説明

車両用インストルメントパネル

【課題】インストルメントパネルに乗員が衝突する際の衝撃力を好適に吸収することのできる車両用インストルメントパネルを提供する。
【解決手段】樹脂製のインストルメントパネルは、前側パネル10及び前側パネル10よりも車両後側に配置される後側パネル20を備える。前側パネル10と後側パネル20との間には、後側パネル20の車両前方への変位を許容する変位許容部としてのねじ31が設けられる。ねじ31は、前側パネル10及び後側パネル20を結合するとともに、後側パネル20が前側パネル10に対して変位する際に力が作用する部位に脆弱部としての狭窄部32Aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用インストルメントパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、計器等を配設するためのインストルメントパネルが設けられている。こうしたインストルメントパネルとしては、例えば特許文献1に記載のもののように、インストルメントパネルが、前側パネルと、前側パネルよりも車両後側に配置される後側パネルと、後側パネルの下側に設けられる下側構成部とに分割されるものが提案されるに至っている。
【特許文献1】特開2007―269231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両の衝突時等には乗員がその前方に位置するインストルメントパネルに衝突することがある。そこで、特許文献1に記載のものも含め従来一般の車両用インストルメントパネルでは、同パネルを形成する材料を工夫する等して同パネルに乗員が衝突した際の衝撃力が好適に吸収されるようにしているが、構成が複雑となるなどの問題があり、尚、改善の余地を残すものとなっている。
【0004】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インストルメントパネルに乗員が衝突する際の衝撃力を簡易な構成により好適に吸収することのできる車両用インストルメントパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、樹脂製のインストルメントパネルであって、前側パネル及び同前側パネルよりも車両後側に配置される後側パネルを備えた車両用インストルメントパネルにおいて、前記前側パネルと前記後側パネルとの間には、前記後側パネルの車両前方への変位を許容する変位許容部が設けられてなることをその要旨としている。
【0006】
同構成によれば、車両の衝突等により後側パネルに乗員が衝突したときには、変位許容部の作用を通じて後側パネルが車両前方へと変位する。これにより、インストルメントパネルに乗員が衝突する際の衝撃力を好適に吸収することができるようになる。
【0007】
(2)請求項1に記載の発明は、請求項2に記載の発明によるように、前記変位許容部は、前記前側パネル及び前記後側パネルを結合するとともに、前記後側パネルが前記前側パネルに対して変位する際に力が作用する部位に脆弱部が形成された結合部材であるといった態様をもって具体化することができる。この場合、後側パネルに乗員が衝突した際に、結合部材の脆弱部が破断されることによって両パネルの結合が解除され、後側パネルを車両前方へと変位させることができる。
【0008】
(3)請求項2に記載の発明は、請求項3に記載の発明によるように、前記前側パネルの車両後側端部と前記後側パネルの車両前側端部とは鉛直方向において互いに当接するように設けられるといった態様をもって具体化することができる。この場合、前側パネルの車両後側端部と後側パネルの車両前側端部とが予め重なり合った状態とされていることから、後側パネルを車両前方へ好適に変位させることができるようになる。
【0009】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用インストルメントパネルにおいて、前記結合部材は、前記前側パネルの車両後側端部と前記後側パネルの車両前側端部との当接部を貫通してこれらを締結する締結部材であり、その脆弱部は前記当接部に対応する部位に設けられることをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、締結部材は、前側パネルの車両後側端部と後側パネルの車両前側端部とが鉛直方向において当接する当接部を貫通してこれら両パネルを締結する。そして、この締結部材のうち上記当接部に対応する部位に脆弱部が設けられる。これにより、車両の衝突等により後側パネルに乗員が衝突したときに、当接部に作用するせん断力によって脆弱部が破断されて両パネルの結合が解除されることにより、後側パネルを車両前方へと変位させることができる。
