説明

車両操舵装置

【課題】操舵輪に入力される横力に対する剛性を向上させるとともに、操舵輪の転舵角を大角度とすることができる技術を提供する。
【解決手段】車両の操舵輪Wを転舵するための車両操舵装置1は、一端側が操舵輪Wの回転軸70に連結され、他端側が操舵輪Wの上方で操舵輪Wの転舵軸周りに回動するよう車体BD側に連結される操舵輪支持部材10と、操舵輪支持部材10の一端側に回動可能に連結され、車幅方向に延在する第1部材(例えばロッド22)、および車体BD側と第1部材のそれぞれに回動可能に連結される第2部材(例えばピットマンアーム24)を有する連結部20とを備える。車両操舵装置1では、操舵輪Wが転舵される際、操舵輪支持部材10および第2部材が回動し、第1部材が、転舵による操舵輪Wの接近に対して退避する方向に変位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵輪を転舵するための車両操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、単一の前輪および後輪と、車両中間部の左右に配置された左右輪とを有する、いわゆる、ひし形車輪配置の車両が開示されている。この車両において、操舵輪である前輪は、一端側が前輪の回転軸に連結され他端側が前輪の上方で車体側に連結された、いわゆるフォーク型の車輪支持部材によって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許第1304237明細書
【特許文献2】特開2011−093404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された車両では、上述のように車輪支持部材が操舵輪の上方で車体側に連結されていた。したがって、車両の旋回時に発生する横力の操舵輪への入力位置(操舵輪の接地点)から、車輪支持部材の車体側への連結位置までの距離が長かった。そのため、横力に対する車両の剛性をさらに高めたいという要求に対して、従来の構造には改善の余地があった。特に、車体を積極的に傾けることなく旋回する車両では、旋回時に発生する横力を車輪支持部材で受けることができないため、横力に対する剛性を高めたいという要求は強い。
【0005】
一方で、従来の車両には、旋回時の回転半径を小さくするために、操舵輪が大角度で転舵できることが求められていた。例えば、従来の車両には、操舵輪を車両の直進状体から左右に90°近くまで転舵可能であることが求められていた。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操舵輪に入力される横力に対する剛性を向上させるとともに、操舵輪の転舵角を大角度とすることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両操舵装置は、車両の操舵輪を転舵するための車両操舵装置であって、一端側が操舵輪の回転軸に連結され、他端側が操舵輪の上方で操舵輪の転舵軸周りに回動するよう車体側に連結される操舵輪支持部材と、前記操舵輪支持部材の前記一端側に回動可能に連結され、車幅方向に延在する第1部材、および車体側と前記第1部材のそれぞれに回動可能に連結される第2部材を有する連結部と、を備え、操舵輪が転舵される際、前記操舵輪支持部材および前記第2部材が回動し、前記第1部材が、転舵による操舵輪の接近に対して退避する方向に変位することを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、操舵輪に入力される横力に対する剛性を向上させるとともに、操舵輪の転舵角を大角度とすることができる。
【0009】
上記態様において、操舵ハンドルに連結されたステアリングシャフトをさらに備え、前記ステアリングシャフトは前記第2部材に連結され、前記ステアリングシャフトの回動により前記第2部材が回動し、この第2部材の回動により前記第1部材が変位するとともに前記操舵輪支持部材が回動して操舵輪が転舵されてもよい。また、操舵ハンドルに連結されたステアリングシャフトをさらに備え、前記ステアリングシャフトは前記操舵輪支持部材に連結され、前記ステアリングシャフトの回動により前記操舵輪支持部材が回動して操舵輪が転舵され、前記操舵輪支持部材の回動により前記第1部材が変位するとともに前記第2部材が回動されてもよい。これらの態様によっても、操舵輪に入力される横力に対する剛性を向上させるとともに、操舵輪の転舵角を大角度とすることができる。
