説明

車両用エンジンの吸気音増幅装置

【課題】エンジンの吸気音を、吸気音導入通路から車室側へ効率的に伝達することができる車両用エンジンの吸気音増幅装置を提供する。
【解決手段】車両1のエンジンルーム3内に配設されたエンジン20の吸気音を車室2側に導入するための車両用エンジンの吸気音増幅装置30であって、エンジン20の吸気管23内に一端が連通され、カウルボックス10内に他端が連通された吸気音導入通路(振動生成管部31,膜振動部33,振動伝達管部35)と、この吸気音導入通路内に配置され、エンジンの吸気通路内の吸気脈動により膜振動する膜振動部33と、カウルボックス10の上部を覆いカウルボックス10内と車外とを連通する連通孔13が形成されたカウルグリル12と、を備え、カウルグリル12には、吸気音導入通路の開口部37cの近傍に連通孔13が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エンジンの吸気音増幅装置に係り、特にエンジンルーム内に配設されたエンジンの吸気通路に連通させた吸気音導入通路によって、車室側にエンジンの吸気音を伝達する車両用エンジンの吸気音増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンの吸気音を増幅させて車室内に導入する吸気音増幅装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の吸気音増幅装置は、吸気音導入通路を備えており、この吸気音導入通路の一端はエンジンルーム内に配置されたエンジンの吸気通路に連通され、他端はエンジンルーム後部に形成された区画空間内に連通されている。このような構成により、上記吸気音増幅装置では、吸気音導入通路が吸気脈動による吸気音を増幅して区画空間内に伝達し、区画空間を介して車室内に増幅された吸気音を導入することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−348915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の吸気音増幅装置では、吸気音導入通路を区画空間に連通させ、区画空間を介して車室内に吸気音を導入しているだけなので、吸気音をより効率的に車室側へ伝達することに関して改良の余地があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、エンジンの吸気音を、吸気音導入通路から車室側へ効率的に伝達することができる車両用エンジンの吸気音増幅装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両のエンジンルーム内に配設されたエンジンの吸気音を車室側に導入するための車両用エンジンの吸気音増幅装置であって、エンジンの吸気通路内に一端が連通され、カウルボックス内に他端が連通された吸気音導入通路と、この吸気音導入通路内に配置され、エンジンの吸気通路内の吸気脈動により膜振動する膜振動手段と、カウルボックスの上部を覆いカウルボックス内と車外とを連通する連通孔が形成されたカウルグリルと、を備え、カウルグリルには、吸気音導入通路の開口端部の近傍に連通孔が設けられていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明によれば、吸気圧振動を音源とする吸気音を、エンジンの吸気管に連通された吸気音導入通路を介して膜振動手段に導いて増幅し、増幅した吸気音をさらに吸気音導入通路を介してカウルボックスに伝達することができる。このとき、吸気音導入通路の開口端部は、カウルボックスの連通孔の近傍に設けられているので、吸気音を開口端部から連通孔を通して外部へ効率的に伝播させ、さらに外部を経由して車室内へ吸気音を導入させることができる。また、カウルボックスに伝達された吸気音は、カウルボックスから車体内部を経由して車室に伝達することもできる。
【0008】
また、本発明において好ましくは、吸気音導入通路の開口端部には、カウルボックス内でカウルグリルの内面と離間して、カウルグリルに向かって上方開口する開口部が形成されている。
このように構成された本発明によれば、吸気音導入通路から伝播してきた吸気音を、カウルボックスの上方に向かって伝播させることができる。これにより、吸気音を車両外部を経由して効率的に車室側へ伝播させることができる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、カウルグリルの連通孔は、吸気音導入通路の開口端部の縁部よりも水平方向にずれた位置に形成されている。
