説明

車両熱流束調整装置

【課題】車体から伝播する熱気による不快感を低減することができる車両熱流束調整装置を提供する。
【解決手段】車体熱流束検出手段26と、人体熱流束検出手段27と、上記車体4の外表面に開口し、その車体4の温度を気化熱により低下させるために、上記車両1に設けられた冷房装置5のエバポレータ15から回収した凝縮水を滲み出させる複数の微細孔28と、それら微細孔28にエバポレータ15の凝縮水を供給するための凝縮水供給装置29と、上記人体熱流束検出手段27にて検出された熱流束から求めた人体温度が、上記車体熱流束検出手段26にて検出された熱流束から求めた車体温度未満であり、かつ上記冷房装置5が作動しているときに、上記微細孔28から凝縮水を滲み出させるために上記凝縮水供給装置29を作動させる供給装置制御手段30とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体から車室内に向かう熱流束を調整するための車両熱流束調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車室内の温度環境を調整する装置として、エアコンディショナが知られている。
【0003】
そのエアコンディショナは、車室内の空気を直接冷却あるいは加温して、車室内の気温を調整するようにしている。
【0004】
ところで、車外から車内への熱伝導には、車室内の空気による熱伝達の他に、車室を形成する車体から乗員への熱放射(熱輻射)がある。
【0005】
そのため、夏季などにおいてエアコンディショナを作動させたとしても、車外および車体から車室内への熱放射により、車室内の温熱環境は乗員にとって不快なものとなる。
【0006】
そこで、車体から車室内への熱伝播の対策方法として、現在、例えば、断熱材を用い、車体から車室内への熱を遮断するようにしている。
【0007】
例えば、特許文献1では、自動車の側面ボディなどに空気流通路(断熱空気層)を形成し、その空気流通路を通じて車室内の冷却された空気を車外に排出する換気断熱システムが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平5−338428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、断熱材を用いる場合、車両サイズから断熱材の厚さが制限され、冷却効果があまり高くないなどの問題があった。
【0010】
また、特許文献1の換気断熱システムでは、側面ボディを車室内の空気と熱交換させて冷却しているが、その車室内の空気の冷却は車両のエアコンにより行われるので、省エネルギー化を考えると、冷却効果をあまり高くできないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、車体から乗員に伝播する熱気による不快感を低減することができる車両熱流束調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、車両の車室内温度を調整すべく、上記車両の車体から上記車室内に向かう熱流束を調整するようにした車両熱流束調整装置であって、上記車体から上記車室内の人体への熱流束を検出する車体熱流束検出手段と、上記車室内の人体から上記車体への熱流束を検出する人体熱流束検出手段と、上記車体の外表面に開口し、その車体の温度を気化熱により低下させるために、上記車両に設けられた冷却装置のエバポレータから回収した凝縮水を滲み出させる複数の微細孔と、それら微細孔に上記車両に設けられた冷房装置のエバポレータから回収した凝縮水を供給するための凝縮水供給装置と、上記人体熱流束検出手段にて検出された人体の熱流束から求めた人体温度が、上記車体熱流束検出手段にて検出された車体の熱流束から求めた車体温度未満であり、かつ上記冷房装置が作動しているときに、上記微細孔から凝縮水を滲み出させるために上記凝縮水供給装置を作動させる供給装置制御手段とを備えたものである。
【0013】