【0010】
また、上記態様において、前記連結部は、車体側および前記第1部材のそれぞれに回動可能に連結される第3部材をさらに備えてもよい。この態様によれば、第1部材の延在方向が平行に保たれたまま第1部材を変位させることができるため、操舵輪が意図しない方向に転舵されることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操舵輪に入力される横力に対する剛性を向上させるとともに、操舵輪の転舵角を大角度とすることができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(A)は、実施形態1に係る車両操舵装置の概略構成を示す正面模式図であり、図1(B)は、車両操舵装置の概略構成を示す下面模式図である。
【図2】車両操舵装置の動作を説明するための模式図である。
【図3】図3(A)は、実施形態2に係る車両操舵装置の概略構成を示す正面模式図であり、図3(B)は、車両操舵装置の概略構成を示す下面模式図である。
【図4】変形例1に係る車両操舵装置の概略構成を示す正面模式図である。
【図5】図5(A)は、変形例2に係る車両操舵装置の概略構成を示す正面模式図であり、図5(B)は、車両操舵装置の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0014】
(実施形態1)
図1(A)は、実施形態1に係る車両操舵装置の概略構成を示す正面模式図であり、図1(B)は、車両操舵装置の概略構成を示す下面模式図である。図1(A)および図1(B)に示すように、本実施形態に係る車両操舵装置1は、車両の操舵輪Wを転舵するための装置であり、操舵輪支持部材10と、連結部20と、操舵部30とを備える。
【0015】
操舵輪支持部材10は、いわゆるフォーク型の構造を有し、一対のレッグ12aを有するフォーク部12と、フォーク部12の上端から操舵輪Wの上方に延在するフォークコラム部14とを有する。操舵輪支持部材10の一端側、すなわちフォーク部12(レッグ12a)の下端部は、操舵輪Wの回転軸70に連結されている。操舵輪支持部材10の他端側、すなわちフォークコラム部14は、車体BD側に固定された軸受80に回動可能に連結されている。したがって、操舵輪支持部材10は、操舵輪Wの上方で操舵輪Wの転舵軸周りに回動するように車体BD側に連結されている。
【0016】
連結部20は、ロッド22(第1部材)と、ピットマンアーム24(第2部材)と、アイドラーアーム26(第3部材)とを有する。ロッド22は、一端が操舵輪支持部材10の一端側、すなわちフォーク部12の下端部、より具体的には一方のレッグ12aの下端部に、ボールジョイント60を介して連結されている。したがって、ロッド22と操舵輪支持部材10とは、ボールジョイント60を中心軸として相対的に回動可能である。ロッド22は、車幅方向に延在するように配置されている。具体的には、ロッド22は、操舵輪Wが転舵されていない状態で操舵輪Wの回転軸70方向に延在するように配置されている。
【0017】
ロッド22の所定位置には、軸部材71が回動可能に連結されている。この軸部材71には、ピットマンアーム24の一端側が回動可能に連結されている。したがって、ピットマンアーム24は、ロッド22に対して軸部材71を軸に回動可能に連結されている。ピットマンアーム24の他端側には、軸部材72が固定されている。この軸部材72は、車体BD側に固定された軸受81に回動可能に連結されている。したがって、ピットマンアーム24は、車体BD側に対して軸部材72を中心に回動可能に連結されている。
【0018】
また、ロッド22の所定位置には、軸部材73が回動可能に連結されている。この軸部材73には、アイドラーアーム26の一端側が回動可能に連結されている。したがって、アイドラーアーム26は、ロッド22に対して軸部材73を中心に回動可能に連結されている。アイドラーアーム26の他端側には、軸部材74が回動可能に連結されている。この軸部材74は、車体BD側に固定された軸受82に回動可能に連結されている。したがって、アイドラーアーム26は、車体BD側に対して軸部材74を中心に回動可能に連結されている。本実施形態では、アイドラーアーム26は、ボールジョイント60と連結されたロッド22の端部とは反対側の端部に連結され、アイドラーアーム26とボールジョイント60との間にピットマンアーム24が連結されている。
