車両用アウトサイドミラー装置
【課題】位置決め手段に公差の範囲のばらつきがあっても、ミラーのぶれを防ぐことができること。
【解決手段】この発明は、相互に嵌合するシャフト3のテーパーの外周面と嵌合部24の挿通孔13のテーパーの内周面とに、抜き勾配0°の部分27と28とを、それぞれ設けるものである。この結果、この発明は、位置決め手段16、22に公差の範囲のばらつきがあっても、シャフト3のテーパーの外周面の抜き勾配0°の部分27と嵌合部24の挿通孔13のテーパーの内周面の抜き勾配0°の部分28とが常に相互に嵌合している状態で、シャフト3と嵌合部24との相対位置がシャフト3の軸方向にずれるので、ミラーアセンブリ4のミラーのぶれを防ぐことができる。
【解決手段】この発明は、相互に嵌合するシャフト3のテーパーの外周面と嵌合部24の挿通孔13のテーパーの内周面とに、抜き勾配0°の部分27と28とを、それぞれ設けるものである。この結果、この発明は、位置決め手段16、22に公差の範囲のばらつきがあっても、シャフト3のテーパーの外周面の抜き勾配0°の部分27と嵌合部24の挿通孔13のテーパーの内周面の抜き勾配0°の部分28とが常に相互に嵌合している状態で、シャフト3と嵌合部24との相対位置がシャフト3の軸方向にずれるので、ミラーアセンブリ4のミラーのぶれを防ぐことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーアセンブリが車体(たとえば、ドアやフェンダやピラーなど)に対して傾倒(回転、回動)可能であるたとえばドアミラーなどの車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用アウトサイドミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、従来の車両用アウトサイドミラー装置について説明する。前者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、ドアミラーがシャフトに、凹凸とシャフト取付部とを介して、回動可能に組み付けられてなるものである。前者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、手動もしくは電動により、凹凸が外れて、ドアミラーがシャフトに対して使用位置と格納位置との間を回動したり、または、使用位置に位置するドアミラーに荷重がかかると、凹凸が外れて、ドアミラーがシャフトに対して回動して緩衝作用が働いたりするものである。
【0003】
また、後者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、ミラー部が支軸に、凹部凸部と筒部とを介して回動可能に支持されているものである。後者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、手動もしくは電動により、ミラー部が支軸に対して使用位置と格納位置との間を回動したり、または、使用位置に位置するミラー部に荷重がかかると、ミラー部が支軸に対して回動して緩衝作用が働いたりするものである。
【0004】
ところが、前記の前者の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、凹凸に公差の範囲のばらつきがあるので、凹凸の間に隙間が発生したり、あるいは、シャフトとシャフト取付部との間に隙間が発生したりする。このために、前記の前者の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、ドアミラーとシャフトとの間にがたが発生してミラーがぶれることがある。
【0005】
また、前記の後者の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、凹部凸部に公差の範囲のばらつきがあるので、凹部凸部の間に隙間が発生したり、あるいは、支軸と筒部との間に隙間が発生したりする。このために、前記の後者の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、ミラー部と支軸との間にがたが発生してミラーがぶれることがある。
【0006】
【特許文献1】特開2007−38898号公報
【特許文献2】特開2002−187483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、凹凸もしくは凹部凸部に公差の範囲のばらつきがあっても、ミラーのぶれを防ぐことができる車両用アウトサイドミラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明(請求項1にかかる発明)は、車体に固定されるベースと、ベースに固定されていて外周面がテーパーをなすシャフトと、シャフトの周囲に圧縮された状態で配置されているスプリングと、シャフトに傾倒可能に装備されているミラーアセンブリと、シャフトとミラーアセンブリとにそれぞれ設けられていてスプリングのスプリング力により保持力が得られていてミラーアセンブリのシャフトに対する位置を決める位置決め手段と、ミラーアセンブリに設けられていて内周面がテーパーをなす挿通孔を有していてシャフトの外周面に回転可能に嵌合している嵌合部と、を備え、相互に嵌合するシャフトのテーパーの外周面と嵌合部の挿通孔のテーパーの内周面とには、抜き勾配0°の部分がそれぞれ設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、シャフトの抜き勾配0°部分の範囲が嵌合部の抜き勾配0°部分よりもシャフトの軸方向に大きい、ことを特徴とする。
【0010】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、位置決め手段がベース側に設けられていて、シャフトの抜き勾配0°部分および嵌合部の抜き勾配0°部分がベースと反対側に設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、相互に嵌合するシャフトのテーパーの外周面と嵌合部の挿通孔のテーパーの内周面とにそれぞれ設けられている抜き勾配0°の部分により、位置決め手段に公差の範囲のばらつきがあっても、ミラーアセンブリのミラーのぶれを防ぐことができる。すなわち、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、位置決め手段に公差の範囲のばらつきがあっても、シャフトのテーパーの外周面の抜き勾配0°の部分と嵌合部の挿通孔のテーパーの内周面の抜き勾配0°の部分とが常に相互に嵌合している状態で、シャフトと嵌合部との相対位置がシャフトの軸方向にずれる。このために、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、位置決め手段に隙間が発生したりすることがなく、また、シャフトと嵌合部との間に隙間が発生したりすることがない。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、位置決め手段に公差の範囲のばらつきがあっても、ミラーアセンブリのミラーのぶれを防ぐことができる。
【0012】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、シャフトの抜き勾配0°部分の範囲が嵌合部の抜き勾配0°部分よりもシャフトの軸方向に大きいので、嵌合部の抜き勾配0°部分がシャフトの抜き勾配0°部分の範囲内に常に位置する。このために、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、シャフトの抜き勾配0°の部分と嵌合部の抜き勾配0°の部分とが常に相互に嵌合している状態にあるので、位置決め手段の公差の範囲のばらつきを常に確実に吸収して、ミラーアセンブリのミラーのぶれを常に確実に防ぐことができる。
【0013】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、位置決め手段がベース側に設けられていて、シャフトの抜き勾配0°部分および嵌合部の抜き勾配0°部分がベースと反対側に設けられているので、位置決め手段によるシャフトとミラーアセンブリとの保持箇所と、シャフトと嵌合部との嵌合によるシャフトとミラーアセンブリとの保持箇所との距離が長くなる。このために、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、シャフトとミラーアセンブリとの安定感が増して、ミラーアセンブリのミラーのぶれをさらに確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例の1例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
以下、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置の構成について説明する。図1および図2において、符号1は、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置であって、この例では自動車(乗用車)用のドアミラーである。この実施例のドアミラー1は、図示を省略するが、自動車の左右のドアDにそれぞれ装備されている。なお、この実施例のドアミラー1は、自動車の右側のドアDに装備されるものであって、自動車の左側のドアに装備されるドアミラーは、この実施例のドアミラー1とほぼ左右が逆となる。
【0016】
この実施例のドアミラー1は、前記ドアDに固定されるベース2と、前記ベース2に固定されているシャフト3と、前記シャフト3にスプリング10および止め具(いわゆるプッシュナット)11およびワッシャ6および位置決め手段16、22および嵌合部24を介して傾倒(回転、回動)可能に装備されているミラーアセンブリ4と、を備えるものである。
【0017】
前記シャフト3は、樹脂製もしくは金属製(ダイカスト製またはプレス製)の金型成型品(成形品)からなる。前記シャフト3は、図2〜図4に示すように、円筒形もしくは円柱形をなし、前記シャフト3の外周面には、成型品としての前記シャフト3を金型から容易に抜くために抜き勾配というテーパーが設けられている。すなわち、前記シャフト3の外周面は、一端(上端)から他端(下端)にかけて外径が徐々に大きくなるテーパー(傾斜面、テーパー面)をなす。この結果、前記シャフト3は、成型後、金型から抜け易くなる。
【0018】
前記ミラーアセンブリ4は、一方が開口しかつ他方が閉塞したミラーハウジング7と、前記ミラーハウジング7の開口部5に配置されかつ反射面8を有するミラーユニット(いわゆるミラー)9と、から構成されている。前記ミラーユニット9は、前記ミラーハウジング7に、リモートコントロールユニットやパワーユニット(図示せず)を介してほぼ垂直軸回りに左右方向およびほぼ水平回りに上下方向に反射面8の角度調整可能に取り付けられている。
【0019】
前記ミラーハウジング7は、前記シャフト3に前記スプリング10および前記止め具11および前記ワッシャ6および前記位置決め手段16、22および前記嵌合部24を介して前記シャフト3回りに傾倒可能に取り付けられている取付部12を有する。前記取付部12は、前記シャフト3と同様に、樹脂製もしくは金属製(ダイカスト製またはプレス製)の金型成型品(成形品)からなる。前記取付部12は、前記ミラーハウジング7と別体のフレームやブラケットから構成されていて、前記ミラーハウジング7に一体に固定されている。
【0020】
前記取付部12は、図2〜図5に示すように、一端(上端)が開口し、かつ、他端(下端)が閉塞した中空状の断面凹形状をなす。前記取付部12の下端には、円形の透孔25が設けられている。前記透孔25の縁から円筒部26が一端側に一体に設けられている。前記円筒部26の先端部には、前記シャフト3の外周面に回転可能に嵌合する前記嵌合部24が一体に設けられている。