好ましくは、上記車室内の室温を検出するための室温検出手段と、上記車体に沿って設けられ、その車体と導入される外気との間で熱交換を行うための外気通路と、その外気通路に外気を導入させるための外気導入装置と、上記車両のエンジンが停止状態で、かつ上記室温検出手段にて検出された室温が外気温よりも高く、上記室温が所定温度以上のときに、上記外気通路に外気を導入するために上記外気導入装置を作動させる導入装置制御手段とを備えたものである。
【0014】
好ましくは、上記車室内の室温を検出するための室温検出手段と、上記車体に沿って設けられ、その車体と導入される外気との間で熱交換を行うための外気通路と、その外気通路に外気を導入させるための外気導入装置と、上記人体熱流束検出手段にて検出された熱流束から求めた人体温度が、上記車体熱流束検出手段にて検出された熱流束から求めた車体温度未満であり、かつ上記冷房装置が作動していないときに、上記外気通路に外気を導入するために上記外気導入装置を作動させる導入装置制御手段とを備えたものである。
【0015】
好ましくは、上記エンジンに冷却水を循環させて該エンジンを冷却するエンジン冷却装置と、上記車体に沿って設けられ、その車体と上記エンジン冷却装置から導入される上記エンジン冷却後の暖かい冷却水との間で熱交換を行うための温水通路と、その温水通路を開閉するための温水切替弁と、上記人体熱流束検出手段にて検出された熱流束から求めた人体温度が、上記車体熱流束検出手段にて検出された熱流束から求めた車体温度以上のときに、上記温水通路にエンジン冷却後の暖かい冷却水を導入するために上記温水切替弁を開放する弁制御手段とを備えたものである。
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、車両の車室内温度を調整すべく、上記車両の車体から上記車室内に向かう熱流束を調整するようにした車両熱流束調整装置であって、上記車両に設けられた冷房装置のエバポレータから回収した凝縮水を、上記車室を形成する車体を濡らすために、車体に供給するための凝縮水供給装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車体から乗員に伝播する熱気による不快感を低減することができるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
本実施形態の車両熱流束調整装置は、例えば、トラックなど大型車両の車室(キャビン)の天井部分に適用される。
【0020】
まず、図1から図3に基づき、車両および車両熱流束調整装置の概略構造を説明する。
【0021】
図1に示すように、車両1は、乗員(以下、人体という)2が搭乗する車室3を区画形成する車体(ボディ)4と、車室3内の空気温度を調整するためのエアコンディショナー(以下、エアコンという)5と、車室内温度を調整すべく車両1の車体4から車室3内に向かう熱流束を調整する車両熱流束調整装置6と、エンジン7(図3参照)に冷却水を循環させてエンジン7を冷却するエンジン冷却装置8とを備える。
【0022】
車体4は、天井パネル9やドアパネル(図示せず)など複数のパネルを備える。本実施形態の天井パネル9は、外側天井パネル10と内側天井パネル11とを有する二重構造をなし、それら外側天井パネル10と内側天井パネル11との間には、後述する車両熱流束調整装置6の凝縮水通路32と、外気通路36と、温水通路41とが設けられる。また、本実施形態の外側天井パネル10の外表面には、光触媒(TiO2)などの親水処理が実施される。
【0023】
図2に示すように、エアコン5は、冷房装置をなし、冷媒を圧縮するコンプレッサ(図示せず)と、圧縮された冷媒を液化させるコンデンサ(図示せず)と、その液冷媒を気化させるエバポレータ15と、そのエバポレータ15に、車室3内の空気を導いて冷却した後、再び車室3内に戻すためのエアコンファン(図示せず)と、それらエアコンファンおよびコンプレッサの冷房運転・冷房停止を切り換えるためのエアコンスイッチ16とを備える。
【0024】
エバポレータ15には、空気中の水分がエバポレータ15の表面で凝縮してなる凝縮水を、車外に排出するためのドレーン通路17が設けられる。
【0025】
エアコンスイッチ16は、後述する電子制御ユニット(以下、CPUという)30に接続され、そのCPU30によりオン(冷房運転側)あるいはオフ(冷房停止側)が切り換えられる。
