説明

車両用エアコンシステム

【課題】省電力モード時に乗員数に応じて吹出し口の数やブロアモータの出力を制御する車両用エアコンシステムを提供する。
【解決手段】第1吹出し口71〜第6吹出し口76からの空調風の吹き出しを解除可能に規制する規制装置80と、助手席の乗員を検知するセンサーと、を備え、省電力モードにおいてセンサーが助手席の乗員を検知した場合制御装置50が、第1吹出し口、第4吹出し口の各規制装置を制御して第1吹出し口、第4吹出し口からの空調風の吹き出しを停止すると共に、ブロアモータ21を制御してノーマルモードの第1出力より低いブロアモータの第2出力に低減させ、省電力モードにおいてセンサーが助手席の乗員を検知しない場合、制御装置50が、第1吹出し口、第3吹出し口、第4吹出し口、第6吹出し口の各規制装置を制御して第1吹出し口、第3吹出し口、第4吹出し口、第6吹出し口からの空調風の吹き出しを停止すると共に、ブロアモータを制御して第2出力より低いブロアモータの第3出力に低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用エアコンデイショナーシステム(以下、エアコンディショナーをエアコンと略称する。)に係り、特に省電力モード時に乗員数に応じて吹出し口の数やブロアモータの出力を制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省電力モードで動作する車両用エアコンシステムが開発されている。特許文献1には、エンジンと電気モータによる駆動力で走行するハイブリッド車両における車両用空調装置が開示されている。この文献に記載の車両用空調装置では、省燃費効果を優先する省電力モードと、車室内の快適性を優先する快適優先モードとが選択可能に構成されており(特許文献1の段落[0065])、空調運転を行うときの各種のパラメータに対する閾値がモード毎に設定されている(特許文献1の段落[0085])。例えば省電力モードで暖房運転を行うときには、バッテリの電力消費を抑えるためにPTCヒータの作動を禁止する(特許文献1の段落[0086],[0117])。車両用空調装置では、車室内を暖房するときにエンジン冷却水を用いており、予め設定されている閾値よりも冷却水温度が低下したときにエンジンの始動を行う(特許文献1の段落[0087])。省電力モード設定時には吹出しモードが制限されている(特許文献1の段落[0107])。さらに空調風の風量であるブロワレベルを省電力モードと快適優先モードとで切り換える(特許文献1の段落[0108]〜[0111)ようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−230321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両用空調装置では、乗員の要求に応じた空調性能と消燃費を期待できるが、車両の乗員数に応じた吹出しモードや空調風量は考慮されていない。例えば助手席に乗員がいなければ、この助手席用のサイドベントからの空調風の吹き出しを停止させ、その分の空調風量を低減させるようブロアモータなどを制御すれば、さらなる省電力化を期待できる。しかし特許文献1の車両用空調装置はこのような観点で構成されていない。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みて創作されたもので、省電力モード時に乗員数に応じて吹出し口の数やブロアモータの出力を制御する車両用エアコンシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の構成は、乗員による任意の設定で動作するノーマルモードと、省電力で動作する省電力モードとの何れかで動作する車両用エアコンシステムにおいて、複数の吹出し口と、吹出し口毎に設けられ当該吹出し口からの空調風の吹き出しを解除可能に規制する規制装置と、乗員を検知する複数の乗員検知装置と、空調ダクトを介して各吹出し口へ空調風を送るブロアファンと、ブロアファンを駆動するブロアモータと、各規制装置とブロアモータを制御する制御装置と、を備え、省電力モードにおいて制御装置が乗員検知装置からの情報に基づいて規制装置及びブロアモータを制御することで、吹出し口の数及びブロアモータの出力が変更されることを特徴としている。