説明

車両用アウトサイドミラー装置

【課題】製品ごとのクラッチ機構のクラッチトルクのばらつきをなくすか極力小さくすることが重要である。
【解決手段】この発明は、クラッチギア32のギア部材33と別体のクラッチ部材25を樹脂部材から構成するものである。この結果、クラッチ部材25において表面粗さをなくす処理や表面硬化処理が不要であるから、樹脂部材からなるクラッチ部材25のクラッチ凸部40の表面粗さや表面硬化においてばらつきが発生することがなく、クラッチトルクのばらつきをなくすか極力小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーアセンブリが電動格納ユニットおよびベースを介して車体に回転(傾倒、回動)可能に取り付けられる車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。すなわち、この発明は、たとえば、電動格納型のドアミラーなどの車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用アウトサイドミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用アウトサイドミラー装置について説明する。従来の車両用アウトサイドミラー装置は、シャフトに挿通するギアとプレートクラッチでクラッチ機構を構成するものである。従来の車両用アウトサイドミラー装置は、通常時には、ギアの凸部とプレートクラッチの凹部が嵌合していて、ギアがシャフト回りに回転不能であり、この状態でモータを駆動させると、ミラーボデーがシャフト回りに回転する。また、モータが停止状態でミラーボデーに外力が加わると、ギアの凸部とプレートクラッチの凹部との嵌合が外れて、ギアがシャフト回りに回転可能となりミラーボデーがシャフト回りに回転して外力を逃がす。
【0003】
かかる車両用アウトサイドミラー装置においては、製品ごとのクラッチ機構のクラッチトルク(クラッチ機構のリリーストルク)のばらつきをなくすか極力小さくすることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−287593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、製品ごとのクラッチ機構のクラッチトルクのばらつきをなくすか極力小さくすることが重要であるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、クラッチ機構が、クラッチ部を有するクラッチギアと、クラッチ部を有するクラッチホルダと、クラッチギアのクラッチ部とクラッチホルダのクラッチ部とを切断可能に接続するスプリングと、を備え、クラッチギアが、クラッチ部を有するクラッチ部材と、ギア部を有するギア部材と、から構成されていて、クラッチ部材とギア部材とが、回転方向には固定で取り付けられていて、クラッチ部材が、樹脂部材から構成されている、ことを特徴とする。
【0007】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、ギア部材が、金属部材または高強度の樹脂部材から構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、クラッチホルダが、樹脂部材から構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)は、ギア部材が、円筒形状をなし、ギア部材の外周面には、ギア部が設けられていて、クラッチ部材が、円筒形状をなし、クラッチ部材の一端面には、クラッチ部が設けられていて、クラッチ部材とギア部材とには、相互にシャフトの回転中心回りに回転するのを防止する回転止め部と、相互にシャフトの回転中心線方向に移動するのを防止する移動止め部とが、それぞれ設けられていて、クラッチ部材が、ギア部材中に、回転止め部によりシャフトの回転中心回りに回転不可能にかつ移動止め部によりシャフトの回転中心線方向に移動不可能に挿入されていて、クラッチ部材とギア部材とが一体に動くように取り付けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、クラッチ部を有するクラッチ部材とギア部を有するギア部材とをそれぞれ別体に製造して、そのクラッチ部材とギア部材とを回転方向には固定で取り付けて、クラッチ機構のクラッチギアを構成するものであって、かつ、そのクラッチギアのギア部材と別体のクラッチ部材を樹脂部材から構成するものである。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、クラッチ部とギア部とが一体に構成されていてかつ金属部材または高強度の樹脂部材から構成されているクラッチギアと比較して、製品ごとのクラッチ機構のクラッチトルクのばらつきをなくすか極力小さくすることができる。すなわち、金属部材からなるクラッチギアの場合、クラッチトルクを安定させるために、バレル研磨などの表面粗さをなくす処理が必要であり、また、磨耗性を向上するために、熱処理などの表面硬化処理が必要であり、その処理のばらつきにより、クラッチ部の表面粗さや表面硬化においてばらつきが発生して、クラッチトルクのばらつきにつながる。これに対して、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、クラッチギアのギア部材と別体のクラッチ部材を樹脂部材から構成するものであるから、クラッチ部材において表面粗さをなくす処理や表面硬化処理が不要であり、その結果、樹脂部材からなるクラッチ部材のクラッチ部の表面粗さや表面硬化においてばらつきが発生することがなく、クラッチトルクのばらつきをなくすか極力小さくすることができる。
【0011】
しかも、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、クラッチギアのクラッチ部材においては表面粗さをなくす処理や表面硬化処理が不要であるから、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0012】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、クラッチギアのクラッチ部材とは別体のギア部材を金属部材または高強度の樹脂部材から構成するものであるから、ギア部材とは別体のクラッチ部材を樹脂部材から構成しても、クラッチギアのギア部の強度や耐久性を、金属部材または高強度の樹脂部材からなるクラッチギアと同様に確保することができる。
