説明

車両用ウォッシャタンク

【課題】重量アップ,コストアップの問題を招くことなく、注入管の外力に対する剛性を高めることができるとともに、ウォッシャ液の吹き返しを防止できる車両用ウォッシャタンクを提供する。
【解決手段】注入管12には、これの軸芯方向に延び、該注入管12内をウォッシャ液流入通路aとエア抜き通路bとに仕切る仕切りリブ12kが一体に設けられ、仕切りリブ12kは、注入管12の軸直角方向断面で見たとき、該注入管12の軸芯cを通る直線dと平行に形成され、かつ該直線dを境界とする何れか一方の領域内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントガラス,リヤガラスの洗浄液として使用されるウォッシャ液を貯留する車両用ウォッシャタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、走行中の視界を良好に保つために、フロントガラスにウォッシャ液を吹き付けるとともに、ワイパ装置により払拭することによりフロントガラスの洗浄が行なえるようになっている。
【0003】
このようなウォッシャ液を貯留するウォッシャタンクを車体に搭載する場合、エンジンルーム内の限られたスペースを有効利用して配置することとなる。例えば、特許文献1では、タンク本体をフェンダパネル内のデッドスペースに配置し、概ねL字形状の注入管を後付けでタンク本体に挿入して支持させることにより、注入管の注入口をフェンダパネルからエンジンルーム内に突出させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−22173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来構造のように、L字形状の注入管をタンク本体により片持ち支持する場合、該注入管の注入口にはウォッシャ液の注入時に注入ノズルや注入容器による外力が加わり易く、該外力の如何によっては注入管が変形するおそれがある。
【0006】
また前記従来構造では、注入管にウォッシャ液を注入する際に、タンク本体内の空気が逆流することによって注入管の屈曲部にウォッシャ液が滞留し、場合によってはウォッシャ液の吹き返しが生じることがある。
【0007】
ここで、前記注入管の外力に対する剛性を高めるために、肉厚を大きくしたり、別途補強部材を追加したりすることが考えられる。しかしながら、このようにするとウォッシャタンク全体の重量アップ,コストアップにつながることから、軽量化,低コスト化の要請が強い小型車には採用し難い。
【0008】
また前記ウォッシャ液の吹き返しを防止するには、注入時にタンク本体内の空気を外部に排出する構造を別途設けることとなるが、このようにすると部品点数が増える分だけコストアップにつながり、この点からも小型車には採用し難い。
【0009】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、重量アップ,コストアップの問題を招くことなく、注入管の外力に対する剛性を高めることができるとともに、ウォッシャ液の吹き返しを防止できる車両用ウォッシャタンクを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、フェンダパネル内に配設され、車内側に向かって開口するボス部を有するタンク本体と、該タンク本体のボス部に挿入支持され、該ボス部から車内側に延びる水平筒部及び該水平筒部に続いて上方に屈曲して延び、上端に注入口が形成された立筒部を有する注入管とを備えた車両用ウォッシャタンクであって、前記注入管には、これの軸芯方向に延び、該注入管内をウォッシャ液流入通路とエア抜き通路とに仕切る仕切りリブが一体に設けられ、該仕切りリブは、前記注入管の軸直角方向断面で見たとき、該注入管の軸芯を通る直線と平行に形成され、かつ該直線を境界とする何れか一方の領域内に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るウォッシャタンクによれば、注入管にこれの軸芯方向に延び、該注入管内をウォッシャ液流入通路とエア抜き通路とに仕切る仕切りリブを一体に形成し、該仕切りリブを、注入管の軸芯を通る直線と平行に、つまり弓の弦の如く形成し、かつ該直線を境界とした何れか一方の領域内に配置したので、仕切りリブにより注入管自体の外力に対する剛性を高めることができ、肉厚を大きくしたり,補強部材を追加したりすることなく、ウォッシャ液を注入する際の外力による変形を抑制できる。これによりウォッシャタンクの軽量化,低コスト化に貢献でき、ひいては小型車への採用が可能となる。
【0012】
またウォッシャ液の注入時には、仕切りリブにより仕切られた通路面積の大きい側をウォッシャ液流入通路としてウォッシャ液を注入することにより、タンク本体内の空気は通路面積の小さい側のエア抜き通路から排出されることとなり、部品点数を増やすことなく、ウォッシャ液の吹き返しを防止でき、この点からもウォッシャタンクの低コスト化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1によるウォッシャタンクの斜視図である。
【図2】前記ウォッシャタンクの断面正面図である。
【図3】前記ウォッシャタンクの注入管の正面図である。
【図4】前記注入管の平面図である。
【図5】前記注入管の断面図(図4のV-V線断面図)である。
【図6】前記注入管の断面図(図4のVI-VI線断面図)である。