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2構成は、ドライバーに対向する第1吹出し口及び第2吹出し口と、助手席に着座した乗員に対向する第3吹出し口及び第4吹出し口と、ドライバーの足元へ向けて空調風を吹き出すための第5吹出し口と、助手席に着座した乗員の足元へ向けて空調風を吹き出すための第6吹出し口と、空調ダクトを介して第1吹出し口〜第6吹出し口へ空調風を送るブロアファンと、ブロアファンを駆動するブロアモータ及びブロアモータを制御する制御装置と、を備え、乗員による任意の設定で動作するノーマルモードと、省電力で動作する省電力モードとの何れかで動作するエアコンシステムにおいて、第1吹出し口〜第6吹出し口からの空調風の吹き出しを解除可能に規制する規制装置と、助手席の乗員を検知するセンサーと、を備えていて、省電力モードにおいてセンサーが助手席の乗員を検知した場合、制御装置が、第1吹出し口、第4吹出し口の各規制装置を制御して第1吹出し口、第4吹出し口からの空調風の吹き出しを停止すると共に、ブロアモータを制御してノーマルモードの第1出力より低いブロアモータの第2出力に低減させ、省電力モードにおいてセンサーが助手席の乗員を検知しない場合、制御装置が、第1吹出し口、第3吹出し口、第4吹出し口、第6吹出し口の各規制装置を制御して第1吹出し口、第3吹出し口、第4吹出し口、第6吹出し口からの空調風の吹き出しを停止すると共に、ブロアモータを制御して第2出力より低いブロアモータの第3出力に低減させることを特徴としている。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第3構成は、ドライバーに対向する第1吹出し口及び第2吹出し口と、助手席に着座した乗員に対向する第3吹出し口及び第4吹出し口と、ドライバーの足元へ向けて空調風を吹き出すための第5吹出し口と、助手席に着座した乗員の足元へ向けて空調風を吹き出すための第6吹出し口と、後列右席に着座した乗員用の第7吹出し口と、後列左席に着座した乗員用の第8吹出し口と、空調ダクトを介して第1吹出し口〜第8吹出し口へ空調風を送るブロアファンと、ブロアファンを駆動するブロアモータと、ブロアモータを制御する制御装置と、を備え、乗員による任意の設定で動作するノーマルモードと、省電力で動作する省電力モードとの何れかで動作するエアコンシステムにおいて、第1吹出し口〜第8吹出し口からの空調風の吹き出しを解除可能に規制する規制装置と、助手席の乗員を検知するセンサーと、を備えていて、省電力モードにおいてセンサーが助手席の乗員を検知した場合、制御装置が、第7吹出し口、第8吹出し口の各規制装置を制御して第7吹出し口、第8吹出し口からの空調風の吹き出しを停止すると共に、ブロアモータを制御してノーマルモードの第1出力より低いブロアモータの第2出力に低減させ、省電力モードにおいてセンサーが上記助手席の乗員を検知しない場合、制御装置が、第3吹出し口、第4吹出し口、第6吹出し口、第7吹出し口、第8吹出し口の各規制装置を制御して第3吹出し口、第4吹出し口、第6吹出し口、第7吹出し口、第8吹出し口からの空調風の吹き出しを停止すると共に、ブロアモータを制御して第2出力より低いブロアモータの第3出力に低減させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の省電力モードにおいて単にノーマルモードに比べて省電力を図るのではなく、車両に搭乗した乗員に応じた省電力モード、つまり乗員数に応じて吹出し口の数やブロアモータの出力を制御することで吹出し口の数及び吹出し口からの風量の最適化を図り、乗員の体感風量を変えることなく車両の省電力化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用エアコンシステムを示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用エアコンシステムが装備される車両のインストルメントパネルを示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である