このように構成された本発明によれば、カウルグリルの連通孔から雨水等が吸気音導入通路の開口端部に浸入することを防止することができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、カウルグリルの内面には、連通孔から浸入する液滴が吸気音導入通路の開口端部に流入するのを防ぐように下方へ突出する遮断壁が設けられている。
このように構成された本発明によれば、カウルグリルの連通孔を通して雨水等が浸入する場合に、遮蔽壁によって吸気音導入通路の開口端部に雨水等の液滴が流入することを防止することができる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、吸気音導入通路の開口端部は、車両の運転席側に配置されている。
このように構成された本発明によれば、吸気音をカウルグリルの連通孔を通して車両外部に伝播させることにより、車両外部を経由して主にドライバに向けて供給することができ、ドライバに運転の躍動感を与えることが可能である。
【0012】
また、本発明において好ましくは、車両が車室ルーフを着脱又は折り畳み可能である。
このように構成された本発明によれば、吸気音をウインドウシールド越しに車室内へ効率的に導入することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用エンジンの吸気音増幅装置によれば、エンジンの吸気音を、吸気音導入通路から車室側へ効率的に伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。先ず、図1乃至図5により、本発明の実施形態による車両用エンジンの吸気音増幅装置を説明する。
図1は本発明の実施形態における車両のエンジンルームを上方から見た図、図2は吸気音増幅装置を上方から見た図、図3は図2のIII−III線断面図、図4は吸気音増幅装置のカウルボックスとの連結部位をカウルグリル側から見た図、図5は図4のV−V線断面図である。
【0015】
本実施形態の吸気音増幅構造を有する車両1は、図示しない車室ルーフを着脱又は折り畳み可能な車両であり、車両左側に運転席が設けられている。
図1に示すように、車両1は、車室2の前方に、ダッシュパネル4によって仕切られたエンジンルーム3を有する。エンジンルーム3の後方には、閉空間であるカウルボックス10が設けられている。このカウルボックス10は、ダッシュパネル4の上部で、車室2の直前に位置し、凹状で車幅方向に延びるカウル本体11と、カウル本体11の上部開口を覆うカウルグリル12とを備えている(図3参照)。カウルグリル12には、カウルボックス10内に外気を取り込むためのメッシュ状の連通孔13が所定の領域に形成されている。
【0016】
また、エンジンルーム3内の後方中央部には、気筒列方向を車両前後方向に向けた縦置き形式で直列4気筒エンジン20が配置されている。エンジン20の車両左側には吸気マニホールド21が配設され、車両右側には排気マニホールド22が配設されている。
【0017】
この吸気マニホールド21内に外気を導入する上流側吸気管21aには、L字形状の吸気管23の下流端が連結されている。吸気管23の上流端には、エンジンルーム3内の前方に配置されたエアクリーナ24が連結されている。また、吸気マニホールド21の上流側吸気管21aには、スロットルボディ21bが取り付けられている。本実施形態では、上流側吸気管21a,吸気管23等によって、エンジン20の吸気通路が構成されている。
【0018】
図2に示すように、本実施形態の吸気音増幅装置30は、吸気管23に一端が連結された振動生成管部31と、振動生成管部31の他端側に取り付けられた膜振動部33と、膜振動部33に一端が連結され、カウルボックス10の車両左側に他端が連結された振動伝達管部35と、カウルボックス10とを構成要素として構成されている。本実施形態では、振動生成管部31,膜振動部33,振動伝達管部35によって、吸気音導入通路が構成されている。
【0019】
振動生成管部31は、複数の管体によって所定管長に形成されており、吸気管23との連結部から膜振動部33まで直線的に延びるのではなく、吸気管23との連結部から車両前方外側に延びて迂回した経路を通って膜振動部33に連結されている。