【0026】
図3に示すように、エンジン冷却装置8は、エンジン7に形成され冷却水が導入されるウォータジャケット14と、そのウォータジャケット14で熱交換した冷却水の熱を放熱するためのラジエタ18と、冷却水を貯留するリザーバタンク19と、それらウォータジャケット14、ラジエタ18、リザーバタンク19を連通する循環通路20と、その循環通路20を通して冷却水を循環させるための冷却水ポンプ(液送ポンプ)21と、冷却水の水温が所定の循環停止水温以下のとき循環通路20を閉鎖するサーモスタット22とを備える。
【0027】
冷却水ポンプ21は、エンジン7とラジエタ18との間の循環通路20に配置され、サーモスタット22は、エンジン7とリザーバタンク19との間の循環通路20に配置される。
【0028】
車両熱流束調整装置6は、夏季などにエアコン5で発生した凝縮水を車体表面で気化させて車体4を冷却するための車体気化冷却手段23と、車体4を外気と熱交換させて冷却するための車体外気冷却手段24と、冬季などに車体4をエンジン7から排出された冷却水と熱交換させて加温するための車体加温手段25とを備える。
【0029】
車体気化冷却手段23は、上記車体4から車室3内(車室3内の人体2(図1参照))に向かうの熱流束(熱放射など)を検出する車体熱流束検出手段26と、上記車室3内の人体2から上記車室3への熱流束を検出する人体熱流束検出手段27と、車体4の温度を気化熱により低下させるために水を滲み出させる複数の微細孔28と、それら微細孔28にエアコン5のエバポレータ15から回収した凝縮水を供給するための凝縮水供給装置29と、その凝縮水供給装置29の作動を制御するための供給装置制御手段をなすCPU30とを備える。また、上記車体熱流束検出手段26と人体熱流束検出手段27とを同一の熱流束センサとして用いることも可能である。
【0030】
車体熱流束検出手段26は、車室3内に設けられ車体4の内側天井パネル11に臨むよう配置される。人体熱流束検出手段27は、車室3内に設けられ人体2に臨むよう配置(例えば、運転席に臨ませて配置)される。
【0031】
それら車体熱流束検出手段26および人体熱流束検出手段27は、例えば、熱流束センサから成り、CPU30に検出した熱流束を送信すべく各々接続される。
【0032】
微細孔28は、車体4の外側天井パネル10に形成される。本実施形態の微細孔28は、外側天井パネル10の全域に配置される。例えば、微細孔28は、外側天井パネル10の全面に格子状に配置される。
【0033】
各微細孔28は、外側天井パネル10を貫通し、外側天井パネル10の外表面にて開口する。本実施形態の微細孔28は、約1mmの孔径を有する。
【0034】
凝縮水供給装置29は、微細孔28とエバポレータ15のドレーン通路17とを連通する凝縮水通路32と、その凝縮水通路32を開閉するための凝縮水切替弁33(図3では切替弁(1))と、凝縮水通路32内の凝縮水を圧送するための凝縮水ポンプ34とを備える。
【0035】
凝縮水通路32は、上流端がエバポレータ15のドレーン通路17に接続され、そのドレーン通路17から天井パネル9まで延びる。凝縮水通路32の下流部は、外側天井パネル10の内面に沿って形成され、外側天井パネル10に形成された各微細孔28に各々接続される。本実施形態では、外側天井パネル10の全面に配置された微細孔28に対応するよう、凝縮水通路32の下流部が複数に分岐する配管(枝管など)にて形成される。なお、図例では、ドレーン通路17の凝縮水を凝縮水通路32に直接導いたが、凝縮水を貯留するためのタンクを設け、そのタンクから凝縮水を凝縮水通路32に導くことも考えられる。
【0036】
凝縮水切替弁33は、凝縮水通路32におけるドレーン通路17との接続部に配置された三方弁からなり、ドレーン通路17を車外に連通させて凝縮水を車外に排出する車外位置(凝縮水通路32を閉塞)と、ドレーン通路17を凝縮水通路32に連通させて凝縮水を微細孔28に供給する微細孔位置(凝縮水通路32を開放)とで切り換えられる。
【0037】
凝縮水切替弁33は、CPU30に接続され、そのCPU30により車外位置と微細孔位置とで切替制御される。