【図4】本実施形態に係るブロアモータの出力の制御例を示すグラフである。
【図5】車両用エアコンシステムにおける制御装置がノーマルモードから省電力モードへ移行させるための判断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係る車両用エアコンシステム1を示す模式図である。
【0013】
車両用エアコンシステム1は、空調ダクト10と、ブロアファン20と、エバボレータ30と、ヒートユニット40と、制御装置50と、を備えている。
【0014】
空調ダクト10の一端部には外気の取り入れ口10Aと内気の取り入れ口10Bが形成されている。空調ダクト10の他端部にはデフロスター用開口10Cが形成されていると共に、インストルメントパネル側への第1分岐ダクト11及び前席と後席の乗員足側への第2分岐ダクト12が連結されている。図1においてデフロスター用開口10Cの上側の符号60はフロントガラスである。
【0015】
図1に示すように、第1分岐ダクト11の先端部から4つのサブダクト(以下、第1サブダクト111〜第4サブダクト114と呼ぶ)がさらに分岐している。第1サブダクト111は運転席側サイドベント用のダクトである。第2サブダクト112は運転席側センターベント用のダクトである。第3サブダクト113は助手席側センターベント用のダクトである。第4サブダクト114は助手席側サイドベント用のダクトである。
【0016】
図2は車両用エアコンシステム1が装備される車両のインストルメントパネル70を示す斜視図である。この図において、71が運転席側サイドベント(以下、第1吹出し口と呼ぶ場合がある)であり、72が運転席側センターベント(以下、第2吹出し口と呼ぶ場合がある)であり、73が助手席側センターベント(以下、第3吹出し口と呼ぶ場合がある)であり、74が助手席側サイドベント(以下、第4吹出し口と呼ぶ場合がある)である。2つのセンターベント72,73はインストルメントパネルの車幅方向の中間領域で車幅方向に並設されている。
【0017】
図1に示すように、第2分岐ダクト12の先端部から2つのサブダクト(以下、第5サブダクト115〜第6サブダクト116と呼ぶ)が分岐していると共に第2分岐ダクト12の中間部の開口12Aからさらに別の2つのサブダクト(以下、第7サブダクト117〜第8サブダクト118と呼ぶ)が分岐している。第5サブダクト115は運転席足元領域に対応した吹出し口75(図2参照:以下、第5吹出し口と呼ぶ場合がある)へ送風するためのダクトである。第6サブダクト116は助手席足元領域に対応した吹出し口76(図2参照:以下、第6吹出し口と呼ぶ場合がある)へ送風するためのダクトである。第7サブダクト117は後列右席の足元領域に対応した吹出し口77(図2参照:以下、第7吹出し口と呼ぶ場合がある)へ空調風を送るためのダクトである。第8サブダクト118は後列左席の足元領域に対応した吹出し口78(図2参照:以下、第8吹出し口と呼ぶ場合がある)へ空調風を送るためのダクトである。
【0018】
これらの第1吹出し口71〜第8吹出し口78へ空調風を送るために、空調ダクト10内にブロアファン20が設けられている。ブロアファン20はブロアモータ21によって駆動される。
【0019】
空調風は、例えば空調ダクト10内でブロアファン20によって下流側のエバポレータ30を通過した空調風とヒートコア40を通過した空調風とが混合されて所望の温度に調整される。
【0020】
このような空調風に関連して、インストルメントパネル70に操作パネル(図示省略)が設けられており、操作パネルの各スイッチやボタンなどを操作することで、温度,風量,吹出しモードが選択できるように構成されている。
【0021】