【0021】
前記嵌合部24には、前記シャフト3が回転可能に挿通する挿通孔13が設けられている。前記挿通孔13の内周面には、成型品としての前記嵌合部24を金型から容易に抜くために抜き勾配というテーパーが設けられている。すなわち、前記挿通孔13の内周面は、一端(上端)から他端(下端)にかけて内径が徐々に大きくなるテーパー(傾斜面、テーパー面)をなす。この結果、前記嵌合部24は、成型後、金型から抜け易くなる。
【0022】
相互に嵌合する前記シャフト3のテーパーの外周面の中間部と前記嵌合部24の前記挿通孔13のテーパーの内周面とには、抜き勾配0°の部分27と28とがそれぞれ設けられている。図8(B)に示すように、前記シャフト3の抜き勾配0°部分27の範囲は、前記嵌合部24の前記挿通孔13の抜き勾配0°部分28よりも、前記シャフト3の軸方向に大きい。
【0023】
すなわち、前記嵌合部24の前記挿通孔13の抜き勾配0°部分28の範囲(前記挿通孔13の軸方向の寸法)をHとすると、前記シャフト3の抜き勾配0°部分27の範囲(前記シャフト3の軸方向の寸法)は、HよりもI+J分大きい。前記寸法Hは、走行時の風圧や振動などにより、前記シャフト3の外周面と前記嵌合部24の前記挿通孔13の内周面との間にがたが発生しないように、前記シャフト3の外周面と前記嵌合部24の前記挿通孔13の内周面とが相互に嵌合するのに必要最低限の寸法である。前記寸法Iは、前記位置決め手段16、22の公差により、前記嵌合部24が前記シャフト3に対して下がる(前記シャフト3の一端から他端に移動する)寸法K(図11参照)に余裕の寸法αを加えた寸法である。前記寸法Jは、前記位置決め手段16、22の公差により、前記嵌合部24が前記シャフト3に対して上がる(前記シャフト3の他端から一端に移動する)寸法L(図14参照)に余裕の寸法αを加えた寸法である。なお、前記の寸法H、I、J、K、L、αは、前記シャフト3および前記取付部12の前記嵌合部24の材質により異なる。たとえば、寸法Hは約5mm、寸法Iは約0.7mm〜0.8mm、寸法Jは約0.7mm〜0.8mm、寸法Kは約0.5mm、寸法Lは約0.5mm、寸法αは約0.2mm〜0.3mmである。
【0024】
前記シャフト3の他端には、シャフトホルダ14が一体に設けられている。前記シャフトホルダ14は、前記ベース2にスクリュー15により固定されている。この結果、前記シャフト3は、前記ベース2に固定されている。
【0025】
前記シャフトホルダ14の一面(上面。前記シャフト3が一体に設けられている側の面)と前記取付部12の一面(下面。前記シャフトホルダ14の一面と対向する面)とには、前記位置決め手段16、22が設けられている。前記位置決め手段16、22は、前記ミラーアセンブリ4を使用位置A(図1中の実線にて示す位置)に位置決めするものである。前記位置決め手段は、前記取付部12の一面に設けられているノッチタイプの位置決め凸部22の外面と、前記シャフトホルダ14の一面に設けられていて前記位置決め凸部22が嵌合するノッチタイプの位置決め凹部16の内面と、から構成されている。
【0026】
前記位置決め凸部22は、図4〜図7に示すように、上辺(前記取付部12の一面側の辺)が長く下辺が短い逆台形(断面逆台形)をなす。前記位置決め凸部22の個数は、特に限定しないが、位置決めのバランスや製造コストなどを考慮すると、3個が好ましい。3個の前記位置決め凸部22は、前記取付部12の一面に前記シャフト3の回転中心O−Oを中心とする円周上に一体に設けられている。
【0027】
前記位置決め凹部16は、図3、図4、図6、図7に示すように、上辺(前記シャフトホルダ14の一面側の辺)が長く下辺が短い逆台形(断面逆台形)をなす。前記位置決め凹部16の個数は、前記位置決め凸部22の個数に合わせて3個である。3個の前記位置決め凹部16は、前記シャフトホルダ14の一面に前記シャフト3の回転中心O−Oを中心とする円周上に設けられている。
【0028】
前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22とが嵌合することにより、前記ミラーアセンブリ4は、前記使用位置Aに位置決めされる。また、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22との嵌合状態が解除されると、前記ミラーアセンブリ4は、前記シャフト3の回転中心O−O回りに回転可能となり、前記使用位置Aと前記格納位置Bとの間を、また、前記使用位置Aと前方傾倒位置C(図1中の二点鎖線にて示す位置)との間を、回転する。
【0029】
前記位置決め手段凹部16と前記位置決め凸部22は、前記シャフトホルダ14の一面と前記取付部12の一面、すなわち、前記ベース2側に設けられている。一方、前記シャフト3の抜き勾配0°部分27および前記嵌合部24の前記挿通孔13の抜き勾配0°部分28は、前記ベース3と反対側、すなわち、前記位置決め手段凹部16および前記位置決め凸部22に対して離れた箇所にそれぞれ設けられている。
【0030】
前記シャフトホルダ14の一面(上面)と前記取付部12の一面(下面)とには、ストッパ手段29、30が設けられている。前記ストッパ手段29、30は、前記ミラーアセンブリ4が前記格納位置Bまたは前記前方傾倒位置Cに位置する際に、前記ミラーアセンブリ4が前記ドアDに当たるのを回避させるものである。前記ストッパ手段は、前記シャフトホルダ14の一面に設けられているストッパ凸部29の外面と、前記取付部12の一面に設けられていて前記ストッパ凸部29が嵌合するストッパ凹部(もしくは溝部)30の内面と、から構成されている。
【0031】
前記ストッパ凸部29は、図3〜図5に示すように、回転中心O−Oを中心とする円弧の一部からなり、前記シャフトホルダ14の一面に前記シャフト3に沿って一体に設けられている。前記ストッパ凹部30は、図4、図5に示すように、回転中心O−Oを中心とする円弧の一部からなり、前記取付部12の一面に前記透孔25に沿って設けられている。
【0032】
前記ミラーアセンブリ4が前記シャフト3の回転中心O−O回りに回転して、前記ドアDに当たる直前であって、前記格納位置Bまたは前方傾倒位置Cに位置すると、前記ストッパ凸部29の端面31と前記ストッパ凹部30の端面32とが当接することにより、前記ミラーアセンブリ4が前記ドアDに当たるのを回避させる。なお、前記シャフトホルダ14の一面にストッパ凹部を設け、前記取付部12の一面にストッパ凸部を設けても良い。図1において、符号Eは、車両の後方を示し、符号Fは、車両の前方を示す。
【0033】
前記シャフト3には、複数本、この例では、4本の溝17が上端からほぼ中間までの間において、等間隔に設けられている。前記溝17は、前記シャフト3の上端部を残して貫通形状をなし、一方、前記シャフト3の上端部において連結形状(もしくは橋渡し形状)をなす。前記シャフト3の上端部における前記4本の溝17の連結部と貫通部との境の段部には、4個の係合部18がそれぞれ設けられている。また、前記シャフト3の前記4本の溝17の貫通部の両側面には、係止部19がそれぞれ設けられている。
【0034】
前記止め具11は、弾性を有する金属部材から構成されていて、円板形状のスプリング当接部20を有する。前記スプリング当接部20の全周縁は、一方向(下方向)にL字形状に折り曲げられている。このために、前記金属製の止め具11は、底が浅い丸皿形状をなす。前記スプリング当接部20の中央には、前記シャフト3が挿入する挿入孔21が設けられている。
【0035】
前記挿入孔21の縁から複数個、この例では、4個の係合爪部23が、前記シャフト3の挿入方向G(図3中の矢印Gを参照。前記スプリング当接部20の全周縁の折曲方向と反対側の方向)に、等間隔にそれぞれ設けられている。前記係合爪部23は、前記シャフト3の前記係合部18に弾性係合する。前記係合爪部23の幅は、前記シャフト3の前記溝17の幅と同等もしくは若干小さい。前記係合爪部23の前記シャフト3の周方向側の部分は、前記シャフト3の前記係止部19に係止する。
【0036】
前記スプリング10は、圧縮タイプのスプリング(圧縮コイルスプリング)を使用する。前記ワッシャ6は、金属製もしくは樹脂製の通常のワッシャを使用する。
【0037】
以下、前記シャフト3に前記ミラーアセンブリ4を、前記スプリング10および前記止め具11および前記ワッシャ6および前記位置決め手段16、22および前記嵌合部24を介して傾倒可能に組み付ける工程について説明する。
【0038】
まず、前記シャフト3を前記ミラーハウジング7の前記取付部12の前記透孔26中および前記円筒部26中および前記嵌合部24の前記挿通孔13中および前記取付部12中に、図3中の矢印G方向(前記ミラーハウジング7の下側から上側への方向)に、挿通させて、前記シャフトホルダ14の上面に前記取付部12の下面を載置させる。かつ、前記位置決め凹部16と位置決め凸部22とを嵌合させ、前記ストッパ凸部29と前記ストッパ凹部30とを嵌合させる。
【0039】
つぎに、前記シャフト3に前記ワッシャ6および前記スプリング10を、図3中の矢印G方向と逆方向(前記ミラーハウジング7の上側から下側への方向)に、順次落とし込んで前記取付部12の下端の上面に載置させる。
【0040】
それから、前記シャフト3の4本の前記溝17に前記止め具11の4個の前記係合爪部23をそれぞれ合わせて、前記シャフト3に前記止め具11を図3中の矢印G方向と逆方向に落とし込む。このとき、前記シャフト3の外周面が上端から下端にかけて末広がりとなるテーパー形状をなすので、前記止め具11は、前記シャフト3の途中で止まる。すなわち、前記止め具11の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の前記溝17の前記連結部に当接する。
【0041】
つづいて、冶具(図示せず)を使用して、前記止め具11の前記スプリング当接部20を前記スプリング10の上側端面に当接させた状態で、前記スプリング10のスプリング力に抗して前記止め具11を前記シャフト3に押し込む。すると、前記止め具11の前記係合爪部23が弾性変形して、前記止め具11の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の前記溝17の前記連結部に常時当接しながら図3中の矢印G方向と逆方向に落ちていく。
【0042】
そして、前記止め具11が押し込まれて、前記止め具11の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の前記溝17の前記連結部と前記貫通部との境の前記係合部18に達する。すると、弾性変形している前記止め具11の前記係合爪部23が元の状態に弾性復帰し、前記止め具11の4個の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の4個の前記係合部18にそれぞれ弾性係合する。前記止め具11の4個の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の4個の前記係合部18にそれぞれ弾性係合すると、前記止め具11の4個の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の4個の前記係合部18から外れない。すなわち、前記止め具11は、前記シャフト3から外れない。
【0043】
また、前記シャフト3の4本の前記溝17の貫通部の両側面の前記係止部19が、前記止め具11の4個の前記係合爪部23の前記シャフト3の周方向側の部分にそれぞれ係止する。
【0044】
