説明

車両天井内装布帛

【課題】軽量で通気性に富み、圧迫感を与えず、接着施工後も優れたソフトタッチな風合いとクッション性を保持し、接着施工時に伸縮皺が発生せず、綺麗に接着施工することが出来、表面に地模様があってデザイン的にも優れた車両天井内装布帛を得る。
【解決手段】目付け200〜450g/m2 、総厚み2〜4mm、通気度10〜120cc/cm2 ・secの車両天井内装布帛を表経編地と裏経編地を連結糸によって連結した二重経編地として編成する。裏経編地は非メッシュ編組織とする。裏面を構成する裏経編地は2枚筬以上の複数の筬に通された数種類の編糸によって編成する。その複数の中の少なくとも1枚の筬に通された編糸を捲縮繊維によって、又、少なくとも1枚の筬に通された編糸を無捲縮繊維によって構成する。二重経編地のタテ・ヨコの伸び率をそれぞれ10%〜100%とし、タテ・ヨコの伸長後の伸び回復率をそれぞれ15%以下にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両天井基材に接着施工される内装布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両天井内装布帛に関しては、それが燃費節約が求められる車両用であるが故に軽量化が求められ、又、天井基材への接着施工時の自重による垂れ落ち防止のためにも軽量化が求められ、その目付けは概して450g/m2
以下になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
車両天井内装布帛には、それがエンジン等の騒音がこもる狭い車内の内装材であるが故に吸音性が求められ、その通気度は5〜150cc/cm2 ・secに設定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
車両天井内装布帛には、それが手に触れ易く、間近かに目に触れる車内の低い天井に使用されるが故にソフトタッチとクッション性が求められ、又、その接着施工された低い天井から受ける圧迫感を和らげるために、その厚みは概して1〜8mmに設定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
車両天井内装布帛は、天井基材との接着性を高めるために接着面である裏面に起毛処理を施して仕上げられることもある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
従来の車両天井内装材は、上記要求品質特性、即ち、軽量、吸音性(通気度)、ソフトタッチ、クッション性、厚み、接着施工性等の品質特性を満たすために、発泡シート(主にポリウレタン発泡シート)の表面に内装布帛を接着積層すると共に、必要に応じて発泡シートの裏面にも裏布を接着積層して構成されている。
しかし、廃車に伴って生じる天井材の廃棄物を分別回収してリサイクルし易くするために、発泡シート(ポリウレタン発泡シート)を使用せず、ポリエステル繊維その他の単一繊維素材に成り、裏面に起毛処理の施されたトリコット編地をそのまま車両天井内装布帛とすることが望まれる(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−68577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の裏面を起毛したトリコット編地に成る車両天井内装布帛では、その裏面が起毛し易い3〜12針振り組織のシンカーループ面であり(特許文献1・段落[0018]参照)、表面が編目の揃ったニードルループ面となるので、デザイン的に優れた車両天井内装布帛は得難い。
そして、トリコット編地は、シンカーループ面(裏面)への起毛処理によって、ニードルループ面(表面)に繊維の乱れが生じ、その起毛面へのシヤーリング処理が不可避となる(特許文献1・段落[0020]参照)。
【0009】
トリコット編地の裏面を起毛処理して成る車両天井内装布帛では、その起毛された裏面に接着施工のための接着剤を塗布すると、その起毛毛羽は接着剤と一体になった塗膜を形成することになる。
従って、天井基材に応じた形状に裁断直後の車両天井内装布帛、即ち、接着施工前の車両天井内装布帛のソフトタッチやボリューム感は高く評価されるとしても、裏面に接着剤を塗布した接着施工後の車両天井内装布帛では、その裏面の起毛毛羽が接着剤と一体になった塗膜となるので、裏面に起毛処理を施したからと言って、車両天井内装布帛のソフトタッチなクッション性が高められることにはならない。
【0010】
そこで本発明は、軽量で通気性に富み、圧迫感を与えず、接着施工後においても優れたソフトタッチな風合いとクッション性を保持し、接着施工時に伸縮皺が発生することなく綺麗に接着施工することが出来、凹凸地模様があって表面が立体感に富みデザイン的にも優れた車両天井内装布帛を得ることを目的とする。
本発明の他の目的は、裏面に起毛処理を施すとしても、その起毛処理による表面繊維の乱れがなく、従って、起毛処理後のシヤーリング処理を省くことが出来るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る車両天井内装布帛は、車両天井基材に直接接着施工されるものであり、従来品同様に、(a) 布帛全体の目付けが200〜450g/m2
であり、(b) 布帛全体の総厚みが2〜4mmであり、(c) 布帛全体の通気度が10〜120cc/cm2 ・secの編地において、(d) 表経編地と裏経編地を連結糸によって連結して成り、(e) 裏経編地の外面が非メッシュ編組織によるニードルループによって構成され、(f) その裏面を構成する裏経編地が2枚筬以上の複数の筬に通された数種類の編糸によって構成され、その複数の中の少なくとも1枚の筬に通された編糸が捲縮繊維によって構成されており、(g) 裏経編地の通気度が表経編地の通気度よりも少なく120cc/cm2
・sec以下であることを第1の特徴とする。
【0012】
本発明に係る車両天井内装布帛の第2の特徴は、上記第1の特徴に加え、(h) 裏経編地の数種類の編糸の中の少なくとも1種類の編糸が無捲縮繊維によって構成されており、車両天井内装布帛の裏面である裏経編地の外面に起毛処理がなされている点にある。
【0013】
本発明に係る車両天井内装布帛の第3の特徴は、上記第1、第2の何れかの特徴に加え、(i) タテ・ヨコの伸び率がそれぞれ10%〜100%であり、(j) タテ・ヨコの伸長後の伸び回復率がそれぞれ15%以下である点にある。
【0014】
本発明に係る車両天井内装布帛の第4の特徴は、上記第1、第2、第3の何れかの特徴に加え、(k) 裏経編地の通気度が表経編地の通気度の70%以下であり、(l) タテの伸び率とヨコの伸び率の何れか少ない一方の伸び率が多い他方の伸び率の50%以上であり、(m) タテの伸長後の伸び回復率とヨコの伸長後の伸び回復率の何れか少ない一方の伸び回復率が多い他方の伸び回復率の30%以上である点にある。