【0019】
操舵部30は、操舵ハンドル32と、ステアリングシャフト34とを有する。ステアリングシャフト34は、一端側が操舵ハンドル32に連結され、他端側が軸部材72を介してピットマンアーム24に連結されている。
【0020】
本実施形態に係る車両操舵装置1では、操舵輪Wの回転軸70の側方で操舵輪支持部材10に連結されたロッド22が回転軸70の方向に延在し、ピットマンアーム24を介して車体BD側に連結されている。また、ロッド22は、アイドラーアーム26を介して車体BD側に連結されている。したがって、操舵輪支持部材10は、フォークコラム部14が車体BD側に連結される位置に比べて、操舵輪Wの接地点からの高さがより低い位置でロッド22を介して車体BD側に連結されている。そのため、車両の旋回時に発生する横力に対する操舵輪支持部材10の剛性を高めることができ、ひいては横力に対する車両の剛性を高めることができる。
【0021】
続いて、上述の構成を備えた車両操舵装置1の動作を説明する。図2は、車両操舵装置の動作を説明するための模式図である。図2は、下方(路面側)から見たときの車両操舵装置1を図示している。なお、図2では、ロッド22および操舵輪Wを透視している。また、図2において、符号の末尾に「」が付された各部材は、操舵輪Wが転舵されていないときの状態を示す。また、符号の末尾に「II」が付された各部材は、操舵輪Wが約45°転舵されたときの状態を示す。また、符号の末尾に「III」が付された各部材は、操舵輪Wが約90°転舵されたときの状態を示す。
【0022】
図2に示すように、例えば操舵輪Wが右方向に転舵されるように操舵ハンドル32(図1(A)参照)が操作されると、ステアリングシャフト34(図1(A)参照)の回動により軸部材72に固定されたピットマンアーム24が軸部材72を中心に車両後方側に回動する。このピットマンアーム24の回動により、ロッド22が車両後方側に変位するとともに、ロッド22に連結されたフォーク部12がフォークコラム部14(図1(A)参照)を中心に回動し、ボールジョイント60に連結された部分が車両後方側に変位する。また、ロッド22に連結されたアイドラーアーム26が軸部材74を中心に車両後方側に回動する。以上の動作により、操舵輪支持部材10が回動して操舵輪Wが右方向に転舵される。
【0023】
操舵輪Wが転舵される際、操舵輪支持部材10、ピットマンアーム24およびアイドラーアーム26が車両後方側に回動することで、ロッド22が、転舵による操舵輪Wの接近に対して退避する方向に変位する。具体的には、フォークコラム部14を軸に回動した操舵輪Wは、フォークコラム部14よりも車両前方側に位置する部分が、車両前方側からロッド22の延在領域に徐々に接近していく。これに対して、ロッド22は、フォーク部12、ピットマンアーム24およびアイドラーアーム26の回動によって、操舵輪Wの接近に対して退避するように車両後方側に変位する。そのため、操舵輪Wとロッド22とが干渉することを回避して、操舵輪Wを約90°まで転舵させることができる。
【0024】
操舵輪Wが左方向に転舵されるように操舵ハンドル32が操作された場合は、ピットマンアーム24が軸部材72を中心に車両前方側に回動する。このピットマンアーム24の回動により、ロッド22が車両前方側に変位するとともに、ロッド22に連結されたアイドラーアーム26およびフォーク部12がそれぞれ軸部材72およびフォークコラム部14(図1(A)参照)を中心に車両前方側に回動する。その結果、操舵輪支持部材10が回動して操舵輪Wが左方向に転舵される。フォークコラム部14を軸に回動した操舵輪Wは、フォークコラム部14よりも車両後方側に位置する部分が、車両後方側からロッド22の延在領域に徐々に接近していく。これに対して、ロッド22は、フォーク部12、ピットマンアーム24およびアイドラーアーム26の回動によって、操舵輪Wの接近に対して退避するように車両前方側に変位する。
【0025】
