3】
前記締結部と前記締結手段との締結方向および前記係止部と前記第2取付部との係脱方向は、前記車体に対する前記車体嵌合手段の組付け方向と交差する請求項1または2記載の車両内装部材。
【請求項4】
前記締結部は、前記締結手段で締結される柱状突起であり、前記係止部は、前記第1壁部分または第2壁部分の裏側に設けたリブに形成された切り欠きである請求項1〜3の何れか一項に記載の車両内装部材。
【請求項5】
前記リブは、前記係止部から前記第1壁部分の側に位置する第1当接部と、該係止部から前記車体の側に位置する第2当接部とからなる請求項4記載の車両内装部材。
【請求項1】
第1壁部分と、前記第1壁部分の端縁部から該第1壁部分の後方に向け折曲的に形成された第2壁部分と、前記第2壁部分の後端縁部から内側に向け折曲的に形成された第3壁部分とを備えた基材を、車体嵌合手段を装備した取付部材により車体に固定する車両内装部材において、
前記第1壁部分の裏側に設けられ、前記取付部材に設けた第1取付部が締結手段により締結される締結部と、
前記第1壁部分または前記第2壁部分の裏側に設けられ、前記取付部材に設けた第2取付部が係止される係止部とを有し、
前記締結部および係止部は、前記第1壁部分に対し傾斜し、かつ同一方向を指向するように設けられた
ことを特徴とする車両内装部材。
【請求項2】
前記締結部は、前記第3壁部分の後端縁部を通って前記第1壁部分の裏面に直交する基準線から前記第2壁部分までの部位に位置する請求項1記載の車両内装部材。
【請求項3】
前記締結部と前記締結手段との締結方向および前記係止部と前記第2取付部との係脱方向は、前記車体に対する前記車体嵌合手段の組付け方向と交差する請求項1または2記載の車両内装部材。
【請求項4】
前記締結部は、前記締結手段で締結される柱状突起であり、前記係止部は、前記第1壁部分または第2壁部分の裏側に設けたリブに形成された切り欠きである請求項1〜3の何れか一項に記載の車両内装部材。
【請求項5】
前記リブは、前記係止部から前記第1壁部分の側に位置する第1当接部と、該係止部から前記車体の側に位置する第2当接部とからなる請求項4記載の車両内装部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−149782(P2008−149782A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337371(P2006−337371)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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