膜振動部33は、図3に示すように、筒状体33aの内部に合成樹脂製又はゴム製の振動膜33bが配置された構成であり、ブラケットを介してエンジンルーム3の内壁に固定されている。この振動膜33bは、振動生成管部31内と振動伝達管部35内とを車両前後方向に仕切っており、後述するようにエンジン20の吸気脈動によって膜振動し、吸気音を増幅して車室2側へ伝達するようになっている。本実施形態では、膜振動部33が膜振動手段を構成している。
【0020】
振動伝達管部35は、膜振動部33の筒状体33aに一端が外嵌めされたダクト部36と、ダクト部36の他端に外嵌めされた接続受け部材37とを有している。
接続受け部材37は、ダクト部36に連結される筒状部37aと、筒状部37aの車室2側端部から径方向に拡がる環状のフランジ部37bと、フランジ部37bから車室2側へ延びる開口端部としての開口部37cとを有している。カウル本体11の車両前側の縦壁11aには、底壁から上方に離間した上側部分に開口11bが穿設されており、接続受け部材37は、この開口11bに筒状部37aが車両後方から差し込まれ、フランジ部37bが縦壁11aに締結手段で固定されることにより、カウルボックス10に取り付けられている。
【0021】
図2及び図3に示すように、開口部37cは、フランジ部37bから上方を開口させた状態で車両後方に延び、さらに後端部を上方に延ばして凹状に形成されている。これにより、開口部37cの上方開口縁部37dは、カウルグリル12の下面(内面)に対向している。また、開口部37cは、車両前部が筒状部37aのカウルボックス10側の開口を略半円状に囲むように形成されており、開口部37cの内部空間が筒状部37a内部に連通されている。
【0022】
図4に示すように、カウルグリル12に設けられた連通孔13は、開口部37cの上部には形成されておらず、上方開口縁部37dから水平方向にずれた近傍位置に形成されている。換言すると、カウルグリル12には、開口部37cの上部に開口部37cを遮蔽する遮蔽部12aが設けられ、開口部37c及び遮蔽部12aの側部に連通孔13が形成されている。
【0023】
さらに、図5に示すように、遮蔽部12aには、連通孔13から開口部37cに雨等が浸入するのを防止するための遮蔽壁12bが設けられており。この遮蔽壁12bは、上方開口縁部37d又はこれよりも外側において遮蔽部12aの下面から下方に突出すると共に、下方ほど上方開口縁部37dから離れるように湾曲形成されている。これにより、連通孔13に斜め方向から雨水等の液滴が浸入してきた場合でも、雨水等が開口部37c内に入り込むことを防止することができる。
【0024】
次に、上述した実施形態による車両用エンジンの吸気音増幅装置の作用(動作)を説明する。
エンジン20の作動中には、吸気マニホールド21及び吸気管23内で、吸気脈動による圧力変動が生じており、この圧力変動による吸気音が吸気音増幅装置30によって増幅され、車室2側へ伝達される。特に、アクセルペダルを踏み込んで車両1を加速するとき、吸気音が車室2内へ導入されることにより、ドライバに躍動感を与えることができる。
【0025】
詳しくは、吸気管23内の吸気脈動が、先ず、振動生成管部31を介して膜振動部33に伝達される。これにより、膜振動部33は、振動膜33bによって吸気脈動に伴う吸気音を増幅し、この増幅した吸気音を振動伝達管部35に伝達する。
【0026】
振動伝達管部35に伝達された吸気音、すなわち吸気脈動は、開口部37cからカウルボックス10内に導入される。開口部37cは、上方開口しているので、カウルボックス10に導入された吸気音は、主に開口部37cから上方に向かって伝播される。
開口部37cから伝播される吸気音は、遮蔽部12aを振動させると共に、遮蔽部12aの側部に形成された連通孔13から車両外部へ伝播される。また、開口部37cから伝播される吸気音の一部は、カウル本体11の壁部を介して、また、カウル本体11に接続され車室2内と連通している空調装置通路(図示せず)を介して、車室2内へ導入される。
【0027】
本実施形態の車両1は、車室ルーフ(図示せず)を着脱又は折り畳んだ状態で走行可能であり、車室2が車室ルーフで覆われてないときには、連通孔13や遮蔽部12aを介して外部へ伝播された吸気音を、ウインドウシールド越しに車室2側へ効率的に導入することができる。また、開口部37cは、車両1の運転席側に設けられているので、吸気音を心地よい音として主にドライバに供給し、運転の躍動感を与えることができる。さらに、開口部37cから車両外部へ伝播された吸気音を、サイドウインドウ越しに車室2内へ導入することもできる。
【0028】
このように、本実施形態の吸気音増幅装置30は、カウルボックス10の壁部又は空調装置通路を介して車両1内部から車室2内へ吸気音を導入可能であると共に、連通孔13を通して車両外部を経由して車室2内へ吸気音を導入可能である。