【0038】
凝縮水ポンプ34は、凝縮水切替弁33よりも微細孔28側(下流側)の凝縮水通路32に配置される。凝縮水ポンプ34の送圧は、凝縮水が微細孔28から滲み出るよう、0.5〜35.0MPaに設定される。図例では、孔径約1mmの微細孔28から出る凝縮水の流量が約0.1ml/分となるよう凝縮水ポンプ34の送圧が設定される。
【0039】
ここで、微細孔28の孔径を約1mm、凝縮水ポンプ34の送圧を0.5〜35.0MPaに設定し、微細孔28への供給流量を約0.1ml/分としたのは、この程度の供給流量であれば、外側天井パネル10からフロントガラスなどに滴るような水量には至らないためである。したがって、ワイパーなどの作動は不要となる。
【0040】
凝縮水ポンプ34は、CPU30に接続され、そのCPU30により作動・非作動の切替および送圧などが制御される。
【0041】
CPU30は、車体熱流束検出手段26および人体熱流束検出手段27や後述する室温検出手段35および外気温検出手段38などのセンサ類に接続され、それらセンサ類の検出信号(熱流束値、室温、外気温など)を受信する。
【0042】
CPU30は、凝縮水ポンプ34、凝縮水切替弁33、エアコンスイッチ16や後述する外気ファン40、温水切替弁42などに接続され、これらに制御信号を送信する。
【0043】
また、CPU30には、電力を供給するための電源31(図1参照)が接続される。
【0044】
本実施形態のCPU30は、詳しくは後述するが、人体熱流束検出手段27にて検出された上記車室3内の人体2から上記車体4への熱流束から求めた人体温度が、車体熱流束検出手段26にて検出された上記車体4から上記車室3内の人体2への熱流束から求めた車体温度未満であり、かつエアコン5(コンプレッサなど)が作動(冷房運転)しているときに、上記微細孔28から凝縮水を滲み出させるために、上記凝縮水供給装置29を作動させる。その凝縮水供給装置29の作動は、凝縮水ポンプ34を作動させると共に、凝縮水切替弁33を微細孔位置に切り換えることで行われる。
【0045】
このように本実施形態の車体気化冷却手段23では、エアコン5のエバポレータ15から発生した凝縮水を利用するようにしている。つまり、凝縮水を、凝縮水ポンプ34にてエバポレータ15から天井部分への配管(凝縮水通路32)に輸送し、その天井部分に設けられた微細孔28より外側天井パネル10の表面に放出するようにしている。
【0046】
次に、車体外気冷却手段24は、上記車室3内の室温を検出するための室温検出手段35(図2参照)と、車体4と外気との間で熱交換を行うための外気通路36と、その外気通路36に外気を導入させるための外気導入装置37と、その外気導入装置37を制御する導入装置制御手段とを備える。本実施形態の導入装置制御手段は、CPU30にて構成される。
【0047】
室温検出手段35は、車室3内に設けられ車室3内の気温を検出する。室温検出手段35は、例えば、熱電対からなる。室温検出手段35は、CPU30に検出温度を送信すべく接続される。
【0048】
図3に戻り、外気通路36は、天井パネル9に沿って形成され、上記車体4と導入された外気との間で熱交換を行い、凝縮水通路32と温水通路41との間に配置される。その外気通路36の一端(上流端)には、後述する外気導入装置37の導管39が接続され、他端(下流端)は、車外(外気)に開放される。
【0049】
外気導入装置37は、外気通路36と車外とを連通する導管39と、その導管39内に配置され外気を外気通路36に向け圧送する外気ファン40とを備える。
【0050】
空気層を導入する導管39の内部には、熱交換を効率よく行うために旋回流を生み出すようスパイラル状に形成されたフィンなど(図示せず)が配置される。
【0051】
外気ファン40は、CPU30に接続され、作動・非作動の切替や風量などが制御される。本実施形態の外気ファン40は、電動ファンからなり、エンジン7が停止時であっても作動できるよう太陽電池やバッテリなどの供給源(図示せず)に接続される。外気ファン40は、クロスフローファン、シロッコファンなどが考えられる。
【0052】
