説明

車両検知システム

【課題】 より軽量で検知精度に優れる車両検知システムを提供する。
【解決手段】 道路上の監視範囲を通過する車両を検知する車両検知システム1であり、検知対象が発する赤外線を感知するセンサ2と、このセンサ2の検知方向前方に配置される赤外線透過レンズ3と、センサ2に伝達される赤外線のうち、レンズ3を透過した赤外線以外の赤外線の量が外部環境によって変化するのを緩和する熱緩和材4とを具える。熱緩和材4は、外部環境によって放射する赤外線量が変化しにくいように熱伝導率が低い材料で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上の監視範囲を通過する車両を検知する車両検知システムに関するものである。特に、センサを収納する筐体の温度変化に影響されにくく、高精度に車両を検知することができ、より軽量な車両検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交通量や占有率などの交通流を調べるために車両を検知する車両検知器として、ループ検知器や超音波検知器などがよく知られている。しかし、ループ検知器は、ループコイルを道路に埋設する作業が必要である他、埋設スペースが確保しにくい橋梁などでは適用できないことがあった。また、超音波検知器は、車両のほぼ真上に位置するように配置する必要があり美観を損なう他、検知器自体が超音波を発するアクティブセンサを利用するため、消費電力が大きい傾向にあった。
【0003】
そこで、本発明者らは、上記従来の検知器の不具合を解消するべく、パッシブセンサである赤外線感知センサを利用した車両検知システムを提案している(特許文献1)。この車両検知システムは、サーモパイル素子などの赤外線を感知するセンサにより、車両が発する赤外線及び車両以外の物体(道路など)が発する赤外線をそれぞれ測定し、これら赤外線の量に基づいて、車両の有無を判定する構成である。また、赤外線を感知するエリアを絞り、赤外線をセンサに効率よく集光すると共に、透過させる波長を赤外線領域に絞るために、センサの検知方向前方に赤外線透過レンズを配置することを提案している(特許文献1図17参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003-317186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記本発明者らが提案した車両検知システムについて種々検討した結果、赤外線を感知するセンサを収納している筐体に大きな温度変化が生じた際、車両の検知を適正に行えない場合があることがわかった。本発明者らが調べたところ、センサは、レンズを透過した赤外線以外の赤外線、具体的には、センサの周囲に存在する筐体やレンズの支持部などから放射される赤外線も感知するため、筐体や支持部を熱伝導率が高いアルミニウムなどの金属材料で形成した場合、筐体や支持部の厚みによっては、筐体外部の環境変化によって筐体や支持部の温度が変化すると、その影響を強く受けることがわかった。
【0006】
そこで、本発明の主目的は、車両の検知率の悪化を低減して検知精度をより高くすることができる車両検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、センサの検知面に伝達される赤外線のうち、レンズを透過した赤外線以外の赤外線の量をほぼ一定に保持することができる構成とすることで上記目的を達成する。
【0008】
即ち、本発明は、道路上の監視範囲を通過する車両を検知する車両検知システムであって、検知対象が発する赤外線を感知するセンサと、前記センサの検知方向前方に配置される赤外線透過レンズと、前記センサに伝達される赤外線のうち、前記レンズを透過した赤外線以外の赤外線の量が外部環境によって変化するのを緩和する熱緩和材とを具えることを特徴とする。
【0009】
