説明

車両塗装面への新規コーティング方法

【課題】
車両塗装面へのコーティング施工がスポンジ等で塗込んだり、拭きあげも必要としない、非常に簡単で安価なコーティング方法を提供する。
【解決手段】
車両塗面へ吸着が容易なコーティング剤をエアゾール缶に噴射剤と共に封入し、塗面に直接エアゾールスプレーするのでなく、車両塗面に水道ホースに取り付けた市販の散水スプレーで水を噴霧している中にミスト状にエアゾール噴霧をしながら、かつ噴霧物の拡散角度が5〜60度で、車両塗面にコーティングするコーティング方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両塗装面へ水道ホースに取り付けた散水スプレーから噴霧される水の中に、エアゾール缶に噴射剤とともに封入されたコーティング剤をミスト状に噴霧しながら、車両塗装面にコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両塗装面のコーティング方法としては、コーティング剤をスポンジ等で塗込んだり、トリガースプレーで噴霧後拭き上げする必要があり、作業に手間がかかる煩雑な方法が一般的であった。
【0003】
この問題を解決するために、特許文献1、特許文献2、特許文献3で提案された洗車機を用いた方法またはス
プレー洗車などの設備を使用することで作業の手間が大幅に緩和された。しかしこれら機器を設備するのに高額な初期費用を要する。
【0004】
この問題を解決するために、水道の蛇口にホースを連結して水道水で希釈する水ポンプ式の専用容器付き散水スプレーでコーティング剤を噴霧するコーティング方式により、費用は大幅に減少したが、噴霧される水の中でのコーティング剤が均一に混和し難くそのためにムラを生じ易いこと、またコーティング剤の使用量が増えるなど不経済となった。またコーティング剤をその都度散水スプレーの専用容器に注入し水道ホースに装着しなければならず、また水すすぎの際には先端ノズル部分を脱着する作業を要するなど煩雑な作業が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開平8−188745公報
【特許文献2】特開2001−49189公報
【特許文献3】特開2006−291012公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、安価で作業が容易なコーディング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は下記第一の発明から第四の発見によって達成される。
【0008】
<第一の発見>
車両塗装面へ水道ホースに取り付けた散水スプレーから噴霧される水の中に、エアゾール缶に噴射剤とともに封入されたコーティング剤をミスト状に噴霧しながら、車両塗装面にコーティングする方法。
【0009】
<第二の発見>
エアゾール噴射物がミスト状(霧状)に噴霧される第一の発見記載のエアゾール方式のコーティング方法。
【0010】
<第三の発見>
第一の発明と第二の発明乃エアゾール缶の噴射物の噴霧状に広がる拡散角度が、5〜60度であることを特徴とする、エアゾール方式のコーティング方法。
【0011】
<第四の発見>
第一の発明から第三の発見乃エアゾール缶の噴射剤が液化石油ガス、ジメチルエーテル、窒素、炭酸ガス、およびそれら一種類または二種類以上を使用するエアゾール缶封入コーティング剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコーティング方法により、初期費用の発生が軽減され、かつコーティング剤使用量が削減され経済的になり、また作業内容が簡便化された。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のエアゾール缶に使用される容器は公知のエアゾール用耐圧容器を用いることができる。
【0014】
エアゾール缶に使用される容器としては特に限定はなく、金属、ガラス、合成樹脂等が挙げられ、好ましくはアルミ缶などの金属缶が挙げられる。
【0015】
本発明のエアゾール缶に用いる噴射剤としては、公知の圧縮ガスを用いることができる。
【0016】
圧縮ガスとしては、液化石油ガス、ジメチルエーテル、窒素、炭酸ガスが挙げられ、安価な液化石油ガスが好ましい。
【0017】
噴射剤は、一種類または二種類以上用いることができる。コーティング剤と噴射剤の配合割合によりエアゾール缶のエアゾール噴射物をミスト状(霧状)に調整できる。特に制限はないが、コーティング剤と噴射剤の配合割合は容量比で20/80〜80/20である。好ましくは40/60〜60/40である。
【0018】