【0013】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、クラッチホルダを樹脂部材から構成するものであるから、この樹脂部材からなるクラッチホルダのクラッチ部と、クラッチギアの同じく樹脂部材からなるクラッチ部材のクラッチ部との組み合わせにより、すなわち、低摩耗の高摺動性の樹脂部材のクラッチ部の組み合わせにより、製造初期から長期間に亘って、安定したクラッチトルクを確保することができる。
【0014】
しかも、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、低摩耗の高摺動性の樹脂部材のクラッチ部の組み合わせにより、金属部材または高強度の樹脂部材のクラッチ部の組み合わせと比較して、グリスの依存を少なくすることができ、その分、グリスが減った場合でもクラッチトルクの増加を抑制することができ、安定したクラッチトルクを得ることができる。
【0015】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、前記の課題を解決するための手段により、クラッチギアが別体のクラッチ部材とギア部材とから構成されていても、クラッチ部とギア部とが回転方向には固定であるクラッチギアと同様のクラッチ作用をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例を示す使用状態の平面図である。
【図2】図2は、同じく、電動格納ユニットを示す分解斜視図である。
【図3】図3は、同じく、ケーシングを一部破断した電動格納ユニットを示す斜視図である。
【図4】図4は、同じく、ミラーアセンブリの内部を示す横断面図(水平断面図)である。
【図5】図5は、同じく、電動格納ユニットの内部を示す横断面図(水平断面図)である。
【図6】図6は、同じく、クラッチギアを示す斜視図である。
【図7】図7は、同じく、クラッチギアを一部破談してクラッチ部材とギア部材との組付状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、同じく、クラッチギアのクラッチ部材とギア部材とを示す分解斜視図である。
【図9】図9は、同じく、クラッチギアのクラッチ部材とギア部材とを示す分解一部断面図である。
【図10】図10は、同じく、クラッチギアのクラッチ部材とギア部材との組付状態を示す一部断面図である。
【図11】図11は、同じく、クラッチギアとクラッチホルダとの接続状態を示す説明図である。
【図12】図12は、同じく、ミラーアセンブリに前方からの外力が加わったときのクラッチギアとクラッチホルダとの状態を示す説明図である。
【図13】図13は、同じく、クラッチギアとクラッチホルダとの切断状態を示す説明図である。
【図14】図14は、同じく、クラッチギアとクラッチホルダとの接続状態を示す説明図である。
【図15】図15は、同じく、ミラーアセンブリに後方からの外力が加わったときのクラッチギアとクラッチホルダとの状態を示す説明図である。
【図16】図16は、同じく、クラッチギアとクラッチホルダとの切断状態を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
「構成の説明」
以下、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置の構成について説明する。図1において、符号1は、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置であって、この例では、電動格納式ドアミラー装置(電動格納型のドアミラー)である。前記電動格納式ドアミラー装置1は、自動車の左右のドア(図示せず)にそれぞれ装備される。なお、この実施例の電動格納式ドアミラー装置1は、自動車の右側のドアに装備されるものであって、自動車の左側のドアに装備される電動格納式ドアミラー装置は、この実施例の電動格納式ドアミラー装置1とほぼ左右が逆となる。
【0019】
前記電動格納式ドアミラー装置1は、図1に示すように、ミラーアセンブリ4が電動格納ユニット3およびベース(ミラーベース)2を介して車体(自動車のドア)Dに回転可能に取り付けられるものである。前記ベース2は、前記ドアDに固定されるものである。
【0020】
前記ミラーアセンブリ4は、図1、図4に示すように、本体部(取付ブラケット)19およびカバー部20からなるミラーハウジング5と、前記本体部19に取り付けられているパワーユニット23と、前記パワーユニット23に上下方向および左右方向に傾動可能に取り付けられているミラーユニット24と、から構成されている。
【0021】
前記電動格納ユニット3は、図2〜図5に示すように、シャフトホルダ9と、シャフト10と、ケーシングとしてのギアケース11およびカバー12と、モータ13と、回転力伝達機構としての減速機構14およびクラッチ機構15と、軸受部材16と、介在部材6と、電動回転範囲規制機構(特願2010−071463参照)と、緩衝機構(特願2010−071463参照)と、を備えるものである。
【0022】
前記シャフトホルダ9は、前記ベース2に固定される。前記シャフトホルダ9の一方の面(上面)の中央には、前記シャフト10が一体に設けられている。前記シャフト10は、中空形状をなしていて、ハーネス(図示せず)が挿通するように構成されている。前記シャフト10には、前記ギアケース11および前記カバー12が前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられている。前記ギアケース11は、前記ミラーアセンブリ4の前記本体部19に取り付けられている。前記ギアケース11および前記カバー12内には、前記モータ13と、前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15と、前記軸受部材16と、前記介在部材6と、前記電動回転範囲規制機構と、前記緩衝機構と、がそれぞれ収納されている。
【0023】
前記ギアケース11は、図2〜図5に示すように、一方(下方)が閉塞し、かつ、他方(上方)が開口した断面凹形状をなす。すなわち、前記ギアケース11には、前記シャフトホルダ9側が閉塞され、かつ、前記カバー12側が開口された断面凹形状をなす収納部18が設けられている。前記ギアケース11の閉塞部には、挿入孔(図示せず)が設けられている。前記挿入孔には、前記シャフト10が挿入されている。この結果、前記ギアケース11は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられることとなる。