本発明者らは、車両検知システムの軽量化を図るべく、筐体や赤外線透過レンズの支持部をアルミニウムで形成してみた。そして、より軽量化を図るべく、筐体や支持部の厚みをできるだけ薄くしたところ、太陽光などで筐体や支持部が温められたり、風が吹くことで筐体や支持部が冷やされたりするなどして、筐体や支持部の温度が大きく変化した際、センサがこの温度変化に伴う赤外線量の変化を検知することで、車両の有無の判定が適切に行えない場合があることがわかった。熱伝導率が高いアルミニウムにて筐体や支持部を形成しても、厚みをある程度厚くすれば、太陽光や風などによって筐体の内側や支持部の内側、即ち、筐体や支持部においてセンサと向き合う面の温度が変化しにくいため、筐体や支持部の内側から放射される赤外線量は、太陽光や風などによらずほぼ一定に保持される。従って、外部環境によらず、適正に車両の有無を検知できる。即ち、厚みを大きくすることで、筐体や支持部の内側から放射される赤外線量の外部環境に起因する変化を小さくすることができ、センサも、この赤外線による影響をほとんど受けなくて済む。しかし、厚みを大きくすることで、重量が増加してしまう。そこで、本発明者らは、更なる軽量化を実現すると共に、センサが受ける筐体などから放射される赤外線による影響を低減するべく、同赤外線量の外部環境による変化を緩和する熱緩和材を具えることを規定する。以下、本発明をより詳しく説明する。
【0010】
本発明車両検知システムは、物体が発する赤外線の量を測定し、この赤外線の量に基づいて車両の有無を検知する。物体が発する赤外線の量は、ステファン・ボルツマンの法則により、物体の絶対温度のほぼ4乗に比例すると共に、物体の放射率εに比例する。道路上の物体、例えば、道路面や道路を走行する車両の放射率εは、通常、ほぼ同等(通常0.9以上)であり大差がないことが多い。そのため、赤外線を感知するセンサを道路面の方向に向けて設置しておけば、道路などの車両以外の物体と温度が異なる車両が道路面を通過した際、センサが感知する赤外線の量が変化することで、車両を検知することができる。このようなセンサとして、本発明では、センサ自体が赤外線を積極的に放出せず、検知対象が発する赤外線を感知するいわゆるパッシブセンサを具えることを規定する。このセンサは、赤外線が有する熱効果によって温められて温度の上昇によって生じる電気的性質の変化を検出できるものが好ましく、例えば、赤外線により熱電対に発生した温度変化を熱起電力として出力するサーモパイル素子が挙げられる。特に、熱起電力の出力が大きいサーモパイル素子を用いると、焦電センサなどの他のセンサを用いることなく、サーモパイル素子のみでも十分に赤外線の感知を行って、車両を検知することができる。
【0011】
また、本発明では、上記センサにおける赤外線を感知するエリアを適当な範囲に調整でき、かつ赤外線をセンサに効率よく集光するために、センサの検知方向前方に、赤外線透過レンズを配置する。赤外線透過レンズは、赤外線を透過するものであればよく、特に形状は問わない。例えば、一面が球面状でもよい。また、赤外線透過レンズは、特に、ZnSから形成されるものが好ましい。赤外線透過レンズとして、従来Ge(ゲルマニウム)などから形成されるものが知られているが、従来のレンズでは、ガラス系やシリコン系の補助材が必要である。これに対し、ZnSからなるレンズは、耐候性に優れており、レンズ自体を外部に露出させても十分使用に耐え得るため好ましい。
【0012】
そして、本発明の最も特徴とするところは、センサに伝達される赤外線のうち、上記赤外線透過レンズを透過した赤外線以外の赤外線(以下、第二赤外線と呼ぶ)の量が気温や風などの外部環境によって変化するのを緩和する熱緩和材を具えることにある。本発明では、システム全体の軽量化を図ると共に、筐体の温度変化に伴う車両検知率の悪化を効果的に抑制するべく、熱緩和材を配置して、センサが感知する赤外線を規制する。即ち、熱緩和材は、センサに伝達される第二赤外線の量を外部環境により変化しにくくし、ほぼ一定に保持する。このような熱緩和材は、アルミニウムなどの熱伝導率が高い材料に比較して熱伝導率が低い材料から形成することが挙げられる。具体的には、10W/mK以下の非金属材料からなるものが挙げられる。熱伝導率は、低いほど好ましく、特に、1.5W/mK以下が好ましい。このような非金属材料としては、例えば、ゴム、セラミックス、紙、プラスチックから選択される少なくとも1種が挙げられる。特に、ゴム、紙、プラスチックは、比較的安価であり、コストを低減できる。具体的なゴムとしては、軟質ゴム(熱伝導率0.14〜0.16W/mK)、硬質ゴム(熱伝導率0.17W/mK)などが挙げられる。具体的なセラミックスとしては、アルミナ、ジルコニアなどが挙げられる。熱伝導率が低い材料にて熱緩和材を形成することで、例えば、太陽光により筐体が温められて、筐体が放射する赤外線量が増加していても、熱緩和材は、温まりにくい、即ち、温度変化が生じにくい。従って、熱緩和材の内側に配置されるセンサに伝達される熱緩和材から放射される赤外線量を少なくすることができる。即ち、センサに伝達される熱緩和材から放射される赤外線量を外部環境によらずほぼ一定に保持することができる。