コーティング剤には特に制限はないが、一般には変性シリコーン、特にアミノ変性シリコーンの水性エマルションが好適に使用される。
【0019】
上記アミノ変性シリコーン水性エマルションには界面活性剤が使用されており、エアゾール噴霧物がミスト状に調整が困難な場合、特に限定されないが、消泡剤、低級アルコール、水性溶剤等を本発明の目的を損なわない範囲でコーティング剤に更に含有させることができる。
【0020】
更に、コーティング剤に脱イオン水、色素、顔料等の着色剤、香料、防錆剤、金属封鎖剤、pH調整剤等の成分を含有できる。
【0021】
本発明のエアゾール缶の噴射物の噴霧状に広がる拡散角度は、5〜60度が好ましく、さらに5〜40度が好ましく、より5〜20度が好ましい。
【0022】
拡散角度が5度以下では散水された水の中に噴霧されたコーティング剤が均一に混和され難く、コーティング剤の使用量が増え不経済でまたムラが生じ易く、また60度以上では噴霧される水の中にコーティング剤が混和される割合が減少し、大気中への放出割合が増加し不経済である。
【0023】
拡散角度の調整は、噴射剤の種類、バルブボタン等で調整することができる。
【0024】
本発明の車両塗装面へ水道ホースに取り付けた市販の散水ノズルから噴霧される水の中にコーティング剤と噴射剤が共に封入されたエアゾール缶を噴霧しながら車両塗装面にコーティングする方法としては、散水される水の方向に対してエアゾール缶から噴霧される噴霧物が0〜90度の方向に交差するように噴霧することが好ましく、より0〜30度が好ましく、更に0〜20度より好ましい。
【0025】
上記散水スプレーとエアゾール缶の位置関係は、エアゾール缶は散水スプレーの左右上下または散水される水の中で直接噴霧されることには(散水される水と噴霧物の交差角度が0度)、特に制限されない。
更に、散水スプレーされる水とエアゾール缶から噴霧される噴霧物とが交差する点は特に制限されないが、散水スプレーノズルから先端〜50cm当たりが好ましい。50cm以上では散水される水へのコーティング剤の混和が不十分な場合が生じ易い。更に先端〜20cmが好ましい。
【0026】
本発明の車両塗装面へ水道ホースに取り付けた市販の散水ノズルから噴霧される水の量は、毎秒50cc〜400ccが望ましく、より毎秒70cc〜200cc、更に毎秒90cc〜150ccが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0028】
<実施例1>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=60/40vol%、拡散角度が約5〜10度となるように調整し、試験塗面に散水される水の中で直接噴霧した。(散水される水と噴霧物の交差角度が0度)
<実施例2>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=60/40vol%、拡散角度が約20〜30度となるように調整し、試験塗面に散水される水の方向に対してエアゾール缶から噴霧される噴霧物が5度に交差するように噴霧した。
<実施例3>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=60/40vol%、拡散角度が約20〜30度となるように調整し、試験塗面に散水される水の方向に対してエアゾール缶から噴霧される噴霧物が20度に交差するように噴霧した。
<実施例4>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=40/60vol%、拡散角度が約5〜10度となるように調整し、試験塗面に散水される水の方向に対してエアゾール缶から噴霧される噴霧物が30度に交差するように噴霧した。
<実施例5>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=60/40vol%、拡散角度が約20〜30度となるように調整し、試験塗面に散水される水の方向に対してエアゾール缶から噴霧される噴霧物が30度に交差するように噴霧した。
<実施例6>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=60/40vol%、拡散角度が約10〜20度となるように調整し、試験塗面に散水される水の方向に対してエアゾール缶から噴霧される噴霧物が10度に交差するように噴霧した。
<実施例7>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=60/40vol%、拡散角度が約10〜20度となるように調整し、試験塗面に散水される水の方向に対してエアゾール缶から噴霧される噴霧物が10度に交差するように噴霧した。