吹出しモードとしては、インストルメントパネル70の4つのベント(つまり、2つのサイドベント71,74及び2つのセンターベント72,73)全てから空調風を車室内へ吹き出させる第1吹出しモードと、前席の足元へ空調風を吹き出させる第2吹出しモードと、デフロスター用の第3吹出しモードと、インストルメントパネルの4つのベント(71〜74)からの吹き出しと前席の足元へ空調風を吹き出しとを同時に行う第4吹出しモードと、デフロスター用と前席の足元用とを同時に行う第5吹出しモードなどが一般に知られている。これらの第1吹出しモード〜第5吹出しモード時に乗員が任意に温度,風量を調整できる(以下「ノーマルモード」と呼ぶ)。ノーマルモードでは、乗員が操作パネルを操作することで、その信号が操作パネルの各スイッチから制御装置へ送られる。さらに、操作パネルにはオート制御スイッチが設けられており、このオート制御スイッチをオン操作すると設定温度、室内温度、外気温度などに基づいて車室内が設定温度に維持される。
【0022】
制御装置50は、操作パネルからの信号に基づいて、温度,風量,吹出しモードやオート制御を判断する。この制御装置50は例えばエアコンECUとして構成されている。各種信号に基づいて制御装置50はブロアモータなどを制御する。なお、各第1サブダクト111〜第8サブダクト118には、空調風の通過を解除可能に規制する装置(以下、規制装置と呼ぶ)が設けられている。デフロスター用開口にも規制装置80が設けられている。各規制装置80は、図1に示すダンパー81とこのダンパー81を駆動するサーボモータ82(図1では○印で表している)とを備えている。
【0023】
本実施形態では、各第1サブダクト111〜第6サブダクト116に規制装置80が設けられ、各サーボモータ82が制御装置50に接続されている。第7サブダクト117及び第サブダクト118に関しては、それらを纏めて規制する規制装置80が第2分岐ダクト12の中間部の開口12Aに一つ設けられ、この開口12Aを開閉制御する。なお、図1では一部のサーボモータ82と制御装置50との接続を表し、他の接続の表示を省略している。
【0024】
各ダンパー81の作用(復元力)により、ダンパー81はサーボモータ82で制御されない状態では各サブダクトを「開」状態にする。例えば第1通常モードで制御装置50はデフロスター用開口10C及び足元への空調風の吹出し用の開口12Aの規制装置80を制御してこれらの開口10C,12Aからの通気をダンパーで規制し、第1サブダクト111〜第4サブダクト114の各ダンパー81はその復元力によって第1サブダクト111〜第4サブダクト114を「開」状態にする。なお、図1の83はミックスダンパーであり、84は内外気切替ダンパーであり、これらのダンパー83,84も制御装置50によって駆動されるサーボモータ85,86で動作する。
【0025】
本実施形態に係る車両用エアコンシステム1は、「ノーマルモード」に加えて消費電力を低減させる「省電力モード」で動作することが可能である。ノーマルモード時にユーザーがインストルメントパネル70に設けられた「省電力モードスイッチ(図示省略)」を押すことで「省電力モード」への移行処理が開始する。なお、省電力モード起動中に省電力モードスイッチを押すことで省電力モードが解除されノーマルモードに移行する。
【0026】
本実施形態における「省電力モード」は、乗員数に応じて吹出し口の数やブロアモータの出力を制御する。具体的には、車両用エアコンシステム1は、省電力モード時の乗員数に応じてモードを、第1省電力モードと第2省電力モードとの何れかを選択する。
【0027】
ここで、図3は本実施形態に係る制御装置50の機能ブロック図である。制御装置50は、省電力モード判定部51と、サーボモータ制御部52と、ブロアモータ制御部53と、を備えている。
【0028】
省電力モード判定部51は、運転席と助手席と後列に乗員がいるか判定する。このため、車両用エアコンシステムは乗員検知装置を備えている。本実施形態では、乗員検知装置として、運転席の乗員を検出するセンサーと、助手席及び後列の左右のシートの乗員を検出するセンサーと、を備えている。例えば、運転席の乗員を検出するセンサーとして、運転席用シートベルトのバックルに装備されたバックルスイッチを利用し、助手席及び後列の左右のシートの乗員を検出するセンサーとして、助手席及び後列のシートクッション及び/又はシートバック内に装備された着座センサーを利用する。これらのセンサーからの信号に基づいて、省電力モード判定部が第1省電力モード又は第2省電力モードを選択する。
