説明

車両後部構造

【課題】ロアバックの上部が車両前後方向に振動することを抑制する。
【解決手段】車両後部構造10では、ロアバックパネル16の上部34及びロアバックリインフォースメント18によって形成された閉断面部40と、リアサイドメンバ12との両車両骨格部同士が、ロアバックパネル16における上部34の車両下側の部分から車両前側に凸状にせり出して形成されたせり出し部42によって連結されている。この構成によれば、リアサイドメンバ12の後部が車両上下方向に振動した場合でも、両車両骨格部の車両上下方向間の部分を起点とした角度変化を抑制することができるので、ロアバック38の上部が車両前後方向に振動することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロアバックを構成するロアバックアウタパネル及びロアバックインナパネルと、後端部がロアバックアウタパネルに結合されたリアフロアパネルと、後端部がロアバックアウタパネルに結合されると共に下端部がリアフロアパネルに結合されたリアフロアサイドメンバと、リアフロアサイドメンバとロアバックインナパネルとを連結するガセットとを備えたワゴン車のバックドアピラー下部の結合構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−30951号公報
【特許文献2】特開2009−208610号公報
【特許文献3】特開2001−171557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構造では、ロアバックアウタパネル及びロアバックインナパネルによって形成された閉断面部と、リアフロアサイドメンバとがロアバックアウタパネルにおける板状の部分のみで結合されている。このため、車体のリアサスペンション支持部に対し車両上下方向の荷重が入力され、リアフロアサイドメンバの後部が車両上下方向に振動した場合に、上述の板状の部分を起点とした角度変化が生じ、ロアバックの上部が車両前後方向に振動する虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、リアフロアサイドメンバの後部が車両上下方向に振動した場合でも、ロアバックの上部が車両前後方向に振動することを抑制することができる車両後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両後部構造は、車両前後方向に延在されると共に、車両幅方向に沿って切断した断面が車両上側に開口する断面ハット状を成すリアサイドメンバと、前記リアサイドメンバの車両上側に配置されて前記リアサイドメンバと結合された外側パネル部を有するリアフロアパネルと、前記リアフロアパネルの車両後側に配置されると共に、車両幅方向且つ車両上下方向に延在され、上部が前記リアサイドメンバの後部よりも車両上側の位置においてバックドアによって開閉されるドア開口部の下縁部を構成するロアバックパネルと、前記ロアバックパネルの上部の車両前側に配置され、前記ロアバックパネルの上部と共に車両前後方向に沿って切断した断面が閉断面状を成す閉断面部を形成するロアバックリインフォースメントと、前記ロアバックパネルにおける上部の車両下側の部分から車両前側に凸状にせり出して形成されると共に、前記リアサイドメンバに形成された車両幅方向両側の一対の側壁部間に挿入されて、前記リアサイドメンバと前記閉断面部とを連結するせり出し部と、を備えている。
【0007】
この車両後部構造によれば、ロアバックパネル及びロアバックリインフォースメントによって形成された閉断面部と、リアサイドメンバとの両車両骨格部同士が、ロアバックパネルに車両前側に凸状にせり出して形成されたせり出し部によって連結されている。従って、リアサイドメンバの後部が車両上下方向に振動した場合でも、両車両骨格部の車両上下方向間の部分を起点とした角度変化を抑制することができるので、ロアバックの上部(つまり、閉断面部が形成された部分)が車両前後方向に振動することを抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の車両後部構造は、請求項1に記載の車両後部構造において、前記リアサイドメンバが、前記せり出し部の車両幅方向両側にて前記ロアバックパネルと車両前後方向に重ね合わされた状態で結合された後側フランジと、前記一対の側壁部の下端部を連結する底壁部と、を有し、前記せり出し部が、前記底壁部と車両上下方向に重ね合わされた状態で結合された下壁部を有するものである。
【0009】