【0011】
(5)請求項4に記載の発明は、請求項5に記載の発明によるように、前記脆弱部は前記締結部材の周面に設けられる狭窄部により構成されてなるといった態様をもって具体化することができる。尚、この狭窄部は締結部材の全周に設けられていても、あるいは周面の一部にのみ設けられていてもよい。
【0012】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の車両用インストルメントパネルにおいて、前記前側パネルは、前記後側パネルの車両前側端部の車両前方において同前側パネルから鉛直方向に延びて前記後側パネルが前方に変位した際にその車両前側端部が当接可能な壁部が前記後側パネルの車両前側端部との間に所定の間隙を有して形成されてなることをその要旨としている。
【0013】
上記構成によれば、後側パネルの車両前側端部の車両前方に位置する壁部により後側パネルの車両前方への変位が規制されることとなる。しかも、壁部と後側パネルの車両前側端部との間には所定の間隙が設けられているため、その間隙の大きさを適宜設定することにより、後側パネルの車両前方への変位を的確に確保することができる。これにより、後側パネルの変位量が過度に大きくなることを抑制することができるようになる。従って、車両の衝突等により後側パネルに乗員が衝突したときに、乗員を一層好適に保護することができるようになる。
【0014】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項3〜請求項6のいずれか一項に記載の車両用インストルメントパネルにおいて、前記後側パネルには、前記前側パネルの車両後側端部の車両後方において同後側パネルから鉛直方向に延びて前記後側パネルが前方に変位した際に前記前側パネルの車両後側端部が当接可能な壁部が前記前側パネルの車両後側端部との間に所定の間隙を有して形成されてなることをその要旨としている。
【0015】
上記構成によれば、前側パネルの車両後側端部の車両後方に位置する壁部により後側パネルの車両前方への変位が規制されることとなる。しかも、壁部と前側パネルの車両後側端部との間には所定の間隙が設けられているため、その間隙の大きさを適宜設定することにより、後側パネルの車両前方への変位を的確に確保することができる。これにより、後側パネルの変位量が過度に大きくなることを抑制することができるようになる。従って、車両の衝突等により後側パネルに乗員が衝突したときに、乗員を一層好適に保護することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜図4を参照して、本発明に係る車両用インストルメントパネル(以下、「インストルメントパネル1」)の一実施形態について詳細に説明する。
図1に、本実施形態のインストルメントパネル1の斜視構造を示す。
【0017】
図1に示すように、樹脂製のインストルメントパネル1は、前側パネル10と、前側パネル10よりも車両後側に配置される後側パネル20とを備えている。前側パネル10及び後側パネル20は、それぞれの鉛直方向においてインストルメントパネル1の最上部に位置するものであり、それぞれインストルメントパネル1の車幅方向全体にわたって一体に形成されている。前側パネル10は、全体として略平板状をなしている。尚、図1においては図示を割愛しているが、前側パネル10にはスピーカーガーニッシュや空調用のダクトの吹出口が適宜設けられている。また、後側パネル20は、車両後側に延びてインストルメントパネル1の最上部に位置する上面部20Aと、上面部20Aの車両後側部分に接続されて同接続部分から湾曲して鉛直方向下方に指向する曲面部20Bとを有するものである。また、後側パネル20において車幅方向中央よりも右側には鉛直方向上方に突出するフード部25が設けられており、フード部25の開口部25Aを通じてその内部に設けられる計器類が視認できるようになっている。尚、図1においては図示を割愛しているが、後側パネル20にはステアリングホイールの取付部や空調用のダクトの吹出口等が適宜設けられている。
【0018】
ところで、車両の衝突時等には、図2に示すように、乗員がその前方に位置するインストルメントパネル1、特に後側パネル20に衝突することがある。そこで、従来一般のインストルメントパネルでは、同パネルを形成する材料を工夫する等して同パネルに乗員が衝突した際の衝撃力が好適に吸収されるようにしているが、構成が複雑となるなどの問題があり、尚、改善の余地を残すものとなっている。
【0019】
そこで、本実施形態では、前側パネル10と後側パネル20との間に、後側パネル20の車両前方への変位を許容する変位許容部を設けることで、インストルメントパネル1に乗員が衝突する際の衝撃力の好適な吸収を簡易な構成によって図るようにしている。
