説明

車両用のエネルギ吸収サイドレール

車両用のサイドレールが、1400MPaを上回る引張強度を有し、そして車両の安全ケージから突出し、バンパーを支えるように適合される一つの端部(16)を有する。安全ケージから突出する端部が、少なくとも0.4mの長さにわたって、1000MPa未満の降伏点をもつ、低強度を有する。
それは、少なくとも0.2mの長さと800MPaより下の引張強度をもつ外側部分、及び外側部分より高い引張強度をもつ内側部分を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の安全ケージから突出し、バンパーを支えるように適合される一つの端部を有し、1400MPaを上回る引張強度を有する、車両用のサイドレールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば乗用車は、一般的に、車両の底部パネルに熔接される、前部と後部との双方にサイドレールを有し、これらのサイドレールはバンパーを支える。特許文献1には、バンパーを支えるための前部サイドレールを備えた乗用車が記載されており、このサイドレールは、衝突の場合に、サイドレールの軸方向変形の変形トリガとして、作動することになっている、複数の幅の狭い、軟質部分を有す。軟質部分が、硬質部分の変形をトリガする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US6820924B2
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、高張力鋼製のサイドレールの場合においても、大きなエネルギ吸収をもたらす、コントロールされた変形を可能にすることである。これは、安全ケージから突出するサイドレールの端部が、少なくとも0.4mの長さにわたって、1000MPa未満の降伏点をもつ、低強度を有することにより達成される。突出する端部は、好都合には、少なくとも0.2mの長さと800MPa未満の引張強度をもつ外側部分、及び外側部分より高い引張強度をもつ内側部分を有する。内側部分と外側部分の双方は、車両の内側に向かって、次第に、引張強度が増えている、2つ又はそれ以上の部分を含んでいてもよい。
【0005】
本発明は請求項により画成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】車両用の短いサイドレールを示す透視図である。
【図2】閉プロフィルを与えるカバーを有する、図1に記載のサイドレールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、開いたU字形状断面及び幅の狭いサイドフランジ12,13を備えた、短い前部サイドレールを示す透視図である。サイドレールは、後部分14のサイドフランジ12,13を、車両の底部パネルに、即ち車両の床に、又は床の下側の部材に、熔接することにより、車両に取り付けられる。一対のサイドレールが、バンパーを支えるようになっている場合、サイドレールは、その前端部がバンパーに対して正しい高さになるように、S−ベンド15を有する。サイドレールの端部は、有利には、熔接端部板(図示されていない)を有してよく、バンパーをこの板にボルト留めすることができる。車両は、安全ケージと呼ばれるもの、及び安全ケージの前と後ろにある変形ゾーンを有す。安全ケージは、通常、車両の前端部にあるカウル・ウォール(cowl wall)から、その後端部にある燃料タンクを越えて伸びる。サイドレールの後部分14とそのS−ベンド15は、安全ケージに付属し、一方サイドレールの前部分16は、前部変形ゾーンに付属する。
【0008】
サイドレールは高張力鋼製であり、有利には、プレスハードニングにより製作することができる。即ち、素材をオーステナイト化温度まで加熱し、熱した状態で、冷却した工具対(tool pair)に移し、そこで熱間鍛造し、次いでそれが硬化するまで、数秒間、放置する。この方法により、1400MPaより高い引張強度がもたらされる。急冷、従って製品の特定部分のフルハードニングは、様々な方法で、例えば工具対と仕上げ品との間に隙間を備えることにより、又は他の冷却工具対の選択部分を加熱することにより、防止することが出来る。
【0009】
衝撃の場合、例えば衝突の場合、高張力鋼は、変形すると、亀裂が入る傾向があり、図1に示されるサイドレールの前部分16は、より軟質の、即ちサイドレールの残りの部分より低強度である、3つの部分20,21,22を有する。部分20は、最も低い強度を有し、部分21はより高い強度を有し、また、部分22はさらにより高い強度を有する。部分22は、1000MPaより下の引張強度を有する。部分16は、1000MPaより小さい破壊強度、即ち0.4mの長さにわたってサイドレールの残りの部分より著しく低い強度を有する。部分16の最外側端部は、1400MPaを上回る引張強度を備えた、高強度部分25からなっていてもよい。全体では、サイドレールは、少なくとも0.2mの長さにわたって、800MPaより下の引張強度を有する。