【0013】
上記熱緩和材の形状は、赤外線透過レンズを透過した赤外線がセンサの検知面に伝達されるのを妨げることがなければ、特に形状は問わない。例えば、筒状にして、一方の開口部でセンサを囲むようにし、他方の開口部をレンズに当接させるようにして配置させる、即ち、センサとレンズ間に亘って配置させることが挙げられる。このとき、赤外線透過レンズを透過した赤外線は、筒状の熱緩和材内を通過してセンサの検知面に伝達される。一方、筒状の熱緩和材の外周からの赤外線、例えば、筐体からの赤外線は、熱緩和材に遮られるため、センサの検知面に直接伝達されることがほとんどない。このような熱緩和材は、センサにできるだけ近接して配置することが好ましく、筐体内、特に、赤外線透過レンズの支持部の内側に配置することが好ましい。例えば、筐体に赤外線透過レンズを取り付けるレンズ孔を設け、筐体自体をレンズの支持部とする構成にすると、筐体内に上記熱緩和材を配置することで、レンズの支持部の内側に熱緩和材を配置することになる。
【0014】
本発明車両検知システムを構成する上記センサ、赤外線透過レンズ、熱緩和材、その他後述する車両有無の判定手段は、筐体に収納するとよい。筐体は、軽量のアルミニウムなどから形成されるものが好ましい。また、赤外線透過レンズの支持部を設けておく。この支持部は、上記のように筐体にレンズ孔を設けた筐体と一体構成としてもよいし、別途設けてもよい。前者の場合、筐体内には、赤外線透過レンズと焦点距離が合う位置にセンサの固定部を設けることが好ましい。後者の場合、赤外線透過レンズの支持部は、センサをも配置できる形状とし、支持部にセンサ及びレンズを配置した際、センサ、レンズ、支持部が一体の部材となるようにすると、筐体への設置作業が容易にできて好ましい。また、この支持部は、センサ及び赤外線レンズを配置した際、適切な焦点距離となるように形成すると、筐体の所定の場所に配置するとき、焦点距離の調整を行う必要がなく、好ましい。
【0015】
上記筐体には、赤外線透過レンズの指向角を目的の方向に合わせるための照準部を具えていてもよい。照準部は、指向角を目的の方向に合わせることができるものであればよく、例えば、凹状突起と、凸状突起とを組み合わせた突起などの目印を設けたり、レーザポインタなどを設ける構成が挙げられる。
【0016】
その他、本発明車両検知システムには、上記センサから得られた入力レベル値を用いて車両の有無の判定を行う判定手段を具えておく。また、センサとしてサーモパイル素子を用いる場合、素子の起電力を増幅するアンプを具えてもよい。更に、判定結果を信号制御機や管理センターなどに有線や無線にて送信する構成を具えていてもよい。
【0017】
本発明において車両の有無の判定は、上記センサから得られた入力レベル値を用いて行う。この入力レベル値は、そのまま用いるよりも、適当な演算を行った演算値を用いることが好ましい。例えば、車両以外の物体が発する赤外線量に基づく値を背景レベルとし、この背景レベルと入力レベル値との差に基づく値を比較値とし、判定手段は、比較値が閾値以上の場合、車両有りと判定し、比較値が閾値未満の場合、車両無しと判定する構成としてもよい。
【0018】
上記背景レベルは、上記センサで車両以外からの赤外線の量を随時検出しておき、この検出した赤外線の量に基づく値とすると、実際の環境の値に近似して、より精密な検知を行うことができる。例えば、車両以外からの赤外線を複数回検出したデータの平均値や、指数平滑法による演算値を用いてもよい。指数平滑法は、一般にf0=α×d-1+(1-α)f-1=f-1+α×(d-1-f-1)と表され(f0:次期予測値、α:平滑係数、d-1:前期の実績値、f-1:前期の予測値)、前期の実績値(ここでは、入力レベル値)を反映できるため、背景レベルを実際の環境(路面状況)に即したより的確な値となり得る。特に、平滑係数αを前回の車両判定結果に応じて変化させると、車両の赤外線の量(温度)に左右されずに背景レベルをより確実に把握することができる。なお、背景レベルの検出用のセンサと車両の検知用のセンサとを同一のものを用いると、背景レベルの検出用のセンサを設ける必要がない。