【0024】
図2、図3に示すように、前記シャフトホルダ9の上面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円弧形状のストッパ凸部21が一体に設けられている。前記ストッパ凸部21の両端面には、ストッパ面22がそれぞれ設けられている。一方、前記ギアケース11の下面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円弧形状のガイド溝(図示せず)が設けられている。前記ガイド溝の両端面には、ストッパ面がそれぞれ設けられている。
【0025】
前記ギアケース11の前記ガイド溝には、前記シャフトホルダ9の前記ストッパ凸部21が係合されている。前記ストッパ凸部21と前記ガイド溝とは、前記ギアケース11が前記シャフトホルダ9に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転する際、すなわち、図1に示すように、前記ミラーアセンブリ4が前記ベース2に対して使用位置Aと格納位置Bとの間および使用位置Aと前方傾倒位置Cとの間を後方(上から見て時計方向)または前方(上から見て反時計方向)に回転する際のガイドとなるガイド部材を構成する。図1において、符号Eは、車両の後方を示し、符号Fは、車両の前方を示す。
【0026】
また、前記ストッパ凸部21の前記ストッパ面22と前記ガイド溝の前記ストッパ面とは、前記ミラーアセンブリ4が上から見て時計方向または上から見て反時計方向に回転して前記ドアDに当たる前に、前記ストッパ凸部21の前記ストッパ面22と前記ガイド溝の前記ストッパ面とが当接して、前記ミラーアセンブリ4の回転が規制されて前記ミラーアセンブリ4が前記ドアDに当たるのを回避するためのストッパとなるストッパ部材を構成する。
【0027】
前記カバー12は、図2、図3に示すように、一方(上方)が閉塞し、かつ、他方(下方)が開口した断面逆凹形状をなす。すなわち、前記カバー12には、一方の前記ギアケース11側が開口され、かつ、他方側が開口された断面逆凹形状をなす収納部18が設けられている。前記カバー12には、中空形状の前記シャフト10と連通するハーネス挿通筒部26が一体に設けられている。
【0028】
また、前記カバー12には、ソケット部7が設けられている。前記ソケット部7には、図示しない電源(バッテリー)側と電気的に接続されているコネクタ8が電気的に断続可能に接続しかつ機械的に着脱可能に取り付けられる。前記ソケット部7には、基板27が取り付けられている。前記基板27は、前記モータ13と電気的に接続されている。前記基板27には、前記モータ13の駆動停止を制御するスイッチ回路が実装されている。この結果、前記モータ13は、前記基板27および前記ソケット部7を介して前記コネクタ8と電気的に接続される。
【0029】
前記カバー12は、前記ギアケース11の前記収納部18の開口縁の外側に嵌合固定されている。前記ギアケース11および前記カバー12内の収納部18中には、前記モータ13および前記減速機構14および前記クラッチ機構15および前記軸受部材16および前記介在部材6および前記電動回転範囲規制機構および前記緩衝機構および前記基板27がスクリューなどにより固定収納されている。
【0030】
また、前記カバー12には、挿入孔39が前記ハーネス挿通筒部26と連通するように設けられている。前記挿入孔39には、前記シャフト10が挿入されている。この結果、前記カバー12は、前記ギアケース11と共に前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられることとなる。
【0031】
前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15は、図2、図3に示すように、前記ギアケース11および前記カバー12の前記収納部18中に収納され、かつ、前記モータ13の出力軸(図示せず)と前記シャフト10との間に設けられ、前記モータ13の回転力を前記シャフト10に伝達するものである。前記モータ13および前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15は、前記ミラーアセンブリ4を前記シャフト10に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに電動回転させるものである。
【0032】
前記減速機構14は、第1段目のギアとしての第1ウォームギア29と、前記第1ウォームギア29に噛み合う第2段目のギアとしてのヘリカルギア30と、第3段目のギアとしての第2ウォームギア31と、前記第2ウォームギア31が噛み合う最終段目のギアとしてのクラッチギア32と、から構成されている。
【0033】
前記第1ウォームギア29は、前記ギアケース11および前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。前記第1ウォームギア29は、ジョイント17を介して前記モータ13の出力軸に連結されている。前記ヘリカルギア30は、前記第2ウォームギア31に一体に連結されている。前記第2ウォームギア31は、前記ギアケース11および前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。この結果、前記ヘリカルギア30は、前記第2ウォームギア31に一体に連結されている。前記第2ウォームギア31は、前記第2ウォームギア31を介して前記ギアケース11および前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。前記ヘリカルギア30と前記第2ウォームギア31とは、一体となって回転する。
【0034】
前記クラッチ機構15は、前記クラッチギア32と、クラッチホルダ35と、スプリング36と、プッシュナット37と、を備える。前記クラッチ機構15は、前記シャフト10に、前記クラッチギア32、前記クラッチホルダ35、前記スプリング36、を順次嵌め合せ、前記プッシュナット37を前記シャフト10に止めて、前記スプリング36を圧縮状態にすることによって構成されている。前記クラッチギア32と前記クラッチホルダ35とは、断続可能に連結されている。前記減速機構14の前記第2ウォームギア31と前記クラッチ機構15の前記クラッチギア32とが噛合うことにより、前記モータ13の回転力が前記シャフト10に伝達される。