【0020】
次に、図3及び図4を参照して前側パネル10、後側パネルの構成及び、これら両パネル10,20を締結するとともに上記変位許容部として機能するねじ31の構成について詳細に説明する。
【0021】
図3は、前側パネル10、後側パネル20、及びこれら両パネル10,20を締結するねじ31がそれぞれ分解された状態での車両前後方向における断面構造を示している。また、図4(a)は、前側パネル10及び後側パネル20がねじ31により締結された状態での車両前後方向における断面構造を示している。また、図4(b)は、ねじ31の側面構造を拡大して示している。
【0022】
図3に示すように、前側パネル10は、本体部12と、同本体部12の後側端部に接続されて同パネル10の車両後側の端部をなす車両後側端部11とを有している。ここで、前側パネル10は、その下面が車両前後方向全体にわたって、すなわち本体部12及び車両後側端部11にわたって略平面状に形成される一方、その下面については本体部12が車両後側端部11よりも上方に位置するように階段状に形成されている。また、車両後側端部11の上面と本体部12の上面との間には、車両後側端部11の上面から鉛直方向上方に延びる壁部12Aが形成されている。
【0023】
後側パネル20は、本体部22と、同本体部22の前側端部に接続されて同パネル20の車両前側の端部をなす車両前側端部21とを有している。ここで、後側パネル20は、その上面が本体部22及び車両前側端部21の接続部にて連続的に形成される一方、その下面については本体部22が車両前側端部21よりも下方に位置するように階段状に形成されている。また、車両前側端部21の下面と本体部22の下面との間には、車両前側端部21の下面から鉛直方向下方に延びる壁部22Aが形成されている。
【0024】
図3及び図4(a)に併せ示すように、本実施形態では、前側パネル10の車両後側端部11が後側パネル20の車両前側端部21よりも鉛直方向下方に位置するようになっている。すなわち、前側パネル10の車両後側端部11の上面と後側パネル20の車両前側端部21の下面とが互いに当接するようになっている。ここで、図3に示すように、前側パネル10の車両後側端部11のうち後側パネル20に当接する部位を当接部13とし、後側パネル20の車両前側端部21のうち前側パネル10に当接する部位を当接部23とする。前側パネル10の当接部13には鉛直方向に貫通してねじ31が挿通される挿通孔13Aが形成されている。また、後側パネル20の当接部23の下面には、ねじ31が挿通される挿通穴23Aが形成されている。そして、ねじ31はこれら両パネル10,20に対して下方から挿通されるようになっている。尚、本実施形態では、金属製のねじ31を採用しているが、樹脂製のねじを採用することもできる。
【0025】
図4(a)に示すように、前側パネル10と後側パネル20とがねじ31により締結された状態において、前側パネル10の壁部12Aと、後側パネル20の車両前側端部21との間には所定の間隙S1が設けられるとともに、後側パネル20の壁部22Aと、前側パネル10の車両後側端部11との間には所定の間隙S2が設けられている。ここで、これら間隙S1,S2の車両前後方向における長さは等しくされている。尚、これら間隙S1,S2は、インストルメントパネル1の車幅方向全体にわたって設けられている。ちなみに、これら間隙S1,S2の車両前後方向における長さは、後側パネル20に乗員が衝突する際の衝撃力を好適に吸収することができるように、実験等を通じて設定されている。すなわち、図4(a)に示すように、前側パネル10は、後側パネル20の車両前側端部21の車両前方において同前側パネル10から鉛直方向上方に延びて後側パネル20が前方に変位した際にその車両前側端部21が当接可能な壁部12Aが後側パネル20の車両前側端部21との間に所定の間隙S1を有して形成されている。また、後側パネル20には、前側パネル10の車両後側端部11の車両後方において同後側パネル20から鉛直方向下方に延びて後側パネル20が前方に変位した際に前側パネル10の車両後側端部11が当接可能な壁部22Aが前側パネル10の車両後側端部11との間に所定の間隙S2を有して形成されている。尚、ねじ31を通じての締結は車幅方向において複数箇所にて行われている。また、インストルメントパネル1は、その下方に設けられる空調用のダクト(図示略)と前側パネル10とが固定されることを通じて車両本体に取り付けられている。また、前側パネル10に形成される壁部12Aの最上部と後側パネル20の車両前側端部21の最上部とは鉛直方向において同一の高さとされている。
【0026】