【0015】
本発明に係る車両天井内装布帛の第5の特徴は、上記第1、第2、第3、第4の何れかの特徴に加え、(n) 表経編地と裏経編地の編糸の単繊維繊度が6dtex以下であり、表経編地と裏経編地の間を連結して空隙層を構成する連結糸の総繊度が、2枚筬以上の複数の筬に通されて裏経編地を構成している数種類の編糸の中の少なくとも何れか1枚の筬に通された編糸の総繊度よりも細い点にある。
【0016】
本発明に係る車両天井内装布帛の第6の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5の何れかの特徴に加え、(o) 表経編地が2枚筬以上の複数の筬に通された数種類の編糸によって構成されており、その複数の中の少なくとも2枚の筬に通された編糸A・Bがコース方向に互いに逆向きに振り動かされて編み込まれている点にある。
【0017】
本発明に係る車両天井内装布帛の第7の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6の何れかの特徴に加え、(p) 表経編地が3枚筬以上の複数の筬に通された数種類の編糸によって構成されており、(q) その複数の中の少なくとも1枚の筬に通された編糸が捲縮繊維によって構成されている点にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明(第1の特徴)によると、(イ) 車両天井内装布帛が表経編地と裏経編地を連結糸によって連結して編成された二重経編地に成るので、接着施工用接着剤が裏経編地に浸透するとしても表経編地に滲み出ることなく、表経編地が接着施工用接着剤に左右されることなく生地のままのソフトタッチな触感・風合いを保持し、(ロ) 表経編地と裏経編地の間に連結糸によって構成される空隙層が介在するので車両天井内装布帛の表面のクッション性がよくソフトタッチになり、(ハ) 裏経編地が非メッシュ編組織によって構成されており、布帛全体の総厚みが2mm以上なので、裏経編地に接着施工用接着剤が滲み込んでも、表経編地に隠蔽されて表面に露顕することがない。
そして、(ニ) 裏面を構成する裏経編地が2枚筬以上の複数の筬に通された数種類の編糸によって構成され、その複数種類の編糸の中の少なくとも1枚の筬に通された編糸が捲縮繊維によって構成されているので、裏経編地が嵩高になり、接着施工用接着剤が裏経編地に吸収され、車両天井内装布帛の表面への滲み出しが抑えられる。
更に、(ヘ) 裏経編地の通気度が表経編地の通気度よりも少なく120cc/cm2 ・sec以下である点でも接着施工用接着剤が裏経編地から滲み出し難く、表経編地の通気度が裏経編地の通気度よりも高くすれば、車両天井内装布帛をソフトタッチにし易く、車両天井内装布帛の吸音性も高まる。
【0019】
本発明(第2の特徴)によると、(ト) 裏経編地の外面に起毛処理を施す場合には、その起毛毛羽によって接着施工用接着剤の裏経編地への浸透が抑えられ、風合いを損なうことなく車両天井内装布帛を接着施工することが出来る。
そして、(チ) 表経編地と裏経編地の間に連結糸を介して隔てられた空隙層があることから裏経編地の外面への起毛処理によって表経編地のシンカーループSa・Sb・ScやニードルループNの繊維が乱れることがなく、その裏経編地の外面への起毛処理後のシヤーリング後処理が不要となる。
又、(リ) 裏経編地に嵩高に膨らんで起毛針が引っ掛かり易い捲縮繊維が使用されているので起毛し易い一方、その裏経編地に嵩が低く起毛針が引っ掛かり難い無捲縮繊維が使用されているので異常に毛羽立つことがなく、過剰起毛によって裏経編地が破れるような不具合は回避される。
【0020】
本発明(第3の特徴)によると、(ヌ) タテ・ヨコの伸び率がそれぞれ10%〜100%であるので、天井基材の起伏に追随させて接着施工し易く、接着施工後においては、(ル) タテ・ヨコの伸長後の伸び回復率がそれぞれ15%以下であるため、伸長して接着施工中に生じる収縮応力によって反り上がったり剥離することなく、車両天井内装布帛を天井基材に綺麗に接着施工することが出来る。
【0021】
本発明(第4の特徴)によると、(オ) 裏経編地の通気度が表経編地の通気度の70%以下であり、裏経編地と表経編地を合わせた編地全体の通気度が120cc/cm2
・sec以下であるので、接着施工用接着剤が裏経編地に滲み出し難い。
又、(ワ) タテの伸び率とヨコの伸び率の何れか少ない一方の伸び率が多い他方の伸び率の50%以上であり、タテの伸長後の伸び回復率とヨコの伸長後の伸び回復率の何れか少ない一方の伸び回復率が多い他方の伸び回復率の30%以上であるので、タテ・ヨコ方向に均等に伸長して綺麗に接着施工することが出来る。
【0022】
本発明(第5の特徴)によると、(カ) 表経編地と裏経編地の編糸の単繊維繊度が6dtex以下であり、表経編地と裏経編地の間を連結して空隙層を構成する連結糸の総繊度を、裏経編地を構成している編糸の総繊度よりも細くすると、裏経編地の外面に起毛処理を施しても、その総繊度の細い連結糸のニードルループが総繊度の太い編糸のニードルループの下に隠れ、連結糸のニードルループの繊維が起毛針(針布)に引っ掻き出されず、連結糸を介して表経編地が裏経編地側(空隙層)へと起毛針(針布)によって引っ張り込まれることはなく、表経編地に繊維の乱れが生じることがなく、連結糸も表経編地と裏経編地の間の空隙層で直立状態を保つことになるので、表経編地のニードルループが揃って表面が綺麗な車両天井内装布帛が得られる。
【0023】
本発明(第6の特徴)によると、(ヨ) 表経編地が2枚筬以上の複数の筬に通された編糸A・Bによって構成されており、その複数の中の少なくとも2枚の筬に通された編糸A・Bがコース方向に互いに逆向きに振り動かされて編み込まれており、その編糸A・BのシンカーループSa・Sbが交叉した蜂巣状地模様が形成され、表経編地と裏経編地の間に連結糸を介して隔てられた空隙層があることから編糸A・BのシンカーループSa・Sbがその空隙層へと沈み込み、相対的に表経編地のニードルループNが浮き出し、そのニードルループNとシンカーループSa・Sbの間に顕著な凹凸段差が生じ、その表面の蜂巣状編目地模様が立体感を帯び、車両天井内装布帛が見栄えのよいものとなる。
【0024】
本発明(第7の特徴)によると、(タ) 表経編地が3枚筬以上の複数の筬に通された複数種類の編糸によって構成され、その複数種類の編糸の中の少なくとも1枚の筬に通された編糸が捲縮繊維によって構成されているので、表経編地が嵩高になり、接着施工用接着剤が裏経編地に滲み出しても、表経編地に隠蔽されて車両天井内装布帛の表面に露顕せず、(レ) 表経編地が3枚筬以上の複数の筬に通された編糸A・B・Cによって構成されており、編糸A・B・CのシンカーループSa・Sb・Scが隣り合うニードルループNとニードルループNの間で交叉した蜂巣状地模様が明確になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る車両天井内装布帛は、ダブルラッシェル経編機を用いて編成され、そのウエール密度は20ウエール/25.4mmよりも細かく、概して25±5ウエール/25.4mmにし、コース密度は40コース/25.4mmよりも細かく、概して50±5コース/25.4mmにするとよい。
