説明

車両検出装置及び車両検出方法

【課題】遠赤外線方式のセンサを利用した車両検出を精度良く行うこと。
【解決手段】感知信号レベルと路面レベルとのレベル差が所定のレベル差閾値ΔV以上であるか否かによって車両の有無を検出する。このときのレベル差閾値ΔVを、感知環境に応じて変更する。具体的には、晴天時にはレベル差閾値ΔVを基準値αから増加量βだけ増加させて「α+β」とし、曇天時にはレベル差閾値ΔVを基準値αとし、雨天時にはレベル差閾値ΔVを基準値αから減少量γだけ減少させて「α−γ」とする。また、感知環境は、「車両有り」と検出した期間の感知信号の正負及びレベルをもとに判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両検出装置及び車両検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載される運転支援装置として、遠赤外線カメラで撮影した画像をもとに歩行者を認識する装置が知られている。かかる装置では、遠赤外線カメラによる撮影画像に対して、予め用意しておいた複数のモデル画像を用いてパターンマッチング処理をすることにより歩行者の検出を行う。このとき、歩行者の状態や環境条件の変化に応じて精度良く判定を行うため、複数のモデル画像のうち、降雨状態や外気温、時間帯に応じたモデル画像を用いる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−58805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、例えば路側に設置されて道路を走行する車両を検出する車両検出装置として、省電力の観点からパッシブセンサである遠赤外線方式のセンサを用いたものがある。遠赤外線方式のセンサを用いた車両検出では、路面と車両の温度が異なることを利用し、センサによる感知信号の信号レベルの変化から車両の有無を検出している。具体的には、感知信号レベルと路面レベルとのレベル差を所定の閾値と比較することで、車両の有無を検出する。
【0004】
しかしながら、路面や車両の温度は、例えば太陽光や降雨といった環境によって大きく変動する。つまり、路面と車両の温度差が環境によって大きく変動するため、検出精度が低下する。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、遠赤外線方式のセンサを利用した車両検出における検出精度の改善を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための第1の発明は、
路面に向けて設置された遠赤外線式センサと、
前記センサの感知信号の信号レベルと、所定の路面レベルとのレベル差が、車両有りと判定するための所定の閾値条件を満たすか否かによって、車両の有無を検出する車両検出手段と、
感知環境を判定する環境判定手段と、
前記感知環境に基づいて、前記閾値条件を変更する閾値条件変更手段と、
を備えた車両検出装置である。
【0006】
また、他の発明として、
車両感知用の遠赤外線式センサの感知信号の信号レベルと、車両不在時の所定の路面レベルとのレベル差が、車両有りと判定するための所定の閾値条件を満たすか否かによって、車両の有無を検出する車両検出ステップと、
感知環境を判定する環境判定ステップと、
前記感知環境に基づいて、前記閾値条件を変更する閾値条件変更ステップと、
を含む車両検出方法を構成しても良い。
【0007】
この第1の発明等によれば、遠赤外線式センサの感知信号の信号レベルと車両不在時の所定の路面レベルとのレベル差が、車両有りと判定するための所定の閾値条件を満たすか否かによって車両の有無が検出されるが、感知環境が判定され、判定された感知環境に基づいて閾値条件が変更される。ところで、路面や車両の温度は、太陽光や降雨といった感知環境によって変化する。つまり、感知環境によって、車両通過時の感知信号の信号レベルと路面レベルとのレベル差が変化し、その結果、感知精度が低下することがある。しかし、第1の発明等のように、判定した感知環境に基づいて閾値条件を変更することで、感知精度を改善することが可能となる。
【0008】
第2の発明として、第1の発明の車両検出装置であって、
前記環境判定手段は、前記レベル差の正負及び大きさを用いて感知環境を判定する車両検出装置を構成しても良い。
【0009】
この第2の発明によれば、感知環境は、レベル差の正負及び大きさを用いて判定される。
【0010】