この結果、図2および図4に示すように、前記止め具11は、前記シャフト3に固定される。また、前記スプリング10は、前記止め具11により前記シャフト3に固定される。すなわち、前記スプリング10は、前記止め具11の前記スプリング当接部20と前記取付部12上の前記ワッシャ6との間において圧縮された状態で前記シャフト3の周囲に配置される。
【0045】
これにより、前記ミラーアセンブリ4は、前記シャフト3に前記スプリング10および前記止め具11および前記ワッシャ6および前記位置決め手段16、22および前記嵌合部24を介して傾倒可能に組み付けられる。そして、前記シャフト3と一体の前記シャフトホルダ14を前記ベース2に前記スクリュー15により固定することにより、この実施例のドアミラー1が構成される。
【0046】
前記ドアミラー1は、ドアDに前記ベース2を固定することにより、ドアDに装備される。そして、前記ドアミラー1は、車体のドアDに固定される前記ベース2および前記シャフト3および前記シャフトホルダ14側の固定部と、前記ミラーユニット9を有していて前記シャフト3に傾倒可能に取り付けられている前記ミラーアセンブリ4および前記取付部12側の傾倒部と、から構成されている。
【0047】
車体のドアDに固定される前記ベース2および前記シャフト3および前記シャフトホルダ14側の固定部は、車体と常に一体に固定されている。一方、前記ミラーユニット9を有していて前記シャフト3に傾倒可能に取り付けられている前記ミラーアセンブリ4および前記取付部12側の傾倒部は、人や物に当たった際には、緩衝のために、前記シャフト3の回転中心O−O回りに傾倒(回転)する。
【0048】
固定部の前記シャフトホルダ14と傾倒部の前記取付部12とは、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22とにより、使用位置Aまたは格納位置Bに位置決めされている。前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22との嵌合状態が走行時の風圧などにより外れて前記ミラーアセンブリ4が前記シャフト3に対して傾倒しないように、また、傾倒部の前記ミラーユニット9の反射面8が走行時の路面の凹凸などによりぶれないように、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22とには、テンションがかけられている。このテンションをかけるのには、前記スプリング10が使用されている。すなわち、前記スプリング10のスプリング力により、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22とが相互に嵌合して、傾倒部の前記ミラーアセンブリ4が固定部の前記シャフト3にぶれないように適度な保持力で傾倒可能に保持されている。
【0049】
前記スプリング10は、前記シャフト3に固定されている前記止め具11により、前記止め具11の前記スプリング当接部20と前記取付部12上の前記ワッシャ6との間において圧縮された状態で前記シャフト3の周囲に配置されている。
【0050】
以下、車両用アウトサイドミラー装置において、ノッチタイプの前記位置決め凹部16と同じくノッチタイプの前記位置決め凸部22とに公差の範囲のばらつきがあると、前記ミラーアセンブリ4のミラー(前記ミラーユニット9の反射面8)がぶれるというメカニズムについて説明する。
【0051】
まず、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22とが、公差の範囲のばらつきがなく設計値通りに製造された場合は、図6、図7、図8(A)および(B)に示すように、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22との間、および、前記シャフト3の外周面と前記嵌合部24の前記挿通孔13の内周面との間においてがたが発生しない。この場合は、前記ミラーアセンブリ4のミラーがぶれない。
【0052】
ここで、図9の点線で示すように、前記位置決め凹部160と前記位置決め凸部220とに公差の範囲のばらつきがあるとする。たとえば、前記位置決め凹部160の幅に設計値通りの前記位置決め凹部16の幅(図9中の実線)に対して最大のばらつきがあり、一方、前記位置決め凸部220の幅に設計値通りの前記位置決め凸部22の幅(図9中の実線)に対して最小のばらつきがあるとする。
【0053】
最大のばらつきがある前記位置決め凹部160と最小のばらつきがある前記位置決め凸部220とをそのまま嵌合させたとする。すると、図10(A)の点線で示すように、位置決め手段160、220にばらつきがある前記取付部120が、位置決め手段16、22が設計値通りの前記取付部12に対して寸法K分下がる。
【0054】
前記取付部120が寸法K分下がるのに伴って、図11の点線で示すように、位置決め手段160、220にばらつきがある前記嵌合部240が、位置決め手段16、22が設計値通りの前記嵌合部24に対して寸法K分下がろうとする。
【0055】
ところが、図8(A)および図11の実線に示すように、前記シャフト3の外周面および前記嵌合部24の前記挿通孔13の内周面には、成型品(成形品)を金型から容易に抜くために抜き勾配というテーパーが設けられている。このために、前記嵌合部24が前記シャフト3に対してテーパーの小径側(図中の上側)から大径側(図中の下側)に下がろう(すなわち、ずれよう)とすると、前記嵌合部24の前記挿通孔13のテーパーの内周面が前記シャフト3のテーパーの外周面に食い込んで、前記嵌合部24の位置が前記シャフト3に対してテーパーの小径側から大径側に下がらない(ずれない)。
【0056】
この結果、図10(B)の点線で示すように、位置決め手段160、220にばらつきがある前記取付部120の位置が、位置決め手段16、22が設計値通りの前記取付部12の位置のままにある。このために、前記取付部120の位置決め凸部220と前記シャフトホルダ14の前記位置決め凹部160との間には、隙間Mが発生する。これにより、前記ミラーアセンブリ4のミラーがぶれる。
【0057】
また、図12の一点鎖線で示すように、前記位置決め凹部161と前記位置決め凸部221とに公差の範囲のばらつきがあるとする。たとえば、前記位置決め凹部161の幅に設計値通りの前記位置決め凹部16の幅(図12中の実線)に対して最小のばらつきがあり、一方、前記位置決め凸部221の幅に設計値通りの前記位置決め凸部22の幅(図12中の実線)に対して最大のばらつきがあるとする。
【0058】
最小のばらつきがある前記位置決め凹部161と最大のばらつきがある前記位置決め凸部221とをそのまま嵌合させたとする。すると、図13の一点鎖線で示すように、位置決め手段161、221にばらつきがある前記取付部121が、位置決め手段16、22が設計値通りの前記取付部12に対して寸法L分上がる。
【0059】
前記取付部121が寸法L分上がるのに伴って、図14の一点鎖線で示すように、位置決め手段161、221にばらつきがある前記嵌合部241が、位置決め手段16、22が設計値通りの前記嵌合部24に対して寸法L分上がる。この結果、前記嵌合部241の前記挿通孔131のテーパーの内周面と前記シャフト3のテーパーの外周面との間には、隙間Nが発生する。これにより、前記ミラーアセンブリ4のミラーがぶれる。
【0060】
以上のように、ノッチタイプの前記位置決め凹部16と同じくノッチタイプの前記位置決め凸部22とに公差の範囲のばらつきがあると、前記取付部120の位置決め凸部220と前記シャフトホルダ14の前記位置決め凹部160との間に隙間Mが発生して、前記ミラーアセンブリ4のミラーがぶれたり、あるいは、前記嵌合部241の前記挿通孔131のテーパーの内周面と前記シャフト3のテーパーの外周面との間に隙間Nが発生して、前記ミラーアセンブリ4のミラーがぶれたりする。
【0061】
この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)は、以上のごとき構成からなり、以下、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)の作用について説明する。
【0062】
ドアDにベース2を固定してドアDに装備されたドアミラー1のミラーアセンブリ4を使用位置Aに位置させる。この使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4のミラーユニット9の反射面8で車両の後方を視認することができる。このとき、固定部のシャフトホルダ14と傾倒部の取付部12との間は、相互に嵌合状態の位置決め凹部16と位置決め凸部22とにより、使用位置Aに位置決めされている。また、この位置決め凹部16と位置決め凸部22とにはスプリング10のスプリング力(テンション)が作用しているので、自動車の走行時の風圧などによりミラーアセンブリ4がシャフト3に対して不用意に傾倒したり、走行時の路面の凹凸などによりミラーユニット9の反射面8が不用意にぶれたりするようなことはない。
【0063】
また、リモートコントロールユニットやパワーユニット(図示せず)を駆動させると、ミラーユニット9をほぼ水平軸回りに上下方向にまたほぼ垂直軸回りに左右方向に回動させることができ、これにより、ミラーユニット9の反射面8の位置をドライバーの目線に合わせて調整することができる。
【0064】
つぎに、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、位置決め凹部16と位置決め凸部22との嵌合状態が解除されて、ミラーアセンブリ4は、シャフト3の回転中心O−O回りに時計方向に回転する。このとき、ストッパ凸部29とストッパ凹部30との嵌合により、ミラーアセンブリ4の回転がガイドされる。
【0065】
ミラーアセンブリ4が格納位置Bに位置すると、ストッパ凸部29の端面31とストッパ凹部30の端面32とが当接して、ミラーアセンブリ2の回転が規制されてミラーアセンブリ2とドアDとの当接が回避される。
【0066】
また、格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに反時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、ミラーアセンブリ4がシャフト3の回転中心O−O回りに反時計方向に回転する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置すると、嵌合状態が解除されている位置決め凹部16と位置決め凸部22とが再度嵌合して、ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する。
【0067】
一方、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに反時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、位置決め凹部16と位置決め凸部22との嵌合状態が解除されて、ミラーアセンブリ4は、シャフト3の回転中心O−O回りに反時計方向に回転する。このとき、ストッパ凸部29とストッパ凹部30との嵌合により、ミラーアセンブリ4の回転がガイドされる。
【0068】
ミラーアセンブリ4が前方傾倒位置Cに位置すると、ストッパ凸部29の端面31とストッパ凹部30の端面32とが当接して、ミラーアセンブリ2の回転が規制されて、ミラーアセンブリ4が前方傾倒位置Cに位置し、かつ、ミラーアセンブリ2とドアDとの当接が回避される。
【0069】