裏経編地の通気度は、表経編地の通気度の60%以下にするとよく、好ましくは裏経編地と表経編地を合わせた編地全体の通気度を60cc/cm2
・sec以下にする。
【0026】
表経編地と裏経編地の編糸や連結糸には、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維が好適に使用される。
表経編地と裏経編地の編糸の単繊維繊度は6dtex以下に、好ましくは4dtex以下にするとよい。
【0027】
表経編地と裏経編地の間を連結して空隙層を構成する連結糸には、総繊度が裏経編地を構成している数種類の何れの編糸の総繊度よりも細く、概して総繊度が20〜60dtexの繊維糸条、好ましくは単繊維繊度が裏経編地を構成している数種類の何れの編糸の単繊維繊度よりも太いフィラメント糸、好ましくはモノフィラメント糸を使用することが推奨される。
何故なら、前記の通り、連結糸の総繊度が裏経編地の編糸の総繊度よりも細ければ、連結糸のニードルループが総繊度の太い編糸のニードルループの下に隠れるので、裏経編地の起毛時に連結糸が掻き出されず、又、連結糸が無捲縮繊維であれば起毛針が引っ掛かり難く、連結糸がモノフィラメント糸であれば起毛針が更に引っ掛かり難くなるからである。
そして、車両天井内装布帛は、肢体を載せて使用されるクッションや敷物とは異なり、肢体を載せることは決してない車両天井に使用されるものであって左程強いクッション性は要求されず、寧ろ、手触りのよいソフトタッチ性が強く要求されるので、その連結糸の総繊度を表経編地や裏経編地の編糸の総繊度よりも細くしても格別不具合を来すことがない。
その総繊度を60dtex以下にすると、表経編地と裏経編地の間の空隙層で直立状態にある連結糸から表経編地の表面に作用する弾撥力が少なく、表経編地の表面がソフトタッチになる。
これらの点を考慮すると、車両天井内装布帛のデザイン性を高め、空隙層による吸音性を高める上でも、連結糸には総繊度が20〜60dtexの無捲縮繊維糸条(フィラメント糸)、好ましくは単繊維繊度が20〜40dtexのモノフィラメント糸を使用することが望まれる。
【0028】
車両天井内装布帛の目付けを200〜450g/m2 とするのは、トリコット経編地にポリウレタンフォームシートや不織布裏材を貼り合わせた在来品がそうであるように、それが450g/m2
を超えると接着施工時に車両天井内装布帛が垂れ落ち易く、接着施工が困難になるからであり、それが200g/m2 未満では、車両天井内装布帛による天井基材に対する隠蔽性が確保し難くなるためである。
【0029】
車両天井内装布帛の厚みを2〜4mmとするのは、それが4mmを超えると、目付けが450g/m2 以下であることからして、車両天井内装布帛の嵩比重が少なくなり過ぎ、僅かに触れただけで表経編地が大きく凹み、内装材として貧弱な印象を与え、その施工された車両天井に圧迫感が感じられるようになるからである。
それとは逆に、厚みが2mm未満になると、表経編地と裏経編地の間の空隙層が少なく、車両天井内装布帛を表経編地と裏経編地との2層構造にする意味がなくなる。
車両天井内装布帛の表面(表経編地)には弗素樹脂系やシリコーン樹脂系の撥水・撥油剤による防汚加工が適宜施される。
車両天井内装布帛の裏面(起毛層)には活性炭や無機系消臭剤による消臭加工が適宜施される。
【0030】
[通気度測定方法]
本発明における車両天井内装布帛の通気度は、JIS−L−1018(8.33.1)法によって測定される。
【0031】
[伸び率測定方法]
本発明における車両天井内装布帛の伸び率は、次の手順で測定し算定される。
(1) 経編地からヨコ方向(コース方向)Xの寸法300mm・タテ方向(ウエール方向)Yの寸法80mmのサイズのヨコ方向伸び率測定用試験片と、ヨコ方向Xの寸法80mm・タテ方向Yの寸法300mmのサイズのタテ方向伸び率測定用試験片を、それぞれ5枚採取する。
(2) 縦長の各試験片の長さ方向の中心点から上下にそれぞれ距離50mmの位置に標点を記入する。
(3) 縦長の各試験片の長さ方向の両端に掴み幅80mmの治具を取り付け、その治具の重量を含む10kgfの荷重を掛けて各試験片を縦長に吊るして10分間経過時点での上下の標点間の距離を測定する。
(4) 10分間経過時点での上下の標点間の距離(単位;mm)と吊るす前の上下の標点間の距離(100mm)との差を、吊るす前の上下の標点間の距離(100mm)で除した値に100を掛けてタテ方向Yの伸び率とヨコ方向Xの伸び率を算定する。
(5) ヨコ方向伸び率測定用とタテ方向伸び率測定用との各5枚の伸び率算定値の中の最大値と最小値を除く3枚の試験片の伸び率算定値の平均値をもって、ヨコ方向伸び率およびタテ方向伸び率とする。
【0032】
[伸び回復率測定方法]
本発明における車両天井内装布帛の伸び回復率は、次の手順で測定し算定される。
(1) 経編地からヨコ方向Xの寸法300mm・タテ方向Yの寸法80mmのサイズのヨコ方向伸び回復率測定用試験片と、ヨコ方向Xの寸法80mm・タテ方向Yの寸法300mmのサイズのタテ方向伸び回復率測定用試験片を、それぞれ5枚採取する。
(2) 縦長の各試験片の長さ方向の中心点から上下にそれぞれ距離50mmの位置に標点を記入する。
(3) 縦長の各試験片の長さ方向の両端に掴み幅80mmの治具を取り付け、その治具の重量を含む10kgfの荷重を掛けて各試験片を縦長に吊るし、10分間経過時点で除重し、水平なテーブルに放置して10分間経過時点での上下の標点間の距離を測定する。
(4) テーブルに放置して10分間経過時点での上下の標点間の距離(単位;mm)と吊るす前の上下の標点間の距離(100mm)との差を、その吊るす前の上下の標点間の距離(100mm)で除した値に100を掛けてタテ方向Yの伸び回復率とヨコ方向Xの伸び回復率を算定する。
(5) ヨコ方向伸び回復率測定用とタテ方向伸び回復率測定用との各5枚の伸回復び率算定値の中の最大値と最小値を除く3枚の試験片の伸び回復率算定値の平均値をもって、ヨコ方向伸び回復率およびタテ方向伸び回復率とする。
二重経編地(車両天井内装布帛)の表経編地と裏経編地の通気度と伸び率と伸び回復率は、表経編地と裏経編地を連結している連結糸をカットして二重経編地を表経編地と裏経編地とに分離して測定される。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
6枚筬L1 ,L2 ,L3 ,L4 ,L5 ,L6