【0029】
本実施形態では、運転席だけに乗員がいる場合は第1省電力モードを選択し、運転席及び助手席の両方に乗員がいる場合は第2省電力モードを選択する。なお、ノーマルモード時に省電力モードスイッチが押されて省電力モードへの移行処理が開始した場合でも、下記(1)〜(3)の場合は例外処理として、制御装置50はノーマルモードとして動作させる。
【0030】
(1)エアコンディショナーのオート制御がオフになっているとき。
【0031】
(2)吹出しモードがデフロスターのみ(つまり第3吹出しモード)に設定されているとき。
【0032】
(3)後列シート(つまりリアシート)に乗員がいるとき。
【0033】
下記の表1は、第1省電力モードと第2省電力モードとにおける各吹出し口の開閉状態を示している。
【0034】
【表1】

表1中の「○」は吹出し口のダンパーが「開」に設定されることを意味し、「×」は吹出し口のダンパーが「閉」に設定されることを意味する。なお、ノーマルモードでは全ての吹出し口を「開」に設定可能である。
【0035】
ユーザーが選択した吹出し口の選択状態(前述の第1吹出しモード〜第5吹出しモード)において、上記表1に示す吹出し可能な吹出し口から空調風が吹き出される。本実施形態ではノーマルモード時にユーザーが省電力モードスイッチを操作して省電力モードに移行させると、ノーマルモード時に選択したモードにおいて省電力化が図られる。例えば省電力モード移行時に前列にドライバーだけがいて第1通常モードが先に選択されていれば、上記表1から、運転席用吹出し口(センターベント72)だけから空調風が吹き出される。なお、省電力モード起動中に吹出しモードの切り換えも可能であり、例えば第1吹出しモードから第2吹出しモードなどへの切り換えが行える。
【0036】
サーボモータ制御部52は、省電力モード判定部51で判定されたモード、つまり第1省電力モード及び第2省電力モードの何れかの情報と、ユーザーによって選択された吹出しモードの情報とに応じて、各サーボモータ82を制御する。制御装置50は、ユーザーが選択した吹出し口の選択状態(前述の第1吹出しモード〜第5吹出しモード)において、吹出し可能な吹出し口だけから空調風が吹き出されるよう、サーボモータを制御する。
【0037】
ブロアモータ制御部53は、ブロアファン20を駆動するモータ21の出力を制御する。ここで、図4はモータ出力の制御例を示すグラフであり、例えば或る吹出しモードでノーマルモード時のモータ出力をP1(第1出力)とすると、第2省電力モード(運転席及び助手席に乗員がいる)時のモータ出力はP1より低いP2(第2出力)とし、第1省電力モード(運転席だけに乗員がいる)時のモータ出力は第2省電力モード時のモータ出力P2より低いP3(第3出力)に設定される。
【0038】
第1実施形態に係る車両用エアコンシステム1の動作について説明する。図5は車両用エアコンシステム1における制御装置50がノーマルモードから省電力モードへ移行させるための判断処理のフローチャートである。
【0039】
制御装置50は、操作パネルの各種電子機器(図示省略)からの信号と、各センサー(前述のバックルスイッチや着座センサーなど)からの信号に基づいて省電力モードで動作するかノーマルモードで動作するか判断する。具体的には、図5に示すように、省電力モードスイッチがオフ状態、オート制御スイッチがオフ状態、吹出しモードがデフロスター(前述の「第3吹出しモード」)に設定されている状態、乗員がリアシートにいる状態では、ノーマルモードで動作する(省電力モードスイッチ自体がオフの場合に加えて、前述の例外(1)〜(3)に該当する場合)。一方、これらの何れにも該当しない場合には省電力モードとして動作する(図5の各ステップS1〜S4でYes(図中のY)と判定された場合)。なお、このような判断は、制御装置50の省電力モード判定部51で実行される。
【0040】