【0019】
背景レベルと入力レベル値との差に基づく値、即ち閾値と比較する比較値としては、入力レベル値と背景レベルとの差をそのまま用いるよりも、一定時間内の入力レベル値を積算した値を用いると、赤外線の放射量の変化における本質的な傾向を把握でき、車両の検知をより精度よく行えて好ましい。また、背景レベルと入力レベル値との差に加えて、入力レベル値の単位時間当たりの変化量を比較値として併用することが好ましい。この変化量は、背景レベルを加味していないことから、背景レベルによる影響を受けないため、入力レベル値と背景レベルとの差が小さくとも、入力レベル値が変化している間車両が存在しているとの判定を得易く、車両の認識できない場合などを低減する。この変化量は、直前よりも、少し前の入力レベル値と現在の入力レベル値との差とする方がより有効である。
【0020】
判定に用いる閾値(スレッショルド)は、実際の環境に応じて変化させることが好ましく、例えば、赤外線の量の変化(温度変化)が大きい(即ち、分散が大きい)とき、比較的大きな値とし、同小さい(即ち、分散が小さい)とき、比較的小さな値としてもよい。これらの閾値は、演算により求めてもよく、例えば、閾値を設定値+補正値として、補正値を変化させることで閾値を変化させてもよい。
【0021】
上記車両有無の判定を行うアルゴリズムは、特許文献1と同様の構成してもよい。
【0022】
このような本発明車両検知システムは、道路際に設けられている支柱に対し、いわゆるサイドファイア式に設置して、赤外線の感知を道路の側方から行うこともできる。
【発明の効果】
【0023】
上記構成を具える本発明車両検知システムは、熱緩和材を配置することで、レンズを透過した赤外線以外の赤外線の量が外部環境により変化しにくくなり、センサの検知面に伝達される同赤外線量が外部環境によらずほぼ一定に保持することができる。そのため、筐体の温度変化による車両の検知率の悪化を低減することができる。また、ゴムやセラミックスなどからなる熱緩和材を用いることで、筐体やレンズの支持部を構成するアルミニウムなどの金属材料を低減することができるため、更なる軽量化を実現する。
【0024】
更に、本発明車両検知システムは、自ら発した赤外線を感知することなく検知対象が発する赤外線を感知するセンサを用いているため、車両の側方に設置されても、風雨などの影響を受ける恐れが少なく車両の誤認を低減できる。即ち、美観の向上と検知精度の向上の双方を実現する。加えて、本発明システムは、パッシブセンサを用いるため、従来の超音波検知器に用いられているようなアクティブセンサと比較して、消費電力が少ない。そのため、例えば、太陽電池などで十分電力を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明車両検知システムを道路傍の支柱に取り付けた状態を示す概略図、図2は、本発明車両検知システムの構成を示す断面模式図である。本例に示す車両検知システム1は、道路100傍に配置される支柱130に取り付けられて、道路100の監視範囲110を通過する車両120をその側方から検知するものである。具体的には、このシステム1は、車両120からの赤外線、道路100などの車両120以外からの赤外線を感知して、これら赤外線の量に基づき車両の有無を調べるものであり、車両120や道路100などの検知対象が発する赤外線を感知するセンサ2と、このセンサ2の検知方向前方に配置される赤外線透過レンズ3とを具える(図2参照)。そして、本発明の最も特徴とすべき点は、レンズ3を透過した赤外線以外の赤外線の量を外部環境により変化するのを緩和する熱緩和材4を具える点にある。以下、より詳しく説明する。
【0026】