を具備するダブルラッシェル経編機の第1筬L1 と第2筬L2 と第3筬L3 に単繊維繊度2.4dtex・総繊度84dtexのポリエステル捲縮繊維マルチフィラメント糸A・B・Cを表経編地用編糸とし、第1筬L1
と第2筬L2 には筬ニードル1本飛ばしのワンイン・ワンアウト(1in・1out)で通し、第3筬L3 には全ての筬ニードルに通し、第4筬L4
の全ての筬ニードルに単繊維繊度22dtex・総繊度22dtexのポリエステル無捲縮繊維モノフィラメント糸を連結糸として通し、第5筬L5 の全ての筬ニードルに単繊維繊度2.4dtex・総繊度56dtexのポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を、第6筬L6
の全ての筬ニードルに単繊維繊度2.4dtex・総繊度84dtexのポリエステル捲縮繊維マルチフィラメント糸をそれぞれ裏経編地用編糸として通し、第1筬L1
を編パターン/1−0/1−1/1−2/2−2/2−3/2−2/2−1/1−1/………の順に操作し、第2筬L2 を編パターン/2−3/2−2/2−1/1−1/1−0/1−1/1−2/2−2/………の順に操作し、第3筬L3
を編パターン/3−2/1−1/0−1/2−2/………の順に操作し、第4筬L4 を編パターン/2−1/1−0/0−1/1−2/………の順に操作し、第5筬L5
を編パターン/1−1/2−1/1−1/0−1/………の順に操作し、第6筬L6 を編パターン/1−1/0−1/2−2/3−2/………の順に操作し、表経編地と裏経編地が非メッシュ編組織に成り、ウェール密度25W/25.4mm、コース密度53C/25.4mm、目付け279g/m2
、総厚み3.4mmのダブルラッシェル二重経編地を編成して車両天井内装布帛とする。
【0034】
この車両天井内装布帛の通気度は110cc/cm2 ・sec、その表経編地の通気度は230cc/cm2 ・sec、裏経編地の通気度は112cc/cm2
・secであった。
この車両天井内装布帛のタテの伸び率は25%であり、ヨコの伸び率は26%であり、そのタテの伸び率はヨコの伸び率の96.1%であり、その表経編地のタテの伸び率は47%であり、ヨコの伸び率は38%であり、裏経編地のタテの伸び率は47%であり、ヨコの伸び率は47%であった。
この車両天井内装布帛のタテの伸長後の伸び回復率は3%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は5%であり、タテの伸長後の伸び回復率はヨコの伸長後の伸び回復率の60%でありその車両天井内装布帛の表経編地のタテの伸長後の伸び回復率は7%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は8%であり、裏経編地のタテの伸長後の伸び回復率は12%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は15%であった。
【0035】
(実施例2)
6枚筬L1 ,L2 ,L3 ,L4 ,L5 ,L6
を具備するダブルラッシェル経編機の第1筬L1 と第2筬L2 に単繊維繊度2.4dtex・総繊度84dtexのポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸A・Bを表経編地用編糸として筬ニードル1本飛ばしのワンイン・ワンアウト(1in・1out)で通すと共に、第3筬L3
に単繊維繊度2.4dtex・総繊度84dtexのポリエステル捲縮繊維マルチフィラメント糸を表経編地用編糸Cとして全ての筬ニードルに通し、第4筬L4
の全ての筬ニードルに単繊維繊度22dtex・総繊度22dtexのポリエステル無捲縮繊維モノフィラメント糸を連結糸として通し、第5筬L5 の全ての筬ニードルに単繊維繊度2.4dtex・総繊度84dtexのポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を裏経編地用編糸として通すと共に、第6筬L6
の全ての筬ニードルに単繊維繊度3.5dtex・総繊度167dtexのポリエステル捲縮繊維マルチフィラメント糸を裏経編地用編糸として通し、第1筬L1
を編パターン/1−0/1−1/1−2/2−2/2−3/2−2/2−1/1−1/………の順に操作し、第2筬L2 を編パターン/2−3/2−2/2−1/1−1/1−0/1−1/1−2/2−2/………の順に操作し、第3筬L3
を編パターン/3−2/1−1/0−1/2−2/………の順に操作し、第4筬L4 を編パターン/2−1/1−0/0−1/1−2/………の順に操作し、第5筬L5
を編パターン/1−1/2−1/1−1/0−1/………の順に操作し、第6筬L6 を編パターン/1−1/0−1/2−2/3−2/………の順に操作し、表経編地と裏経編地が非メッシュ編組織に成り、ウェール密度25W/25.4mm、コース密度50C/25.4mm、目付け410g/m2
、総厚み3.7mmのダブルラッシェル二重経編地を編成して車両天井内装布帛とする。
【0036】
この車両天井内装布帛の通気度は48cc/cm2 ・sec、表経編地の通気度は222cc/cm2 ・sec、裏経編地の通気度は48cc/cm2
・secであった。
この車両天井内装布帛のタテの伸び率は12%であり、ヨコの伸び率は18%であり、そのタテの伸び率はヨコの伸び率の66.7%であり、その表経編地のタテの伸び率は45%であり、ヨコの伸び率は26%であり、裏経編地のタテの伸び率は40%であり、ヨコの伸び率は38%であった。
この車両天井内装布帛のタテの伸長後の伸び回復率は3%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は5%であり、タテの伸長後の伸び回復率はヨコの伸長後の伸び回復率の60%でありその表経編地のタテの伸長後の伸び回復率は10%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は7%であり、裏経編地のタテの伸長後の伸び回復率は7%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は9%であった。
【0037】
(比較例1)
5枚筬L1 ,L2 ,L4 ,L5 ,L6 を具備するダブルラッシェル経編機の第1筬L1
と第2筬L2 に単繊維繊度2.3dtex・総繊度110dtexのポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を表経編地用編糸として筬ニードル1本飛ばしのツーイン・ツーアウト(2in・2out)として通し、第4筬L4
の全ての筬ニードルに単繊維繊度33dtex・総繊度33dtexのポリエステル無捲縮繊維モノフィラメント糸を連結糸として通し、第5筬L5 と第6筬L6