省電力モードにおいて、制御装置50が助手席と運転席の乗員がいると判定した場合には制御装置50は運転モードを第2省電力モードと判定する。これにより、制御装置50は、第1吹出し口71、第4吹出し口74、第7吹出し口77及び第8吹出し口78の各規制装置80を制御して第1吹出し口71、第4吹出し口74、第7吹出し口77及び第8吹出し口78からの空調風の吹き出しを停止させる。さらに、制御装置50は、ブロアモータ21を制御してノーマルモードの第1出力P1より低いブロアモータの第2出力P2に低減させる(図4参照)。
【0041】
省電力モードにおいて、制御装置50が運転席のみに乗員がいると判定した場合には制御装置50は運転モードを第1省電力モードと判定する。これにより、制御装置50は、第1吹出し口71、第3吹出し口73、第4吹出し口74、第6吹出し口76、第7吹出し口77及び第8吹出し口78の各規制装置80を制御して第1吹出し口71、第3吹出し口73、第4吹出し口74、第6吹出し口76、第7吹出し口77及び第8吹出し口78からの空調風の吹き出しを停止させる。さらに、制御装置50は、ブロアモータ21を制御して第2省電力モードの第2出力P2より低いブロアモータの第3出力P3に低減させる(図3参照)。
【0042】
このように本実施形態に係る車両用エアコンシステム1によれば、省電力モードにおいて単にノーマルモードに比べて省電力を図るのではなく、車両に搭乗した乗員に応じた省電力モード、つまり第1省電力モード及び第2省電力モードの何れかを選択する。これにより、後列席(リアシート)及び助手席に乗員がいない場合、助手席に乗員がいる場合に比べて吹出し口の数を少なく制限させると共に、吹出し口の制限によって余剰の風量を省くようブロアモータ21を低出力に制御装置50は制限する。このように、本実施形態によれば、乗員数に応じて吹出し口の数やブロアモータ21の出力を制御することで、乗員の体感風量を変えることなく吹出し口の数の最適化を図り、車両の省電力化を図れる。また、省電力モードスイッチが押されていてもデフロスターが優先されるため、フロントガラス60の曇り止め性能を確保できる。
【0043】
以上詳述したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
【0044】
第1省電力モードと第2省電力モードとにおける各吹出し口の開閉パターンは表1に限るものではなく、例えば下記の表2のパターンでもよい。
【0045】
【表2】

省電力モードにおいて、運転席及び助手席の各センサーからの信号に基づいて制御装置50が助手席と運転席の乗員がいると判定した場合には制御装置50は運転モードを第2省電力モードと判定する。これにより、制御装置50は、第7吹出し口77及び第8吹出し口78の各規制装置80を制御して第7吹出し口77及び第8吹出し口78からの空調風の吹き出しを停止させる。さらに、制御装置50は、ブロアモータ21を制御してノーマルモードの第1出力P1より低いブロアモータの第2出力P2に低減させる(図4参照)。
【0046】
省電力モードにおいて、運転席及び助手席の各センサーからの信号に基づいて制御装置50が運転席のみに乗員がいると判定した場合には制御装置50は運転モードを第1省電力モードと判定する。これにより、制御装置50は、第3吹出し口73、第4吹出し口74、第6吹出し口76、第7吹出し口77及び第8吹出し口78の各規制装置80を制御して第3吹出し口73、第4吹出し口74、第6吹出し口76、第7吹出し口77及び第8吹出し口78からの空調風の吹き出しを停止させる。さらに、制御装置50は、ブロアモータ21を制御して第2省電力モードの第2出力P2より低いブロアモータの第3出力P3に低減させる(図3参照)。
【0047】
上記説明では、運転席の乗員の存在を確認するための、運転席用シートバックル内のバックルスイッチからの信号が制御装置50に入力されているが、運転席用の乗員の検出を省略し、例えば助手席の乗員の有無だけで、制御装置は第1省電力モードと第2省電力モードの選択を決めても良い。また、制御装置50は、後列右席及び後列左席の乗員を考慮せずに、第1省電力モードと第2省電力モードの選択を決めても良い。
【0048】