【0035】
前記クラッチギア32と前記クラッチホルダ35とが前記クラッチ機構15を構成する。前記クラッチギア32は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能にかつ軸方向に移動可能に取り付けられている。前記クラッチホルダ35は、前記シャフト10に回転不可能にかつ軸方向に移動可能に嵌合状態で取り付けられている。
【0036】
図11〜図16に示すように、前記クラッチギア32と前記クラッチホルダ35との相互に対向する面、すなわち、前記クラッチギア32の一方の面(上面)側と前記クラッチホルダ35の一方の面(下面)側とには、複数個この例では3個の山形形状のクラッチ凸部(クラッチ部)40と谷形形状のクラッチホルダ凹部(クラッチ部)41とが等間隔に設けられている。前記クラッチ凸部40と前記クラッチホルダ凹部41とが嵌合状態にあるときには、前記クラッチギア32と前記クラッチホルダ35とが接続状態(続状態、外れていない状態、つながっている状態)にあり、前記クラッチ凸部40と前記クラッチホルダ凹部41とが嵌合解除状態にあるときには、前記クラッチギア32と前記クラッチホルダ35とは、切断状態(断状態、外れている状態、切れている状態、リリース状態)にある。前記クラッチ機構15は、前記モータ13および前記回転力伝達機構(前記減速機構14および前記クラッチ機構15)の電動回転力では外れず、かつ、前記電動回転力以上の力で外れて前記ミラーアセンブリ4を前記シャフト10に対して回転可能とする。
【0037】
前記クラッチ機構15のうち前記クラッチギア32他方の面(下面)側は、前記ギアケース11の底部の一面(上面)に直接もしくはワッシャ(図示せず)を介して当接する。一方、前記クラッチ機構15のうち前記クラッチホルダ35の他方の面(上面)側は、前記スプリング36に直接当接する。
【0038】
前記クラッチギア32は、図6〜図10に示すように、前記クラッチ凸部40を有するクラッチ部材25と、ギア部28を有するギア部材33と、から構成されている。前記クラッチギア32は、前記クラッチ部材25と前記ギア部材33とを回転方向には固定で取り付けてなるものである。
【0039】
前記クラッチ部材25は、低摩耗の高摺動性の樹脂部材、たとえば、POM(ポリアセタール、アセタール樹脂)から構成されている。前記ギア部材33は、強度や耐久性を有する金属部材、たとえば、SWCH(冷間圧造用炭素鋼)、焼結金属、高強度の樹脂部材(たとえば、ガラス繊維入りのナイロン、PPS(ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンスルフィド))から構成されている。一方、前記クラッチホルダ35は、低摩耗の高摺動性の樹脂部材、たとえば、ナイロンから構成されている。
【0040】
前記ギア部材33は、円筒形状をなす。前記ギア部材33の外周面には、前記ギア部28が設けられている。前記クラッチ部材25は、円筒形状をなす。前記クラッチ部材25の一端面(上端面)には、前記クラッチ凸部40が一体に設けられている。前記クラッチ部材25の外径と前記ギア部材33の内径との寸法関係は、前記クラッチ部材25を前記ギア部材33中に挿入し得る寸法関係にある。
【0041】
前記クラッチ部材25と前記ギア部材33とには、相互に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転するのを防止する回転止め部と、相互に前記シャフト10の回転中心O−O線方向に移動するのを防止する移動止め部とが、それぞれ設けられている。すなわち、前記ギア部材33の内周面の一端部(下端部)から中間部にかけての箇所には、複数個この例では3個の第1嵌合凸部34と第2嵌合凸部38とが、等間隔に一体に設けられている。
【0042】
前記クラッチ部材25の外周面の他端部(下端部)から中間部にかけての箇所には、複数個この例では3個の第1嵌合凹部42と第2嵌合凹部43とが、等間隔に設けられている。前記第1嵌合凹部42および前記第2嵌合凹部43と、前記クラッチ凸部40とは、前記クラッチ部材25の両端部に対応して設けられている。
【0043】
前記第1嵌合凹部42および前記第2嵌合凹部43と前記第1嵌合凸部34および前記第2嵌合凸部38との寸法関係は、樹脂部材の前記クラッチ部材25の前記第1嵌合凹部42および前記第2嵌合凹部43が、弾性作用により、金属部材の前記ギア部材33の前記第1嵌合凸部34および前記第2嵌合凸部38に、それぞれ弾性嵌合(弾性当接、弾性密着)する寸法関係にある。なお、前記第1嵌合凹部42および前記第2嵌合凹部43と前記第1嵌合凸部34および前記第2嵌合凸部38とは、ランス形状、テーパ形状をなしているが、形状は特に限定しない。
【0044】
前記クラッチ部材25の外周面の他端部であって、3個の前記第1嵌合凹部42の間の箇所には、複数個この例では3個の弾性鍔部44が、等間隔に一体に設けられている。前記クラッチ部材25の他端部から中間部にかけての箇所であって、前記第1嵌合凹部42と前記弾性鍔部44との間には、スリット45が設けられている。前記スリット45は、前記弾性鍔部44が前記クラッチ部材25の径方向に撓む際に撓み易くするためのものである。
【0045】
前記第1嵌合凸部34および前記第2嵌合凸部38と、前記第1嵌合凹部42および前記第2嵌合凹部43と、前記弾性鍔部44とは、前記回転止め部と、前記移動止め部とを構成するものである。前記クラッチ部材25は、前記ギア部材33中に、前記回転止め部(前記第1嵌合凸部34および前記第2嵌合凸部38、前記第1嵌合凹部42および前記第2嵌合凹部43)により前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転不可能に、かつ、前記移動止め部(前記第1嵌合凸部34および前記第2嵌合凸部38、前記第1嵌合凹部42および前記第2嵌合凹部43、前記弾性鍔部44)により前記シャフト10の回転中心O−O線方向に移動不可能に挿入されている。この結果、前記クラッチ部材25と前記ギア部材33とは、一体に取り付けられている。
【0046】
すなわち、図8、図9に示すように、前記クラッチ部材25の前記第1嵌合凹部42および前記第2嵌合凹部43と、前記ギア部材33の前記第1嵌合凸部34および前記第2嵌合凸部38との位置を合せる。つぎに、図8、図9中の実線矢印に示すように、前記クラッチ部材25の他端部を前記ギア部材33の他端部(上端部)から前記ギア部材33中に挿入する。すると、前記クラッチ部材25の前記弾性鍔部44が前記クラッチ部材25の径方向に内側に撓む。