の全ての筬ニードルに単繊維繊度3.1dtex・総繊度110dtexのポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸をそれぞれ裏経編地用編糸として通し、第1筬L1
を編パターン/4−5/4−4/3−2/3−3/4−5/4−4/3−2/3−3/4−5/4−4/3−2/2−2/1−0/1−1/2−3/2−2/1−0/1−1/2−3/2−2/1−0/1−1/2−3/3−3/………の順に操作し、第2筬L2
を編パターン/1−0/1−1/2−3/2−2/1−0/1−1/2−3/2−2/1−0/1−1/2−3/3−3/4−5/4−4/3−2/3−3/4−5/4−4/3−2/3−3/4−5/4−4/3−2/2−2/………の順に操作し、第4筬L4
を編パターン/0−1/1−2/2−1/1−0/………の順に操作し、第5筬L5 を編パターン/0−0/0−1/1−1/1−0/………の順に操作し、第6筬L6
を編パターン/0−0/4−4/4−4/0−0/………の順に操作し、表経編地がメッシュ編組織で裏経編地が非メッシュ編組織に成り、ウェール密度25W/25.4mm、コース密度46C/25.4mm、目付け298g/m2
、総厚み2.4mmのダブルラッシェル二重経編地を編成して車両天井内装布帛とする。
【0038】
この車両天井内装布帛の通気度は440cc/cm2 ・sec以上であり、その表経編地と裏経編地の通気度もそれぞれ440cc/cm2
・sec以上であった。
この車両天井内装布帛のタテとヨコの伸び率はそれぞれ9%であり、そのタテの伸び率はヨコの伸び率の100%であり、その表経編地のタテの伸び率は30%であり、ヨコの伸び率は55%であり、裏経編地のタテの伸び率は11%であり、ヨコの伸び率は8%であった。
この車両天井内装布帛のタテの伸長後の伸び回復率は1%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は2%であり、タテの伸長後の伸び回復率はヨコの伸長後の伸び回復率の50%でありその表経編地のタテの伸長後の伸び回復率は5%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は12%であり、裏経編地のタテの伸長後の伸び回復率とヨコの伸長後の伸び回復率は共に4%であった。
【0039】
(比較例2)
5枚筬L1 ,L2 ,L4 ,L5 ,L6 を具備するダブルラッシェル経編機の第1筬L1
と第2筬L2 に単繊維繊度2.4dtex・総繊度84dtexのポリエステル捲縮繊維マルチフィラメント糸を表経編地用編糸として筬ニードル3本毎に1本飛ばしのスリーイン・ワンアウト(3in・1out)で通し、第4筬L4
の全ての筬ニードルに単繊維繊度33dtex・総繊度33dtexのポリエステル無捲縮繊維モノフィラメント糸を連結糸として通し、第5筬L5 と第6筬L6
の全ての筬ニードルに単繊維繊度2.4dtex・総繊度84dtexのポリエステル捲縮繊維マルチフィラメント糸をそれぞれ裏経編地用編糸として通し、第1筬L1
を編パターン/2−1/1−1/1−0/1−1/2−3/3−3/3−4/3−3/………の順に操作し、第2筬L2 を編パターン/2−3/3−3/3−4/3−3/2−1/1−1/1−0/1−1/………の順に操作し、第4筬L4
を編パターン/2−1/1−0/0−1/1−2/………の順に操作し、第5筬L5 を編パターン/1−1/2−1/1−1/0−1/………の順に操作し、第6筬L6
を編パターン/1−1/0−1/1−1/2−1/………の順に操作し、表経編地がメッシュ編組織で裏経編地が非メッシュ編組織に成り、ウェール密度25W/25.4mm、コース密度40C/25.4mm、目付け255g/m2
、総厚み3.1mmのダブルラッシェル二重経編地を編成して車両天井内装布帛とする。
【0040】
この車両天井内装布帛の通気度は244cc/cm2 ・sec、その表経編地の通気度は316cc/cm2 ・sec、裏経編地の通気度は400cc/cm2
・sec以上であった。
この車両天井内装布帛のタテの伸び率は33%であり、ヨコの伸び率は69%であり、そのタテの伸び率はヨコの伸び率の47.8%であり、その表経編地のタテの伸び率は66%であり、ヨコの伸び率は70%であり、裏経編地のタテの伸び率は40%であり、ヨコの伸び率は98%であった。
この車両天井内装布帛のタテの伸長後の伸び回復率は1%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は8%であり、タテの伸長後の伸び回復率はヨコの伸長後の伸び回復率の12.5%であり、その表経編地のタテの伸長後の伸び回復率とヨコの伸長後の伸び回復率は共に16%であり、裏経編地のタテの伸長後の伸び回復率は3%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は26%であった。
【0041】
(従来例1)
3枚筬L1 ,L2 ,L3 を具備するトリコット経編機の第1筬L1 の全ての筬ニードルに単繊維繊度2.4dtex・総繊度84dtexのポリエステル捲縮繊維マルチフィラメント糸を編糸として通し、第2筬L2
と第3筬L3 に単繊維繊度2.4dtex・総繊度56dtexのポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を編糸として筬ニードル1本飛ばしのワンイン・ワンアウト(1in・1out)で通し、第1筬L1
を編パターン/1−0/2−3/………の順に操作し、第2筬L2 を編パターン/1−2/2−1/1−0/0−1/………の順に操作し、第3筬L3
を編パターン/1−0/0−1/1−2/2−1/………の順に操作し、非メッシュ編組織に成り、ウェール密度36W/25.4mm、コース密度53C/25.4mm、目付け133g/m2
、総厚み0.6mmのトリコット経編地を編成した。
このトリコット経編地に目付け140g/m2 ×厚み3.0mmのポリウレタンフォームシートと目付け60g/m2 ×厚み0.2mmの不織布裏材を順次貼り合わせ、総目付け333g/m2
、総厚み3.8mmの車両天井内装布帛とする。
【0042】
この車両天井内装布帛の通気度は43.2cc/cm2 ・sec、そのトリコット経編地単体の通気度は171.5cc/cm2
・secであった。
この車両天井内装布帛のタテの伸び率は41%であり、ヨコの伸び率は70%であり、そのタテの伸び率はヨコの伸び率の58.6%であり、そのトリコット経編地単体のタテの伸び率は44%であり、ヨコの伸び率は76%であった。
この車両天井内装布帛のタテの伸長後の伸び回復率は4%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は9%であり、タテの伸長後の伸び回復率はヨコの伸長後の伸び回復率の44.4%であり、そのトリコット経編地単体のタテの伸長後の伸び回復率は11%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は40%であった。