本発明における乗員検知装置は上記構成に限定されるものではなく、例えば運転席の乗員を検出するセンサーとしてシートクッション及び/又はシートバック内に装備された着座センサーを利用し、助手席及び後列の左右のシートの乗員を検出するセンサーとして運転席用及び後席用の各シートベルトのバックルに装備されたバックルスイッチを利用してもよい。
【0049】
前述の図1に示す車両用エアコンシステムにおいて、ノーマルモードで第1吹出し口71及第5吹出し口75の風量等を調整しないのであれば、省電力モード時の制御用として、当該第1吹出し口71及第5吹出し口75の規制装置(ダンパー)の搭載を省略してもよい。
【0050】
本発明の車両用エアコンシステムは、空調ダクトから分岐したダクトとして、前述の第7サブダクト及び第8サブダクトを省略してもよい。
【0051】
前述の説明では、第2分岐ダクトの開口に規制装置が装備されて、第7吹出し口77と第8吹出し口78の開閉が制御される説明をしたが、第7吹出し口77と第8吹出し口78とにそれぞれ個別に規制装置80を設けて開閉を制御してもよい。
【0052】
第1吹出し口71〜第4吹出し口74のインストルメントパネルにおける設置場所は図示例に限られるものではない。
【0053】
本発明の車両用エアコンシステムは、エンジンないし電気モータによる駆動力で走行するハイブリッド車両に限らず、エンジンのみで駆動する車両やモータのみで駆動する電気自動車にも適用できることは勿論である。
【0054】
省電力モードへの移行処理を開始するためのスイッチはボタンに限らず、操作ノブなどでもよく、取付位置はインストルメントパネルに限らず、ステアリングハンドル装置であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 車両用エアコンシステム
10 空調ダクト
10A 外気取り入れ口
10B 内気取り入れ口
10C デフロスター用開口
11 第1分岐ダクト
111〜118 第1サブダクト〜第8サブダクト
12 第2分岐ダクト
20 ブロアファン
21 ブロアモータ
30 エバポレータ
40 ヒートユニット
50 制御装置
51 省電力モード判定部
52 サーボモータ制御部
53 ブロアモータ制御部
60 フロントガラス
70 インストルメントパネル
71〜78 第1吹出し口〜第8吹出し口
80 規制装置
81 ダンパー
82,85,86 サーボモータ
83 ミックスダンパー
84 内外気切替ダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員による任意の設定で動作するノーマルモードと、省電力で動作する省電力モードとの何れかで動作する車両用エアコンシステムにおいて、
複数の吹出し口と、
吹出し口毎に設けられ当該吹出し口からの空調風の吹き出しを解除可能に規制する規制装置と、
乗員を検知する複数の乗員検知装置と、
空調ダクトを介して各吹出し口へ空調風を送るブロアファンと、
上記ブロアファンを駆動するブロアモータと、
各規制装置と上記ブロアモータを制御する制御装置と、を備え、
省電力モードにおいて上記制御装置が上記乗員検知装置からの情報に基づいて上記規制装置及び上記ブロアモータを制御することで、吹出し口の数及び上記ブロアモータの出力が変更されることを特徴とする、車両用エアコンシステム。
【請求項2】
ドライバーに対向する第1吹出し口及び第2吹出し口と、
助手席に着座した乗員に対向する第3吹出し口及び第4吹出し口と、
ドライバーの足元へ向けて空調風を吹き出すための第5吹出し口と、
助手席に着座した乗員の足元へ向けて空調風を吹き出すための第6吹出し口と、
空調ダクトを介して上記第1吹出し口〜第6吹出し口へ空調風を送るブロアファンと、
上記ブロアファンを駆動するブロアモータと、
上記ブロアモータを制御する制御装置と、を備え、
乗員による任意の設定で動作するノーマルモードと、省電力で動作する省電力モードとの何れかで動作するエアコンシステムにおいて、
上記第1吹出し口〜上記第6吹出し口からの空調風の吹き出しを解除可能に規制する規制装置と、
助手席の乗員を検知するセンサーと、を備え、