具体的には、第3の発明のように、
前記環境判定手段は、前記閾値条件を満たした際の前記信号レベルが前記路面レベルより低く、且つ、前記レベル差の大きさが所定の大差条件を満たす場合に、晴天時相当環境にあると判定し、
前記閾値条件変更手段は、前記晴天時相当環境と判定された場合に、前記閾値条件に定められた閾値の大きさを所定の標準値より大きくするように変更する、
ように構成しても良い。
【0011】
この第3の発明によれば、閾値条件を満たした際の信号レベルが路面レベルより低く、且つ、レベル差の大きさが所定の大差条件を満たす場合に、晴天時相当環境にあると判定され、晴天時相当環境と判定された場合には、閾値条件に定められた閾値の大きさを所定の標準値より大きくするように変更される。晴天時相当環境では、太陽光によって路面が暖められることで、路面のほうが車両よりも温度が高い。このため、車両通過時の感知信号の信号レベルは、路面レベルよりも低い傾向がある。
【0012】
また、第4の発明のように、
前記環境判定手段は、前記閾値条件を満たした際の前記信号レベルが前記路面レベルより高く、且つ、前記レベル差の大きさが所定の大差条件を満たす場合に、曇天時相当環境にあると判定し、
前記閾値条件変更手段は、前記曇天時相当環境と判定された場合に、前記閾値条件を所定の標準閾値条件とするように変更する、
ように構成しても良い。
【0013】
この第4の発明によれば、閾値条件を満たした際の信号レベルが路面レベルより高く、且つ、レベル差の大きさが所定の大差条件を満たす場合に、曇天時相当環境にあると判定され、曇天時相当環境を判定された場合には、閾値条件を所定の標準閾値条件とするように変更される。曇天時相当環境では、太陽光の影響が殆ど無いことから、晴天時相当環境と比較して、車両のほうが路面よりも温度が高い。このため、車両通過時の感知信号の信号レベルは、路面レベルよりも高い傾向がある。なお、曇天時相当環境とは、太陽光の影響が無い環境であり、夜間等も含む。
【0014】
また、第5の発明のように、
前記環境判定手段は、所定回数連続して前記閾値条件を満たした際の各回の前記レベル差の大きさが、所定の小差条件を満たす場合に、雨天時相当環境にあると判定し、
前記閾値条件変更手段は、前記雨天時相当環境と判定された場合に、前記閾値条件に定められた閾値の大きさを所定の標準値より小さくするように変更する、
ように構成しても良い。
【0015】
この第5の発明によれば、所定回数連続して閾値条件を満たした際の各回のレベル差の大きさが所定の小差条件を満たす場合に、雨天時相当環境にあると判定され、雨天時相当環境と判定された場合には、閾値条件に定められた閾値の大きさを所定の標準値よりも小さくするように変更される。雨天時相当環境では、雨や雪によって路面や車両が冷やされることから、車両と路面の温度差が小さい。このため、車両通過時の感知信号の信号レベルと路面レベルとのレベル差が小さい傾向がある。
【0016】
第6の発明として、第1〜第5の何れかの発明の車両検出装置であって、
前記車両検出手段により車両がいないと検出された際の前記信号レベルに基づいて前記路面レベルを補正する路面レベル補正手段を更に備えた車両検出装置を構成しても良い。
【0017】
この第6の発明によれば、車両がいないと検出された際の信号レベルに基づいて、路面レベルが補正される。路面の温度は、感知環境等によって変化する。このため、路面レベルを適切な値に補正し、より精度の良い車両検出が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0019】
[システム構成]
図1は、本実施形態の車両感知システム1の設置例を示す図である。同図に示すように、車両感知システム1は、1又は複数の感知器(センサ)10と、制御装置20とを備えて構成される。感知器10それぞれと制御装置20とは、有線/無線によって通信可能となっている。
【0020】
感知器10は、路側に設置された柱の上方に、感知対象のレーンを上方から俯瞰するように設けられている。また、感知器10は、例えばサーモパイル素子を用いた遠赤外線式であり、感知対象の物体の温度に応じたレベルの感知信号を、随時、制御装置20に出力する。制御装置20は、この柱の下方に設置され、感知器10それぞれからの感知信号をもとに、該当するレーンにおける車両の有無を検出する。検出結果は、所定の通信回線を介して接続された集中管理センタ等に送られる。
【0021】
[原理]