【0047】
前記クラッチ部材25の前記弾性鍔部44が前記ギア部材33の一端部に達する。すると、図6、図7、図10に示すように、前記クラッチ部材25の径方向に内側に撓んでいた前記クラッチ部材25の前記弾性鍔部44が前記クラッチ部材25の径方向に外側に弾性復帰して前記ギア部材33の一端部に弾性嵌合(弾性当接、弾性密着)する。それと同時に、前記クラッチ部材25の前記第1嵌合凹部42および前記第2嵌合凹部43が前記ギア部材33の前記第1嵌合凸部34および前記第2嵌合凸部38にそれぞれ弾性嵌合する。
【0048】
この結果、前記第1嵌合凹部42の両側面と前記第1嵌合凸部34の両側面との相互当接、および、前記第2嵌合凹部43の両側面と前記第2嵌合凸部38の両側面との相互当接により、前記クラッチ部材25は、前記ギア部材33中に、前記シャフト10の回転中心O−O回り(図10中の実線矢印H方向)に回転不可能に挿入されている。また、前記第1嵌合凹部42の下面と前記第1嵌合凸部34の上面との相互当接、および、前記第2嵌合凹部43の下面と前記第2嵌合凸部38の上面との相互当接、および、前記弾性鍔部44の上面と前記ギア部材33の下面との相互当接により、前記クラッチ部材25は、前記ギア部材33中に、前記シャフト10の回転中心O−O線方向(図10中の実線矢印V方向)に移動不可能に挿入されている。これにより、前記クラッチ部材25と前記ギア部材33とは、一体に取り付けられている。
【0049】
前記介在部材6は、前記シャフトホルダ9と前記ギアケース11との間に設けられている。前記介在部材6は、低摩擦かつ耐摩耗性の部材であって安価な樹脂部材、たとえば、POM(ポリアセタール、アセタール樹脂)から構成されている。前記介在部材6は、前記シャフト10が挿入する挿入孔(図示せず)を有し、かつ、一端部(下端部)に鍔部(図示せず)を有する中空状の円筒形状をなす。前記介在部材6は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられている。前記介在部材6の前記鍔部の一面(下面)には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする2個の円弧凸部(図示せず)が等間隔に一体に設けられている。前記円弧凸部の両端面には、前記電動回転範囲規制機構の当接面(図示せず)が設けられている。また、前記介在部材6の前記鍔部の他面(上面)には、前記緩衝機構の噛合い部としての台形形状の噛合い凸部(図示せず)が、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円周上に、複数個この例では2個等間隔に一体に設けられている。
【0050】
前記シャフトホルダ9および前記シャフト10は、高剛性の部材、たとえば、ダイカストや樹脂から構成されている。前記シャフトホルダ9の上面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする2個の円弧凸部(図示せず)が前記介在部材6の前記円弧凸部に対応して等間隔に一体に設けられている。前記円弧凸部の両端面には、前記電動回転範囲規制機構の当接面(図示せず)が、前記介在部材6の前記当接面に対応して設けられている。
【0051】
前記ギアケース11は、高剛性の部材、たとえば、ナイロンあるいはガラス繊維やカーボン繊維含有の樹脂から構成されている。前記ギアケース11の底部の他面(下面)には、前記緩衝機構の噛合い部としての台形形状の噛合い凹部(図示せず)が、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円周上に、複数個この例では2個等間隔に前記介在部材6の前記噛合い凸部と対応して一体に設けられている。
【0052】
前記電動回転範囲規制機構は、ミラーアセンブリの前記電動回転の範囲を規制する機構である。すなわち、前記電動回転範囲規制機構は、前記介在部材6と前記シャフトホルダ9とに設けられている前記当接面から構成されていて、前記介在部材6の当接面と前記シャフトホルダ9の当接面とが当接することにより、前記介在部材6が前記シャフトホルダ9に固定されて前記ミラーアセンブリ4の前記電動回転範囲が規制される機構である。前記電動回転範囲は、図1に示すように、使用位置Aと格納位置Bとの間の範囲である。この結果、前記介在部材6の一方の当接面と前記シャフトホルダ9の一方の当接面とが当接すると、前記ミラーアセンブリ4は、使用位置Aに位置する。また、前記介在部材6の他方の当接面と前記シャフトホルダ9の他方の当接面とが当接すると、前記ミラーアセンブリ4は、格納位置Bに位置する。
【0053】
前記緩衝機構は、前記ミラーアセンブリ4を緩衝のために回転させる機構である。すなわち、前記緩衝機構は、前記介在部材6と前記ギアケース11とに設けられている噛合い部凸部と噛合い凹部とから構成されていて、前記電動回転力では前記介在部材6の噛合い凸部と前記ギアケース11の噛合い凹部との噛合いが外れず前記介在部材6と前記ギアケース11とが一緒に前記電動回転範囲(使用位置Aと格納位置Bとの間の範囲)において前記シャフト10および前記シャフトホルダ9に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転し、かつ、前記電動回転力以上の力が車両の前方F方向にかかった時には、前記介在部材6の噛合い凸部と前記ギアケース11の噛合い凹部との噛合いが外れさらに前記クラッチ機構15が外れて(前記クラッチギア32のクラッチ凸部40と前記クラッチホルダ35のクラッチホルダ凹部41との嵌合状態が解除されて)前記ギアケース11が前記シャフト10および前記シャフトホルダ9に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに上から見て反時計方向に回転する機構である。
【0054】
「作用の説明」
この実施例における電動格納式ドアミラー装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0055】