この車両後部構造によれば、リアサイドメンバの後側フランジは、せり出し部の車両幅方向両側にてロアバックパネルと車両前後方向に重ね合わされた状態で結合されており、また、リアサイドメンバの底壁部とせり出し部の下壁部とは、車両上下方向に重ね合わされた状態で結合されている。これにより、リアサイドメンバとロアバックパネルとの角度変化についても抑制することができるので、ロアバックの上部が車両前後方向に振動することをより一層効果的に抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の車両後部構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造において、前記せり出し部の車両後側に配置されて、前記せり出し部と共に車両前後方向に沿って切断した断面が閉断面状を成す他の閉断面部を形成する補強パッチを備えている。
【0011】
この車両後部構造によれば、せり出し部の車両後側には、補強パッチが配置されており、この補強パッチは、せり出し部と共に車両前後方向に沿って切断した断面が閉断面状を成す他の閉断面部を形成している。従って、リアサイドメンバに対するロアバックパネルの剛性をより高めることができる。
【0012】
請求項4に記載の車両後部構造は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両後部構造において、前記せり出し部が、前記一対の側壁部の夫々と車両幅方向に重ね合わされた状態で結合された一対の横壁部を有するものである。
【0013】
この車両後部構造によれば、リアサイドメンバに形成された一対の側壁部の夫々とせり出し部に形成された一対の横壁部とが車両幅方向に重ね合わされた状態で結合されているので、リアサイドメンバに対するロアバックパネルの剛性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上詳述したように、本発明によれば、リアフロアサイドメンバの後部が車両上下方向に振動した場合でも、ロアバックの上部が車両前後方向に振動することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両後部構造の斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】比較例に係る車両後部構造の図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側(右側)をそれぞれ示している。
【0018】
図1,図2に示されるように、本発明の一実施形態に係る車両後部構造10は、リアサイドメンバ12と、リアフロアパネル14と、ロアバックパネル16と、ロアバックリインフォースメント18とを備えている。なお、図1では、理解の容易のために、ロアバックリインフォースメント18が想像線によって示されている。
【0019】
リアサイドメンバ12は、車両前後方向に延在されている。このリアサイドメンバ12は、車両幅方向に沿って切断した断面が車両上側に開口する断面ハット状を成している。つまり、このリアサイドメンバ12は、車両幅方向に対向する一対の側壁部20と、この一対の側壁部20の下端部を連結する底壁部22と、一対の側壁部20の上端部から車両幅方向両側に延出する一対の上側フランジ24とを有している。また、一対の側壁部20の後端部には、車両幅方向両側に延出する一対の後側フランジ26が形成されている。
【0020】
リアフロアパネル14は、車両前後方向且つ車両幅方向に延在されている。このリアフロアパネル14は、リアサイドメンバ12よりも車両幅方向内側に位置する中央パネル部28と、この中央パネル部28の車両幅方向外側に形成された外側パネル部30とを有している。
【0021】
外側パネル部30は、中央パネル部28よりも一段高く形成されており、リアサイドメンバ12の車両上側に配置されている。そして、リアサイドメンバ12に形成された一対の上側フランジ24は、外側パネル部30と車両上下方向に重ね合わされた状態で例えばスポット溶接により結合されている。また、リアフロアパネル14の後端部には、車両上側に折り曲げられた後側フランジ32が形成されている。
【0022】
ロアバックパネル16は、リアフロアパネル14の車両後側に配置されており、車両幅方向且つ車両上下方向に延在されている。このロアバックパネル16の上部34は、リアサイドメンバ12の後部よりも車両上側に位置されており、車両前後方向に切断した断面が車両前側に開口する断面ハット状を成している。このロアバックパネル16の上部34は、図示しないバックドアによって開閉されるドア開口部36の下縁部を構成している。