【0010】
サイドレールの端部に向かっての軸方向の衝突の場合、最も軟質の部分20は、最初に変形し、衝撃エネルギを吸収することになる。一度でもこの部分が変形してしまうと、部分21が、変形し始めることになり、一度部分21が変形してしまうと、部分22が変形し始めることになる。
【0011】
サイドレールの最外側端部25は、ウィッシュ(wish)がサイドレールへの損傷を全く受けない低速衝突の場合、変形を妨げるために、示されている様に高強度であってよい。
【0012】
短い移行ゾーンが部分20,21,22の間に形成されている。あるいは、部分20,21,22の間に短い高強度ゾーンがあってもよく、その場合短い移行ゾーンは次に、高強度ゾーンのいずれかの側に形成される。
【0013】
S−ベンド15が高張力鋼製であり、サイドレールの前端部16が軟質部分を有するという事実の結果、S−ベンドは、軟質部分が変形されるまで、変形されない。サイドレールに高張力鋼製のS−ベンドをもたせることが出来れば、車両設計が簡易になる。
【0014】
図2は、図1に示されるものと、同じタイプのサイドレール11の前端部を示すが、この実施例においては、サイドレール11は、サイドフランジに熔接された、平らな高強度のカバー27を有する。カバーは、サイドレールの軟質部分20,21,22に対応する、軟質部分28,29,30を有する。カバーは、サイドレールに閉プロフィルを与え、それによって、サイドレールに、より安定した断面を付与し、S−ベンド15をより強固にする。カバー27が、代わりに、強度のより低い鋼製である場合、カバー全体を、同一強度で設計することができる。カバーは平らである必要はなく、例えば、内側方向に曲がっていてよい。
【0015】
実施例は、異なった強度を有する、3つの軟質部分を備えたサイドレールを示し、ここで、端部に近い部分は、その最も近い軟質部分よりも、より低い強度を有する。あるいは、軟質部分が2つ、又は3つより多く存在してもよい。
【0016】
本発明は、前部サイドレールの例を用いて、開示しているが、後部サイドレールにも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の安全ケージから突出し、バンパーを支えるように適合される一つの端部(16)を有し、1400MPaを上回る引張強度を有する、車両用のサイドレールであって、安全ケージから突出する端部(16)が、少なくとも0.4mの長さにわたって、1000MPa未満の降伏点をもつ、より低い強度を有することを特徴とする、上記サイドレール。
【請求項2】
突出する端部が、少なくとも0.2mの長さと800MPa未満の引張強度をもつ外側部分、及び外側部分より高い引張強度をもつ内側部分を有することを特徴とする、請求項1に記載のサイドレール。
【請求項3】
内側部分又は外側部分が、車両の内側に向かって、次第に、引張強度が増大する、2つ又はそれ以上の部分を、少なくとも、含むことを特徴とする、請求項2に記載のサイドレール。
【請求項4】
突出する端部が、1400MPaを上回る引張強度をもつ、最外側部分(25)を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のサイドレール。
【請求項5】
サイドレールが、前部サイドレールであり、突出する部分(16)の後ろに、縦方向S−ベンド(15)と、低部パネルの下に伸び、そこに熔接される後部分(14)を含み、後部分とS−ベンドの双方が1400MPaを上回る引張強度を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のサイドレール。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−528752(P2012−528752A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508428(P2012−508428)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/SE2010/000102
【国際公開番号】WO2010/126423
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(501426943)イェスタムプ・ハードテック・アクチエボラーグ (34)
【Fターム(参考)】