【図7】本発明の実施例2によるウォッシャタンクの注入管の平面図である。
【図8】前記注入管の断面図(図7のVIII-VIII線断面図)である。
【図9】前記注入管の断面図(図7のIX-IX線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1ないし図6は、本発明の実施例1による車両用ウォッシャタンクを説明するための図である。
【0016】
図において、1は自動車の前部に配設された左,右のフェンダパネルを示している。この左,右のフェンダパネル1の車幅方向内側には車両前後方向に延びるサイドメンバ2,2が配設されており、前記左,右のフェンダパネル1の下縁部には、前輪(不図示)の上方を覆うように配設されたホイールハウス3,3の外縁部が接続されている。また前記左,右のフェンダパネル1の上端部間には、エンジンルーム5を開閉するフード4が配設されている。
【0017】
前記フェンダパネル1は、外装板としてのパネル本体1aと、該パネル本体1aの上縁に続いて車内側に段落ち状に屈曲して延びる上壁部1bとを有し、該上壁部1bは不図示のエプロンメンバに結合されている。
【0018】
車両前方から見て、前記左のフェンダパネル1の上壁部1bの下方には、ウォッシャタンク10が配設されている。
【0019】
このウォッシャタンク10は、前記ホイールハウス3の上面に取り付けられており、前記フェンダパネル1とサイドメンバ2との間に配置された樹脂製のタンク本体11と、該タンク本体11からエンジンムール5内に延びる樹脂製の注入管12とを有する。これによりタンク本体11をエンジンルーム5内のデッドスペースを有効利用して配置している。
【0020】
前記ウォッシャタンク10は、前記タンク本体11を先にホイールハウス3に取り付けた後、フェンダパネル1を組み付け、しかる後、注入管12を後付けによりタンク本体11に取り付けるようにしている。
【0021】
前記タンク本体11は、1.5〜2.0リットル程度の容積を有し、アッパ部材15とロア部材16とのフランジ部15a,16a同士を水密に接合した構造を有する。
【0022】
前記ロア部材16には、フロント用ウォッシャポンプ17及びリヤ用ウォッシャポンプ18が取り付けられている。この各ウォッシャポンプ17,18にはそれぞれフロント用,リヤ用ウォッシャホース17a,18aが接続されている。
【0023】
前記フロント用ウォッシャホース17aは、ウォッシャポンプ17からタンク本体11を車外側から前方に回り込むように配索され、ここから不図示のカウルパネルに配設された噴射ノズルに接続されている。また前記リヤ用ウォッシャホース18aは、ウォッシャポンプ18から車両後方に配索され、不図示のバックドアに配設された噴射ノズルに接続されている。各噴射ノズルからウォッシャ液をフロントガラス,リヤガラスに吹き付けることとなる。
【0024】
前記タンク本体11は、前記アッパ部材15の前部に続いて上方に起立するよう形成されたウォッシャ液流入部15bと、該流入部15bの上端角部に車内側に向かって突出形成された円筒状のボス部15cとを有する。
【0025】
このボス部15cは、前記フェンダパネル1の上壁部1bの内端よりパネル本体1a側に位置し、かつ上壁部1bとサイドメンバ2との間に位置するよう配置されている(図2参照)。
【0026】
前記ボス部15cの下面には、該ボス部15cから前記流入部15bに渡って連続して延びる複数条の縦リブ15dが形成されている。これによりボス部15cに作用する上方からの外力に対する剛性を高めている。
【0027】
前記注入管12は、前記タンク本体11のボス部15c内に挿入され、該ボス部15cにより片持ち支持されている。
【0028】
前記注入管12は、該ボス部15cから車内側に突出して延びる水平筒部12aと、該水平筒部12aの内端部に続いて上方に屈曲して延び、上端に注入口12cが形成された立筒部12bとを有する。この立筒部12bには、注入口12cを開閉するキャップ13が装着されている。前記立筒部12bの注入口12cは、前記フード4の下方に位置しており、該フード4を開くことにより上方に露出する。
【0029】
前記立筒部12bには、後方に突出するクランプ部12dが一体に形成されている。このクランプ部12dには、前述のフロント用ウォッシャホース17aに接続されたジョイント部材20が上方から押し込むことにより装着されている。
【0030】
前記水平筒部12aと立筒部12bとのコーナー部には、両者12a,12bに架け渡して結合された連結リブ12eが一体に形成されている。これにより立筒部12bの外力に対する剛性を高めている。
【0031】
前記水平筒部12aは、前記ボス部15c内に挿入される挿入部12fと、該挿入部12fの外周部に形成された凹溝12gと、前記ボス部15cの端面に当接して該挿入部12fの差込量を規制するストッパ部12hとを有する。前記凹溝12gには、前記ボス部15cとの間をシールするOリング21が装着されている。
【0032】
また前記水平筒部12aは、挿入部12fの挿入時に前記ボス部15cの外周面に形成された一対の係合片15e,15eに嵌合することにより軸方向移動を規制する嵌合爪12i,12iと、前記ボス部15cの上面に形成された回り止め凹部15f内に係合することにより軸回りの回動を阻止する回り止めリブ12jとを有する。
【0033】
前記注入管12には、該注入管12内をウォッシャ液流入通路aとエア抜き通路bとに仕切る仕切りリブ12kが一体に形成されている。
【0034】