感知器10からの感知信号にもとづく車両検出の原理を説明する。車両の有無は、感知信号の信号レベルと路面レベルとのレベル差が所定の閾値条件を満たすか否かによって検出する。閾値条件とは、「感知信号レベルと路面レベルとのレベル差が所定のレベル差閾値ΔVを超える」ことである。
【0022】
図2は、感知器10からの感知信号にもとづく車両検出の原理を説明する図である。図中、上側は車両通過時の感知信号を示し、下側は検出結果を示している。同図に示すように、路上に車両が存在しない場合、感知信号レベルは路面レベルにほぼ一致する。そして、車両が通過すると、路面と車両の温度が異なることから感知信号レベルが変動する。
【0023】
この車両通過時の感知信号レベルの変動を検出するため、路面レベルVbより所定のレベル差閾値ΔVだけ大きい(高い)上閾値VTH+、及び、レベル差閾値ΔVだけ小さい(低い)下閾値VTH−が定められる。そして、「感知信号レベルが下閾値VTH−以上、且つ、上閾値VTH+以下」であるならば、閾値条件を満たさない、すなわち「車両無し」と検出し、「感知信号レベルが下閾値VTH−未満、或いは、上閾値VTH+を超える」ならば、閾値条件を満たす、すなわち「車両有り」と検出する。
【0024】
なお、車両通過時の検知信号レベルは、過渡現象によって短期間で大きく変動する。このため、検知信号レベルが閾値条件を満たさなくなったら直ぐに「車両無し」とするのではなく、閾値条件を満たさない状態が所定時間継続した時点で「車両無し」と検出する。具体的には、感知信号レベルが閾値条件を満たさなくなった時点を起点とする保持期間Tkを設定し、この保持期間Tkが経過しても感知信号レベルが閾値条件を満たさないままの場合、その時点で「車両無し」とする。
【0025】
ところで、路面と車両の温度差は、時間帯や天候といった環境(以下、「感知環境」という)によって変化するが、この温度差の変化によって車両有無の検出精度が変化する。具体的には、路面と車両の温度差が大きいと車両有無の検出精度が良くなり、逆に、温度差が小さいと検出精度が悪くなる。
【0026】
路面と車両の温度差に影響を与える感知環境としては、(1)晴天時、(2)曇天時(夜間を含む)、(3)雨天時(降雪時を含む)、の3つに大別できる。一般的に、晴天時には、路面のほうが車両よりも温度が高い傾向がある。また、曇天時には、晴天時とは逆に、車両のほうが路面よりも温度が高い傾向がある。そして、雨天時には、晴天時や曇天時と比較して、路面と車両の温度差が小さい傾向がある。このため、本実施形態では、検出精度の変化に対応するため、感知環境に応じて閾値条件を変更する。また、感知環境は、感知信号の特徴から判断する。
【0027】
図3は、晴天時における車両通過時の感知信号の一例を示す図である。図中、上側は感知信号を示し、下側は検出結果を示している。晴天時には、路面が太陽光で暖められることで、路面のほうが車両よりも温度が高い傾向がある。このため、晴天時における車両通過時の感知信号の特徴として、感知信号レベルが路面レベルに対して低い「負」の波形であり、且つ、感知信号レベルと路面レベルとのレベル差は、レベル差閾値ΔVに対して大きいことがいえる。従って、晴天時には、レベル差閾値ΔVを、基準値αから所定の変更量(増加量)βだけ増加させて「α+β」とする。つまり、上閾値VTH+は「Vb+(α+β)」となり、下閾値VTH−は「Vb−(α+β)=Vb−α−β」となる。
【0028】
図4は、曇天時における車両通過時の感知信号の一例を示す図である。図中、上側は感知信号を示し、下側は検出結果を示している。なお、曇天時とは、太陽光の影響が殆ど無い環境であり、例えば夜間を含む。曇天時には、太陽光の影響が殆ど無いことから、車両のほうが路面よりも温度が高い傾向がある。このため、曇天時における車両通過時の感知信号の特徴として、感知信号レベルが路面レベルよりも高い「正」の波形となり、且つ、路面レベルと感知信号レベルとのレベル差はレベル差閾値ΔVに対して大きいことがいえる。従って、曇天時には、レベル差閾値ΔVを基準値αとする。つまり、上閾値VTh+は「Vb+α」となり、下閾値VTH−は「Vb−α」となる。
【0029】
図5は、雨天時における車両通過時の感知信号の波形の一例を示す図である。図中、上側は感知信号を示し、下側は検出結果を示している。雨天時には、路面及び車両の表面に水滴や雪が付着することで、路面と車両との温度差が小さくなる傾向がある。このため、雨天時における車両通過時の感知信号波形の特徴として、感知信号レベルと路面レベルとのレベル差が、レベル差閾値ΔVに対して小さいことがいえる。従って、雨天時には、レベル差閾値Δを、基準値αから変更量(減少量)γだけ減少させて「α−γ」とする。つまり、上閾値VTH+は「Vb+(α−γ)」となり、下閾値VTH−は「Vb−(α−γ)=Vb−α+γ」となる、