なお、操舵輪Wが転舵されていない状態は、軸部材71,72およびボールジョイント60が同一直線上に位置し、ピットマンアーム24とロッド22が同一直線上に位置するため、連結部20の思案点となる。これに対し、本実施形態に係る車両操舵装置1は、アイドラーアーム26をロッド22に連結しているため、ロッド22の拘束点として、ボールジョイント60、ピットマンアーム24およびアイドラーアーム26の3点を有する。すなわち、アイドラーアーム26によって、ロッド22の延在方向が平行に保たれたまま変位するようにロッド22の変位が規制されている。そのため、操舵輪Wが意図しない方向に転舵されることを防ぐことができる。
【0026】
本実施形態に係る車両操舵装置1が搭載される車両としては、例えば、上述したひし形車輪配置の車両や3輪あるいは4輪の自転車等を含む軽量車両などを挙げることができるが、特にこれに限定されない。
【0027】
以上説明したように、本実施形態に係る車両操舵装置1は、一端側が操舵輪Wの回転軸70に連結され、他端側が操舵輪Wの上方で操舵輪Wの転舵軸周りに回動するよう車体BD側に連結される操舵輪支持部材10と、操舵輪支持部材10の一端側に回動可能に連結され、車幅方向に延在するロッド22、および車体BD側とロッド22それぞれに回動可能に連結されるピットマンアーム24を有する連結部20とを備える。このように、本実施形態に係る車両操舵装置1では、ロッド22により操舵輪支持部材10が従来の構造に比べて横力の入力位置からの高さがより低い位置で車体BD側に連結されている。また、車両操舵装置1は、操舵輪Wが転舵される際、操舵輪支持部材10およびピットマンアーム24が回動し、転舵による操舵輪Wの接近に対して退避する方向にロッド22が変位するように構成されている。そのため、転舵された操舵輪Wがロッド22と干渉することを回避することができる。したがって、本実施形態に係る車両操舵装置1によれば、操舵輪Wに入力される横力に対する剛性を向上させるとともに、操舵輪Wの転舵角を大角度とすることができる。
【0028】
(実施形態2)
実施形態2に係る車両操舵装置1は、実施形態1に係る車両操舵装置1において、ピットマンアーム24およびアイドラーアーム26がギア部材に置き換えられた構造を有する。以下、本実施形態について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
【0029】
図3(A)は、実施形態2に係る車両操舵装置の概略構成を示す正面模式図であり、図3(B)は、車両操舵装置の概略構成を示す下面模式図である。図3(A)および図3(B)に示すように、本実施形態に係る車両操舵装置1は、操舵輪支持部材10と、連結部20と、操舵部30とを備える。
【0030】
操舵輪支持部材10は、一対のレッグ12aを有するフォーク部12と、操舵輪Wの上方に延在するフォークコラム部14とを有する。操舵輪支持部材10の一端側は、操舵輪Wの回転軸70に連結されている。操舵輪支持部材10の他端側は、車体BD側に固定された軸受80に回転可能に連結されている。
【0031】
連結部20は、ロッド22と、実施形態1のピットマンアーム24に代わる第1ギヤ44(第2部材)と、実施形態1のアイドラーアーム26に代わる第2ギヤ46(第3部材)とを有する。第1ギヤ44および第2ギヤ46は、たとえば平歯車等からなる。第1ギヤ44および第2ギヤ46は、操舵輪Wの転舵によって各ギヤが回動する角度範囲に応じて、周縁部の一部が切り欠かれていてもよい。
【0032】
ロッド22は、一端が操舵輪支持部材10の一端側にボールジョイント60を介して連結されている。ロッド22は、車幅方向に延在している。言い換えれば、ロッド22は、操舵輪Wが転舵されていない状態で操舵輪Wの回転軸70方向に延在している。
【0033】
第1ギヤ44は、ロッド22の所定位置に連結された軸部材71に回動可能に連結されている。軸部材71は、第1ギヤ44の周縁部の所定位置に連結されている。第1ギヤ44の回転軸には、軸部材72が固定されている。軸部材72は、車体BD側に固定された軸受81に回動可能に連結されている。第2ギヤ46は、ロッド22の所定位置に連結された軸部材73に回動可能に連結されている。軸部材73は、第2ギヤ46の周縁部の所定位置に連結されている。第2ギヤ46の回転軸には、軸部材74が回動可能に連結されている。軸部材74は、車体BD側に固定された軸受82に回動可能に連結されている。