まず、図1に示すように、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を格納位置Bに電動回転させて格納させる場合について説明する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する状態(セット状態、使用状態)のときには、クラッチ機構15は、図11、図14に示すように、クラッチギア32のクラッチ部材25のクラッチ凸部40とクラッチホルダ35のクラッチホルダ凹部41とが嵌合状態にあるので、クラッチギア32とクラッチホルダ35とが接続状態にある。このために、クラッチギア32は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。
【0056】
このセット状態(使用状態)において、自動車の室内のスイッチ(図示せず)を操作して、コネクタ8、ソケット部7、基板27を介してモータ13に給電してモータ13を駆動させる。すると、モータ13の回転力は、出力軸、ジョイント17、減速機構14を介してシャフト10に固定されたクラッチギア32伝達される。このとき、クラッチギア32は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にあるので、減速機構14の第2ウォームギア31がクラッチギア32を固定ギアとしてシャフト10の回転中心O−O回りに回転する。この回転により電動格納ユニット3を内蔵したミラーアセンブリ4は、図1に示すように、シャフト10の回転中心O−O回りに使用位置Aから格納位置Bへと時計方向に回転する。
【0057】
ミラーアセンブリ4が格納位置Bに位置すると、モータ13に供給される電流(作動電流)の値が上昇して所定値に達して、基板27のスイッチ回路が作動してモータ13への電流供給が遮断される。この結果、ミラーアセンブリ4が図1に示す所定の位置の格納位置Bに停止して位置する。
【0058】
つぎに、図1に示すように、格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を使用位置Aに電動回転させて復帰させる場合について説明する。ミラーアセンブリ4が格納位置Bに位置する状態(格納状態)のときには、クラッチ機構15がセット状態と同様に、接続状態にあるので、クラッチギア32は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。
【0059】
この格納状態において、自動車の室内のスイッチ(図示せず)を操作してモータ13を駆動させる。すると、モータ13の回転力が減速機構14を介して回転不可能の状態にあるクラッチギア32に伝達される。これにより、電動格納ユニット3を内蔵したミラーアセンブリ4は、図1に示すように、シャフト10の回転中心O−O回りに格納位置Bから使用位置Aへと反時計方向に回転する。
【0060】
ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置するとモータ13に供給される電流(作動電流)の値が上昇して所定値に達して、基板27のスイッチ回路が作動してモータ13への電流供給が遮断される。この結果、ミラーアセンブリ4が図1に示す所定の位置の使用位置Aに停止して位置する。
【0061】
さらに、図1に示すように、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を緩衝のために格納位置Bに傾倒させる場合について説明する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する状態(セット状態、使用状態)のときには、クラッチ機構15が接続状態にあるので、クラッチギア32は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。
【0062】
このセット状態(使用状態)において、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4に時計方向の力であって、電動回転力よりも大きい力(手動による力、何かがミラーアセンブリ4に当たったときの力)がかかる(図4中の実線矢印F1参照)。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11が時計方向に回転しようとする(図4中の実線矢印F2参照)。このとき、介在部材6はシャフト10およびシャフトホルダ9に対して固定されていないので、介在部材6はシャフト10およびシャフトホルダ9に対してシャフト10の回転中心O−O回りに時計方向に回転することができる。
【0063】
一方、クラッチホルダ35は、シャフト10に回転不可能に嵌合されているので、ギアケース11側のクラッチギア32のクラッチ凸部40がシャフト10の固定側のクラッチホルダ35のクラッチホルダ凹部41を乗り上げて(図12参照)、クラッチギア32のクラッチ凸部40とクラッチホルダ35のクラッチホルダ凹部41との嵌合状態が外れる(図13参照)。このとき、クラッチホルダ35は、スプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)する。
【0064】
この結果、ギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)は、時計方向に回転する。これにより、図1に示すように、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aから格納位置Bへと時計方向に回転して、シャフトホルダ9のストッパ凸部21の他方のストッパ面22がギアケース11のガイド溝の他方のストッパ面に当接した時点で、格納位置Bに位置する。
【0065】
そして、図1に示すように、格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を電動回転力よりも大きい力で反時計方向に回転させる。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)が時計方向に回転するので、図1に示すように、ミラーアセンブリ4が格納位置Bから使用位置Aへと反時計方向に回転する。すると、クラッチギア32のクラッチ凸部40とクラッチホルダ35のクラッチホルダ凹部41とが相互に嵌合してクラッチ機構15が接続状態となる。
【0066】