本例においてセンサ2は、立方体状の筐体5内に収納させており、車両有無の判定手段を有する回路基板6に配置し、筐体5内に設けた固定部5aにネジなどの固定部材を用いて、筐体5内に固定している。赤外線透過レンズ3は、筐体5の一面(センサ2と対向する面)にレンズ3を嵌合するためのレンズ孔を設け、この孔に嵌め込み、レンズ押え5bを介し、ネジなどの固定部材にて筐体5に固定している。本例では、センサ2及びレンズ3を筐体5に固定した際、適切な焦点距離となるように、固定部5aを設けている。
【0027】
また、本例においてセンサ2はサーモパイル素子を、赤外線透過レンズ3はZnSから形成される一面が球面状のレンズを用いた。筐体5は、アルミニウムにて形成した。回路基板6は、車両の有無の判定やセンサ2からの入力レベル値や演算値を記憶するメモリ、入力レベル値を用いて種々の演算を行う中央処理装置(CPU)と、センサ2からの入力レベル値を増幅するアンプとを具える。なお、図2では省略しているが、太陽電池10(図1参照)からの電力を供給できるように電力用配線、及び回路基板6の判定結果を信号制御機や管理センタに送信するべく、送信部(図示せず)への信号を伝送可能なように信号用配線が回路基板6に接続される。
【0028】
上記構成を具える車両検知システムでは、レンズ3の支持部が筐体5と一体になっており、別途支持部を設けていないことから、システム全体の軽量化を実現している。しかし、例えば、風が吹きつけるなどして、筐体5に急激な温度変化が生じた場合や、気温が高いことで筐体5が温められた場合などで、その温度変化によってセンサ2に伝わる赤外線量が変化する。この温度変化に伴う赤外線量の変化によって起電力が生じて、車両が監視範囲を通過していないのに車両有りと判定することがある。これは、レンズ3を透過した赤外線以外の赤外線(この例では筐体5からの赤外線)がセンサ2の検知面に伝達されるからである(図2破線矢印参照)。そこで、本発明では、レンズ3を透過した赤外線以外の赤外線の量が気温や風などの外部環境により変化するのを緩和して、センサ2の検知面に伝達される同赤外線量を安定させるために熱緩和材4を配置する。
【0029】
本例において熱緩和材4は、円筒状の軟質ゴムからなるものを用いており、図2に示すように、一方の開口部を基板6に接するように、かつセンサ2を囲むように配置し、他方の開口部をレンズ3に接するように配置している。即ち、本例では、基板6とレンズ3間に亘って熱緩和材4を配置している。このように基板6とレンズ3間に隙間がないように熱緩和材4を配置することで、筐体5からの赤外線がセンサ2に直接伝わることを抑制することができる。また、本例では、熱伝導率が低い材料にて熱緩和材4を形成しているため、例えば、気温が高い場合、筐体5が温められることで筐体5から放射される赤外線量が増加したとしても、熱緩和材4は温まりにくいため、熱緩和材4から放射される赤外線量の変化を少なくすることができる。従って、センサ2に伝達される赤外線のうち、レンズ3を透過した赤外線以外の赤外線量は、気温などの外部環境によらずほとんど変化しない。
【0030】
上記構成により、本発明車両検知システムは、熱緩和材により、センサの検知面に伝達される赤外線のうち、レンズを透過した赤外線以外の赤外線の量の変化を効果的に低減することができる。従って、レンズを透過した赤外線以外の赤外線による車両有無の誤認を低減する。
【0031】
なお、本発明車両検知システムは、検出対象が発する赤外線をセンサ(本例ではサーモパイル素子)で感知し、素子に生じた起電力をアンプにて増幅し、A/D変換器にてデジタル信号に変換して、入力レベル値を得る。そして、この入力レベル値と背景レベルとの差に基づく値(比較値)を演算し、この比較値が閾値以上かどうかで、車両の有無を判定する。判定結果は、集計して信号制御機や交通管理センターなどに送る。
【0032】
車両検知の操作手順を具体的に説明する。まず、センサを作動させ、背景レベルと閾値の初期学習を行う。このとき、車両の判定を行わないことが好ましい。初期学習により背景レベル及び閾値をより実際の環境により即した値とすることができる。得られた背景レベル及び閾値は、メモリに保存する。
【0033】