【0030】
また、路面温度も環境によって変化する。しかし、この路面温度の変化は、車両通過時の感知信号レベルの変化に比較して非常にゆっくりとした変化である。このため、車両の検出結果が「車両無し」のときに、感知信号に追従して路面レベルを補正する。例えば、「車両無し」と検出された期間の感知信号レベルを所定時間間隔でサンプリングし、その平均値を路面レベルとする。
【0031】
ここで、感知信号の「正/負」は次のように判断する。すなわち、例えば図3,図4に示すように、車両有りと検出された期間のうち、感知信号レベルが上閾値以上である上期間Tと、下閾値以下である下期間Tとの長さを比較する。そして、T>T、ならば、感知信号は「正」の波形と判断し、T>T、ならば、感知信号は「負」の波形と判断する。
【0032】
また、感知信号レベルと路面レベルのレベル差がレベル差閾値ΔVに対する「大きい/小さい」は、次のように判断する。すなわち、例えば図3に示すように、感知信号が「負」の波形の場合には、感知信号レベルの最小値Vpと下閾値VTH−とのレベル差Vmを算出する。そして、レベル差Vmを所定値Vtと比較して、Vm≧Vt、ならば、レベル差がレベル差閾値ΔVに対して「大きい」と判断し、Vm<Vt、ならば「小さい」と判断する。
【0033】
また、例えば図4に示すように、感知信号が「正」の波形の場合には、感知信号レベルの最大値Vpと上閾値VTH+とのレベル差Vmを算出し、同様に、Vm≧Vt、ならば、レベル差がレベル差閾値ΔVに対して「大きい」と判断し、Vm<Vt、ならば「小さい」と判断する。
【0034】
なお、所定値VtとしてVt1,Vt2(但し、Vt1≧Vt2)を定め、Vm≧Vt1、ならば、レベル差がレベル差閾値ΔVに対して「大きい」と判断し、Vm<Vt2、ならば「小さい」と判断することにしても良い。
【0035】
[機能構成]
図6は、制御装置20の機能構成を示すブロック図である。同図によれば、制御装置20は、機能的には、処理部100と、通信部200と、記憶部300とを有して構成される。
【0036】
処理部100は、例えばCPUで実現され、制御装置20の全体制御を行う。また、処理部100は、車両検出プログラム310に従った車両検知処理を行って、感知器10からの感知信号にもとづく車両検出を行う。
【0037】
具体的には、感知信号が閾値条件を満たすかによって車両の有無を検出する。すなわち、感知信号レベルと路面レベルとのレベル差をレベル差閾値Δと比較し、レベル差がレベル差閾値ΔV以上である期間を「車両有り」として検出する。このとき、レベル差がレベル差閾値ΔV未満となった時点から所定の保持期間Tkの間は、検出結果として「車両有り」を継続し、レベル差がレベル差閾値ΔV未満である期間が保持期間Tkに達した時点で、検出結果を「車両無し」とする。そして、検出結果として「車両有り」が継続された期間が、「1台の車両通過」の検出に相当する。
【0038】
ここで、閾値条件についてのデータは、閾値条件データ323に格納されている。図7は、閾値条件データ323のデータ構成の一例を示す図である。同図によれば、閾値条件データ323は、現在の路面レベル323aと、レベル差閾値323bと、上閾値323cと、下閾値323dとを格納している。
【0039】
また、感知器10からの感知信号は、感知信号蓄積データ324として蓄積記憶され、検出結果は、検出結果データ326として蓄積記憶される。
【0040】
そして、処理部100は、「車両有り」と検出した期間の感知信号をもとに、感知環境テーブル321に従って感知環境を判断する。
【0041】
図8は、感知環境テーブル321のデータ構成の一例を示す図である。同図によれば、感知環境テーブル321は、感知信号に基づく感知環境の判断条件を定義したデータテーブルであり、感知環境321aそれぞれについて、判断対象321bと、判断条件321cとを対応付けて格納している。判断対象321bは、判断対象とする感知信号の部分であり、「車両有り」と検出した期間の回数を格納している。判断条件321cには、感知信号の正負及び信号レベルが含まれる。
【0042】