また、車両1には、外気温を検出するための外気温検出手段38が設けられる。
【0053】
導入装置制御手段をなすCPU30は、上記車両1のエンジン7が停止状態で、かつ上記室温検出手段35にて検出された室温が外気温検出手段38にて検出された外気温よりも高い所定温度以上のときに、上記外気通路36に外気を導入するために外気導入装置37の外気ファン40を回転作動させる。尚、上記所定温度は20℃以上であればよく、更には50℃であることが好ましい。
【0054】
また、導入装置制御手段をなすCPU30は、人体熱流束検出手段27にて検出された上記車室3内の人体2から上記車体4への熱流束から求めた人体温度が、車体熱流束検出手段26にて検出された上記車体4から上記車室3内の人体2への熱流束から求めた車体温度未満であり、かつ上記エアコン5が作動していない(冷房停止)ときに、上記外気通路36に外気を導入するために外気導入装置37の外気ファン40を回転作動させる。
【0055】
このように本実施形態の車体外気冷却手段24では、外気の冷風を、外気ファン40などを利用して、車両1の天井の外気通路(空気通路)36に導入、取り込むようにしている。
【0056】
次に、車体加温手段25は、上記エンジン冷却装置8と、エンジン冷却後の暖かい冷却水と車体4との間で熱交換を行うための温水通路41と、その温水通路41を開閉するための温水切替弁42(図3では切替弁(2))と、その温水切替弁42を制御するための弁制御手段とを備える。本実施形態の弁制御手段は、CPU30で構成される。
【0057】
温水通路41は、上流端がエンジン7とラジエタ18との間の循環通路20に接続され、エンジン冷却後の暖かい冷却水が導入されるようになっている。温水通路41の中間部は、天井パネル9に沿って形成され、内側天井パネル11と外気通路36との間に配置される。また、温水通路41の下流端は、リザーバタンク19に接続され、車体4と熱交換後の冷却水がリザーバタンク19に戻されるようになっている。
【0058】
本実施形態の温水切替弁42は、温水通路41における冷却水路との接続部に配置された三方弁からなり、エンジン7のウォータジャケット14をラジエタ18に連通させるラジエタ位置(温水通路41を閉塞)と、ウォータジャケット14を温水通路41に連通させる温水通路位置(温水通路41を開放)とで切り換えられる。
【0059】
具体的には、温水切替弁42は、CPU30に接続され、そのCPU30によりラジエタ位置と温水通路位置とで切替制御される。
【0060】
弁制御手段をなすCPU30は、人体熱流束検出手段27にて検出された上記車室3内の人体2から上記車体4への熱流束から求めた人体温度が、車体熱流束検出手段26にて検出された上記車体4から上記車室3内の人体2への熱流束から求めた車体温度以上のときに、上記温水通路41にエンジン冷却後の暖かい冷却水を導入するために上記温水切替弁42を開放する。その温水切替弁42の開放は、温水切替弁42を温水通路位置に切り換えることで行われる。
【0061】
以上のように、車体4に対しての外気冷風またはエンジン排熱の導入切り替えは、外気ファン40および温水切替弁42を作動(連動)させることにより可能となっている。
【0062】
次に、図1から図4に基づき、本実施形態の車両熱流束調整装置6の作動を説明する。
【0063】
本実施形態の車両熱流束調整装置6は、まず、車体4の放射エネルギーを車体熱流束検出手段26で計測すると共に、人体2の放射エネルギーを人体熱流束検出手段27で計測する。
【0064】
そのように人体2、車両1の車体4からの熱流束を捕捉した後、それら熱流束から人体温度および車体温度を各々求める。
【0065】
その求めた人体温度が車体温度未満(人体温度<車体温度)であり、かつエアコン5が冷房運転しているときは、エバポレータ15で発生した凝縮水を車体4の微細孔28から滲み出るよう放水し、その凝縮水の気化熱を利用して車体温度を低下させる。
【0066】
すなわち、夏季などの冷房使用時において、車体温度が高温の場合には、エバポレータ15で発生し一般には車外に排水される凝縮水を、凝縮水切替弁33を切り替えることで、車体表面の微細孔28から排出して、その凝縮水の気化熱により車体表面温度の低下を図る。