【0043】
(従来例2)
3枚筬L1 ,L2 ,L3 を具備するトリコット経編機の第1筬L1 の全ての筬ニードルに単繊維繊度2.4dtex・総繊度56dtexのポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を編糸として通し、第2筬L2
と第3筬L3 に単繊維繊度1.2dtex・総繊度84dtexのポリエステル捲縮繊維マルチフィラメント糸を編糸として筬ニードル1本飛ばしのワンイン・ワンアウト(1in・1out)で通し、第1筬L1
を編パターン/4−5/1−0/………の順に操作し、第2筬L2 を編パターン/2−3/2−1/1−0/1−2/………の順に操作し、第3筬L3
を編パターン/1−0/1−2/2−3/2−1/………の順に操作し、非メッシュ編組織に成り、ウェール密度34W/25.4mm、コース密度46C/25.4mm、目付け141g/m2
、総厚み0.6mmのトリコット経編地を編成した。
このトリコット経編地に目付け140g/m2 ×厚み2.7mmのポリウレタンフォームシートと目付け30g/m2 ×厚み0.1mmの不織布裏材を順次貼り合わせ、総目付け311g/m2
、総厚み3.4mmの車両天井内装布帛とする。
【0044】
この車両天井内装布帛の通気度は38.5cc/cm2 ・sec、そのトリコット経編地単体の通気度は41.5cc/cm2
・secであった。
そのトリコット経編地単体のタテの伸び率は18%であり、ヨコの伸び率は35%であり、トリコット経編地単体のタテの伸長後の伸び回復率は1.5%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率は9.5%であった。
【0045】
[編目地模様の外観評価]
[実施例1の車両天井内装布帛]
実施例1の車両天井内装布帛では、表経編地が、第1筬L1 と第2筬L2 に編糸Aと編糸Bが筬ニードル1本飛ばしのワンイン・ワンアウト(1in・1out)で通されていても、第3筬L3
の全ての筬ニードルに編糸Cが通された非メッシュ編組織であり、第1筬L1 に通された編糸Aと第2筬L2 に通された編糸Bと第3筬L3
に通された編糸Cが構成するウエール方向に続くニードルループ列Nとニードルループ列Nの間に、それらの編糸Aが構成するシンカーループSaと編糸Bが構成するシンカーループSbと編糸Cが構成するシンカーループScが交叉して現われ、車両天井内装布帛の表面には交叉するシンカーループSa・Sb・ScとニードルループNによる細やかな蜂巣状編目地模様が描出される。
実施例1の車両天井内装布帛では、表経編地と裏経編地の間に連結糸を介して隔てられた空隙層があり、その空隙層へと表経編地のシンカーループSa・Sb・Scが沈み込み、表経編地のニードルループNとシンカーループSa・Sb・Scの間の凹凸段差が顕著になり、表経編地の表面の蜂巣状編目地模様は、その凹凸段差が看取される程度に立体感を帯びたものとなる。
[実施例2の車両天井内装布帛]
実施例2の車両天井内装布帛も、実施例1と同様に、表経編地が、第1筬L1 と第2筬L2 に編糸Aと編糸Bが筬ニードル1本飛ばしのワンイン・ワンアウト(1in・1out)で通されていても、第3筬L3
の全ての筬ニードルに編糸Cが通された非メッシュ編組織であり、表経編地の表面に蜂巣状編目地模様が描出され、表経編地と裏経編地の間に空隙層が介在することから、その蜂巣状編目地模様は、ニードルループNとシンカーループSa・Sb・Scの間の凹凸段差が看取される程度に立体感を帯びたものとなる。
[比較例1の車両天井内装布帛]
比較例1の車両天井内装布帛では、表経編地が第1筬L1 と第2筬L2 の各筬の筬ニードル2本につき1本の割合で表経編地用編糸を飛ばして通されたメッシュ編組織であり、表経編地の表面にはシンカーループとニードルループが表裏するメッシュ孔目の大きい孔開きメッシュ地模様が描出される。
そのメッシュ地模様は、その大きいメッシュ孔底に裏経編地が露顕され、表経編地と裏経編地の間に空隙層の厚みに相当する深い凹凸段差が看取される程度に立体感を帯びたものとなる。
[比較例2の車両天井内装布帛]
比較例2の車両天井内装布帛は、表経編地が第1筬L1 と第2筬L2 に筬ニードル3本毎に1本飛ばしのスリーイン・ワンアウト(3in・1out)、即ち、筬ニードル4本につき1本の割合で編糸が飛ばして通されたメッシュ編組織であり、表経編地の表面にはシンカーループとニードルループが表裏する細かい孔開きメッシュ地模様が描出される。
[従来例1の車両天井内装布帛]
従来例1の車両天井内装布帛は、経編地の裏側(シンカーループ面)に空隙層がなく、ポリウレタンとシンカーループが一体になった接着層になっているので、その裏側のシンカーループがポリウレタンに押し上げられてニードルループとの間に段差が殆どなく、その経編地の編目地模様は平坦で立体感を欠くものとなる。
[従来例2の車両天井内装布帛]
従来例2の車両天井内装布帛の表面の編目地模様も、その経編地の裏側(シンカーループ面)に空隙層がなく、その裏側のシンカーループがポリウレタンに押し上げられてニードルループとの間に段差が殆どなく、平坦で立体感を欠くものとなる。
【0046】
[施工用接着剤滲出度合いの評価]
[実施例1の車両天井内装布帛]
実施例1の車両天井内装布帛では、表経編地と裏経編地の間に連結糸を介して隔てられた空隙層があり、表経編地の通気度が230cc/cm2 ・secであっても裏経編地の通気度が112cc/cm2
・secであり、裏経編地が捲縮繊維によって構成されていて接着施工用接着剤が裏経編地に滲み込み難く、仮に、接着施工用接着剤が裏経編地に滲み込んでも、その滲み込んだ接着施工用接着剤が空隙層を透過して表経編地に滲み出すことはなく、接着施工用接着剤によって車両天井内装布帛の表面が汚損されない。
[実施例2の車両天井内装布帛]
実施例2の車両天井内装布帛も、表経編地の通気度が222cc/cm2 ・secであっても裏経編地の通気度が48cc/cm2
・secであって接着施工用接着剤が裏経編地に滲み込み難く、実施例1と同様に、裏経編地が捲縮繊維によって構成されていて接着施工用接着剤が吸収され易く、又、表経編地と裏経編地の間に連結糸を介して隔てられた空隙層が介在するので、接着施工用接着剤によって車両天井内装布帛の表面が汚損されない。
[比較例1の車両天井内装布帛]
比較例1の車両天井内装布帛では、実施例1・2と同様に、表経編地と裏経編地の間に連結糸を介して隔てられた空隙層があっても、通気度が400cc/cm2