すなわち、処理部100は、直近の「車両有り」と検出した期間の感知信号の正負や信号レベルの大きさから、「晴天時」或いは「曇天時」であるかを判断する。また、直近の所定回数(例えば、5回)連続して「車両有り」と検出した期間それぞれの感知信号の信号レベルの大きさから、「雨天時」であるかを判断する。ここで、判断された感知環境は、感知環境データ325として記憶される。
【0043】
感知環境を判断すると、続いて、閾値変更テーブル322に従って、判断した感知環境に応じた上/下閾値を変更する。
【0044】
図9は、閾値変更テーブル322のデータ構成の一例を示す図である。同図によれば、閾値変更テーブル322は、感知環境322aそれぞれについて、レベル差閾値322bを対応付けて格納している、
【0045】
すなわち、処理部100は、レベル差閾値ΔVを感知環境に対応する値に変更し、この変更に伴って、上閾値VTH+及び下閾値VTH−を変更する。
【0046】
なお、何れの感知環境であるとも判断できない場合には、レベル差閾値ΔVの変更を行わない。
【0047】
また、処理部100は、「車両無し」と検出した期間の感知信号をもとに、路面レベルを補正する。すなわち、「車両無し」と検出した期間の感知信号レベルを所定時間間隔でサンプリングした値の平均値を、路面レベルとする。
【0048】
図6に戻り、通信部200は、例えば無線通信モジュールやルータ、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等の通信装置で実現され、外部装置(例えば、中央管理サーバ)との間でデータ通信を行う。
【0049】
記憶部300は、例えばICメモリやハードディスク等で実現され、処理部100に制御装置20を統合的に制御させるためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶するとともに、処理部100の作業領域として用いられる。本実施形態では、記憶部300には、プログラムとして車両検出プログラム310が記憶されるとともに、データとして、感知環境テーブル321と、閾値変更テーブル322と、閾値条件データ323と、感知信号蓄積データ324と、感知環境データ325と、検出結果データ326とが記憶される。
【0050】
[処理の流れ]
図10は、車両検出処理の流れを説明するためのフローチャートである。同図によれば、処理部100は、先ず、初期設定として、例えば、レベル差閾値ΔVを「基準値α」とし、検出結果を「車両無し」とし、現在の感知環境を「曇天時」とする(ステップA1)。
【0051】
次いで、感知信号が閾値条件を満たすか否かを判断する。すなわち、感知信号レベルと路面レベルとのレベル差をレベル差閾値ΔVと比較し、レベル差がレベル差閾値ΔV以上ならば(ステップA3:YES)、検出結果を「車両有り」とする(ステップA5)。続いて、感知信号レベルと路面レベルとのレベル差を監視し、レベル差がレベル差閾値ΔV未満となったならば(ステップA7:YES)、その時点を起点とした保持期間Tkを設定する(ステップA9)。そして、レベル差がレベル差閾値ΔV未満のまま(ステップA11:NO)、この保持期間Tkが経過すると(ステップA13:YES)、検出結果を「車両無し」とする(ステップA15)。
【0052】
続いて、「車両有り」と検出した期間の感知信号をもとに感知環境を判断する(ステップA17)。すなわち、感知環境テーブル321に従って、直近の「車両有り」と判断した期間の感知信号の正負やレベルをもとに、判断条件を満たす感知環境を判断する。そして、判断した感知環境に応じて閾値条件を変更する(ステップA19)。すなわち、閾値変更テーブル322に従って、レベル差閾値ΔVを、感知環境に対応する値に変更し、更に、この変更に伴って上/下閾値を変更する。
【0053】
また、感知信号が閾値条件を満たさないならば(ステップA3:NO)、「車両無し」と判断した期間の感知信号をもとに、路面レベルを変更する(ステップA21)。以上の処理を行うと、ステップA3に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0054】
[作用・効果]
このように、本実施形態によれば、感知器10による感知信号が閾値条件を満たすか否かによって、車両の有無が検出されるともに、「車両有り」と検出した期間の感知信号をもとに、閾値条件が変更される。遠赤外線方式の感知器10を用いた車両検出では、路面と車両の温度が異なることを利用しているが、路面や車両の温度は、太陽光や降雨といった感知環境によって変化する。つまり、感知環境によって車両通過時の感知信号の信号レベルと路面レベルとのレベル差が変化し、その結果、感知精度が低下することがある。具体的には、路面と車両の温度差が大きいと車両有無の検出精度が良くなり、逆に、温度差が小さいと検出精度が悪くなる。しかし、本実施形態のように、感知環境に応じて閾値条件を変更することで、車両検出を精度良く行うことが可能となる。