また、前方傾倒位置Cに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、ミラーアセンブリ4がシャフト3の回転中心O−O回りに時計方向に回転する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置すると、嵌合状態が解除されている位置決め凹部16と位置決め凸部22とが再度嵌合して、ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する。
【0070】
そして、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4にスプリング10のスプリング力よりも大きい力が作用すると、ミラーアセンブリ4は、前記の手動回転と同様に、シャフト3の回転中心O−O回りに時計方向または反時計方向に緩衝のために回転する。
【0071】
この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)は、以上のごとき構成作用からなり、以下、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)の効果について説明する。
【0072】
実施例のドアミラー1は、相互に嵌合するシャフト3のテーパーの外周面と嵌合部24の挿通孔13のテーパーの内周面とにそれぞれ設けられている抜き勾配0°の部分27と28により、位置決め凹部16と位置決め凸部22に公差の範囲のばらつきがあっても、ミラーアセンブリのミラー4のぶれを防ぐことができる。すなわち、実施例のドアミラー1は、位置決め凹部16と位置決め凸部22に公差の範囲のばらつきがあっても、シャフト3のテーパーの外周面の抜き勾配0°の部分27と嵌合部24の挿通孔13のテーパーの内周面の抜き勾配0°の部分28とが常に相互に嵌合している状態で、シャフト3と嵌合部24との相対位置がシャフト3の軸方向にずれる(図8(B)参照)。このために、実施例のドアミラー1は、位置決め凹部16と位置決め凸部22とに隙間が発生したりすることがなく、また、シャフト3のテーパーの外周面(抜き勾配0°の部分27)と嵌合部24の挿通孔13のテーパーの内周面(抜き勾配0°の部分28)との間に隙間が発生したりすることがない。この結果、実施例のドアミラー1は、位置決め凹部16と位置決め凸部22とに公差の範囲のばらつきがあっても、ミラーアセンブリ4のミラーのぶれを防ぐことができる。
【0073】
また、実施例のドアミラー1は、シャフト3の抜き勾配0°部分27の範囲の寸法が嵌合部24の挿通孔13の抜き勾配0°部分28の範囲の寸法Hよりもシャフト3の軸方向に寸法I+J分大きいので、嵌合部24の挿通孔13の抜き勾配0°部分28がシャフト3の抜き勾配0°部分27の範囲内に常に位置する。このために、実施例のドアミラー1は、シャフト3の抜き勾配0°の部分27と嵌合部24の挿通孔13の抜き勾配0°の部分28とが常に相互に嵌合している状態にあるので、位置決め凹部16と位置決め凸部22との公差の範囲のばらつきを常に確実に吸収して、ミラーアセンブリ4のミラーのぶれを常に確実に防ぐことができる。
【0074】
さらに、実施例のドアミラー1は、位置決め凹部16と位置決め凸部22とがベース2側に設けられていて、シャフト3の抜き勾配0°部分27および嵌合部24の挿通孔13の抜き勾配0°部分28がベース3と反対側すなわち位置決め凹部16と位置決め凸部22とから離れた箇所に設けられているので、位置決め凹部16と位置決め凸部22とによるシャフト3とミラーアセンブリ4との保持箇所と、シャフト3と嵌合部24との嵌合によるシャフト3とミラーアセンブリ4との保持箇所との距離が長くなる。このために、実施例のドアミラー1は、シャフト3とミラーアセンブリ4との安定感が増して、ミラーアセンブリ4のミラーのぶれをさらに確実に防ぐことができる。
【0075】
以下、前記の実施例以外の例について説明する。この実施例においては、乗用車のドアDに装備されるドアミラー1について説明するものである。ところが、この発明においては、その他の自動車用アウトサイドミラー装置、たとえば、乗用車のフェンダに装備されるフェンダミラーやトラックのフェンダやピラーなどに装備されるトラックミラーなどであっても良い。すなわち、車体に固定されるベースおよび樹脂製のシャフト側の固定部と、そのシャフトに傾倒可能に取り付けられているミラーユニット(ミラー)およびミラーアセンブリ側の傾倒部と、から構成されている自動車用アウトサイドミラー装置であっても良い。
【0076】
また、前記の実施例においては、手動により、ミラーアセンブリ4をシャフト3に対して使用位置Aと格納位置Bとの間を傾倒(回転、回動)させるものである。ところが、この発明においては、モータおよび回転力伝達機構(減速機構およびクラッチ機構)から構成されている電動格納ユニットの電動作動により、ミラーアセンブリをシャフトに対して使用位置と格納位置との間を傾倒させても良い。この場合、電動格納ユニットのケーシング(たとえば、ギアケースおよびカバーからなるケーシング)がミラーハウジングと別体の取付部となる。
【0077】
さらに、前記の実施例においては、ミラーハウジング7が一体構造のものである。ところが、この発明においては、ミラーハウジングが本体部とその本体部を覆うカバー(化粧カバー、ガーニッシュ、シェルフレーム)とから構成されている別体構造のものであっても良い。
【0078】
さらにまた、前記の実施例においては、位置決め手段が取付部12の一面に設けられているノッチタイプの凸部22とシャフトホルダ14の一面に設けられていて凸部が嵌合するノッチタイプの凹部16面とから構成されているものである。ところが、この発明においては、シャフトホルダ14の一面にノッチタイプの凹部を設け、取付部12の一面にノッチタイプの凸部を設けても良い。
【0079】
さらにまた、前記の実施例においては、位置決め手段がノッチタイプの凹部凸部すなわち断面台形の凹凸から構成されているものである。ところが、この発明においては、位置決め手段として、ボールとそのボールが嵌合する嵌合凹部とから構成されているもの、また、半球形の凹凸から構成されているもの、さらに、断面半円形の凹凸から構成されているもの、さらにまた、断面三角形の凹凸から構成されているものなどであっても良い。
【0080】
さらにまた、前記の実施例においては、止め部11の係合爪部23を4個設けてなるものである。ところが、この発明においては、係合爪部を製品の仕様(大きさなど)により、3個、5個以上設けても良い。
【0081】
さらにまた、前記の実施例においては、取付部12がミラーハウジング7と別体のフレームやブラケットから構成されていて、そのミラーハウジング7に一体に固定されているものである。ところが、この発明においては、取付部とミラーハウジングとが一体構造のものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例を示す使用状態の平面図である。
【図2】同じく、ドアミラーを示す一部破断正面図であって、図1におけるII矢視図である。
【図3】同じく、シャフトおよびシャフトホルダおよび取付部およびワッシャおよびスプリングおよび止め具を示す分解斜視図である。
【図4】同じく、シャフトおよびシャフトホルダおよび取付部およびワッシャおよびスプリングおよび止め具の組付状態を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図5】同じく、取付部の底面図であって、図3におけるV矢視図である。
【図6】同じく、公差の範囲のばらつきがなく設計値通りに製造された位置決め凹部と位置決め凸部とを示す説明図である。
【図7】同じく、公差の範囲のばらつきがなく設計値通りに製造された位置決め凹部と位置決め凸部との嵌合状態を示す説明図である。
【図8】同じく、公差の範囲のばらつきがなく設計値通りに製造された位置決め凹部と位置決め凸部とが嵌合した場合のシャフトと嵌合部の嵌合状態を示す説明図である。
【図9】同じく、最大のばらつきがある位置決め凹部と最小のばらつきがある位置決め凸部とを示す説明図である。
【図10】同じく、最大のばらつきがある位置決め凹部と最小のばらつきがある位置決め凸部との嵌合状態を示す説明図である。
【図11】同じく、最大のばらつきがある位置決め凹部と最小のばらつきがある位置決め凸部とが嵌合した場合のシャフトと嵌合部の嵌合状態を示す説明図である。
【図12】同じく、最小のばらつきがある位置決め凹部と最大のばらつきがある位置決め凸部とを示す説明図である。
【図13】同じく、最小のばらつきがある位置決め凹部と最大のばらつきがある位置決め凸部との嵌合状態を示す説明図である。
【図14】同じく、最小のばらつきがある位置決め凹部と最大のばらつきがある位置決め凸部とが嵌合した場合のシャフトと嵌合部の嵌合状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0083】
1 ドアミラー(車両用アウトサイドミラー装置)
2 ベース
3 シャフト
4 ミラーアセンブリ
5 開口部
6 ワッシャ
7 ミラーハウジング
8 反射面
9 ミラーユニット
10 スプリング
11 止め具
12 取付部
120 位置決め凸部に最小のばらつきがある場合の取付部
121 位置決め凸部に最大のばらつきがある場合の取付部
13 挿通孔
14 シャフトホルダ
15 スクリュー
16 位置決め凹部(位置決め手段)
160 最大のばらつきがある位置決め凹部
161 最小のばらつきがある位置決め凹部
17 溝
18 係合部
19 係止部
20 スプリング当接部
21 挿入孔
22 位置決め凸部(位置決め手段)
220 最小のばらつきがある位置決め凸部
221 最大のばらつきがある位置決め凸部
23 係合爪部
24 嵌合部
240 位置決め凸部に最小のばらつきがある場合の嵌合部
241 位置決め凸部に最大のばらつきがある場合の嵌合部
25 円形の透孔
26 円筒部
27 シャフト側の抜き勾配0°の部分
28 嵌合部側の抜き勾配0°の部分
29 ストッパ凸部(ストッパ手段)
30 ストッパ凹部(ストッパ手段)
31 端面
32 端面
A 使用位置
B 格納位置
C 前方傾倒位置
D ドア(車体)
E 車両の後方
F 車両の前方
G 挿入方向
H シャフトの外周面と嵌合部の挿通孔の内周面とが相互に嵌合するのに必要最低限の寸法
I 位置決め手段の公差によって嵌合部がシャフトに対して下がる寸法に余裕の寸法を加えた寸法
J 位置決め手段の公差によって嵌合部がシャフトに対して上がる寸法に余裕の寸法を加えた寸法
K 位置決め手段の公差によって嵌合部がシャフトに対して下がる寸法
L 位置決め手段の公差によって嵌合部がシャフトに対して上がる寸法
α 余裕の寸法
M 位置決め手段にばらつきがある場合の取付部の位置決め凸部とシャフトホルダの位置決め凹部との間の隙間
N 位置決め手段にばらつきがある嵌合部の挿通孔のテーパーの内周面とシャフトのテーパーの外周面との間の隙間
O−O 回転中心
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーアセンブリが車体(たとえば、ドアやフェンダやピラーなど)に対して傾倒(回転、回動)可能であるたとえばドアミラーなどの車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用アウトサイドミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、従来の車両用アウトサイドミラー装置について説明する。前者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、ドアミラーがシャフトに、凹凸とシャフト取付部とを介して、回動可能に組み付けられてなるものである。前者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、手動もしくは電動により、凹凸が外れて、ドアミラーがシャフトに対して使用位置と格納位置との間を回動したり、または、使用位置に位置するドアミラーに荷重がかかると、凹凸が外れて、ドアミラーがシャフトに対して回動して緩衝作用が働いたりするものである。