・sec以上であり、而も、裏経編地の通気度が400cc/cm2 ・sec以上であり、裏経編地が無捲縮繊維によって構成されていて接着施工用接着剤が滲み出し易く、仮に、その滲み出た接着施工用接着剤によって車両天井内装布帛の表面が直接汚損されることはないとしても、裏経編地に滲み込んだ接着施工用接着剤が表経編地のメッシュ孔底に露顕し、その裏経編地に滲み込んだ接着施工用接着剤によって車両天井内装布帛の外観が損なわれる。
[比較例2の車両天井内装布帛]
比較例2の車両天井内装布帛は、実施例1・2と同様に、表経編地と裏経編地の間に連結糸を介して隔てられた空隙層があっても、通気度が244cc/cm2
・secであり、而も、裏経編地の通気度が400cc/cm2 ・sec以上であって接着施工用接着剤が滲み出し易く、その接着施工用接着剤が滲み出て車両天井内装布帛の表面に汚点が発生し易い。
[従来例1の車両天井内装布帛]
従来例1の車両天井内装布帛では、接着施工用接着剤の塗布される裏材と経編地の間がポリウレタン層に隔てられているので、裏材に接着施工用接着剤滲み込んでもポリウレタン層に吸収され、車両天井内装布帛の表面に汚点が生じ難い。
[従来例2の車両天井内装布帛]
従来例2の車両天井内装布帛も、比較例1と同様に、接着施工用接着剤の塗布される裏材と経編地の間がポリウレタン層に隔てられているので、裏材に接着施工用接着剤滲み込んでもポリウレタン層に吸収され、車両天井内装布帛の表面に汚点が生じ難い。
【0047】
[天井基材の起伏追随性の評価]
[実施例1の車両天井内装布帛]
実施例1の車両天井内装布帛では、タテの伸び率が25%であり、ヨコの伸び率が26%であり、そのタテの伸び率がヨコの伸び率の96.1%であることから、天井基板の起伏に追随させて均等に伸長し密着施工し易い。
[実施例2の車両天井内装布帛]
実施例2の車両天井内装布帛も、タテの伸び率が12%であり、ヨコの伸び率が18%であり、そのタテの伸び率がヨコの伸び率の66.7%であることから、天井基板の起伏に追随させて均等に伸長し密着施工し易い。
[比較例1の車両天井内装布帛]
比較例1の車両天井内装布帛では、そのタテの伸び率はヨコの伸び率の100%であって均等であるが、タテとヨコの伸び率がそれぞれ9%であって少なく天井基板の起伏に追随し難い。
[比較例2の車両天井内装布帛]
比較例2の車両天井内装布帛では、タテの伸び率が33%であり、ヨコの伸び率が69%であり、そのタテの伸び率とヨコの伸び率との差が大きいのでタテ・ヨコを均等に伸長させて施工し難く、その接着施工面に編目地模様の柄歪みが起き易い。
[従来例1の車両天井内装布帛]
従来例1の車両天井内装布帛では、タテの伸び率が41%であり、ヨコの伸び率が70%であり、そのタテの伸び率はヨコの伸び率との差が若干大きく感じられるが、編目地模様に柄歪みが起きないように注意すれば、天井基板の起伏に追随させて密着施工することは可能である。
[従来例2の車両天井内装布帛]
従来例2の車両天井内装布帛では、そのタテ・ヨコの伸び率を測定していなかったが、天井基板の起伏に追随させて均等に伸長し、編目地模様の柄歪みを伴うことなく密着施工することが出来る。
【0048】
[伸長施工性の評価]
[実施例1の車両天井内装布帛]
実施例1の車両天井内装布帛では、タテの伸長後の伸び回復率が3%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率が5%であり、タテの伸長後の伸び回復率がヨコの伸長後の伸び回復率の60%であることから、伸長施工中に収縮して反り返ることがなく、伸長させて皺を発生させずに施工し易い。
[実施例2の車両天井内装布帛]
実施例2の車両天井内装布帛では、実施例1と同様に、タテの伸長後の伸び回復率が3%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率が5%あり、タテの伸長後の伸び回復率がヨコの伸長後の伸び回復率の60%であることから、伸長施工中に収縮して反り返ることがなく、伸長させて皺を発生させずに施工し易い。
[比較例1の車両天井内装布帛]
比較例1の車両天井内装布帛では、タテの伸長後の伸び回復率が1%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率が2%であっても、タテの伸長後の伸び回復率がヨコの伸長後の伸び回復率の50%であることから、伸長施工中に収縮して反り返ることはないものの、タテとヨコの伸び率がそれぞれ9%と少なく、皺が発生しないように充分に伸長させて施工することは困難に感じられる。
[比較例2の車両天井内装布帛]
比較例2の車両天井内装布帛では、タテの伸長後の伸び回復率が1%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率が8%であり、そのタテ・ヨコの伸び回復率の差に起因して編目地模様の柄歪みが起き易く、又、裏経編地のタテの伸長後の伸び回復率(3%)と表経編地のタテの伸長後の伸び回復率(16%)の差に起因する反り返りが感じられる。
[従来例1の車両天井内装布帛]
従来例1の車両天井内装布帛では、タテの伸長後の伸び回復率が4%であり、ヨコの伸長後の伸び回復率が9%であり、タテの伸長後の伸び回復率がヨコの伸長後の伸び回復率の44.4%であることから、伸長施工中に収縮して反り返ることなく、伸長させて皺を発生させずに施工し易い。
[従来例2の車両天井内装布帛]
従来例2の車両天井内装布帛では、そのタテ・ヨコの伸び率も伸び回復率も測定していなかったが、天井基板の起伏に追随させて均等に伸長し、編目地模様の柄歪みを伴うことなく密着施工することが出来る。
【0049】
[触感・風合いの評価]
[実施例1の車両天井内装布帛]
実施例1の車両天井内装布帛では、裏経編地との間に空隙層があるため、表経編地に柔らかいクッション性が感じられる。
[実施例2の車両天井内装布帛]
実施例2の車両天井内装布帛も、実施例1と同様に、裏経編地との間に空隙層があるため、表経編地に柔らかいクッション性が感じられる。
[比較例1の車両天井内装布帛]
比較例1の車両天井内装布帛では、実施例1・2と同様に、裏経編地との間に空隙層があるものの、表経編地が凹凸差が大きいメッシュ編組織に成り、そのメッシュ孔目が大きいことから表経編地に触れる接触面積が少なく、クッション性は左程感じられない
[比較例2の車両天井内装布帛]
比較例2の車両天井内装布帛も、実施例1・2と同様に、裏経編地との間に空隙層があるため、表経編地に柔らかいクッション性が感じられる。
[従来例1の車両天井内装布帛]
従来例1の車両天井内装布帛では、経編地とポリウレタンの接着層が硬く感じられ、ポリウレタンからの反撥弾性が強く硬く感じられ、実施例1・2に比較してハードタッチでクッション性を欠く。
[従来例2の車両天井内装布帛]
従来例2の車両天井内装布帛も、従来例1と同様に、経編地とポリウレタンの接着層が硬く感じられ、ポリウレタンからの反撥弾性が強く硬く感じられ、実施例1・2に比較してハードタッチでクッション性を欠く。
【0050】
[裏面起毛適性]