【0067】
これにより、夏季などにおいて、車体4から車室3内に流入する熱流束(熱負荷)を低減することができ、車両1に乗車している人員の不快感を低減することが可能となる。
【0068】
また、人体温度が車体温度未満であってもエアコン5が冷房運転していないときは、車体温度を低下させるために、冷却用の外気ファン40を稼働させて、その外気ファン40により外気(屋外空気)を外気通路36に取り込み車体4を冷却させる。
【0069】
これによっても、車体4から車室3内に流入する熱流束を低減することができ、人員の不快感を低減することが可能となる。
【0070】
以上の機能付加により夏季のエアコンシステムの省動力化などが可能になる。
【0071】
一方、人体温度が車体温度以上のときは(人体温度>=車体温度)、車体4を加温するために温水切替弁42を開放して温水通路41にエンジン7の冷却水を導入する。
【0072】
このように、冬季は、エンジン排熱などを利用し温水(冷却水)を流して車体4を暖めることで、車室3内から車体4に流出する熱流束(或いは車体4から車室3内に流入するマイナスの熱流束)を低減することができ、人員の冷感を防ぐことが可能となる。
【0073】
以上のように本実施形態の車両熱流束調整装置6は、車体4から伝播する冷気・熱気による乗員の不快感を低減することができる。
【0074】
次に、図4に基づき、車両熱流束調整装置6のシステムフローの一例を説明する。図4に示すように、ステップS1以下のフローは、ステップS0でCPU30の主電源がオンのときに実行される。
【0075】
まず、ステップS1では、CPU30は、エンジン7がオン(運転状態)か否かを判断し、エンジン7が運転状態ならば、CPU30は、ステップS2で車体熱流束検出手段26により車体4からの熱流束を計測し、人体熱流束検出手段27により人体2からの熱流束を計測する。さらに、CPU30は、計測された車体4の熱流束から車体温度を求め、人体2の熱流束から人体温度を求める。
【0076】
ステップS3では、CPU30は、ステップS2で求めた人体温度が車体温度未満であるか否かを判断する。ステップS3で、人体温度が車体温度未満の場合、CPU30は、ステップS4で、エアコン5が冷房運転中であるか否かを判断する。
【0077】
すなわち、ステップS3で人体温度が車体温度未満である場合は、車体4から車室3内に熱が流入しており、車体4を冷却する必要があると判断する。さらに、車体4を冷却するに際してエアコン5の凝縮水を利用できるか否かを判断すべく、ステップS4で、エアコン5が冷房運転中か否かを判断する。
【0078】
ステップS4で、エアコン5が冷房運転中であると判断した場合、CPU30は、ステップS5で凝縮水切替弁33(図4では、切替弁(1))を微細孔位置に切り替え(開放し)、ステップS6で凝縮水ポンプ34を作動させる。
【0079】
これにより、ドレーン通路17と凝縮水通路32とが連通し、エバポレータ15で発生した凝縮水が、凝縮水ポンプ34により、ドレーン通路17および凝縮水通路32を経て、外側天井パネル10の微細孔28に圧送される。さらに、圧送された凝縮水は、微細孔28から外側天井パネル10の表面に滲み出て、気化する。その気化熱により、外側天井パネル10の熱が奪われ、外側天井パネル10が冷却される。
【0080】
一方、ステップS4で、エアコン5が冷房運転中でないと判断した場合、CPU30は、ステップS8で、外気ファン40を作動させる。
【0081】
これにより、外気通路36内を外気ファン40により導入された外気が流れ、その外気により外側天井パネル10(および内側天井パネル11)の熱が奪われ、外側天井パネル10(および内側天井パネル11)が冷却される。
【0082】
このように、エアコン5が冷房運転中でない場合は、エバポレータ15で凝縮水が発生しないので、外気による空冷を行うようにしている。
【0083】
次に、ステップS3で、人体温度が車体温度以上である場合は、CPU30は、ステップS7で温水切替弁42(図4では切替弁(2))を開放する。
【0084】