【0003】
また、後者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、ミラー部が支軸に、凹部凸部と筒部とを介して回動可能に支持されているものである。後者の従来の車両用アウトサイドミラー装置は、手動もしくは電動により、ミラー部が支軸に対して使用位置と格納位置との間を回動したり、または、使用位置に位置するミラー部に荷重がかかると、ミラー部が支軸に対して回動して緩衝作用が働いたりするものである。
【0004】
ところが、前記の前者の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、凹凸に公差の範囲のばらつきがあるので、凹凸の間に隙間が発生したり、あるいは、シャフトとシャフト取付部との間に隙間が発生したりする。このために、前記の前者の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、ドアミラーとシャフトとの間にがたが発生してミラーがぶれることがある。
【0005】
また、前記の後者の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、凹部凸部に公差の範囲のばらつきがあるので、凹部凸部の間に隙間が発生したり、あるいは、支軸と筒部との間に隙間が発生したりする。このために、前記の後者の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、ミラー部と支軸との間にがたが発生してミラーがぶれることがある。
【0006】
【特許文献1】特開2007−38898号公報
【特許文献2】特開2002−187483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、凹凸もしくは凹部凸部に公差の範囲のばらつきがあっても、ミラーのぶれを防ぐことができる車両用アウトサイドミラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明(請求項1にかかる発明)は、車体に固定されるベースと、ベースに固定されていて外周面がテーパーをなすシャフトと、シャフトの周囲に圧縮された状態で配置されているスプリングと、シャフトに傾倒可能に装備されているミラーアセンブリと、シャフトとミラーアセンブリとにそれぞれ設けられていてスプリングのスプリング力により保持力が得られていてミラーアセンブリのシャフトに対する位置を決める位置決め手段と、ミラーアセンブリに設けられていて内周面がテーパーをなす挿通孔を有していてシャフトの外周面に回転可能に嵌合している嵌合部と、を備え、相互に嵌合するシャフトのテーパーの外周面と嵌合部の挿通孔のテーパーの内周面とには、抜き勾配0°の部分がそれぞれ設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、シャフトの抜き勾配0°部分の範囲が嵌合部の抜き勾配0°部分よりもシャフトの軸方向に大きい、ことを特徴とする。
【0010】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、位置決め手段がベース側に設けられていて、シャフトの抜き勾配0°部分および嵌合部の抜き勾配0°部分がベースと反対側に設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、相互に嵌合するシャフトのテーパーの外周面と嵌合部の挿通孔のテーパーの内周面とにそれぞれ設けられている抜き勾配0°の部分により、位置決め手段に公差の範囲のばらつきがあっても、ミラーアセンブリのミラーのぶれを防ぐことができる。すなわち、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、位置決め手段に公差の範囲のばらつきがあっても、シャフトのテーパーの外周面の抜き勾配0°の部分と嵌合部の挿通孔のテーパーの内周面の抜き勾配0°の部分とが常に相互に嵌合している状態で、シャフトと嵌合部との相対位置がシャフトの軸方向にずれる。このために、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、位置決め手段に隙間が発生したりすることがなく、また、シャフトと嵌合部との間に隙間が発生したりすることがない。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、位置決め手段に公差の範囲のばらつきがあっても、ミラーアセンブリのミラーのぶれを防ぐことができる。
【0012】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、シャフトの抜き勾配0°部分の範囲が嵌合部の抜き勾配0°部分よりもシャフトの軸方向に大きいので、嵌合部の抜き勾配0°部分がシャフトの抜き勾配0°部分の範囲内に常に位置する。このために、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、シャフトの抜き勾配0°の部分と嵌合部の抜き勾配0°の部分とが常に相互に嵌合している状態にあるので、位置決め手段の公差の範囲のばらつきを常に確実に吸収して、ミラーアセンブリのミラーのぶれを常に確実に防ぐことができる。
【0013】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、位置決め手段がベース側に設けられていて、シャフトの抜き勾配0°部分および嵌合部の抜き勾配0°部分がベースと反対側に設けられているので、位置決め手段によるシャフトとミラーアセンブリとの保持箇所と、シャフトと嵌合部との嵌合によるシャフトとミラーアセンブリとの保持箇所との距離が長くなる。このために、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、シャフトとミラーアセンブリとの安定感が増して、ミラーアセンブリのミラーのぶれをさらに確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例の1例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
以下、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置の構成について説明する。図1および図2において、符号1は、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置であって、この例では自動車(乗用車)用のドアミラーである。この実施例のドアミラー1は、図示を省略するが、自動車の左右のドアDにそれぞれ装備されている。なお、この実施例のドアミラー1は、自動車の右側のドアDに装備されるものであって、自動車の左側のドアに装備されるドアミラーは、この実施例のドアミラー1とほぼ左右が逆となる。
【0016】
この実施例のドアミラー1は、前記ドアDに固定されるベース2と、前記ベース2に固定されているシャフト3と、前記シャフト3にスプリング10および止め具(いわゆるプッシュナット)11およびワッシャ6および位置決め手段16、22および嵌合部24を介して傾倒(回転、回動)可能に装備されているミラーアセンブリ4と、を備えるものである。
【0017】
前記シャフト3は、樹脂製もしくは金属製(ダイカスト製またはプレス製)の金型成型品(成形品)からなる。前記シャフト3は、図2〜図4に示すように、円筒形もしくは円柱形をなし、前記シャフト3の外周面には、成型品としての前記シャフト3を金型から容易に抜くために抜き勾配というテーパーが設けられている。すなわち、前記シャフト3の外周面は、一端(上端)から他端(下端)にかけて外径が徐々に大きくなるテーパー(傾斜面、テーパー面)をなす。この結果、前記シャフト3は、成型後、金型から抜け易くなる。
【0018】
前記ミラーアセンブリ4は、一方が開口しかつ他方が閉塞したミラーハウジング7と、前記ミラーハウジング7の開口部5に配置されかつ反射面8を有するミラーユニット(いわゆるミラー)9と、から構成されている。前記ミラーユニット9は、前記ミラーハウジング7に、リモートコントロールユニットやパワーユニット(図示せず)を介してほぼ垂直軸回りに左右方向およびほぼ水平回りに上下方向に反射面8の角度調整可能に取り付けられている。
【0019】
前記ミラーハウジング7は、前記シャフト3に前記スプリング10および前記止め具11および前記ワッシャ6および前記位置決め手段16、22および前記嵌合部24を介して前記シャフト3回りに傾倒可能に取り付けられている取付部12を有する。前記取付部12は、前記シャフト3と同様に、樹脂製もしくは金属製(ダイカスト製またはプレス製)の金型成型品(成形品)からなる。前記取付部12は、前記ミラーハウジング7と別体のフレームやブラケットから構成されていて、前記ミラーハウジング7に一体に固定されている。
【0020】
前記取付部12は、図2〜図5に示すように、一端(上端)が開口し、かつ、他端(下端)が閉塞した中空状の断面凹形状をなす。前記取付部12の下端には、円形の透孔25が設けられている。前記透孔25の縁から円筒部26が一端側に一体に設けられている。前記円筒部26の先端部には、前記シャフト3の外周面に回転可能に嵌合する前記嵌合部24が一体に設けられている。
【0021】
前記嵌合部24には、前記シャフト3が回転可能に挿通する挿通孔13が設けられている。前記挿通孔13の内周面には、成型品としての前記嵌合部24を金型から容易に抜くために抜き勾配というテーパーが設けられている。すなわち、前記挿通孔13の内周面は、一端(上端)から他端(下端)にかけて内径が徐々に大きくなるテーパー(傾斜面、テーパー面)をなす。この結果、前記嵌合部24は、成型後、金型から抜け易くなる。
【0022】
相互に嵌合する前記シャフト3のテーパーの外周面の中間部と前記嵌合部24の前記挿通孔13のテーパーの内周面とには、抜き勾配0°の部分27と28とがそれぞれ設けられている。図8(B)に示すように、前記シャフト3の抜き勾配0°部分27の範囲は、前記嵌合部24の前記挿通孔13の抜き勾配0°部分28よりも、前記シャフト3の軸方向に大きい。
【0023】
すなわち、前記嵌合部24の前記挿通孔13の抜き勾配0°部分28の範囲(前記挿通孔13の軸方向の寸法)をHとすると、前記シャフト3の抜き勾配0°部分27の範囲(前記シャフト3の軸方向の寸法)は、HよりもI+J分大きい。前記寸法Hは、走行時の風圧や振動などにより、前記シャフト3の外周面と前記嵌合部24の前記挿通孔13の内周面との間にがたが発生しないように、前記シャフト3の外周面と前記嵌合部24の前記挿通孔13の内周面とが相互に嵌合するのに必要最低限の寸法である。前記寸法Iは、前記位置決め手段16、22の公差により、前記嵌合部24が前記シャフト3に対して下がる(前記シャフト3の一端から他端に移動する)寸法K(図11参照)に余裕の寸法αを加えた寸法である。前記寸法Jは、前記位置決め手段16、22の公差により、前記嵌合部24が前記シャフト3に対して上がる(前記シャフト3の他端から一端に移動する)寸法L(図14参照)に余裕の寸法αを加えた寸法である。なお、前記の寸法H、I、J、K、L、αは、前記シャフト3および前記取付部12の前記嵌合部24の材質により異なる。たとえば、寸法Hは約5mm、寸法Iは約0.7mm〜0.8mm、寸法Jは約0.7mm〜0.8mm、寸法Kは約0.5mm、寸法Lは約0.5mm、寸法αは約0.2mm〜0.3mmである。
【0024】