【0055】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0056】
(A)感知環境の判定
例えば、上述の実施形態では、感知環境を感知信号から判断することにしたが、別途センサを設けたり、外部入力することにしても良い。例えば、照度計による計測値から「晴天時」かそれ以外かの環境かを判断したり、湿度計によって「雨天時」かそれ以外の環境かを判断したり、時刻によって「夜間(曇天時)」かそれ以外の環境かを判断する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】車両感知システムの設置例。
【図2】感知信号の波形例。
【図3】「晴天時」の感知信号の波形例。
【図4】「曇天時」の感知信号の波形例。
【図5】「雨天時」の感知信号の波形例。
【図6】制御装置の内部構成図。
【図7】閾値条件データのデータ構成例。
【図8】感知環境テーブルのデータ構成例。
【図9】閾値変更テーブルのデータ構成例。
【図10】車両検出処理のフローチャート。
【符号の説明】
【0058】
1 車両感知システム
10 感知器
20 制御装置
100 処理部、200 通信部
300 記憶部
310 車両検出プログラム
321 感知環境テーブル、322 閾値変更テーブル、323 閾値条件データ
324 感知信号蓄積データ、325 感知環境データ、326 検出結果データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に向けて設置された遠赤外線式センサと、
前記センサの感知信号の信号レベルと、所定の路面レベルとのレベル差が、車両有りと判定するための所定の閾値条件を満たすか否かによって、車両の有無を検出する車両検出手段と、
感知環境を判定する環境判定手段と、
前記感知環境に基づいて、前記閾値条件を変更する閾値条件変更手段と、
を備えた車両検出装置。
【請求項2】
前記環境判定手段は、前記レベル差の正負及び大きさを用いて感知環境を判定する請求項1に記載の車両検出装置。
【請求項3】
前記環境判定手段は、前記閾値条件を満たした際の前記信号レベルが前記路面レベルより低く、且つ、前記レベル差の大きさが所定の大差条件を満たす場合に、晴天時相当環境にあると判定し、
前記閾値条件変更手段は、前記晴天時相当環境と判定された場合に、前記閾値条件に定められた閾値の大きさを所定の標準値より大きくするように変更する、
請求項1又は2に記載の車両検出装置。
【請求項4】
前記環境判定手段は、前記閾値条件を満たした際の前記信号レベルが前記路面レベルより高く、且つ、前記レベル差の大きさが所定の大差条件を満たす場合に、曇天時相当環境にあると判定し、
前記閾値条件変更手段は、前記曇天時相当環境と判定された場合に、前記閾値条件を所定の標準閾値条件とするように変更する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の車両検出装置。
【請求項5】
前記環境判定手段は、所定回数連続して前記閾値条件を満たした際の各回の前記レベル差の大きさが、所定の小差条件を満たす場合に、雨天時相当環境にあると判定し、
前記閾値条件変更手段は、前記雨天時相当環境と判定された場合に、前記閾値条件に定められた閾値の大きさを所定の標準値より小さくするように変更する、
請求項1〜4の何れか一項に記載の車両検出装置。
【請求項6】
前記車両検出手段により車両がいないと検出された際の前記信号レベルに基づいて前記路面レベルを補正する路面レベル補正手段を更に備えた請求項1〜5の何れか一項に記載の車両検出装置。
【請求項7】
車両感知用の遠赤外線式センサの感知信号の信号レベルと、車両不在時の所定の路面レベルとのレベル差が、車両有りと判定するための所定の閾値条件を満たすか否かによって、車両の有無を検出する車両検出ステップと、
感知環境を判定する環境判定ステップと、
前記感知環境に基づいて、前記閾値条件を変更する閾値条件変更ステップと、
を含む車両検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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