すなわち、人体温度が車体温度以上である場合は、車室3内から車体4に熱が流出(或いは、車体4から車室3内に冷熱が流入)しており、車体4を加温する必要があると判断して、温水切替弁42を温水通路位置に切り換える。
【0085】
これにより、エンジン7のウォータジャケット14と温水通路41とが連通して、ウォータジャケット14からの暖められた冷却水が温水通路41内にて外側天井パネル10(および内側天井パネル11)と熱交換して、その外側天井パネル10(および内側天井パネル11)が加温される。一方、熱交換後、冷却された冷却水は、リザーバタンク19にて回収される。
【0086】
次に、ステップS1でエンジン7が運転中でない(停止中)と判断された場合、ステップS9で、CPU30は、室内温度検出手段35にて検出された室温が所定温度(図例では、50℃)以上であるか否かを判断する。
【0087】
ステップS9で室内温度が所定温度以上と判断された場合(例えば、車両1が炎天下駐車中など)、CPU30は、ステップS8に進み、外気ファン40を太陽電池などの供給源により回転作動させて、外側天井パネル10(および内側天井パネル11)を外気により冷却する。
【0088】
このように外気ファン40を太陽電池などと組み合わせることにより、炎天下駐車中でも外気ファン40を稼働して、車体温度、ひいては車内温度を低下させることができ、乗員が車両1に乗り込む際の灼熱感の低減が可能となる。
【0089】
以上のように、本実施形態の車両熱流束調整装置6では、エバポレータ15の凝縮水を外側天井パネル10の微細孔28より滲み出るようにし、外側天井パネル10の外表面を濡らすことで、気化熱を利用して外側天井パネル10の外表面を冷却することができる。
【0090】
その他にも、外側天井パネル10の外表面に、光触媒(TiO2)などによる親水処理を施すことで、外側天井パネル一面に凝縮水が広がり易くなり、その凝縮水の気化熱により、外側天井パネル10の熱が効率的に奪われ、外側天井パネル10の冷却効果を高めることができる。
【0091】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
【0092】
例えば、車両熱流束調整装置6の主な適用場所は、車体4の天井であるが、これに限定されず、ドアなどに適用することも考えられる。
【0093】
また、上述した実施形態では、人体温度が車体温度未満であり、かつエアコン5が冷房運転中のときに、凝縮水供給装置29のみを作動させたが、凝縮水供給装置29と同時に外気導入装置37を作動させるようにしてもよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、人体温度が車体温度未満であり、かつエアコン5が冷房運転中でないときに、外気導入装置37のみを作動させたが、これに限定されず、例えば、凝縮水供給装置29に、エバポレータ15の凝縮水を貯留するための凝縮水タンクを設け、人体温度が車体温度未満であり、かつエアコン5が冷房運転中でないときに、外気導入装置37による冷却だけで不十分の場合には、更に冷却をおこなうため凝縮水供給装置29を作動させるようにしてもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、外気導入装置37の外気ファン40を車内(導管39内)に配置したが、これに限定されず、外気ファン40を車外に配置するようにしてもよい。
【0096】
また、人体温度の検出を省略すると共に、車体温度を直接検出する車体温度検出手段を車体4に設けることも考えられる。
【0097】
すなわち、上記車体4の温度を検出する車体温度検出手段を設け、CPU30が、車体温度検出手段にて検出された車体温度が所定温度(例えば、約36℃)を超え、かつ上記冷房装置が作動しているときに、上記微細孔28から凝縮水を滲み出させるために上記凝縮水供給装置29を作動させるものでもよい。
【0098】
また、上述した実施形態では、車両熱流束調整装置6をトラックなどに適用したが、これに限定されず、室内換気を必要とする住宅、航空機、鉄道などに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、本発明に係る一実施形態による車両熱流束調整装置の概略図である。