図4(b)に示すように、螺旋状の溝が形成されるねじ31の柱状部32には、同柱状部32の他の部位よりも狭められた狭窄部32Aが全周にわたって設けられている。また、図4(a)にて二点鎖線により示すように、狭窄部32Aは、柱状部32の軸方向において前側パネル10及び後側パネル20の当接部13,23に対応する部位に設けられている。すなわち、狭窄部32Aは、後側パネル20が前側パネル10に対して変位する際にねじ31において力が作用する部位に脆弱部として設けられている。狭窄部32Aは、後側パネル20への乗員の衝突に起因する力の入力によって破断されるようにその径の大きさが設定されている。尚、本実施形態のねじ31は、本発明に係る変位許容部、結合部材、及び締結部材に相当するものである。
【0027】
以上説明した本実施形態にかかる車両用インストルメントパネルによれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)前側パネル10と後側パネル20との間には、後側パネル20の車両前方への変位を許容する変位許容部としてのねじ31が設けられることとした。これにより、車両の衝突等により後側パネル20に乗員が衝突したときには、変位許容部の作用を通じて後側パネル20が車両前方へと変位する。これにより、インストルメントパネル1に乗員が衝突する際の衝撃力を好適に吸収することができるようになる。
【0028】
(2)変位許容部としてのねじ31は、前側パネル10及び後側パネル20を結合するとともに、後側パネル20が前側パネル10に対して変位する際に力が作用する部位に脆弱部としての狭窄部32Aが形成された結合部材であることとした。これにより、後側パネル20に乗員が衝突した際に、ねじ31の狭窄部32Aが破断されることによって両パネル10,20の結合が解除され、後側パネル20を車両前方へと変位させることができる。
【0029】
(3)前側パネル10の車両後側端部11と後側パネル20の車両前側端部21とは鉛直方向において互いに当接するように設けられることとした。これにより、前側パネル10の車両後側端部11と後側パネル20の車両前側端部21とが予め重なり合った状態とされていることから、後側パネル20を車両前方へ好適に変位させることができるようになる。
【0030】
(4)ねじ31は、前側パネル10の車両後側端部11と後側パネル20の車両前側端部21との当接部13,23を貫通してこれらを締結するものであり、その脆弱部としてねじ31の周面に設けられる狭窄部32Aは当接部13,23に対応する部位に設けられることとした。ねじ31は、前側パネル10の車両後側端部11と後側パネル20の車両前側端部21とが鉛直方向において当接する当接部13,23を貫通してこれら両パネル10,20を締結する。そして、このねじ31のうち上記当接部13,23に対応する部位に脆弱部としての狭窄部32Aが設けられる。これにより、車両の衝突等により後側パネル20に乗員が衝突したときに、当接部13,23に作用するせん断力によって狭窄部32Aが破断されて両パネル10,20の結合が解除されることにより、後側パネル20を車両前方へと変位させることができる。
【0031】
(5)前側パネル10は、後側パネル20の車両前側端部21の車両前方において同前側パネル10から鉛直方向上方に延びて後側パネル20が前方に変位した際にその車両前側端部21が当接可能な壁部12Aが後側パネル20の車両前側端部21との間に所定の間隙S1を有して形成されることとした。また、後側パネル20には、前側パネル10の車両後側端部11の車両後方において同後側パネル20から鉛直方向下方に延びて後側パネル20が前方に変位した際に前側パネル10の車両後側端部11が当接可能な壁部22Aが前側パネル10の車両後側端部11との間に所定の間隙S2を有して形成されることとした。このため、後側パネル20の車両前側端部21の車両前方に位置する壁部12A及び前側パネル10の車両後側端部11の車両後方に位置する壁部22Aの双方により、後側パネル20の車両前方への変位が規制されることとなる。しかも、壁部12Aと後側パネル20の車両前側端部21との間には所定の間隙S1が設けられ、壁部22Aと前側パネル10の車両後側端部11との間には所定の間隙S2がそれぞれ設けられているため、それら間隙S1,S2の大きさをそれぞれ適宜設定することにより、後側パネル20の車両前方への変位を的確に確保することができる。これにより、後側パネル20の変位量が過度に大きくなることを抑制することができるようになる。従って、車両の衝突等により後側パネル20に乗員が衝突したときに、乗員を一層好適に保護することができるようになる。
【0032】
(6)前側パネル10に形成される壁部12Aの最上部と後側パネル20の車両前側端部21の最上部とは鉛直方向において同一の高さとされることとした。これにより、後側パネル20の車両前方への変位を壁部12A全体により的確に規制しつつ、壁部12Aが設けられることに起因してインストルメントパネル1の外観が損なわれることについてもこれを好適に抑制することができるようになる。