[実施例1・2の車両天井内装布帛]
実施例1・2の車両天井内装布帛では、裏経編地を構成している第6筬L6 に通された編糸が捲縮繊維に成るので裏面(裏経編地)が起毛し易く、その場合、第5筬L5
に通された編糸が無捲縮繊維に成るので裏面が異常に毛羽立つことがなく、その裏面の起毛毛羽に抑えられて、接着施工用接着剤が裏経編地から滲み出し難くなる。
[比較例1の車両天井内装布帛]
比較例1の車両天井内装布帛では、裏経編地を構成している第5筬L5 と第6筬L6 に通された編糸の全てが無捲縮繊維に成るので、その裏面(裏経編地)が起毛し難く、その起毛毛羽による接着施工用接着剤の滲出抑制効果は得られない。
[比較例2の車両天井内装布帛]
比較例2の車両天井内装布帛では、裏経編地を構成している第5筬L5 と第6筬L6 に通された編糸の全てが捲縮繊維に成るので、その裏面(裏経編地)に起毛処理を施すと異常に毛羽立ち、裏経編地に破れが発生し、起毛処理による接着施工用接着剤の滲出抑制効果は得られない。
[従来例1・2の車両天井内装布帛]
従来例1・2のトリコット編地の生機では、表裏間に空隙層がないので、その裏面に起毛処理を施すと表面繊維が乱れるので、裏面に起毛処理を施すことなく、裏材(不織布)を貼り合わせて車両天井内装布帛とせざるをえない。
【0051】
[総合評価]
上記の通り、比較例1の車両天井内装布帛では、大きいメッシュ孔目があって起伏に富むとしても、施工用接着剤によって外観が損なわれ易く、天井基材の起伏に追随し難く、皺や柄歪みを伴うことなく充分に伸長させて接着施工し難く、裏経編地との間に空隙層があってもハードタッチでクッション性を欠き、裏面起毛による接着施工用接着剤の滲出抑制効果は得られない。
比較例2の車両天井内装布帛では、編目地模様の外観が細やかな起伏に富み、裏経編地との間に空隙層があってソフトタッチでクッション性に富むとしても、裏面起毛による接着施工用接着剤の滲出抑制効果は得られず、施工用接着剤が表面に滲み出し易く、天井基材の起伏に追随させて皺や柄歪みを伴うことなく均等に伸長させて接着施工し難い。
従来例1・2の車両天井内装布帛では、その生機経編地に裏材を貼り合わせざるを得ず、その経編地の裏側がポリウレタンとの接着層になっていて粗硬に感じられ、経編地のシンカーループとニードルループとの間に段差が殆どなく、その編目地模様は平坦で立体感を欠き、ハードタッチでクッション性を欠く。
これに対し、本発明の実施例1・2の車両天井内装布帛は、編目地模様の外観が細やかな起伏に富み、裏面起毛による接着施工用接着剤の滲出抑制効果が得られ、施工用接着剤によって表面が汚染されることがなく、天井基材の起伏に追随させて皺や柄歪みを伴うことなく充分に伸長させて接着施工することが出来、その接着施工中に収縮皺や反りがなく、裏経編地との間に空隙層があって触感・風合いがソフトタッチになり、クッション性に富む。
【0052】
[データ表]
[表1]は、上記実施例1・2と比較例1・2と従来例1・2の経編地の仕様と通気度と伸び率と伸び回復率をまとめて示す。
[表2]は、上記実施例1・2と比較例1・2と従来例1・2の車両天井内装布帛の評価を要約して示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明実施例1・2の車両天井内装布帛の表経編地表面拡大図である。
【図2】本発明の実施例と比較例と従来例の車両天井内装布帛の編組織図である。
【符号の説明】
【0056】
A・B・C:編糸
N :ニードルループ
Sa・Sb・Sc:シンカーループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 布帛全体の目付けが200〜450g/m2 であり、
(b) 布帛全体の総厚みが2〜4mmであり、
(c) 布帛全体の通気度が10〜120cc/cm2 ・secの車両天井内装布帛であり、
(d) 表経編地と裏経編地を連結糸によって連結して編成された二重経編地に成り、
(e) 裏経編地の外面が非メッシュ編組織によるニードルループによって構成され、
(f) その裏面を構成する裏経編地が2枚筬以上の複数の筬に通された数種類の編糸によって構成され、その複数の中の少なくとも1枚の筬に通された編糸が捲縮繊維によって構成されており、
(g) 裏経編地の通気度が表経編地の通気度よりも少なく120cc/cm2 ・sec以下であることを特徴とする車両天井内装布帛。
【請求項2】
(h) 裏経編地を構成している数種類の編糸の中の少なくとも1枚の筬に通された編糸が無捲縮繊維によって構成されており、裏経編地の外面に起毛処理がなされている前掲請求項1に記載の車両天井内装布帛。
【請求項3】
(i) タテ・ヨコの伸び率がそれぞれ10%〜100%であり、
(j) タテ・ヨコの伸長後の伸び回復率がそれぞれ15%以下である前掲請求項1〜2の何れかに記載の車両天井内装布帛。
【請求項4】
(k) 裏経編地の通気度が表経編地の通気度の70%以下であり、
(l) タテの伸び率とヨコの伸び率の何れか少ない一方の伸び率が多い他方の伸び率の50%以上であり、
(m) タテの伸長後の伸び回復率とヨコの伸長後の伸び回復率の何れか少ない一方の伸び回復率が多い他方の伸び回復率の30%以上である前掲請求項1〜3の何れかに記載の車両天井内装布帛。
【請求項5】
(n) 表経編地と裏経編地の編糸の単繊維繊度が6dtex以下であり、表経編地と裏経編地の間を連結して空隙層を構成する連結糸の総繊度が、2枚筬以上の複数の筬に通されて裏経編地を構成している数種類の編糸の中の少なくとも何れか1枚の筬に通された編糸の総繊度よりも細い前掲請求項1〜4の何れかに記載の車両天井内装布帛。
【請求項6】
(o) 表経編地が2枚筬以上の複数の筬(L1 ・L2 ・L3 )に通された数種類の編糸(A・B・C)によって構成されており、その複数の中の少なくとも2枚の筬(L1 ・L2 )に通された編糸(A・B)がコース方向に互いに逆向きに振り動かされて編み込まれている前掲請求項1〜5の何れかに記載の車両天井内装布帛。
【請求項7】
(p) 表経編地が3枚筬以上の複数の筬(L1 ・L2 ・L3 )に通された数種類の編糸(A・B・C)によって構成されており、
(q) その複数の中の少なくとも1枚の筬に通された編糸が捲縮繊維によって構成されている前掲請求項1〜6の何れかに記載の車両天井内装布帛。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−174085(P2009−174085A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14297(P2008−14297)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000148151)株式会社川島織物セルコン (104)
【Fターム(参考)】