【図2】図2は、本実施形態の車両熱流束調整装置の概略図である。
【図3】図3は、本実施形態の車両熱流束調整装置の部分詳細図である。
【図4】図4は、本実施形態の車両熱流束調整装置によるシステムフローの一例を示す。
【符号の説明】
【0100】
1 車両
2 人体
3 車室
4 車体
5 エアコン(冷房装置)
6 車両熱流束調整装置
15 エバポレータ
26 車体熱流束検出手段
27 人体熱流束検出手段
28 微細孔
29 凝縮水供給装置
30 CPU(供給装置制御手段、導入装置制御手段、弁制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内温度を調整すべく、上記車両の車体から上記車室内に向かう熱流束を調整するようにした車両熱流束調整装置であって、
上記車体から上記車室内の人体への熱流束を検出する車体熱流束検出手段と、上記車室内の人体から上記車体への熱流束を検出する人体熱流束検出手段と、上記車体の外表面に開口し、その車体の温度を気化熱により低下させるために、上記車両に設けられた冷却装置のエバポレータから回収した凝縮水を滲み出させる複数の微細孔と、それら微細孔に上記エバポレータから回収した凝縮水を供給するための凝縮水供給装置と、上記人体熱流束検出手段にて検出された熱流束から求めた人体温度が、上記車体熱流束検出手段にて検出された熱流束から求めた車体温度未満であり、かつ上記冷房装置が作動しているときに、上記微細孔から凝縮水を滲み出させるために上記凝縮水供給装置を作動させる供給装置制御手段とを備えたことを特徴とする車両熱流束調整装置。
【請求項2】
上記車室内の室温を検出するための室温検出手段と、上記車体に沿って設けられ、その車体と導入される外気との間で熱交換を行うための外気通路と、その外気通路に外気を導入させるための外気導入装置と、上記車両のエンジンが停止状態で、かつ上記室温検出手段にて検出された室温が外気温よりも高く、上記室温が所定温度以上のときに、上記外気通路に外気を導入するために上記外気導入装置を作動させる導入装置制御手段とを備えた請求項1記載の車両熱流束調整装置。
【請求項3】
上記車室内の室温を検出するための室温検出手段と、上記車体に沿って設けられ、その車体と導入される外気との間で熱交換を行うための外気通路と、その外気通路に外気を導入させるための外気導入装置と、上記人体熱流束検出手段にて検出された熱流束から求めた人体温度が、上記車体熱流束検出手段にて検出された熱流束から求めた車体温度未満であり、かつ上記冷房装置が作動していないときに、上記外気通路に外気を導入するために上記外気導入装置を作動させる導入装置制御手段とを備えた請求項1記載の車両熱流束調整装置。
【請求項4】
上記エンジンに冷却水を循環させて該エンジンを冷却するエンジン冷却装置と、上記車体に沿って設けられ、その車体と上記エンジン冷却装置から導入される上記エンジン冷却後の暖かい冷却水との間で熱交換を行うための温水通路と、その温水通路を開閉するための温水切替弁と、上記人体熱流束検出手段にて検出された熱流束から求めた人体温度が、上記車体熱流束検出手段にて検出された熱流束から求めた車体温度以上のときに、上記温水通路にエンジン冷却後の暖かい冷却水を導入するために上記温水切替弁を開放する弁制御手段とを備えた請求項1から3いずれかに記載の車両熱流束調整装置。
【請求項5】
車両の車室内温度を調整すべく、上記車両の車体から上記車室内に向かう熱流束を調整するようにした車両熱流束調整装置であって、
上記車両に設けられた冷房装置のエバポレータから回収した凝縮水を、上記車室を形成する車体を濡らすために、車体に供給する凝縮水供給装置を備えたことを特徴とする車両熱流束調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−110709(P2008−110709A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295878(P2006−295878)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】