【0033】
尚、本発明にかかる車両用インストルメントパネルは、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0034】
・上記実施形態では、前側パネル10及び後側パネル20をそれぞれインストルメントパネル1の車幅方向全体にわたって一体に形成するようにしたが、これら前側パネル及び後側パネルを車幅方向において複数に分割して形成するようにしてもよい。
【0035】
・上記実施形態では、前側パネル10の壁部12Aと後側パネル20の車両前側端部21との間に所定の間隙S1を設けるようにしているが、こうした間隙S1に、後側パネル20の車両前方への変位にともなうエネルギを吸収する吸収部材を設けるようにしてもよい。具体的には、図5に示すように、前側パネル10の車両後側端部11の上面に、鉛直方向上方に延びるエネルギ吸収片14を車両前後方向に複数設けるようにすればよい。
【0036】
・上記実施形態では、前側パネル10に形成される壁部12Aの最上部と後側パネル20の車両前側端部21の最上部とを鉛直方向において同一の高さとしたが、これに代えて、前側パネル10の壁部12Aの最上部を後側パネル20の車両前側端部21の最上部よりも高くしてもよい。この場合、後側パネル20の車両前方への変位を壁部12A全体により一層的確に規制することができるようになる。
【0037】
・上記実施形態では、前側パネル10の壁部12Aと後側パネル20の車両前側端部21との間に所定の間隙S1を設けるとともに、後側パネル20の壁部22Aと前側パネル10の車両後側端部11との間に所定の間隙S2を設けることとした。しかしながら、これに代えて、図6(a)に示すように、前側パネル110の壁部112Aと後側パネル120の車両前側端部121とが当接するとともに、後側パネル120の壁部122Aと前側パネル110の車両後側端部111とが当接するようにこれら前側パネル110及び後側パネル120を形成するようにしてもよい。この場合においても、変位許容部としてのねじ31の破断を通じて後側パネル20を車両前方へと変位させることはできる。更に、図6(b)に示すように、後側パネル220の車両前方への変位を一層円滑なものとすべく、前側パネル210の壁部212Aと車両後側端部211の上面とのなす角度「α」、及び後側パネル220の壁部222Aと車両前側端部221の下面とのなす角度「α」をそれぞれ鈍角とすることもできる。
【0038】
・上記実施形態では、前側パネル10及び後側パネル20の双方に壁部12A,22Aをそれぞれ設けるようにしているが、こうした壁部を必ずしも両パネル10,20に設ける必要はない。他に例えば、図7に示すように、後側パネル320については、その上面及び下面を本体部322及び車両前側端部221の接続部にて連続的に形成するようにして、上記壁部22Aに相当するものを設けないようにしてもよい。またこれとは反対に、前側パネルについては、その上面及び下面を本体部及び車両前側端部の接続部にて連続的に形成するようにして、上記壁部12Aに相当するものを設けないようにすることもできる。すなわち、前側パネル及び後側パネルの一方のみにこうした壁部を設けるようにしてもよい。また、前側パネル及び後側パネルにこうした壁部を設けないようにすることもできる。
【0039】
・上記実施形態では、ねじ31の柱状部32の全周に狭窄部32Aを設けるようにしているが、これに代えて、柱状部32の周面の一部にのみ狭窄部を設けるようにしてもよい。
【0040】
・上記実施形態では、ねじ31の柱状部32に狭窄部を形成することによって脆弱部を構成するようにしているが、本発明に係る脆弱部はこうしたねじ31の形状に限られるものではない。他に例えば、強度の異なる2つの材料によってねじを形成し、それらのうち強度の低い部分によって上記脆弱部を構成するようにしてもよい。
【0041】
・上記実施形態では、前側パネル10の車両後側端部11と後側パネル20の車両前側端部21とを鉛直方向において互いに当接するように設けているが、これに代えて、前側パネルの車両後側端部と後側パネルの車両前側端部とが鉛直方向において重なり合わないようにしてもよい。すなわち、図8に示すように、前側パネル410の車両後側端部411と後側パネル420の車両前側端部421とを車両前後方向において離間するように配設するとともに、これら端部411,421を脆弱な結合部材430によって結合するようにしてもよい。
【0042】
要するに、前側パネルと後側パネルとの間には、後側パネルの車両前方への変位を許容する変位許容部が設けられるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る車両用インストルメントパネルの一実施形態について、インストルメントパネルの概略構成を示す斜視図。