省電力モードにおいて上記センサーが上記助手席の乗員を検知した場合、上記制御装置が、上記第1吹出し口、上記第4吹出し口の各規制装置を制御して上記第1吹出し口、上記第4吹出し口からの空調風の吹き出しを停止すると共に、上記ブロアモータを制御してノーマルモードの第1出力より低いブロアモータの第2出力に低減させ、
省電力モードにおいて上記センサーが上記助手席の乗員を検知しない場合、上記制御装置が、上記第1吹出し口、上記第3吹出し口、上記第4吹出し口、上記第6吹出し口の各規制装置を制御して上記第1吹出し口、上記第3吹出し口、上記第4吹出し口、上記第6吹出し口からの空調風の吹き出しを停止すると共に、上記ブロアモータを制御して上記第2出力より低いブロアモータの第3出力に低減させることを特徴とする、車両用エアコンシステム。
【請求項3】
さらに、
後列右席に着座した乗員用の第7吹出し口と、
後列左席に着座した乗員用の第8吹出し口と、
上記第7吹出し口〜第8吹出し口から空調風の吹き出しを解除可能に規制する規制装置と、を備え、
省電力モードにおいて、前記制御装置が、上記第7吹出し口、上記第8吹出し口の各規制装置を制御して上記第7吹出し口、上記第8吹出し口からの空調風の吹き出しを停止することを特徴とする、請求項2に記載の車両用エアコンシステム。
【請求項4】
後列右席に着座した乗員と後列左席に着座した乗員を検出する後列用センサーを備え、
上記後列用センサーが乗員を検知した場合、制御装置は、前記スイッチによって省電力モードへの開始要求があっても、ノーマルモードとして動作させることを特徴とする、請求項3に記載の車両用エアコンシステム。
【請求項5】
ドライバーに対向する第1吹出し口及び第2吹出し口と、
助手席に着座した乗員に対向する第3吹出し口及び第4吹出し口と、
ドライバーの足元へ向けて空調風を吹き出すための第5吹出し口と、
助手席に着座した乗員の足元へ向けて空調風を吹き出すための第6吹出し口と、
後列右席に着座した乗員用の第7吹出し口と、
後列左席に着座した乗員用の第8吹出し口と、
空調ダクトを介して上記第1吹出し口〜第8吹出し口へ空調風を送るブロアファンと、
上記ブロアファンを駆動するブロアモータと、
上記ブロアモータを制御する制御装置と、を備え、
乗員による任意の設定で動作するノーマルモードと、省電力で動作する省電力モードとの何れかで動作するエアコンシステムにおいて、
上記第1吹出し口〜上記第8吹出し口からの空調風の吹き出しを解除可能に規制する規制装置と、
助手席の乗員を検知するセンサーと、を備え、
省電力モードにおいて上記センサーが上記助手席の乗員を検知した場合、上記制御装置が、上記第7吹出し口、上記第8吹出し口の各規制装置を制御して上記第7吹出し口、上記第8吹出し口からの空調風の吹き出しを停止すると共に、上記ブロアモータを制御してノーマルモードの第1出力より低いブロアモータの第2出力に低減させ、
省電力モードにおいて上記センサーが上記助手席の乗員を検知しない場合、上記制御装置が、上記第3吹出し口、上記第4吹出し口、上記第6吹出し口、上記第7吹出し口、上記第8吹出し口の各規制装置を制御して上記第3吹出し口、上記第4吹出し口、上記第6吹出し口、上記第7吹出し口、上記第8吹出し口からの空調風の吹き出しを停止すると共に、上記ブロアモータを制御して上記第2出力より低いブロアモータの第3出力に低減させることを特徴とする、車両用エアコンシステム。
【請求項6】
前記第1吹出し口がドライバー用のサイドベントであり、
前記第2吹出し口が第1のセンターベントであり、
前記第3吹出し口が上記第1のセンターベントより助手席側に設けられた第2のセンターベントであり、
前記第4吹出し口が助手席用のサイドベントであることを特徴とする、請求項2〜5の何れかに記載の車両用エアコンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−105283(P2011−105283A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265735(P2009−265735)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】