【0023】
ロアバックリインフォースメント18は、ロアバックパネル16と共にロアバック38を構成するものであり、ロアバックパネル16の上部34の車両前側に配置されている。このロアバックリインフォースメント18は、車両前後方向に切断した断面が車両後側に開口する断面ハット状を成している。そして、このロアバックリインフォースメント18は、ロアバックパネル16の上部34と互いの上端部18A,34A及び下端部18B,34Bが車両前後方向に重ね合わされた状態で結合されることにより、この上部34と共に閉断面部40を形成している。つまり、この閉断面部40は、車両前後方向に沿って切断した断面が閉断面状を成すものである。
【0024】
また、上述のロアバックパネル16における上部34の車両下側の部分からは、車両前側に凸状にせり出すせり出し部42が形成されている。このせり出し部42は、車両幅方向に対向する一対の横壁部44と、この一対の横壁部44の前端部を連結する前壁部46と、一対の横壁部44の下端部を連結する下壁部48とを有している。
【0025】
一対の横壁部44における外側の幅は、一対の側壁部20における内側の幅よりも僅かに狭く設定されており、せり出し部42は、一対の側壁部20間に挿入されている。そして、下壁部48は、底壁部22と車両上下方向に重ね合わされた状態で例えばスポット溶接により結合されている。また、一対の横壁部44は、一対の側壁部20の夫々と車両幅方向に重ね合わされた状態で例えばスポット溶接により結合されている。なお、特に図示しないが、この横壁部44及び側壁部20の溶接部は、上述の上側フランジ24及び外側パネル部30の溶接部と、下壁部48及び底壁部22の溶接部との車両上下方向間に位置している。
【0026】
そして、このように、ロアバックパネル16における上部34の車両下側の部分にせり出し部42が形成されると共に、このせり出し部42がリアサイドメンバ12と各部において結合されることにより、このせり出し部42によって上述の閉断面部40とリアサイドメンバ12とが連結されている。
【0027】
なお、上述のリアフロアパネル14に形成された後側フランジ32は、ロアバックパネル16における上部34よりも車両下側の縦壁部56と車両幅方向の略全長に亘って結合されている。また、リアサイドメンバ12に形成された後側フランジ26は、せり出し部42の車両幅方向両側にて縦壁部56と結合されている。
【0028】
また、この車両後部構造10は、せり出し部42の車両後側に補強パッチ58を備えている。補強パッチ58の上部60は、ロアバックパネル16の上部34と結合されており、補強パッチ58の下部62は、ロアバックパネル16の下部64と結合されている。また、この補強パッチ58の上部60と下部62との中間部66は、せり出し部42の前壁部46と車両前後方向に離間されており、これにより、補強パッチ58は、せり出し部42と共に車両前後方向に沿って切断した断面が閉断面状を成す他の閉断面部68を形成している。
【0029】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0030】
先ず、本発明の一実施形態の作用及び効果をより明確にするために、比較例について説明する。なお、この比較例において、上述の本発明の一実施形態と同一名称の部材については、比較の容易のために同一符合を用いる。
【0031】
図3に示される比較例に係る車両後部構造110は、上述の本発明の一実施形態に係る車両後部構造10に対し、せり出し部42が省かれる代わりに、リアフロアパネル14の後部と、ロアバックパネル16における縦壁部56の上部(上部34よりも下側の板状の部分)とを連結する連結パッチ112を備えている。
【0032】
しかしながら、この比較例に係る車両後部構造110では、ロアバックパネル16及びロアバックリインフォースメント18によって形成された閉断面部40と、リアサイドメンバ12とがロアバックパネル16に形成された板状の縦壁部56のみで結合されている。このため、車体のリアサスペンション支持部に対し車両上下方向の荷重が入力され、リアサイドメンバ12の後部が車両上下方向に振動した場合に、上述の板状の縦壁部56を起点とした角度変化が生じ、ロアバック38の上部(つまり、閉断面部40が形成された部分)が車両前後方向に振動する虞がある。
【0033】