【図2】同実施形態における前側パネル及び後側パネルの車両前後方向における断面構造を概略的に示す断面図。
【図3】同実施形態における前側パネル、後側パネル、及びこれら両パネルを締結するねじがそれぞれ分解された状態での車両前後方向における断面図。
【図4】(a)前側パネル及び後側パネルがねじにより締結された状態での車両前後方向における断面図、(b)ねじの拡大側面図。
【図5】同実施形態の変形例について、前側パネル及び後側パネルの車両前後方向における断面図。
【図6】(a),(b)同実施形態の他の変形例について、前側パネル及び後側パネルの車両前後方向における断面図。
【図7】本発明に係る車両用インストルメントパネルの変形例について、前側パネル及び後側パネルの車両前後方向における断面図。
【図8】本発明に係る車両用インストルメントパネルの他の変形例について、前側パネル及び後側パネルの車両前後方向における断面図。
【符号の説明】
【0044】
1…インストルメントパネル、10,110,210,310,410…前側パネル、11,111,211,411…車両後側端部、12…本体部、12A,112A,212A…壁部,13…当接部、13A…挿通孔、14…エネルギ吸収片、20,120,220,320,420…後側パネル、20A…上面部、20B…曲面部、21,121,221,321,421…車両前側端部、22,322…本体部、22A,122A,222A…壁部,23…当接部、23A…挿通穴、25…フード部、25A…開口部、31…ねじ、31A…狭窄部、430…結合部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のインストルメントパネルであって、前側パネル及び同前側パネルよりも車両後側に配置される後側パネルを備えた車両用インストルメントパネルにおいて、
前記前側パネルと前記後側パネルとの間には、前記後側パネルの車両前方への変位を許容する変位許容部が設けられてなる
ことを特徴とする車両用インストルメントパネル。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用インストルメントパネルにおいて、
前記変位許容部は、前記前側パネル及び前記後側パネルを結合するとともに、前記後側パネルが前記前側パネルに対して変位する際に力が作用する部位に脆弱部が形成された結合部材である
ことを特徴とする車両用インストルメントパネル。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用インストルメントパネルにおいて、
前記前側パネルの車両後側端部と前記後側パネルの車両前側端部とは鉛直方向において互いに当接するように設けられる
ことを特徴とする車両用インストルメントパネル。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用インストルメントパネルにおいて、
前記結合部材は、前記前側パネルの車両後側端部と前記後側パネルの車両前側端部との当接部を貫通してこれらを締結する締結部材であり、その脆弱部は前記当接部に対応する部位に設けられる
ことを特徴とする車両用インストルメントパネル。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用インストルメントパネルにおいて、
前記脆弱部は前記締結部材の周面に設けられる狭窄部により構成されてなる
ことを特徴とする車両用インストルメントパネル。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の車両用インストルメントパネルにおいて、
前記前側パネルは、前記後側パネルの車両前側端部の車両前方において同前側パネルから鉛直方向に延びて前記後側パネルが前方に変位した際にその車両前側端部が当接可能な壁部が前記後側パネルの車両前側端部との間に所定の間隙を有して形成されてなる
ことを特徴とする車両用インストルメントパネル。
【請求項7】
請求項3〜請求項6のいずれか一項に記載の車両用インストルメントパネルにおいて、
前記後側パネルには、前記前側パネルの車両後側端部の車両後方において同後側パネルから鉛直方向に延びて前記後側パネルが前方に変位した際に前記前側パネルの車両後側端部が当接可能な壁部が前記前側パネルの車両後側端部との間に所定の間隙を有して形成されてなる
ことを特徴とする車両用インストルメントパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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