上記初期学習の後、車両の有無の判定を始める。まず、センサから得られた起電力をアンプで増幅して入力レベル値を得て、この入力レベル値を基に比較値及び閾値を演算する。そして、入力レベル値に基づき演算された比較値と閾値とを比較し、比較値が閾値以上の場合、車両有りと判定し、感知集計結果に「車両有り」と書き込み、メモリに保存する。比較値は、入力レベル値と背景レベルとの差に基づき演算した値を用いる。具体的には、入力レベル値bnと前回の背景レベルan-1との差分(背景差分と呼ぶ)を求め、この背景差分の一定時間における積算値を比較値とする。この積算値だけでなく、積算値と入力レベル値の単位時間当たりの変化量とを用いた演算値を利用してもよい。具体的には、上記と同様に入力レベル値と前回の背景レベルとの差分(背景差分)を求め、この背景差分の一定時間における積算値を求める。次に、変化量を求め、更に、この変化量の平均値を求める。この平均値を定数倍したものを今回の積算差分に加えて比較値とする。このように積算値だけでなく、変化量をも用いて演算した値を比較値とすることで、車両の誤認や認識できない場合などを更に低減する。また、このように変化量をも考慮した値をアルゴリズムに用いることで、焦電センサなどの他のセンサを用いることなく、サーモパイル素子のみでも十分に赤外線の感知を行って、車両の有無を判定することができる。
【0034】
閾値も実際の環境に応じて変化させるべく、本例では、赤外線量の変化、即ち、温度変化の大小で閾値を異ならせる。具体的には、閾値を設定値と補正値との和とし、設定値を最低値とし、設定値に種々の補正値を加えることで、環境に追従させる。
【0035】
一方、比較値が閾値未満の場合、車両無しと判定し、同様に感知集計結果に「車両無し」と書き込み、メモリに保存する。このとき、センサは、道路などの背景を検出したことになる。そこで、この判定に用いた入力レベル値は、演算に用いるために保存し、この入力レベル値を用いて背景レベルの演算を行う。本例では、指数平滑法による演算値を背景レベルとして用いる。具体的には、入力レベル値をbn、次回の判定に用いる背景レベルをan、平滑係数をαとするとき、an=an-1+α×(bn-an-1)を背景レベルとして用いる(an-1は前回の車両判定に用いた背景レベル)。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明車両検知システムは、交通量や占有率などの交通流を調べるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明車両検知システムを道路傍の支柱に取り付けた状態を示す概略図である。
【図2】本発明車両検知システムの構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0038】
1 車両検知システム 2 センサ 3 赤外線透過レンズ 4 熱緩和材
5 筐体 5a 固定部 5b レンズ押え 6 回路基板 10 太陽電池
100 道路 110 監視範囲 120 車両 130 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の監視範囲を通過する車両を検知する車両検知システムであって、
検知対象が発する赤外線を感知するセンサと、
前記センサの検知方向前方に配置される赤外線透過レンズと、
前記センサに伝達される赤外線のうち、前記レンズを透過した赤外線以外の赤外線の量が外部環境によって変化するのを緩和する熱緩和材とを具えることを特徴とする車両検知システム。
【請求項2】
熱緩和材は、熱伝導率が10W/mK以下の非金属材料からなることを特徴とする請求項1に記載の車両検知システム。
【請求項3】
熱緩和材は、ゴム、セラミックス、紙、プラスチックから選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1に記載の車両検知システム。
【請求項4】
センサとして、サーモパイル素子を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両検知システム。

【図1】
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【図2】
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