さらに、図1に示すように、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を緩衝のために前方傾倒位置Cに傾倒させる場合について説明する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する状態(セット状態、使用状態)のときには、クラッチ機構15がつながっている状態にあるので、クラッチギア32は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。
【0067】
このセット状態(使用状態)において、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4に反時計方向の力であって、モータ13および減速機構14による電動回転力よりも大きい力(手動による力、何かがミラーアセンブリ4に当たったときの力)がかかる。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11が反時計方向に回転しようとする。このとき、介在部材6がシャフトホルダ9に対して固定されていて反時計方向に回転することができない。
【0068】
このために、介在部材6の噛合い凸部とギアケース11の噛合い凹部との噛合いが最初に外れる。このとき、ギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32、クラッチホルダ35を含む)は、スプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)する。
【0069】
それから、ギアケース11がさらに反時計方向(図12〜図14中の実線矢印方向)に回転しようとする。すると、クラッチギア32と第2ウォームギア31との間のバックラッシュが詰まり、その第2ウォームギア31のスラスト方向の隙間が詰まり、シャフト10とクラッチホルダ35との間の嵌合隙間が詰まる。
【0070】
クラッチホルダ35は、シャフト10に回転不可能に嵌合されているので、ギアケース11側のクラッチギア32のクラッチ凸部40がシャフト10の固定側のギアホルダ35のクラッチホルダ凹部41を乗り上げて(図15参照)、クラッチギア32のクラッチ凸部40とクラッチホルダ35のクラッチホルダ凹部41との嵌合状態が外れる(図16参照)。このとき、クラッチホルダ35は、スプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)する。
【0071】
この結果、ギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)は、反時計方向に回転する。これにより、図1に示すように、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aから前方傾倒位置Cへと反時計方向に回転して、シャフトホルダ9のストッパ凸部21の一方のストッパ面22がギアケース11のガイド溝の一方のストッパ面に当接した時点で、前方傾倒位置Cに位置する。
【0072】
そして、図1に示すように、前方傾倒位置Cに位置するミラーアセンブリ4を電動回転力よりも大きい力で時計方向に回転させる。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)が時計方向に回転するので、図1に示すように、ミラーアセンブリ4が前方傾倒位置Cから使用位置Aへと時計方向に回転する。
【0073】
すると、クラッチギア32のクラッチ凸部40とクラッチホルダ35のクラッチホルダ凹部41とが最初に相互に嵌合してクラッチ機構15が接続状態となる。それから、介在部材6の噛合い凸部とギアケース11の噛合い凹部とが相互に噛合って介在部材6とギアケース11とが一体状態となる。この結果、図1に示すように、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aに位置する。
【0074】
「効果の説明」
この実施例における電動格納式ドアミラー装置1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0075】
この実施例における電動格納式ドアミラー装置1は、クラッチ凸部40を有するクラッチ部材25とギア部28を有するギア部材33とをそれぞれ別体に製造して、そのクラッチ部材25とギア部材33とを回転方向には固定で取り付けて、クラッチ機構15のクラッチギア32を構成するものであって、かつ、そのクラッチギア32のギア部材33と別体のクラッチ部材25を樹脂部材から構成するものである。この結果、この実施例における電動格納式ドアミラー装置1は、クラッチ部とギア部とが一体に構成されていてかつ金属部材または高強度の樹脂部材から構成されているクラッチギアと比較して、製品ごとのクラッチ機構15のクラッチトルクのばらつきをなくすか極力小さくすることができる。すなわち、金属部材からなるクラッチギアの場合、クラッチトルクを安定させるために、バレル研磨などの表面粗さをなくす処理が必要であり、また、磨耗性を向上するために、熱処理などの表面硬化処理が必要であり、その処理のばらつきにより、クラッチ部の表面粗さや表面硬化においてばらつきが発生して、クラッチトルクのばらつきにつながる。これに対して、この実施例における電動格納式ドアミラー装置1は、クラッチギア32のギア部材33と別体のクラッチ部材25を樹脂部材から構成するものであるから、クラッチ部材25において表面粗さをなくす処理や表面硬化処理が不要であり、その結果、樹脂部材からなるクラッチ部材25のクラッチ凸部40の表面粗さや表面硬化においてばらつきが発生することがなく、クラッチトルクのばらつきをなくすか極力小さくすることができる。
【0076】
しかも、この実施例における電動格納式ドアミラー装置1は、クラッチギア32のクラッチ部材25においては表面粗さをなくす処理や表面硬化処理が不要であるから、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0077】
また、この実施例における電動格納式ドアミラー装置1は、クラッチギア32のクラッチ部材25と別体のギア部材33を金属部材から構成するものであるから、ギア部材33と別体のクラッチ部材25を樹脂部材から構成しても、クラッチギア32のギア部28の強度や耐久性を、金属部材からなるクラッチギアと同様に確保することができる。
【0078】
さらに、この実施例における電動格納式ドアミラー装置1は、クラッチホルダ35を樹脂部材から構成するものであるから、この樹脂部材からなるクラッチホルダ35のクラッチホルダ凹部41と、クラッチギア32の同じく樹脂部材からなるクラッチ部材25のクラッチ凸部40との組み合わせにより、すなわち、低摩耗の高摺動性の樹脂部材のクラッチ凸部40とクラッチホルダ凹部41との組み合わせにより、製造初期から長期間に亘って、安定したクラッチトルクを確保することができる。