これに対し、図2に示される本発明の一実施形態に係る車両後部構造10によれば、ロアバックパネル16及びロアバックリインフォースメント18によって形成された閉断面部40と、リアサイドメンバ12との両車両骨格部同士が、ロアバックパネル16に車両前側に凸状にせり出して形成されたせり出し部42によって連結されている。従って、リアサイドメンバ12の後部が車両上下方向に振動した場合でも、両車両骨格部の車両上下方向間の部分を起点とした角度変化を抑制することができるので、ロアバック38の上部が車両前後方向に振動することを抑制することができる。
【0034】
しかも、図1に示されるように、リアサイドメンバ12の後側フランジ26は、せり出し部42の車両幅方向両側にてロアバックパネル16の縦壁部56と車両前後方向に重ね合わされた状態で結合されており、また、リアサイドメンバ12の底壁部22とせり出し部42の下壁部48とは、車両上下方向に重ね合わされた状態で結合されている(図2も参照)。これにより、リアサイドメンバ12とロアバックパネル16との角度変化についても抑制することができるので、ロアバック38の上部が車両前後方向に振動することをより一層効果的に抑制することができる。
【0035】
また、せり出し部42の車両後側には、補強パッチ58が配置されており、この補強パッチ58は、せり出し部42と共に車両前後方向に沿って切断した断面が閉断面状を成す他の閉断面部68を形成している。従って、リアサイドメンバ12に対するロアバックパネル16の剛性をより高めることができる。
【0036】
さらに、リアサイドメンバ12に形成された一対の側壁部20の夫々とせり出し部42に形成された一対の横壁部44とが車両幅方向に重ね合わされた状態で結合されているので、リアサイドメンバ12に対するロアバックパネル16の剛性をさらに高めることができる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
10 車両後部構造
12 リアサイドメンバ
14 リアフロアパネル
16 ロアバックパネル
18 ロアバックリインフォースメント
20 側壁部
22 底壁部
26 後側フランジ
30 外側パネル部
34 ロアバックパネルの上部
36 ドア開口部
38 ロアバック
40 閉断面部
42 せり出し部
44 横壁部
48 下壁部
58 補強パッチ
68 他の閉断面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延在されると共に、車両幅方向に沿って切断した断面が車両上側に開口する断面ハット状を成すリアサイドメンバと、
前記リアサイドメンバの車両上側に配置されて前記リアサイドメンバと結合された外側パネル部を有するリアフロアパネルと、
前記リアフロアパネルの車両後側に配置されると共に、車両幅方向且つ車両上下方向に延在され、上部が前記リアサイドメンバの後部よりも車両上側の位置においてバックドアによって開閉されるドア開口部の下縁部を構成するロアバックパネルと、
前記ロアバックパネルの上部の車両前側に配置され、前記ロアバックパネルの上部と共に車両前後方向に沿って切断した断面が閉断面状を成す閉断面部を形成するロアバックリインフォースメントと、
前記ロアバックパネルにおける上部の車両下側の部分から車両前側に凸状にせり出して形成されると共に、前記リアサイドメンバに形成された車両幅方向両側の一対の側壁部間に挿入されて、前記リアサイドメンバと前記閉断面部とを連結するせり出し部と、
を備えた車両後部構造。
【請求項2】
前記リアサイドメンバは、前記せり出し部の車両幅方向両側にて前記ロアバックパネルと車両前後方向に重ね合わされた状態で結合された後側フランジと、前記一対の側壁部の下端部を連結する底壁部と、を有し、
前記せり出し部は、前記底壁部と車両上下方向に重ね合わされた状態で結合された下壁部を有している、
請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記せり出し部の車両後側に配置されて、前記せり出し部と共に車両前後方向に沿って切断した断面が閉断面状を成す他の閉断面部を形成する補強パッチを備えた、
請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記せり出し部は、前記一対の側壁部の夫々と車両幅方向に重ね合わされた状態で結合された一対の横壁部を有している、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171539(P2012−171539A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37024(P2011−37024)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】