【0034】
第1ギヤ44と第2ギヤ46との間には、両者の回転方向を揃えるためのカウンターギヤ48が設けられている。第1ギヤ44、第2ギヤ46およびカウンターギヤ48は、第1ギヤ44とカウンターギヤ48とが噛み合わされ、カウンターギヤ48と第2ギヤ46とが噛み合わされるように配置されている。カウンターギヤ48の回転軸には、軸部材75が回動可能に連結されている。軸部材75は、車体BD側に固定された軸受83に回動可能に連結されている。
【0035】
操舵部30は、操舵ハンドル32と、ステアリングシャフト34とを有する。ステアリングシャフト34は、一端側が操舵ハンドル32に連結され、他端側が軸部材72を介して第1ギヤ44に固定されている。
【0036】
本実施形態に係る車両操舵装置1では、操舵輪Wの回転軸70の側方で操舵輪支持部材10に連結されたロッド22が回転軸70の方向に延在し、第1ギヤ44を介して車体BD側に連結されている。また、ロッド22は、第2ギヤ46を介して車体BD側に連結されている。そのため、車両の旋回時に発生する横力に対する操舵輪支持部材10の剛性を高めることができ、ひいては横力に対する車両の剛性を高めることができる。
【0037】
上述の構成を備えた車両操舵装置1において、例えば操舵輪Wが右方向に転舵されるように操舵ハンドル32が操作されると、ステアリングシャフト34の回動により軸部材72に固定された第1ギヤ44が軸部材72を中心に回動する。第1ギヤ44が回動すると、第1ギヤ44に噛み合わされたカウンターギヤ48と、カウンターギヤ48に噛み合わされた第2ギヤ46とがそれぞれ軸部材75および軸部材74を中心に回動する。これにより、ロッド22が車両後方側に変位するとともに、ロッド22に連結されたフォーク部12がフォークコラム部14を中心に車両後方側に回動する。その結果、操舵輪支持部材10が回動して操舵輪Wが右方向に転舵される。
【0038】
操舵輪Wが転舵される際、操舵輪支持部材10、第1ギヤ44および第2ギヤ46の回動により、ロッド22が転舵による操舵輪Wの接近に対して退避する方向に変位する。そのため、操舵輪Wとロッド22とが干渉することを回避して、操舵輪Wを約90°まで転舵させることができる。
【0039】
以上説明した本実施形態に係る車両操舵装置1によっても、操舵輪Wに入力される横力に対する剛性を向上させるとともに、操舵輪Wの転舵角を大角度とすることができる。
【0040】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくは変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の各実施形態同士、および上述の各実施形態と変形との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0041】
(変形例1)
変形例1に係る車両操舵装置1は、実施形態1に係る車両操舵装置1において、ステアリングシャフト34が操舵輪支持部材10に連結された構造を有する。以下、本変形例について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
【0042】
図4は、変形例1に係る車両操舵装置の概略構成を示す正面模式図である。図4に示すように、上述した各実施形態に係る車両操舵装置1において、操舵部30のステアリングシャフト34は、操舵輪支持部材10に連結されていてもよい。この場合、例えば、操舵輪支持部材10のフォークコラム部14に、ステアリングシャフト34が固定される。ピットマンアーム24は、軸部材72に回動可能に連結されていてもよい。
【0043】
操舵ハンドル32が操作されると、ステアリングシャフト34の回転により操舵輪支持部材10が回動して操舵輪Wが転舵される。また、操舵輪支持部材10の回動により、ロッド22が変位するとともに、ピットマンアーム24およびアイドラーアーム26がそれぞれ軸部材72、軸部材74を中心に回動する。なお、図4では、実施形態1に係る車両操舵装置1においてステアリングシャフト34の連結位置が変更された状態を図示しているが、他の実施形態についても同様に変更することができる。
【0044】
(変形例2)