前記シャフト3の他端には、シャフトホルダ14が一体に設けられている。前記シャフトホルダ14は、前記ベース2にスクリュー15により固定されている。この結果、前記シャフト3は、前記ベース2に固定されている。
【0025】
前記シャフトホルダ14の一面(上面。前記シャフト3が一体に設けられている側の面)と前記取付部12の一面(下面。前記シャフトホルダ14の一面と対向する面)とには、前記位置決め手段16、22が設けられている。前記位置決め手段16、22は、前記ミラーアセンブリ4を使用位置A(図1中の実線にて示す位置)に位置決めするものである。前記位置決め手段は、前記取付部12の一面に設けられているノッチタイプの位置決め凸部22の外面と、前記シャフトホルダ14の一面に設けられていて前記位置決め凸部22が嵌合するノッチタイプの位置決め凹部16の内面と、から構成されている。
【0026】
前記位置決め凸部22は、図4〜図7に示すように、上辺(前記取付部12の一面側の辺)が長く下辺が短い逆台形(断面逆台形)をなす。前記位置決め凸部22の個数は、特に限定しないが、位置決めのバランスや製造コストなどを考慮すると、3個が好ましい。3個の前記位置決め凸部22は、前記取付部12の一面に前記シャフト3の回転中心O−Oを中心とする円周上に一体に設けられている。
【0027】
前記位置決め凹部16は、図3、図4、図6、図7に示すように、上辺(前記シャフトホルダ14の一面側の辺)が長く下辺が短い逆台形(断面逆台形)をなす。前記位置決め凹部16の個数は、前記位置決め凸部22の個数に合わせて3個である。3個の前記位置決め凹部16は、前記シャフトホルダ14の一面に前記シャフト3の回転中心O−Oを中心とする円周上に設けられている。
【0028】
前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22とが嵌合することにより、前記ミラーアセンブリ4は、前記使用位置Aに位置決めされる。また、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22との嵌合状態が解除されると、前記ミラーアセンブリ4は、前記シャフト3の回転中心O−O回りに回転可能となり、前記使用位置Aと前記格納位置Bとの間を、また、前記使用位置Aと前方傾倒位置C(図1中の二点鎖線にて示す位置)との間を、回転する。
【0029】
前記位置決め手段凹部16と前記位置決め凸部22は、前記シャフトホルダ14の一面と前記取付部12の一面、すなわち、前記ベース2側に設けられている。一方、前記シャフト3の抜き勾配0°部分27および前記嵌合部24の前記挿通孔13の抜き勾配0°部分28は、前記ベース3と反対側、すなわち、前記位置決め手段凹部16および前記位置決め凸部22に対して離れた箇所にそれぞれ設けられている。
【0030】
前記シャフトホルダ14の一面(上面)と前記取付部12の一面(下面)とには、ストッパ手段29、30が設けられている。前記ストッパ手段29、30は、前記ミラーアセンブリ4が前記格納位置Bまたは前記前方傾倒位置Cに位置する際に、前記ミラーアセンブリ4が前記ドアDに当たるのを回避させるものである。前記ストッパ手段は、前記シャフトホルダ14の一面に設けられているストッパ凸部29の外面と、前記取付部12の一面に設けられていて前記ストッパ凸部29が嵌合するストッパ凹部(もしくは溝部)30の内面と、から構成されている。
【0031】
前記ストッパ凸部29は、図3〜図5に示すように、回転中心O−Oを中心とする円弧の一部からなり、前記シャフトホルダ14の一面に前記シャフト3に沿って一体に設けられている。前記ストッパ凹部30は、図4、図5に示すように、回転中心O−Oを中心とする円弧の一部からなり、前記取付部12の一面に前記透孔25に沿って設けられている。
【0032】
前記ミラーアセンブリ4が前記シャフト3の回転中心O−O回りに回転して、前記ドアDに当たる直前であって、前記格納位置Bまたは前方傾倒位置Cに位置すると、前記ストッパ凸部29の端面31と前記ストッパ凹部30の端面32とが当接することにより、前記ミラーアセンブリ4が前記ドアDに当たるのを回避させる。なお、前記シャフトホルダ14の一面にストッパ凹部を設け、前記取付部12の一面にストッパ凸部を設けても良い。図1において、符号Eは、車両の後方を示し、符号Fは、車両の前方を示す。
【0033】
前記シャフト3には、複数本、この例では、4本の溝17が上端からほぼ中間までの間において、等間隔に設けられている。前記溝17は、前記シャフト3の上端部を残して貫通形状をなし、一方、前記シャフト3の上端部において連結形状(もしくは橋渡し形状)をなす。前記シャフト3の上端部における前記4本の溝17の連結部と貫通部との境の段部には、4個の係合部18がそれぞれ設けられている。また、前記シャフト3の前記4本の溝17の貫通部の両側面には、係止部19がそれぞれ設けられている。
【0034】
前記止め具11は、弾性を有する金属部材から構成されていて、円板形状のスプリング当接部20を有する。前記スプリング当接部20の全周縁は、一方向(下方向)にL字形状に折り曲げられている。このために、前記金属製の止め具11は、底が浅い丸皿形状をなす。前記スプリング当接部20の中央には、前記シャフト3が挿入する挿入孔21が設けられている。
【0035】
前記挿入孔21の縁から複数個、この例では、4個の係合爪部23が、前記シャフト3の挿入方向G(図3中の矢印Gを参照。前記スプリング当接部20の全周縁の折曲方向と反対側の方向)に、等間隔にそれぞれ設けられている。前記係合爪部23は、前記シャフト3の前記係合部18に弾性係合する。前記係合爪部23の幅は、前記シャフト3の前記溝17の幅と同等もしくは若干小さい。前記係合爪部23の前記シャフト3の周方向側の部分は、前記シャフト3の前記係止部19に係止する。
【0036】
前記スプリング10は、圧縮タイプのスプリング(圧縮コイルスプリング)を使用する。前記ワッシャ6は、金属製もしくは樹脂製の通常のワッシャを使用する。
【0037】
以下、前記シャフト3に前記ミラーアセンブリ4を、前記スプリング10および前記止め具11および前記ワッシャ6および前記位置決め手段16、22および前記嵌合部24を介して傾倒可能に組み付ける工程について説明する。
【0038】
まず、前記シャフト3を前記ミラーハウジング7の前記取付部12の前記透孔26中および前記円筒部26中および前記嵌合部24の前記挿通孔13中および前記取付部12中に、図3中の矢印G方向(前記ミラーハウジング7の下側から上側への方向)に、挿通させて、前記シャフトホルダ14の上面に前記取付部12の下面を載置させる。かつ、前記位置決め凹部16と位置決め凸部22とを嵌合させ、前記ストッパ凸部29と前記ストッパ凹部30とを嵌合させる。
【0039】
つぎに、前記シャフト3に前記ワッシャ6および前記スプリング10を、図3中の矢印G方向と逆方向(前記ミラーハウジング7の上側から下側への方向)に、順次落とし込んで前記取付部12の下端の上面に載置させる。
【0040】
それから、前記シャフト3の4本の前記溝17に前記止め具11の4個の前記係合爪部23をそれぞれ合わせて、前記シャフト3に前記止め具11を図3中の矢印G方向と逆方向に落とし込む。このとき、前記シャフト3の外周面が上端から下端にかけて末広がりとなるテーパー形状をなすので、前記止め具11は、前記シャフト3の途中で止まる。すなわち、前記止め具11の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の前記溝17の前記連結部に当接する。
【0041】
つづいて、冶具(図示せず)を使用して、前記止め具11の前記スプリング当接部20を前記スプリング10の上側端面に当接させた状態で、前記スプリング10のスプリング力に抗して前記止め具11を前記シャフト3に押し込む。すると、前記止め具11の前記係合爪部23が弾性変形して、前記止め具11の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の前記溝17の前記連結部に常時当接しながら図3中の矢印G方向と逆方向に落ちていく。
【0042】
そして、前記止め具11が押し込まれて、前記止め具11の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の前記溝17の前記連結部と前記貫通部との境の前記係合部18に達する。すると、弾性変形している前記止め具11の前記係合爪部23が元の状態に弾性復帰し、前記止め具11の4個の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の4個の前記係合部18にそれぞれ弾性係合する。前記止め具11の4個の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の4個の前記係合部18にそれぞれ弾性係合すると、前記止め具11の4個の前記係合爪部23の先端が前記シャフト3の4個の前記係合部18から外れない。すなわち、前記止め具11は、前記シャフト3から外れない。
【0043】
また、前記シャフト3の4本の前記溝17の貫通部の両側面の前記係止部19が、前記止め具11の4個の前記係合爪部23の前記シャフト3の周方向側の部分にそれぞれ係止する。
【0044】
この結果、図2および図4に示すように、前記止め具11は、前記シャフト3に固定される。また、前記スプリング10は、前記止め具11により前記シャフト3に固定される。すなわち、前記スプリング10は、前記止め具11の前記スプリング当接部20と前記取付部12上の前記ワッシャ6との間において圧縮された状態で前記シャフト3の周囲に配置される。
【0045】
これにより、前記ミラーアセンブリ4は、前記シャフト3に前記スプリング10および前記止め具11および前記ワッシャ6および前記位置決め手段16、22および前記嵌合部24を介して傾倒可能に組み付けられる。そして、前記シャフト3と一体の前記シャフトホルダ14を前記ベース2に前記スクリュー15により固定することにより、この実施例のドアミラー1が構成される。
【0046】
前記ドアミラー1は、ドアDに前記ベース2を固定することにより、ドアDに装備される。そして、前記ドアミラー1は、車体のドアDに固定される前記ベース2および前記シャフト3および前記シャフトホルダ14側の固定部と、前記ミラーユニット9を有していて前記シャフト3に傾倒可能に取り付けられている前記ミラーアセンブリ4および前記取付部12側の傾倒部と、から構成されている。
【0047】
車体のドアDに固定される前記ベース2および前記シャフト3および前記シャフトホルダ14側の固定部は、車体と常に一体に固定されている。一方、前記ミラーユニット9を有していて前記シャフト3に傾倒可能に取り付けられている前記ミラーアセンブリ4および前記取付部12側の傾倒部は、人や物に当たった際には、緩衝のために、前記シャフト3の回転中心O−O回りに傾倒(回転)する。
【0048】
固定部の前記シャフトホルダ14と傾倒部の前記取付部12とは、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22とにより、使用位置Aまたは格納位置Bに位置決めされている。前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22との嵌合状態が走行時の風圧などにより外れて前記ミラーアセンブリ4が前記シャフト3に対して傾倒しないように、また、傾倒部の前記ミラーユニット9の反射面8が走行時の路面の凹凸などによりぶれないように、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22とには、テンションがかけられている。このテンションをかけるのには、前記スプリング10が使用されている。すなわち、前記スプリング10のスプリング力により、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22とが相互に嵌合して、傾倒部の前記ミラーアセンブリ4が固定部の前記シャフト3にぶれないように適度な保持力で傾倒可能に保持されている。