【0079】
しかも、この実施例における電動格納式ドアミラー装置1は、低摩耗の高摺動性の樹脂部材のクラッチ凸部40とクラッチホルダ凹部41との組み合わせにより、金属部材のクラッチ部の組み合わせと比較して、グリスの依存を少なくすることができ、その分、グリスの軽減によるクラッチトルクの増加を抑制することができ、安定したクラッチトルクを得ることができる。
【0080】
さらにまた、この実施例における電動格納式ドアミラー装置1は、別体のクラッチ部材25とギア部材33とが、回転止め部(第1嵌合凸部34および第2嵌合凸部38、第1嵌合凹部42および第2嵌合凹部43)によりシャフト10の回転中心O−O回りに回転不可能に、かつ、移動止め部(第1嵌合凸部34および第2嵌合凸部38、第1嵌合凹部42および第2嵌合凹部43、弾性鍔部44)によりシャフト10の回転中心O−O線方向に移動不可能に、一体に取り付けられているものである。この結果、この実施例における電動格納式ドアミラー装置1は、クラッチギア32が別体のクラッチ部材25とギア部材33とから構成されていても、クラッチ部とギア部とが一体のクラッチギアと同様のクラッチ作用をすることができる。
【0081】
「実施例以外の例の説明」
なお、前記の実施例においては、電動格納式のドアミラー装置について説明するものである。ところが、この発明においては、電動格納式のドアミラー装置以外の車両用アウトサイドミラー装置にも適用できる。たとえば、電動格納式の車両用フェンダミラー装置、あるいは、電動格納式のトラックミラー装置などの電動格納式の車両用アウトサイドミラー装置に適用することができる。
【0082】
また、前記の実施例においては、クラッチギア32にクラッチ凸部40を、クラッチホルダ35にクラッチホルダ凹部41を、設けるものである。ところが、この発明においては、クラッチギアにクラッチ凹部を、クラッチホルダにクラッチ凸部を、設けても良いし、クラッチギアにクラッチ凸部およびクラッチ凹部を、クラッチホルダにクラッチ凹部およびクラッチ凸部を、設けても良い。
【符号の説明】
【0083】
1 電動格納式ドアミラー装置(車両用アウトサイドミラー装置)
2 ベース(ミラーベース)
3 電動格納ユニット
4 ミラーアセンブリ
5 ミラーハウジング
6 介在部材
7 ソケット部
8 コネクタ
9 シャフトホルダ
10 シャフト
11 ギアケース(ケーシング)
12 カバー(ケーシング)
13 モータ
14 減速機構(回転力伝達機構)
15 クラッチ機構(回転力伝達機構)
16 軸受部材
17 ジョイント
18 収納部
19 本体部
20 カバー部
21 ストッパ凸部
22 ストッパ面
23 パワーユニット
24 ミラーユニット
25 クラッチ部材
26 ハーネス挿通筒部
27 基板
28 ギア部
29 第1ウォームギア
30 ヘリカルギア
31 第2ウォームギア
32 クラッチギア
33 ギア部材
34 第1嵌合凸部
35 クラッチホルダ
36 スプリング
37 プッシュナット
38 第2嵌合凸部
39 挿入孔
40 クラッチ凸部(クラッチ部)
41 クラッチホルダ凹部(クラッチ部)
42 第1嵌合凹部
43 第2嵌合凹部
44 弾性鍔部
45 スリット
A 使用位置
B 格納位置
C 前方傾倒位置
D ドア(車体)
E 車両の後方
F 車両の前方
O−O シャフトの回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーアセンブリが電動格納ユニットおよびベースを介して車体に回転可能に取り付けられる車両用アウトサイドミラー装置において、
前記電動格納ユニットは、
前記ベースに固定されるシャフトホルダと、
前記シャフトホルダに設けられているシャフトと、
前記シャフトに回転可能に取り付けられていて、前記ミラーアセンブリが取り付けられるケーシングと、
前記ケーシング内に収納されていて、前記ミラーアセンブリを前記シャフトに対して電動回転させるモータおよび回転力伝達機構と、
前記回転力伝達機構に設けられていて、前記モータおよび前記回転力伝達機構の電動回転力では外れず、かつ、前記電動回転力以上の力で外れて前記ミラーアセンブリを前記シャフトに対して回転可能とするクラッチ機構と、
を備え、
前記クラッチ機構は、クラッチ部を有するクラッチギアと、クラッチ部を有するクラッチホルダと、前記クラッチギアの前記クラッチ部と前記クラッチホルダの前記クラッチ部とを切断可能に接続するスプリングと、を備え、
前記クラッチギアは、前記クラッチ部を有するクラッチ部材と、ギア部を有するギア部材と、から構成されていて、
前記クラッチ部材と前記ギア部材とは、回転方向には固定で取り付けられていて、
前記クラッチ部材は、樹脂部材から構成されている、
ことを特徴とする車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項2】
前記ギア部材は、金属部材または高強度の樹脂部材から構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項3】
前記クラッチホルダは、樹脂部材から構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項4】
前記ギア部材は、円筒形状をなし、前記ギア部材の外周面には、前記ギア部が設けられていて、
前記クラッチ部材は、円筒形状をなし、前記クラッチ部材の一端面には、前記クラッチ部が設けられていて、
前記クラッチ部材と前記ギア部材とには、相互に前記シャフトの回転中心回りに回転するのを防止する回転止め部と、相互に前記シャフトの回転中心線方向に移動するのを防止する移動止め部とが、それぞれ設けられていて、
前記クラッチ部材は、前記ギア部材中に、前記回転止め部により前記シャフトの回転中心回りに回転不可能に、かつ、前記移動止め部により前記シャフトの回転中心線方向に移動不可能に挿入されていて、
前記クラッチ部材と前記ギア部材とは、一体に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用アウトサイドミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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