変形例2に係る車両操舵装置1は、実施形態1に係る車両操舵装置1において、操舵輪が複数、具体的には2輪である。以下、本変形例について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
【0045】
図5(A)は、変形例2に係る車両操舵装置の概略構成を示す正面模式図であり、図5(B)は、車両操舵装置の動作を説明するための模式図である。なお、図5(B)は、下方(路面側)から見たときの車両操舵装置1を図示している。また、図5(B)では、ロッド22L,22Rおよび操舵輪WR,WLを透視している。図5(A)に示すように、変形例2に係る車両操舵装置1では、左操舵輪WL用と右操舵輪WR用の2つの操舵輪支持部材10が連結部20に連結されている。
【0046】
連結部20は、左操舵輪WL用のロッド22L、ピットマンアーム24Lおよびアイドラーアーム26Lと、右操舵輪WR用のロッド22R、ピットマンアーム24Rおよびアイドラーアーム26Rとを有する。実施形態1と同様に、ロッド22Lは、一端が左操舵輪WL用の操舵輪支持部材10の一端側に、ボールジョイント60Lを介して連結されている。ロッド22Lに連結された軸部材71には、ピットマンアーム24Lの一端側が連結され、ピットマンアーム24の他端側には軸部材72が固定されている。軸部材72は、軸受81に連結されている。また、ロッド22Lに連結された軸部材73には、アイドラーアーム26の一端側が連結され、アイドラーアーム26の他端側には軸部材74が連結されている。軸部材74は、軸受82に連結されている。
【0047】
ロッド22Rは、一端が右操舵輪WR用の操舵輪支持部材10の一端側に、ボールジョイント60Rを介して連結されている。ロッド22Rの所定位置には、軸部材76が回動可能に連結されている。この軸部材76には、ピットマンアーム24Rの一端側が回動可能に連結されている。ピットマンアーム24Rの所定位置には、軸部材77が回動可能に連結されている。軸部材77は、その中心軸が軸部材72の中心軸と同一直線上に位置するように配置され、車体BD側に固定された軸受84に回動可能に連結されている。ピットマンアーム24Rの他端側には、軸部材71が回動可能に連結されている。
【0048】
また、ロッド22Rの所定位置には、軸部材78が回動可能に連結されている。この軸部材78には、アイドラーアーム26Rの一端側が回動可能に連結されている。アイドラーアーム26Rの所定位置には、軸部材79が回動可能に連結されている。軸部材79は、その中心軸が軸部材74の中心軸と同一直線上に位置するように配置され、車体BD側に固定された軸受85に回動可能に連結されている。アイドラーアーム26Rの他端側には、軸部材73が回動可能に連結されている。本変形例では、ピットマンアーム24Rは、ボールジョイント60Rと連結されたロッド22Rの端部とは反対側の端部に連結され、ボールジョイント60Rとピットマンアーム24Rとの間にアイドラーアーム26Rが連結されている。
【0049】
操舵部30は、操舵ハンドル32と、ステアリングシャフト34とを有する。ステアリングシャフト34は、一端側が操舵ハンドル32に連結され、他端側が軸部材72を介してピットマンアーム24に連結されている。
【0050】
本実施形態に係る車両操舵装置1では、左操舵輪WLおよび右操舵輪WRの側方で操舵輪支持部材10に連結されたロッド22L,22Rが回転軸70の方向に延在し、ピットマンアーム24L,24Rを介して車体BD側に連結されている。また、ロッド22L,22Rは、アイドラーアーム26L,26Rを介して車体BD側に連結されている。そのため、操舵輪が複数の場合であっても、車両の旋回時に発生する横力に対する操舵輪支持部材10の剛性を高めることができ、ひいては横力に対する車両の剛性を高めることができる。
【0051】
図5(B)に示すように、例えば、左操舵輪WLおよび右操舵輪WRが右方向に転舵されるように操舵ハンドル32(図5(A)参照)が操作されると、ステアリングシャフト34(図5(A)参照)の回動により軸部材72に固定されたピットマンアーム24Lが軸部材72を中心に車両後方側に回動する。このピットマンアーム24Lの回動により、ロッド22Lが車両後方側に変位するとともに、ロッド22Lに連結されたフォーク部12がフォークコラム部14(図5(A)参照)を中心に回動し、ボールジョイント60Lに連結された部分が車両後方側に変位する。また、ロッド22Lに連結されたアイドラーアーム26Lが軸部材74を中心に車両後方側に回動する。その結果、操舵輪支持部材10が回動して左操舵輪WLが右方向に転舵される。