【0049】
前記スプリング10は、前記シャフト3に固定されている前記止め具11により、前記止め具11の前記スプリング当接部20と前記取付部12上の前記ワッシャ6との間において圧縮された状態で前記シャフト3の周囲に配置されている。
【0050】
以下、車両用アウトサイドミラー装置において、ノッチタイプの前記位置決め凹部16と同じくノッチタイプの前記位置決め凸部22とに公差の範囲のばらつきがあると、前記ミラーアセンブリ4のミラー(前記ミラーユニット9の反射面8)がぶれるというメカニズムについて説明する。
【0051】
まず、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22とが、公差の範囲のばらつきがなく設計値通りに製造された場合は、図6、図7、図8(A)および(B)に示すように、前記位置決め凹部16と前記位置決め凸部22との間、および、前記シャフト3の外周面と前記嵌合部24の前記挿通孔13の内周面との間においてがたが発生しない。この場合は、前記ミラーアセンブリ4のミラーがぶれない。
【0052】
ここで、図9の点線で示すように、前記位置決め凹部160と前記位置決め凸部220とに公差の範囲のばらつきがあるとする。たとえば、前記位置決め凹部160の幅に設計値通りの前記位置決め凹部16の幅(図9中の実線)に対して最大のばらつきがあり、一方、前記位置決め凸部220の幅に設計値通りの前記位置決め凸部22の幅(図9中の実線)に対して最小のばらつきがあるとする。
【0053】
最大のばらつきがある前記位置決め凹部160と最小のばらつきがある前記位置決め凸部220とをそのまま嵌合させたとする。すると、図10(A)の点線で示すように、位置決め手段160、220にばらつきがある前記取付部120が、位置決め手段16、22が設計値通りの前記取付部12に対して寸法K分下がる。
【0054】
前記取付部120が寸法K分下がるのに伴って、図11の点線で示すように、位置決め手段160、220にばらつきがある前記嵌合部240が、位置決め手段16、22が設計値通りの前記嵌合部24に対して寸法K分下がろうとする。
【0055】
ところが、図8(A)および図11の実線に示すように、前記シャフト3の外周面および前記嵌合部24の前記挿通孔13の内周面には、成型品(成形品)を金型から容易に抜くために抜き勾配というテーパーが設けられている。このために、前記嵌合部24が前記シャフト3に対してテーパーの小径側(図中の上側)から大径側(図中の下側)に下がろう(すなわち、ずれよう)とすると、前記嵌合部24の前記挿通孔13のテーパーの内周面が前記シャフト3のテーパーの外周面に食い込んで、前記嵌合部24の位置が前記シャフト3に対してテーパーの小径側から大径側に下がらない(ずれない)。
【0056】
この結果、図10(B)の点線で示すように、位置決め手段160、220にばらつきがある前記取付部120の位置が、位置決め手段16、22が設計値通りの前記取付部12の位置のままにある。このために、前記取付部120の位置決め凸部220と前記シャフトホルダ14の前記位置決め凹部160との間には、隙間Mが発生する。これにより、前記ミラーアセンブリ4のミラーがぶれる。
【0057】
また、図12の一点鎖線で示すように、前記位置決め凹部161と前記位置決め凸部221とに公差の範囲のばらつきがあるとする。たとえば、前記位置決め凹部161の幅に設計値通りの前記位置決め凹部16の幅(図12中の実線)に対して最小のばらつきがあり、一方、前記位置決め凸部221の幅に設計値通りの前記位置決め凸部22の幅(図12中の実線)に対して最大のばらつきがあるとする。
【0058】
最小のばらつきがある前記位置決め凹部161と最大のばらつきがある前記位置決め凸部221とをそのまま嵌合させたとする。すると、図13の一点鎖線で示すように、位置決め手段161、221にばらつきがある前記取付部121が、位置決め手段16、22が設計値通りの前記取付部12に対して寸法L分上がる。
【0059】
前記取付部121が寸法L分上がるのに伴って、図14の一点鎖線で示すように、位置決め手段161、221にばらつきがある前記嵌合部241が、位置決め手段16、22が設計値通りの前記嵌合部24に対して寸法L分上がる。この結果、前記嵌合部241の前記挿通孔131のテーパーの内周面と前記シャフト3のテーパーの外周面との間には、隙間Nが発生する。これにより、前記ミラーアセンブリ4のミラーがぶれる。
【0060】
以上のように、ノッチタイプの前記位置決め凹部16と同じくノッチタイプの前記位置決め凸部22とに公差の範囲のばらつきがあると、前記取付部120の位置決め凸部220と前記シャフトホルダ14の前記位置決め凹部160との間に隙間Mが発生して、前記ミラーアセンブリ4のミラーがぶれたり、あるいは、前記嵌合部241の前記挿通孔131のテーパーの内周面と前記シャフト3のテーパーの外周面との間に隙間Nが発生して、前記ミラーアセンブリ4のミラーがぶれたりする。
【0061】
この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)は、以上のごとき構成からなり、以下、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)の作用について説明する。
【0062】
ドアDにベース2を固定してドアDに装備されたドアミラー1のミラーアセンブリ4を使用位置Aに位置させる。この使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4のミラーユニット9の反射面8で車両の後方を視認することができる。このとき、固定部のシャフトホルダ14と傾倒部の取付部12との間は、相互に嵌合状態の位置決め凹部16と位置決め凸部22とにより、使用位置Aに位置決めされている。また、この位置決め凹部16と位置決め凸部22とにはスプリング10のスプリング力(テンション)が作用しているので、自動車の走行時の風圧などによりミラーアセンブリ4がシャフト3に対して不用意に傾倒したり、走行時の路面の凹凸などによりミラーユニット9の反射面8が不用意にぶれたりするようなことはない。
【0063】
また、リモートコントロールユニットやパワーユニット(図示せず)を駆動させると、ミラーユニット9をほぼ水平軸回りに上下方向にまたほぼ垂直軸回りに左右方向に回動させることができ、これにより、ミラーユニット9の反射面8の位置をドライバーの目線に合わせて調整することができる。
【0064】
つぎに、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、位置決め凹部16と位置決め凸部22との嵌合状態が解除されて、ミラーアセンブリ4は、シャフト3の回転中心O−O回りに時計方向に回転する。このとき、ストッパ凸部29とストッパ凹部30との嵌合により、ミラーアセンブリ4の回転がガイドされる。
【0065】
ミラーアセンブリ4が格納位置Bに位置すると、ストッパ凸部29の端面31とストッパ凹部30の端面32とが当接して、ミラーアセンブリ2の回転が規制されてミラーアセンブリ2とドアDとの当接が回避される。
【0066】
また、格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに反時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、ミラーアセンブリ4がシャフト3の回転中心O−O回りに反時計方向に回転する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置すると、嵌合状態が解除されている位置決め凹部16と位置決め凸部22とが再度嵌合して、ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する。
【0067】
一方、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに反時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、位置決め凹部16と位置決め凸部22との嵌合状態が解除されて、ミラーアセンブリ4は、シャフト3の回転中心O−O回りに反時計方向に回転する。このとき、ストッパ凸部29とストッパ凹部30との嵌合により、ミラーアセンブリ4の回転がガイドされる。
【0068】
ミラーアセンブリ4が前方傾倒位置Cに位置すると、ストッパ凸部29の端面31とストッパ凹部30の端面32とが当接して、ミラーアセンブリ2の回転が規制されて、ミラーアセンブリ4が前方傾倒位置Cに位置し、かつ、ミラーアセンブリ2とドアDとの当接が回避される。
【0069】
また、前方傾倒位置Cに位置するミラーアセンブリ4を、手動によりシャフト3の回りに時計方向に、スプリング10のスプリング力よりも大きい力で回す。すると、ミラーアセンブリ4がシャフト3の回転中心O−O回りに時計方向に回転する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置すると、嵌合状態が解除されている位置決め凹部16と位置決め凸部22とが再度嵌合して、ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する。
【0070】
そして、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4にスプリング10のスプリング力よりも大きい力が作用すると、ミラーアセンブリ4は、前記の手動回転と同様に、シャフト3の回転中心O−O回りに時計方向または反時計方向に緩衝のために回転する。
【0071】
この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)は、以上のごとき構成作用からなり、以下、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(実施例のドアミラー1)の効果について説明する。
【0072】
実施例のドアミラー1は、相互に嵌合するシャフト3のテーパーの外周面と嵌合部24の挿通孔13のテーパーの内周面とにそれぞれ設けられている抜き勾配0°の部分27と28により、位置決め凹部16と位置決め凸部22に公差の範囲のばらつきがあっても、ミラーアセンブリのミラー4のぶれを防ぐことができる。すなわち、実施例のドアミラー1は、位置決め凹部16と位置決め凸部22に公差の範囲のばらつきがあっても、シャフト3のテーパーの外周面の抜き勾配0°の部分27と嵌合部24の挿通孔13のテーパーの内周面の抜き勾配0°の部分28とが常に相互に嵌合している状態で、シャフト3と嵌合部24との相対位置がシャフト3の軸方向にずれる(図8(B)参照)。このために、実施例のドアミラー1は、位置決め凹部16と位置決め凸部22とに隙間が発生したりすることがなく、また、シャフト3のテーパーの外周面(抜き勾配0°の部分27)と嵌合部24の挿通孔13のテーパーの内周面(抜き勾配0°の部分28)との間に隙間が発生したりすることがない。この結果、実施例のドアミラー1は、位置決め凹部16と位置決め凸部22とに公差の範囲のばらつきがあっても、ミラーアセンブリ4のミラーのぶれを防ぐことができる。
【0073】