そして、本実施形態では、開口部37cが上方開口しているが、その上部はカウルグリル12の遮蔽部12aによって遮蔽され、且つ、遮蔽部12aに遮蔽壁12bが設けられているので、外部から雨水等が開口部37c内へ浸入することを防止することができる。
【0029】
また、本実施形態では、開口部37cの直上部分には、遮蔽部12aが設けられているが、開口部37cの上方開口縁部37dの近傍に遮蔽部12aに隣接して連通孔13が設けられているので、吸気音を開口部37cから連通孔13を通して車両外部に効率的に伝播させることができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、振動伝達管部35の車室2側にカウル本体11の縦壁11aよりもさらに車室2側へ延びる開口部37cが設けられていたが、これに限らず、振動伝達管部35の開口端縁部が、カウルグリル12の連通孔13の近傍、又はこれから水平方向にずれて配置されていれば、開口部37cを設けない構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態における車両のエンジンルームを上方から見た図である。
【図2】本発明の実施形態における吸気音増幅装置を上方から見た図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】本発明の実施形態における吸気音増幅装置のカウルボックスとの連結部位をカウルグリル側から見た図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 車両
2 車室
3 エンジンルーム
4 ダッシュパネル
10 カウルボックス
11 カウル本体
12 カウルグリル
12a 遮蔽部
12b 遮蔽壁
13 連通孔
20 エンジン
21 吸気マニホールド
22 排気マニホールド
23 吸気管
24 エアクリーナ
30 吸気音増幅装置
31 振動生成管部
33 膜振動部
33b 振動膜
33a 筒状体
35 振動伝達管部
36 ダクト部
37 接続受け部材
37a 筒状部
37b フランジ部
37c 開口部
37d 上方開口縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルーム内に配設されたエンジンの吸気音を車室側に導入するための車両用エンジンの吸気音増幅装置であって、
エンジンの吸気通路内に一端が連通され、カウルボックス内に他端が連通された吸気音導入通路と、
この吸気音導入通路内に配置され、エンジンの吸気通路内の吸気脈動により膜振動する膜振動手段と、
前記カウルボックスの上部を覆いカウルボックス内と車外とを連通する連通孔が形成されたカウルグリルと、を備え、
前記カウルグリルには、前記吸気音導入通路の開口端部の近傍に前記連通孔が設けられていることを特徴とする車両用エンジンの吸気音増幅装置。
【請求項2】
前記吸気音導入通路の開口端部には、前記カウルボックス内で前記カウルグリルの内面と離間して、前記カウルグリルに向かって上方開口する開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用エンジンの吸気音増幅装置。
【請求項3】
前記カウルグリルの連通孔は、前記吸気音導入通路の開口端部の縁部よりも水平方向にずれた位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用エンジンの吸気音増幅装置。
【請求項4】
前記カウルグリルの内面には、前記連通孔から浸入する液滴が前記吸気音導入通路の開口端部に流入するのを防ぐように下方へ突出する遮断壁が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用エンジンの吸気音増幅装置。
【請求項5】
前記吸気音導入通路の開口端部は、車両の運転席側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用エンジンの吸気音増幅装置。
【請求項6】
前記車両が車室ルーフを着脱又は折り畳み可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両用エンジンの吸気音増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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