【0052】
また、ピットマンアーム24Lの回動と同時に、軸部材71に連結されたピットマンアーム24Rが軸部材77を中心に回動する。これにより、軸部材71が連結されたピットマンアーム24Rの他端側が車両後方側に、軸部材76が連結されたピットマンアーム24Rの一端側が車両前方側に変位する。このピットマンアーム24Rの回動により、ロッド22Rが車両前方側に変位するとともに、ロッド22Rに連結されたフォーク部12がフォークコラム部14(図5(A)参照)を中心に回動し、ボールジョイント60Rに連結された部分が車両前方側に変位する。また、ロッド22Rに連結されたアイドラーアーム26Rが軸部材79を中心に回動し、軸部材78が連結されたアイドラーアーム26Rの一端側が車両前方側に、軸部材73が連結されたアイドラーアーム26Rの他端側が車両後方側に変位する。その結果、操舵輪支持部材10が回動して右操舵輪WRが右方向に転舵される。
【0053】
左操舵輪WLが転舵される際、操舵輪支持部材10およびピットマンアーム24Lが回動することで、ロッド22Lが、転舵による左操舵輪WLの接近に対して退避する方向に変位する。また、右操舵輪WRが転舵される際、操舵輪支持部材10およびピットマンアーム24Rが回動することで、ロッド22Rが、転舵による右操舵輪WRの接近に対して退避する方向に変位する。そのため、左操舵輪WLとロッド22L、および右操舵輪WRとロッド22Rとがそれぞれ互いに干渉することを回避して、左操舵輪WLおよび右操舵輪WRを約90°まで転舵させることができる。
【符号の説明】
【0054】
BD 車体、 W 操舵輪、 WL 左操舵輪、 WR 右操舵輪、 1 車両操舵装置、 10 操舵輪支持部材、 20 連結部、 22,22L,22R ロッド、 24,24L,24R ピットマンアーム、 26,26L,26R アイドラーアーム、 32 操舵ハンドル、 34 ステアリングシャフト、 44 第1ギヤ、 46 第2ギヤ、 70 回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵輪を転舵するための車両操舵装置であって、
一端側が操舵輪の回転軸に連結され、他端側が操舵輪の上方で操舵輪の転舵軸周りに回動するよう車体側に連結される操舵輪支持部材と、
前記操舵輪支持部材の前記一端側に回動可能に連結され、車幅方向に延在する第1部材、および車体側と前記第1部材のそれぞれに回動可能に連結される第2部材を有する連結部と、を備え、
操舵輪が転舵される際、前記操舵輪支持部材および前記第2部材が回動し、前記第1部材が、転舵による操舵輪の接近に対して退避する方向に変位することを特徴とする車両操舵装置。
【請求項2】
操舵ハンドルに連結されたステアリングシャフトをさらに備え、
前記ステアリングシャフトは前記第2部材に連結され、前記ステアリングシャフトの回動により前記第2部材が回動し、この第2部材の回動により前記第1部材が変位するとともに前記操舵輪支持部材が回動して操舵輪が転舵される請求項1に記載の車両操舵装置。
【請求項3】
操舵ハンドルに連結されたステアリングシャフトをさらに備え、
前記ステアリングシャフトは前記操舵輪支持部材に連結され、前記ステアリングシャフトの回動により前記操舵輪支持部材が回動して操舵輪が転舵され、前記操舵輪支持部材の回動により前記第1部材が変位するとともに前記第2部材が回動する請求項1に記載の車両操舵装置。
【請求項4】
前記連結部は、車体側および前記第1部材のそれぞれに回動可能に連結される第3部材をさらに備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−18418(P2013−18418A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154601(P2011−154601)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】