<実施例8>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=70/30vol%、拡散角度が約20〜30度となるように調整し、試験塗面に散水される水の方向に対してエアゾール缶から噴霧される噴霧物が20度に交差するように噴霧した。
<比較例1>下記の表1に示したコーティング剤を、試験塗面に水流ポンプ方式の専用容器につき希釈散水スプレー(ギルモア社製)にいれ水道水で128倍に希釈にて噴霧した。
<比較例2>下記の表1に示したコーティング剤を比較例1と同様に噴霧した。
<比較例3>下記の表1に示したコーティング剤を比較例1と同様に噴霧した。
<比較例4>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=60/40vol%、拡散角度が約70〜90度となるように調整し、試験塗面に散水される水の方向に対してエアゾール缶から噴霧される噴霧物が90度に交差するように噴霧した。
<比較例5>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=60/40vol%、噴霧物がストレート状に噴霧されるように調整し、試験塗面に散水される水の方向に対してエアゾール缶から噴霧される噴霧物が10度に交差するように噴霧した。
<比較例6>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=60/40vol%、拡散角度が約10〜20度となるように調整し、試験塗面に直接噴霧し水すすぎした。
<実施例7>下記の表1に示したコーティング剤をコーティング剤/LPG=60/40vol%、拡散角度が約10〜20度となるように調整し、試験塗面に直接噴霧し水すすぎした。
【0029】
<試験方法>
30cm×30cmの黒色ソリッド塗装の塗板をワックス除去剤で洗浄し、水濡れ状態に調整する。塗板を円
柱型容器内に垂直に立て懸け、実施例1〜8および比較例1〜7条件下でコーティング剤使用量、使用水量、所要時間とムラの有無を測定した。
<コーティング剤使用量評価方法>
撥水状態が発現するまでに使用されたコーティング剤重量を測定。
<使用水量測定方法>
試験後に円柱型容器内に溜まった水の重量を測定。
<所要時間測定方法>
コーティング剤噴霧から撥水状態が発現するまでに要した時間を測定。
<ムラの判定方法>
撥水状態が発現した塗面の水滴を拭取り、ムラが全くない状態を○、一部ムラが確認される状態を△、塗面全体にムラがある場合は×とする。
<ムラの判定方法>
市販スプレーは、タカギ製ノズルファイブRS使用し、散水量はシャワー使用で100cc/秒にて噴霧。
【0030】
以上の試験結果を下記表1に示した。
【0031】

【0032】
表1から明らかのように、本発明のコーティング方法は、容易な作業でしかも安価にコーティング処理を施せることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のコーティング方法は、洗車機等を敷地の制限や費用の問題で設置することが出来ないガソリンスタンドにおいて、顧客に簡単、容易にコーティングサービスを提供出来、また一般カーオーナー自身でも簡単にコーティング出来るようになったことから、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は車両塗装面へ水道ホースに取り付けた散水スプレーから噴霧される水の中に、エアゾール缶に噴射剤とともに封入されたコーティング剤をミスト状に噴霧しながら、車両塗装面にコーティングする方法に関する。
【請求項2】
エアゾール噴射物がミスト状(霧状)に噴霧される第一の発見記載のエアゾール方式のコーティング方法。
【請求項3】
第一の発明と第二の発明乃エアゾール缶の噴射物の拡散角度が、5〜60度であることを特徴とする、エアゾール方式のコーティング方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のエアゾール缶の噴射剤が圧縮ガスとして液化石油ガス、ジメチルエーテル、窒素、炭酸ガス、およびそれらを一種類または二種類以上を使用するエアゾール缶封入コーティング剤。

【公開番号】特開2011−235257(P2011−235257A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110811(P2010−110811)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(710001764)株式会社シミズ (3)
【Fターム(参考)】