この仕切りリブ12kは、前記注入管12の軸芯方向に延び、かつ該注入管12の水平筒部12a及び立筒部12bの全長に渡って連続的に形成されている。
【0035】
前記仕切りリブ12kは、図6に示すように、注入管12の軸直角方向断面で見たとき、該注入管12の軸芯cを通る車両前後方向の直線dと平行に、つまり弓の弦をなすように形成され、かつ該直線dを境界とした一方の半円(領域)内に配置されている。
【0036】
詳細には、仕切りリブ12kは、水平筒部12aでは直線dより上側に位置し、立筒部12bでは直線dよりフェンダパネル1側に位置するよう偏位させて配置されている。これにより、通路面積の大きい方をウォッシャ液流入通路aとし、これより小さい方をエア抜き通路bとすることにより、ウォッシャ液の注入を支障なく行なうことができる。ちなみに、このウォッシャ液流入通路aの通路面積は、販売店,あるいはメンテナンス工場等で使用される注水ジョッキ25の注水ノズル25aが挿入可能な大きさに設定されている(図2の二点鎖線参照)。
【0037】
本実施例によれば、タンク本体11に片持ち支持された注入管12に、これの軸芯方向全長に延び、該注入管12内をウォッシャ液流入通路aとエア抜き通路bとに仕切る仕切りリブ12kを一体に形成し、該仕切りリブ12kを注入管12の軸芯cを通る車両前後方向の直線dと平行をなし、かつ該直線dを境界とする一方の半円内に配置したので、弓の弦をなすよう形成された仕切りリブ12kにより、注入管12自体の外力に対する剛性を高めることができ、肉厚を大きくしたり,補強部材を追加したりすることなく、ウォッシャ液を注入する際の注水ジョッキ25の重量が加わっても注入管12の変形を防止できる。これによりウォッシャタンクの軽量化,低コスト化に貢献でき、ひいては小型車への採用が可能となる。
【0038】
また前記ウォッシャタンク10の注入管12には、該注入管12のクランプ部12dにウォッシャホース17aを押し込む際の外力が加わることとなるが、本実施例の注入管12はこのような外力にも対応でききる剛性を有している。従って、注入管12にクランプ部12dを一体に形成することができ、コスト的に有利である。
【0039】
またウォッシャ液の注入時には、通路面積の大きい側のウォッシャ液流入通路aから注入することにより、タンク本体11内の空気はエア抜き通路bから排出されるので、部品点数を増やすことなく、ウォッシャ液の吹き返しを防止でき、この点からもウォッシャタンクの低コスト化に貢献できる。
【0040】
図7ないし図9は、本発明の実施例2による車両用ウォッシャタンクを説明するための図である。図中、図3〜図6と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0041】
本実施例の注入管12は、水平筒部12aと、該水平筒部12aから上方に屈曲して延びる立筒部12bとを有し、基本的な構造は実施例1と同様である。
【0042】
前記注入管12には、該注入管12内をウォッシャ液流入通路aとエア抜き通路bとに仕切る仕切りリブ12k′が一体に形成されている。
【0043】
この仕切りリブ12k′は、注入管12の全長に渡って形成されており、該注入管12の軸芯cを通る車両上下方向の直線eと平行に、つまり弓の弦をなすように形成され、かつ該直線eを境界とした一方の半円(領域)内に配置されている。
【0044】
本実施では、タンク本体11に片持ち支持された注入管12に、該注入管12内をウォッシャ液流入通路aとエア抜き通路bとに仕切る仕切りリブ12k′を一体に形成し、該仕切りリブ12k′を注入管12の軸芯cを通る車両上下方向の直線eと平行をなし、かつ該直線eを境界とした半円内に配置したので、仕切りリブ12k′により注入管12自体の外力に対する剛性を高めることができ、ウォッシャ液を注入する際の外力による変形を抑制でき、実施例1と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0045】
1 フェンダパネル
1b 上壁部
10 ウォッシャタンク
11 タンク本体
12 注入管
12a 水平筒部
12b 立筒部
12c 注入口
12k,12k′ 仕切りリブ
15c ボス部
a ウォッシャ液流入通路
b エア抜き通路
c 軸芯
d,e 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェンダパネル内に配設され、車内側に向かって開口するボス部を有するタンク本体と、
該タンク本体のボス部に挿入支持され、該ボス部から車内側に延びる水平筒部及び該水平筒部に続いて上方に屈曲して延び、上端に注入口が形成された立筒部を有する注入管と
を備えた車両用ウォッシャタンクであって、
前記注入管には、これの軸芯方向に延び、該注入管内をウォッシャ液流入通路とエア抜き通路とに仕切る仕切りリブが一体に設けられ、
該仕切りリブは、前記注入管の軸直角方向断面で見たとき、該注入管の軸芯を通る直線と平行に形成され、かつ該直線を境界とする何れか一方の領域内に配置されている
ことを特徴とする車両用ウォッシャタンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−116274(P2012−116274A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266625(P2010−266625)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】