また、実施例のドアミラー1は、シャフト3の抜き勾配0°部分27の範囲の寸法が嵌合部24の挿通孔13の抜き勾配0°部分28の範囲の寸法Hよりもシャフト3の軸方向に寸法I+J分大きいので、嵌合部24の挿通孔13の抜き勾配0°部分28がシャフト3の抜き勾配0°部分27の範囲内に常に位置する。このために、実施例のドアミラー1は、シャフト3の抜き勾配0°の部分27と嵌合部24の挿通孔13の抜き勾配0°の部分28とが常に相互に嵌合している状態にあるので、位置決め凹部16と位置決め凸部22との公差の範囲のばらつきを常に確実に吸収して、ミラーアセンブリ4のミラーのぶれを常に確実に防ぐことができる。
【0074】
さらに、実施例のドアミラー1は、位置決め凹部16と位置決め凸部22とがベース2側に設けられていて、シャフト3の抜き勾配0°部分27および嵌合部24の挿通孔13の抜き勾配0°部分28がベース3と反対側すなわち位置決め凹部16と位置決め凸部22とから離れた箇所に設けられているので、位置決め凹部16と位置決め凸部22とによるシャフト3とミラーアセンブリ4との保持箇所と、シャフト3と嵌合部24との嵌合によるシャフト3とミラーアセンブリ4との保持箇所との距離が長くなる。このために、実施例のドアミラー1は、シャフト3とミラーアセンブリ4との安定感が増して、ミラーアセンブリ4のミラーのぶれをさらに確実に防ぐことができる。
【0075】
以下、前記の実施例以外の例について説明する。この実施例においては、乗用車のドアDに装備されるドアミラー1について説明するものである。ところが、この発明においては、その他の自動車用アウトサイドミラー装置、たとえば、乗用車のフェンダに装備されるフェンダミラーやトラックのフェンダやピラーなどに装備されるトラックミラーなどであっても良い。すなわち、車体に固定されるベースおよび樹脂製のシャフト側の固定部と、そのシャフトに傾倒可能に取り付けられているミラーユニット(ミラー)およびミラーアセンブリ側の傾倒部と、から構成されている自動車用アウトサイドミラー装置であっても良い。
【0076】
また、前記の実施例においては、手動により、ミラーアセンブリ4をシャフト3に対して使用位置Aと格納位置Bとの間を傾倒(回転、回動)させるものである。ところが、この発明においては、モータおよび回転力伝達機構(減速機構およびクラッチ機構)から構成されている電動格納ユニットの電動作動により、ミラーアセンブリをシャフトに対して使用位置と格納位置との間を傾倒させても良い。この場合、電動格納ユニットのケーシング(たとえば、ギアケースおよびカバーからなるケーシング)がミラーハウジングと別体の取付部となる。
【0077】
さらに、前記の実施例においては、ミラーハウジング7が一体構造のものである。ところが、この発明においては、ミラーハウジングが本体部とその本体部を覆うカバー(化粧カバー、ガーニッシュ、シェルフレーム)とから構成されている別体構造のものであっても良い。
【0078】
さらにまた、前記の実施例においては、位置決め手段が取付部12の一面に設けられているノッチタイプの凸部22とシャフトホルダ14の一面に設けられていて凸部が嵌合するノッチタイプの凹部16面とから構成されているものである。ところが、この発明においては、シャフトホルダ14の一面にノッチタイプの凹部を設け、取付部12の一面にノッチタイプの凸部を設けても良い。
【0079】
さらにまた、前記の実施例においては、位置決め手段がノッチタイプの凹部凸部すなわち断面台形の凹凸から構成されているものである。ところが、この発明においては、位置決め手段として、ボールとそのボールが嵌合する嵌合凹部とから構成されているもの、また、半球形の凹凸から構成されているもの、さらに、断面半円形の凹凸から構成されているもの、さらにまた、断面三角形の凹凸から構成されているものなどであっても良い。
【0080】
さらにまた、前記の実施例においては、止め部11の係合爪部23を4個設けてなるものである。ところが、この発明においては、係合爪部を製品の仕様(大きさなど)により、3個、5個以上設けても良い。
【0081】
さらにまた、前記の実施例においては、取付部12がミラーハウジング7と別体のフレームやブラケットから構成されていて、そのミラーハウジング7に一体に固定されているものである。ところが、この発明においては、取付部とミラーハウジングとが一体構造のものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例を示す使用状態の平面図である。
【図2】同じく、ドアミラーを示す一部破断正面図であって、図1におけるII矢視図である。
【図3】同じく、シャフトおよびシャフトホルダおよび取付部およびワッシャおよびスプリングおよび止め具を示す分解斜視図である。
【図4】同じく、シャフトおよびシャフトホルダおよび取付部およびワッシャおよびスプリングおよび止め具の組付状態を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図5】同じく、取付部の底面図であって、図3におけるV矢視図である。
【図6】同じく、公差の範囲のばらつきがなく設計値通りに製造された位置決め凹部と位置決め凸部とを示す説明図である。
【図7】同じく、公差の範囲のばらつきがなく設計値通りに製造された位置決め凹部と位置決め凸部との嵌合状態を示す説明図である。
【図8】同じく、公差の範囲のばらつきがなく設計値通りに製造された位置決め凹部と位置決め凸部とが嵌合した場合のシャフトと嵌合部の嵌合状態を示す説明図である。
【図9】同じく、最大のばらつきがある位置決め凹部と最小のばらつきがある位置決め凸部とを示す説明図である。
【図10】同じく、最大のばらつきがある位置決め凹部と最小のばらつきがある位置決め凸部との嵌合状態を示す説明図である。
【図11】同じく、最大のばらつきがある位置決め凹部と最小のばらつきがある位置決め凸部とが嵌合した場合のシャフトと嵌合部の嵌合状態を示す説明図である。
【図12】同じく、最小のばらつきがある位置決め凹部と最大のばらつきがある位置決め凸部とを示す説明図である。
【図13】同じく、最小のばらつきがある位置決め凹部と最大のばらつきがある位置決め凸部との嵌合状態を示す説明図である。
【図14】同じく、最小のばらつきがある位置決め凹部と最大のばらつきがある位置決め凸部とが嵌合した場合のシャフトと嵌合部の嵌合状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0083】
1 ドアミラー(車両用アウトサイドミラー装置)
2 ベース
3 シャフト
4 ミラーアセンブリ
5 開口部
6 ワッシャ
7 ミラーハウジング
8 反射面
9 ミラーユニット
10 スプリング
11 止め具
12 取付部
120 位置決め凸部に最小のばらつきがある場合の取付部
121 位置決め凸部に最大のばらつきがある場合の取付部
13 挿通孔
14 シャフトホルダ
15 スクリュー
16 位置決め凹部(位置決め手段)
160 最大のばらつきがある位置決め凹部
161 最小のばらつきがある位置決め凹部
17 溝
18 係合部
19 係止部
20 スプリング当接部
21 挿入孔
22 位置決め凸部(位置決め手段)
220 最小のばらつきがある位置決め凸部
221 最大のばらつきがある位置決め凸部
23 係合爪部
24 嵌合部
240 位置決め凸部に最小のばらつきがある場合の嵌合部
241 位置決め凸部に最大のばらつきがある場合の嵌合部
25 円形の透孔
26 円筒部
27 シャフト側の抜き勾配0°の部分
28 嵌合部側の抜き勾配0°の部分
29 ストッパ凸部(ストッパ手段)
30 ストッパ凹部(ストッパ手段)
31 端面
32 端面
A 使用位置
B 格納位置
C 前方傾倒位置
D ドア(車体)
E 車両の後方
F 車両の前方
G 挿入方向
H シャフトの外周面と嵌合部の挿通孔の内周面とが相互に嵌合するのに必要最低限の寸法
I 位置決め手段の公差によって嵌合部がシャフトに対して下がる寸法に余裕の寸法を加えた寸法
J 位置決め手段の公差によって嵌合部がシャフトに対して上がる寸法に余裕の寸法を加えた寸法
K 位置決め手段の公差によって嵌合部がシャフトに対して下がる寸法
L 位置決め手段の公差によって嵌合部がシャフトに対して上がる寸法
α 余裕の寸法
M 位置決め手段にばらつきがある場合の取付部の位置決め凸部とシャフトホルダの位置決め凹部との間の隙間
N 位置決め手段にばらつきがある嵌合部の挿通孔のテーパーの内周面とシャフトのテーパーの外周面との間の隙間
O−O 回転中心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーアセンブリが車体に対して傾倒可能である車両用アウトサイドミラー装置において、
前記車体に固定されるベースと、
前記ベースに固定されていて、外周面がテーパーをなすシャフトと、
前記シャフトの周囲に圧縮された状態で配置されているスプリングと、
前記シャフトに傾倒可能に装備されている前記ミラーアセンブリと、
前記シャフトと前記ミラーアセンブリとにそれぞれ設けられていて、前記スプリングのスプリング力により保持力が得られていて、前記ミラーアセンブリの前記シャフトに対する位置を決める位置決め手段と、
前記ミラーアセンブリに設けられていて、内周面がテーパーをなす挿通孔を有していて、前記シャフトの外周面に回転可能に嵌合している嵌合部と、
を備え、
相互に嵌合する前記シャフトのテーパーの外周面と前記嵌合部の前記挿通孔のテーパーの内周面とには、抜き勾配0°の部分がそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項2】
前記シャフトの抜き勾配0°部分の範囲は、前記嵌合部の抜き勾配0°部分よりも、前記シャフトの軸方向に大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項3】
前記位置決め手段は、前記ベース側に設けられていて、
前記シャフトの抜き勾配0°部分および前記嵌合部の抜き勾配0°部分は、前記ベースと反対側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項1】
ミラーアセンブリが車体に対して傾倒可能である車両用アウトサイドミラー装置において、
前記車体に固定されるベースと、
前記ベースに固定されていて、外周面がテーパーをなすシャフトと、
前記シャフトの周囲に圧縮された状態で配置されているスプリングと、
前記シャフトに傾倒可能に装備されている前記ミラーアセンブリと、
前記シャフトと前記ミラーアセンブリとにそれぞれ設けられていて、前記スプリングのスプリング力により保持力が得られていて、前記ミラーアセンブリの前記シャフトに対する位置を決める位置決め手段と、
前記ミラーアセンブリに設けられていて、内周面がテーパーをなす挿通孔を有していて、前記シャフトの外周面に回転可能に嵌合している嵌合部と、
を備え、
相互に嵌合する前記シャフトのテーパーの外周面と前記嵌合部の前記挿通孔のテーパーの内周面とには、抜き勾配0°の部分がそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項2】
前記シャフトの抜き勾配0°部分の範囲は、前記嵌合部の抜き勾配0°部分よりも、前記シャフトの軸方向に大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項3】
前記位置決め手段は、前記ベース側に設けられていて、
前記シャフトの抜き勾配0°部分および前記嵌合部の抜き勾配0°部分は、前記ベースと反対側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−90925(P2009−90925A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265795(P2007−265795)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】
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